(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157857
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】気体軸受パッド
(51)【国際特許分類】
F16C 32/06 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
F16C32/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062325
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊徳
【テーマコード(参考)】
3J102
【Fターム(参考)】
3J102AA02
3J102BA05
3J102BA14
3J102CA04
3J102CA09
3J102CA35
3J102EA02
3J102EA06
3J102EA10
3J102EA18
3J102EA30
3J102GA01
3J102GA07
(57)【要約】
【課題】ボルトの頭部の基台への焼付きを防止することができる気体軸受パッドを提供する。
【解決手段】気体軸受パッド10は、ガイド面11aを有する基台11上に配置され、ガイド面11aと対向する対向面20aに凹部21を有する本体部20と、本体部20の凹部21に嵌合される多孔質体30と、多孔質体30に設けられるボルト挿通穴31に挿入され、本体部20に多孔質体30を固定するボルト40と、を備え、ボルト挿通穴31には、ボルト40の頭部41を収容する座ぐり穴32が設けられ、座ぐり穴32において、ボルト40の頭部41のガイド面11aと対向する頭頂面41aと多孔質体30のガイド面11aと対向する軸受面30aとの間に空間SPが設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド面を有する基台上に配置され、前記ガイド面と対向する対向面に凹部を有する本体部と、
前記本体部の前記凹部に嵌合される多孔質体と、
前記多孔質体に設けられるボルト挿通穴に挿入され、前記本体部に前記多孔質体を固定するボルトと、を備え、
前記本体部から前記多孔質体を介して前記基台に向けて圧縮気体を吹き出すことにより、前記多孔質体と前記基台との間に気体軸受を形成する、気体軸受パッドであって、
前記ボルト挿通穴には、前記ボルトの頭部を収容する座ぐり穴が設けられ、
前記座ぐり穴において、前記ボルトの頭部の前記ガイド面と対向する頭頂面と前記多孔質体の前記ガイド面と対向する軸受面との間に空間が設けられる、気体軸受パッド。
【請求項2】
前記気体軸受の形成時において、前記多孔質体の前記軸受面から前記ボルトの頭部の前記頭頂面までの隙間寸法は、前記ガイド面から前記多孔質体の前記軸受面までの隙間寸法よりも大きい、請求項1に記載の気体軸受パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体軸受パッドに関し、例えば、工作機械、精密機械、及び超精密機械などに使用され、物体を水平運動させるために用いられる気体軸受パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の気体軸受パッドとして、表面に凹部を有する本体部と、本体部の凹部に嵌合される多孔質体と、多孔質体に設けられるボルト挿通穴に挿入され、本体部に多孔質体を固定するボルトと、を備え、ボルト挿通穴に、ボルトの頭部を収容する座ぐり穴が設けられるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、上記特許文献1では、本体部に多孔質体を固定したボルトの頭部に切削加工を施して、ボルトの頭部の切削面を多孔質体の軸受面と同一平面となるように形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、気体軸受パッドにおける多孔質体はグラファイトなどにより形成され、本体部はセラミックなどにより形成されており、いずれも硬度が高い材料が用いられるが、本体部に多孔質体を固定するボルトは、一般的に硬度が比較的低い鉄系材料により形成されている。
【0005】
そして、上記特許文献1に記載の気体軸受パッドでは、駆動中の気体軸受パッドと基台との間に異物が侵入した場合、侵入した異物がボルトの頭部と基台との間に挟み込まれて、ボルトの頭部が基台に焼付いてしまうことがあった。また、停電などにより無給気状態となった場合は、ボルトの頭部が基台に接地し引きずられて、ボルトの頭部が基台に焼付いてしまうことがあった。このような焼付きが発生すると、ボルトの頭部が基台に溶着されてしまい、気体軸受パッドを浮上させることができなくなる。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ボルトの頭部の基台への焼付きを防止することができる気体軸受パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)ガイド面を有する基台上に配置され、前記ガイド面と対向する対向面に凹部を有する本体部と、前記本体部の前記凹部に嵌合される多孔質体と、前記多孔質体に設けられるボルト挿通穴に挿入され、前記本体部に前記多孔質体を固定するボルトと、を備え、前記本体部から前記多孔質体を介して前記基台に向けて圧縮気体を吹き出すことにより、前記多孔質体と前記基台との間に気体軸受を形成する、気体軸受パッドであって、前記ボルト挿通穴には、前記ボルトの頭部を収容する座ぐり穴が設けられ、前記座ぐり穴において、前記ボルトの頭部の前記ガイド面と対向する頭頂面と前記多孔質体の前記ガイド面と対向する軸受面との間に空間が設けられる、気体軸受パッド。
(2)前記気体軸受の形成時において、前記多孔質体の前記軸受面から前記ボルトの頭部の前記頭頂面までの隙間寸法は、前記ガイド面から前記多孔質体の前記軸受面までの隙間寸法よりも大きい、(1)に記載の気体軸受パッド。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、座ぐり穴において、ボルトの頭部のガイド面と対向する頭頂面と多孔質体のガイド面と対向する軸受面との間に空間が設けられている。これにより、駆動中の気体軸受パッドと基台との間に異物が侵入したとしても、侵入した異物が空間に入り込んで、ボルトの頭部と基台との間に挟み込まれないため、ボルトの頭部の基台への焼付きを防止することができる。また、停電などにより無給気状態となったとしても、ボルトの頭部が基台に接地しないため、ボルトの頭部の基台への焼付きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る気体軸受パッドの一実施形態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る気体軸受パッドの一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の気体軸受パッド10は、
図1及び
図2に示すように、ガイド面11aを有する基台11上に配置され、ガイド面11aと対向する対向面20aに凹部21を有する本体部20と、本体部20の凹部21に嵌合される多孔質体30と、多孔質体30に設けられるボルト挿通穴31に挿入され、本体部20に多孔質体30を固定するボルト40と、を備える。本体部20は、セラミックなどにより形成され、多孔質体30は、グラファイトなどにより形成され、ボルト40は、鉄鋼などの鉄系材料により形成されている。
【0012】
本体部20は、直方体形状であって、ガイド面11aと対向する対向面20aに円形状の凹部21が形成されている。また、本体部20には、不図示の圧縮気体配管から供給される圧縮気体を凹部21内の多孔質体30に供給する気体流路22が形成されている。
【0013】
多孔質体30は、円板形状であって、多孔質体30のガイド面11aと対向する軸受面30aは、本体部20の対向面20aと同一平面となるように形成されている。また、多孔質体30の中心部には、ボルト挿通穴31が形成されている。このボルト挿通穴31の軸受面30a側には、ボルト40の頭部41を収容する座ぐり穴32が形成されている。また、多孔質体30の軸受面30aに対して反対側の面(
図1の上面)には、圧縮気体の流路となる円環状の溝33がボルト挿通穴31を中心として形成されている。多孔質体30は、適正な通気率を有する多孔質材である。
【0014】
そして、本実施形態では、ボルト挿通穴31の座ぐり穴32は、ボルト40の頭部41の厚みよりも大きい深さで形成されている。このため、座ぐり穴32において、ボルト40の頭部41のガイド面11aと対向する頭頂面41aと多孔質体30の軸受面30aとの間に空間SPが形成されている。
【0015】
また、本実施形態では、気体軸受の形成時において、多孔質体30の軸受面30aからボルト40の頭部41の頭頂面41aまでの隙間寸法S1は、基台11のガイド面11aから多孔質体30の軸受面30aまでの隙間寸法S2よりも大きく設定されている。
【0016】
このように構成された気体軸受パッド10では、本体部20の気体流路22から多孔質体30を介して基台11のガイド面11aに向けて圧縮気体を吹き出すことにより、多孔質体30と基台11との間に気体軸受が形成される。これにより、気体軸受パッド10は、基台11のガイド面11aに対して非接触状態で移動可能となる。
【0017】
以上説明したように、本実施形態の気体軸受パッド10によれば、座ぐり穴32において、ボルト40の頭部41の頭頂面41aと多孔質体30の軸受面30aとの間に空間SPが形成されている。これにより、駆動中の気体軸受パッド10と基台11との間に異物が侵入したとしても、侵入した異物が空間SPに入り込んで、ボルト40の頭部41と基台11との間に挟み込まれないため、ボルト40の頭部41の基台11への焼付きを防止することができる。また、停電などにより無給気状態となったとしても、ボルト40の頭部41が基台11に接地しないため、ボルト40の頭部41の基台11への焼付きを防止することができる。
【0018】
また、本実施形態の気体軸受パッド10によれば、多孔質体30の軸受面30aからボルト40の頭部41の頭頂面41aまでの隙間寸法S1が、基台11のガイド面11aから多孔質体30の軸受面30aまでの隙間寸法S2よりも大きく設定されるため、気体軸受パッド10と基台11との間に異物が侵入した状態で気体軸受パッド10の駆動が停止したとしても、侵入した異物がボルト40の頭部41と基台11との間に挟み込まれないため、ボルト40の頭部41の基台11への焼付きを防止することができる。
【0019】
また、本実施形態の気体軸受パッド10によれば、座ぐり穴32の空間SPがエアポケットになるため、この空間SPに圧力が一定に溜まり、空気膜による自励振動を抑制することができる。
【0020】
なお、本発明は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、本体部及び多孔質体の形状、多孔質体の円環状の溝の有無、及び気体流路の形状などは自由に設定可能である。
【符号の説明】
【0021】
10 気体軸受パッド
11 基台
11a ガイド面
20 本体部
20a 対向面
21 凹部
22 気体流路
30 多孔質体
30a 軸受面
31 ボルト挿通穴
32 座ぐり穴
33 溝
40 ボルト
41 頭部
41a 頭頂面
SP 空間
S1 多孔質体の軸受面からボルトの頭部の頭頂面までの隙間寸法
S2 基台のガイド面から多孔質体の軸受面までの隙間寸法