(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157851
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】物品の被覆方法、物品の被覆のための使用、及び重合性組成物
(51)【国際特許分類】
B05D 7/24 20060101AFI20221006BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20221006BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B05D7/24 301E
B05D7/24 302Z
C08F2/00 C
C09D4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062314
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慎
【テーマコード(参考)】
4D075
4J011
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075BB16X
4D075BB41Z
4D075BB48Z
4D075CA45
4D075CA47
4D075CA48
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4D075EC07
4D075EC30
4D075EC35
4J011CA01
4J011CA02
4J011CA04
4J011CA05
4J011CC04
4J038FA111
4J038PA17
(57)【要約】
【課題】抗菌性、抗ウイルス性の長期持続性が得られる物品の被覆方法を提供すること。
【解決手段】第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液が分散しており、前記第1の重合性単量体は、液体であり、前記第2の重合性単量体は、固体である、重合性組成物を、物品に適用する工程、及び前記物品に適用された前記重合性組成物を重合させる工程、を含む、物品の被覆方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液が分散しており、
前記第1の重合性単量体は、液体であり、
前記第2の重合性単量体は、固体である、重合性組成物を、
物品に適用する工程、及び
前記物品に適用された前記重合性組成物を重合させる工程、を含む、
物品の被覆方法。
【請求項2】
前記重合させる工程は、前記重合性組成物が適用された前記物品に光照射する工程、を含む、
請求項1に記載の物品の被覆方法。
【請求項3】
前記適用は、噴霧、噴射、塗布の何れかである、
請求項1又は2に記載の物品の被覆方法。
【請求項4】
前記第2の重合性単量体は、抗菌性及び抗ウイルス性の少なくとも一方を示す官能基を有する、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の物品の被覆方法。
【請求項5】
第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液が分散しており、
前記第1の重合性単量体は、液体であり、
前記第2の重合性単量体は、固体である、重合性組成物の、
物品の被覆のための使用。
【請求項6】
前記第2の重合性単量体は、抗菌性及び抗ウイルス性の少なくとも一方を示す官能基を有する、
請求項5に記載の物品の被覆のための使用。
【請求項7】
物品の被覆のために使用される重合性組成物であって、
第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液が分散しており、
前記第1の重合性単量体は、液体であり、
前記第2の重合性単量体は、固体である、
重合性組成物。
【請求項8】
前記第2の重合性単量体は、抗菌性及び抗ウイルス性の少なくとも一方を示す官能基を有する、
請求項7に記載の重合性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の被覆方法、物品の被覆のための使用、及び重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の新型ウイルス性感染症の流行から、抗菌性や抗ウイルス性を備えた衛生用品の需要が高まっている。例えば、特定のケイ素含有化合物を含む抗ウイルス剤組成物を、含酸素官能基を有する物品に対して塗布又は噴霧することにより固定する技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の抗菌性、抗ウイルス性等の機能を物品に付与する技術では、抗菌性、抗ウイルス性の長期持続性が得られない。
【0005】
本発明の課題は、抗菌性、抗ウイルス性の長期持続性が得られる物品の被覆方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液が分散しており、前記第1の重合性単量体は、液体であり、前記第2の重合性単量体は、固体である、重合性組成物を、物品に適用する工程、及び前記物品に適用された前記重合性組成物を重合させる工程、を含む、物品の被覆方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、抗菌性、抗ウイルス性の長期持続性が得られる物品の被覆方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る重合性組成物の断面を示す模式図である。
【
図2】比較例に係る重合性組成物の断面を示す模式図である。
【
図3】実施形態に係る重合性組成物の硬化前の光学顕微鏡写真である。
【
図4】比較例に係る重合性組成物の硬化前の光学顕微鏡写真である。
【
図5】実施形態に係る重合性組成物の硬化後の外観を示す写真である。
【
図6】比較例に係る重合性組成物の硬化後の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0010】
<物品の被覆方法>
本実施形態に係る物品の被覆方法は、重合性組成物を物品に適用する工程と、物品に適用された前記重合性組成物を重合させる工程と、を含む。本明細書において、被覆とは、物品の表面を重合性組成物で覆うことである。
【0011】
本明細書において、物品は、重合性組成物が適用される対象物である。物品(対象物)の材質は、特に限定されず、金属、セラミック、プラスチック、木、繊維等の種々の材質に適用可能である。また、被覆には、物品の表面が重合性組成物で完全に覆われず、物品の表面に露出部分を残して重合性組成物が固定、又は付着する場合も含まれる。
【0012】
重合性組成物を物品に適用する工程において、適用は、好ましくは噴霧、噴射、塗布の何れかである。ここで、噴霧は、液体を霧状に放射することを示す。噴射は、液体を直線状に放出することを示す。塗布は、液体を塗り付けることを示す。
【0013】
例えば、適用が噴霧又は噴射の場合は、重合性組成物(以下、コーティング液又はコーティング剤という場合がある)をスプレー缶(又はスプレー容器)に充填し、噴出角度を調整したノズルからスプレーすることができる。なお、スプレー容器を用いる場合は、必要に応じて使用前にスプレー容器を振り、充填されたコーティング液を撹拌してから使用してもよい。
【0014】
また、適用が塗布の場合は、刷毛又は筆等のアプリケータで重合性組成物を物品(対象物)の表面に塗ることができる。
【0015】
また、コーティング液を低粘度化させるために、揮発性の溶媒を添加しても良い。なお、揮発性の溶媒が残存したままコーティング剤を硬化させると機械的強度が下がるため、揮発性の溶媒を添加する場合は、揮発性の溶媒が揮発してから硬化させることが望ましい。
【0016】
本実施形態の物品の被覆方法では、重合性組成物の物品への適用が、噴霧、噴射、塗布の何れかであることで、重合性組成物を物品の表面に固定する操作が容易である。
【0017】
物品に適用された重合性組成物を重合させる工程では、物品の表面で重合性組成物が重合することにより硬化し、該重合性組成物が硬化した状態で物品に固定される。重合性組成物を重合させる態様は、特に限定されず、例えば、逐次重合、連鎖重合、及びこれらの組み合わせ等を用いることができる。
【0018】
物品に適用された重合性組成物を重合させる工程は、該重合性組成物が適用された物品に光照射する工程を含むことが好ましい。適用された物品に光照射する工程では、物品に適用された重合性組成物が、光照射により重合し硬化して硬化物(又は硬化体)となり、重合性組成物の硬化物が物品に固定化される。
【0019】
ここで、光照射は、例えば、波長が350~500nmの範囲の電磁波を照射することである。なお、波長が350~450nmの範囲の電磁波は、380nmを以下の範囲が紫外線を示し、380nmを超える範囲は可視光線を示す。
【0020】
本実施形態の物品の被覆方法では、重合性組成物を重合させる工程に、適用された物品に光照射する工程が含まれることで、物品の表面で重合性組成物の重合が促進され、重合性組成物の硬化時間を短縮化することができる。また、光照射により、重合性組成物の重合硬化が効率よく進行し、物品に固定された重合性組成物の安定性を高めることができる。
【0021】
本実施形態の物品の被覆方法において、物品に適用される重合性組成物は、第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液が分散している。このような重合性組成物は、例えば、第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体と、第1の溶媒と、を混合する工程(以下、混合工程という)を実施することにより、得られる。
【0022】
本実施形態の物品の被覆方法に用いられる重合性組成物において、第1の重合性単量体は、液体であり、第2の重合性単量体は、固体である。例えば、第1の重合性単量体は、常温常圧で液体であり、第2の重合性単量体は、常温常圧で固体である。
【0023】
このとき、第1の溶媒を用いずに、第1の重合性単量体と第2の重合性単量体を混合すると、第2の重合性単量体の粒径を制御することが困難であるため、第1の重合性単量体の中に第2の重合性単量体を均一に局在させることができない。この場合、物品上で硬化した重合性組成物の外観が低下し、また、第2の重合性単量体に由来する機能(又は性能)が物品に付与されにくく、又は該機能が付加されても該機能の長期持続性が得られない。
【0024】
一方、第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体と、第1の溶媒を用いると、重合性組成物中に第2の重合性単量体を均一に局在させることができる。そのため、本実施形態の物品の被覆方法では、物品上で硬化した重合性組成物の硬化体の外観を向上させることができ、該物品には第2の重合性単量体に由来する機能(又は性能)を付与しながら、該機能を長期にわたって持続させることができる。
【0025】
例えば、第2の重合性単量体が抗菌性を示す官能基(以下、抗菌性基という)を有する場合、重合性組成物の硬化体に抗菌性を付与することができる。また、第2の重合性単量体が抗ウイルス性を示す官能基(以下、抗ウイルス性基という)を有する場合、重合性組成物の硬化体に抗ウイルス性を付与することができる。
【0026】
第2の重合性単量体に対する第1の溶媒の質量比は、0.01~5であることが好ましく、0.1~2であることがさらに好ましい。第2の重合性単量体に対する第1の溶媒の質量比が0.01以上であると、第2の重合性単量体を第1の溶媒に溶解させた際の安定性が向上し、5以下であると、重合性組成物の硬化体の機械的強度が向上する。
【0027】
第2の重合性単量体と第1の溶媒の総量に対する第1の重合性単量体の質量比は、0.1~100であることが好ましく、0.5~50であることがさらに好ましい。第2の重合性単量体と第1の溶媒の総量に対する第1の重合性単量体の質量比が0.1以上であると、重合性組成物の硬化体の機械的強度が向上し、100以下であると、重合性組成物の硬化体の第2の重合性単量体に由来する性能が向上する。
【0028】
本実施形態の物品の被覆方法に用いられる重合性組成物の混合工程において、第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体と、第1の溶媒と、を混合する際に、界面活性剤を添加してもよい。
【0029】
界面活性剤としては、溶液の分散性を向上させることが可能であれば、特に限定されないが、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
該混合工程において、第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体と、第1の溶媒と、を混合する際に、その他の成分として光重合開始剤、第3級アミン、重合禁止剤等を添加して混練することが好ましい。
【0031】
その他の成分としては、重合性組成物を噴射、噴霧する場合、ノズルの目詰まりを起こさないように、フィラーを実質的に含まないことが好ましい。本明細書において、「実質的に含まない」とは、フィラー等の成分を意図的に配合しないことを意味する。なお、実質的に含まない成分は、不可避的に混入する不純物として含まれていてもよい。また、不可避不純物として含まれる成分の含有量は、好ましくは1質量%未満である。
【0032】
該混合工程において、第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体と、第1の溶媒と、を混合する際に、物品に被覆された後の重合性組成物の機械的強度向上又は透明度を下げるために、その他の成分としてガラス及び/又は顔料を添加してもよい。
【0033】
本実施形態の物品の被覆方法に用いられる重合性組成物の混合工程では、コーティング液となる重合性組成物の操作性の低下を抑制する観点から、該コーティング液の粘度を低下させるために、第2の溶媒を添加してもよい。第2の溶媒が、残存したまま重合性組成物を硬化させると機械的強度が下がるため、第2の溶媒が揮発してから光照射して硬化させることが望ましい。
【0034】
その他の成分は、混合工程で、第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体と、第1の溶媒を混合する前の該第1の重合性単量体、第2の重合性単量体及び/又は第1の溶媒に添加してもよい。また、その他の成分は、混合工程で、第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体と、第1の溶媒とを混合した後に添加してもよい。
【0035】
なお、混合工程は、第2の重合性単量体を第1の溶媒に溶解させて溶液を得る工程と、該溶液と、第1の重合性単量体を混合する工程と、を含んでいてもよい。
【0036】
第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液と、第1の重合性単量体を混合すると、重合性組成物中に第2の重合性単量体をより均一に局在させることができる。その結果、重合性組成物の硬化体に第2の重合性単量体に由来する機能又は性能を付与しながら、重合性組成物の硬化体の外観が向上し、さらに第2の重合性単量体に由来する機能(又は性能)の長期持続性を向上させることができる。
【0037】
例えば、第2の重合性単量体が抗菌性基を有する場合、重合性組成物の硬化体に抗菌性を付与しながら、重合性組成物の硬化体の外観及び第2の重合性単量体に由来する機能(又は性能)の長期持続性をさらに向上させることができる。
【0038】
また、第2の重合性単量体が抗ウイルス性基を有する場合、重合性組成物の硬化体に抗ウイルス性を付与しながら、重合性組成物の硬化体の外観がさらに向上し、さらに第2の重合性単量体に由来する機能(又は性能)の長期持続性をさらに向上させることができる。
【0039】
なお、第1の溶媒が水である場合、大気中の水分を第2の重合性単量体に吸湿させて、第2の重合性単量体を水に溶解させてもよい。
【0040】
第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液と、第1の重合性単量体を混合する方法としては、例えば、自転公転ミキサーを用いて、該溶液と、第1の重合性単量体を混練する方法、マグネチックスターラーを用いて、該溶液と、第1の重合性単量体を混合する方法、撹拌翼を有する撹拌機を用いて、該溶液と、第1の重合性単量体を混合する方法等が挙げられる。
【0041】
混合工程では、該溶液と、第1の重合性単量体を混合する際に、界面活性剤を添加してもよいし、界面活性剤を添加しなくてもよい。
【0042】
界面活性剤としては、該溶液の分散性を向上させることが可能であれば、特に限定されないが、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本実施形態の物品の被覆方法に用いられる重合性組成物の混合工程では、第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液と、第1の重合性単量体を混合する際に、その他の成分として光重合開始剤、第3級アミン、重合禁止剤等を添加して混練することが好ましい。
【0044】
なお、混合する前の該溶液及び/又は第1の重合性単量体に、その他の成分を添加してもよい。また、該溶液と、第1の重合性単量体を混合した後に、その他の成分を添加してもよい。
【0045】
該混合工程は、第1の重合性単量体の少なくとも一部と、第2の重合性単量体を、第2の溶媒に溶解させて溶液を得る工程と、該溶液から第2の溶媒を留去して、第1の重合性単量体の少なくとも一部の中に、第2の重合性単量体が分散している分散液を得る工程と、分散液と、第1の溶媒を混合する工程と、を含んでいてもよい。
【0046】
該混合工程では、第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体が分散している分散液と、第1の溶媒を混合すると、重合性組成物中に第2の重合性単量体をより均一に局在させることができる。その結果、重合性組成物の硬化体に第2の重合性単量体に由来する機能を付与しながら、重合性組成物の硬化体の外観及び第2の重合性単量体に由来する機能(又は性能)の長期持続性をさらに向上させることができる。
【0047】
例えば、第2の重合性単量体が抗菌性基を有する場合、重合性組成物の硬化体に抗菌性を付与しながら、重合性組成物の硬化体の外観及び第2の重合性単量体に由来する機能(又は性能)の長期持続性をさらに向上させることができる。
【0048】
また、第2の重合性単量体が抗ウイルス性基を有する場合、重合性組成物の硬化体に抗ウイルス性を付与しながら、重合性組成物の硬化体の外観がさらに向上し、さらに第2の重合性単量体に由来する機能(又は性能)の長期持続性をさらに向上させることができる。
【0049】
ここで、溶液を得る際に、第1の重合性単量体の一部を用いる場合は、分散液を得た後に、分散液と、第1の重合性単量体の残部を混合する。このとき、分散液と、第1の重合性単量体の残部を混合するタイミングは、特に限定されないが、分散液と、第1の溶媒を混合する際に、第1の重合性単量体の残部を混合することが好ましい。
【0050】
溶液を得る際の第1の重合性単量体の少なくとも一部に対する第2の重合性単量体の質量比は、0.01~100であることが好ましく、0.05~50であることがさらに好ましい。第1の重合性単量体及び第2の重合性単量体の質量比が0.01~100であると、溶液から第2の溶媒を留去して得られる分散液の分散状態が良好となる。
【0051】
分散液と、第1の溶媒を混合する方法としては、例えば、分散液と、第1の溶媒を攪拌する方法、マグネチックスターラーを用いて、分散液と、第1の溶媒を混合する方法、撹拌翼を有する撹拌機を用いて、分散液と、第1の溶媒を混合する方法等が挙げられる。
【0052】
本実施形態の物品の被覆方法に用いられる重合性組成物の混合工程では、分散液と、第1の溶媒を混合する際に、界面活性剤を添加してもよい。
【0053】
界面活性剤としては、溶液の分散性を向上させることが可能であれば、特に限定されないが、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
該混合工程では、分散液と、第1の溶媒を混合した後に、その他の成分として光重合開始剤、第3級アミン、重合禁止剤等を添加して混練することが好ましい。
【0055】
なお、混合する前の分散液及び/又は第1の溶媒に、その他の成分を添加してもよい。また、分散液と、第1の溶媒を混合する際に、その他の成分を添加してもよい。
【0056】
<第1の重合性単量体>
第1の重合性単量体は、第1の溶媒に不溶である。
【0057】
第1の重合性単量体は、(メタ)アクリレートであることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートであることがさらに好ましい。
【0058】
第1の重合性単量体としては、例えば、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ウレタンジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート等が挙げられる。これらの第1の重合性単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
本実施形態の物品の被覆方法に用いられる第1の重合性単量体の含有量は、特に限定されないが、例えば、1質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5質量%以上79質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上49質量%以下である。
【0060】
重合性組成物中の第1の重合性単量体の含有量が1質量%以上であると、重合性組成物の硬化体の機械的強度が向上し、99.9質量%以下であると、重合性組成物の硬化体の第2の重合性単量体に由来する機能又は性能が向上する。
【0061】
<第2の重合性単量体>
第2の重合性単量体は、第1の溶媒に可溶であり、第1の重合性単量体に不溶である。
【0062】
第2の重合性単量体は、(メタ)アクリレートであることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有する単官能(メタ)アクリレートであることがさらに好ましい。
【0063】
第2の重合性単量体は、抗菌性及び抗ウイルス性の少なくとも一方を示す官能基を有することが好ましい。なお、抗菌性及び抗ウイルス性の少なくとも一方を示す官能基とは、一つの官能基が抗菌性及び抗ウイルス性の両方を示す場合、一つの官能基が抗菌性基及び抗ウイルス性基の何れかを示す場合を示す。また、抗菌性及び抗ウイルス性を示す官能基は、抗菌性を示す官能基と抗ウイルス性を示す官能基を各々有する場合も含まれる。
【0064】
抗菌性及び抗ウイルス性の少なくとも一方を示す官能基としては、特に限定されないが、例えば、4級アンモニウム塩基等が挙げられる。なお、4級アンモニウム塩基は、抗菌性基として機能し得るとともに、抗ウイルス性基としても機能し得る。
【0065】
抗菌性及び抗ウイルス性の少なくとも一方を示す官能基を有する第2の重合性単量体としては、例えば、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、(2-(アクリロイルオキシ)エチル)トリメチルアンモニウムクロライド、N-(2-アクリロイルオキシエチル)-N-ベンジル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド4級塩、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド4級塩等の単官能の重合性単量体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド等のジアリル型4級アンモニウム塩、及び下記化学式
【0066】
【化1】
で表される化合物等の多官能の重合性単量体等が挙げられる。抗菌性及び抗ウイルス性の少なくとも一方を示す官能基を有するこれらの第2の重合性単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
抗菌性基及び抗ウイルス性基の何れも有さない第2の重合性単量体としては、例えば、フェノキシエチレングリコールメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0068】
なお、抗菌性基及び抗ウイルス性基の何れも有さないこれらの第2の重合性単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
重合性組成物中の第2の重合性単量体の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上99質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%以上79質量%以下、さらに好ましくは0.03質量%以上49質量%以下である。
【0070】
重合性組成物中の第2の重合性単量体の含有量が0.01質量%以上であると、重合性組成物の硬化体の第2の重合性単量体に由来する機能又は性能が向上し、99質量%以下であると、重合性組成物の硬化体の機械的強度が向上する。
【0071】
<第1の溶媒>
第1の溶媒としては、例えば、水、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、平均分子量1200以下のポリエチレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられる。これらの第1の溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
重合性組成物中の第1の溶媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは0.03質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0073】
本実施形態の重合性組成物中の第1の溶媒の含有量が0.01質量%以上であると、重合性組成物の硬化体の第2の重合性単量体に由来する機能又は性能が向上し、40質量%以下であると、重合性組成物の硬化体の機械的強度が向上する。
【0074】
<第2の溶媒>
第2の溶媒としては、例えば、エタノール、アセトン、ヘキサン等の有機溶媒等が挙げられる。これらの第2の溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
溶液中の第2の溶媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、10質量%以上99質量%以下であることが好ましい。溶液中の第2の溶媒の含有量が10質量%以上であると、重合性単量体の溶解安定性が向上し、99質量%以下であると、溶液から第2の溶媒を留去しやすくなる。
【0076】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、例えば、カンファーキノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンジルケタール、ジアセチルケタール、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルビス(2-メトキシエチル)ケタール、4,4'-ジメチル(ベンジルジメチルケタール)、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノン、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-ニトロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロ-7-トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン-10,10-ジオキシド、チオキサントン-10-オキシド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
<第3級アミン>
第3級アミンは、第3級脂肪族アミン及び第3級芳香族アミンの何れであってもよいが、第3級芳香族アミンであることが好ましく、p-ジアルキルアミノ安息香酸アルキルであることがより好ましい。
【0078】
第3級脂肪族アミンとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0079】
p-ジアルキルアミノ安息香酸アルキルとしては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸メチル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸プロピル、p-ジメチルアミノ安息香酸アミル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p-ジエチルアミノ安息香酸エチル、p-ジエチルアミノ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0080】
p-ジアルキルアミノ安息香酸アルキル以外の第3級芳香族アミンとしては、例えば、7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリン、N,N,2,4-テトラメチルアニリン、N,N-ジエチル-2,4,6-トリメチルアニリン等が挙げられる。
【0081】
なお、これらの第3級アミンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
<重合禁止剤>
重合禁止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール)、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
<重合性組成物の物品の被覆のための使用>
本実施形態に係る重合性組成物の物品の被覆のための使用は、第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液が分散しており、第1の重合性単量体は、液体であり、第2の重合性単量体は、固体である、重合性組成物の、物品の被覆のための使用である。
【0084】
本実施形態に係る重合性組成物の使用の態様は、特に限定されないが、例えば、上述の物品の被覆方法である。すなわち、具体的には、重合性組成物を物品に適用する工程、及び前記物品に適用された前記重合性組成物を重合させる工程、を含む、物品の被覆方法は、本実施形態に係る重合性組成物の物品の被覆のための使用の一態様である。
【0085】
本実施形態の重合性組成物の使用における第1の重合性単量体には、上述の物品の被覆方法で用いられる第1の重合性単量体を用いることができる。また、本実施形態の重合性組成物の使用における第2の重合性単量体には、上述の物品の被覆方法で用いられる第2の重合性単量体を用いることができる。さらに、本実施形態の重合性組成物の使用における第1の溶媒には、上述の物品の被覆方法で用いられる第1の溶媒を用いることができる。
【0086】
本実施形態に係る重合性組成物の物品の被覆のための使用では、上述の物品の被覆方法で用いられる第1の重合性単量体、第2の重合性単量体、及び第1の溶媒が用いられることで、上述の物品の被覆方法で得られる効果と同様の効果が得られる。
【0087】
具体的には、第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体と、第1の溶媒を用いることで、重合性組成物中に第2の重合性単量体を均一に局在させることができる。そのため、本実施形態の重合性組成物の使用では、物品上で硬化した重合性組成物の硬化体の外観を向上させることができ、該物品には第2の重合性単量体に由来する機能(又は性能)を付与しながら、該機能を長期にわたって持続させることができる。
【0088】
本実施形態の重合性組成物の使用において、第2の重合性単量体は、抗菌性及び抗ウイルス性の少なくとも一方を示す官能基を有することが好ましい。ここで、抗菌性及び抗ウイルス性の少なくとも一方を示す官能基を有する第2の重合性単量体には、上述の物品の被覆方法で用いられる、抗菌性基及び/又は抗ウイルス性基を有する第2の重合性単量体を用いることができる。
【0089】
具体的には、第2の重合性単量体に用いられる抗菌性基及び/又は抗ウイルス性基に、上述の物品の被覆方法で用いられる4級アンモニウム塩基等を用いることができる。
【0090】
本実施形態に係る重合性組成物の使用では、第2の重合性単量体が抗菌性基及び/又は抗ウイルス性基を有することで、第2の重合性単量体が抗菌性基を有する場合、重合性組成物の硬化体に第2の重合性単量体に由来する機能として抗菌性を付与することができる。また、第2の重合性単量体が抗ウイルス性基を有する場合、重合性組成物の硬化体に第2の重合性単量体に由来する機能として抗ウイルス性を付与することができる。
【0091】
<重合性組成物>
本実施形態の重合性組成物は、物品の被覆のために使用される重合性組成物である。この重合性組成物は、第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液が分散している。ここで、第1の重合性単量体は、液体であり、第2の重合性単量体は、固体である。
【0092】
本実施形態に係る重合性組成物としては、特に限定されないが、例えば、上述の物品の被覆方法で用いられる重合性組成物をそのまま用いることができる。
【0093】
本実施形態の重合性組成物に用いられる第1の重合性単量体には、上述の物品の被覆方法で用いられる第1の重合性単量体を用いることができる。また、重合性組成物中の第1の重合性単量体の含有量は、上述の物品の被覆方法で用いられる第1の重合性単量体の含有量と同様にすることができる。
【0094】
また、本実施形態の重合性組成物に用いられる第2の重合性単量体には、上述の物品の被覆方法で用いられる第2の重合性単量体を用いることができる。また、重合性組成物中の第2の重合性単量体の含有量は、上述の物品の被覆方法で用いられる第2の重合性単量体の含有量と同様にすることができる。
【0095】
さらに、本実施形態の重合性組成物に用いられる第1の溶媒には、上述の物品の被覆方法で用いられる第1の溶媒を用いることができる。また、重合性組成物中の第1の溶媒の含有量は、上述の物品の被覆方法で用いられる第1の溶媒の含有量と同様にすることができる。
【0096】
本実施形態の重合性組成物では、上述の物品の被覆方法で用いられる重合性組成物と同様に、第2の溶媒、及び界面活性剤を含有してもよい。重合性組成物中の第2の溶媒の含有量は、上述の物品の被覆方法で用いられる第2の溶媒の含有量と同様にすることができる。また、重合性組成物中の界面活性剤の含有量は、上述の物品の被覆方法で用いられる界面活性剤の含有量と同様にすることができる。
【0097】
本実施形態の重合性組成物では、その他の成分として、上述の物品の被覆方法で用いられる重合性組成物と同様に、光重合開始剤、第3級アミン、重合禁止剤等を含有してもよい。
【0098】
本実施形態に係る重合性組成物では、上述の物品の被覆方法で用いられる第1の重合性単量体、第2の重合性単量体、及び第1の溶媒が用いられることで、上述の物品の被覆方法で得られる効果と同様の効果が得られる。
【0099】
具体的には、第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体と、第1の溶媒を用いることで、重合性組成物中に第2の重合性単量体を均一に局在させることができる。そのため、本実施形態の重合性組成物によれば、物品上で硬化した重合性組成物の硬化体の外観を向上させることができ、該物品には第2の重合性単量体に由来する機能(又は性能)を付与しながら、該機能を長期にわたって持続させることができる。
【0100】
本実施形態の重合性組成物において、第2の重合性単量体は、抗菌性及び抗ウイルス性の少なくとも一方を示す官能基を有することが好ましい。ここで、抗菌性及び抗ウイルス性の少なくとも一方を示す官能基を有する第2の重合性単量体には、上述の物品の被覆方法で用いられる、抗菌性基及び/又は抗ウイルス性基を有する第2の重合性単量体を用いることができる。
【0101】
具体的には、第2の重合性単量体に用いられる抗菌性基及び/又は抗ウイルス性基に、上述の物品の被覆方法で用いられる4級アンモニウム塩基等を用いることができる。
【0102】
本実施形態に係る重合性組成物では、第2の重合性単量体が抗菌性基及び/又は抗ウイルス性基を有することで、第2の重合性単量体が抗菌性基を有する場合、重合性組成物の硬化体に第2の重合性単量体に由来する機能として抗菌性を付与することができる。また、第2の重合性単量体が抗ウイルス性基を有する場合、重合性組成物の硬化体に第2の重合性単量体に由来する機能として抗ウイルス性を付与することができる。
【0103】
本実施形態の重合性組成物の用途は、物品の被覆のために使用される場合であれば、特に限定されない。例えば、本実施形態の重合性組成物は、抗菌性、抗ウイルス性等の性能を物品に付与する場合に用いられる。また、本実施形態の重合性組成物が付与される物品の材質は、特に限定されず、金属、セラミック、プラスチック、木、繊維等のあらゆる材質に適用することができる。
【実施例0104】
以下、本実施形態について、実施例を用いて説明する。なお、以下において、単位のない数値又は「%」は、特に断りのない限り、質量基準(質量%)である。
【0105】
<実施例1>
蓋つき瓶に、第2の重合性単量体としての、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(以下、MTMACという)4g、第1の溶媒としての、蒸留水1gを加えた後、スターラーで撹拌し、MTMACの水溶液を得た。
【0106】
第1の重合性単量体としての、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(以下、BisMEPPという)14g、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(以下、NPGという)12gを混合した後、(±)-カンファーキノン0.04g、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル0.1g、MTMACの水溶液4gを加え、自転公転ミキサーを用い1000rpmで10分間撹拌させコーティング液を得た。
【0107】
コーティング液をスプレー容器に入れ、5cm×5cm、厚み5mmのアクリル板にまんべんなく噴霧し、波長365~465nm、照射強度1200mW/cm2のLEDで5分間光を照射し、重合させコーティングされた試験片を得た。
【0108】
なお、
図1は、実施例1において、コーティング液をアクリル板にまんべんなく噴霧した後、LEDを照射する前の状態を示す。
【0109】
<実施例2>
蓋つき瓶に、MTMAC16g、蒸留水4gを加えた後、スターラーで撹拌し、MTMACの水溶液を得た。
【0110】
BisMEPP18g、NPG14gを混合した後、(±)-カンファーキノン0.04g、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル0.1g、MTMACの水溶液14gを加え、自転公転ミキサーを用い1000rpmで10分間撹拌させコーティング液を得た。
【0111】
得られたコーティング液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティングされた試験片を得た。
【0112】
<実施例3>
蓋つき瓶に、MTMAC4g、蒸留水1gを加えた後、スターラーで撹拌し、MTMACの水溶液を得た。
【0113】
BisMEPP15g、NPG14gを混合した後、(±)-カンファーキノン0.04g、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル0.1g、MTMACの水溶液1gを添加し、自転公転ミキサーを用い1000rpmで10分間撹拌させコーティング液を得た。
【0114】
得られたコーティング液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティングされた試験片を得た。
【0115】
<実施例4>
計量皿に、MTMAC4gを計量した後、温度23℃、相対湿度50%の環境下で3.5時間静置し、環境中の水分をMTMACに吸湿させ、MTMACの水溶液を得た。このとき、計量皿の質量は、1g増加していた。
【0116】
得られたMTMACの水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティングされた試験片を得た。
【0117】
<実施例5>
蓋つき瓶に、MTMAC5g、グリセリン5gを加えた後、スターラーで撹拌し、MTMACのグリセリン溶液を得た。
【0118】
MTMACの水溶液の代わりに、MTMACのグリセリン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティングされた試験片を得た。
【0119】
<実施例6>
蓋つき瓶に、MTMAC5g、プロピレングリコール5gを加えた後、スターラーで撹拌し、MTMACのプロピレングリコール溶液を得た。
【0120】
BisMEPP14g、NPG12gを混合した後、(±)-カンファーキノン0.04g、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル0.1g、界面活性剤としての、ドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDSという)0.02g、MTMACのプロピレングリコール溶液4gを添加し、自転公転ミキサーを用い1000rpmで10分間撹拌させコーティング液を得た。
【0121】
得られたコーティング液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティングされた試験片を得た。
【0122】
<実施例7>
蓋つき瓶に、第2の重合性単量体としての、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド(以下、AATMACという)4g、蒸留水1gを加えた後、スターラーで撹拌し、AATMACの水溶液を得た。
【0123】
MTMACの水溶液の代わりに、AATMACの水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティングされた試験片を得た。
【0124】
<実施例8>
蓋つき瓶に、第2の重合性単量体としての、(2-(アクリロイルオキシ)エチル)トリメチルアンモニウムクロライド(以下、ATMACという)4g、蒸留水1gを加えた後、スターラーで撹拌し、ATMACの水溶液を得た。
【0125】
MTMACの水溶液の代わりに、ATMACの水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティングされた試験片を得た。
【0126】
<実施例9>
蓋つき瓶に、第2の重合性単量体としての、N-(2-アクリロイルオキシエチル)-N-ベンジル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド(以下、ABDMACという)4g、蒸留水1gを加えた後、スターラーで撹拌し、ABDMACの水溶液を得た。
【0127】
MTMACの水溶液の代わりに、ABDMACの水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティングされた試験片を得た。
【0128】
<比較例1>
5cm×5cm、厚み5mmのアクリル板をコーティングせず試験に供した。
【0129】
<比較例2>
第1の重合性単量体としての、BisMEPP14g、NPG6gを混合した後、(±)-カンファーキノン0.04g、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル0.1g、第2の重合性単量体としての、MTMAC4g、第1の重合性単量体としての、NPG6gを加え、メノウ乳鉢で均一なペーストになるまで混練し、自転公転ミキサーを用い1000rpmで10分間撹拌させコーティング液を得た。
【0130】
コーティング液をスプレー容器に入れ、噴霧を試みたが固形物が詰まってしまったため、5cm×5cm、厚み5mmのアクリル板に筆でまんべんなく塗布し、波長365~465nm、照射強度1200mW/cm2のLEDで5分間光を照射し、重合させコーティングされた試験片を得た。
【0131】
なお、
図2は、比較例2において、コーティング液をアクリル板にまんべんなく噴霧した後、LEDを照射する前の状態を示す。
【0132】
<比較例3>
下記化学式で表される化合物の35%エタノール液をスプレー容器に入れ、5cm×5cm、厚み10mmのガラス板にまんべんなく噴霧し、室温で30分放置しエタノールを揮発させ、下記化合物でコーティングされた試験片を得た。
【0133】
【0134】
次に、試験片の外観、抗菌性、抗菌性の持続性、抗ウイルス性、抗ウイルス性の持続性を評価した。
【0135】
<試験片の外観>
光重合することにより得られた直径15mm、厚さ1mmの試験片の表面の凹凸の有無を目視で確認し、外観を評価した。
【0136】
なお、
図3は、実施例1において、コーティング液をアクリル板にまんべんなく噴霧した後、LEDを照射する前の状態を100倍に拡大した光学顕微鏡写真を示す。
図4は、比較例2において、コーティング液をアクリル板にまんべんなく噴霧した後、LEDを照射する前の状態を100倍に拡大した光学顕微鏡写真を示す。
図5は、実施例1の試験片(硬化後)の外観を示し、
図6に比較例2の試験片(硬化後)の外観を示す。
【0137】
試験片の外観の判定基準は、以下の通りである。
【0138】
優:試験片の表面に凹凸が無く、試験片の外観が良好である場合
不可:試験片の表面に凹凸が有り、試験片の外観が不良である場合
【0139】
<抗菌性>
JIS Z 2801:2012 抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果に準拠して、試験片の抗菌性を評価した。
【0140】
なお、試験菌として、S.mutans菌を用いた。
【0141】
また、試験片に試験菌を播種する際の培地として、より過酷な状況でも抗菌性を発揮させることを想定して、1/500ブイヨン培地の代わりに、1/10BHI培地を用いた。
【0142】
試験片の抗菌性の判定基準は、以下の通りである。
【0143】
優:試験片の抗菌活性値が2以上である場合
不可:試験片の抗菌活性値が2未満である場合
【0144】
<抗菌性の持続性>
試験片を中性のリン酸緩衝液に1ヵ月間浸漬した後、上記と同様にして、試験片の抗菌性を評価した。
【0145】
<抗ウイルス性>
ISO 21702 抗ウイルス性(非繊維製品)に準拠し、試験ウイルスとしてエンベロープウイルスである豚感染コロナウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)を用いて、試験片の抗ウイルス性を評価した。
【0146】
試験片の抗ウイルス性の判定基準は、以下の通りである。
【0147】
優:試験片の抗ウイルス活性値が2以上である場合
不可:試験片の抗ウイルス活性値が2未満である場合
【0148】
<抗ウイルス性の持続性>
試験片を中性のリン酸緩衝液に1ヵ月間浸漬した後、上記と同様にして、試験片の抗ウイルス性を評価した。
【0149】
表1に、試験片の外観、抗菌性、抗菌性の持続性、抗ウイルス性、抗ウイルス性の持続性の評価結果を示す。
【0150】
【0151】
表1から、実施例1~9のコーティングした試験片は、外観、抗菌性、抗菌性の持続性、抗ウイルス性、抗ウイルス性の持続性が高いことがわかる。例えば、実施例1では、
図1に示すように、アクリル板(物品)10の表面に固定された硬化前の重合性組成物20において、第1の重合性単量体30中に、第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液40が均一に分散されている(第2の重合性単量体が第1の溶媒に溶解している溶液40の液滴径が細かい)と考えられる。
【0152】
比較例1の試験片は、コーティングが行われていないため、抗菌性及び抗ウイルス性を有さなかった。
【0153】
比較例2の試験片は、第1の溶媒を用いずに製造されているため、外観及び抗菌性の持続性、抗ウイルス性の持続性が低かった。例えば、比較例2では、
図2に示すように、アクリル板(物品)10に固定された硬化前の重合性組成物20において、第1の重合性単量体30中に第2の重合性単量体50が均一に分散されていない(第2の重合性単量体50の粒径が粗い)と考えられる(
図2)。
【0154】
比較例3の試験片は、シラン処理により一時的にガラス表面に結合し一時的に抗菌性、抗ウイルス性を発揮したと考えられるが、シラン処理は加水分解により可逆的に進行するため、抗菌性、抗ウイルス性に持続性が得られなかった。
【0155】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。