(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157897
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】異方性光拡散フィルム積層体及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20221006BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20221006BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20221006BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02F1/1335
G09F9/30 365
G09F9/30 349Z
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062385
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】荒島 純弥
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昌央
【テーマコード(参考)】
2H042
2H291
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H042BA04
2H042BA14
2H042BA20
2H291FA43X
2H291FB02
2H291FB22
5C094AA12
5C094BA27
5C094BA43
5C094BA44
5C094ED13
5C094JA01
5C094JA08
5C094JA11
5G435BB12
5G435DD11
5G435HH04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】視野角による輝度と色変化に関して、従来よりも優れた視角依存性改善効果を有する異方性光拡散フィルム積層体を提供する。
【解決手段】光の入射角により直線透過率が変化する異方性光拡散フィルムが少なくとも2層以上積層された、異方性光拡散フィルム積層体であって、1つの散乱中心軸と、マトリックス領域と、マトリックス領域とは屈折率の異なる複数の柱状領域とを有し、複数の柱状領域は、異方性光拡散フィルムの一方の表面から他方の表面にかけて配向、且つ、延在して構成され、それら複数の異方性光拡散フィルムが、所定の状態で積層されていること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の入射角により、(入射した光の直線方向の透過光量)/(入射した光の光量)、である直線透過率が変化する異方性光拡散フィルムが少なくとも2層以上積層された、ヘイズ値が、70%~85%である異方性光拡散フィルム積層体であって、
前記異方性光拡散フィルムは、1つの散乱中心軸と、マトリックス領域と、前記マトリックス領域とは屈折率の異なる複数の柱状領域とを有し、
前記複数の柱状領域は、前記異方性光拡散フィルムの一方の表面から他方の表面にかけて配向、且つ、延在して構成され、
前記異方性光拡散フィルムにおいて、1つ目の異方性光拡散フィルムを異方性光拡散フィルムaとし、2つ目の異方性光拡散フィルムを異方性光拡散フィルムbとすると、
前記異方性光拡散フィルムaと、前記異方性光拡散フィルムbとは、直接、又は粘着剤層を介して積層されており、
前記柱状領域の柱軸に垂直な断面における、前記柱状領域の平均長径/平均短径、である前記柱状領域のアスペクト比において、
前記異方性光拡散フィルムa及び前記異方性光拡散フィルムbの一方のフィルムのアスペクト比が、2~10であり、且つ、他方のフィルムのアスペクト比が1~10であり、
前記異方性光拡散フィルム表面の法線方向と、前記散乱中心軸方向とがなす極角を散乱中心軸角度とすると、
前記異方性光拡散フィルムaの散乱中心軸角度が、20°~35°であり、
前記異方性光拡散フィルムbの散乱中心軸角度が、40°~55°であり、
前記異方性光拡散フィルムa及び前記異方性光拡散フィルムbの各散乱中心軸の方位同士がなす角度が0°~40°であることを特徴とする、異方性光拡散フィルム積層体。
【請求項2】
前記異方性光拡散フィルムa及び前記異方性光拡散フィルムbは、前記平均短径が、0.5μm~1.6μmであり、且つ、前記平均長径が4.5μm~10.0μmであることを特徴とする、請求項1に記載の異方性光拡散フィルム積層体。
【請求項3】
前記異方性光拡散フィルムaのヘイズ値が、30%~70%であり、
前記異方性光拡散フィルムbのヘイズ値が、20%~70%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の異方性光拡散フィルム積層体。
【請求項4】
前記異方性光拡散フィルムaの最大直線透過率が、50%~70%であり、且つ、最小直線透過率が、4%以下であり、
前記異方性光拡散フィルムbの最大直線透過率が、30%~70%であり、且つ、最小直線透過率が6%以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の異方性光拡散フィルム積層体。
【請求項5】
前記異方性異方性光拡散フィルム積層体の最大直線透過率が、15%~30%であり、
0°の入射光角度における直線透過率が、6%~16%であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の異方性光拡散フィルム積層体。
【請求項6】
液晶層と、請求項1~5のいずれか1項に記載の異方性光拡散フィルム積層体と、を含む液晶表示装置であって、
前記液晶層よりも視認側に、前記異方性光拡散フィルム積層体が積層されていることを特徴とする、液晶表示装置。
【請求項7】
前記異方性光拡散フィルムbが、前記異方性光拡散フィルムaよりも視認側となるよう、積層されていることを特徴とする、請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
発光層と、請求項1~5のいずれか1項に記載の異方性光拡散フィルム積層体と、を含む有機EL表示装置であって、
前記発光層よりも視認側に、前記異方性光拡散フィルム積層体が積層されていることを特徴とする、有機EL表示装置。
【請求項9】
前記異方性光拡散フィルムbが、前記異方性光拡散フィルムaよりも視認側となるよう、積層されていることを特徴とする、請求項8に記載の有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性光拡散フィルム積層体及び異方性光拡散フィルム積層体を備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置、例えば透過型のTN方式の液晶は、特定の方位で表示装置を斜めから視認した際に、輝度やコントラストが低下する、正面方向とは異なる色味に変化(階調反転)する、といった視角依存性に係る問題があった。
【0003】
このような視角依存性を解消するために、光の入射角により、直線透過率[(入射した光の直線方向の透過光量)/(入射した光の光量)]が変化する異方性光学体を適用することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1では、表示デバイスの色変化が最小となる方向と、散乱中心軸と、が特定の角度範囲である異方性光学フィルムを表示装置に用いることで、視野角による輝度と色変化の問題を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表示装置の表示方法や表示サイズの多様化等を踏まえ、更に優れた視角依存性改善効果を有する異方性光学体が求められている。
【0007】
そこで本発明は、視野角による輝度と色変化に関して、従来よりも優れた視角依存性改善効果を有する異方性光拡散フィルム積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特定の性質を有する異方性光拡散フィルム積層体とすることで、上記課題を解決可能なことを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の通りである。
【0009】
本発明は、
光の入射角により、(入射した光の直線方向の透過光量)/(入射した光の光量)、である直線透過率が変化する異方性光拡散フィルムが少なくとも2層以上積層された、ヘイズ値が、70%~85%である異方性光拡散フィルム積層体であって、
前記異方性光拡散フィルムは、1つの散乱中心軸と、マトリックス領域と、前記マトリックス領域とは屈折率の異なる複数の柱状領域とを有し、
前記複数の柱状領域は、前記異方性光拡散フィルムの一方の表面から他方の表面にかけて配向、且つ、延在して構成され、
前記異方性光拡散フィルムにおいて、1つ目の異方性光拡散フィルムを異方性光拡散フィルムaとし、2つ目の異方性光拡散フィルムを異方性光拡散フィルムbとすると、
前記異方性光拡散フィルムaと、前記異方性光拡散フィルムbとは、直接、又は粘着剤層を介して積層されており、
前記柱状領域の柱軸に垂直な断面における、前記柱状領域の平均長径/平均短径、である前記柱状領域のアスペクト比において、
前記異方性光拡散フィルムa及び前記異方性光拡散フィルムbの一方のフィルムのアスペクト比が、2~10であり、且つ、他方のフィルムのアスペクト比が1~10であり、
前記異方性光拡散フィルム表面の法線方向と、前記散乱中心軸方向とがなす極角を散乱中心軸角度とすると、
前記異方性光拡散フィルムaの散乱中心軸角度が、20°~35°であり、
前記異方性光拡散フィルムbの散乱中心軸角度が、40°~55°であり、
前記異方性光拡散フィルムa及び前記異方性光拡散フィルムbの各散乱中心軸の方位同士がなす角度が0°~40°であることを特徴とする、異方性光拡散フィルム積層体である。
【0010】
前記異方性光拡散フィルムa及び前記異方性光拡散フィルムbは、前記平均短径が、0.5μm~1.6μmであり、且つ、前記平均長径が4.5μm~10.0μmであることが好ましい。
前記異方性光拡散フィルムaのヘイズ値が、30%~70%であり、
前記異方性光拡散フィルムbのヘイズ値が、20%~70%であることが好ましい。
前記異方性光拡散フィルムaの最大直線透過率が、50%~70%であり、且つ、最小直線透過率が、4%以下であり、
前記異方性光拡散フィルムbの最大直線透過率が、30%~70%であり、且つ、最小直線透過率が6%以下であることが好ましい。
前記異方性異方性光拡散フィルム積層体の最大直線透過率が、15%~30%であり、
0°の入射光角度における直線透過率が、6%~16%であることが好ましい。
【0011】
本発明は、
液晶層と、前記異方性光拡散フィルム積層体と、を含む液晶表示装置であって、
前記液晶層よりも視認側に、前記異方性光拡散フィルム積層体が積層されていることを特徴とする、液晶表示装置であってもよい。
前記異方性光拡散フィルムbが、前記異方性光拡散フィルムaよりも視認側となるよう、積層されていることが好ましい。
【0012】
本発明は、
発光層と、前記異方性光拡散フィルム積層体と、を含む有機EL表示装置であって、
前記発光層よりも視認側に、前記異方性光拡散フィルム積層体が積層されていることを特徴とする、有機EL表示装置であってもよい。
前記異方性光拡散フィルムbが、前記異方性光拡散フィルムaよりも視認側となるよう、積層されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、視野角による輝度と色変化に関して、従来よりも優れた視角依存性改善効果を有する異方性光拡散フィルム積層体を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】異方性光拡散フィルムの入射角依存性の一例を示した説明図である。
【
図2】異方性光拡散フィルムの表面構造を示す上面図である。
【
図3】異方性光拡散フィルムの例を示す模式図である。
【
図4】異方性光拡散フィルムにおける散乱中心軸を説明するための3次元極座標表示である。
【
図5】異方性光拡散フィルムにおける光学プロファイルの一例を示すグラフである。
【
図6】異方性光拡散フィルムの入射光角度依存性測定方法を示す模式図である。
【
図7】異方性光拡散フィルム積層体の例を示す模式図である。
【
図8】異方性光拡散フィルム積層体を構成する各異方性光拡散フィルムにおける散乱中心軸を説明するための3次元極座標表示である。
【
図9】本発明に係る異方性光拡散フィルムの製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る異方性光拡散フィルムについて簡単に説明した後、異方性光拡散フィルム積層体の構造、物性、製造方法、具体的な用途について説明する。
【0016】
<<<<<異方性光拡散フィルム>>>>>
異方性光拡散フィルムは、光の入射角により、直線透過率[(入射した光の直線方向の透過光量)/(入射した光の光量)]が変化する、光学異方性を有するフィルムである。即ち、異方性光拡散フィルムに対する入射光について、所定の角度範囲の入射光は直線性を維持して透過し、その他の角度範囲の入射光は、拡散性を示す。
【0017】
例えば一例として、
図1に示される異方性光拡散フィルムの場合、入射角が20°~50°の場合に拡散性を示し、その他の入射角では拡散性を示さず、直線透過性を示す。
【0018】
<<<<構造>>>>
本発明における異方性光拡散フィルムは、マトリックス領域と、マトリックス領域とは屈折率の異なる複数の柱状領域とを有する。異方性光拡散フィルムに含まれる複数の柱状領域は、通常、異方性光拡散フィルムの一方の表面から他方の表面にかけて配向、且つ、延在して構成されている(
図3等参照)。
【0019】
ここで、屈折率が異なるとは、異方性光拡散フィルムに入射した光の少なくとも一部が、マトリックス領域と、柱状領域との界面において反射が起こる程度に差異があればよく、特に限定されない。
【0020】
<<<柱状領域>>>
柱状領域の長さは、特に限定されず、異方性光拡散フィルムの一方の表面から他方の表面に貫通したものでもよく、一方の表面から他方の表面に届かない長さでも良い。
【0021】
<<柱状領域の形状>>
異方性光拡散フィルムに含まれる柱状領域において、柱軸に垂直な断面における柱状領域の断面形状は、短径と、長径とを有する形状とすることができる。
【0022】
柱状領域の柱軸に垂直な断面における形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形とすることができる。円形の場合には、短径と長径とは等しくなり、楕円形の場合には、短径は短軸の長さ、長径は長軸の長さであり、多角形の場合には、多角形内の最も短い長さを短径とし、最も長い長さを長径とすることができる。
図2に、柱状領域の柱軸に垂直な断面における、柱状領域の断面形状を示す。
図2中、LAは長径を表わし、SAは短径を表わしている。
【0023】
<短径>
異方性光拡散フィルムは、柱状領域の短径の平均値(平均短径)が、0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることがさらに好ましい。一方、柱状領域の平均短径は、5.0μm以下であることが好ましく、4.0μm以下であることがより好ましく、3.0μm以下であることがさらに好ましく、1.6μm以下であることが特に好ましい。これら柱状領域の短径の下限値及び上限値は、適宜組み合わせることができる。
【0024】
<長径>
異方性光拡散フィルムは、柱状領域の長径の平均値(平均長径)が、0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることがさらに好ましく、4.5μm以上であることが特に好ましい。一方、柱状領域の平均長径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましく、10.0μm以下であることが特に好ましい。柱状領域の平均長径は、柱状領域の長さよりも短いことが好ましい。このようにすることで、異方性光拡散フィルムの光の直線透過性を高くすることが可能である。これら柱状領域の長径の下限値及び上限値は、適宜組み合わせることができる。
【0025】
柱状領域の短径及び長径は、異方性光拡散フィルムの、柱状領域の柱軸に垂直な断面(異方性光拡散フィルムの厚み中心付近の断面)を光学顕微鏡で観察し、任意に選択した20個の柱状領域についてそれぞれの短径、長径を計測し、これらの平均値とすることができる。
【0026】
<アスペクト比>
柱状領域の平均短径に対する平均長径の比(平均長径/平均短径)、即ち、アスペクト比は、1~10の範囲、又は、2~10の範囲等とすることができる。
【0027】
図2(a)は、柱状領域のアスペクト比が2~10の異方性光拡散フィルムを示しており、
図2(b)は、柱状領域のアスペクト比が1以上2未満の異方性光拡散フィルムを示している。
【0028】
アスペクト比が1以上2未満の場合には、柱状領域の軸方向に平行な光を照射した場合、その透過光は等方的に拡散する{
図3(a)を参照}。一方、アスペクト比が2~10の場合には、同様に軸方向に平行な光を照射した場合には、アスペクト比に応じた異方性をもって拡散する{
図3(b)を参照}。
【0029】
異方性光拡散フィルムは、1つのアスペクト比を有する複数の柱状領域を含んでもよいし、異なるアスペクト比を持つ、複数の柱状領域を含んでもよい。
【0030】
<<<<散乱中心軸>>>>
異方性光拡散フィルムは、散乱中心軸を有する。散乱中心軸と柱状領域の配向方向(延在方向)とは、通常、平行な関係にある。なお、散乱中心軸と柱状領域の配向方向とが平行であるとは、屈折率の法則(Snellの法則)を満たすものであればよく、厳密に平行である必要はない。
【0031】
Snellの法則は、屈折率n1の媒質から屈折率n2の媒質の界面に対して光が入射する場合、その入射光角度θ1と屈折角θ2との間に、n1sinθ1=n2sinθ2の関係が成立するものである。例えば、n1=1(空気)、n2=1.51(異方性光拡散フィルム)とすると、入射光角度が30°の場合、柱状領域の配向方向(屈折角)は約19°となるが、このように入射光角度と屈折角が異なっていてもSnellの法則を満たしていれば、本発明においては平行の概念に包含される。
【0032】
次に、
図4を参照しながら、異方性光拡散フィルムにおける散乱中心軸Pについてより詳細に説明する。
図4は、異方性光拡散フィルムにおける散乱中心軸Pを説明するための3次元極座標表示である。
【0033】
散乱中心軸は、上述したように、異方性光拡散フィルムへの入射光角度を変化させた際に光拡散性がその入射光角度を境に略対称性を有する光の入射光角度と一致する方向を意味する。なお、このときの入射光角度は、異方性光拡散フィルムの直線透過率を測定し、入射光角度毎の直線透過率をプロットしたものである光学プロファイル(
図5)における極小値に挟まれた略中央部(拡散領域の中央部)となる。
【0034】
散乱中心軸は、
図4に示すような3次元極座標表示によれば、異方性光拡散フィルムの表面をxy平面とし、異方性光拡散フィルムの表面に対する法線をz軸とすると、極角θと方位角φとによって表現することができる。つまり、
図4中のPxyが、異方性光拡散フィルムの表面に投影した散乱中心軸の長さ方向ということができる。
【0035】
ここで、異方性光拡散フィルムの法線(
図4に示すz軸)と、柱状領域とのなす極角θ(-90°<θ<90°)を散乱中心軸角度と定義することができる。未硬化樹脂組成物層を光硬化させ柱状領域を形成させる工程において、照射する光線の方向を変えることで、柱状領域の軸方向の角度を所望の範囲に調整することができる。
【0036】
異方性光拡散フィルムの散乱中心軸角度θは、20°~55°であることが好ましい。散乱中心軸角度θをこのように設定することで、所望の角度依存性を奏することが可能となる。
【0037】
<<<<光学プロファイル>>>>
図5は、散乱中心軸角度が0°である異方性光拡散フィルムにおける光学プロファイルの一例を示すグラフであり、光学プロファイルとは、本発明において、光拡散性の入射光角度依存性を示す曲線のことを指す。
図5に示すように、異方性光拡散フィルムは、入射光角度によって直線透過率が変化する光拡散性の入射光角度依存性を有するものである。
【0038】
光学プロファイルは、例えば以下のようにして作成できる。
【0039】
図6に示すように、異方性光拡散フィルムを光源1と検出器2との間に配置する。本形態においては、光源1からの照射光Iが、異方性光拡散フィルムの法線方向から入射する場合を入射光角度0°とした。また、異方性光拡散フィルムは直線Vを回転軸として、任意に回転させることができるように配置され、光源1及び検出器2は固定されている。すなわち、この方法によれば、光源1と検出器2との間にサンプル(異方性光拡散フィルム)を配置し、サンプル表面の直線Vを回転軸として角度を変化させながらサンプルを直進透過して検出器2に入る直線透過光量を測定する。その後、直線透過光量より直線透過率を算出し、この直線透過率を角度ごとにプロットして光学プロファイルを作成する。
この評価方法によって、どの角度の範囲で入射される光が拡散するかを評価することができる。
【0040】
光学プロファイルは、光拡散性を直接的に表現しているものではないが、直線透過率が低下することで、逆に拡散透過率が増大していると解釈すれば、概ね光拡散性を示しているといえる。
【0041】
通常の等方的な光拡散フィルムでは、0°付近の入射光角度をピークとする、山型の光学プロファイルを示す。
【0042】
これに対し、例えば一例である
図5の散乱中心軸角度が0°である異方性光拡散フィルムの光学プロファイルグラフでは、0°付近(-20°~+20°)の入射光角度で直線透過率が小さく、入射光角度の絶対値がそれよりも大きくなるにつれて直線透過率が大きくなる谷型の光学プロファイルを示す。
【0043】
このように、異方性光拡散フィルムは、入射光が散乱中心軸に近い入射光角度範囲では強く拡散されるが、それ以上の入射光角度範囲では拡散が弱まり直線透過率が高まるという性質を有する。
【0044】
また、散乱中心軸角度が0°以外の異方性光拡散フィルムの場合には、散乱中心軸角度付近の入射光角度で直線透過率が小さくなるように光学プロファイルが移動する(光学プロファイルの谷部が散乱中心軸角度側に移動する)。
【0045】
<<<直線透過率>>>
図5に示すように、直線透過率が最大となる入射角で異方性光拡散フィルムに入射した光の直線透過率を、最大直線透過率と称する。異方性光拡散フィルムは、最大直線透過率が、30%~70%であることが好ましい。
【0046】
また、
図5に示すように、直線透過率が最小となる入射角で異方性光拡散フィルムに入射した光の直線透過率を、最小直線透過率と称する。異方性光拡散フィルムは、最小直線透過率が、6%以下であることが好ましい。
【0047】
直線透過率は、異方性光拡散フィルムの材料の屈折率(複数の樹脂を用いる場合はその屈折率差)や塗膜の膜厚、UV照度や構造形成時の温度等の硬化条件によって調整することができる。
【0048】
さらに
図5に示すように、最大直線透過率と最小直線透過率との中間値の直線透過率に対する2つの入射光角度の角度範囲を拡散領域(この拡散領域の幅を「拡散幅」)と称し、それを除く入射光角度範囲を非拡散領域(透過領域)と称する。
【0049】
<<<ヘイズ値>>>
異方性光拡散フィルムのヘイズ値(全ヘイズ)は、異方性光拡散フィルムの拡散性を示す指標である。ヘイズ値が大きくなると、異方性光拡散フィルムの拡散性が高くなる。
【0050】
ヘイズ値の測定方法は、特に限定されず、公知の方法で測定することができる。例えば、JIS K7136-1:2000「プラスチック-透明材料のヘイズの求め方」によって測定することができる。
なお、当該ヘイズ値の測定は、2層以上の異方性光拡散フィルムが積層された、異方性光拡散フィルム積層体に対しても同様の方法により測定できる。
【0051】
異方性光拡散フィルムのヘイズ値は、20%~70%が好ましい。
【0052】
ヘイズ値は、異方性光拡散フィルムの材料の屈折率(複数の樹脂を用いる場合はその屈折率差)や塗膜の膜厚、UV照度や構造形成時の温度等の硬化条件によって調整することができる。
【0053】
<<<<厚み>>>>
異方性光拡散フィルムの厚みは、特に限定されないが、15μm~100μmが好ましく、30μm~60μmがより好ましい。このような範囲とすることで、材料費やUV照射に要する費用等の製造コストを低減させつつ、視覚依存性改善効果を十分なものとすることができる。
【0054】
<<<<<異方性光拡散フィルム積層体>>>>>
<<<<構造>>>>
本発明の異方性光拡散フィルム積層体は、特定の性質を有する異方性光拡散フィルムが、少なくとも2層以上積層されたものであり、
図7は異方性光拡散フィルム積層体の例を示す模式図である。
【0055】
本発明における異方性光拡散フィルム積層体に含まれる2層の異方性光拡散フィルムについて、第1の異方性光拡散フィルムを異方性光拡散フィルムaとし、第2の異方性光拡散フィルムを異方性光拡散フィルムbとする。
【0056】
本発明の異方性光拡散フィルム積層体は、異方性光拡散フィルムa及び異方性光拡散フィルムb以外の、その他の異方性光拡散フィルムを有していてもよい(
図7)。即ち、異方性光拡散フィルム積層体は、異方性光拡散フィルムa及び異方性光拡散フィルムbを含む、3層以上の異方性光拡散フィルムを含む積層体であってもよい。
その他の異方性光拡散フィルムは、1層のみであってもよいし複数層であってもよい。また、その他の異方性光拡散フィルムが複数層存在する場合、異方性光拡散フィルム積層体の各層は、構造と特性が互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0057】
ただし、本発明において、異方性光拡散フィルムaと異方性光拡散フィルムbの各フィルム間は、その他の異方性光拡散フィルムを介さずに直接、又は粘着層を介して積層される。即ち、例えば
図7に示すように、異方性光拡散フィルム積層体が有する異方性光拡散フィルムの積層例としては、「異方性光拡散フィルムa/異方性光拡散フィルムb」(
図7(a))、「その他の異方性光拡散フィルム/異方性光拡散フィルムa/異方性光拡散フィルムb」(
図7(b))、「異方性光拡散フィルムa/異方性光拡散フィルムb/その他の異方性光拡散フィルム」(
図7(c))、「その他の異方性光拡散フィルム/異方性光拡散フィルムa/異方性光拡散フィルムb/その他の異方性光拡散フィルム」(
図7(d)、ただし、2層のその他の異方性光拡散フィルムは、構造と特性が互いに同じであっても異なっていてもよい)のような構成とすることができる。
【0058】
その他の異方性光拡散フィルムは、直接積層されていてもよいし、粘着層等を介して積層されていてもよい。
【0059】
異方性光拡散フィルム同士の積層に用いられる粘着層の粘着剤としては、透明性を有するものであれば特に制限されるものではないが、常温で感圧接着性を有する粘着剤を使用することが好ましい。このような粘着剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂を挙げることができる。特に、アクリル系の樹脂は、光学的透明性が高く、好ましい。
【0060】
また、異方性光拡散フィルム積層体表面には、本発明の効果を妨げない範囲で、異方性光拡散フィルム以外の、別の機能を有する層を積層することができる。別の機能を有する層としては、例えば、位相差フィルム、UVカット層、低透湿層等が挙げられる。
【0061】
また、異方性光拡散フィルム積層体は、ガラス基板等の透明基板上に積層されていてもよい。
【0062】
<<<<物性/性質>>>>
<<<ヘイズ値>>>
異方性光拡散フィルム積層体全体のヘイズ値は、70%~85%が好ましい。特定の散乱中心軸を有する異方性光拡散フィルムを積層させる際に、異方性光拡散フィルム積層体全体のヘイズ値をこのような範囲とすることで優れた視角依存性改善効果が奏される。
【0063】
なお、異方性光拡散フィルム積層体全体のヘイズ値は、異方性光拡散フィルムaのヘイズ値及び異方性光拡散フィルムbのヘイズ値によって調整することができる。具体的には、異方性光拡散フィルムaのヘイズ値及び異方性光拡散フィルムbの合計のヘイズ値が増加することで、異方性光拡散フィルム積層体全体のヘイズ値が増加する傾向にある。
【0064】
<<<直線透過率>>>
異方性光拡散フィルム積層体の直線透過率は、異方性光拡散フィルム積層体の視認側となる異方性光拡散フィルムに対し、上述した異方性光拡散フィルムの直線透過率測定と同様の方法により、行うことができる。
【0065】
異方性光拡散フィルム積層体は、最大直線透過率が、15%~30%であることが好ましい。
【0066】
異方性光拡散フィルム積層体は、最小直線透過率が、6%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましい。
【0067】
異方性光拡散フィルム積層体は、0°の入射光角度における直線透過率が、6%~16%であることが好ましい。
【0068】
異方性光拡散フィルム積層体の最大直線透過率及び最小直線透過率と、0°入射光角度における直線透過率とをこのような範囲とすることで、十分に光を拡散することができるとともに、視認鮮明性低下等の問題が生じ難くなる。
【0069】
<<<厚み>>>
異方性光拡散フィルム積層体の厚みは、層の積層数にもよるが、30μm~500μmであることが好ましく、30μm~300μmであることがより好ましい。異方性光拡散フィルム積層体の厚みをこのような範囲とすることで視覚依存性改善効果を十分なものとすることができる。
【0070】
<<<異方性光拡散フィルムa及び異方性光拡散フィルムb>>>
次に、本発明の異方性光拡散フィルムa及び異方性光拡散フィルムbの特性について説明する。なお、本説明以外の異方性光拡散フィルムの基本的な構造及び特性等については前述の通りである。異方性光拡散フィルムa及び異方性光拡散フィルムbは、材料、柱状領域の短径と長径、アスペクト比等が、夫々同じであってもよいし、異なっていてもよい。特に指定の無い限り、下記に示す好ましい範囲は、2層の内、少なくとも一層が当該範囲を満たす場合、及び、2層共当該範囲を満たす場合のどちらであってもよい。
【0071】
<<柱状領域>>
続いて、異方性光拡散フィルムa及び異方性光拡散フィルムbの柱状領域について説明する。
【0072】
<アスペクト比>
異方性光拡散フィルムa及び異方性光拡散フィルムbは、前記異方性光拡散フィルムa及び前記異方性光拡散フィルムbの一方のフィルムのアスペクト比が、2~10であり、且つ、他方のフィルムのアスペクト比が1~10(1以上2未満又は2~10)であることが好ましく、前記異方性光拡散フィルムa及び前記異方性光拡散フィルムbの一方のフィルムのアスペクト比が、2~8であり、且つ、他方のフィルムのアスペクト比が1~10(1以上2未満又は2~10)であること、又は、前記異方性光拡散フィルムa及び前記異方性光拡散フィルムbの一方のフィルムのアスペクト比が、2~10であり、且つ、他方のフィルムのアスペクト比が1~8(1以上2未満又は2~8)であることがより好ましく、前記異方性光拡散フィルムa及び前記異方性光拡散フィルムbの一方のフィルムのアスペクト比が、2~8であり、且つ、他方のフィルムのアスペクト比が1~8(1以上2未満又は2~8)であることがさらに好ましい。
【0073】
<<散乱中心軸>>
次に、
図8を参照し、異方性光拡散フィルムaの散乱中心軸Paと異方性光拡散フィルムbの散乱中心軸Pbとの関係等について述べる。
図8は、異方性光拡散フィルム積層体を構成する各異方性光拡散フィルムにおける散乱中心軸を説明するための3次元極座標表示である。
【0074】
本発明に係る異方性光拡散フィルム積層体において、異方性光拡散フィルムaと、異方性光拡散フィルムbとは、それぞれ独立して、散乱中心軸Paと、散乱中心軸Pbとを有する。散乱中心軸Paと、散乱中心軸Pbとを適切な範囲とすることにより、異方性光拡散フィルム積層体全体の拡散性を調整し、単層とした異方性光拡散フィルムよりも優れた視角依存性改善効果を奏することが可能である。
【0075】
より詳細には、一般的なディスプレイでは、正しい色味かつ高い照度の光が得られるのが、法線方向(極角θ=0°)付近である。法線方向付近の光を、視野角を改善したい方位の極角θが大きい方向へと拡散させることで、視野角を改善することが可能となる。本発明によれば、正面方向の光を段階的に、極角θが大きい方向へと変化させる、つまり、異方性光拡散フィルムa及び異方性光拡散フィルムbにより、散乱中心軸角度θを2段階で適切に拡散していくこととなる。散乱中心軸角度θが小さい異方性光拡散フィルムのみでは、極角θが大きい方向へと光を十分に拡散することができず、また、散乱中心軸角度θが大きい異方性光拡散フィルムのみでは、法線方向での拡散性が不足するために、やはり極角θが大きい方向に光を十分に拡散することができない。
【0076】
異方性光拡散フィルムaの散乱中心軸角度θaは、20°~35°であることが好ましく、27°~32°がより好ましく、29°~31°がさらに好ましい。
【0077】
また、異方性光拡散フィルムbの散乱中心軸Pbの散乱中心軸角度θbは、40°~55°であることが好ましく、46°~52°であることがより好ましく、49°~51°であることがさらに好ましい。散乱中心軸角度θaと散乱中心軸角度θbとをこのように設定することで、視角依存性改善効果を奏することが可能である。
【0078】
更に、散乱中心軸角度θaと散乱中心軸角度θbとの差分(θab)を、5°~40°とすることが好ましく、10°~30°とすることがより好ましい。散乱中心軸角度θaと散乱中心軸角度θbとの差分(θab)をこのように設定することで、光の拡散性が高まり、視角依存性改善効果を奏することが可能である。
【0079】
また、異方性光拡散フィルムa及び異方性光拡散フィルムbの各散乱中心軸の方位同士がなす角度φab(換言すれば、異方性光拡散フィルムaの散乱中心軸Paの方位角φaと、異方性光拡散フィルムbの散乱中心軸Pbの方位角φbとの差分)は、0°~40°であることが好ましく、5°~40°であることがより好ましく、10°~30°であることがさらに好ましい。角度φabが40°超の場合、散乱中心軸Paと散乱中心軸Pbとの方位のずれが大きくなり、所望の視角依存性改善効果を奏することが困難となる。
【0080】
前述のように、散乱中心軸角度は、未硬化樹脂組成物層を光硬化させ柱状領域を形成させる工程において、照射する光線の方向を変えることで調整することができる。また、角度φabは、異方性光拡散フィルムaと異方性光拡散フィルムbとを積層させる方向によって調整することができる。
【0081】
<<直線透過率>>
異方性光拡散フィルムaは、最大直線透過率が、40%~70%であることが好ましく、45%~66%であることがより好ましい。
【0082】
異方性光拡散フィルムaは、最小直線透過率が、6%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましい。
【0083】
異方性光拡散フィルムbは、最大直線透過率が、30%~70%であることが好ましく、50%~60%であることがより好ましい。
【0084】
異方性光拡散フィルムbは、最小直線透過率が、4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。
【0085】
異方性光拡散フィルムaの散乱中心軸Paと異方性光拡散フィルムbの散乱中心軸Pbとを上述した適切な範囲としつつ、異方性光拡散フィルムa及び異方性光拡散フィルムbの最大直線透過率及び最小直線透過率をこのような範囲とすることで、十分に光を拡散することができるとともに、視認鮮明性低下などの問題が生じ難くなる。
【0086】
<<ヘイズ値>>
異方性光拡散フィルムaのヘイズ値は、30%~70%が好ましい。
【0087】
異方性光拡散フィルムbのヘイズ値は、20%~70%が好ましい。
【0088】
<<厚み>>
異方性光拡散フィルムa及び異方性光拡散フィルムbの厚みは、特に限定されないが、共に、15μm~100μmが好ましく、30μm~60μmがより好ましい。このような範囲とすることで、材料費やUV照射に要する費用等の製造コストを低減させつつも、異方性光拡散フィルムa及び第2異方性光拡散フィルムbの厚み方向での拡散性増加による画像視認鮮明性低下やコントラスト低下等の発生を抑制し、更に、光の拡散性及び集光性を十分なものとすることができる。
【0089】
<<<<異方性光拡散フィルム積層体の製造方法>>>>
異方性光拡散フィルム積層体は、複数の異方性光拡散フィルムを有する積層体である。異方性光拡散フィルム積層体は、例えば、第1の異方性光拡散フィルムと第2の異方性光拡散フィルムとを別々に製造し、これらに対し、粘着剤層を介して積層させることによって異方性光拡散フィルム積層体を製造することができる。
【0090】
粘着剤としては、前述のように、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂を挙げることができる。
【0091】
粘着剤の塗布方法及び硬化条件としては、使用する粘着剤に応じて、従来公知のものとすることができる。
【0092】
なお、異方性光拡散フィルム積層体は、第1の異方性光拡散フィルムを製造した後に、第1の異方性光拡散フィルムを基材として、第1の異方性光拡散フィルム上に第2の異方性光拡散フィルムを直接的に形成させることでも製造可能である。より具体的には、光重合性化合物を含む組成物層を硬化させて、第1の異方性光拡散フィルムを製造した後、当該第1の異方性光拡散フィルム上に、直接、光重合性化合物を含む組成物を塗布して、シート状に設けて硬化することにより、第2の異方性光拡散フィルムを形成させてもよい。
【0093】
以下、異方性光拡散フィルムの製造方法について説明する。
【0094】
<<<異方性光拡散フィルムの製造>>>
<<原料>>
異方性光拡散フィルムの原料について、(1)光重合性化合物、(2)光開始剤、(3)配合量、その他任意成分の順に説明する。
【0095】
<光重合性化合物>
光重合性化合物は、ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基を有するマクロモノマー、ポリマー、オリゴマー、モノマーから選択される光重合性化合物と光開始剤とから構成され、紫外線及び/又は可視光線を照射することにより重合・硬化する材料である。
【0096】
ここで、異方性光拡散フィルムを形成する材料が1種類であっても、密度の高低差ができることによって屈折率差が生ずる。UVの照射強度が強い部分は硬化速度が早くなるため、その硬化領域周囲に重合・硬化材料が移動し、結果として屈折率が高くなる領域と屈折率が低くなる領域が形成されるからである。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートのどちらであってもよいことを意味する。
【0097】
ラジカル重合性化合物は、主に分子中に1個以上の不飽和二重結合を含有するもので、具体的には、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート等の名称で呼ばれるアクリルオリゴマーと、2-エチルヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソノルボルニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-アクリロイロキシフタル酸、ジシクロペンテニルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のアクリレートモノマーが挙げられる。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。なお、同様にメタクリレートも使用可能であるが、一般にはメタクリレートよりもアクリレートの方が、光重合速度が速いので好ましい。
【0098】
カチオン重合性化合物としては、分子中にエポキシ基やビニルエーテル基、オキセタン基を1個以上有する化合物が使用できる。エポキシ基を有する化合物としては、2-エチルヘキシルジグリコールグリシジルエーテル、ビフェニルのグリシジルエーテル、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類のジグリシジルエーテル類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラック、オルトクレゾールノボラック等のノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのEO付加物、ビスフェノールAのPO付加物等のアルキレングリコール類のジグリシジルエーテル類、ヘキサヒドロフタル酸のグリシジルエステルやダイマー酸のジグリシジルエステル等のグリシジルエステル類が挙げられる。
【0099】
エポキシ基を有する化合物としてはさらに、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)-4,5-エポキシテトラヒドロフタレート等の脂環式エポキシ化合物も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
ビニルエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、ビニルエーテル化合物は、一般にはカチオン重合性であるが、アクリレートと組み合わせることによりラジカル重合も可能である。
【0101】
また、オキセタン基を有する化合物としては、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)-オキセタン等が使用できる。
【0102】
なお、以上のカチオン重合性化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。上記光重合性化合物は、上述に限定されるものではない。
【0103】
また、十分な屈折率差を生じさせるべく、上記光重合性化合物には、低屈折率化を図るために、フッ素原子(F)を導入しても良く、高屈折率化を図るために、硫黄原子(S)、臭素原子(Br)、各種金属原子を導入しても良い。さらに、特表2005-514487号公報に開示されるように、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化錫(SnOx)等の高屈折率の金属酸化物からなる超微粒子の表面に、アクリル基やメタクリル基、エポキシ基等の光重合性官能基を導入した機能性超微粒子を上述の光重合性化合物に添加することも有効である。
【0104】
光重合性化合物として、シリコーン骨格を有する光重合性化合物を使用することが好ましい。シリコーン骨格を有する光重合性化合物は、その構造(主にエーテル結合)に伴い配向して重合・硬化し、低屈折率領域、高屈折率領域、又は、低屈折率領域及び高屈折率領域を形成する。シリコーン骨格を有する光重合性化合物を使用することによって、柱状領域を傾斜させやすくなり、正面方向への集光性が向上する。なお、低屈折率領域は柱状領域又はマトリックス領域のいずれか一方に相当するものであり、他方が高屈折率領域に相当する。
【0105】
低屈折率領域において、シリコーン骨格を有する光重合性化合物の硬化物であるシリコーン樹脂が相対的に多くなることが好ましい。これによって、散乱中心軸をさらに傾斜させやすくすることができるため、正面方向への集光性が向上する。シリコーン樹脂は、シリコーン骨格を有さない化合物に比べ、ケイ素(Si)を多く含有するため、このケイ素を指標として、EDS(エネルギー分散型X線分光器)を使用することによってシリコーン樹脂の相対的な量を確認することができる。
【0106】
シリコーン骨格を有する光重合性化合物は、ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー又はマクロモノマーである。ラジカル重合性の官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基等が挙げられ、カチオン重合性の官能基としては、エポキシ基、オキセタン基等が挙げられる。これらの官能基の種類と数に特に制限はないが、官能基が多いほど架橋密度が上がり、屈折率の差が生じやすいため好ましいことから、多官能のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有することが好ましい。また、シリコーン骨格を有する化合物はその構造から他の化合物との相溶性において不十分なことがあるが、そのような場合にはウレタン化して相溶性を高めることができる。本形態では、末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するシリコーン・ウレタン・(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0107】
シリコーン骨格を有する光重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、500~50,000の範囲にあることが好ましい。より好ましくは2,000~20,000の範囲である。重量平均分子量が上記範囲にあることにより、十分な光硬化反応が起こり、異方性光拡散フィルム0の各異方性光拡散フィルム内に存在するシリコーン樹脂が配向しやすくなる。シリコーン樹脂の配向に伴い、散乱中心軸を傾斜させやすくなる。
【0108】
シリコーン骨格としては、例えば、下記の一般式(1)で示されるものが該当する。一般式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6はそれぞれ独立に、メチル基、アルキル基、フルオロアルキル基、フェニル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ポリエーテル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の官能基を有する。また、一般式(1)中、nは1~500の整数であることが好ましい。
【0109】
【0110】
シリコーン骨格を有する光重合性化合物にシリコーン骨格を有さない化合物を配合して、異方性光拡散フィルムを形成すると、低屈折率領域と高屈折率領域が分離して形成されやすくなり、異方性の程度が強くなり好ましい。
【0111】
シリコーン骨格を有さない化合物は、光重合性化合物のほかに熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を用いることができ、これらを併用することもできる。
【0112】
光重合性化合物としては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基を有するポリマー、オリゴマー、モノマーを使用することができる(ただし、シリコーン骨格を有していないものである)。
【0113】
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂とその共重合体や変性物が挙げられる。熱可塑性樹脂を用いる場合においては熱可塑性樹脂が溶解する溶剤を使用して溶解し、塗布、乾燥後に紫外線でシリコーン骨格を有する光重合性化合物を硬化させて異方性光拡散フィルムを成形する。
【0114】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステルとその共重合体や変性物が挙げられる。熱硬化性樹脂を用いる場合においては、紫外線でシリコーン骨格を有する光重合性化合物を硬化させた後に適宜加熱することで、熱硬化性樹脂を硬化させて異方性光拡散フィルムを成形する。
【0115】
シリコーン骨格を有さない化合物として最も好ましいのは光重合性化合物であり、低屈折率領域と高屈折率領域が分離しやすいことと、熱可塑性樹脂を用いる場合の溶剤が不要で乾燥過程が不要であること、熱硬化性樹脂のような熱硬化過程が不要であること等、生産性に優れている。
【0116】
<光開始剤>
ラジカル重合性化合物を重合させることのできる光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパノン-1、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)フェニル]チタニウム、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0117】
カチオン重合性化合物の光開始剤は、光照射によって酸を発生し、この発生した酸により上述のカチオン重合性化合物を重合させることができる化合物であり、一般的には、オニウム塩、メタロセン錯体が好適に用いられる。
【0118】
オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩等が使用され、これらの対イオンには、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-等のアニオンが用いられる。具体例としては、4-クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロホスフェート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェート、(η5-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0119】
光開始剤は、光重合性化合物質量100に対し、0.01質量部~10質量部程度配合されることが好ましく、好ましくは0.1質量部~7質量部程度配合されることがより好ましく、0.1質量部~5質量部程度配合されることがさらに好ましい。これは、0.01質量部未満では光硬化性が低下し、10質量部を超えて配合した場合には、表面だけが硬化して内部の硬化性が低下してしまう弊害、着色、柱状構造の形成の阻害を招くからである。
【0120】
<その他の成分>
光開始剤は、通常粉体を光重合性化合物中に直接溶解して使用されるが、溶解性が悪い場合は光開始剤を予め極少量の溶剤に高濃度に溶解させたものを使用することもできる。このような溶剤としては光重合性であることがさらに好ましく、具体的には炭酸プロピレン、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。また、光重合性を向上させるために公知の各種染料や増感剤を添加することも可能である。
【0121】
さらに、光重合性化合物を加熱により硬化させることのできる熱硬化開始剤を光開始剤と共に併用することもできる。この場合、光硬化の後に加熱することにより光重合性化合物の重合硬化をさらに促進し完全なものにすることが期待できる。光重合性化合物を単独で、又は複数を混合した組成物を硬化させて、異方性光拡散フィルムを形成することができる。
【0122】
光重合性化合物と光硬化性を有しない高分子樹脂の混合物を硬化させることによっても異方性光拡散フィルム形成することができる。
【0123】
ここで使用できる高分子樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これらの高分子樹脂と光重合性化合物は、光硬化前は十分な相溶性を有していることが必要であるが、この相溶性を確保するために各種有機溶剤や可塑剤等を使用することも可能である。
【0124】
光重合性化合物としてアクリレートを使用する場合は、高分子樹脂としてはアクリル樹脂から選択することが相溶性の点で好ましい。
【0125】
シリコーン骨格を有する光重合性化合物と、シリコーン骨格を有さない化合物の比率は質量比で15:85~85:15の範囲にあることが好ましい。より好ましくは30:70~70:30の範囲である。当該範囲にすることによって、低屈折率領域と高屈折率領域の相分離が進みやすくなるとともに、柱状領域が傾斜しやすくなる。シリコーン骨格を有する光重合性化合物の比率が下限値未満又は上限値超であると、相分離が進みにくくなってしまい、柱状領域が傾斜しにくくなる。
【0126】
シリコーン骨格を有する光重合性化合物としてシリコーン・ウレタン・(メタ)アクリレートを使用すると、シリコーン骨格を有さない化合物との相溶性が向上する。これによって、材料の混合比率を幅広くしても柱状領域を傾斜させることができる。
【0127】
光重合性化合物を含む組成物を調製する際の溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等を使用することができる。
【0128】
<<製造プロセス>>
次に、異方性光拡散フィルム用組成物を用いた、異方性光拡散フィルムの製造プロセスについて説明する。
【0129】
まず、上述の異方性光拡散フィルム用組成物(以下、「光硬化樹脂組成物」と称する場合がある)を、透明PETフィルムのような適当な基体上に塗布してシート状に設け、成膜し、必要に応じて乾燥し溶剤を揮発させて未硬化樹脂組成物層を設ける。この未硬化樹脂組成物層上に光を照射することで、異方性光拡散フィルムを作製することができる。
【0130】
より具体的には、異方性光拡散フィルムの形成工程は、主に、以下の工程を有するものである。
(1)工程1-1:未硬化樹脂組成物層を基体上に設ける工程
(2)工程1-2:光源から平行光線を得る工程
(3)任意工程1-3:指向性をもった光線を得る工程
(4)工程1-4:未硬化樹脂組成物層を硬化させる工程
【0131】
<工程1-1:未硬化樹脂組成物層を基体上に設ける工程>
光硬化樹脂組成物を、基体上に、シート状に、未硬化樹脂組成物層として設ける手法は、通常の塗工方式や印刷方式が適用される。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。組成物が低粘度の場合は、基体の周囲に一定の高さの堰を設けて、この堰で囲まれた中に組成物をキャストすることもできる。
【0132】
工程1-1において、未硬化樹脂組成物層の酸素阻害を防止して、異方性光拡散フィルムの特徴である柱状領域を効率良く形成させるために、未硬化樹脂組成物層の光照射側に密着して光の照射強度を局所的に変化させるマスクを積層することも可能である。
【0133】
マスクの材質としては、カーボン等の光吸収性のフィラーをマトリックス中に分散したもので、入射光の一部はカーボンに吸収されるが、開口部は光が十分に透過できるような構成のものが好ましい。このようなマトリックスとしては、PET、TAC、PVAc、PVA、アクリル、ポリエチレン等の透明プラスチックや、ガラス、石英等の無機物や、これらのマトリックスを含むシートに紫外線透過量を制御するためのパターニングや紫外線を吸収する顔料を含んだものであっても構わない。
【0134】
このようなマスクを用いない場合には、窒素雰囲気下で光照射を行うことで、未硬化樹脂組成物層の酸素阻害を防止することも可能である。また、通常の透明フィルムを未硬化樹脂組成物層上に積層するだけでも、酸素阻害を防ぎ柱状領域の形成を促す上で有効である。このようなマスクや透明フィルムを介した光照射では、光硬化樹脂組成物中に、その照射強度に応じた光重合反応を生じるため、屈折率分布を生じ易く、本形態に係る異方性光拡散フィルムの作製に有効である。
【0135】
<工程1-2:光源から平行光線を得る工程>
光源としては、通常はショートアークの紫外線発生光源が使用され、具体的には高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタハライドランプ、キセノンランプ等が使用可能である。このとき、所望の散乱中心軸と平行な光線を得る必要があるが、このような平行光線は、例えば点光源を配置して、この点光源と未硬化樹脂組成物層の間に平行光線を照射するためのフレネルレンズ等の光学レンズを配置する他、光源の背後に反射鏡を配置して、所定の方向に点光源として光が出射するようにすること等で、得ることができる。
【0136】
<任意工程1-3:指向性をもった光線を得る工程>
任意工程1-3は、平行光線を指向性拡散素子に入射させ、指向性をもった光線を得る工程である。
図9は、本発明に係る任意工程1-3における異方性光拡散フィルムの製造方法を示す模式図である。
【0137】
任意工程1-3で用いられる指向性拡散素子301及び302は、光源300から入射した平行光線Dに指向性を付与するものであればよい。
【0138】
図9においては指向性をもった光Eが、X方向に多く拡散し、Y方向にはほとんど拡散しない態様にて、未硬化樹脂組成物層303に入射することを記載している。このように指向性をもった光を得るためには、例えば、指向性拡散素子301及び302内に、アスペクト比の高い針状フィラーを含有させるとともに、当該針状フィラーをY方向に長軸方向が延存するように配向させる方法を採用することができる。指向性拡散素子301及び302は、針状フィラーを使用する方法以外に、種々の方法を使用することができる。
【0139】
ここで、指向性をもった光Eのアスペクト比は、2~20とすることが好ましい。当該アスペクト比にほぼ対応した、アスペクト比を有する柱状領域が形成される。上記アスペクト比の上限値は、10以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。アスペクト比が20超では、干渉虹やギラツキを生じるおそれがある。
【0140】
任意工程1-3においては、指向性をもった光Eの広がりを調整することにより、形成される柱状領域の大きさ(アスペクト比、短径SA、長径LA等)を適宜定めることができる。例えば、
図9(a)、(b)のいずれにおいても、本形態の異方性光拡散フィルムを得ることができる。
図9の(a)と(b)で異なるのは、指向性をもった光Eの広がりが、(a)では大きいのに対し(b)では小さいことである。指向性をもった光Eの広がりの大きさに依存して、柱状領域の大きさが異なることとなる。
【0141】
指向性をもった光Eの広がりは、主に指向性拡散素子301及び302の種類と、未硬化樹脂組成物層303との距離に依存する。当該距離を短くするにつれ柱状領域の大きさは小さくなり、長くするにつれ柱状領域の大きさは大きくなる。従って、当該距離を調整することにより、柱状領域の大きさを調整することができる。
【0142】
<工程1-4:未硬化樹脂組成物層を硬化させる工程>
未硬化樹脂組成物層に照射して、未硬化樹脂組成物層を硬化させる光線は、光重合性化合物を硬化可能な波長を含んでいることが必要で、通常は水銀灯の365nmを中心とする波長の光が利用される。この波長帯を使って異方性光拡散フィルムを作製する場合、照度としては0.01mW/cm2~100mW/cm2の範囲が好ましく、0.1mW/cm2~20mW/cm2 がより好ましい。照度が0.01mW/cm2未満であると、硬化に長時間を要するため、生産効率が悪くなり、100mW/cm2を超えると、光重合性化合物の硬化が速すぎて構造形成を生じず、目的の光学特性を発現できなくなるからである。
【0143】
なお、光の照射時間は特に限定されないが、10秒間~180秒間が好ましく、30秒間~120秒間がより好ましい。上記光線を照射することで、本形態の異方性光拡散フィルムを得ることができる。
【0144】
異方性光拡散フィルムは、上述の如く、低照度の光を比較的長時間照射することにより、未硬化樹脂組成物層中に、特定の内部構造が形成されることで得られるものである。そのため、このような光照射だけでは未反応のモノマー成分が残存して、べたつきを生じたりしてハンドリング性や耐久性に問題がある場合がある。そのような場合は、1000mW/cm2以上の高照度の光を追加照射して残存モノマーを重合させることができる。このときの光照射はマスクを積層した側の逆側から行ってもよい。
【0145】
前述したように、未硬化樹脂組成物層を硬化させる際に、未硬化樹脂組成物層に照射される光の角度を調整することにより、得られる異方性光拡散フィルムの散乱中心軸を所望のものとすることができる。
【0146】
<<<<異方性光拡散フィルム積層体の用途>>>>
異方性光拡散フィルム積層体は、視角依存性改善効果に優れることから、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ等のあらゆる表示装置に適用することができる。異方性光拡散フィルム積層体は、視角依存性の問題が生じ易いTN方式の液晶においても特に好ましく使用することができる。その際、優れた視角依存性改善効果を発現させるため、異方性光拡散フィルムbが、異方性光拡散フィルムaよりも視認側となるよう、積層されることが好ましい。
【0147】
ここで、本発明によれば、液晶層と、異方性光拡散フィルム積層体と、を含む液晶表示装置を提供することが可能である。この場合、異方性光拡散フィルム積層体は、液晶層よりも視認側に設けられている(積層されている)。液晶表示装置は、TN方式、VA方式、IPS方式等のいずれでもよい。より具体的には、一般的な液晶装置は、表示装置から視認側に向かって、光源、偏光板、ガラス基板、透明電極膜、液晶層、透明電極膜、カラーフィルター、ガラス基板、偏光板の順番で積層された層構造を有し、また、適宜の機能層を更に有するが、異方性光拡散フィルム積層体は、液相層よりも視認側となるいずれの箇所に設けられていてもよい。
【0148】
また、本発明によれば、発光層と、異方性光拡散フィルム積層体と、を含む有機EL表示装置を提供することが可能である。この場合、異方性光拡散フィルム積層体は、発光層(発光層に接続された電極を含む。)よりも視認側に設けられている(積層されている)。有機EL表示装置は、トップエミッション方式、ボトムエミッション方式等のいずれの方式でもよいし、また、カラーの有機EL表示装置である場合には、RGB塗り分け方式、カラーフィルター方式等のいずれの方式でもよい。また、有機EL表示は、更に多層化されたものであってもよい。
【実施例0149】
<<<実施例>>>
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0150】
<<異方性光学フィルム>>
厚み100μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:A4300)の縁部全周に、ディスペンサーを使い、硬化性樹脂で高さ30~60μmの隔壁を形成した。この中に下記の紫外線硬化樹脂組成物を滴下し、30μm~60μm厚みの液膜とし、別のPETフィルムでカバーした。
【0151】
・シリコーン・ウレタン・アクリレート(屈折率:1.460、重量平均分子量:5890) 20重量部
(RAHN社製、商品名:00-225/TM18)
・ネオペンチルグリコールジアクリレート(屈折率:1.450) 30重量部
(ダイセルサイテック社製、商品名Ebecryl145)
・ビスフェノールAのEО付加物ジアクリレート(ダイセルサイテック社製、商品名Ebecryl150、屈折率:1.536) 15重量部
・フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学製、商品名:ライトアクリレートPО-A、屈折率1.518) 40重量部
・2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF社製、商品名:Irgacure651) 4重量部
【0152】
この両面をPETフィルムで挟まれた液膜に対して、UVスポット光源(浜松ホトニクス社製、商品名:L2859-01)の落射用照射ユニットから、照射強度10mW/cm2~100mW/cm2の平行光線である紫外線を、直接、又はPMMAレンズを介して照射した。
ここでPMMAレンズを介した照射では、紫外線照射の際、平行光線をPMMAレンズを用いて水平方向に広げることで柱状領域のアスペクト比を調整した。
さらに、平行光線又は水平方向に広げた平行光線を照射する際の液膜温度、照射角度等を調整することで、当該異方性光拡散フィルムの傾斜方向における最大直線透過率、散乱中心軸角度、ヘイズ値の調整を行った。
以上のパラメータ調整を行うことで、表1の光学特性を有する異方性光拡散フィルム1~15を得た。
【0153】
<異方性光拡散フィルムの厚みの測定>
実施例で得られた異方性光拡散フィルムのフィルムに対し、マイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて測定を行った。測定値は、異方性光拡散フィルムの平面における4つの角付近と、平面における中央付近の1箇所とを含む計5箇所で測定した値の平均値を、異方性光拡散フィルムの厚みとした。
【0154】
<異方性光拡散フィルムの散乱中心軸の角度及び直線透過率の測定>
図6に示すような、光源1の投光角、検出器2の受光角を任意に可変できる変角光度計ゴニオフォトメータ(ジェネシア社製)を用いて、実施例で得られた異方性光拡散フィルムの直線透過率の測定を行った。
固定された光源1からの直進光Iを受ける位置に検出器2を固定し、その間のサンプルホルダーに実施例で得られた異方性光拡散フィルムをセットした。その際、
図3に示すTD方向を
図6に示す直線Vの直線方向とするよう設置した(この直線Vは、散乱中心軸の傾斜方位に対し、垂直な異方性光拡散フィルム上の線である)。
続いて、直線Vを軸として異方性光拡散フィルムを回転させて、異方性光拡散フィルムを直進透過して検出器2に入る直線透過光量を測定した。その後、直線透過光量より直線透過率を算出し、この直線透過率を角度ごとにプロットして光学プロファイルを作成した。
尚、直線透過光率の測定は、視感度フィルターを用いて可視光領域の波長において測定した。
以上のような測定の結果得られた光学プロファイルに基づき、直線透過率の最大値(最大直線透過率)及び最小値(最小直線透過率)と、当該光学プロファイルにおける最小値に挟まれた略中央部(拡散領域の中央部)より散乱中心軸角度とを求めた。
【0155】
<柱状構造体のアスペクト比の測定(異方性光拡散フィルムの表面観察)>
実施例で得られた異方性光拡散フィルム表面の柱状領域の柱軸に垂直な断面(紫外線照射時の照射光側)を光学顕微鏡で観察し、柱状領域の長径LA及び短径SAを測定した。平均長径LA及び平均短径SAの算出には、任意の20の柱状領域の平均値とした。また、求めた平均長径LA及び平均短径SAに対し、平均長径LA/平均短径SAをアスペクト比として算出した。
【0156】
<異方性光拡散フィルムのヘイズの測定>
ヘイズメーターNDH-2000(日本電色工業社製)を用いて、実施例で得られた異方性光拡散フィルムのヘイズ値の測定を行った。
【0157】
【0158】
<<異方性光拡散フィルム積層体>>
以下に示す方法にて、異方性光拡散フィルム積層体を作製した。
【0159】
<実施例1>
実施例で得られた異方性光拡散フィルム1及び異方性光拡散フィルム2を、長辺方向が異方性光拡散フィルムの散乱中心軸方位と一致するように矩形形状に切り出した後、異方性光拡散フィルム1及び異方性光拡散フィルム2の各散乱中心軸の方位同士がなす角度(φab)が表2に示す目標値0°となるようにアクリル系の樹脂よりなる透明粘着剤の粘着層を介して積層することで、実施例1の異方性光拡散フィルム積層体1を得た。また、表2に示すように、積層後の測定顕微鏡によるφab実測値は、1°であった。
なお、表2に示すように、異方性光拡散フィルム2を異方性光拡散フィルムa、異方性光拡散フィルム1を異方性光拡散フィルムbとした。
【0160】
<実施例2~7、比較例1~8>
使用する2種の異方性光拡散フィルムを、表2に記載の組み合わせに従い、且つ、φabが表2に示す目標値となるようにアクリル系の樹脂よりなる透明粘着剤の粘着層を介して積層した他は、実施例1と同様に作製を行い、実施例2~7、比較例1~8の異方性光拡散フィルム積層体2~15を得た。各異方性光拡散フィルム積層後の測定顕微鏡によるφab実測値を、表2に示す。
【0161】
【0162】
<<評価方法>>
実施例及び比較例の異方性光拡散フィルム積層体に関し、以下のようにして評価を行った。
【0163】
<異方性光拡散フィルム積層体のヘイズ値の測定>
ヘイズメーターNDH-2000(日本電色工業社製)を用いて、実施例で得られた異方性光拡散フィルム積層体のヘイズ値の測定を行った。
【0164】
<異方性光拡散フィルム積層体の直線透過率の測定>
図6に示すような、光源1の投光角、検出器2の受光角を任意に可変できる変角光度計ゴニオフォトメータ(ジェネシア社製)を用いて、実施例及び比較例で得られた異方性光拡散フィルム積層体の直線透過率の測定を行った。
固定された光源1からの直進光Iを受ける位置に検出器2を固定し、その間のサンプルホルダーに実施例及び比較例で得られた異方性光拡散フィルム積層体をセットした。その際、異方性光拡散フィルム積層体の視認側となる異方性光拡散フィルムに対し、
図3に示すMD方向を
図6に示す直線Vの直線方向とするよう設置した(この直線Vは、散乱中心軸の傾斜方位に対し、垂直な異方性光拡散フィルム積層体上の線である)。
続いて、直線Vを軸として異方性光拡散フィルム積層体を回転させて、異方性光拡散フィルム積層体を直進透過して検出器2に入る直線透過光量を測定した。その後、直線透過光量より直線透過率を算出し、この直線透過率を角度ごとにプロットして光学プロファイルを作成した。
尚、直線透過光率の測定は、視感度フィルターを用いて可視光領域の波長において測定した。
以上のような測定の結果得られた光学プロファイルに基づき、直線透過率の最大値(最大直線透過率)及び最小値(最小直線透過率)と、入射光角度0°における直線透過率とを求めた。
【0165】
<コントラスト・階調反転の評価>
実施例及び比較例の異方性光拡散フィルム積層体を、TNモードの液晶ディスプレイ表面上に、液晶ディスプレイの階調反転が生じる方向に対する方位と、異方性光拡散フィルムaの散乱中心軸の傾斜方向に対する方位となす角が0°となるように貼合した。
続いて、視野角測定装置Conometer80(Westboro社製)を用いて、当該液晶ディスプレイ画面上に白から黒までを11階調に分けたグレースケールをそれぞれ表示したときの、ディスプレイの法線方向に対する極角0~80°範囲における輝度分布を測定した。
ここで、液晶ディスプレイ単体において階調反転が生じる方向に対する方位における極角75°での「白輝度/黒輝度」を算出し、コントラストとした。また、液晶ディスプレイ単体において階調反転が生じる方向に対する方位において、上記で測定した11階調が本来の階調と逆転するときの最小極角を階調反転角度とした。これを表3にまとめた。
ここで、異方性光拡散フィルム積層体を貼り付けていない、ディスプレイのみの評価では、コントラストは8.0で、階調反転角度は28°であった。
【0166】
<視認鮮明性の評価>
実施例及び比較例の異方性光拡散フィルム積層体を、TNモードの液晶ディスプレイ表面上に、液晶ディスプレイの階調反転が生じる方向における方位と、異方性光拡散フィルムaの散乱中心軸の傾斜方向に対する方位とがなす角が0°となるよう貼合した。
続いて、スケールルーペにてディスプレイに白画面を表示させたときの、カラーフィルタの視認鮮明性について目視評価した。
視認鮮明性について、カラーフィルタのマトリクスの縦横の境目が判別できる場合を4、一方向の境目のみ判別できる場合を3、境目を判別できない場合を2、カラーフィルタが判別できない場合を1とした。これを表3にまとめた。
ここで、異方性光拡散フィルム積層体を貼り付けていない、ディスプレイのみの評価では、視認鮮明性は4であった。
【0167】
<極角75°コントラストの判定基準>
コントラスト18以上を◎、14以上18未満を○、14未満を×とした。
【0168】
<階調反転の判定基準>
階調反転角度が80°超90°以内を◎、75°~80°を○、75°未満を×とした。
【0169】
<視認鮮明性の判定基準>
上記評価方法において4を◎、3を○、2未満を×とした。
【0170】
【0171】
<<評価結果>>
表3より、実施例1~7の異方性光拡散フィルム積層体を用いた液晶ディスプレイでは、コントラスト、階調反転及び視認鮮明性を含む総合評価が、比較例1~8の異方性光拡散フィルム積層体を用いた液晶ディスプレイに対し、優れており、特に実施例1は、全判定が「◎」で、最も優れていた。
比較例1及び2は、ヘイズ値が低いため、拡散性が低く、75°におけるコントラストが低くなってしまったものと考えられる。
比較例3~6は、ヘイズ値が高いため、視認鮮明性に悪影響が出でしまったものと考えられる。
比較例7は、1つの異方性光拡散フィルムのアスペクト比が大きいため、傾斜方向の拡散性が低下し、75°におけるコントラストが低くなってしまったものと考えられる。
比較例8は、異方性光拡散フィルムa及び異方性光拡散フィルムbの各散乱中心軸の方位同士がなす角度(φab)が大きいため、拡散性が低く、75°におけるコントラストが低くなってしまったものと考えられる。
【0172】
以上より、本発明の異方性光拡散フィルムを、TN液晶ディスプレイ等の表示装置に用いた場合、階調反転の抑制、深い角度におけるコントラストの向上、正面方向の画像視認鮮明性低下の抑制を可能とするので、通常では視認が困難な方位における視認性と、静態時に視認する正面方向における視認性との両立を可能とし、視野角による輝度と色変化に関して、従来よりも優れた視角依存性効果を有することが期待できる。