(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015786
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】屋根構造体
(51)【国際特許分類】
E04B 7/02 20060101AFI20220114BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
E04B7/02 501A
E04B1/00 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118871
(22)【出願日】2020-07-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和1年11月27日に了因寺境内に設置。
(71)【出願人】
【識別番号】520256248
【氏名又は名称】岡本 一男
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 一男
(57)【要約】
【課題】 強度と耐久性、施工性に優れ、且つ寺社等の日本の伝統的な建物ともマッチする屋根構造体の提供。
【解決手段】 アルミ形材で構成された骨組み1と、該骨組み1上に載せてボルト11で固定された木造の屋根2とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ形材で構成された骨組みと、該骨組み上に載せてボルトで固定された木造の屋根とを備えることを特徴とする屋根構造体。
【請求項2】
アルミ製の骨組みと木造の屋根との境界が、単一の水平面となっていることを特徴とする請求項1記載の屋根構造体。
【請求項3】
前後の柱の上端に桁を前後方向に架設した左右一対の門型フレームと、左右の門型フレームを前後の柱の位置でそれぞれ連結する左右方向の桁とを備え、左右方向の桁は、長手方向の端部を柱上に載せた状態で柱と前後方向の桁に金具で固定してあることを特徴とする請求項1又は2記載の屋根構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建物の出入口の雪除けのために設置される屋根構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
雪が降る地方の寺では、冬期に屋根雪で出入口が塞がれるのを防ぐために、
図8に示すような組み立て式の雪除け屋根を出入口に設置している。従来、このような雪除け屋根の設置及び撤去は寺の檀家が行っていたが、近年、雪除け屋根の設置・撤去を行うための人手を確保するのが困難になっており、恒常的に設置しておける雪除け屋根が求められている。しかし、既存の屋根に雪除け屋根を増設しようとすると多額の費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、強度と耐久性、施工性に優れ、且つ寺社等の日本の伝統的な建物ともマッチする屋根構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による屋根構造体は、アルミ形材で構成された骨組みと、該骨組み上に載せてボルトで固定された木造の屋根とを備えることを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明による屋根構造体は、請求項1記載の発明の構成に加え、アルミ製の骨組みと木造の屋根との境界が、単一の水平面となっていることを特徴とする。
【0006】
請求項3記載の発明による屋根構造体は、請求項1又は2記載の発明の構成に加え、前後の柱の上端に桁を前後方向に架設した左右一対の門型フレームと、左右の門型フレームを前後の柱の位置でそれぞれ連結する左右方向の桁とを備え、左右方向の桁は、長手方向の端部を柱上に載せた状態で柱と前後方向の桁に金具で固定してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明による屋根構造体は、屋根を支える骨組みをアルミ形材で構成したので、強度と耐久性に優れるとともに、基礎を新たに設ける必要がないため施工性にも優れ、しかも屋根の部分が木造なので寺社等の日本の伝統的な建物ともマッチする。
【0008】
請求項2記載の発明による屋根構造体は、アルミ製の骨組みと木造の屋根との境界が、単一の水平面となっていることで、骨組みを建てた後でその上に木造の屋根を容易に施工できる。また、共通の骨組みの上にデザインの異なる屋根を設置することもできる。
【0009】
請求項3記載の発明による屋根構造体は、前後の柱の上端に桁を前後方向に架設した左右一対の門型フレームと、左右の門型フレームを前後の柱の位置でそれぞれ連結する左右方向の桁とを備え、左右方向の桁は、長手方向の端部を柱上に載せた状態で柱と前後方向の桁に金具で固定してあることで、地震や台風時に横方向の力が加わっても揺れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の屋根構造体の一実施形態を示す正面図である。
【
図3】(a)は同屋根構造体の平面図であり、(b)は同屋根構造体の底面図である。
【
図4】骨組みの柱と桁との連結部を拡大して示す正面図である。
【
図5】骨組みと屋根との接合部を拡大して示す正面図である。
【
図8】従来の組立て式の雪除け屋根の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~6は、本発明の屋根構造体の一実施形態を示している。本屋根構造体は、
図1,2に示すように、寺の屋根10の軒先の出入口に相当する部分に設置され、寺の屋根10から落ちた雪で出入口が塞がれるのを防止するものである。本屋根構造体は、アルミ形材で構成された骨組み1と、該骨組み1上に載せてボルト11(
図5参照)で固定された木造の屋根2とを備える。アルミ製の骨組み1と木造の屋根2との境界3は、
図1に示すように、単一の水平面となっている。
【0012】
骨組み1は、
図1~3に示すように、前後方向及び左右方向に間隔をおいて地面Gから立設した4本の柱4a,4a,4b,4bと、前後の柱4a,4bの上端に架設した前後方向桁5,5と、前後の柱4a,4bの位置で左右の前後方向桁5,5同士を連結する左右方向桁7,7とを有している。柱4a,4a,4b,4bと前後方向桁5,5及び左右方向桁7,7は、矩形断面の中空アルミ形材で形成してある。骨組み1の上面は、単一の水平面を成している。
柱4a,4bと前後方向桁5とは、
図4に示すように、前後方向桁5の下面と柱4a,4bの前面又は後面に跨ってアングル状の金具12を当てがってボルト13で固定することで連結してある。前後方向桁5は、横幅が柱4a,4bよりも細くなっている。
左右方向桁7は、長手方向の端部を柱4a,4b上に載せた状態で端面を前後方向桁5の内側面に当接し、アングル状の金具8とボルト13とで前後方向桁5と連結してある。さらに、左右方向桁7の端部は柱4a,4bともアングル状の金具9とボルト13とで連結してある。
【0013】
屋根2は、
図1~3に示すように、左右方向の中央部が円弧状に盛り上がった唐破風を備える湾曲したものとなっている。屋根2は、骨組み1のアルミ製の前後方向桁5,5及び左右方向桁7,7上に載置してボルト11で固定された木製の前後方向桁14,14及び左右方向桁15,15と、前後の左右方向桁15,15の中央部に立設した木製の束16,16と、前後の束16,16上に架設した棟木17と、棟木17と前後方向桁14,14とに跨って前後方向に間隔をおいて取付けた複数の垂木23,23,…と、棟木17と前後方向桁14,14の前後の端面に取付けた破風24,24と、垂木23,23,…上に取付けた屋根材18とを有している。屋根2の左右方向の中央部上面には、落ちてきた雪を左右に分けるために三角形断面の凸部19が前後方向に沿って設けてある。
【0014】
図5に示すように、骨組み1のアルミ製の桁5,7の上面にはボルト11が螺入する雌ネジ孔20が形成してあり、屋根2の木製の桁14,15にはボルト11の挿通孔21と座ぐり穴22が形成してあり、木製の桁14,15のボルト挿通孔21に上方から挿入したボルト11をアルミ製の桁5,7の雌ネジ穴20に螺入することで、アルミ製の桁5,7と木製の桁14,15とを固定している。ボルト11は、30~40cm程度の間隔で配置されている。アルミ製の桁5,7と木製の桁14,15とでは、温度変化による伸縮量が異なるが、木製の桁14,15のボルト挿通孔21及び座ぐり穴22を、ボルト11のネジ部と頭部の径に対して余裕を持たせて形成しておくことで、その伸縮量の違いを吸収し、桁5,7,14,15の熱による変形を防止することができる。また、アルミ製の桁5,7に直接雌ネジ孔20を加工することで、ボルト11が緩むのを防止できる。
【0015】
屋根材18は、
図6に示すように、垂木23の上面に沿わせて曲げて取付けた木の薄板25と、その上に左右方向に並べて取付けた木の帯状板26と、さらにその上に取付けた薄い鋼板よりなる屋根葺き材27の三層構造になっている。
【0016】
次に、本屋根構造体の施工手順を説明する。まず、
図7(a)に示すように、前後の柱4a,4b上に前後方向桁5を架設して左右一対の門型のフレーム6,6を形成し、各柱4a,4bの下部をあらかじめ地面に掘っておいた四角い穴28に挿入し、その穴28にモルタル29を流し入れて固め、柱4a,4bを地面に固定する。次に、
図7(b)に示すように、前後の柱4a,4b上に端部を載せる形で左右方向桁7,7を配置し、
図7(c)に示すように、前後方向桁5,5と左右方向桁7,7を井桁状に組んで固定する。
その後、組立てた骨組み1上に屋根2を施工する。その手順としては、骨組み1の前後方向桁5,5及び左右方向桁7,7の上面に木製の前後方向桁14,14及び左右方向桁15,15を載置してボルト11で固定し、左右方向桁15,15に束16,16を立設し、束16,16上に棟木17を架設する。その後、棟木17と左右の前後方向桁14,14に跨って垂木23,23,…と破風24を取付ける。その後、垂木23,23,…上に屋根材18を取付ける。なお、アルミ製及び木製の各部材には、ボルトの挿通孔や雌ネジ孔があらかじめ加工してあり、施工現場で孔加工を行うことなく、簡単に組み立てられるようになっている。
【0017】
以上に述べたように本屋根構造体は、屋根2を支える骨組み1をアルミ形材で構成したので、強度と耐久性に優れるとともに、基礎を新たに設ける必要がないため施工性にも優れ、しかも屋根2の部分が木造なので寺社等の日本の伝統的な建物ともマッチする。
また本屋根構造体は、アルミ製の骨組み1と木造の屋根2との境界3が、単一の水平面となっていることで、骨組み1を建てた後でその上に木造の屋根2を容易に施工できる。また、共通の骨組みの上にデザインの異なる屋根を設置することもできる。
さらに本屋根構造体は、前後の柱4a,4bの上端に桁5を前後方向に架設した左右一対の門型フレーム6,6と、左右の門型フレーム6,6を前後の柱4a,4bの位置でそれぞれ連結する左右方向の桁7,7とを備え、左右方向の桁7,7は、長手方向の端部を柱4a,4b上に載せた状態で柱4a,4bと前後方向の桁5,5に金具8,9で固定してあることで、地震や台風時に横方向の力が加わっても揺れを防止できる。
【0018】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。屋根の部分の構造や形態は、適宜変更することができ、実施形態のような湾曲した形状のものに限らず、左右に斜めに傾斜した形状等であってもよい。本発明の屋根構造体の設置する場所、設置の目的は、特に限定されない。
【0019】
1 骨組み
2 屋根
3 骨組みと屋根との境界
4a,4b 柱
5 前後方向桁
6 門型フレーム
7 左右方向桁
8,9 金具