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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015785
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B01D33/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118870
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】310011011
【氏名又は名称】クリアーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161285
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 廣義
(72)【発明者】
【氏名】中村 考宏
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA01
4D116BB13
4D116BC03
4D116DD05
4D116EE02
4D116EE08
4D116EE09
4D116EE11
4D116FF11B
4D116GG27
4D116KK06
4D116QA24A
4D116QA24D
4D116QA24F
4D116QA36C
4D116QA36D
4D116QA36F
4D116QA60B
4D116QB31
4D116RR01
4D116RR03
4D116RR16
4D116RR26
4D116VV09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な構造で濾過作業が行えると同時に、フィルタに付着した固形物等を落としながら濾過作業を継続することができ、逆洗が不要であるので耐久性を向上することができる、フィルタ装置を提供する。
【解決手段】フィルタ装置1は、ポンプ33の吸込み側に連接されたフィルタ部20が枠体10の内側に揺動部材16を介して保持されており、フィルタ部20が揺動することで、濁水槽6内の濁水がかき混ぜられるため、フィルタ部20が目詰まりし難くなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプの吸込み側に連接されたフィルタ部が枠体の内側に揺動部材を介して保持されているフィルタ装置。
【請求項2】
前記枠体は前記フィルタ部の周囲に該フィルタ部から所定の間隔を空けて設けられた骨組み形状で形成されている請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記フィルタ部は、フィルタシートを閉じられた袋状にし、該閉じられた袋状の略中央部に孔を設け、該孔と連通して前記閉じられた袋状の内部に通水路を確保する通水部材を内包させたフィルタユニットを複数備え、該複数のフィルタユニットの相互の間にスペーサーを設けて、前記フィルタユニットの孔の通水路に連通する管でフィルタ部が形成されている請求項1または請求項2記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記ポンプの駆動に連動して前記フィルタ部の揺動を能動的に行う構造が設けられている請求項1~3いずれかの一項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記フィルタ装置には、濾過水を一時的に貯める貯水部が付属しており、該貯水部が前記フィルタ装置の収納容器を兼ねている請求項1~4いずれかの一項に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木作業現場、農作業現場、建築現場等において発生する濁水(懸濁した水)を濾過して、濾過された水を排水する、又は再利用できるフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土木作業、農作業、建築現場等では、地面や地面を覆う人工物を相手に作業を行う際に水を使用する場合がある。例えば、水を加えながら作業をする場合もあるが、作業後の土木作業機械、建築機械、農作業機械等を、水道水や河川水で洗って、土砂を落とす必要がある。土砂で汚れた排水(懸濁した排水)について、そのまま下水や河川に流すことは環境を汚染するため好ましいものではない。
【0003】
土木作業現場、農作業現場、建築現場等で懸濁した排水を処理する場合は、大規模な排水処理を行う現場だけとは限らない。そして、小規模や中規模の土木作業現場、農作業現場、建築現場においては、懸濁した排水は常時処理されるのではなく、一時的に汚水桝や貯水槽に貯めて処理するので、処理を行う期間は短期間で、不定期に実施されることになる。
【0004】
また、土木作業現場、農作業現場、建築現場等の夫々の作業現場で発生した懸濁した排水を一か所に集めることは手間の係ることなので、夫々の作業現場に懸濁した排水を貯める汚水槽や貯水槽を置いた方が良い場合がある。そのため、複数の汚水槽や貯水槽を移動して、懸濁した排水を処理した方が便利する場合は、現場が移動する場合がある。
【0005】
さらに、濁水をフィルタで濾過することを繰り返すと、フィルタの目詰まりが発生し、フィルタに目詰まりした固形物を除去しなければならないという問題があった。
【0006】
これらの背景技術から、特許文献1の発明の名称「フィルタ及びそれを用いた懸濁排水処理装置」や、特許文献2の考案の名称「携帯型濾過器」が提案されている。特許文献1の発明と特許文献2の考案は、主に、土木作業で発生する濁水を処理するものであった。
【0007】
なお、フィルタの目詰まりを解消する方法としては、特許文献1の発明については、フィルタを回転させてブラシで掻き落とす方法であり、特許文献2の発明については、流路を逆転させてフィルタを洗浄する、所謂逆洗方式を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-279474号公報
【特許文献2】実用新案登録第3175524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の特許文献1の発明については、フィルタを収めた濾過槽内でフィルタを回転させて、ブラシで目詰まりを解消する方法であるので、装置の規模が大きくなり、装置を簡単には移動することができないという問題があった。
【0010】
特許文献2の考案については、濾過能力が小さいという問題があった。また、中空糸膜フィルタのため、濾過能力が落ちた場合のフィルタの洗浄は逆洗しか方法がなく、逆洗を繰り返せばフィルタの破損に繋がるため、中空糸膜フィルタの耐久性に問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0012】
第1発明のフィルタ装置は、ポンプの吸込み側に連接されたフィルタ部が枠体の内側に揺動部材を介して保持されている。
第2発明のフィルタ装置は、請求項1記載の発明において、前記枠体は前記フィルタ部の周囲に該フィルタ部から所定の間隔を空けて設けられた骨組み形状で形成されている。
第3発明のフィルタ装置は、請求項1または請求項2記載の発明において、前記フィルタ部は、フィルタシートを閉じられた袋状にし、該閉じられた袋状の略中央部に孔を設け、該孔と連通して前記閉じられた袋状の内部に通水路を確保する通水部材を内包させたフィルタユニットを複数備え、該複数のフィルタユニットの相互の間にスペーサーを設けて、前記フィルタユニットの孔の通水路に連通する管でフィルタ部が形成されている。
第4発明のフィルタ装置は、請求項1~3いずれかの一項に記載の発明において、前記ポンプの駆動に連動して前記フィルタ部の揺動を能動的に行う構造が設けられている。
第5発明のフィルタ装置は、請求項1~4いずれかの一項に記載の発明において、前記フィルタ装置には、濾過水を一時的に貯める貯水部が付属しており、該貯水部が前記フィルタ装置の収納容器を兼ねている。
【発明の効果】
【0013】
以上のような、技術的手段を有することにより、以下の効果を有する。
【0014】
特許文献1の発明の名称「フィルタ及びそれを用いた懸濁排水処理装置」とは違い、簡単な構造で濾過作業が行えると同時に、フィルタ部を揺動させることができ、適宜フィルタに付着した固形物等を落としながら濾過作業を継続することができる。
【0015】
特許文献2の発明の名称「携帯型濾過器」とは違い、フィルタを揺動させることができるので逆洗が不要であるので耐久性を向上することができると同時に、適宜フィルタに付着した固形物等を落としながら濾過作業を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る第1の実施形態のフィルタ装置1の説明図である。
図2】本発明に係る第1の実施形態のフィルタ装置1の説明図である。
図3】本発明に係る第1の実施形態の枠体とフィルタ部の説明図である。
図4】本発明に係る第1の実施形態のフィルタユニットの説明図である。
図5】本発明に係る第1の実施形態のフィルタ部の説明図である。
図6】本発明に係る第1の実施形態のフィルタ装置の要部説明図である。
図7】本発明に係る第2の実施形態のフィルタ装置の要部説明図である。
図8】本発明に係る第3の実施形態のフィルタ装置を要部説明図である。
図9】本発明に係る第4の実施形態のフィルタ装置の要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るフィルタ装置の実施の形態について図1乃至図9に基づき説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について、図1乃至図6に基づき説明する。まず、図1の概略構成図を用いて本発明のフィルタ装置1の構成の概略を説明する。
【0019】
図1において、フィルタ装置1は、濁水槽6に貯められた濁水に沈められ(水没させ)、枠体10の内部に揺動部材16で取り付けられたフィルタ部20と、ポンプ部30、貯水部40、洗浄ノズル50で構成されている。なお、本実施形態において、濁水槽6はフィルタ装置1に含まれてない。フィルタ装置1が使用される現場では、既に濁水が貯められているので、その濁水が貯められた濁水槽6を使用するためである。
【0020】
フィルタ部20、ポンプ部30、貯水部40及び洗浄ノズル50を組み合わせて使用するために、フィルタ部20、ポンプ部30、貯水部40及び洗浄ノズル50には、夫々の端部には、直接又は軟質管31(ビニールやゴム等のホース)を介して流体継手(カプラ)32が取り付けられており、直接又は両端に流体継手32が取り付けられた軟質管31で接続できる構成となっている。
【0021】
流体継手32を設けていることにより、使用する態様に合わせて組み合わせを変えることができ、取り外せることもできるので、収納、運搬、補修、交換が容易にできる。流体継手は、ソケット(メス)32sとこれに結合するプラグ(オス)32pで構成されている。図中において流体継手32は、単独場合はソケット32s又はプラグ32pとして符号を付し、結合した状態の流体継手32として符号を付して説明する。
【0022】
フィルタ部20が取り付けられた枠体10を濁水槽6に入れる場合には、そのまま、濁水槽に入れても良い。また、濁水槽の下部に貯まった固形物にフィルタ部20が埋まるおそれがある場合や、フィルタ部20が取り付けられた枠体10を濁水槽から回収を容易にしたい場合については、枠体の上部にロープや紐等の吊り具11を付けて濁水槽に投入する。そして、濁水槽の下部に埋まらないようにする場合には、吊り具11を濁水槽に渡した横木7に括り付ける。なお、横木7については、濁水槽6と同様に現場において適切なものを使用するので、フィルタ装置1には含まれてない。
【0023】
フィルタ装置1で濁水槽6の濁水を濾過する場合の水の流れについて説明する。濁水槽6にフィルタ部20を水没させる場合には、フィルタ部20はフィルタ部20に連接された軟質管31aとその端部のソケット32sでポンプ部30の吸込み側であるプラグ32pに連接されている。ポンプ部30の吐出側のソケット32sは、軟質管31bの端部のプラグ32pで連接されている。軟質管31bの逆の端部のソケット32sは、貯水部40の流入口41のプラグ32pに連接されている。
【0024】
ポンプ部30の電源プラグを外部の電源に差し込み、ポンプ部30の制御基板を介したスイッチがいれられるとポンプ33が駆動し、濁水槽6の濁水はフィルタ部20に吸い込まれ。濾過された水(濾過水)が、軟質管31aで、ポンプ33に吸い込まれる。ポンプ33に吸い込まれた濾過水は、軟質管31bで、貯水部40に貯められる。なお、濁水槽6の固形物を凝集させるために、ポンプ33を駆動させる前に予め凝集剤を所定量、濁水槽6に投入しても良い。また、ポンプ33が外部電源で直接使用できる仕様である場合(AC100V電源仕様)や、後述する能動的に揺動させない場合には、制御基板やスイッチを省略して実施できる。
【0025】
貯水部40に貯められた濾過水は、所定以上貯まれば、貯水部40の排出口(溢水口)42のソケット32sと、排出口42のソケット32sに連接させた端部にプラグ32pが取り付けられた軟質管31cで他の水槽や側溝等に排出することができる。
【0026】
貯水部40は、濾過された水を一時的貯水するために設けられている。一時的に貯水することで、濾過水の状況を確認することができる。また、貯められた濾過水を再利用することができるように、後述する濾過水の取り出し口が設けられている。なお、濾過水の確認や再利用が不要な場合は、貯水部40を用いずに、直接に川や側溝等に排出するようにしても良い。貯水部40については、後述するフィルタ装置1を構成する枠体10の内部に揺動部材16で保持されたフィルタ部20と、ポンプ部30、洗浄ノズル50及びこれらを連接する軟質管31a、31b、31c等の収納容器を兼ねている。
【0027】
貯水部40に貯められた濾過水を利用する場合を説明する。貯水部40の止水栓を付けた濾過水口43には、ソケット32sが取り付けられている。ポンプ部30の吸込み側のプラグ32pと軟質管31aのソケット32sを外す。同時に、貯水部40の流入口41に連接する軟質管31bのソケット32sを外し、貯水部40の排出口42に連接する軟質管31cを外す。
【0028】
次に、濾過水口43のソケット32sと、ポンプ部30の吸込み側のプラグ32pを軟質管31cで連接し(図1において破線で表示)、洗浄ノズル50に取り付けられた軟質管を介して取り付けられているプラグ32pを、ポンプ部30の吐出側に連接する軟質管31bのソケット32s(貯水部40の流入口41から外したソケット32s)に連接させる(図1において破線で表示)。その後、濾過水口43に付けた止水栓を開き、ポンプ部30を駆動させると、洗浄ノズル50のノズル先端からポンプ部30で加圧された濾過水を、利用することができる。なお、両端にソケット32sとプラグ32pが取り付けられている軟質管31cは、濾過水を利用する場合には、濾過水が貯水部40に流入しないので、排出口42から外して洗浄ノズル50用として使用することができる。
【0029】
洗浄ノズル50は、貯水部40に貯められた濾過水を利用できるようにフィルタ装置1に付属されている。濾過水を利用する方法としては、フィルタ部20のフィルタユニット21に付着した固形物を落として目詰まりを解消するためや、後述する濾過水の水圧を利用して揺動を能動的に行う場合に用いられる。また、洗浄ノズル50を利用して、土木機械や農業機械を洗浄しても良い。
【0030】
洗浄ノズル50には、軟質管を介してプラグ32pが取り付けられているので、軟質管を延長してポンプ部30のポンプ圧を利用して、濾過水を噴出できるようになっている。洗浄ノズル50については、フィルタユニット21の間にさしこむことが出来る形状、スペーサー27の厚みより薄い筒で、フィルタユニット21の奥まで差し込まれる長さ、本実施形態では150mm以上の長さにしている。なお、なお、ここで、ノズルとは、英語の「nozzle」が意味する「流体の流れる方向定めるために使用される部品」を意味する語として使用している。
【0031】
貯水部40には、濾過水の流入口41と、排出口42と、止水栓を付けた濾過水口43が設けられている。貯水部40に貯められた濾過水は、所定以上貯まれば、貯水部40のやや上部に設けた流入口41から貯水部40に流入する。貯水部40に濾過水が貯まれば、流入口41よりも若干下側に設けた排出口42から、濾過水が溢れないように貯水部40の外部に排出される。また、貯水部40の底部近傍には、止水栓を付けた濾過水口43があり、貯水部40に貯まった濾過水を利用することができる。
【0032】
図2は、フィルタ装置1を貯水部40に収納させる場合を説明する説明図である。図2(a)は、貯水部40以外のフィルタ装置1が、貯水部40に収納された状態の外観を図示したものである。貯水部40は収納容器を兼ねているので、貯水部40の開口部を塞ぐ蓋44が取り付けられている。また、図2(b)は、図2(a)の状態から、蓋44を開いて貯水部40の中に収納された状態を図示した図である。なお、貯水部40については、フィルタ装置1を収納でき、所定量の濾過水を貯めることができる大きさとして、内容量が100~200リットル、好ましくは120~160リットルの容器を使用している。そして、例えば150リットルの容器の場合は、幅約70cm、奥行約40cm、高さ約60cm、程度の大きさになり、運搬や保管も簡単に行える。
【0033】
図2(a)と(b)に収納されたものを外部に出した状態を図2(c)~(e)に示す。
図2(c)は、ポンプ部30を図示している。図2(d)は、洗浄ノズル50と軟質管31b、31cを図示している。図2(e)は、枠体10と枠体10の内部に保持されたフィルタ部20と、軟質管31aや吊り具11を図示している。
【0034】
図3は、図2(e)を拡大した図であり、図3を用いて、枠体10及び枠体10に保持されているフィルタ部20についてさらに説明する。枠体10はフィルタ部20が直接固い濁水槽や地面等に触れないようにして保護する目的で設けられている。そのため、枠体10は、フィルタ部20の形状に合わせて、フィルタ部20から所定の間隔を設けた状態でフィルタ部20を覆う様にして設けられている。
【0035】
枠体10は、直径2~7mmのステンレス丸棒や防錆処理をした金属丸棒を溶接して骨組み形状に形成されている。保護する目的であるので、その骨組みを細かい格子状、例えば格子の目を10~50mmに形成させても良いが、本実施形態では、重量を軽くする方が、取り回しが容易となるので、フィルタ部20が固い平面に対して保護できる程度、例えば直方体の面と面の境界線(稜線、角)を形成する部分の枠組みと、揺動部材16を取り付けるため等の必要最小限の骨組みの形状としている。なお、枠体10を吊り具11に容易に取り付けられるように、上面の角4か所に輪金具12が枠体10に溶接されている。
【0036】
枠体10内部には、揺動部材16を介してフィルタ部20が保持されている。なお、フィルタ部20のフィルタユニット21や取付板28等については、後述する。揺動部材16は、フィルタ部20を骨組み状の枠体10に触れない範囲で、フィルタ部20が枠体10の内側で動ける状態で保持している。なお、フィルタ部20骨組み状の枠体10に触れない範囲とは、後述する揺動部材16の材質やその取り付け方法、または枠体10の大きさや枠体10の形状によっても異なるが、約5~50mmの隙間が生じるようにしている。
【0037】
揺動部材16の例としては、所定の長さで変形自在の合成樹脂や天然繊維の紐や、金属製であれば、鎖やバネ等の両端を枠体10と、フィルタ部20に固定する方法である。本実施形態では、4本の合成樹脂の紐で吊り下げているが、2本以上であれば良い。また、弾性材料の場合には、吊り下げるのではなく、上下や左右から保持する方法でも良い。
【0038】
フィルタ部20は、図3のように20個のフィルタユニット21の集合体である。このフィルタユニット21の集合体の詳細について、図4図5のフィルタ部20の分解図で説明する。フィルタ部20は20個のフィルタユニット21を管26で連通し、フィルタユニット21相互の間隔を19個のスペーサー27をフィルタユニット21の間に入れることにより構成されている。なお、図5については、フィルタ部20の一部、フィルタユニット21とスペーサー27を各3個と管26の一部を図示した説明図である。
【0039】
ここで、フィルタとは、英語の「filter」が意味する「濾過」を意味する語として使用している。フィルタ部20とは、本願発明のフィルタ装置1における濾過に関する部分だけを区別して説明するための名称である。また、フィルタユニット21のユニットとは、英語の「unit」が意味する「一つの単位」を意味する語として使用し、フィルタユニット21は、フィルタ部20における濾過機能が発揮できる部分の最小単位を区別して説明するための名称である。
【0040】
図4を用いてフィルタユニット21の構成について説明する。フィルタユニット21は、2枚のフィルタシート22と、2枚の輪板23と、2枚の網板24、溝板25から構成されている。フィルタシート22、網板24と溝板25は、何れも略方形で、中央に後述する管26を通すための孔が開けられている。輪板23は管26の直径よりも若干大きな径で、中央に管26を通す孔が開けられている。フィルタユニット21は、の大きさについては、本実施形態においては、300mm×300mmの略方形としているが、水没させる濁水槽の大きさによって、変えることができる。また、略方形に限らず、円形や六角形等でも良い。
【0041】
フィルタシート22とは、繊維を織る又は接着や融着して、柔軟性を有する平板(英語の「sheet」)にし、濾過機能を有するようにさせたものである。濾過機能については、濁水の状態や濾過後の水の状態等の使用目的に合わせて網目間隔を設定する。また、フィルタシート22については、前述の使用目的により、違う網目間隔のものを2層や3層にしても良いし、耐久性の向上や、目詰まりをし難くさせるためにフィルタシート22の表面に表面処理をしても良い。
【0042】
2枚の輪板23と、2枚の網板24、溝板25については、2枚のフィルタシート22の間に空間を確保して、2枚のフィルタシート22で濁水が濾過された後の通水路を確保するためのものである。つまり、2枚の網板24と溝板25がフィルタユニット21の通水部材となる。2枚のフィルタシート22についての濾過能力は、フィルタシート22の表面積が有効に利用できることにより向上させることができるので、2枚のフィルタシート22の間に内部空間に濾過された濁水が有効に流れるように、2枚の輪板23と、2枚の網板24、溝板25の形状としている。
【0043】
本実施形態において、溝板25は、2枚のフィルタシート22の周囲を縫着、接着や溶着して、袋状にした場合の内部空間に入る大きさで、所定の厚み(例えば1~2mm)の合成樹脂の板の略中央に孔を明け、前記の孔から8方向に放射状の溝を明けている。これにより、溝板25で、フィルタユニット21の内部に水路を確保すると同時に、フィルタユニット21の剛性を向上させている。
【0044】
2枚の網板24については、所定の線径(例えば0.5~1mm)の合成樹脂を網状に形成して、溝板25とほぼ同じ大きさにしたものである。網状にしたことで、全体的に小さい屈曲(波状の皺)が全体生じている。これにより、2枚の網板24で、溝板25の両面に接して設けること、さらにフィルタユニット21の内部に水路を確保すると同時に、フィルタユニット21の剛性を向上させている。
【0045】
輪板23は、縫着、接着や溶着ができる合成樹脂である。輪板23については、濾過機能があってもなくても良い。輪板23の大きさは、2枚の輪板23と、2枚の網板24、溝板25に開けられている孔の大きさよりも若干大きい程度、例えば、5~10mm程度大きくしている。2枚の輪板23は、フィルタユニット21の孔を補強する目的と、フィルタユニット21の内部の管26近傍の空間を広げるために設けられている。フィルタユニット21の内部において、管26の近傍が濾過後の水の上流となるためである。
【0046】
2枚の輪板23については、2枚の網板24の外側と、2枚のフィルタシート22内側の間に設けられており、フィルタユニット21の略中央部において、2枚のフィルタシート22、2枚の網板24と溝板25と共に、縫着、接着や溶着されている。
本出願書類において接合する方法として、「接着、溶着」と説明するものは、素材を変性劣化がし難い、熱溶着、超音波溶着、接着剤、溶射、ホットメルト接着シート等のことである。
【0047】
前述のように組み立てられた20個のフィルタユニット21の略中央の孔には、管26が通されている。管26の側面には20個のフィルタユニット21の2枚の輪板23と、2枚の網板24、溝板25でフィルタユニット21に設けられた2枚のフィルタシート22の隙間に対応する孔が複数個開けられている。管26のフィルタユニット21に対応する孔の間隔は、20個のフィルタユニット21が20個のフィルタユニット21の夫々の間に設けた19個のスペーサーに対応する様に開けられている。なお、本実施形態においては、20個のフィルタユニット21の間に19個のスペーサー27を入れて組み立てた時のズレが発生することを考慮して、管26の表面に孔と連通した溝を設けている。(図5参照)なお、フィルタユニット21の個数については、一例であり、個数を限定するものではない。
【0048】
スペーサー27は、軟質で弾性のある合成樹脂や天然ゴムを輪板23とほぼ同じ形状にし、フィルタユニット21同士の間に隙間を設けるための厚みを備えている。スペーサー27を軟質で弾性のある合成樹脂や天然ゴムとしているのは、フィルタユニット21以外では濁水が吸い込まれないようにするために、水密性とフィルタユニット21への密着性が必要だからである。
【0049】
また、スペーサー27の厚みは、フィルタユニット21同士が接近しすぎて濾過有効面積が減少することや、フィルタユニット21の間で、固形物が目詰まりし易くなり濾過性能が低下を抑えるための隙間である。具体的には、フィルタ部20の長さが長くなり過ぎないことを考慮し、スペーサー27の厚みを10~20mm、本実施形態では、14mmとしている。なお、ここでスペーサーとは、英語の「spacer」が意味する「間隔をあけて2部品を結合するときに、間にはさむ小片又は薄片」を意味する語として使用している。
【0050】
図6は、軟質管31a(図6においては図示せず)が取り付けられている側の枠体10内部に、揺動部材16を介してフィルタ部20が取り付けられている状態を図示している。フィルタ部20の管26の図示してない側の端は、閉止栓(メクラプラグ)が取り付けられ、管26の一方の端は閉止されている。図6に図示した側の端には、軟質管31aを取り付けるホースニップル(ホース用タケノコ)29が取り付けられている。なお、本実施形態では、軟質管31aの取り出し方向を考慮して、ティ継手(チーズ)や曲げ継手(エルボ)で管26に対して垂直方向に曲がって取り出せるようにしている。
【0051】
図6・フィルタ部20の取付板)
管26の両端に設けられた閉止栓とホースニップル29の近傍には、管26から鍔状に広がった取付板28が設けられている。取付板28には、揺動部材16を取り付けるための2個の取付孔が設けられているので、取付板28の形状は略三角形となっている。本実施形態では、4個の揺動部材16で、フィルタ部20を枠体10に保持させているので、閉止栓側の取付板28と、ホースニップル29側の取付板28夫々に2個ずつ取付孔が設けられている。また、枠体10には、揺動部材16を取り付けるための梁17が設けられている。
【0052】
以上の構成により、フィルタ装置1に揺動部材16が設けられていることで、フィルタ部20は枠体10には固定して取り付けられてない。そのため、ポンプ部30が駆動した場合に、ポンプ部30と連通する軟質管31aの内部の水の流れによる振動が増幅されて、フィルタ部20に伝わり、フィルタ部20が枠体10の内部で揺動する。フィルタ部20が揺動することで、濁水槽6内の濁水がかき混ぜられ、フィルタ部20へ目詰まりがし難くなる。
【0053】
さらに、前述の洗浄ノズル50から貯水部40に貯められた濾過水を吐出させる状態にした場合に、洗浄ノズル50から吐出する濾過水で、フィルタ部20の20個のフィルタユニット21の洗浄を行うと共に、フィルタ部20の適当な個所、例えばフィルタ部20の取付板28に断続的に濾過水を当てればフィルタ部20を能動的に揺動させることができ、フィルタ部20に付着した固形物を揺り落とすことができる。なお、図6においては、取付板28に当てやすくするためのガイド筒18が枠体10に取り付けられており、ガイド筒18に洗浄ノズル50を差し込むと、洗浄ノズル50から吐出する濾過水は、取付板28に誘導され、フィルタ部20の揺動が安定して行えることになる。
【0054】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のフィルタ装置2について、図7に基づき説明する。フィルタ装置2の概要については、第1の実施形態と同様であり、同一の符号を附して説明を省略する。
フィルタ装置2とフィルタ装置1の違いは、フィルタ装置2の枠体10には、揺動部材16で保持されているフィルタ部20を能動的に揺動させるためのシリンダー駆動部60、が設けられていることである。シリンダー駆動部60には、洗浄ノズル50を差し込むための筒61が設けられており、シリンダー駆動部60に濾過水で加圧することができる。なお、筒61でなく、軟質管を取り付けられるようにしても良い。
【0055】
シリンダー駆動部60はポンプ部30の吐出側の水圧でピストン62を押し、水圧が加わらない場合には、バネ63でピストン62が戻る構造となっている。これにより、ピストン62に繋がるロッド64で、フィルタ部20を能動的に揺動させている。さらに積極的に揺動させる場合には、ポンプ部30の発停により駆動部60を動かしているので、ポンプ部30にポンプ自体又はポンプの吐出側に設けた電磁バルブの発停を行う、点滅回路(フリッカー回路)を設けても良い。
【0056】
なお、ポンプ部30の吐出側に水路切換え弁(三方弁)を設けて、シリンダーに往復運動をさせてフィルタ部20を揺動させても良い。また、シリンダー駆動部60については、フィルタ部20の閉止栓側に設けても良いし、ホースニップル29側と閉止栓側の両方に設けても良い。さらに、シリンダー駆動部60揺動方向をフィルタ部20に対して垂直方向だけでなく、管26の内部で濾過水が流れる方向や、斜め方向でも良い。
【0057】
(第3の実施形態)
第3の実施形態のフィルタ装置3について、図8に基づき説明する。フィルタ装置3の概要については、第1の実施形態と同様であり、同一の符号を附して説明を省略する。
フィルタ装置3とフィルタ装置1の違いは、フィルタ装置3のフィルタ部20のホースニップル29側の管26とホースニップル29の間には、ジャバラ65が設けられており、ジャバラ65で、揺動部材16で保持されているフィルタ部20を能動的に揺動させている。
【0058】
ジャバラ65は、ジャバラ65の内部が負圧になると縮み、常圧に戻れば、元の長さに戻る。ホースニップル29と管26にジャバラ65は、ホースニップル29から軟質管31aでポンプ部30の吸込み側に連接していることで、ポンプ部30が駆動すると、ジャバラ65の内部は負圧になり、ジャバラ65は縮み、ポンプ部30が停止すればジャバラ65は元の長さに戻り、フィルタ部20を揺動させることができる。ポンプ部30が駆動する場合には、吸込み側の負圧は変化するので、フィルタ部20は揺動する。さらに積極的に揺動させる場合には、第2の実施形態と同様に電磁バルブや点滅回路を設けてポンプ部30の駆動を発停させる。なお、ジャバラ65については、フィルタ部20の管26の閉止栓側に設けても良い。
【0059】
(第4の実施形態)
第4の実施形態のフィルタ装置4について、図9に基づき説明する。フィルタ装置2の概要については、第1の実施形態と同様であり、同一の符号を附して説明を省略する。
フィルタ装置4とフィルタ装置1の違いは、フィルタ装置2のフィルタ部20のホースニップル29側の管26を軸とした水車66が設けられており、揺動部材16で保持されているフィルタ部20の管26の周囲を水車66が回転し、揺動部材16で保持されているフィルタ部20を能動的に揺動させている。
【0060】
水車66は、2枚の円盤の間に6~20個に区切られた水受け部が設けられている。また、水車66には、水車66が回転すると振動するように、重心が偏心する位置に錘67が取り付けられている。水車66を洗浄ノズル50で、回転させると水車66は振動を発生して、それが揺動部材16で保持されているフィルタ部20に伝わることで、フィルタ部20を揺動させることができる。洗浄ノズル50を水車66に対しては回転する位置に適宜保持すれば良いが、本実施形態のように、枠体10の適当な個所にガイド筒18を設けて、水車66が簡単かつ安定して回転できるようにしても良い。また、水車66については、フィルタ部20の閉止栓側に設けても良いし、ホースニップル29側と閉止栓側の両方に設けても良い。
【0061】
以上、本発明について、第1~第4の実施形態に基づき説明してきたが、本発明は何らこれらの実施形態の構成に限定するものではない。例えば、第1~第4の実施形態の組み合わせについては適宜組合せを変えて実施することも可能である。
【0062】
さらには、この発明は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本件出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
[1]付記1は、ポンプの吸込み側に連接されたフィルタ部が枠体の内側に揺動部材を介して保持されているフィルタ装置である。
[2]付記2は、前記枠体は前記フィルタ部の周囲に該フィルタ部から所定の間隔を空けて設けられた骨組み形状で形成されている請求項1記載のフィルタ装置である。
[3]付記3は、前記フィルタ部は、フィルタシートを閉じられた袋状にし、該閉じられた袋状の略中央部に孔を設け、該孔と連通して前記閉じられた袋状の内部に通水路を確保する通水部材を内包させたフィルタユニットを複数備え、該複数のフィルタユニットの相互の間にスペーサーを設けて、前記フィルタユニットの孔の通水路に連通する管でフィルタ部が形成されている請求項1または請求項2記載のフィルタ装置である。
[4]付記4は、前記ポンプの駆動に連動して前記フィルタ部の揺動を能動的に行う構造が設けられている請求項1~3いずれかの一項に記載のフィルタ装置である。
[5]付記5は、前記フィルタ装置には、濾過水を一時的に貯める貯水部が付属しており、該貯水部が前記フィルタ装置の収納容器を兼ねている請求項1~4いずれかの一項に記載のフィルタ装置である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
土木作業、農作業、建築現場等において濁水が発生することは避けられない。よって、環境を汚染しないように、濁水を濾過して、排水又は再利用できるフィルタ装置は。産業上の利用性がある。
【符号の説明】
【0064】
1、2、3、4:フィルタ装置
6:濁水槽
7:横木
10:枠体
11:吊り具
12:輪金具
16:揺動部材
17:梁
18:ガイド筒
20:フィルタ部
21:フィルタユニット
22:フィルタシート
23:輪板
24:網板
25:溝板
26:管
27:スペーサー
28:取付板
29:ホースニップル
30:ポンプ部
31、31a、31b、31c:軟質管
32:流体継手
32s:ソケット
32p:プラグ
33:ポンプ
40:貯水部
41:流入口
42:排出口
43:濾過水口
44:蓋
50:洗浄ノズル
51:枠体
52:孔
60:シリンダー駆動部
61:筒
62:ピストン
63:バネ
64:ロッド
65:ジャバラ
66:水車
67:錘
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9