(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157818
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】フッ素樹脂用マスターバッチ、その製造方法、フッ素樹脂組成物、及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20221006BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221006BHJP
C08K 5/3437 20060101ALI20221006BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20221006BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08J3/22 CEY
C08K3/013
C08K5/3437
C08L33/06
C08L27/12
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062266
(22)【出願日】2021-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100209347
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】菊田 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 裕太
(72)【発明者】
【氏名】作田 新吾
(72)【発明者】
【氏名】荒島 勇治
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA23
4F070AA24
4F070AA32
4F070AB11
4F070AB22
4F070AB23
4F070AC15
4F070AC40
4F070AC66
4F070AE02
4F070AE04
4F070AE09
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB04
4F070FB07
4F070FC03
4J002BD121
4J002BD131
4J002BD141
4J002BD151
4J002BD161
4J002BG042
4J002BG052
4J002DE136
4J002EU056
4J002FD096
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】フッ素樹脂に微粒子材料が良好に分散した成形体が得られるフッ素樹脂組成物が得られるフッ素樹脂用マスターバッチ、フッ素樹脂に微粒子材料が良好に分散した成形体が得られるフッ素樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル樹脂と、微粒子材料とを含むことを特徴とするフッ素樹脂用マスターバッチ。前記フッ素樹脂用マスターバッチと、フッ素樹脂とを含むことを特徴とするフッ素樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル樹脂と、微粒子材料とを含むことを特徴とするフッ素樹脂用マスターバッチ。
【請求項2】
前記微粒子材料の含有量が、前記フッ素樹脂用マスターバッチの総質量に対して1~80質量%である、請求項1に記載のフッ素樹脂用マスターバッチ。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量が10,000~500,000である、請求項1又は2に記載のフッ素樹脂用マスターバッチ。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル樹脂が、メチルメタクリレート単位を含む重合体である、請求項1~3のいずれか一項に記載のフッ素樹脂用マスターバッチ。
【請求項5】
前記微粒子材料が、有機顔料及び無機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のフッ素樹脂用マスターバッチ。
【請求項6】
前記微粒子材料の平均一次粒子径が1μm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のフッ素樹脂用マスターバッチ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のフッ素樹脂用マスターバッチの製造方法であって、
前記(メタ)アクリル樹脂と前記微粒子材料とを溶融混練することを特徴とするフッ素樹脂用マスターバッチの製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のフッ素樹脂用マスターバッチと、フッ素樹脂とを含むことを特徴とするフッ素樹脂組成物。
【請求項9】
前記フッ素樹脂用マスターバッチの含有量が、前記フッ素樹脂100質量部に対して0.1~50質量部である、請求項8に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項10】
前記フッ素樹脂が、溶融成形可能な熱可塑性フッ素樹脂である、請求項8又は9に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項11】
前記フッ素樹脂の、示差走査熱量計で5℃/分で昇温したときの溶融開始温度が50℃以上250℃以下である、請求項10に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項12】
前記フッ素樹脂のショアD硬度が80以下である、請求項10又は11に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項13】
前記フッ素樹脂組成物を、射出成形機を用い、40mm×30mm×2mmのシート状に成形し、得られた成形体3枚の全体を光学顕微鏡(倍率100倍)で観察したときに、長径20μm以上の粗粒の数の合計が10個以下である、請求項10~12のいずれか一項に記載のフッ素樹脂組成物。
【請求項14】
請求項8~13のいずれか一項に記載のフッ素樹脂組成物の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂用マスターバッチ、その製造方法、フッ素樹脂組成物、及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形体は、電子機器の部品等、様々な用途に用いられる。樹脂成形体に意匠性等を付与するために、樹脂成形体に顔料を含有させて着色樹脂成形体とすることがある。着色樹脂成形体は、例えば、ベース樹脂に顔料等を分散させ、得られた樹脂組成物を成形して製造される。顔料のベース樹脂への分散性を高めるために、顔料とともに分散剤を配合する場合や、顔料の代わりに、顔料を予め最終濃度よりも高濃度にベース樹脂や分散剤に分散させた組成物、いわゆるマスターバッチを用いる場合がある。分散剤としては、例えば、ポリオレフィンワックスが知られている(特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008-540744号公報
【特許文献2】特表2010-500424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らの検討によれば、ベース樹脂がフッ素樹脂である場合、分散剤としてポリオレフィンワックスを用いても、顔料のフッ素樹脂への分散性が悪く、成形時に凝集物が生じて外観が悪くなることがあった。また、成形時に混ざりムラや金型等へのプレートアウトが生じ、着色樹脂成形体の色ブレを引き起こすことがあった。色ブレは、特に意匠性が求められる用途では問題になることがある。また、プレートアウトが生じると、金型等の清掃作業の頻度が増え、生産性が低下する。特に平均一次粒子径の小さい顔料を用いた際は上記の問題が顕著に表れた。
一方、樹脂成形体に、顔料以外の微粒子材料を含有させて機能を付与することがある。しかし、顔料以外の微粒子材料も、顔料と同様、フッ素樹脂への分散性が悪く、上記と同様の問題が生じることがある。
【0005】
本発明は、フッ素樹脂に微粒子材料が良好に分散した成形体が得られるフッ素樹脂組成物が得られるフッ素樹脂用マスターバッチ及びその製造方法、フッ素樹脂に微粒子材料が良好に分散した成形体が得られるフッ素樹脂組成物、並びにフッ素樹脂に微粒子材料が良好に分散した成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1](メタ)アクリル樹脂と、微粒子材料とを含むことを特徴とするフッ素樹脂用マスターバッチ。
[2]前記微粒子材料の含有量が、前記フッ素樹脂用マスターバッチの総質量に対して1~80質量%である、前記[1]のフッ素樹脂用マスターバッチ。
[3]前記(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量が10,000~500,000である、前記[1]又は[2]のフッ素樹脂用マスターバッチ。
[4]前記(メタ)アクリル樹脂が、メチルメタクリレート単位を含む重合体である、前記[1]~[3]のいずれかのフッ素樹脂用マスターバッチ。
[5]前記微粒子材料が、有機顔料及び無機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、前記[1]~[4]のいずれかのフッ素樹脂用マスターバッチ。
[6]前記微粒子材料の平均一次粒子径が1μm以下である、前記[1]~[5]のいずれかのフッ素樹脂用マスターバッチ。
[7]前記[1]~[6]のいずれかのフッ素樹脂用マスターバッチの製造方法であって、
前記(メタ)アクリル樹脂と前記微粒子材料とを溶融混練することを特徴とするフッ素樹脂用マスターバッチの製造方法。
[8]前記[1]~[6]のいずれかのフッ素樹脂用マスターバッチと、フッ素樹脂とを含むことを特徴とするフッ素樹脂組成物。
[9]前記フッ素樹脂用マスターバッチの含有量が、前記フッ素樹脂100質量部に対して0.1~50質量部である、前記[8]のフッ素樹脂組成物。
[10]前記フッ素樹脂が、溶融成形可能な熱可塑性フッ素樹脂である、前記[8]又は[9]のフッ素樹脂組成物。
[11]前記フッ素樹脂の、示差走査熱量計で5℃/分で昇温したときの溶融開始温度が50℃以上250℃以下である、前記[10]のフッ素樹脂組成物。
[12]前記フッ素樹脂のショアD硬度が80以下である、前記[10]又は[11]のフッ素樹脂組成物。
[13]前記フッ素樹脂組成物を、射出成形機を用い、40mm×30mm×2mmのシート状に成形し、得られた成形体3枚の全体を光学顕微鏡(倍率100倍)で観察したときに、長径20μm以上の粗粒の数の合計が10個以下である、前記[10]~[12]のいずれかのフッ素樹脂組成物。
[14]前記[8]~[13]のいずれかのフッ素樹脂組成物の成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フッ素樹脂に微粒子材料が良好に分散した成形体が得られるフッ素樹脂組成物が得られるフッ素樹脂用マスターバッチ及びその製造方法、フッ素樹脂に微粒子材料が良好に分散した成形体が得られるフッ素樹脂組成物、並びにフッ素樹脂に微粒子材料が良好に分散した成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0009】
〔フッ素樹脂用マスターバッチ〕
本発明の一実施形態に係るフッ素樹脂用マスターバッチ(以下、単に「マスターバッチ」とも記す。)は、(メタ)アクリル樹脂と微粒子材料とを含む。
【0010】
<(メタ)アクリル樹脂>
(メタ)アクリル樹脂は、微粒子材料の分散剤として機能する。
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリレート単位を含む樹脂である。(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを示す。(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリレートの単独重合体、2種以上の(メタ)アクリレートの共重合体、(メタ)アクリレートと(メタ)アクリレート以外の単量体との共重合体等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル樹脂を構成する全ての単量体単位の合計100質量%に対する(メタ)アクリレート単位の割合は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0011】
(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート(以下、「MMA」とも記す。)、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0012】
(メタ)アクリレート以外の単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン(ただし、フッ素原子を有するものを除く。)、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物が挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0013】
(メタ)アクリル樹脂としては、フッ素樹脂との相溶性の観点から、MMA単位を含む重合体が好ましい。
MMA単位を含む重合体は、MMA単位のみからなる重合体であってもよく、MMA以外の単量体単位をさらに含む共重合体であってもよい。MMA以外の単量体としては、前記した(メタ)アクリレートのうちMMA以外のもの、前記した(メタ)アクリレート以外の単量体等が挙げられる。
MMA単位を含む重合体を構成する全ての単量体単位の合計100質量%に対するMMA単位の割合は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
【0014】
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、10,000~500,000が好ましく、10,000~300,000がより好ましく、20,000~150,000さらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であれば、微粒子材料の分散性がより優れる。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0015】
<微粒子材料>
微粒子材料は、平均一次粒子径が小さくなるにつれ、フッ素樹脂中で凝集を起こしやすい傾向がある。したがって、平均一次粒子径が小さいほど、本発明の有用性が高い傾向がある。微粒子材料の平均一次粒子径は、1μm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、300nm以下がさらに好ましい。微粒子材料の平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、例えば10nmである。
平均一次粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡)により測定される。
【0016】
微粒子材料としては、例えば、有機顔料、無機顔料、無機フィラーが挙げられる。これらの微粒子材料は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、上記の中から、目的の色、機能を達成する為に任意の組み合わせを選択してよい。
【0017】
有機顔料としては、例えば、モノアゾ、縮合アゾ等のアゾ系顔料、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系等のスレン系、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、ピロロピロール系、アニリンブラック、有機蛍光顔料が挙げられる。これらの有機顔料は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。上記の中でも、耐熱性の観点から、アントラキノン系、ペリレン系、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、ピロロピロール系が好ましい。
【0018】
無機顔料又は無機フィラーとしては、例えば、クレー、バライト、雲母、タルク等の天然物、紺青等のフェロシアン化物、硫化亜鉛等の硫化物、硫酸バリウム等の硫酸塩、酸化クロム、亜鉛華、酸化チタン、酸化鉄等の酸化物、水酸化アルミニウム等の水酸化物、珪酸カルシウム、群青等のケイ酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、カーボンブラック、グラファイト等の炭素、アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛粉等の金属粉、その他焼成顔料が挙げられる。これらの無機顔料又は無機フィラーは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記の中でも、一次粒子径が小さい材料が好ましい。例えば、カーボンブラック、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、焼成顔料等は、一次粒子径が小さい傾向がある。一次粒子径が小さい材料は、凝集力が高く分散が困難であることから、本発明の有用性が高い。
【0019】
マスターバッチは、必要に応じて、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、(メタ)アクリル樹脂及び微粒子材料以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、相溶化剤、(メタ)アクリル樹脂以外の分散剤、可塑剤、滑剤等の加工助剤が挙げられる。これらの成分は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0020】
マスターバッチは、可塑剤を含むことが好ましい。マスターバッチが可塑剤を含むことで、マスターバッチを製造する際、微粒子材料を(メタ)アクリル樹脂に分散させやすくなり、マスターバッチの生産性が向上する。
可塑剤としては、(メタ)アクリル樹脂に適用可能な可塑剤として公知のものを使用することができ、例えばエポキシ化植物油、アジピン酸エステル、トリメット酸エステル、ポリエステル系可塑剤、液状アクリレートポリマーが挙げられる。これらの可塑剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。上記の中でも、耐熱性の観点から、エポキシ化植物油、アジピン酸エステル、液状アクリレートポリマーが好ましい。エポキシ化植物油における植物油としては、例えば大豆油、アマニ油が挙げられる。
【0021】
滑剤としては、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ホホバワックス、ライスワックス、モンタン酸ワックス、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸類、エルカ酸アマイド等の脂肪酸アマイドが挙げられる。これらの滑剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
マスターバッチにおいて、微粒子材料の含有量は、マスターバッチの総質量に対して10~80質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましく、25~60質量%がさらに好ましい。微粒子材料の含有量が上記下限値以上であれば、フッ素樹脂組成物の製造に使用されるマスターバッチの量を少なくでき、上記上限値以下であれば、(メタ)アクリル樹脂を充分に配合でき、微粒子材料の分散性がより優れる。
【0023】
(メタ)アクリル樹脂の含有量は、本マスターバッチの総質量に対して10~90質量%が好ましく、15~80質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂の含有量が上記下限値以上であれば、微粒子材料の分散性がより優れ、上記上限値以下であれば、微粒子材料を充分に配合でき、フッ素樹脂組成物の製造に使用されるマスターバッチの量を少なくできる。
【0024】
微粒子材料100質量部に対する(メタ)アクリル樹脂の割合は、20~900質量部が好ましく、30~400質量部がより好ましく、40~240質量部がさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂の割合が上記下限値以上であれば、微粒子材料の分散性がより優れ、上記上限値以下であれば、微粒子材料を充分に配合でき、フッ素樹脂組成物の製造に使用されるマスターバッチの量を少なくできる。
【0025】
可塑剤の含有量は、マスターバッチの総質量に対して0~40質量%が好ましく、0~30質量%がより好ましく、5~20質量%がさらに好ましい。
(メタ)アクリル樹脂と可塑剤との合計100質量部に対する可塑剤の割合は、0~50質量部が好ましく、0~40質量部がより好ましく、5~30質量部がさらに好ましい。
【0026】
滑剤の含有量は、マスターバッチの総質量に対して0~10質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~3質量%がより好ましい。
【0027】
マスターバッチは、例えば、(メタ)アクリル樹脂と微粒子材料とを溶融混練する方法により製造できる。必要に応じて、(メタ)アクリル樹脂及び微粒子材料とともに他の成分を溶融混練してもよい。
溶融混練の方法は特に限定されず、従来公知の溶融混練方法を採用することができる。例えば、ヘンシェルミキサー等の高速ミキサーやタンブラー等の混合機を使用して各成分を予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、プラストグラフ、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、加圧ニーダー等の混練装置で溶融混練する方法が挙げられる。押出機等の混練装置を使用して各成分を溶融混練するとともに、混練物をストランド状に押し出した後、ストランド状に押し出された混練物をペレット状やフレーク状等の形態に加工してもよい。溶融混練できる限りにおいて、使用する混練装置は特に限定されないが、混練能力の高さから加圧ニーダー、バンバリーミキサー、二軸押出機が好ましく用いられる。溶融混練時の温度は、(メタ)アクリル樹脂が溶融する温度であればよいが、80~300℃が好ましく、100~250℃がより好ましい。
【0028】
以上説明したマスターバッチによれば、フッ素樹脂に微粒子材料が良好に分散した成形体が得られるフッ素樹脂組成物が得られる。微粒子材料の表面に(メタ)アクリル樹脂が存在することで、微粒子材料がフッ素樹脂に分散しやすくなったと考えられる。微粒子材料がフッ素樹脂に分散しやすいことから、フッ素樹脂組成物の成形加工時に微粒子材料の混ざりムラやプレートアウトが生じにくく、安定した生産性で成形体を製造できる(金型等の汚染を抑制できる。製品毎の外観、色調等のブレが少なく品質の安定性が優れる等)。
【0029】
〔フッ素樹脂組成物〕
本発明の一実施形態に係るフッ素樹脂組成物は、前記したマスターバッチとフッ素樹脂とを含む。換言すれば、フッ素樹脂と、(メタ)アクリル樹脂と、微粒子材料とを含む。
【0030】
<フッ素樹脂>
フッ素樹脂としては、公知の種々のフッ素樹脂を用いることができ、例えば、熱可塑性フッ素樹脂、フッ素ゴムが挙げられる。
熱可塑性フッ素樹脂としては、含フッ素単量体の単独重合体、2種以上の含フッ素単量体の共重合体、含フッ素単量体と含フッ素単量体以外の単量体との共重合体等が挙げられる。これらの熱可塑性フッ素樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0031】
含フッ素単量体としては、例えば、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンが挙げられる。
含フッ素単量体以外の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ノルボルネン等のオレフィン化合物;シクロヘキシルメチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、エチルアリルエーテル等のアルケニルエーテル化合物;酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ピバリン酸アリル等のアルケニルエステル化合物が挙げられる。
【0032】
熱可塑性フッ素樹脂の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン系共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-プロピレン系共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-エチレン系共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体(テトラフルオロエチレン-パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体(PFA)等)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン系共重合体(ECTFE)等が挙げられる。
【0033】
フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等)、テトラフルオロエチレン―プロピレンゴム(FEPM)等が挙げられる。
【0034】
フッ素樹脂としては、マスターバッチとの相溶性の点から、溶融成形可能な熱可塑性フッ素樹脂、フッ素ゴムが好ましい。
溶融成形可能とは、例えば、射出成型機、押出成形機等の溶融成型機を用いて成形可能であることを示す。
【0035】
フッ素樹脂が溶融成形可能な熱可塑性フッ素樹脂である場合、フッ素樹脂の溶融開始温度は、50℃以上250℃以下が好ましく、60℃以上230℃以下がより好ましく、80℃以上220℃以下がさらに好ましい。溶融開始温度が上記範囲内であれば、マスターバッチとの相溶性がより優れる。
溶融開始温度は、フッ素樹脂を、示差走査熱量計(フローテスターCFT-500D:島津製作所)で5℃/分で昇温し、オリフィス径1mm、荷重30kgにて測定される。
【0036】
フッ素樹脂が溶融成形可能な熱可塑性フッ素樹脂である場合、フッ素樹脂のショア硬度は、ショアD硬度として80以下が好ましく、70以下がより好ましく、65以下がさらに好ましい。ショア硬度が上記上限値以下であれば、ウェアラブル用途(時計のバンド、眼鏡フレーム等)、ケーブル被覆材、チューブ、フィルム、ホース、パイプ、写機用プリンターロール、繊維、シール材、ガスケット、Oリング、ライニング、太陽電池用バックシート、ベルト等の用途で必要な柔軟性が得られ、フッ素樹脂組成物をこれらの用途に適用できる。
ショア硬度の下限は、特に限定されないが、例えば、ショアA硬度として50である。
ショア硬度は、JIS K6253に準拠して測定される。
【0037】
フッ素樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、マスターバッチ及びフッ素樹脂以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、マスターバッチにおける他の成分と同様のものが挙げられる。
【0038】
フッ素樹脂組成物において、マスターバッチの含有量は、フッ素樹脂100質量部に対して0.1~50質量部が好ましく、0.3~30質量部がより好ましく、0.5~10質量部がさらに好ましい。マスターバッチの割合が上記下限値以上であれば、フッ素樹脂組成物に充分な量の微粒子材料を含有させることができ、微粒子材料による性能が発現しやすい。マスターバッチの割合が上記上限値以下であれば、フッ素樹脂組成物に充分な量のフッ素樹脂を含有させることができ、フッ素樹脂による性能が発現しやすい。
【0039】
マスターバッチとフッ素樹脂との合計の含有量は、フッ素樹脂組成物の総質量に対し、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。マスターバッチとフッ素樹脂との合計の含有量の上限は特に限定されず、例えば、フッ素樹脂組成物の総質量に対し、100質量%であってもよく、99質量%であってもよい。
【0040】
フッ素樹脂組成物は、当該フッ素樹脂組成物を、射出成形機を用い、40mm×30mm×2mmのシート状に成形し、得られた成形体3枚の全体を光学顕微鏡(倍率100倍)で観察したときに、長径20μm以上の粗粒の数の合計が10個以下であることが好ましい。粗粒は、フッ素樹脂組成物の溶融混練、成形時に微粒子材料が凝集したもので、微粒子材料のフッ素樹脂への分散性が良いほど、粗粒の長径が小さく、粗粒の数が少なくなる傾向がある。長径20μm以上の粗粒の数の合計が10個以下であれば、フッ素樹脂組成物から得られる成形体において微粒子材料がフッ素樹脂に良好に分散し、成形体の外観が良好となる。
フッ素樹脂組成物は、上記成形体3枚の全体を光学顕微鏡(倍率100倍)で観察したときに、長径20μm以上50μm未満の粗粒の数の合計が10個以下であり、かつ長径50μm以上の粗粒の数の合計が5個以下であることが好ましく、長径20μm以上50μm未満の粗粒の数の合計が10個以下であり、かつ長径50μm以上の粗粒の数の合計が0個であることがより好ましく、長径20μm以上の粗粒の数の合計が0個であることが特に好ましい。
【0041】
<フッ素樹脂組成物の製造方法>
フッ素樹脂組成物は、マスターバッチとフッ素樹脂とを混合する方法により得られる。必要に応じて、マスターバッチ及びフッ素樹脂とともに他の成分を混合してもよい。
フッ素樹脂が溶融成形可能な熱可塑性フッ素樹脂である場合、マスターバッチとフッ素樹脂とを溶融混練してもよい。溶融混練の方法は特に限定されず、従来公知の溶融混練方法を採用することができる。例えば、ヘンシェルミキサー等の高速ミキサーやタンブラー等の混合機を使用して各成分を予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、プラストグラフ、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、加圧ニーダー等の混練装置で溶融混練する方法が挙げられる。押出機等の混練装置を使用して各成分を溶融混練するとともに、混練物をストランド状に押し出した後、ストランド状に押し出された混練物をペレット状やフレーク状等の形態に加工してもよい。溶融混練できれば構わないが、混練能力の高い加圧ニーダー、バンバリーミキサー、二軸押出機が好ましい。溶融混練時の温度は、フッ素樹脂が溶融する温度であればよいが、80~300℃が好ましく、150~280℃がより好ましい。
【0042】
〔成形体〕
本発明の一実施形態に係る成形体は、前記したフッ素樹脂組成物の成形体である。
本実施形態に係る成形体は、前記したフッ素樹脂組成物を成形する方法により製造できる。
成形方法としては、公知の成形方法を用いることができる。例えば、フッ素樹脂が溶融成形可能な熱可塑性フッ素樹脂である場合、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、Tダイ法、カレンダー成形、真空成形、ブロー成形等の溶融成形法を用いることができる。
【0043】
成形体の用途としては、特に限定するものではないが、例えば、ウェアラブル用途(時計のバンド、眼鏡フレーム等)、ケーブル被覆材、チューブ、フィルム、ホース、パイプ、写機用プリンターロール、繊維、シール材、ガスケット、Oリング、ライニング、太陽電池用バックシート、ベルト等が挙げられる。微粒子材料の分散性が優れる為、意匠性の観点から、ウェアラブル用途(時計バンド、眼鏡フレーム)、フィルム用途として用いられることが好ましい。
【実施例0044】
以下、実施例によって本発明を詳細に示す。ただし、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。以下において、「部」は「質量部」を示す。
【0045】
〔測定方法〕
溶融開始温度:示差走査熱量計(フローテスターCFT-500D:島津製作所)でフッ素樹脂を5℃/分で昇温し、オリフィス径1mm、荷重30kgを用いたときの溶融開始温度を求めた。
ショアD硬度:JIS K 6253に基づき、デジタル硬度計(東洋精機製作所製)を用いて測定した。
平均一次粒子径:TEM観察画像から測定した。
重量平均分子量:以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行い、標準ポリスチレン換算の値を求めた。
(GPC測定条件)
カラムLF-804、溶媒としてテトラヒドロフランを用い、流量1ml/minにて測定を行った。
【0046】
〔使用材料〕
フッ素樹脂A:ビニリデンフルオリド(VDF)-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、アルケマ社製「Kynar superflex 2500-20」、溶融開始温度170℃、ショアD硬度58。
フッ素樹脂B:VDF-HFP-テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体、3M社製「THV 221AZ」、溶融開始温度150℃、ショアD硬度41。
フッ素樹脂C:エチレン-TFE共重合体、AGC社製「FLUON+ LH-8000」、溶融開始温度200℃、ショアD硬度63。
【0047】
アクリル樹脂A:メチルメタクリレート-ブチルメタクリレート共重合体、重量平均分子量30,000、メチルメタクリレート比率70質量%。
なお、メチルメタクリレート比率は、全ての単量体単位の合計100質量%に対するメチルメタクリレート単位の割合である(以下、同様)。
アクリル樹脂B:メチルメタクリレート-エチルアクリレート共重合体、重量平均分子量75,000、メチルメタクリレート比率50質量%。
アクリル樹脂C:ポリメチルメタクリレート、重量平均分子量100,000。
【0048】
微粒子材料A:キナクリドン系有機顔料、BASF社製「Cinquasia Red K 4104」、平均一次粒子径300nm。
微粒子材料B:酸化チタン、テイカ社製「MT-100TV」、平均一次粒子径15nm。
可塑剤:日油社製「ニューサイザー510R」。
滑剤:BASF社製「ルーワックスEパウダー」。
【0049】
〔マスターバッチの製造〕
<マスターバッチA>
微粒子材料Aの100部に対して、アクリル樹脂Aを80部、可塑剤を20部配合し、ラボミキサー(東洋精機製作所製、R60H型)にて150℃、3分間の条件で混練してマスターバッチAを得た。
【0050】
<マスターバッチB>
微粒子材料Aの100部に対して、アクリル樹脂Bを78部、可塑剤を20部、滑剤を2部配合し、ラボミキサー(東洋精機製作所製、R60H型)にて150℃、3分間の条件で混練してマスターバッチBを得た。
【0051】
<マスターバッチC>
微粒子材料Aの100部に対して、アクリル樹脂Cの70部可塑剤を30部配合し、ラボミキサー(東洋精機製作所製、R60H型)にて180℃、3分間の条件で混練してマスターバッチCを得た。
【0052】
<マスターバッチD>
微粒子材料Bの100部に対して、アクリル樹脂Aを80部、可塑剤を20部配合し、ラボミキサー(東洋精機製作所製、R60H型)にて150℃、3分間の条件で混練してマスターバッチDを得た。
【0053】
<マスターバッチE>
微粒子材料Aの100部に対して、ポリエチレンワックス(重量平均分子量12,500)を100部配合し、120℃に加熱した3本ロールにて1分間混練してマスターバッチEを得た。
【0054】
<マスターバッチF>
微粒子材料Aの100部に対して、ステアリン酸カルシウムを100部配合し、ポリ袋内で均一に混合してマスターバッチFを得た。
【0055】
〔実施例1~6、比較例1~5〕
表1に示す配合に従って各材料を、ラボミキサー(東洋精機製作所製、R60H型)にて200~250℃で均一に混練し混練物を得た。
【0056】
<プレートアウト性試験>
上記混練物をラボミキサーから取り出す際に、ラボミキサーのブレード及び槽内の様子を目視で観察し、金属表面に着色汚染が確認されない場合を〇、確認される場合を×とした。結果を表1に示す。
【0057】
<金型汚染性試験>
上記プレートアウト性試験で取り出した混練物を用いて、射出成型機(Thermo Fisher Scientific社製「HAAKE MiniJet Pro」)にて以下の条件で、10個の射出成型品(サイズ:40mm×30mm×2mm)を連続的に成形した。
フッ素樹脂がフッ素樹脂Aの場合:シリンダー温度240℃、金型温度70℃。
フッ素樹脂がフッ素樹脂Bの場合:シリンダー温度270℃、金型温度50℃。
フッ素樹脂がフッ素樹脂Cの場合:シリンダー温度270℃、金型温度50℃。
連続射出成型後の金型表面を観察、着色・付着物が確認されない場合は〇、着色・付着物が確認される場合は×とした。結果を表1に示す。
【0058】
<表面状態>
上記金型汚染性試験で作製した射出成型品から3枚の射出成型品を選定し、光学顕微鏡(オリンパス社製「BX53M」、観察倍率:100倍)を用いて、選定した射出成型品の表面(40mm×30mm)全体を観察し、長径20μm以上の粗粒(微粒子材料の凝集体)の有無を評価した。また、粗粒が確認された場合には、粗粒の長径、個数を測定した。3枚の射出成型品の合計として長径20μm以上の粗粒が確認されない場合を◎、長径20μm以上50μm未満の粗粒が10個以下確認され、かつ長径50μm以上の粗粒が確認されない場合を〇、長径20μm以上50μm未満の粗粒が11個以上確認され、かつ長径50μm以上の粗粒が4個以下確認される場合を△、長径50μm以上の粗粒が5個以上確認された場合を×とした。尚、10mm×10mmの観察範囲で粗粒が30個以上確認された場合は、観察範囲は10mm×10mmに限定した。結果を表1に示す。
【0059】
【0060】
実施例1~3及び比較例1~2を対比すると、比較例2は、表面状態、金型汚染性、プレートアウト性のすべての評価が×であった。
比較例1は、長径20μm以上50μm未満の粗粒は比較例2より減少したが、長径20μm以上50μm未満の粗粒が11個確認され、かつ長径50μm以上の粗粒が1つ確認された。また、金型汚染性、プレートアウト性は比較例2同様に×であった。
一方、実施例1~3は、表面状態は◎か〇、金型汚染性、プレートアウト性の評価が〇であった。
実施例4及び比較例3の対比、実施例5及び比較例4の対比においても、実施例1及び比較例1と同様と同様の傾向が確認された。
上記結果から、マスターバッチFでは、有機顔料の分散性が不十分であり、プレートアウトや金型汚染を発生させてしまい、フッ素樹脂系には適さないこと、マスターバッチEでは、分散性は改善するが、プレートアウトや金型汚染を発生させてしまい、フッ素樹脂系には適さないことがわかる。これに対し、マスターバッチA~Cによれば、有機顔料のフッ素樹脂への分散性を向上させ、更にプレートアウトや金型汚染を抑制できることがわかる。
【0061】
実施例6及び比較例5を対比すると、比較例5は、金型汚染性、プレートアウト性の評価は○であったが、微粒子材料Bの分散性が悪く、10mm×10mmの範囲を観察したところ、長径20μm以上50μm未満の粗粒及び長径50μm以上の粗粒がそれぞれ30個以上確認され、表面状態の評価は×であった。一方、実施例6は、表面状態、金型汚染性、プレートアウト性のすべての評価が〇であった。
上記結果から、マスターバッチA~Dによれば、有機顔料のみならず、一次粒子径が15nmと小さい無機顔料についてもフッ素樹脂への分散性を向上させ、外観状態を改善できることがわかる。
前記フッ素樹脂組成物を、射出成形機を用い、40mm×30mm×2mmのシート状に成形し、得られた成形体3枚の全体を光学顕微鏡(倍率100倍)で観察したときに、長径20μm以上の粗粒の数の合計が10個以下である、請求項12~14のいずれか一項に記載のフッ素樹脂組成物。