(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157895
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ファセッター機構
(51)【国際特許分類】
B24B 9/16 20060101AFI20221006BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20221006BHJP
A44C 27/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B24B9/16
B24B41/06 Z
A44C27/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062378
(22)【出願日】2021-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】521137272
【氏名又は名称】佐々木 智宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智宏
【テーマコード(参考)】
3B114
3C034
3C049
【Fターム(参考)】
3B114AA21
3B114JB00
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB75
3C034DD08
3C049AA04
3C049AB04
3C049AC04
3C049CA01
3C049CB01
3C049CB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単な構成で感覚的にファセット面の角度を割り出すことができるファセッター機構を提供すること。
【解決手段】ファセッター機構は、宝石を研磨する宝石研磨装置に対して宝石を保持してファセット面の角度を割り出すものである。ファセッター機構は、回転角割り出し具30と、傾斜角割り出し具とを備えている。回転角割り出し具30は、多角形ガイド板31と、棒状の延出軸32と、複数の34溝と、位置決めピン35とを備え、隣り合う溝34の放射方向の中心角は多角形の中心角よりも小さい所定の角度に設定されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宝石を研磨する宝石研磨装置に対して前記宝石を保持してファセット面の角度を割り出すファセッター機構であって、
このファセッター機構は、先端に前記宝石が取り付けられた取り付け棒を保持して前記宝石の中心軸回りの回転角を割り出す回転角割り出し具と、この回転角割り出し具を支持して前記宝石の水平方向に対する傾斜角を割り出す傾斜角割り出し具とを備え、
前記回転角割り出し具は、正多角形に形成された板状の多角形ガイド板と、この多角形ガイド板の中心軸上に回転可能に設けられ前記宝石を先端部分で保持する棒状の延出軸と、前記多角形ガイド板の一方側の面に放射状に形成された複数の溝と、前記延出軸に設けられ前記溝に嵌る位置決めピンとを備え、隣り合う前記溝の放射方向の中心角は前記多角形の中心角よりも小さい所定の角度に設定されており、
前記傾斜角割り出し具は、前記多角形ガイド板のガイド辺を載せる平面が形成された載せ台を備えていることを特徴とするファセッター機構。
【請求項2】
請求項1記載のファセッター機構であって、
前記回転角割り出し具は、前記延出軸が前記多角形ガイド板に進退可能に設けられており、前記多角形ガイド板の他方の面には前記延出軸を他方側に付勢する弾性部材を備えていることを特徴とするファセッター機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のファセッター機構であって、
前記多角形ガイド板は、10角形であり、
前記溝は、第1から第8まで順に8つ形成されており、第1の溝と第2の溝の中心角は18度、前記第2の溝と第3の溝の中心角は9度、前記第3の溝と第4の溝の中心角は18度、前記第4の溝と第5の溝の中心角は13.5度、前記第5の溝と第6の溝の中心角は9度、前記第6の溝と第7の溝の中心角は9度、前記第7の溝と第8の溝の中心角は9度、に設定されていることを特徴とするファセッター機構。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のファセッター機構であって、
前記多角形ガイド板は、12角形であり、
前記溝は、第1から第8まで順に8つ形成されており、第1の溝と第2の溝の中心角は15度、前記第2の溝と第3の溝の中心角は7.5度、前記第3の溝と第4の溝の中心角は15度、前記第4の溝と第5の溝の中心角は11.25度、前記第5の溝と第6の溝の中心角は7.5度、前記第6の溝と第7の溝の中心角は7.5度、前記第7の溝と第8の溝の中心角は7.5度、に設定されていることを特徴とするファセッター機構。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項記載のファセッター機構であって、
前記傾斜角割り出し具は、土台と、この土台から起立する第1の柱と、前記土台から起立する第2の柱と、前記第1の柱に昇降可能且つ回転可能に設けられた前記載せ台と、前記第2の柱に設けられ前記載せ台を支持する支持部とを備え、
前記載せ台は、前記第2の柱から縁までの距離が大きく前記支持部まで届く幅広部と、第2の柱から縁までの距離が小さく前記支持部に届かない幅狭部とを備えていることを特徴とするファセッター機構。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項記載のファセッター機構であって、
このファセッター機構は、先端に前記宝石が取り付けられた前記取り付け棒を保持して前記宝石の頂部を前記水平に保つ水平保持具を備え、
前記水平保持具は、前記載せ台の前記平面に載せられるベース部と、このベース部に設けられ前記ベース部を水平に位置調整する3点式の水平調整ボルトと、前記ベース部から水平に延びているアームと、このアームの先端に設けられ前記取り付け棒を90度下方に延びるように支持する下方向け部とを備えていることを特徴とするファセッター機構。
【請求項7】
請求項6記載のファセッター機構であって、
前記水平保持具には、前記下方向け部に前記取り付け棒を摺動可能に支持する摺動孔が形成され、この摺動孔に前記取り付け棒を下方に向けて付勢する弾性部材が設けられていることを特徴とするファセッター機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宝石を研磨する宝石研磨装置に対して宝石を保持してファセット面の角度を割り出すファセッター機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に宝石は複数のファセット面を有し、それらのファセット面は所定の角度で研磨加工されている。このファセット面の角度を正確に出すことで宝石の美観が向上する。宝石は小さいうえ、ファセット面が複数あるため、正確に角度を出すには高精度の技術が必要とされる。このような、ファセット面の角度を出す技術として特許文献1に開示されたファセッターが知られている。
【0003】
特許文献1のファセッターは、割出器本体の一側に円弧状取り付け部を有するヘッド取付杆を連設し、ヘッド取付杆に割出器ヘッドを角度調節自在に取り付け、割出器ヘッドにはトリガーとインデックスギヤとからなる割出器と、インデックスギヤのピッチを細分する細分割装置とを備えている。
【0004】
細分割装置は、トリガーを固定したトリガーリングへウォームホイールを固定し、このウォームホイールへ割出器ヘッドに取り付けたウォームを噛み合わせている。また、ヘッド取付杆の円弧状取り付け部外壁には角度目盛が設けられるともにヘッドの支持軸に取り付けた主軸受外壁に角度目盛と合わせる副尺目盛が設けられている。
【0005】
ところで、ファセッターは宝石加工専門の職人だけでなく、宝石加工を習い事として行う者もいる。この点、特許文献1のファセッターは、機構が複雑であり専門の職人以外では取扱いが難しい。また、特許文献1のファセッターは、ファセット面の角度を、角度目盛を調整することで合わせるため、角度を割り出すことが難しく、宝石加工を習う者にとっても専門の職人にとっても、感覚的に角度を割り出すことができれば好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡単な構成で感覚的にファセット面の角度を割り出すことができるファセッター機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例によれば、宝石を研磨する宝石研磨装置に対して前記宝石を保持してファセット面の角度を割り出すファセッター機構であって、
このファセッター機構は、先端に前記宝石が取り付けられた取り付け棒を保持して前記宝石の中心軸回りの回転角を割り出す回転角割り出し具と、この回転角割り出し具を支持して前記宝石の水平方向に対する傾斜角を割り出す傾斜角割り出し具とを備え、
前記回転角割り出し具は、正多角形に形成された板状の多角形ガイド板と、この多角形ガイド板の中心軸上に回転可能に設けられ前記宝石を先端部分で保持する棒状の延出軸と、前記多角形ガイド板の一方側の面に放射状に形成された複数の溝と、前記延出軸に設けられ前記溝に嵌る位置決めピンとを備え、隣り合う前記溝の放射方向の中心角は前記多角形の中心角よりも小さい所定の角度に設定されており、
前記傾斜角割り出し具は、前記多角形ガイド板のガイド辺を載せる平面が形成された載せ台を備えていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、ファセッター機構は、宝石の中心軸回りの回転角を割り出す回転角割り出し具と、宝石の水平方向に対する傾斜角を割り出す傾斜角割り出し具とを備えている。回転角割り出し具は、複数の溝が形成された多角形ガイド板と、位置決めピンが設けられた延出軸とからなり、傾斜角割り出し具は、平面が形成された載せ台からなるので、ファセッター機構を簡単な構成にすることができる。さらに、回転角割り出し具を手に持って多角形ガイド板を、傾斜角割り出し具の載せ台に載せ、多角形ガイド板を回転させていくだけで回転角の割り出しができるので、誰でも感覚的にファセット面の角度を割り出すことができる。さらに、隣り合う溝の放射方向の中心角は多角形の中心角よりも小さい所定の角度に設定されており、この溝に位置決めピンを嵌めて角度を変えるので、小さな角度の割り出しも感覚的に行うことができる。このように、感覚的にファセット面の角度を割り出すことができるファセッター機構を提供することができる。
【0010】
好ましくは、前記回転角割り出し具は、前記延出軸が前記多角形ガイド板に進退可能に設けられており、前記多角形ガイド板の他方の面には前記延出軸を他方側に付勢する弾性部材を備えている。
【0011】
かかる構成によれば、小さな角度の割り出し行うときに、溝に嵌った位置決めピンを延出軸ごと移動させて所望の溝に位置決めピンを嵌めるだけで、弾性部材の付勢力により位置決めピンが溝にロックされるので、小さな角度の割り出しも容易にできる。
【0012】
好ましくは、前記多角形ガイド板は、10角形であり、
前記溝は、第1から第8まで順に8つ形成されており、第1の溝と第2の溝の中心角は18度、前記第2の溝と第3の溝の中心角は9度、前記第3の溝と第4の溝の中心角は18度、前記第4の溝と第5の溝の中心角は13.5度、前記第5の溝と第6の溝の中心角は9度、前記第6の溝と第7の溝の中心角は9度、前記第7の溝と第8の溝の中心角は9度、に設定されている。
【0013】
かかる構成によれば、宝石の平面視で、輪郭が10角形の宝石の90個のファセット面を研磨することができる。
【0014】
好ましくは、前記多角形ガイド板は、12角形であり、
前記溝は、第1から第8まで順に8つ形成されており、第1の溝と第2の溝の中心角は15度、前記第2の溝と第3の溝の中心角は7.5度、前記第3の溝と第4の溝の中心角は15度、前記第4の溝と第5の溝の中心角は11.25度、前記第5の溝と第6の溝の中心角は7.5度、前記第6の溝と第7の溝の中心角は7.5度、前記第7の溝と第8の溝の中心角は7.5度、に設定されている。
【0015】
かかる構成によれば、宝石の平面視で、輪郭が12角形の宝石の108個のファセット面を研磨することができる。
【0016】
好ましくは、前記傾斜角割り出し具は、土台と、この土台から起立する第1の柱と、前記土台から起立する第2の柱と、前記第1の柱に昇降可能且つ回転可能に設けられた前記載せ台と、前記第2の柱に設けられ前記載せ台を支持する支持部とを備え、
前記載せ台は、前記第2の柱から縁までの距離が大きく前記支持部まで届く幅広部と、第2の柱から縁までの距離が小さく前記支持部に届かない幅狭部とを備えている。
【0017】
かかる構成によれば、傾斜角割り出し具は、第1の柱に昇降可能且つ回転可能に設けられた載せ台と、第2の柱に設けられ載せ台を支持する支持部とを備えている。載せ台は、第2の柱から縁までの距離が大きく支持部まで届く幅広部と、第2の柱から縁までの距離が小さく支持部に届かない幅狭部とを備えているので、第2の柱に上下方向にずらして複数の支持部を配置することで、手で載せ台を回転させ支持部から外して上下移動させて所望の支持部の位置で載せ台を回転させて支持部に支持させるだけで傾斜角を割り出すことができる。
【0018】
好ましくは、このファセッター機構は、先端に前記宝石が取り付けられた前記取り付け棒を保持して前記宝石の頂部を前記水平に保つ水平保持具を備え、
前記水平保持具は、前記載せ台の前記平面に載せられるベース部と、このベース部に設けられ前記ベース部を水平に位置調整する3点式の水平調整ボルトと、前記ベース部から水平に延びているアームと、このアームの先端に設けられ前記取り付け棒を90度下方に延びるように支持する下方向け部とを備えている。
【0019】
かかる構成によれば、水平保持具は、載せ台の平面に載せられるベース部と、このベース部を水平に位置調整する3点式の水平調整ボルトとを備えているので、簡単に水平出しができ、宝石の頂部を容易に水平に研磨することができる。
【0020】
好ましくは、前記水平保持具には、前記下方向け部に前記取り付け棒を摺動可能に支持する摺動孔が形成され、この摺動孔に前記取り付け棒を下方に向けて付勢する弾性部材が設けられている。
【0021】
かかる構成によれば、水平保持具で宝石が取り付けられた取り付け棒を弾性部材によって下方に向けて付勢するので、ベース部を水平に保った状態で宝石を研磨装置の回転砥石に押し付けることができ、宝石の頂部を容易に水平に研磨することができる。
【発明の効果】
【0022】
簡単な構成で感覚的にファセット面の角度を割り出すことができるファセッター機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例のファセッター機構と宝石研磨装置の正面図である。
【
図2】実施例の傾斜角割り出し具と宝石研磨装置の斜視図である。
【
図4】
図3の回転角割り出し具の要部斜視図である。
【
図5】輪郭が10角形の宝石のファセット面の研磨を説明する図である。
【
図6】輪郭が12角形の宝石のファセット面の研磨を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面はファセッター機構の一例を概念的(模式的)に示すものとする。
【実施例0025】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。先ず、実施例のファセッター機構20及び宝石研磨装置10について説明する。
図1、
図2に示されるように、ファセッター機構20は、宝石21を研磨する宝石研磨装置に対して前記宝石を保持してファセット面の角度を割り出すものである。宝石研磨装置10は、テーブル25のベッド26の上に設置された台11と、この台11に回転可能に設けられ内蔵されたモータによって回転する回転軸12と、この回転軸12(回転ベッドを含む)に着脱可能に設けられた回転砥石13と、切削油の役割を果たす水の飛び散りを防ぐ囲い部14とを備えている。
【0026】
また、宝石研磨装置10では、ポンプ15によって水タンク18から汲み上げられた水を給水ホース16から所望の位置に吐出し、囲い部14内の水は排水ホース17から排水されて水タンク18に戻される。給水ホース16は、テーブル25に設置されたホース治具19によって支持されている。なお、水の循環経路上には、ろ過装置を設けて水をろ過してもよい。
【0027】
次にファセッター機構20について説明する。
ファセッター機構20は、先端に宝石21が取り付けられた取り付け棒22(
図7参照)を保持して宝石21の中心軸回りの回転角を割り出す回転角割り出し具30と、この回転角割り出し具30を支持して宝石21の水平方向に対する傾斜角を割り出す傾斜角割り出し具50とを備えている。
【0028】
次に傾斜角割り出し具50について説明する。
傾斜角割り出し具50は、多角形ガイド板31のガイド辺41(
図3参照)を載せる平面56が形成された載せ台54を備えている。詳細には、傾斜角割り出し具50は、ベッド26に設置される土台51と、この土台51から起立する第1の柱52と、土台51から起立する第2の柱53と、第1の柱52に昇降可能且つ回転可能に設けられた載せ台54と、第2の柱53に設けられ載せ台54を支持する支持部61a、61b、61cとを備えている。第1の柱52の上端部と第2の柱53の上端部は、橋掛け部64によって掛け渡されており、これにより、第1の柱52と第2の柱53とが相互に支え合い、全体として剛性を向上させることができる。
【0029】
載せ台54は、平面56から起立して第1の柱52が挿通される円筒状の軸受55と、第2の柱53から縁までの距離が大きく支持部61a、61b、61cまで届く幅広部57と、第2の柱53から縁までの距離が小さく支持部61a、61b、61cに届かない幅狭部58とを備えている。
【0030】
載せ台54は、平面56から起立する円筒状の軸受55を有することで、剛性を向上させることができ、載せ台54に上方から大きな外力が加わっても第1の柱52に対して曲がることがなく、平面56を水平に保つことができる。
【0031】
また、載せ台54は、幅広部57と、幅狭部58とを備えているので、第2の柱53に上下方向にずらして複数の支持部61a、61b、61cを配置することで、手で載せ台54を回転させ支持部61a、61b、61cから外して上下移動させて所望の支持部61a、61b、61cの位置で載せ台54を回転させて支持部61a、61b、61cに支持させるだけで載せ台54の位置を変更することができる。
【0032】
次に回転角割り出し具30について説明する。
図1、
図3及び
図4に示されるように、回転角割り出し具30は、正多角形に形成された板状の多角形ガイド板31と、この多角形ガイド板31の中心軸上に回転可能に設けられ宝石21を先端部分で保持する棒状の延出軸32とを備えている。また、回転角割り出し具30は、多角形ガイド板31の一方側の面33に放射状に形成された複数の溝34と、延出軸32に設けられ溝34に嵌る位置決めピン35と、延出軸32の先端に設けられ宝石21を取り付けた取り付け棒22(
図7参照)を掴むチャック45と、位置決めピン35を延出軸32に固定する止めねじ46とを備えている。
【0033】
回転角割り出し具30は、延出軸32が多角形ガイド板31に進退可能に設けられており、多角形ガイド板31の他方の面36には延出軸32を他方側に付勢する弾性部材37と、延出軸32の端部に設けられ弾性部材37を受けるボルト38とを備えている。なお、実施例では、弾性部材37をばねとする。
【0034】
これにより、小さな角度の割り出し行うときに、溝34に嵌った位置決めピン35を延出軸ごと移動させて所望の溝34に位置決めピン35を嵌めるだけで、弾性部材37の付勢力により位置決めピンが溝34にロックされるので、小さな角度の割り出しも容易にできる。
【0035】
また、延出軸32は、多角形ガイド板31に形成された貫通孔(不図示)に挿通されているが、この貫通孔の径よりも大きい径の大径端39を備えており、この大径端39が一方の面33に当接することで、位置決めピン35が溝に押し付けられ撓み一方の面33に対する延出軸32の延出量(突出量)の微妙なずれを防止することができる。結果、延出軸32の延出量(突出量)を正確に保ち、宝石21の水平方向に対する傾斜角を正確に割り出すことができる。
【0036】
次に使用する多角形ガイド板31が10角形の場合のファセット面の加工手順について説明する。
図5(A)は10角形の多角形ガイド板31の正面図であり、多角形ガイド板31には、ガイド辺41の中央部に凹部42が形成され、ガイド辺41の近傍に辺番号43が形成され、溝34の近傍に溝番号44が形成されている。溝34は、第1から第8まで順に8つ形成されており、第1の溝と第2の溝の中心角は18度、第2の溝と第3の溝の中心角は9度、第3の溝と第4の溝の中心角は18度、第4の溝と第5の溝の中心角は13.5度、第5の溝と第6の溝の中心角は9度、第6の溝と第7の溝の中心角は9度、第7の溝と第8の溝の中心角は9度、に設定されている。隣り合う溝34の放射方向の中心角は多角形の中心角よりも小さい所定の角度に設定されている。
【0037】
図5(B)は輪郭が10角形の宝石21の平面図であり、宝石21の外周近傍の番号は宝石21の辺番号である。
図5(C)は1つの辺番号を基準にした場合における、位置決めピン35を異なる溝34に嵌めて研磨したファセット面の位置を説明する図である。
図5(D)は左からファセット面の番号、移動させる溝34の中心角の大きさを説明する図である。
【0038】
まず、最も傾斜角が緩くなる支持部61aの位置にし、辺番号「1」のガイド辺41を載せ台54に載せる。なお、中間の傾斜角が支持部61bの位置であり、最も急な傾斜角が支持部61cの位置である。位置決めピン35の位置を溝番号「1」にし、ファセット面「1」を研磨し、同様に多角形ガイド板31を回して置き、辺番号「2~10」についても研磨する。位置決めピン35の位置を溝番号「2」にしファセット面「2」を研磨する。同様の手順でファセット面を順次研磨する。すると、
図5(B)に示される宝石21が得られる。
【0039】
次に使用する多角形ガイド板31が12角形の場合のファセット面の加工手順について説明する
図6(A)は12角形の多角形ガイド板31の正面図であり、多角形ガイド板31には、ガイド辺41の中央部に凹部42が形成され、ガイド辺41の近傍に辺番号43が形成され、溝34の近傍に溝番号44が形成されている。溝34は、第1から第8まで順に8つ形成されており、第1の溝と第2の溝の中心角は15度、第2の溝と第3の溝の中心角は7.5度、第3の溝と第4の溝の中心角は15度、第4の溝と第5の溝の中心角は11.25度、第5の溝と第6の溝の中心角は7.5度、第6の溝と第7の溝の中心角は7.5度、第7の溝と第8の溝の中心角は7.5度、に設定されている。隣り合う溝34の放射方向の中心角は多角形の中心角よりも小さい所定の角度に設定されている。
【0040】
図6(B)は輪郭が12角形の宝石21の平面図であり、宝石21の外周近傍の番号は宝石21の辺番号である。
図6(C)は1つの辺番号を基準にした場合における、位置決めピン35を異なる溝34に嵌めて研磨したファセット面の位置を説明する図である。
図6(D)は左からファセット面の番号、移動させる溝34の中心角の大きさを説明する図である。
【0041】
まず、最も傾斜角が緩くなる支持部61aの位置にし、辺番号「1」のガイド辺41を載せ台54に載せる。なお、中間の傾斜角が支持部61bの位置であり、最も急な傾斜角が支持部61cの位置である。位置決めピン35の位置を溝番号「1」にし、ファセット面「1」を研磨し、同様に多角形ガイド板31を回して置き、辺番号「2~10」についても研磨する。位置決めピン35の位置を溝番号「2」にしファセット面「2」を研磨する。同様の手順でファセット面を順次研磨する。すると、
図6(B)に示される宝石21が得られる。
【0042】
次に水平保持具70について説明する。
図2、
図7及び
図8に示されるように、ファセッター機構20は、先端に宝石21が取り付けられた取り付け棒22を保持して宝石21の頂部を水平に保つ水平保持具70を備えている。
【0043】
水平保持具70は、載せ台54の平面56に載せられるベース部71と、このベース部71に設けられベース部71を水平に位置調整する3点式の水平調整ボルト72と、ベース部71から水平に延びているアーム73と、このアーム73の先端に設けられ取り付け棒22を90度下方に延びるように支持する下方向け部74とを備えている。
【0044】
水平保持具70には、ベース71に水平器75が設けられ、下方向け部74に取り付け棒22を摺動可能に支持する摺動孔76が形成され、この摺動孔76に取り付け棒22を下方に向けて付勢する弾性部材77が設けられ、取り付け棒22を下方向け部74に固定する固定ねじ78と、下方向け部74に設けられ使用者が指で押すことができる押さえ部81とを備えている。
【0045】
次に以上に述べたファセッター機構20作用を説明する。
図9(A)に示されるように、載せ台54を所定の支持部61a、61b、61cで支持する。ファセッター機構20の回転角割り出し具30の多角形ガイド板31を、載せ台54の平面56に配置し、回転砥石13で研磨する。
【0046】
図9(B)に示されるように、角度を大きく変える場合は、矢印(1)のように多角形ガイド板31を回転させる。角度を小さく変える場合は、矢印(2)のように位置決めピン35を異なる溝34に移動させる。
【0047】
図9(D)に示されるように、宝石21の頂部を水平研磨する場合は、宝石21を取り付けた取り付け棒22を回転角割り出し具30から取り外し、水平保持具70に取り付ける。水平調整ボルト72でベース部71の水平調整をした後、水平保持具70を載せ台54に載せ、宝石21の頂部を回転砥石13で研磨する。このとき、水平保持具70の弾性部材77(
図7参照)により宝石21は回転砥石13に付勢されるが、下方向け部74の押さえ部81を使用者の手で押さえてもよい。
【0048】
次に本発明の実施例に係るファセッター機構20の効果を説明する。
本発明の実施例では、回転角割り出し具30は、複数の溝34が形成された多角形ガイド板31と、位置決めピン35が設けられた延出軸32とからなり、傾斜角割り出し具50は、平面56が形成された載せ54台からなるので、ファセッター機構20を簡単な構成にすることができる。さらに、回転角割り出し具30を手に持って多角形ガイド板31を、傾斜角割り出し具50の載せ台54に載せ、多角形ガイド板31を回転させていくだけで回転角の割り出しができるので、誰でも感覚的にファセット面の角度を割り出すことができる。さらに、隣り合う溝34の放射方向の中心角は多角形の中心角よりも小さい所定の角度に設定されており、この溝34に位置決めピン35を嵌めて角度を変えるので、小さな角度の割り出しも感覚的に行うことができる。このように、感覚的にファセット面の角度を割り出すことができるファセッター機構20を提供することができる。
【0049】
さらに、小さな角度の割り出し行うときに、溝34に嵌った位置決めピン35を延出軸32ごと移動させて所望の溝34に位置決めピン35を嵌めるだけで、弾性部材37の付勢力により位置決めピン35が溝34にロックされるので、小さな角度の割り出しも容易にできる。
【0050】
さらに、宝石21の平面視で、輪郭が10角形の宝石の90個のファセット面を研磨することができる。
【0051】
さらに、宝石21の平面視で、輪郭が12角形の宝石の108個のファセット面を研磨することができる。
【0052】
さらに、載せ台54は、第2の柱53から縁までの距離が大きく支持部61a、61b、61cまで届く幅広部57と、第2の柱53から縁までの距離が小さく支持部61a、61b、61cに届かない幅狭部58とを備えているので、第2の柱53に上下方向にずらして複数の支持部61a、61b、61cを配置することで、手で載せ台54を回転させ支持部61a、61b、61cから外して上下移動させて所望の支持部61a、61b、61cの位置で載せ台54を回転させて支持部61a、61b、61cに支持させるだけで傾斜角を割り出すことができる。
【0053】
さらに、水平保持具70は、載せ台54の平面56に載せられるベース部71と、このベース部71を水平に位置調整する3点式の水平調整ボルト72とを備えているので、簡単に水平出しができ、宝石21の頂部を容易に水平に研磨することができる。
【0054】
さらに、水平保持具70で宝石21が取り付けられた取り付け棒22を弾性部材77によって下方に向けて付勢するので、ベース部71を水平に保った状態で宝石21を宝石研磨装置10の回転砥石13に押し付けることができ、宝石21の頂部を容易に水平に研磨することができる。
【0055】
尚、実施例では、傾斜角割り出し具50は、
図1、
図2に示す構成としたが、これに限定されず、単なる台としてその上端面を載せ台54の平面56として使用してもよい。
【0056】
また、実施例では、取り付け棒22への宝石21の取り付けには、松やにを使用したがこれに限定されず、粘着性のある柔らかい合成樹脂などを使用してもよい。