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特開2022-157868ロックウール廃材の再生用ブロック及び再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157868
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ロックウール廃材の再生用ブロック及び再生方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20221006BHJP
   C04B 18/16 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062338
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】常藤 光
(72)【発明者】
【氏名】杉野 雄亮
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA30
(57)【要約】
【課題】ロックウール製造時の繊維化が不充分なものからなるロックウール廃材や集塵機で集塵されたダストからなるロックウール廃材であっても、ロックウール製造時の原料として溶融炉に投入できるロックウール廃材の再生技術(再生用ブロック及び再生方法)を提供すること。含水率が小さく且つ圧縮強度の高いロックウール廃材の再生用ブロックを提供すること。即ち、含水率が0.5%以下と小さく且つ圧縮強度が1.0N/mm2以上であるロックウール廃材の再生用ブロックを提供することを提供すること。また、ロックウール廃材を多く且つ継続的にロックウールに再生することのできるロックウール廃材の再生方法を提供すること。
【手段】特定の軽装嵩密度のロックウール廃材と、特定割合のセメントと水とを含有するブロックとすること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽装嵩密度が0.25g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し10~30質量部のセメントと、含まれる固形分100質量部に対し15~60質量部の水を含有する、又は
軽装嵩密度が0.3g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対しセメント5~30質量部であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し15~60質量部の水を含有することを特徴とするロックウール廃材の再生用ブロック。
【請求項2】
軽装嵩密度が0.25g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し15~30質量部のセメントと、含まれる固形分100質量部に対し15~50質量部の水を含有する、又は
軽装嵩密度が0.3g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対しセメント10~30質量部であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し15~35質量部の水を含有することを特徴とするロックウール廃材の再生用ブロック。
【請求項3】
軽装嵩密度が0.4g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対しセメント5~30質量部であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し19~35質量部の水を含有することを特徴とするロックウール廃材の再生用ブロック。
【請求項4】
請求項1~3何れかに記載のロックウール廃材の再生用ブロックを、溶融炉に投入し溶融させた溶融物を繊維化させることを特徴とするロックウール廃材の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックウール廃材の再生用ブロックに関する。特に、ロックウール廃材を再生するために溶融炉に投入するためのブロックに関する。また、本発明は、ロックウール廃材の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火性、防火性、吸音性および/または断熱性などを付与する目的で、構造物表面にロックウール等の鉱物繊維を用いた繊維層を設けることが広く行われている。ロックールは、溶融炉で溶融された岩石や高炉スラグ等を主体とする材料が、急冷されながら、繊維化された素材(鉱物繊維)である。繊維化するときに、一部が繊維化が不充分なもの(一部又は全部が粒状のもの、粉状のもの及び折れて短い繊維のものを含み、以下同じ。)となり、製品として使用することができない。また、原材料を溶融するときに、原材料の一部が排ガスとともにダストとして排出され集塵機で集塵される。これらのロックール製造時に発生する廃材は、一部はセメント製造時の原料として利用されるが、産業廃棄物として処分されている。
【0003】
ロックウールに樹脂を添加し板,ブロック又はマット状に成形したロックウール成形品は、成形時に所定の長さや幅等に切断する工程で、切削屑が廃材として出てくる。また、ロックウールを用いた建設現場、並びに、ロックウールを用いている建築物や構造物の解体等でもロックウールを主成分とする廃材が出てくる。これらの廃材も業廃棄物として処分されている。
【0004】
ロックール等の鉱物繊維を主成分とする廃材を解砕し又はそのまま溶融炉に投入し溶融し、再度繊維化して再利用する技術が開示されている(例えば特許文献1及び2参照。)。また、ロックール等の鉱物繊維を主成分とする廃材を粉砕した後に高炉セメントと水を加えて所定の大きさに成形した後に乾燥させたものを溶融炉に投入し溶融し、再度繊維化して再利用する技術が開示されている(例えば特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08-061643号公報
【特許文献2】特表2008-508174号公報
【特許文献3】特開2006-256909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロックウール廃材として製造時の繊維化が不充分なものや集塵機で集塵されたダストを用いる場合は、廃材を解砕し又はそのまま溶融炉に投入し溶融し、再度繊維化して再利用する技術で再繊維化しようとしても、ダストとして排ガスとともに炉から排出されてしまう虞があり、また、燃焼ガスや燃焼用空気若しくは酸素が通る原材料又は原燃料の隙間を詰まらせてしまい継続して再繊維化でない虞がある。また、特許文献3の技術は、ロックウール廃材の質量に対する高炉セメント及び水の量が多い(ロックウール廃材(回収物の粉砕物):高炉セメント:水=1:2:4が例示されている(段落[0028]))。そのため、ロックウール廃材を溶融炉に多い量を投入すると溶融物の組成が所定の範囲に維持できず、且つ含水量が多いため熱を奪われて燃焼効率が悪くなると考えられることから、溶融炉に投入できるロックウール廃材の量は、多くできないと考えられる。
【0007】
本発明は、ロックウール製造時の繊維化が不充分なものからなるロックウール廃材や集塵機で集塵されたダストからなるロックウール廃材であっても、ロックウール製造時の原料として溶融炉に投入できるロックウール廃材の再生技術(再生用ブロック及び再生方法)を提供することを目的とする。本発明は、含水率が小さく且つ圧縮強度の高いロックウール廃材の再生用ブロックを提供することを目的とする。即ち、本発明は、含水率が0.5%以下と小さく且つ圧縮強度が1.0N/mm2以上であるロックウール廃材の再生用ブロックを提供することを目的とする。また、本発明は、ロックウール廃材を多く且つ継続的にロックウールに再生することのできるロックウール廃材の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、特定の軽装嵩密度のロックウール廃材と、特定割合のセメントと水とを含有するブロックとすることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)~(3)で表すロックウール廃材の再生用ブロック、並びに、(4)で表すロックウール廃材の再生方法である。
(1)軽装嵩密度が0.25g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し10~30質量部のセメントと、含まれる固形分100質量部に対し15~60質量部の水を含有する、又は、
軽装嵩密度が0.3g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対しセメント5~30質量部であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し15~60質量部の水を含有することを特徴とするロックウール廃材の再生用ブロック。
(2)軽装嵩密度が0.25g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し15~30質量部のセメントと、含まれる固形分100質量部に対し15~50質量部の水を含有する、又は、
軽装嵩密度が0.3g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対しセメント10~30質量部であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し15~35質量部の水を含有することを特徴とするロックウール廃材の再生用ブロック。
(3)軽装嵩密度が0.4g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対しセメント5~30質量部であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し19~35質量部の水を含有することを特徴とするロックウール廃材の再生用ブロック。
(4)上記(1)~(3)何れかのロックウール廃材の再生用ブロックを、溶融炉に投入し溶融させた溶融物を繊維化させることを特徴とするロックウール廃材の再生方法
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロックウール製造時の繊維化が不充分なものからなるロックウール廃材や集塵機で集塵されたダストからなるロックウール廃材であっても、ロックウール製造時の原料として溶融炉に投入できるロックウール廃材の再生技術(再生用ブロック及び再生方法)が得られる。また、本発明によれば、含水率が小さく且つ圧縮強度の高いロックウール廃材の再生用ブロック、即ち、含水率が0.5%以下と小さく且つ圧縮強度が1.0N/mm2以上であるロックウール廃材の再生用ブロックが得られる。また、本発明によれば、ロックウール廃材を多く且つ継続的にロックウールに再生することのできるロックウール廃材の再生方法が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のロックウール廃材の再生用ブロックは、軽装嵩密度が0.25g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し10~30質量部のセメントと、含まれる固形分100質量部に対し15~60質量部の水を含有する、又は、軽装嵩密度が0.3g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対しセメント5~30質量部であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し15~60質量部の水を含有することを特徴とする。これにより、再生用ブロックの含水率を0.5質量%以下且つ圧縮強度を1.0N/mm2以上となる。圧縮強度が1.0N/mm2以上あると、溶融炉への再生用ブロックの投入時に、当該再生ブロックが崩れてしまう可能性が低い。また、再生用ブロックの含水率が0.5質量%以下であると、含まれる水分が気化する時に奪われる熱量が少なくて済む。
【0011】
本発明に使用するセメントとしては、水硬性セメントであればよく、例えば普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱の各種ポルトランドセメント、白色セメント、エコセメント、並びにこれらのポルトランドセメント、白色セメント又はエコセメントに、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム又は石灰石微粉末等を混合した各種混合セメントが挙げられ、これらを二種以上併用してもよい。
【0012】
本発明におけるセメントの含有割合は、本発明の再生用ブロックに含まれる固形分100質量部に対する質量部で表している。本発明において、セメントの含有割合が、再生用ブロックに含まれる固形分100質量部に対し30質量部を超えると、再生用ブロックの化学組成のうち、CaOの含有率が高くなり且つSiOの含有率が低くなるため、溶融炉に多く投入できない、つまり、セメントの含有割合が再生用ブロックに含まれる固形分100質量部に対し30質量部を超えた再生用ブロックを、通常のロックウール製造時の原材料(CaO、Al、SiOを主要な化学組成とする原材料)に対する割合を大きくすると、原材料の化学組成が許容範囲を超えて変わってしまうため、通常のロックウール製造時の原材料に対する割合を大きくすることができない。
【0013】
本発明における水量は、本発明の再生用ブロックに含まれる固形分100質量部に対し15~60質量部とする。60質量部を超えると含水率が大きく且つ圧縮強度が不足する。15質量部未満でも、圧縮強度が不足する。本発明における水量は、含水率及び圧縮強度の点で、好ましくは、本発明の再生用ブロックに含まれる固形分100質量部に対し19~50質量部とし、更に好ましくは19~35質量部とする。
【0014】
本発明における軽装嵩密度ρは、容積(V)の分かっている容器に静かにロックウール廃材を投入し、タッピング等の振動を当該容器に加えずに、容器の上端より盛り上がっている部分のロックウール廃材を擦りきり(落とし)、容器の上端までロックウール廃材が入っているときの質量(M)を測定し、空の状態の容器の質量(M)より、次式(1)により求めた嵩密度をいう。
ρ=(M-M)÷V ・・・・・(1)
【0015】
本発明におけるロックウールとは、溶融炉で溶融された岩石や高炉スラグ等を主体とする材料が、急冷されながら、繊維化された素材(鉱物繊維)であり、例えば、高炉スラグを主体とする材料より製造されたスラグウールなども含まれる。
【0016】
本発明に使用するロックウール廃材としては、ロックウール製造時の繊維化が不充分なものからなるロックウール廃材、ロックウール製造時の集塵機で集塵されたダストからなるロックウール廃材、ロックウール成形品の成形時に所定の長さや幅等に切断する工程で出てくる切削屑、ロックウールを用いた建設現場で出てくるロックウール廃材、ロックウールを用いている建築物や構造物の解体等排出されるロックウールを主成分とする廃材が挙げられる。本発明に使用するロックウール廃材としては、再生時の成分調整を行い易いことから、ロックウール製造時の繊維化が不充分なものからなるロックウール廃材、ロックウール製造時の集塵機で集塵されたダストからなるロックウール廃材、ロックウール成形品の成形時に所定の長さや幅等に切断する工程で出てくる切削屑から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。また、本発明に使用するロックウール廃材が粉状、粒状又は短繊維状ではない場合は、粉砕又は解砕して使用することが好ましい。尚、本発明に使用するロックウール廃材が粉状、粒状又は短繊維状の場合も、粉砕又は解砕して使用してもよい。
【0017】
本発明は、好ましくは、軽装嵩密度が0.25g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し15~30質量部のセメントと、含まれる固形分100質量部に対し15~50質量部の水を含有する、又は
軽装嵩密度が0.3g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対しセメント10~30質量部であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し15~35質量部の水を含有するることを特徴とするロックウール廃材の再生用ブロックである。これにより、含水率が0.5%以下且つ圧縮強度が2.0N/mm2以上のロックウール廃材の再生用ブロックが得られる。
【0018】
本発明は、より好ましくは、軽装嵩密度が0.4g/cm3以上であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対しセメント5~30質量部であるロックウール廃材と、含まれる固形分100質量部に対し19~35質量部の水を含有するることを特徴とするロックウール廃材の再生用ブロックである。これにより、含水率が0.25%以下且つ圧縮強度が1.0N/mm2以上のロックウール廃材の再生用ブロックが得られる。
【0019】
本発明の再生用ブロックには、本発明の効果を実施損なわない範囲で、セメント、ロックウール廃材及び水以外に、混和材料を1種又は2種以上を用いることができる。この混和材料としては、例えば、セメント用ポリマー、増粘剤、セメント分散剤、膨張材、防水材、防錆剤、収縮低減剤、顔料、ロックウール以外の繊維、撥水剤、白華防止剤、急結剤(材)、急硬剤(材)、凝結遅延剤、発泡剤、消泡剤、石膏、高炉スラグ微粉末、ポゾラン物質、撥水剤、表面硬化剤等が挙げられる。
【0020】
本発明のロックウール廃材の再生方法は、上記のロックウール廃材の再生用ブロックを、溶融炉に投入し溶融させた溶融物を繊維化させることを特徴とする。
【実施例0021】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0022】
[実施例1]
<ロックウール廃材の再生用ブロックの作製>
以下の使用材料を用いて、表1に示す割合でロックウール廃材とセメントと水をミキサで混練し、内径50mm、内側の高さ100mmのプラスティック製モルタル用型枠に詰め、直径50mmの円柱鋼棒で20mm程度押し込み加圧成形し、6日間20℃、相対湿度60%の室内に静置し、再生用ブロックを作製した。ロックウール廃材は、ロックウール廃材1~3を適宜混合し又は一部単独で使用した。
<使用材料>
・セメント: 普通ポルトランドセメント
・ロックウール廃材1: 綿状廃材
・ロックウール廃材2: ロックウール製造時の繊維化が不充分な廃材
・ロックウール廃材3: ロックウール製造時の集塵機で集塵されたダストからなる廃材
・水: 水道水
【0023】
【表1】
【0024】
作製したロックウール廃材の再生用ブロックについて、以下に示す品質評価試験を行った。試験結果を表2に示した。合わせて使用したロックウール廃材の軽装嵩密度を測定し、表2に合わせて示した。
<圧縮強度試験>
島津製作所社製精密万能試験機「オートグラフ」(商品名)を用いて、載荷速度1mm/分として供試体の圧縮強度を求めた。但し、キャッピングは行わず、養生は20℃相対湿度60%の恒温室内で6日間養生したものを供試体とした。
<含水率試験>
作製した供試体を庫内温度105℃の乾燥機内で恒量になるまで乾燥させ、乾燥前の供試体の質量(W)と乾燥後(絶乾後)の供試体の質量(W)より、次式(2)により含水率求めた。
含水率(%)=(W-W)÷W×100 ・・・・・(2)
【0025】
【表2】
【0026】
本発明の実施例に当たる水準2-12のロックウール廃材の再生用ブロックは、何れも、含水率が0.5%以下と小さく且つ圧縮強度が1.0N/mm2以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、例えば、ロックウールの再生において好適に使用することができる。