(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157890
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】センサアセンブリおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 36/00 20060101AFI20221006BHJP
G01V 3/08 20060101ALI20221006BHJP
H01H 11/00 20060101ALI20221006BHJP
H01H 9/16 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01H36/00 L
G01V3/08 D
H01H11/00 Q
H01H9/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062371
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219668
【氏名又は名称】東海化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】野中 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】奥村 剛正
【テーマコード(参考)】
2G105
5G023
5G046
5G052
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB04
2G105DD02
2G105EE02
2G105HH02
5G023CA50
5G046AA11
5G046AB03
5G046AC24
5G046AD13
5G046AE05
5G052AA23
5G052BB10
5G052JA02
5G052JA07
5G052JB05
5G052JB08
5G052JB13
(57)【要約】
【課題】透光性を有するセンサ層を備えるセンサアセンブリおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】センサアセンブリ1は、透光性を有する表皮材2と、表皮材2の裏側に配置され、絶縁層400と、絶縁層400の表側および裏側のうち少なくとも一方に配置される電極層401と、絶縁層400および電極層401を表裏方向に貫通する第一貫通孔42と、を有するセンサ層4と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する表皮材と、
前記表皮材の裏側に配置され、絶縁層と、前記絶縁層の表側および裏側のうち少なくとも一方に配置される電極層と、前記絶縁層および前記電極層を表裏方向に貫通する第一貫通孔と、を有するセンサ層と、
を備えるセンサアセンブリ。
【請求項2】
前記表皮材と前記センサ層との間に配置され、光拡散性を有する表側柔軟層を備える請求項1に記載のセンサアセンブリ。
【請求項3】
前記センサ層の裏側に配置され、表側から見て前記第一貫通孔に重なる第二貫通孔を有する裏側柔軟層を備える請求項1または請求項2に記載のセンサアセンブリ。
【請求項4】
前記裏側柔軟層の裏側に配置され、透光性を有する基材を備える請求項3に記載のセンサアセンブリ。
【請求項5】
前記裏側柔軟層の裏側に配置され、表側から見て前記第二貫通孔に重なる第三貫通孔を有する基材を備える請求項3に記載のセンサアセンブリ。
【請求項6】
前記基材の裏側に配置され、表側から見て前記第一貫通孔と重なる光源を備える請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のセンサアセンブリ。
【請求項7】
前記電極層は、スチレン系熱可塑性エラストマーと、カーボンブラックを含む導電材と、を有し、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーの200℃下、せん断速度が60s-1以上200s-1以下の低せん断領域における溶融粘度は100Pa・s以上800Pa・s以下であり、かつ、200℃下、前記低せん断領域における溶融粘度は、同温度下、せん断速度が1000s-1以上1220s-1以下の高せん断領域における溶融粘度の4倍以下であり、
前記カーボンブラックのDBP吸収量は300cm3/100g以上であり、
厚さは50μm以上500μm以下である請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のセンサアセンブリ。
【請求項8】
請求項3に記載のセンサアセンブリの製造方法であって、
表側から裏側に向かって、前記センサ層と、前記裏側柔軟層と、を積層させ積層体を形成する積層工程と、
前記積層体を表裏方向に貫通する貫通孔を開設することにより、前記センサ層に前記第一貫通孔を、前記裏側柔軟層に前記第二貫通孔を、各々開設する孔開設工程と、
を有するセンサアセンブリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の内装部品に用いられる表皮材付きのセンサアセンブリおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内装分野においては、使用時に、バックライトにより操作アイコンなどが表皮材の表面に発現するインターフェイスの開発が進んでいる。一例として、
図15に、特許文献1のセンサアセンブリの表裏方向断面図を示す。
図15に示すように、センサアセンブリ100は、表側から裏側に向かって、透光性を有する表皮材101と、例えば静電容量型のタッチセンサ102と、光源103と、を備えている。光源103は、裏側からタッチセンサ102に光を照射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/225140号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表皮材101の表面に操作アイコンなどの意匠を発現させるためには、光源103からの光が、タッチセンサ102、表皮材101を透過する必要がある。すなわち、表皮材101のみならず、タッチセンサ102が透光性を有する必要がある。そこで、本発明は、透光性を有するセンサ層を備えるセンサアセンブリおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のセンサアセンブリは、透光性を有する表皮材と、前記表皮材の裏側に配置され、絶縁層と、前記絶縁層の表側および裏側のうち少なくとも一方に配置される電極層と、前記絶縁層および前記電極層を表裏方向に貫通する第一貫通孔と、を有するセンサ層と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、上記課題を解決するため、本発明のセンサアセンブリの製造方法は、透光性を有する表皮材と、前記表皮材の裏側に配置され、絶縁層と、前記絶縁層の表側および裏側のうち少なくとも一方に配置される電極層と、前記絶縁層および前記電極層を表裏方向に貫通する第一貫通孔と、を有するセンサ層と、前記センサ層の裏側に配置され、表側から見て前記第一貫通孔に重なる第二貫通孔を有する裏側柔軟層と、を備えるセンサアセンブリの製造方法であって、表側から裏側に向かって、前記センサ層と、前記裏側柔軟層と、を積層させ積層体を形成する積層工程と、前記積層体を表裏方向に貫通する貫通孔を開設することにより、前記センサ層に前記第一貫通孔を、前記裏側柔軟層に前記第二貫通孔を、各々開設する孔開設工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセンサアセンブリのセンサ層は、第一貫通孔を備えている。第一貫通孔は、絶縁層および電極層を表裏方向に貫通している。このため、本発明のセンサアセンブリによると、第一貫通孔を介して、光を透過させることができる。このように、センサ層は透光性を有している。
【0008】
また、本発明のセンサアセンブリの製造方法によると、積層工程において、センサ層と裏側柔軟層とを積層させ積層体を形成し、孔開設工程において、当該積層体に貫通孔を開設している。このため、センサ層の第一貫通孔と、裏側柔軟層の第二貫通孔と、の位置ずれを抑制することができる。したがって、位置ずれに起因する透光性の低下を抑制することができる。また、透光性を有するセンサ層を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第一実施形態のセンサアセンブリの配置図である。
【
図3】
図3は、同センサアセンブリの透過表面図である。
【
図5】
図5は、同センサアセンブリの表皮材の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、同センサアセンブリのセンサ層の近接センサ部の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、同センサアセンブリのセンサ層の感圧センサ部の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、第一実施形態のセンサアセンブリの製造方法の表皮材製造工程のレーザー加工工程の模式図である。
【
図9】
図9は、同製造方法の積層工程の模式図である。
【
図12】
図12は、ポリマーの溶融粘度とせん断速度との関係を示す模式図である。
【
図13】
図13は、第二実施形態のセンサアセンブリの表裏方向断面図である。
【
図14】
図14(A)は、その他の実施形態(その1)のセンサアセンブリの表皮材の上下方向断面図である。
図14(B)は、その他の実施形態(その2)のセンサアセンブリの表皮材の上下方向断面図である。
【
図15】
図15は、従来のセンサアセンブリの表裏方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のセンサアセンブリおよびその製造方法の実施の形態について説明する。
【0011】
<第一実施形態>
[センサアセンブリの配置、構成]
まず、本実施形態のセンサアセンブリの配置、構成について説明する。
図1に、本実施形態のセンサアセンブリの配置図を示す。
図2に、
図1の枠II内の分解斜視図を示す。
図3に、同センサアセンブリの透過表面図を示す。
図4に、
図3のIV-IV方向断面図(表裏方向断面図)を示す。
【0012】
図1に示すように、センサアセンブリ1は、車室のコンソールボックス(内装部品)90の表面(上面)に配置されている。
図2~
図4に示すように、センサアセンブリ1は、表側(車内側、上側)から裏側(車外側、下側)に向かって、表皮材2と、表側柔軟層3と、センサ層4と、裏側柔軟層5と、基材6と、光源部材8と、を備えている。
【0013】
(表皮材2)
図5に、表皮材の分解斜視図を示す。
図5に示すように、表皮材2は、表側から裏側に向かって、表皮層20と、中間層21と、意匠層22と、複数の凹部23と、を備えている。表皮層20の表面(上面)は車内に露出している。表皮層20は、合成皮革製であって、層状を呈している。表皮層20は透光性、柔軟性を有している。表皮層20の表面には、シボ模様(図略)が形成されている。
【0014】
中間層21は、表皮層20の裏面(下面)に積層されている。中間層21は、透光性インク製であって、層状を呈している。中間層21は透光性、柔軟性を有している。中間層21は表皮層20よりも透光性が低い。すなわち、中間層21はスモーク調の半透明である。また、中間層21は有色透明である。
【0015】
意匠層22は、中間層21の裏面に積層されている。意匠層22は、不透光性インク製であって、層状を呈している。意匠層22は不透光性、柔軟性を有している。すなわち、意匠層22は、光を透過しない。複数の凹部23は、意匠層22の裏面に凹設されている。複数の凹部23は、表側から見て、文字「A」、「B」、「C」を形成している。
【0016】
図4に示すように、凹部23は、側面230と、開口部231と、底部232と、を備えている。凹部23の内部は空間である。側面230は、表裏方向に延在している。開口部231は、意匠層22の裏面に配置されている。底部232は、開口部231よりも表側に配置されている。底部232は、中間層21の裏面に配置されている。
【0017】
(表側柔軟層3)
表側柔軟層3は、表皮材2の裏側に配置されている。表側柔軟層3は、熱可塑性エラストマー製であって、柔軟性を有している。表側柔軟層3の硬度は、アスカーC(SRISO101(日本ゴム協会標準規格)に規定されたデュロメーター)硬度計で測定して、20~30程度である。表側柔軟層3は、透光性を有している。表側柔軟層3は、光拡散性を有している。このため、後述する光源80からの光は、表側柔軟層3により拡散する。
【0018】
(センサ層4)
センサ層4は、近接センサ部40と、感圧センサ部41と、複数の第一貫通孔42と、を備えている。
図6に、近接センサ部の分解斜視図を示す。
図7に、感圧センサ部の分解斜視図を示す。
【0019】
図6に示すように、近接センサ部40は、静電容量型(自己容量方式)の近接センサである。近接センサ部40は、絶縁層400と、電極層401と、を備えている。電極層401は、柔軟性を有しており、
図2に示す表側柔軟層3の裏側に配置されている。電極層401は、スチレン系熱可塑性エラストマーと、カーボンブラックを含む導電材と、を有している。スチレン系熱可塑性エラストマーの200℃下、せん断速度が60s
-1以上200s
-1以下の低せん断領域における溶融粘度は、100Pa・s以上800Pa・s以下である。200℃下、低せん断領域における溶融粘度は、同温度下、せん断速度が1000s
-1以上1220s
-1以下の高せん断領域における溶融粘度の4倍以下である。カーボンブラックのDBP吸収量は300cm
3/100g以上である。電極層401の表裏方向厚さは、50μm以上500μm以下である。
【0020】
絶縁層400は、電極層401の裏側に配置されている。絶縁層400は、柔軟な熱可塑性エラストマーであるスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーを有している。絶縁層400の可視光線透過率は、20%以上100%以下である。なお、本明細書において、可視光線透過率は、JIS A5759:2016に準じ、(株)島津製作所製の分光光度計「UV3100PC」により波長380~780nmの透過スペクトルを測定して計算された値を採用する。制御装置(図略)は、電極層401と、使用者の指先と、の間の静電容量の変化に基づき、後述する複数の光源80をオンにする。
【0021】
図7に示すように、感圧センサ部41は、静電容量型の感圧センサ(荷重センサ)である。感圧センサ部41は、絶縁層410と、表側電極層411と、三つの裏側電極層412と、検出部SA~SC(
図3、
図4)と、を備えている。表側電極層411、裏側電極層412は、本発明の「電極層」の概念に含まれる。
【0022】
表側電極層411は、
図2に示す近接センサ部40の裏側に配置されている。表側電極層411の材質は、電極層401の材質と同様である。表側電極層411は、左右方向に延在する帯状を呈している。絶縁層410は、表側電極層411の裏側に配置されている。絶縁層410の材質は、絶縁層400の材質と同様である。
【0023】
三つの裏側電極層412は、絶縁層410の裏側に配置されている。裏側電極層412の材質は、電極層401の材質と同様である。三つの裏側電極層412は、所定間隔離間して、左右方向に並んでいる。裏側電極層412は、前後方向に延在する帯状を呈している。
【0024】
図3に点線ハッチングで示すように、三つの検出部SA~SCは、表側から見て、表側電極層411と、三つの裏側電極層412と、が交差(直交)する部分に配置されている。検出部SAは意匠層22(
図5)の文字「A」の裏側に、検出部SBは意匠層22の文字「B」の裏側に、検出部SCは意匠層22の文字「C」の裏側に、各々配置されている。制御装置は、検出部SA~SCの静電容量の変化に基づき、各検出部SA~SCに関連づけられたアクチュエータ(図略)を駆動し、使用者の命令を実行する。
【0025】
図4、
図6、
図7に示すように、複数の第一貫通孔42は、センサ層4(近接センサ部40、感圧センサ部41)の面方向(表裏方向に対して直交する方向)全体に分布している。第一貫通孔42は、センサ層4を表裏方向に貫通している。
【0026】
(裏側柔軟層5)
図2、
図4に示すように、裏側柔軟層5は、センサ層4の裏側に配置されている。裏側柔軟層5の材質、硬度は、表側柔軟層3の材質、硬度と同様である。裏側柔軟層5は、透光性を有している。
【0027】
表側柔軟層3と異なり、裏側柔軟層5は、複数の第二貫通孔52を備えている。複数の第二貫通孔52は、裏側柔軟層5の面方向全体に分布している。第二貫通孔52は、裏側柔軟層5を表裏方向に貫通している。
図3に示すように、第二貫通孔52は、表側から見て、第一貫通孔42に重なっている。後述する光源80からの光は、第二貫通孔52を透過する。
【0028】
(基材6、光源部材8)
図2、
図4に示すように、基材6は、樹脂製であって、裏側柔軟層5の裏側に配置されている。基材6は、透光性、可撓性を有している。光源部材8は、基材6の裏側に配置されている。光源部材8は、複数の光源(LED)80を備えている。複数の光源80は、光源部材8の面方向全体に分布している。光源部材8の表面は、全面的に発光可能である。複数の光源80は、
図3に示すように、表側から見て、第一貫通孔42、第二貫通孔52の孔内に配置されている。すなわち、裏側から表側に向かって、光源80と、第二貫通孔52と、第一貫通孔42と、は表裏方向に延在する直線状に連なっている。
図4に示すように、光源80からの光は、基材6、第二貫通孔52、第一貫通孔42、表側柔軟層3を介して意匠層22の裏面に到達する。当該光は、凹部23、中間層21、表皮層20を介して、センサアセンブリ1つまりコンソールボックス90の表面に到達する。なお、裏側から表側に向かって、光源80と、第二貫通孔52と、第一貫通孔42と、が表裏方向に延在する直線状に連なっていれば、光源部材8を、基材6の表側に配置してもよい。
【0029】
[センサアセンブリの製造方法]
次に、本実施形態のセンサアセンブリの製造方法について説明する。本実施形態のセンサアセンブリの製造方法は、表皮材製造工程と、センサ層製造工程と、積層工程と、孔開設工程と、合体工程と、を有している。
【0030】
(表皮材製造工程)
本工程においては、
図5に示す表皮材2を製造する。本工程は、表皮材積層工程と、レーザー加工工程と、を有している。
図8に、本実施形態のセンサアセンブリの製造方法の表皮材製造工程のレーザー加工工程の模式図を示す。まず、表皮材積層工程においては、表皮層20の裏面に、中間層21と意匠層22とを、スクリーン印刷により積層させる。
【0031】
次に、
図8に示すように、レーザー加工工程においては、積層体(表皮層20、中間層21、意匠層22)を裏返しに(意匠層22の裏面が上向きになるように)配置し、レーザー加工機91を用いて、意匠層22の裏面に凹部23を形成する。レーザー加工機91のノズル910は、積層体に対して、水平方向Y3、揺動方向Y4に相対的に移動可能である。ノズル910を適宜移動させることにより、意匠層22の裏面に、複数の凹部23からなる文字「A」、「B」、「C」(
図5参照)の意匠を形成する。
【0032】
(センサ層製造工程)
本工程においては、
図2に示すセンサ層4を製造する。本工程は、近接センサ部積層工程と、感圧センサ部積層工程と、を有している。まず、近接センサ部積層工程においては、
図6に示すように、絶縁層400の表面に、電極層401を、貼り合わせて積層させる。ただし、複数の第一貫通孔42は未開設である。
【0033】
次に、感圧センサ部積層工程においては、
図7に示すように、絶縁層410の表面に、表側電極層411を、貼り合わせて積層させる。また、絶縁層410の裏面に、三つの裏側電極層412を、貼り合わせて積層させる。ただし、複数の第一貫通孔42は未開設である。
【0034】
(積層工程)
図9に、本実施形態のセンサアセンブリの製造方法の積層工程の模式図を示す。
図9に示すように、本工程においては、上述のセンサ層製造工程で製造したセンサ層4と、予め製造済みの裏側柔軟層5と、を接着し、積層体92を形成する。
【0035】
(孔開設工程)
図10に、本実施形態のセンサアセンブリの製造方法の孔開設工程の模式図を示す。
図10に示すように、本工程においては、上述の積層工程で製造した積層体92に対して、当該積層体92を表裏方向に貫通する複数の貫通孔920を開設する。ただし、孔開設工程を行う際の積層体92の形状は、
図1に示すコンソールボックス90にセンサアセンブリ1が設置されている状態(設置状態)の形状と一致している。
【0036】
当該貫通孔920により、センサ層4に複数の第一貫通孔42を、裏側柔軟層5に複数の第二貫通孔52を、各々開設する。このように、本工程においては、貫通孔920を開設することにより、一度に第一貫通孔42、第二貫通孔52を開設する。並びに、第一貫通孔42、第二貫通孔52の位置合わせを行う。
【0037】
(合体工程)
図11に、本実施形態のセンサアセンブリの製造方法の合体工程の模式図を示す。
図11に示すように、本工程においては、まず、上述の表皮材製造工程で製造した表皮材2と、予め製造済みの表側柔軟層3と、上述の孔開設工程で複数の貫通孔920(第一貫通孔42、第二貫通孔52)が開設された積層体92と、を合体させる。次に、積層体92と基材6とを積層させる。それから、光源部材8の複数の光源80と、貫通孔920と、の位置合わせを行う。具体的には、
図3に示すように、複数の光源80が、表側から見て、第一貫通孔42、第二貫通孔52の孔内に配置されるように、位置合わせする。このようにして、本実施形態のセンサアセンブリ1は製造される。なお、合体工程は、コンソールボックス90にセンサアセンブリ1を設置する際に、並行して実行してもよい。
【0038】
[センサアセンブリの使用方法]
次に、本実施形態のセンサアセンブリの使用方法について説明する。まず、使用者は、
図1に示すセンサアセンブリ1の表面(コンソールボックス90の表面)に指を近づける。制御装置は、
図2に示す近接センサ部40の電極層401と、使用者の指先と、の間の静電容量の変化に基づき、光源部材8の複数の光源80をオンにする。
【0039】
図3、
図4に示すように、複数の光源80は、表側から見て、第一貫通孔42、第二貫通孔52の孔内に配置されている。このため、光源80がオンになると、光源80からの光は、基材6、第二貫通孔52、第一貫通孔42を介して、表側柔軟層3の裏面に到達する。光は、面方向に拡散しながら、裏側から表側に向かって表側柔軟層3を透過する。表側柔軟層3を透過した光は、表皮材2の意匠層22の裏面に到達する。ここで、意匠層22は、不透光性を有している。このため、光は、意匠層22の裏面により遮光される。他方、意匠層22の裏面には凹部23が開設されている。このため、光は、凹部23を透過し、透光性を有する中間層21、透光性を有する表皮層20を透過し、表皮材2(つまりセンサアセンブリ1)の表面に発現する。ここで、
図5に示すように、凹部23は、表側から見て、文字「A」、「B」、「C」を形成している。このため、
図3に示すように、センサアセンブリ1(つまりコンソールボックス90)の表面には、発光する文字「A」、「B」、「C」が浮かび上がる。
【0040】
センサアセンブリ1の表面に浮かび上がった文字「A」、「B」、「C」には、各々、所定の機能が割り当てられている。
図3、
図4に示すように、センサアセンブリ1の表面に浮かび上がった文字「A」の裏側には検出部SAが、文字「B」の裏側には検出部SBが、文字「C」の裏側には検出部SCが、各々配置されている。
【0041】
一例として、使用者が、文字「A」に触れると、押圧力により、検出部SAに対応する表側電極層411が、絶縁層410を圧縮しながら、下降する。このため、表側電極層411と裏側電極層412との間の距離(電極間距離)が短くなる。したがって、表側電極層411と裏側電極層412との間の静電容量が大きくなる。制御装置は、当該検出部SAの静電容量の変化に基づき、検出部SAに関連づけられたアクチュエータを駆動し、使用者の命令を実行する。このようにして、本実施形態のセンサアセンブリ1は使用される。
【0042】
[作用効果]
次に、本実施形態のセンサアセンブリおよびその製造方法の作用効果について説明する。
【0043】
(構成について)
図2~
図4、
図6、
図7に示すように、本実施形態のセンサアセンブリ1のセンサ層4は、第一貫通孔42を備えている。第一貫通孔42は、絶縁層400、410、電極層401、表側電極層411、裏側電極層412を表裏方向に貫通している。すなわち、第一貫通孔42は、センサ層4を表裏方向に貫通している。このため、第一貫通孔42を介して、光を透過させることができる。このように、センサ層4は透光性を有している。
【0044】
仮に、
図4に示す第一貫通孔42と第二貫通孔52との面方向位置がずれている場合を想定する。この場合、センサアセンブリ1を表側から見た場合に、第一貫通孔42の外周縁と第二貫通孔52の外周縁とが、面方向にずれることになる(
図3参照)。このため、第一貫通孔42と第二貫通孔52との継ぎ目において、第一貫通孔42および第二貫通孔52により形成される光路の断面積が小さくなってしまう。
【0045】
この点、本実施形態のセンサアセンブリ1によると、
図4に示すように、第一貫通孔42と第二貫通孔52との面方向位置が一致している。このため、
図3に示すように、センサアセンブリ1を表側から見た場合に、第一貫通孔42の外周縁と第二貫通孔52の外周縁とが、完全に重なっている。したがって、第一貫通孔42と第二貫通孔52との継ぎ目において、光路の断面積が小さくならない。このように、センサアセンブリ1は高い透光性を有している。
【0046】
また、
図5に示すように、表皮材2は半透明の中間層21を備えている。このため、光源80がオフの場合は、意匠層22の意匠が表皮材2の表面に発現するのを、抑制することができる。他方、光源80がオンの場合は、意匠層22の意匠が表皮材2の表面に発現するのを、補助することができる。
【0047】
また、
図3に示すように、センサアセンブリ1の表面に浮かび上がった文字「A」、「B」、「C」中には、光源80が点在している。このため、光源80が目立つと、見栄えが悪くなる。
【0048】
この点、
図4に示すように、表皮材2とセンサ層4との間には、光拡散性を有する表側柔軟層3が介装されている。このため、光源80からの光を、例えばすりガラスや障子紙のように、拡散させることができる。したがって、センサアセンブリ1の表面に浮かび上がった文字「A」、「B」、「C」中の光源80が、目立ちにくい。このように、本実施形態のセンサアセンブリ1は意匠性が高い。また、表側柔軟層3は、エラストマー製であって、柔軟性を有している。このため、使用者が表皮材2に触れた際の触感が良好である。
【0049】
また、センサ層4の裏側には、裏側柔軟層5が配置されている。裏側柔軟層5は、エラストマー製であって、柔軟性を有している。このため、使用者が表皮材2に触れた際の触感が良好である。また、裏側柔軟層5には、第二貫通孔52が開設されている。このため、裏側柔軟層5は、高い透光性を有している。
【0050】
また、裏側柔軟層5の裏側には、基材6が配置されている。基材6は透光性を有している。このため、光源80からの光を、裏側柔軟層5の第二貫通孔52に伝達することができる。また、基材6は、他の層(表皮材2、表側柔軟層3、センサ層4、裏側柔軟層5)よりも硬質である。このため、センサアセンブリ1の形状維持性を確保している。
【0051】
また、光源80と第二貫通孔52と第一貫通孔42とは、直線状に連なっている。このため、高い透光性を有している。また、光源80はLEDである。このため、光源80からの光は直進性が高い。したがって、直線状に連なる第二貫通孔52、第一貫通孔42に、光を導入しやすい。
【0052】
仮に、表皮層20の表面の入力部(
図3において文字「A」、「B」、「C」が浮かび上がった部分。検出部SA~SC(点線ハッチング部分)に対応)の裏側に、表側から見て入力部が含まれる程度の大きな貫通孔を開設し、当該貫通孔により光源80からの光を導光する場合を想定する(
図3参照)。この場合、
図3、
図4に示す感圧センサ部41の検出部SA~SCが、貫通孔により、丸ごとくり抜かれてしまう。このため、不可避的に、貫通孔の周囲に検出部を配置することになる。言い換えると、入力部の真裏に、検出部SA~SCを配置できなくなる。したがって、感圧センサ部41の検出感度が低下する。
【0053】
これに対して、
図3に示すように、本実施形態のセンサアセンブリ1によると、表皮層20の表面の入力部の面積と比較して、単一の貫通孔(第一貫通孔42、第二貫通孔52)の開口面積は、非常に小さい。このため、入力部の真裏に、検出部SA~SCを配置することができる。よって、感圧センサ部41の検出感度が高くなる。
【0054】
(製造方法について)
図9、
図10に示すように、本実施形態のセンサアセンブリ1の製造方法によると、まず、積層工程において、センサ層4と裏側柔軟層5とを積層させ積層体92を形成している。次に、孔開設工程において、当該積層体92に貫通孔920(第一貫通孔42、第二貫通孔52)を開設している。このため、一度に第一貫通孔42、第二貫通孔52を開設することができる。また、
図4に示す第一貫通孔42と第二貫通孔52との面方向位置を一致させることができる。このため、第一貫通孔42と第二貫通孔52との位置ずれに起因する透光性の低下を抑制することができる。また、高い透光性を有するセンサ層4を簡単に製造することができる。
【0055】
また、
図10に示す孔開設工程を行う際の積層体92の形状は、
図1に示すコンソールボックス90にセンサアセンブリ1が設置されている状態(設置状態)の形状と一致している。例えば、センサアセンブリ1の設置状態における形状が湾曲形状である場合、当該湾曲形状において孔開設工程が行われる。この点においても、第一貫通孔42と第二貫通孔52との位置ずれに起因する透光性の低下を抑制することができる。
【0056】
仮に、
図5に示す表皮材2を、スクリーン印刷のみにより製造する場合、中間層21の裏面に意匠層22を印刷する際、意匠層22の意匠に応じたスクリーンマスクを用いる必要がある。このため、意匠層22の意匠が変更される場合、逐一スクリーンマスクを変更する必要がある。この点、本実施形態のセンサアセンブリ1の製造方法は、表皮材積層工程と、レーザー加工工程と、を有している。本実施形態のセンサアセンブリ1の製造方法によると、中間層21の裏面に意匠層22を印刷した後、レーザー加工により意匠層22に凹部23を配置することができる。このため、意匠層22の意匠が変更される場合であっても、逐一スクリーンマスクを変更する必要がない。
図8に示すノズル910の動きやレーザー出力などを変更するだけで、意匠層22の意匠の変更に対応することができる。したがって、意匠変更に要するコストやダウンタイムを削減することができる。また、少量多品種の表皮材2を製造する際に好適である。
【0057】
(電極層の材質について)
電極層401、表側電極層411、裏側電極層412(以下、適宜、「電極層」と総称する)は、エラストマー成分としてスチレン系熱可塑性エラストマーを有している。すなわち、電極層は、エラストマー成分を母材としている。このため、柔軟である。スチレン系熱可塑性エラストマーは、芳香族環によるπ-π相互作用により、カーボンブラックなどの炭素材料に対する親和性が高い。よって、例えばオレフィン系熱可塑性エラストマーと比較して、導電性を高める効果が高いと考えられる。また、エラストマー成分の軟化点が低いと、電極層がくっつきやすくなるなどの問題がある。この点、スチレン系熱可塑性エラストマーの軟化点は、オレフィン系熱可塑性エラストマーのそれよりも高いため、取り扱い性、成形加工性に優れている。
【0058】
電極層を構成するスチレン系熱可塑性エラストマーは、次の二つの条件(a)、(b)を満足している。
(a)200℃下、せん断速度が60s-1以上200s-1以下の低せん断領域における溶融粘度は100Pa・s以上800Pa・s以下である。
(b)200℃下、せん断速度が60s-1以上200s-1以下の低せん断領域における溶融粘度は、同温度下、せん断速度が1000s-1以上1220s-1以下の高せん断領域における溶融粘度の4倍以下である。
【0059】
まず、ポリマーの溶融粘度とせん断速度との関係について説明する。
図12に、ポリマーの溶融粘度とせん断速度との関係を模式的に示す。
図12に実線で示すように、一般に、ポリマーの溶融粘度は、せん断速度が小さくなるにつれて高くなる。これに対して、センサ層4の電極層のスチレン系熱可塑性エラストマーの場合、
図12に点線で示すように、せん断速度が小さくなっても溶融粘度が低く変わりにくい。先の条件(a)は低せん断領域で溶融粘度が低いことを示しており、条件(b)はせん断速度が小さくても溶融粘度が低く変わりにくいことを示している。
【0060】
せん断速度が60s-1以上200s-1以下の低せん断領域は、押出成形する際のせん断速度に対応する。すなわち、センサ層4の電極層のスチレン系熱可塑性エラストマーの溶融粘度は、押出成形する場合の条件で低い。このため、当該スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることにより、電極層を形成するためのエラストマー組成物の粘度が低くなる。したがって、押出成形は勿論、射出成形などによっても、品質が良い電極層を製造することができる。また、当該スチレン系熱可塑性エラストマーの溶融粘度は、低せん断領域において変わりにくい(安定している)。よって、当該スチレン系熱可塑性エラストマーによると、成形速度などの条件によるエラストマー組成物の粘度むらが少なくなり、成形加工性が向上する。また、エラストマー組成物は、所定の材料を混練りなどして製造されるが、この混練り時においても、条件依存性が少ないためロバスト性がよくなる。
【0061】
電極層は、導電材としてDBP(ジブチルフタレート)吸収量が300cm3/100g以上のカーボンブラックを有する。DBP吸収量は、ストラクチャーの発達の程度を示す指標であり、DBP吸収量が大きいほどストラクチャーが発達している。カーボンブラックのDBP吸収量が300cm3/100g以上の場合、ストラクチャーが発達しているため、導電性を発現しやすい。また、ストラクチャーは、混練り時や押出成形時においても構造が変化するが、先の二つの条件(a)、(b)を満足するスチレン系熱可塑性エラストマーと組み合わせることで、導電性においても条件依存性が少なくなり、ロバスト性がよくなる。このように、電極層は、柔軟性、導電性、および成形加工性が高い。
【0062】
電極層の厚さは、50μm以上500μm以下である。電極層を形成するためのエラストマー組成物は成形加工性に優れるため、押出成形などにより、500μm以下の薄さで均一なシート状の電極層を連続的に製造することができる。このように、電極層は連続生産に適している。
【0063】
<第二実施形態>
本実施形態のセンサアセンブリおよびその製造方法と、第一実施形態のセンサアセンブリおよびその製造方法との相違点は、基材が第三貫通孔を備えている点である。また、センサ層が近接センサ部のみを備えている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0064】
図13に、本実施形態のセンサアセンブリの表裏方向断面図を示す。なお、
図4と対応する部位については、同じ符号で示す。
図13に示すように、センサ層4は、近接センサ部40だけを備えている。また、複数の第三貫通孔62は、基材6の面方向全体に分布している。第三貫通孔62は、基材6を表裏方向に貫通している。センサアセンブリ1を表側から見た場合に、第一貫通孔42の外周縁と第二貫通孔52の外周縁と第三貫通孔62の外周縁とは、完全に重なっている。また、裏側から表側に向かって、光源80と、第三貫通孔62と、第二貫通孔52と、第一貫通孔42と、は表裏方向に延在する直線状に連なっている。光源80からの光は、第三貫通孔62、第二貫通孔52、第一貫通孔42、表側柔軟層3を介して意匠層22の裏面に到達する。当該光は、凹部23、中間層21、表皮層20を介して、センサアセンブリ1つまりコンソールボックス90の表面に到達する。
【0065】
本実施形態のセンサアセンブリの製造方法の積層工程(
図9参照)においては、積層体92に基材6が追加配置される。また、孔開設工程(
図10参照)においては、複数の貫通孔920を開設する際に、第一貫通孔42、第二貫通孔52と同時に、第三貫通孔62を開設する。並びに、第一貫通孔42、第二貫通孔52、第三貫通孔62の位置合わせを行う。
【0066】
本実施形態のセンサアセンブリおよびその製造方法と、第一実施形態のセンサアセンブリおよびその製造方法とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のセンサアセンブリ1のように、センサ層4が単一の近接センサ部40だけを備えていてもよい。すなわち、センサ層4は、少なくとも一つの絶縁層400と、少なくとも一つの電極層401と、を備えていればよい。
【0067】
また、センサ層4が単一の感圧センサ部41だけを備えていてもよい。すなわち、センサアセンブリ1は、光源80をオンにするための、トリガー用のセンサを備えていなくてもよい。この場合、光源80がオンになるタイミングは特に限定しない。常時オンであってもよい。また、車両のルームランプや前照灯などと連動して、光源80がオンになってもよい。また、センサ層4を単一の感圧センサ部41とし、近接センサを兼用させてもよい。この場合、単一のセンサで、感圧検知と近接検知を実現でき、2つのセンサを備える場合と比較して、センサ層4の表裏方向厚さを薄くすることができる。
【0068】
基材6は、第三貫通孔62を備えている。このため、基材6が、材質的に透光性を有しない場合であっても、第三貫通孔62により透光性を確保することができる。また、複数の光源80は、表側から見て、第一貫通孔42、第二貫通孔52、第三貫通孔62の孔内に配置されている(
図3参照)。このため、本実施形態のセンサアセンブリ1は高い透光性を有している。
【0069】
本実施形態のセンサアセンブリ1の製造方法によると、まず、積層工程において、センサ層4と裏側柔軟層5と基材6を積層させ積層体92を形成している(
図9参照)。次に、孔開設工程において、当該積層体92に貫通孔920(第一貫通孔42、第二貫通孔52、第三貫通孔62)を開設している(
図10参照)。このため、一度に第一貫通孔42、第二貫通孔52、第三貫通孔62を開設することができる。また、
図13に示す第一貫通孔42と第二貫通孔52と第三貫通孔62との面方向位置を一致させることができる。このため、第一貫通孔42と第二貫通孔52と第三貫通孔62との位置ずれに起因する透光性の低下を抑制することができる。
【0070】
<その他>
以上、本発明のセンサアセンブリおよびその製造方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0071】
[構成について]
図14(A)に、その他の実施形態(その1)のセンサアセンブリの表皮材の上下方向断面図を示す。
図14(B)に、その他の実施形態(その2)のセンサアセンブリの表皮材の上下方向断面図を示す。なお、
図4と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0072】
図14(A)に示すように、凹部23A(前出の
図5の文字「A」に対応)の底部232Aは、意匠層22の層内に配置されている。また、凹部23B(前出の
図5の文字「B」に対応)の底部232B、凹部23C(前出の
図5の文字「C」に対応)の底部232Cは、中間層21の層内に配置されている。凹部23A~23Cの表裏方向深さは、浅い順に、凹部23A、凹部23B、凹部23Cである。このように、凹部23A~23Cの表裏方向深さは一定でなくてもよい。当該深さの差に起因して、光の透過率に差を設けることができる。このため、表皮材2の表面に発現する意匠を調整することができる。したがって、意匠性の自由度が高くなる。
【0073】
また、底部232B、232C(中間層到達部)は、中間層21の層内に配置されていてもよい。こうすると、凹部23の底部232が一律に表皮層20の裏面である場合と比較して、光の透過率を低下させることができる。反対に、凹部23の底部232が一律に中間層21の裏面である場合と比較して、光源80からの光の透過率を向上させることができる。また、底部232B、232Cを表皮層20寄りに配置すると、その分凹部23B、23Cが深くなる。このため、光源80からの光の透過率を向上させることができる。反対に、底部232B、232Cを意匠層22寄りに配置すると、その分凹部23B、23Cが浅くなる。このため、光源80からの光の透過率を低下させることができる。このように、底部232B、232Cの表裏方向位置を調整することにより、表皮材2の表面に発現する意匠を調整することができる。したがって、意匠性の自由度が高くなる。また、意匠層22が透光性を有する場合は、底部232Aは、意匠層22の層内に配置されていてもよい。なお、単一の凹部23Aの底部232Aが基底部と、基底部よりも表側に配置される深底部と、を備えていてもよい。この場合、深底部が、底部232B、232Cと同様に、中間層21の層内に配置されていてもよい。
【0074】
また、中間層21が表裏方向に重なる複数の層で構成されていてもよい。例えば、中間層21を複数の層で構成し、表側から裏側に向かって、各層の透光性を徐々に低下させてもよい。また、中間層21を複数の層で構成し、層毎に色を変えてもよい。同様に、意匠層22が透光性を有する場合は、意匠層22が表裏方向に重なる複数の層で構成されていてもよい。
【0075】
また、中間層21が面方向に連なる複数の層で構成されていてもよい。複数の層間において、色や透光性を相違させてもよい。こうすると、表皮材2の表面に発現する意匠を調整することができる。よって、意匠性の自由度が高くなる。同様に、意匠層22が面方向に連なる複数の層で構成されていてもよい。
【0076】
複数の凹部23A、23B、23Cの開口幅(凹部23A、23B、23Cの延在方向に対して直交する方向(短手方向)の開口幅)は、同じでも異なっていてもよい。複数の凹部23A、23B、23Cの開口幅を相違させることにより、表皮材2の表面に発現する意匠を調整することができる。よって、意匠性の自由度が高くなる。
【0077】
図14(B)に示すように、凹部23A~凹部23Cの側面230は、傾斜部2300を備えている。表皮層20の表面の面法線L1の延在方向(表裏方向)に対して、傾斜部2300は、傾斜角θ1だけ、右向きに傾斜している。このため、凹部23A~凹部23Cを面法線L1の方向に進行する光が、傾斜部2300に入射すると、光の少なくとも一部が傾斜部2300により反射される場合がある。また、光が傾斜部2300により屈折する場合がある。このため、表皮材2の表面に発現する意匠を調整することができる。よって、意匠性の自由度が高くなる。なお、複数の凹部23A~凹部23Cの側面230が、互いに傾斜角θ1が異なる傾斜部2300を備えていてもよい。また、凹部23A~凹部23Cの側面230の一部が傾斜部2300であってもよい。また、傾斜部2300の傾斜角θ1、延在方向(傾斜方向)は特に限定しない。
【0078】
凹部23により表皮材2に発現する意匠は特に限定しない。例えば、模様(水玉模様、縞模様、格子模様、杢目模様、大理石模様など)、文字(アルファベット、ひらがな、カタカナ、漢字、数字など)、図形(多角形、円形など)、記号(機器操作用のボタン、機器の状態を示すアイコンなど)から選ばれる一種以上を含む意匠などが挙げられる。また、表皮材2に発現する意匠の色は単色でも多色でもよい。色は、表皮層20、中間層21、意匠層22、光源80から選ばれる一種以上により、表皮材2に表示すればよい。特に、表側から見て凹部23と重複する部位に色を付けると、光源80からの光により、表皮材2に色が発現しやすい。
【0079】
表皮層20、中間層21の透光性は特に限定しない。無色透明、有色透明、半透明などであってもよい。中間層21は、裏面から表面に向かって色が変化するグラデーションを有していてもよい。こうすると、
図14(A)に示す底部232B、232C(中間層到達部)の位置に応じて、表皮材2の表面に発現する色を変えることができる。なお、中間層21のグラデーションは、複数の層により形成されていてもよい。意匠層22は、不透光性を有していなくてもよい。すなわち、意匠層22は、中間層21よりも低い透光性を有していればよい。この場合、中間層21と同様に、意匠層22が、裏面から表面に向かって色が変化するグラデーションを有していてもよい。こうすると、底部232Aの位置に応じて、表皮材2の表面に発現する色を変えることができる。表皮層20、中間層21、意匠層22、光源80の色(色相、彩度、明度)は特に限定しない。また、光源80の輝度は特に限定しない。
【0080】
光源80の種類は特に限定しない。有機ELシート、無機ELシートであってもよい。また、光源部材8が、光源80と、導光板(例えばアクリル板)と、を備えていてもよい。この場合、導光板の面方向隣りに光源本体を配置し、導光板の表面を面発光させ、当該導光板の表側に基材6を配置すればよい。光源80は、蓄光シートであってもよい。
【0081】
センサアセンブリ1を配置する内装部品は特に限定しない。例えば、ドアトリム、シート、床、天井、インストルメントパネル、センタークラスター、グローブボックス、ステアリングホイール(ハンドル)、センターコンソール、レジスターなどが挙げられる。内装部材におけるセンサアセンブリ1の設置面は、平面でも曲面でもよい。センサアセンブリ1を設置する際の向き(表裏方向の向き)は特に限定しない。車両以外の船舶、航空機、ビル、家屋の内装部品にセンサアセンブリ1を配置してもよい。
【0082】
センサアセンブリ1の構成は特に限定しない。表皮材2、表側柔軟層3、センサ層4、裏側柔軟層5、基材6のうち、表裏方向に隣接する二層間に他の層が介在していてもよい。これら各層内の構成(例えば表皮材2内の表皮層20、中間層21、意匠層22という構成)についても同様である。また、表皮材2の表側に他の層が配置されていてもよい。
【0083】
図6に示す近接センサ部40の構成は限定しない。相互容量方式の近接センサであってもよい。また、
図3に示す検出部SA~SCにより駆動されるアクチュエータは特に限定しない。モータ、コンプレッサ、ソレノイドなどであってもよい。
【0084】
[材質について]
表皮材2の材質は特に限定しない。すなわち、表皮層20の材質は特に限定しない。例えば、合成皮革、樹脂、エラストマー、不織布、各種布(織物、編物など)などが挙げられる。合成皮革、樹脂、エラストマーとしては、具体的には、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、シリコーン、エポキシ、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、動的架橋型熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。不織布、各種布としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、綿などが挙げられる。表皮層20は、着色ポリエチレン粒子などの着色粒子、酸化チタンなどの光拡散粒子、チタンブラック、カーボンブラックなどの光吸収粒子を含有していてもよい。
【0085】
表皮層20の可視光線透過率は、50%以上100%以下とする方がよい。こうすると、光源80がオンの場合に、意匠層22の意匠を表皮材2の表面に、より浮かび上がらせることができる。
【0086】
中間層21の材質は特に限定しない。例えば、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、シリコーン、ポリエステル、エポキシ、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、動的架橋型熱可塑性エラストマーなどの、樹脂やエラストマーなどが挙げられる。中間層21は、着色ポリエチレン粒子などの着色粒子、酸化チタンなどの光拡散粒子、チタンブラック、カーボンブラックなどの光吸収粒子を含有していてもよい。
【0087】
中間層21の可視光線透過率は、0%超過40%以下とする方がよい。こうすると、光源80がオフの場合に、意匠層22の意匠が、より目立ちにくくなる。
【0088】
意匠層22の材質は特に限定しない。例えば、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、シリコーン、ポリエステル、エポキシ、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、動的架橋型熱可塑性エラストマーなどの、樹脂やエラストマーなどが挙げられる。意匠層22は、着色ポリエチレン粒子などの着色粒子、酸化チタンなどの光拡散粒子、チタンブラック、カーボンブラックなどの光吸収粒子を含有していてもよい。
【0089】
表側柔軟層3、裏側柔軟層5の材質は特に限定しない。例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、動的架橋型熱可塑性エラストマーなどのエラストマーや、ポリウレタンフォームなどの発泡体などが挙げられる。裏側柔軟層5が第二貫通孔52を備える場合は、材質に起因する透光性は不要である。
【0090】
センサ層4の材質は特に限定しない。すなわち、絶縁層400、410(以下、適宜、「絶縁層」と総称する)の材質は特に限定しない。絶縁層用の熱可塑性エラストマーは、特に限定しない。スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系などのエラストマーから適宜選択すればよい。熱可塑性エラストマーは、一種類でも二種類以上用いてもよい。例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、SBS、SEBS、SEPSなどが挙げられる。オレフィン系エラストマーとしては、EEA、EMA、EMMAなどの他、エチレンとαオレフィンとの共重合体(エチレン-オクテン共重合体)などが挙げられる。
【0091】
絶縁層には、熱可塑性エラストマー以外のゴム、樹脂、発泡体を用いてもよい。例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPM、EPDM)などのゴムや、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、シリコーン、ポリエステル、エポキシなどの樹脂、ポリウレタンフォームなどの発泡体などが挙げられる。
【0092】
電極層の材質は特に限定しない。電極層は、導電性を有し、柔軟であることが好ましい。電極層の好適な体積抵抗率は、10Ω・cm未満である。1Ω・cm以下であるとより好適である。電極層の材質としては、導電性ゴム、導電性布が挙げられる。
【0093】
導電性ゴムは、エラストマーと導電材とを有する。エラストマーとしては、アクリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ウレアゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムなどの架橋ゴム、および熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上を用いればよい。導電材としては、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金などからなる金属粒子、酸化亜鉛、酸化チタンなどからなる金属酸化物粒子、チタンカーボネートなどからなる金属炭化物粒子、銀、金、銅、白金、およびニッケルなどからなる金属ナノワイヤ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛、薄層黒鉛、グラフェンなどの導電性炭素材料の中から、適宜選択すればよい。導電性ゴムは、架橋剤、架橋促進剤、分散剤、補強材、可塑剤、老化防止剤、着色剤などを含んでいてもよい。
【0094】
導電性布としては、導電性繊維の織物、不織布などを用いればよい。導電性繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル繊維に、導電性が高い銅、ニッケルなどのめっきを施したものが挙げられる。
【0095】
基材6の材質は特に限定しない。例えば、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、シリコーン、ポリエステル、エポキシ、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、動的架橋型熱可塑性エラストマーなどの、樹脂やエラストマーなどが挙げられる。センサアセンブリ1の形状維持性を確保するため、基材6は、他の層(表皮材2、表側柔軟層3、センサ層4、裏側柔軟層5)よりも硬質であればよい。他方、基材6は、センサアセンブリ1に対する内装部品の設置面(
図1に示すコンソールボックス90の上面)への形状追従性を有していればよい。
【0096】
[製造方法について]
表皮材2における表皮層20、中間層21、意匠層22の積層方法、近接センサ部40における電極層401、絶縁層400の積層方法、感圧センサ部41における表側電極層411、絶縁層410、裏側電極層412の積層方法は特に限定しない。スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷などを用いてもよい。また、接着や蒸着などにより各層を積層してもよい。表皮材2に対する凹部23の形成方法は特に限定しない。レーザー加工の他、フォトエッチングなどを用いてもよい。
【0097】
図2に示すセンサ層4と表側柔軟層3、裏側柔軟層5(以下、適宜、「柔軟層」と総称する)との固定方法は特に限定しない。例えば、センサアセンブリ1に対する内装部品の設置面(
図1に示すコンソールボックス90の上面)が表側に膨出する凸面状の場合、湾曲の曲率半径内側の基材6に対して、曲率半径外側の他層(裏側柔軟層5、センサ層4、表側柔軟層3、表皮材2)が、圧接することになる。当該圧接力を利用して、センサ層4と柔軟層とを固定することができる。反対に、センサアセンブリ1に対する内装部品の設置面が裏側に膨出する凹面状の場合、上述の圧接力が作用しない。このため、接着剤や両面テープなどを利用して、センサ層4と柔軟層とを固定することができる。
【符号の説明】
【0098】
1:センサアセンブリ、2:表皮材、20:表皮層、21:中間層、22:意匠層、23:凹部、23A~23C:凹部、230:側面、2300:傾斜部、231:開口部、232:底部、232A:底部、232B:底部、232C:底部、3:表側柔軟層、4:センサ層、40:近接センサ部、400:絶縁層、401:電極層、41:感圧センサ部、410:絶縁層、411:表側電極層(電極層)、412:裏側電極層(電極層)、42:第一貫通孔、5:裏側柔軟層、52:第二貫通孔、6:基材、62:第三貫通孔、8:光源部材、80:光源、90:コンソールボックス、91:レーザー加工機、92:積層体、θ1:傾斜角、910:ノズル、920:貫通孔、SA~SC:検出部