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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157880
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】表皮材
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/24 20060101AFI20221006BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221006BHJP
   B23K 26/352 20140101ALI20221006BHJP
【FI】
B32B3/24 Z
B32B7/023
B23K26/352
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062358
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219668
【氏名又は名称】東海化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】野中 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】奥村 剛正
【テーマコード(参考)】
4E168
4F100
【Fターム(参考)】
4E168AB01
4E168CB03
4E168CB08
4E168JA17
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DC11C
4F100GB32
4F100JN01A
4F100JN01B
4F100JN01C
4F100JN02B
4F100JN02C
4F100JN08B
4F100JN08C
(57)【要約】
【課題】意匠性の自由度が高い表皮材を提供することを課題とする。
【解決手段】表皮材2は、透光性を有する表皮層20と、表皮層20の裏側に配置され、表皮層20よりも低い透光性を有する中間層21と、中間層21の裏側に配置され、中間層21よりも低い透光性を有する意匠層22と、意匠層22の裏面に開口する少なくとも一つの凹部23と、を備える。凹部23の底部232は、中間層21に配置される中間層到達部232bを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する表皮層と、
前記表皮層の裏側に配置され、前記表皮層よりも低い透光性を有する中間層と、
前記中間層の裏側に配置され、前記中間層よりも低い透光性を有する意匠層と、
前記意匠層の裏面に開口する少なくとも一つの凹部と、
を備える表皮材であって、
前記凹部の底部は、前記中間層に配置される中間層到達部を有することを特徴とする表皮材。
【請求項2】
透光性を有する表皮層と、
前記表皮層の裏側に配置され、前記表皮層よりも低い透光性を有する中間層と、
前記中間層の裏側に配置され、前記中間層よりも低い透光性を有する意匠層と、
前記意匠層の裏面に開口する少なくとも一つの凹部と、
を備える表皮材であって、
前記凹部の底部は、基底部と、前記基底部よりも深い深底部と、を有することを特徴とする表皮材。
【請求項3】
透光性を有する表皮層と、
前記表皮層の裏側に配置され、前記表皮層よりも低い透光性を有する中間層と、
前記中間層の裏側に配置され、前記中間層よりも低い透光性を有する意匠層と、
前記意匠層の裏面に開口する少なくとも一つの凹部と、
を備える表皮材であって、
前記凹部の側面は、前記表皮層の表面の面法線方向に対して交差する方向に延在する傾斜部を有することを特徴とする表皮材。
【請求項4】
前記凹部の底部は、基底部と、前記基底部よりも深い深底部と、を有する請求項1に記載の表皮材。
【請求項5】
前記凹部の側面は、前記表皮層の表面の面法線方向に対して交差する方向に延在する傾斜部を有する請求項4に記載の表皮材。
【請求項6】
前記凹部の側面は、前記表皮層の表面の面法線方向に対して交差する方向に延在する傾斜部を有する請求項1または請求項2に記載の表皮材。
【請求項7】
前記凹部の側面は、延在方向が異なる複数の前記傾斜部を有する請求項3、請求項5、請求項6のいずれかに記載の表皮材。
【請求項8】
前記表皮層の表面の面法線方向から見て、
前記凹部は、基幅部と、前記基幅部よりも幅が広い広幅部と、を有する請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の表皮材。
【請求項9】
前記凹部は、レーザー加工により形成される請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の内装部品に用いられる表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内装分野においては、バックライトにより模様やスイッチが発現する表皮材の開発が進んでいる。一例として、図11に、特許文献1の加飾シートの表裏方向断面図を示す。図11に示すように、表皮材(加飾シート)100は、表側から裏側に向かって、基材部101と、絵柄部102と、遮蔽部103と、を備えている。また、表皮材100は、複数の凹部(光透過部)104を備えている。複数の凹部104は、絵柄部102および遮蔽部103が除去された部分に配置されている。凹部104は、表皮材100の裏面に開口する凹部状を呈している。表皮材100の裏側には、表示装置105が配置されている。
【0003】
表示装置105がオフの場合、表皮材100の表面には、表皮材100自体の意匠が発現する。表示装置105がオンの場合、表皮材100の表面には、複数の凹部104、基材部101を透過した光により、所定の模様やスイッチなどが浮かび上がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-75371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の表皮材100によると、全ての凹部104の底部104aとして、一律に基材部101の裏面が用いられている。このため、全ての凹部104を通過した光は、一律に基材部101を透過し、表皮材100の表面に発現することになる。したがって、意匠性の自由度が低い。また、特許文献1の表皮材100によると、全ての凹部104の底部104aの深さ(表皮材100の裏面からの深さ)は一定である。この点においても、意匠性の自由度が低い。また、特許文献1の表皮材100によると、全ての凹部104は、一律に加飾シート100の表面の面法線方向に延在している。この点においても、意匠性の自由度が低い。そこで、本発明は、意匠性の自由度が高い表皮材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の表皮材は、透光性を有する表皮層と、前記表皮層の裏側に配置され、前記表皮層よりも低い透光性を有する中間層と、前記中間層の裏側に配置され、前記中間層よりも低い透光性を有する意匠層と、前記意匠層の裏面に開口する少なくとも一つの凹部と、を備える表皮材であって、前記凹部の底部は、前記中間層に配置される中間層到達部を有することを特徴とする。ここで、凹部の底部が中間層到達部を有する形態には、単一の凹部の底部の一部が中間層到達部である形態や、複数の凹部の底部のうち、一部の底部が中間層到達部である形態などが含まれる。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本発明の表皮材は、透光性を有する表皮層と、前記表皮層の裏側に配置され、前記表皮層よりも低い透光性を有する中間層と、前記中間層の裏側に配置され、前記中間層よりも低い透光性を有する意匠層と、前記意匠層の裏面に開口する少なくとも一つの凹部と、を備える表皮材であって、前記凹部の底部は、基底部と、前記基底部よりも深い深底部と、を有することを特徴とする。ここで、凹部の底部が基底部と深底部とを有する形態には、単一の凹部の底部の一部が基底部であり残部が深底部である形態や、複数の凹部の底部のうち、一部の底部が基底部であり残部の底部が深底部である形態などが含まれる。
【0008】
また、上記課題を解決するため、本発明の表皮材は、透光性を有する表皮層と、前記表皮層の裏側に配置され、前記表皮層よりも低い透光性を有する中間層と、前記中間層の裏側に配置され、前記中間層よりも低い透光性を有する意匠層と、前記意匠層の裏面に開口する少なくとも一つの凹部と、を備える表皮材であって、前記凹部の側面は、前記表皮層の表面の面法線方向に対して交差する方向に延在する傾斜部を有することを特徴とする。ここで、凹部の側面が傾斜部を有する形態には、単一の凹部の側面の一部が傾斜部である形態や、複数の凹部の側面のうち一部の側面が傾斜部である形態などが含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表皮材の凹部の底部は、中間層到達部を有している。中間層到達部は中間層の層内に配置されている。このため、凹部の底部が一律に表皮層の裏面である場合と比較して、光の透過率を低下させることができる。反対に、凹部の底部が一律に中間層の裏面である場合と比較して、光の透過率を向上させることができる。また、中間層到達部を表皮層寄りに配置すると、その分凹部が深くなる。このため、光の透過率を向上させることができる。反対に、中間層到達部を意匠層寄りに配置すると、その分凹部が浅くなる。このため、光の透過率を低下させることができる。このように、中間層到達部の表裏方向位置を調整することにより、表皮材の表面に発現する意匠を調整することができる。したがって、意匠性の自由度が高くなる。
【0010】
また、本発明の表皮材の凹部の底部は、基底部と深底部とを有している。基底部と深底部とでは、凹部の深さが異なる。当該深さの差に起因して、光の透過率に差を設けることができる。したがって、表皮材の表面に発現する意匠を調整することができる。よって、意匠性の自由度が高くなる。
【0011】
また、本発明の表皮材の凹部の側面は、傾斜部を有している。傾斜部は、表皮層の表面の面法線方向に対して交差する方向に延在している。このため、凹部を当該面法線方向に進行する光が、傾斜部に入射すると、光の少なくとも一部が傾斜部により反射される場合がある。また、光が傾斜部により屈折する場合がある。このため、表皮材の表面に発現する意匠を調整することができる。よって、意匠性の自由度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第一実施形態の表皮材の配置図である。
図2図2は、図1の枠II内の分解斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III方向断面図である。
図4図4は、同表皮材の製造方法のレーザー加工工程の模式図である。
図5図5は、第二実施形態の表皮材の表裏方向断面図である。
図6図6は、図5の意匠層の表面図である。
図7図7は、第三実施形態の表皮材の表裏方向断面図である。
図8図8は、第四施形態の表皮材の表裏方向断面図である。
図9図9(A)は、その他の実施形態(その1)の表皮材の意匠層の裏面図である。図9(B)は、その他の実施形態(その2)の表皮材の意匠層の裏面図である。
図10図10は、その他の実施形態(その3)の表皮材の表裏方向断面図である。
図11図11は、従来の加飾シートの表裏方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の表皮材の実施の形態について説明する。
【0014】
<第一実施形態>
[表皮材の配置、構成]
まず、本実施形態の表皮材の配置、構成について説明する。図1に、本実施形態の表皮材の配置図を示す。図2に、図1の枠II内の分解斜視図を示す。図3に、図2のIII-III方向断面図を示す。図4に、同表皮材の製造方法のレーザー加工工程の模式図を示す。なお、図3図4においては、表裏方向厚さを強調して示す。
【0015】
図1に示すように、表皮材2は、車室のコンソールボックス(内装部品)90の表面(上面)全体に配置されている。図2に示すように、表皮材2は、表側(車内側、上側)から裏側(車外側、下側)に向かって、表皮層20と、中間層21と、意匠層22と、複数の凹部23と、を備えている。
【0016】
図3に示すように、表皮層20の表面(上面)は車内に露出している。表皮層20は、合成皮革製であって、層状を呈している。表皮層20は透光性、柔軟性を有している。表皮層20の表面には、シボ模様(図略)が形成されている。中間層21は、表皮層20の裏面(下面)に積層されている。中間層21は、透光性インク製であって、層状を呈している。中間層21は透光性、柔軟性を有している。中間層21は表皮層20よりも透光性が低い。すなわち、中間層21はスモーク調の半透明である。また、中間層21は有色透明である。意匠層22は、中間層21の裏面に積層されている。意匠層22は、不透光性インク製であって、層状を呈している。意匠層22は不透光性、柔軟性を有している。すなわち、意匠層22は、光を透過しない。複数の凹部23は、意匠層22の裏面に凹設されている。凹部23については、後で詳しく説明する。
【0017】
意匠層22の裏側つまり表皮材2の裏側には、シート状の光源80が配置されている。光源80は、複数のLED(図略)を備えている。光源80の表面は、全面的に発光可能である。
【0018】
[凹部の配置、構成]
次に、本実施形態の表皮材の凹部の配置、構成について説明する。複数の凹部23は、意匠層22の裏面の全面に亘って配置されており、図2に示すように全体として水玉模様の意匠を形成している。凹部23は、表裏方向から見て円形を呈している。凹部23の内部空間は、円柱状を呈している。
【0019】
図2図3に示すように、複数の凹部23は、複数の基準凹部23aと、複数の深凹部23bと、に分類される。基準凹部23aと深凹部23bとは、意匠層22の下面の左右方向(一軸方向)に、交互に配置されている。
【0020】
図3に示すように、基準凹部23aは、側面(内周面)230と、開口部231と、基底部232aと、を備えている。側面230は、表裏方向に延在している。側面230は、直管状(詳しくは直管の内周面状)を呈している。側面230は、表皮層20の表面の面法線方向に対して、平行に延在している。開口部231は、意匠層22の裏面に配置されている。基底部232aは、開口部231よりも表側に配置されている。深凹部23bは、基準凹部23aと同様に、側面(内周面)230と、開口部231と、を備えている。深凹部23bは、基底部232aの代わりに、深底部232bを備えている。深底部232bは、本発明の「深底部」、「中間層到達部」の概念に含まれる。
【0021】
基準凹部23aと深凹部23bとの相違点は、底部232(基底部232a、深底部232b)だけである。基準凹部23a、深凹部23bは、共に意匠層22を貫通している。基準凹部23aは、中間層21には到達していない。基底部232aは、中間層21の下面に配置されている。他方、深凹部23bは、中間層21に到達している。深底部232bは、中間層21の表裏方向中間に配置されている。
【0022】
[表皮材の製造方法]
次に、本実施形態の表皮材の製造方法について説明する。本実施形態の表皮材の製造方法は、積層工程と、レーザー加工工程と、を有している。まず、積層工程においては、表皮層20の裏面に、中間層21と意匠層22とを、スクリーン印刷により積層させる。次に、図4に示すように、レーザー加工工程においては、積層体(表皮層20、中間層21、意匠層22)を裏返しに(意匠層22の裏面が上向きになるように)配置し、レーザー加工機91を用いて、意匠層22の裏面に凹部23(基準凹部23a、深凹部23b)を形成する。レーザー加工機91のノズル910は、積層体に対して、水平方向Y3、揺動方向Y4に相対的に移動可能である。ノズル910を適宜移動させることにより、意匠層22の裏面に、複数の凹部23からなる水玉模様の意匠を形成する。レーザー出力(電力値)を調整することにより、凹部23の深さを調整する。すなわち、基準凹部23aと深凹部23bとを作り分ける。最後に、光源80の表側に表皮材2を配置する。
【0023】
[表皮材の使用方法]
次に、本実施形態の表皮材の使用方法について説明する。図3に示すように、光源80がオフの場合は、光源80が発光しない。このため、表皮材2の表面には、表皮材2自体の意匠(主に、表皮層20、中間層21の意匠)が発現する。中間層21は表皮層20よりも透光性が低い。このため、意匠層22は表皮材2の表側からは視認しにくい。
【0024】
光源80がオンの場合は、光源80が発光する。このため、表皮材2の表面には、複数の基準凹部23aと中間層21(表裏方向厚さの全長)と表皮層20とを透過した光(図3の矢印Y1参照)と、複数の深凹部23bと中間層21(表裏方向厚さの一部)と表皮層20とを透過した光(図3の矢印Y2参照)と、が発現する。これら二種類の光により、表皮材2の表面に意匠層22の意匠(図2に示す水玉模様)が浮かび上がる。深凹部23bを透過した光(矢印Y2)は、基準凹部23aを透過した光(矢印Y1)よりも明るい。このため、表皮材2の表面には、明暗二種類の水玉模様が浮かび上がる。
【0025】
[作用効果]
次に、本実施形態の表皮材の作用効果について説明する。図3に示すように、表皮材2は深凹部23bつまり深底部232bを備えている。深底部232bは、中間層21の層内に配置されている。このため、凹部23の底部232が一律に表皮層20の裏面である場合と比較して、光の透過率を低下させることができる。反対に、凹部23の底部232が一律に中間層21の裏面である場合と比較して、光源80からの光の透過率を向上させることができる。また、深底部232bを表皮層20寄りに配置すると、その分深凹部23bが深くなる。このため、光源80からの光の透過率を向上させることができる。反対に、深底部232bを意匠層22寄りに配置すると、その分深凹部23bが浅くなる。このため、光源80からの光の透過率を低下させることができる。このように、深底部232bの表裏方向位置を調整することにより、表皮材2の表面に発現する意匠を調整することができる。したがって、意匠性の自由度が高くなる。
【0026】
また、基底部232aと深底部232bとでは、凹部23(基準凹部23a、深凹部23b)の深さが異なる。当該深さの差に起因して、光の透過率に差を設けることができる。したがって、表皮材2の表面に発現する意匠を調整することができる。よって、意匠性の自由度が高くなる。
【0027】
また、図3に示すように、表皮材2は半透明の中間層21を備えている。このため、光源80がオフの場合は、意匠層22の意匠が表皮材2の表面に発現するのを、抑制することができる。他方、光源80がオンの場合は、意匠層22の意匠が表皮材2の表面に発現するのを、補助することができる。
【0028】
仮に、表皮材2を、スクリーン印刷のみにより製造する場合、中間層21の裏面に意匠層22を印刷する際、意匠層22の意匠に応じたスクリーンマスクを用いる必要がある。このため、意匠層22の意匠が変更される場合、逐一スクリーンマスクを変更する必要がある。この点、本実施形態の表皮材2の製造方法は、積層工程と、レーザー加工工程と、を有している。本実施形態の表皮材2の製造方法によると、中間層21の裏面に意匠層22を印刷した後、レーザー加工により意匠層22に凹部23を配置することができる。このため、意匠層22の意匠が変更される場合であっても、逐一スクリーンマスクを変更する必要がない。図4に示すノズル910の動きやレーザー出力などを変更するだけで、意匠層22の意匠の変更に対応することができる。したがって、意匠変更に要するコストやダウンタイムを削減することができる。また、少量多品種の表皮材2を製造する際に好適である。
【0029】
<第二実施形態>
本実施形態の表皮材と、第一実施形態の表皮材との相違点は、凹部が傾斜部を備えている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0030】
図5に、本実施形態の表皮材の表裏方向断面図を示す。なお、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。図5に示すように、五つの凹部23は、一つの垂直凹部23cと、四つの傾斜凹部23d~23gと、に分類される。五つの凹部23(垂直凹部23c、傾斜凹部23d~23g)の底部232は、各々、中間層21の裏面に配置されている。凹部23の側面230は、傾斜部2300を備えている。
【0031】
垂直凹部23cは、垂直方向(表裏方向)に延在している。すなわち、表皮層20の表面の面法線L1の延在方向(表裏方向)に対して、垂直凹部23cの軸L2は、平行に延在している(傾斜角は0°)。垂直凹部23cの傾斜部2300は、傾斜角θ1で表側から裏側に向かって尖る、テーパ状を呈している。
【0032】
垂直凹部23cの左隣りの傾斜凹部23dは、開口部231から底部232に向かって(裏側から表側に向かって)、左向きに延在している。すなわち、面法線L1の延在方向に対して、傾斜凹部23dの軸L2は、傾斜角θ1だけ、左向きに傾斜している。傾斜凹部23dの側面230は、直管状を呈している。このため、傾斜部2300は、軸L2同様に、傾斜角θ1だけ、左向きに傾斜している。
【0033】
傾斜凹部23dの左隣りの傾斜凹部23eは、開口部231から底部232に向かって、左向きに延在している。すなわち、面法線L1の延在方向に対して、傾斜凹部23eの軸L2は、傾斜角θ2(>θ1)だけ、左向きに傾斜している。傾斜凹部23eの側面230は、直管状を呈している。このため、傾斜部2300は、軸L2同様に、傾斜角θ2だけ、左向きに傾斜している。
【0034】
垂直凹部23cの右隣りの傾斜凹部23fは、開口部231から底部232に向かって、傾斜角θ1で、右向きに延在している。その他の構成は傾斜凹部23dと同様である。傾斜凹部23fの右隣りの傾斜凹部23gは、開口部231から底部232に向かって、傾斜角θ2で、右向きに延在している。その他の構成は傾斜凹部23eと同様である。
【0035】
図6に、図5の意匠層の表面図を示す。なお、図5の意匠層は、図6のV-V方向断面図に対応する。図6に示すように、表側から見て(透視して)、五つの凹部23(垂直凹部23c、傾斜凹部23d~23g)の底部232の外周縁と、開口部231の外周縁と、は互いに一致していない。すなわち、表側から透視して、五つの凹部23の底部232の外周縁と、開口部231の外周縁と、は互いにずれて配置されている。
【0036】
本実施形態の表皮材と、第一実施形態の表皮材とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。図5図6に示すように、複数の凹部23(垂直凹部23c、傾斜凹部23d~23g)の側面230は、各々、傾斜部2300を備えている。傾斜部2300は、面法線L1の延在方向に対して交差する方向に延在している。このため、凹部23を面法線L1の方向に進行する光が、傾斜部2300に入射すると、光の少なくとも一部が傾斜部2300により反射される場合がある。また、光が傾斜部2300により屈折する場合がある。このため、表皮材2の表面に発現する意匠を調整することができる。よって、意匠性の自由度が高くなる。
【0037】
また、複数の凹部23の傾斜方向は、各々相違している。この点においても、表皮材2の表面に発現する意匠を調整することができる。また、複数の凹部23の傾斜部2300の傾斜角は、複数(0°、θ1、θ2)設定されている。この点においても、表皮材2の表面に発現する意匠を調整することができる。
【0038】
<第三実施形態>
本実施形態の表皮材と、第一実施形態、第二実施形態の表皮材との相違点は、凹部が中間層到達部、基底部、深底部、傾斜部を備えている点である。また、中間層が二層構造を呈している点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0039】
図7に、本実施形態の表皮材の表裏方向断面図を示す。なお、図3図5と対応する部位については、同じ符号で示す。図7に示すように、中間層21は、表層(第一層)210と裏層(第二層)211とを備えている。表層210、裏層211は、各々、透光性を有している。裏層211は表層210よりも透光性が低い。また、裏層211と表層210とでは互いに色が異なる。
【0040】
図7に示す五つの凹部23h~23lのうち、右端の凹部23lは、図3の基準凹部23aに対応する。残りの四つの凹部23h~23kは、図3の深凹部23bに対応する。すなわち、凹部23lの底部(詳しくは底部の表側の端。以下同様。)232lは、本発明の「基底部」の概念に含まれる。また、凹部23h~23kの底部232h~232kは、本発明の「深底部」、「中間層到達部」の概念に含まれる。底部232h~232kは、中間層21の層内に配置されている。
【0041】
また、五つの凹部23h~23lは、図5の傾斜凹部23d~23gに対応する。すなわち、五つの凹部23h~23lの側面230は、各々、傾斜部2300を備えている。面法線L1の延在方向に対して、五つの凹部23h~23lの軸L2は、傾斜角θ3だけ、右向きに傾斜している。五つの凹部23h~23lの側面230は、各々、直管状を呈している。このため、五つの傾斜部2300は、軸L2同様に、傾斜角θ3だけ、右向きに傾斜している。
【0042】
本実施形態の表皮材と、第一実施形態、第二実施形態の表皮材とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のように、複数の傾斜部2300が、同じ向きに傾斜していてもよい。こうすると、表皮材2の表面に発現する意匠に指向性(所定の方向(例えば運転席側、助手席側)から当該意匠を視認しやすい特性)を持たせることができる。また、複数の傾斜部2300が、同じ傾斜角θ3で傾斜していてもよい。こうすると、複数の傾斜部2300における、光の反射や屈折の程度を揃えることができる。このため、表皮材2の表面に発現する意匠に統一性を持たせることができる。また、複数の凹部23h~23lの深さが全て異なっていてもよい。また、意匠層22が透光性を有する場合は、凹部23lの基底部232lが意匠層22の層内に配置されていてもよい。また、中間層21が複数の層(表層210、裏層211)で構成されていてもよい。例えば、中間層21を複数の層で構成し、表側から裏側に向かって、各層の透光性を徐々に低下させてもよい。また、中間層21を複数の層で構成し、層毎に色を変えてもよい。
【0043】
中間層21と同様に、意匠層22が透光性を有する場合は、意匠層22を複数の層で構成し、表側から裏側に向かって、各層の透光性を徐々に低下させてもよい。また、意匠層22を複数の層で構成し、層毎に色を変えてもよい。
【0044】
<第四実施形態>
本実施形態の表皮材と、第三実施形態の表皮材との相違点は、単一の凹部が中間層到達部、基底部、深底部、傾斜部を備えている点である。また、中間層が単層構造を呈している点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0045】
図8に、本実施形態の表皮材の表裏方向断面図を示す。なお、図3図5と対応する部位については、同じ符号で示す。図8に示すように、凹部23の底部232は、基底部232aと深底部232bとを備えている。深底部232bは、本発明の「深底部」、「中間層到達部」の概念に含まれる。凹部23の側面230のうち、深底部232bに連なる部分には、傾斜部2300が配置されている。面法線L1の延在方向に対して、傾斜部2300は、傾斜角θ4だけ、右向きに傾斜している。
【0046】
本実施形態の表皮材と、第一実施形態、第二実施形態の表皮材とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のように、単一の凹部23が、基底部232a、深底部(中間層到達部)232b、傾斜部2300を備えていてもよい。
【0047】
<その他>
以上、本発明の表皮材の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0048】
[構成について]
図9(A)に、その他の実施形態(その1)の表皮材の意匠層の裏面図を示す。図9(B)に、その他の実施形態(その2)の表皮材の意匠層の裏面図を示す。なお、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。また、凹部にハッチングを施す。
【0049】
図9(A)に示すように、二つの凹部23m、23nは、各々、左右方向に延在する帯状を呈している。凹部23mは、本発明の「広幅部」の概念に含まれる。凹部23nは、本発明の「基幅部」の概念に含まれる。凹部23mは凹部23nよりも、開口幅(詳しくは、開口部231の前後方向幅(凹部23m、23nの延在方向に対して直交する方向の幅。短手方向幅))Dが広い。
【0050】
図9(B)に示すように、凹部23は、左右方向に延在する帯状を呈している。凹部23のうち、左側部分23oは、本発明の「広幅部」の概念に含まれる。右側部分23pは、本発明の「基幅部」の概念に含まれる。左側部分23oは右側部分23pよりも、開口幅Dが広い。図9(A)、図9(B)に示すように、凹部23に、開口幅Dが異なる部位(基幅部、広幅部)を配置すると、表皮材2の表面に発現する意匠を調整することができる。よって、意匠性の自由度が高くなる。図9(A)、図9(B)の広幅部、狭幅部は、図3図5図7図8の凹部23に組み込むことができる。
【0051】
図10に、その他の実施形態(その3)の表皮材の表裏方向断面図を示す。なお、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。図10に示すように、中間層21は、左層(第一層)212と右層(第二層)213とを備えている。左層212、右層213は、各々、透光性を有している。左層212と右層213とは互いに色、透光性が異なる。意匠層22は、左層(第一層)222と右層(第二層)223とを備えている。左層222、右層223は、各々、不透光性を有している。左層222と右層223とは互いに色が異なる。図10に示すように、中間層21および意匠層22のうち少なくとも一方が、面方向(表裏方向に対して直交する方向)に並ぶ複数の層を備えていてもよい。こうすると、表皮材2の表面に発現する意匠を調整することができる。よって、意匠性の自由度が高くなる。
【0052】
図3図7図8に示す基底部232a、232l、深底部232b、232h~232kの位置は特に限定しない。意匠層22(意匠層22が透光性を有する場合)の層内、中間層21の裏面、中間層21の層内などであってもよい。図5図7図8に示す傾斜部2300の傾斜角、延在方向(傾斜方向)は特に限定しない。
【0053】
凹部23により表皮材2に発現する意匠は特に限定しない。例えば、模様(水玉模様、縞模様、格子模様、杢目模様、大理石模様など)、文字(アルファベット、ひらがな、カタカナ、漢字、数字など)、図形(多角形、円形など)、記号(機器操作用のボタン、機器の状態を示すアイコンなど)から選ばれる一種以上を含む意匠などが挙げられる。また、表皮材2に発現する意匠の色は単色でも多色でもよい。色は、表皮層20、中間層21、意匠層22、光源80から選ばれる一種以上により、表皮材2に表示すればよい。特に、表側から見て凹部23と重複する部位に色を付けると、光源80からの光により、表皮材2に色が発現しやすい。
【0054】
表皮層20、中間層21の透光性は特に限定しない。無色透明、有色透明、半透明などであってもよい。中間層21は、裏面から表面に向かって色が変化するグラデーションを有していてもよい。こうすると、中間層到達部(図3図8の深底部232b、図7の底部232h~232k)の位置に応じて、表皮材2の表面に発現する色を変えることができる。なお、中間層21のグラデーションは、複数の層により形成されていてもよい。意匠層22は、不透光性を有していなくてもよい。すなわち、意匠層22は、中間層21よりも低い透光性を有していればよい。この場合、中間層21と同様に、意匠層22が、裏面から表面に向かって色が変化するグラデーションを有していてもよい。こうすると、底部(図7の基底部232l)の位置に応じて、表皮材2の表面に発現する色を変えることができる。表皮層20、中間層21、意匠層22、光源80の色(色相、彩度、明度)は特に限定しない。また、光源80の輝度は特に限定しない。
【0055】
意匠層22と光源80との間に、透光性を有するセンサ(例えば静電容量型センサ)を介装してもよい。こうすると、表皮材2をセンサやスイッチとして利用することができる。光源80がオンになるタイミングは特に限定しない。常時オンであってもよい。また、車両のルームランプや前照灯などと連動して、光源80がオンになってもよい。また、近接センサ(例えば静電容量型センサ)が表皮材2に対する使用者の近接を検出した場合に、光源80をオンにしてもよい。
【0056】
光源80の種類は特に限定しない。有機ELシート、無機ELシートであってもよい。また、光源80が、光源本体(例えばLED)と、導光板(例えばアクリル板)と、を備えていてもよい。この場合、導光板の面方向隣りに光源本体を配置し、導光板の表面を面発光させ、当該導光板の表側に表皮材2を配置すればよい。光源80は、蓄光シートであってもよい。
【0057】
表皮材2を配置する内装部品は特に限定しない。例えば、ドアトリム、シート、床、天井、インストルメントパネル、センタークラスター、グローブボックス、ステアリングホイール(ハンドル)、センターコンソール、レジスターなどが挙げられる。内装部材における表皮材2の設置面は、平面でも曲面でもよい。表皮材2を配置する際の向き(表裏方向の向き)は特に限定しない。車両以外の船舶、航空機、ビル、家屋の内装部品に表皮材2を配置してもよい。
【0058】
表皮材2の構成は特に限定しない。表皮層20、中間層21、意匠層22、光源80のうち、表裏方向に隣接する二層間(表皮層20と中間層21との間、中間層21と意匠層22との間、意匠層22と光源80との間)に他の層が介在していてもよい。また、表皮層20の表側に他の層が配置されていてもよい。
【0059】
[材質について]
表皮層20の材質は特に限定しない。例えば、合成皮革、樹脂、エラストマー、不織布、各種布(織物、編物など)などが挙げられる。合成皮革、樹脂、エラストマーとしては、具体的にはアクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、シリコーン、エポキシ、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、動的架橋型熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。不織布、各種布としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、綿などが挙げられる。表皮層20は、着色ポリエチレン粒子などの着色粒子、酸化チタンなどの光拡散粒子、チタンブラック、カーボンブラックなどの光吸収粒子を含有していてもよい。
【0060】
表皮層20の可視光線透過率は、50%以上100%以下とする方がよい。こうすると、光源80がオンの場合に、意匠層22の意匠を表皮材2の表面に、より浮かび上がらせることができる。なお、本明細書において、可視光線透過率は、JIS A5759:2016に準じ、(株)島津製作所製の分光光度計「UV3100PC」により波長380~780nmの透過スペクトルを測定して計算された値を採用する。
【0061】
中間層21の材質は特に限定しない。例えば、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、シリコーン、ポリエステル、エポキシ、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、動的架橋型熱可塑性エラストマーなどの、樹脂やエラストマーなどが挙げられる。中間層21は、着色ポリエチレン粒子などの着色粒子、酸化チタンなどの光拡散粒子、チタンブラック、カーボンブラックなどの光吸収粒子を含有していてもよい。
【0062】
中間層21の可視光線透過率は、0%超過40%以下とする方がよい。こうすると、光源80がオフの場合に、意匠層22の意匠が、より目立ちにくくなる。
【0063】
意匠層22の材質は特に限定しない。例えば、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、シリコーン、ポリエステル、エポキシ、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、動的架橋型熱可塑性エラストマーなどの、樹脂やエラストマーなどが挙げられる。意匠層22は、着色ポリエチレン粒子などの着色粒子、酸化チタンなどの光拡散粒子、チタンブラック、カーボンブラックなどの光吸収粒子を含有していてもよい。
【0064】
[製造方法について]
表皮層20、中間層21、意匠層22の積層方法は特に限定しない。スクリーン印刷の他、グラビア印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷などを用いてもよい。また、接着や蒸着などにより各層を積層してもよい。凹部23の形成方法は特に限定しない。レーザー加工の他、フォトエッチングなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
2:表皮材、20:表皮層、21:中間層、210:表層、211:裏層、212:左層、213:右層、22:意匠層、23:凹部、23a:基準凹部、23b:深凹部、23c:垂直凹部、23d~23g:傾斜凹部、23h~23l:凹部、23m:凹部(広幅部)、23n:凹部(基幅部)、23o:左側部分(広幅部)、23p:右側部分(基幅部)、230:側面、2300:傾斜部、231:開口部、232:底部、232a:基底部、232b:深底部(中間層到達部)、232h~232k:底部(深底部、中間層到達部)、232l:底部(基底部)、80:光源、90:コンソールボックス、91:レーザー加工機、910:ノズル
θ1~θ4:傾斜角、D:開口幅、L1:面法線、L2:軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11