(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157900
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】活物質供給装置、電池用電極の製造装置及び活物質供給方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20221006BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20221006BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062392
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】榎 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB07
5H050CB11
5H050GA27
5H050GA29
5H050GA30
5H050HA07
5H050HA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】粉体状の活物質を用いて電極を製造する際に基材フィルム上に形成される活物質層の均一性の低下を抑制しつつ、搬送される基材フィルム上の所望の位置に活物質を安定して供給することができる活物質供給装置、電池用電極の製造装置及び活物質供給方法を提供する。
【解決手段】基材フィルム21B上に粉体状の活物質22cを供給する活物質供給装置300であって、内部に前記活物質が収容されるホッパ370と、ホッパ370内から、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ内で搬送方向Dに搬送される前記基材フィルム21Bに向けて活物質22cを押し出す活物質制御装置381とを備える、活物質供給装置300。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に粉体状の活物質を供給する活物質供給装置であって、
内部に前記活物質が収容されるホッパと、
前記ホッパ内から、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ内で搬送方向に搬送される前記基材フィルムに向けて前記活物質を押し出す活物質制御装置と
を備える、活物質供給装置。
【請求項2】
前記活物質制御装置は、前記基材フィルム上に前記活物質を供給する際には、前記ホッパ内から前記基材フィルムに向けて前記活物質を押し出し、前記基材フィルム上への前記活物質の供給を停止する際には、前記ホッパ内の前記活物質に対して、前記基材フィルムから離れる方向の力を付加する、請求項1に記載の活物質供給装置。
【請求項3】
前記活物質制御装置は、前記ホッパ内の前記活物質に対して挿入され、前記基材フィルムから離れる方向及び前記基材フィルムに近付く方向に移動可能な部材である、請求項1又は2に記載の活物質供給装置。
【請求項4】
前記活物質制御装置は、前記基材フィルムに向いた先端が複数に分岐した分岐部を有し、前記ホッパ内から前記基材フィルムに向けて前記活物質を押し出す際、前記活物質を押し出す方向から見た場合に、前記分岐部の前記活物質を押し出す押出面積が増加する、請求項3に記載の活物質供給装置。
【請求項5】
分岐した前記先端の各々は、フォーク状、ループ状、又は、樹枝状の形状である、請求項4に記載の活物質供給装置。
【請求項6】
前記活物質制御装置は、前記ホッパ内の壁面に設けられ、前記基材フィルムから離れる方向及び前記基材フィルムに近付く方向と交差する軸を回転軸として回転可能な部材である、請求項1又は2に記載の活物質供給装置。
【請求項7】
前記活物質制御装置は、一部が前記ホッパ内に飛び出したプロペラ又はクローラである、請求項6に記載の活物質供給装置。
【請求項8】
前記ホッパと、搬送される前記基材フィルムとの間の位置に設けられ、前記活物質を前記基材フィルムに向けて供給するための開口を開閉するシャッタを更に備え、
前記活物質制御装置は、前記シャッタが前記開口を開いた際に、前記ホッパ内から前記基材フィルムに向けて前記活物質を押し出す、請求項1~7のいずれか一項に記載の活物質供給装置。
【請求項9】
前記シャッタを前記基材フィルムの搬送方向に移動させる開閉機構と、
前記開閉機構を制御する制御部とを更に備える、請求項8に記載の活物質供給装置。
【請求項10】
請求項9に記載の活物質供給装置と、
前記チャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記基材フィルム上に枠体を供給する枠体供給部とを備える、電池用電極の製造装置。
【請求項11】
基材フィルム上に粉体状の活物質を供給する活物質供給方法であって、
内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ内に設けられ内部に前記活物質が収容されるホッパ内から、前記チャンバ内で搬送方向に搬送される基材フィルムに向けて前記活物質を押し出す、活物質供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活物質供給装置、電池用電極の製造装置及び活物質供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電池の製造工程において、基材フィルムへの活物質の供給が行われる場合がある。例えば、リチウムイオン二次電池の電極は、集電体上に活物質層を備えている(例えば、特許文献1及び2参照)。かかる活物質層は、一般に、液状媒体中に活物質粒子を含む電極材料が分散された活物質層形成用スラリーを集電体に供給し、乾燥させた後、圧密することで製造することができる。その一方で、液状媒体を使用することなく、乾燥工程を省略して、省エネルギーで低コストに製造する方法も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、集電体上に粉体状の活物質を供給した後、当該活物質を圧縮することで電池用電極を製造する工程が記載されている。このような粉体状の活物質を電池用電極の製造工程に用いることで乾燥工程を省略して低コストに製造することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6633866号公報
【特許文献2】特開2019-207750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1のように粉体状の活物質を用いると、基材フィルム上に活物質を供給する際に、粉体状の活物質と共に空気が巻き込まれることがある。当該空気を含む活物質層が基材フィルム上に形成され、当該活物質層を圧縮することとなると、圧縮された空気が噴出することに起因して電極形状が崩れてしまう(言い換えれば、活物質層の均一性が低下してしまう)問題があった。
【0006】
上記問題を解決することを意図して、減圧環境下において基材フィルム上に活物質を供給する構成を、本発明者らは見出した。当該本発明者らが見出した構成によれば、基材フィルム上に形成される活物質層に空気が残存することを抑制することができる。
【0007】
上記本発明者らが見出した構成を利用して、電池用電極を効率的に製造するために、基材フィルムを所定の速度で搬送しつつ、基材フィルム上の所望の位置に活物質を供給することが考えられる。例えば、鉛直方向下向きに開口を有するホッパ内に活物質を収容しておき、当該ホッパから基材フィルムに向けて活物質を供給させることが考えられる。しかしながら、ホッパ内での活物質の挙動は簡単に把握できるものではなく、また、ホッパ内で活物質が押し固められてしまっている場合も想定される。このような理由から、ホッパを用いても、基材フィルム上の搬送方向における所望の位置に活物質を供給することは容易ではない。
【0008】
本発明は、粉体状の活物質を用いて電極を製造する際に基材フィルム上に形成される活物質層の均一性の低下を抑制しつつ、搬送される基材フィルム上の所望の位置に活物質を安定して供給することができる活物質供給装置、電池用電極の製造装置及び活物質供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材フィルム上に粉体状の活物質を供給する活物質供給装置であって、内部に前記活物質が収容されるホッパと、前記ホッパ内から、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ内で搬送方向に搬送される前記基材フィルムに向けて前記活物質を押し出す活物質制御装置とを備える、活物質供給装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の活物質供給装置、電池用電極の製造装置及び活物質供給方法によれば、粉体状の活物質を用いて電極を製造する際に基材フィルム上に形成される活物質層の均一性の低下を抑制しつつ、搬送される基材フィルム上の所望の位置に活物質を安定して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電池用電極の製造装置を用いて製造される電池の単セルの断面模式図である。
【
図2】
図2は、同電池用電極の製造装置の概略図である。
【
図3】
図3は、同電池用電極の製造装置を構成する活物質供給装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、同活物質供給装置におけるシャッタユニットの斜視図である。
【
図5】
図5は、シャッタの開閉及び活物質制御装置の制御を説明するための図である。
【
図6】
図6は、シャッタの開閉及び活物質制御装置の制御を説明するための図である。
【
図7】
図7は、シャッタの開閉及び活物質制御装置の制御を説明するための図である。
【
図8】
図8は、シャッタの開閉及び活物質制御装置の制御を説明するための、枠体の平面図である。
【
図9】
図9は、シャッタの開閉及び活物質制御装置の制御を説明するための図である。
【
図10】
図10は、シャッタの開閉及び活物質制御装置の制御を説明するための図である。
【
図11】
図11は、シャッタの開閉及び活物質制御装置の制御を説明するための図である。
【
図12】
図12は、シャッタの開閉及び活物質制御装置の制御を説明するための図である。
【
図20A】
図20Aは、シャッタが設けられていない場合における活物質制御装置の制御を説明するための図である。
【
図20B】
図20Bは、シャッタが設けられていない場合における活物質制御装置の制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明を適用した第1実施形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、一部を省略して図示している場合がある。
【0013】
<組電池(二次電池)>
実施形態の活物質供給装置、電池用電極の製造装置及び活物質供給方法は、例えば、リチウムイオン電池の製造に適用される。リチウムイオン電池は、複数のリチウムイオン単電池(単セル又は電池セルとも記載する)を組み合わせてモジュール化した組電池、或いは、このような組電池を複数組み合わせて電圧及び容量を調整した電池パックの形態で使用される。
【0014】
<単セル(電池セル)>
図1は、単セル10の断面模式図である。単セル10を複数組み合わせることで上記の組電池を作製することが可能である。例えば、単セル10は、2つの電極(電池用電極)としての正極20a及び負極20bと、セパレータ30とを有する。
【0015】
セパレータ30は、正極20aと負極20bとの間に配置される。組電池において、複数の単セル10は、正極20aと負極20bとを同方向に向けて積層される。
【0016】
セパレータ30には、電解質が保持される。これにより、セパレータ30は、電解質層として機能する。セパレータ30は、正極20a及び負極20bの電極活物質層22の間に配置され、これらが互いに接触することを抑制する。これにより、セパレータ30は、正極20aと負極20bとの間の隔壁として機能する。
【0017】
セパレータ30に保持される電解質としては、例えば、電解液またはゲルポリマー電解質などが挙げられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータなどを挙げることができる。
【0018】
正極20a及び負極20bは、それぞれ、集電体21と、電極活物質層22と、枠体35とを有する。電極活物質層22と集電体21とは、セパレータ30側からこの順に並ぶ。枠体35は、額縁状(環状)である。枠体35は、電極活物質層22の周囲を囲む。正極20aの枠体35と負極20bの枠体35とは、互いに溶着され一体化されている。以下の説明において、正極20a及び負極20bの電極活物質層22を互いに区別する場合、これらをそれぞれ正極活物質層22a、負極活物質層22bと呼ぶ。
【0019】
<正極集電体の具体例>
正極集電体層21aを構成する正極集電体としては、公知のリチウムイオン単電池に用いられる集電体を用いることができ、例えば、公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開第2015-005116号等に記載の樹脂集電体等)を用いることができる。正極集電体層21aを構成する正極集電体は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
【0020】
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は、薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0021】
樹脂集電体としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)等が挙げられるが、特に限定されない。また、導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択されれば特に限定されない。導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
【0022】
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーのほかに、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいてもよい。また、複数の樹脂集電体を積層して用いてもよく、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
【0023】
正極集電体層21aの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体層21aとして用いる場合には、積層後の全体の厚さが5~150μmであることが好ましい。正極集電体層21aは、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。
【0024】
<正極活物質の具体例>
正極活物質層22aは、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。正極活物質層22aが非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層22aに応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層22aの破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層22aは、正極活物質層22aを、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層22aにする等の方法で得ることができる。なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は、溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
【0025】
正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属元素が2種である複合酸化物、金属元素が3種類以上である複合酸化物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0026】
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であってもよい。正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
【0027】
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015-005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0028】
被覆材には、導電剤が含まれていてもよい。導電剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
【0029】
正極活物質層22aには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調節したもの、及び、特開平10-255805号公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。したがって、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極バインダー)と粘着性樹脂とは、異なる材料である。
【0030】
正極活物質層22aには、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていてもよい。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用できる。非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの(例えば、リン酸エステル、ニトリル化合物等及びこれらの混合物等)等が使用できる。例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液を用いることができる。
【0031】
正極活物質層22aには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0032】
正極活物質層22aの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0033】
<負極集電体の具体例>
負極集電体層21bを構成する負極集電体としては、正極集電体で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極集電体層21bは、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。負極集電体層21bの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。
【0034】
<負極活物質の具体例>
負極活物質層22bは、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層22bを得る方法等は、正極活物質層22aが非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層22aを得る方法と同様である。
【0035】
負極活物質としては、例えば、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物などを用いることができるが、特に限定されない。
【0036】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であってもよい。負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
【0037】
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
【0038】
負極活物質層22bは、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。電解液の組成は、正極活物質層22aに含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0039】
負極活物質層22bには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極活物質層22aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0040】
負極活物質層22bには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、正極活物質層22aの任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
【0041】
負極活物質層22bの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0042】
<セパレータの具体例>
セパレータ30に保持される電解質としては、例えば、電解液又はゲルポリマー電解質などが挙げられる。セパレータ30は、これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータ30の形態としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム等が挙げられるが、特に限定されない。
【0043】
<枠体の具体例>
枠体35としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、例えば、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。枠体35を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよく、樹脂材料が好適に採用される。より具体的には、枠体35としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0044】
<製造装置及び電池用電極の製造方法>
次に、本実施形態の製造装置及び電池用電極の製造方法(以下、製造方法と略して呼ぶ)について説明する。例えば、電池製造装置及び製造方法では、まず正極20a及び負極20bが製造される。正極20aの製造方法と負極20bの製造方法とは、主に電極活物質層22に含まれる電極活物質が異なる。ここでは、電極20の製造方法として、正極20a及び負極20bの製造方法をまとめて説明する。
【0045】
図2は、製造装置1000の概略図である。例えば、製造装置1000は、チャンバ100、枠体供給装置(枠体供給部)200、活物質供給装置(活物質供給部)300、及び、ロールプレス400を含む。
【0046】
なお、以下では、基材フィルムが帯状の集電体21Bである場合を一例として説明する。即ち、以下では、電池用電極製造装置1000として、集電体への活物質の供給を行なう装置について説明する。但し、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、基材フィルムは、集電体、セパレータ、転写用のフィルムのいずれでもよい。基材フィルムがセパレータや転写用のフィルムである場合でも、以下で説明する実施形態は同様に適用が可能である。
【0047】
チャンバ100は、内部を大気圧よりも減圧された状態に保持できる部屋である。チャンバ100の内部は、図示しない減圧ポンプにより大気圧よりも減圧される。なお、標準大気圧は、約1013hPa(約105Pa)である。
【0048】
例えば、チャンバ100の外部に集電体ロール21Rが配置され、集電体ロール21Rから引き出された帯状の集電体21Bが、スリットを通してチャンバ100の内部に搬送される。なお、集電体21Bは、前記集電体21が所定の形状に切り出される前のものである。集電体21Bは、搬送方向Dに沿って搬送される。例えば、集電体21Bは、ベルトコンベア等の搬送装置によって、所定の速度で搬送される。以下では、集電体21Bが搬送される方向を下流側D1、その反対方向を上流側D2として説明する。なお、集電体ロール21Rが配置されるチャンバ100の外部空間は、常圧であってもよいし、チャンバ100と異なるチャンバによって減圧されていてもよい。
【0049】
枠体供給装置200は、搬送される集電体21Bに対して枠体35を供給する。なお、
図2では枠体供給装置200がチャンバ100の内部に配置される場合を示すが、枠体供給装置200はチャンバ100の外部に配置されてもよい。例えば、枠体供給装置200は、ロボットアームを有し、事前に製造された枠体35を、搬送される集電体21B上の所定の位置に配置する。なお、枠体35を集電体21Bに配置した後、集電体21B及び枠体35を挟み込むようにロールプレスで圧縮することとしてもよい。
【0050】
なお、枠体35を製造する方法については特に限定されるものではない。例えば、枠体35は、高分子材料等の所定の材料から成るシート乃至ブロックに対する切削加工によって、所定の形状に形成することができる。一例を挙げると、枠体35は、所定の材料から成る素材シートから打ち抜くことで得られる。
【0051】
また、例えば、枠体35は、射出成形等の枠型を用いた手法によって、所定の形状に形成することができる。一例を挙げると、所定の形状の内部空間を有する金型が事前に作製され、当該金型に対する射出成形を行なうことにより、枠体35を所定の形状に形成することができる。
【0052】
また、例えば、枠体35は、基材上に所定の材料を吐出したり塗布したりすることで、所定の形状に形成することができる。一例を挙げると、枠体35は、ディスペンサーによって所定の形状に形成することができる。即ち、ディスペンサーによる制御の下、ノズルから基材に対して所定の材料を所定の量だけ吐出させることにより、枠体35を形成することができる。別の例を挙げると、スクリーン印刷機等のコーターによって、基材上に所定の材料を所定の形状に塗布することで、枠体35を形成することができる。
【0053】
より具体的には、枠体35は、ディスペンサーやコーター等によって、基材上に、所定の材料を所定の形状となるように吐出又は塗布し、乾燥後に基材から剥離させることで形成することができる。或いは、枠体35は、ディスペンサーやコーター等によって、基材上に、2液硬化樹脂やUV硬化用樹脂といった所定の材料を所定の形状となるように吐出又は塗布し、硬化後に基材から剥離させることで形成することができる。
【0054】
その他、枠体35は、種々の手法によって所定の形状に形成することが可能である。例えば、所定の形状となるように、所定の材料から成るシート乃至ブロックを組むことによって、枠体35を所定の形状に形成してもよい。また、例えば、所定の材料から成るシートを基材の長手方向に配置し、垂直方向に当該材料を吐出又は塗布することで、枠体35を所定の形状に形成してもよい。或いは、枠体35は、任意方式の3Dプリンタによって製造することもできる。
【0055】
また、
図2においては予め製造された枠体35を集電体21B上に置くものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、枠体35は、集電体21Bの上で製造されてもよい。一例を挙げると、集電体21Bを基材とし、ディスペンサーやコーター等によって集電体21B上に所定の材料を所定の形状に吐出又は塗布することで、集電体21B上に枠体35を形成することができる。
【0056】
活物質供給装置300は、
図2に示す通り、チャンバ100内で搬送される集電体21B上に、粉体状の活物質22cを供給する。活物質22cは、電極活物質及び導電助剤を含む、複数の電極用造粒粒子のことを意味する。
【0057】
例えば、活物質供給装置300は、
図3に示すように、スクリューコンベア310と、投入シュート320と、排出シュート330と、シャッタユニット340と、超音波振動機350と、ならしブラシ360と、を備える。なお、
図3はあくまで一例であり、集電体21Bへの活物質22cの供給を実現できる限り、任意の変形が可能である。
【0058】
投入シュート320及び排出シュート330で、ホッパ370が構成される。ホッパ370は、チャンバ100内に配置される。なお、
図3では図示を省略するが、活物質供給装置300は、ホッパ370内から集電体21Bに向けて活物質22cを押し出す活物質制御装置380を更に備える。活物質制御装置380については後述する。前記枠体供給装置200は、ホッパ370よりも上流側D2に配置される。すなわち、集電体21B上に枠体35を供給した後で、集電体21B上に活物質22cを供給する。スクリューコンベア310は、活物質22cを投入シュート320へ運搬する。スクリューコンベア310の一方の端部は、チャンバ100の外部に配置された、活物質22cの貯蔵部など(不図示)へ接続されている。また、スクリューコンベア310の他方の端部は、投入シュート320へ接続されている。
【0059】
投入シュート320は、スクリューコンベア310から運搬された活物質22cを、排出シュート330内に落とす。すなわち、ホッパ370は、チャンバ100内に設けられ、内部に活物質22cが収容される。排出シュート330は、上下方向に延びる筒状である。排出シュート330の下端部には、開口331が形成されている。排出シュート330は、投入シュート320よりも下方に配置されている。すなわち、ホッパ370の下端部には、開口331が形成される。開口331は、水平面に沿うように形成される。開口331は、チャンバ100内に配置された集電体21B上に(集電体21Bに向けて)活物質22cを供給する。スクリューコンベア310から投入シュート320に運搬された活物質22cは、排出シュート330内に自由落下する。ホッパ370の内部には、活物質22cが収容される。なお、スクリューコンベア310上で活物質22cが塊状となっている場合に、その塊状となっている活物質22cを粉砕する解砕機を、活物質供給装置300が備えてもよい。
【0060】
図3及び
図4に示すように、シャッタユニット340は、第1シャッタ扉(シャッタ)341と、第2シャッタ扉(シャッタ)342と、第1開閉機構(開閉機構)343と、第2開閉機構(開閉機構)344と、を有する。すなわち、活物質供給装置300は、シャッタとして2枚のシャッタ扉341,342を有する。シャッタ扉341,342は、それぞれ平板状である。シャッタ扉341,342は、それぞれ水平面に沿うように配置されている。
【0061】
図4及び
図5に示すように、第1シャッタ扉341は、平面視で矩形状を呈する平板である。第1シャッタ扉341における一つの縁部には傾斜面341aが形成される。傾斜面341aは、第1シャッタ扉341の幅方向Eの全長にわたって形成される。同様に、第2シャッタ扉342には、傾斜面342aが形成される。なお、
図5は、
図3中の切断線A1-A1の断面図である。
【0062】
第2シャッタ扉342は、第1シャッタ扉341よりも下流側D1に配置され、傾斜面341aは、第1シャッタ扉(シャッタ)341における下流側Dの端部に配置され、傾斜面342aは、第2シャッタ扉342における上流側D2の端部に配置される。すなわち、第1シャッタ扉341の傾斜面341a及び第2シャッタ扉342の傾斜面342aは、搬送方向Dに対向する。
【0063】
シャッタ扉341,342は、排出シュート330の開口331を開閉する。ここでシャッタ扉341,342が開口331を開くとは、シャッタ扉341,342が開口331の少なくとも一部を覆わない状態にあることを意味する。シャッタ扉341,342が開口331を閉じるとは、シャッタ扉341,342が開口331を塞ぐ状態にあることを意味する。
【0064】
第1開閉機構343は、モータ345と、アーム346とを有する。モータ345では、本体347に対して回転軸348が、回転軸348の軸線回りに回転する。回転軸348の外周面には、雄ネジが形成されている。モータ345は、回転軸348が搬送方向Dに延びるように配置されている。本体347は、チャンバ100の床などに固定されている。アーム346の第1端部には、図示しない雌ネジが形成されている。この雌ネジは、モータ345の回転軸348の雄ネジに嵌め合っている。アーム346における第1端部とは反対の第2端部は、第1シャッタ扉341の上面に固定されている。
【0065】
以上のように構成された第1シャッタ扉341及び第1開閉機構343では、例えば、モータ345に対して所定の向きに電圧を印加すると、回転軸348が所定の向きに回転する。これにより、回転軸348にアーム346を介して接続された第1シャッタ扉341は、下流側D1に移動する。同様に、モータ345に対して所定の向きと反対の向きに電圧を印加すると、回転軸348が所定の向きと反対の向きに回転する。これにより、第1シャッタ扉341は、上流側D2に移動する。
【0066】
このように、第1開閉機構343は、第1シャッタ扉341を搬送方向Dに移動させる。第2開閉機構344は、第1開閉機構343と同様に構成され、第2シャッタ扉342を搬送方向Dに移動させる。第1開閉機構343及び第2開閉機構344によって、第1シャッタ扉341及び第2シャッタ扉342は互いに独立して移動することができる。
【0067】
図3に示すように、超音波振動機350は、排出シュート330下部の外壁に設けられている。つまり、超音波振動機350は、排出シュート330における活物質22cが堆積する部位の外側に設けられている。超音波振動機350は、超音波を発生することで排出シュート330の下部に堆積した活物質22cを振動させる。超音波振動機350は、排出シュート330内に堆積した活物質22cを均一にならす役割を有する。
【0068】
ならしブラシ360は、図示しないモータにより水平面に沿って移動する。ならしブラシ360は、排出シュート330内に堆積した活物質22cの上面を平坦にならす役割を有する。以上のように、本実施形態では、開口331を有する活物質供給装置300の一部が、チャンバ100内に配置される。なお、活物質供給装置300は、少なくとも開口331がチャンバ100内に配置されていればよい。活物質供給装置300の全体が、チャンバ100内に配置されてもよい。
【0069】
活物質供給装置300は、開口331の下方に枠体35の内部空間35aが位置するときに、シャッタ扉341,342が開くように制御される。これにより、開口331から供給された活物質22cは、集電体21B上であって枠体35の内部空間35aに第1の厚さで配置される。このように、活物質供給装置300は、集電体21B上に設けられた枠体35内に活物質22cを供給する。例えば、第1の厚さは、枠体35の厚さよりも厚い。シャッタ扉341,342が開くタイミングを、開口331の下方に枠体35の内部空間35aが位置するときに合わせるのには、搬送速度、枠体35の搬送方向Dの長さなどを考慮した、公知の時間制御などが用いられる。なお、製造装置1000が枠体35の搬送方向Dの位置を検出する位置センサを備えてもよい。そして、位置センサが検出した枠体35の位置に基づいて、制御部(図示せず)が開閉機構343,344によりシャッタ扉341,342が開くタイミングを合わせてもよい。シャッタ扉341,342の開閉制御については、後で詳しく述べる。
【0070】
ロールプレス400は、集電体21B上に供給された活物質22cを圧縮する。ロールプレス400は、一対の圧縮ローラ401と、駆動部402とを有する。一対の圧縮ローラ401の間には、集電体21B、枠体35、及び活物質22cが挟まれる。ロールプレス400は、第1の厚さの活物質22cを、第1の厚さよりも薄い第2の厚さに圧縮する。例えば、第2の厚さは、枠体35の厚さである。なお、ロールプレス400の構成は、これらに限定されない。
【0071】
制御部は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、メモリと、を有する。メモリには、CPUを動作させるための制御プログラム、各種データなどが記憶される。制御部は、第1開閉機構343、第2開閉機構などに接続されている。制御部は、第1開閉機構343、第2開閉機構344などを制御する。制御部は、第1開閉機構343、第2開閉機構344により、枠体35の内部空間35aに活物質22cを供給する。
【0072】
次に、シャッタ扉341,342の開閉制御について説明する。なお、本実施形態では、チャンバ100内でホッパ370は固定されている。制御部は、開口331のうちシャッタ扉341,342により閉じられていない部分の下方に枠体35の内部空間35aが位置するように、開閉機構343,344によりシャッタ扉341,342をそれぞれ移動させる。言い換えれば、制御部は、開口331の下方に枠体35の内部空間35aが位置する場合のみ開口331を開くよう制御する。
【0073】
以下、シャッタ扉341,342及び活物質制御装置380の制御について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図5に示すように、制御部は、予め、開閉機構343,344により、第2シャッタ扉342のみが開口331を閉じるように配置する。すなわち、搬送方向Dにおいて、第2シャッタ扉342の上流側D2の端が、開口331の上流側D2の端に一致するように配置する。第1シャッタ扉341は、第2シャッタ扉342よりも上流側D2で、第2シャッタ扉342に突き合わせるように配置される。集電体21B及び枠体35は、矢印B1で示すように下流側D1に搬送される。
【0074】
また、
図5に示すように、制御部は、活物質制御装置381を、ホッパ370内の活物質22cに対して挿入する。活物質制御装置381は、活物質制御装置380の一例であり、集電体21Bから離れる方向及び集電体21Bに近付く方向に移動可能な部材である。具体的には、
図5に示す場合、活物質制御装置381は、例えばモータによって駆動され、上下方向(搬送方向D及び幅方向Eに垂直な方向)に移動可能に構成される。
【0075】
なお、
図5及び
図6に示すように、活物質制御装置381の先端は分岐部となっている。即ち、活物質制御装置381は、集電体21Bに向いた先端が複数に分岐した分岐部を有する。当該分岐部は、ホッパ370内から集電体21Bに向けて活物質22cを押し出す際、活物質22cを押し出す方向から見た場合に、分岐部の活物質22cを押し出す押出面積が増加するように構成される。即ち、活物質22cを押し出す際、活物質制御装置381の先端は、活物質22cの中を下方向に移動して、進行方向から受ける抵抗の力によって開度が増加し、活物質22cを押し出す押出面積が増加する。これにより、活物質制御装置381は、ホッパ370内から集電体21Bに向けて活物質22cを効率的に押し出すことができる。
【0076】
制御部は、活物質供給工程と活物質停止工程とを行なう。活物質供給工程では、制御部は、第2開閉機構344により、第2シャッタ扉342を、枠体35の移動に同期して下流側D1に移動させて、開口331を開く。言い換えれば、制御部は、枠体35の移動と第2シャッタ扉342の移動とを時間的に一致させて、開口331を開く。更に、活物質供給工程では、活物質制御装置381は、集電体21Bに向けて、ホッパ370内から活物質22cを押し出す。
【0077】
より詳しく説明すると、搬送方向Dにおいて、活物質22cを供給する対象となる枠体35(以下では枠体35Aと呼ぶ)の下流側D1の内縁35bが、活物質供給装置300の開口331の上流側D2の端に一致したときに、第2開閉機構344により第2シャッタ扉342を下流側D1に移動させる。この時、
図7に示すように、搬送方向Dにおいて、枠体35Aの下流側D1の内縁35bと、第2シャッタ扉342の上流側D2の端とが一致するように、第2シャッタ扉342を下流側D1に所定の速度で移動させる。すなわち、枠体35Aの移動に合わせて、第2シャッタ扉342を移動させる。また、第2シャッタ扉342が移動する間、活物質制御装置381は、集電体21Bに向けて、ホッパ370内から活物質22cを押し出す。
図7に示すように、活物質22cを押し出している間、活物質制御装置381の先端における押出面積は増加しており、ホッパ370内から集電体21Bに向けて活物質22cを効率的に押し出すことができる。これにより、
図7及び
図8に示す通り、排出シュート330内の活物質22cが、開口331を通して、枠体35の内部空間35aにおける内縁35bの近くに供給される。
【0078】
図9に示すように、搬送方向Dにおいて、第2シャッタ扉342の上流側D2の端が開口331の下流側D1の端に達したら、制御部は第2開閉機構344により第2シャッタ扉342を停止させる。
図9においても、活物質制御装置381は、集電体21Bに向けて、ホッパ370内から活物質22cを押し出す処理を継続する。
【0079】
ホッパ370が、枠体35の内部空間35aに活物質22cを所定の量、供給し終えると、活物質供給工程を終了し、活物質停止工程に移行する。活物質停止工程では、制御部は、第1開閉機構343により第1シャッタ扉341を下流側D1に移動させて、開口331を閉じる。
【0080】
より詳しく説明すると、
図10に示すように、搬送方向Dにおいて、枠体35Aの上流側D2の内縁35cが第1シャッタ扉341の下流側D1の端に達したら、制御部は第1開閉機構343により第1シャッタ扉341を下流側D1に移動させる。活物質制御装置381は、枠体35Aの上流側D2の内縁35cが第1シャッタ扉341の下流側D1の端に達するまでの間、集電体21Bに向けてホッパ370内から活物質22cを押し出す処理を継続する。このとき
図10に示すように、搬送方向Dにおいて、枠体35Aの上流側D2の内縁35cと、第1シャッタ扉341の下流側D1の端とが一致するように、第1シャッタ扉341を下流側D1に所定の速度で移動させる。すなわち、枠体35Aの移動に合わせて、第1シャッタ扉341を移動させる。そして、搬送方向Dにおいて、第1シャッタ扉341の下流側D1の端が開口331の下流側D1の端に達したら、制御部は、第1開閉機構343により第1シャッタ扉341を停止させる。このとき、第1シャッタ扉341は、第2シャッタ扉342に突き合わせるように配置される。
【0081】
次に、制御部は
図12に示すように、開閉機構343,344によりシャッタ扉341,342を一体にして上流側D2に移動させ、待機させる。この時、活物質制御装置381は、ホッパ370内の活物質22cに対して、集電体21Bから離れる方向の力を付加する。即ち、活物質制御装置381は、集電体21B上への活物質22cの供給を停止する際には、ホッパ370内の活物質22cに対して、集電体21Bから離れる方向の力を付加する。例えば、活物質制御装置381は、
図12に示す通り、集電体21Bから離れる方向(上方向)に移動しながら、周囲の活物質22cに対して上方向の力を付加する。この時、活物質制御装置381の先端の分岐部は開度が低下している。即ち、活物質22cの供給を停止する際、活物質制御装置381の先端は、活物質22cの中を上方向に移動して、進行方向から受ける抵抗の力によって開度が低下する。これにより、活物質制御装置381は、活物質22cの中を少ない抵抗で移動し、例えば
図5に示した位置まで容易に戻ることができる。そして、制御部は、シャッタ扉341,342を
図5に示した位置まで移動させ、待機させる。
【0082】
以上で、活物質停止工程を終了する。制御部は、活物質22cを供給する対象となる枠体35Aを、1つ上流側D2の枠体35に変更し、変更した枠体35に対して、活物質供給工程及び活物質停止工程を繰り返す。このように、本実施形態の活物質供給方法では、ホッパ370の開口331をシャッタ扉341,342で開閉しつつ、活物質制御装置381によって、ホッパ370内から活物質22cを押し出すことで、活物質の供給を行なうことができる。
【0083】
上述した通り、シャッタを用いた活物質供給方法には、例えば
図10及び
図11に示した通り、シャッタを閉じる工程が含まれる。当該工程は、活物質22cの中にシャッタを差し込むことで、集電体21Bへの活物質22cの供給を停止させるものと言える。ここで、第1シャッタ扉341や第2シャッタ扉342のようなシャッタは一定の体積を有する部材であるところ、シャッタを閉じる際には、一定量の活物質22cがホッパ370内に押し戻される。そして、ホッパ370内に押し戻された活物質22cの体積に応じてホッパ370内の圧力が上昇し、活物質22cが押し固められてしまう場合がある。
【0084】
このような場合であっても、活物質制御装置381によれば、ホッパ370内から活物質22cを押し出すことができる。即ち、活物質制御装置381によれば、ホッパ370内の活物質22cに対して直接的な力を付加することができ、活物質の供給及び供給停止を精度良く切り替えて、搬送される集電体21B上の所望の位置に活物質22cを安定して供給することができる。
【0085】
なお、
図5~
図12では、活物質制御装置380の一例として、先端が二股に分岐した活物質制御装置381について説明した。しかしながら、活物質制御装置380の形状については種々の変形が可能である。
【0086】
例えば、
図5~
図12における活物質制御装置381に代えて、
図13A及び
図13Bに示す活物質制御装置382、
図14に示す活物質制御装置383、或いは、
図15に示す活物質制御装置384を使用することとしても構わない。活物質制御装置382、活物質制御装置383及び活物質制御装置384のぞれぞれは、集電体21Bに向いた先端が複数に分岐した分岐部を有し、ホッパ370内から集電体21Bに向けて活物質22cを押し出す際、活物質22cを押し出す方向から見た場合に、分岐部の活物質22cを押し出す押出面積が増加するよう構成される。例えば、活物質制御装置382は、ホッパ370内から集電体21Bに向けて活物質22cを押し出す際には
図13Aに示すように押出面積が増加し、活物質22cの供給を停止する際には
図13Bに示すように押出面積が低下するように構成される。活物質制御装置382の分岐した先端の各々は、段階的に更に分岐する樹枝状の形状となっている。また、活物質制御装置383の分岐した先端の各々は、フォーク状の形状となっている。また、活物質制御装置384の分岐した先端の各々は、ループ状の形状となっている。
【0087】
これまで、ホッパ370内から集電体21Bに向けて活物質22cを押し出す活物質制御装置380の例として、ホッパ370内の活物質22cに対して挿入される活物質制御装置381~384について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。
【0088】
活物質制御装置380の別の例として、
図16A及び
図16Bに活物質制御装置385a及び活物質制御装置385bを示す。なお、以下の説明において活物質制御装置385aと活物質制御装置385bとを特に区別しない場合、単に活物質制御装置385とも記載する。活物質制御装置385は、ホッパ370内の壁面に設けられ、集電体21Bから離れる方向及び集電体21Bに近付く方向と交差する軸を回転軸として回転可能な部材である。例えば、活物質制御装置385は、例えばモータによって駆動され、幅方向Eを回転軸として回転可能に構成される。
図16Bに示す通り、活物質制御装置385a及び活物質制御装置385bは、一部がホッパ370内に飛び出したプロペラである。
【0089】
例えば、集電体21B上に活物質22cを供給する際、活物質制御装置385a及び活物質制御装置385bの各々は、
図16Bにおいて矢印で示す方向に回転する。これにより、活物質制御装置385a及び活物質制御装置385bは、ホッパ370内から集電体21Bに向けて活物質22cを押し出すことができる。また、集電体21B上への活物質22cの供給を停止する際、活物質制御装置385a及び活物質制御装置385bは、停止(一方が停止又は両方が停止、いずれの場合も含む)、又は、
図16Bにおいて矢印で示す方向と反対方向に回転(一方が停止し他方が反対方向に回転又は両方が反対方向に回転、いずれの場合も含む)する。これにより、活物質制御装置385a及び活物質制御装置385bは、ホッパ370内の活物質22cに対して集電体21Bから離れる方向の力を付加し、活物質22cの供給を停止させることができる。
【0090】
なお、
図16A及び
図16Bでは、活物質制御装置385を3枚の羽根を有するプロペラの形状で示したが、活物質制御装置385の形状については特に限定されるものではない。即ち、プロペラにおける羽根の個々の形状や、羽根の数などについては適宜変更が可能である。また、活物質制御装置385は、プロペラでなくクローラであってもよい。例えば、
図16Bに示した活物質制御装置385a及び活物質制御装置385bにおいて、羽根の先端を結合するようにカバーを設けてクローラとすることとしてもよい。
【0091】
活物質制御装置380の別の例として、
図17に活物質制御装置386を示す。活物質制御装置386は、ホッパ370内の壁面に設けられ、ホッパ370内の壁面と垂直な方向に移動可能に構成される。
図17に示す場合、活物質制御装置386は、例えばモータによって駆動され、搬送方向Dに移動可能に構成される。
【0092】
例えば、集電体21B上に活物質22cを供給する際、活物質制御装置386は、搬送方向Dの下流側D1に移動する。これにより、活物質制御装置386は、ホッパ370内の圧力を上昇させて、ホッパ370内から集電体21Bに向けて活物質22cを押し出すことができる。また、集電体21B上への活物質22cの供給を停止する際、活物質制御装置386は、搬送方向Dの上流側D2に移動する。これにより、活物質制御装置386は、ホッパ370内の圧力を低下させて、活物質22cの供給を停止させることができる。なお、
図17では活物質制御装置386を1つ示すが、例えばホッパ370内の壁面における複数の位置に活物質制御装置386が設けられる場合であっても構わない。
【0093】
活物質制御装置380の別の例として、
図18に活物質制御装置387a及び活物質制御装置387bを示す。なお、以下の説明において活物質制御装置387aと活物質制御装置387bとを特に区別しない場合、単に活物質制御装置387とも記載する。活物質制御装置387は、ホッパ370内の壁面に設けられた変形可能な壁面部材と、当該壁面部材を変形される変形機構とを含む。壁面部材は、例えばシリコンによって作製される。
【0094】
例えば、集電体21B上に活物質22cを供給する際、活物質制御装置387a及び活物質制御装置387bにおける壁面部材は、変形機構によってホッパ370内に押し込まれるように駆動され、ホッパ370内の圧力を上昇させる。例えば
図18に示す場合、集電体21B上に活物質22cを供給する際において、活物質制御装置387aにおける変形部材は下流側D1に押し込まれ、活物質制御装置387bにおける変形部材は上流側D2に押し込まれる。これにより、活物質制御装置387は、ホッパ370内の圧力を上昇させて、ホッパ370内から集電体21Bに向けて活物質22cを押し出すことができる。
【0095】
また、集電体21B上への活物質22cの供給を停止する際、活物質制御装置387a及び活物質制御装置387bにおける壁面部材は、変形機構によってホッパ370内から引き出されるように駆動され、ホッパ370内の圧力を低下させる。例えば
図18に示す場合、集電体21B上への活物質22cの供給を停止する際において、活物質制御装置387aにおける変形部材は上流側D2に引き出され、活物質制御装置387bにおける変形部材は下流側D1に引き出される。これにより、活物質制御装置387は、ホッパ370内の圧力を低下させて、活物質22cの供給を停止させることができる。
【0096】
活物質制御装置380の別の例として、
図19に活物質制御装置388a及び活物質制御装置388bを示す。なお、以下の説明において活物質制御装置388aと活物質制御装置388bとを特に区別しない場合、単に活物質制御装置388とも記載する。例えば、活物質制御装置388は、ホッパ370内の壁面に設けられたベルトコンベアである。例えば、活物質制御装置388は、回転ローラと、当該回転ローラにより駆動される輪状のベルトとから構成される。
【0097】
例えば、集電体21B上に活物質22cを供給する際、活物質制御装置388a及び活物質制御装置388bは、近傍の活物質22cを
図19下方に搬送するように、ベルトを駆動する。言い換えると、
図19に示す場合、活物質22cを
図19下方に搬送するようにホッパ370の内壁が駆動される。これにより、活物質制御装置388a及び活物質制御装置388bは、ホッパ370内から集電体21Bに向けて活物質22cを押し出すことができる。また、集電体21B上への活物質22cの供給を停止する際、活物質制御装置388a及び活物質制御装置388bは、停止(一方が停止又は両方が停止、いずれの場合も含む)、又は、活物質供給時と反対方向に回転(一方が停止し他方が反対方向に回転又は両方が反対方向に回転、いずれの場合も含む)する。これにより、活物質制御装置388a及び活物質制御装置388bは、近傍の活物質22cを
図19上方に搬送するようにベルトを駆動し、活物質22cの供給を停止させることができる。なお、
図19に示す場合、第1シャッタ扉341又は第2シャッタ扉342の開閉によって、活物質22cが追従する(第1シャッタ扉341又は第2シャッタ扉342の表面に載置された活物質22cが、第1シャッタ扉341、第2シャッタ扉342の開閉する方向と同じ方向に動く)。
【0098】
なお、上述した各種工程の後、帯状の集電体21Bから集電体31が適宜切り出されるなどして、電極20が製造される。また、一対の電極20(すなわち、正極20a及び負極20b)を、セパレータ30を介して互いに向かい合わせに積層するなどして、単セル10が製造される。また、複数の単セル10を厚さ方向に積層し、複数の単セル10を外装体でシーリングすることなどにより、電池が製造される。外装体でシーリングする際にも、活物質22cに含まれる空気が膨張するのが抑制される。
【0099】
以上説明したように、本実施形態の活物質供給装置300は、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ100内で搬送方向Dに搬送される集電体21B上に粉体状の活物質22cを供給する活物質供給装置であって、チャンバ100内に設けられ、内部に活物質22cが収容されるホッパ370と、ホッパ370内から集電体21Bに向けて活物質22cを押し出す活物質制御装置380と、を備える。これにより、活物質供給装置300は、粉体状の活物質22cを用いて電極20を製造する際に集電体上に形成される活物質層の均一性の低下を抑制しつつ、搬送される集電体21B上の所望の位置に活物質22cを安定して供給することができる。例えば、ホッパ370内の活物質22cの一部が押し固められている場合であっても、活物質制御装置380は、ホッパ370内から活物質22cを押し出し、適切な量の活物質22cを集電体21Bに供給させることができる。
【0100】
なお、これまで、第1シャッタ扉341及び第2シャッタ扉342によって開口331を開閉する場合について説明した。即ち、複数枚のシャッタによって開口331を開閉する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、1枚のシャッタによって開口331を開閉することも可能である。例えば、第1シャッタ扉341を省略し、第2シャッタ扉342によって開口331を開閉することとしても構わない。この場合においても、上述した活物質制御装置380は同様に適用が可能であり、ホッパ370内から活物質22cを押し出して、搬送される集電体21B上の所望の位置に活物質22cを安定して供給することができる。
【0101】
或いは、シャッタは用いないこととしてもよい。即ち、開口331は常に開いた状態とし、活物質制御装置380のみによって、活物質の供給及び供給停止を制御してもよい。以下、この点を
図20A及び
図20Bを用いて説明する。なお、
図20A及び
図20Bでは、活物質制御装置380の一例として活物質制御装置382を図示する。例えば、活物質制御装置382は、
図20Aの矢印で示すように、ホッパ370内から活物質22cを押し出して活物質供給工程を実行する。例えば、活物質制御装置382は、開口331の下方に枠体35の内部空間35aが位置する場合のみ活物質供給工程を実行する。また、例えば、活物質制御装置382は、
図20Bの矢印で示すように、ホッパ370内の活物質22cに対して、集電体21Bから離れる方向の力を付加することにより、活物質停止工程を実行する。
【0102】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。更に、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。例えば、枠体供給装置200は、ホッパ370よりも下流側D1に配置されてもよい。すなわち、集電体21B上に活物質22cを供給した後で、集電体21B上に枠体35を供給してもよい。この場合、制御部は、集電体21B上に供給した活物質22cが枠体35の内部空間35aに入るように、集電体21B上に枠体35を供給する。この変形例のように構成することにより、集電体21B上に活物質22cを供給した後で、集電体21B上に枠体35を供給することができる。また、集電体21B等に枠体35を供給する前に基材フィルム上にマスクを形成しておき、その後の任意のタイミングで、マスクの位置に枠体35を供給してもよい。
【0103】
開閉機構343,344を制御する制御部を、活物質供給装置300が備えてもよい。製造装置1000は、枠体供給装置200を備えなくてもよい。更に、活物質供給装置300は、開閉機構343,344を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0104】
21B 集電体
22c 活物質
35 枠体
100 チャンバ
300 活物質供給装置
320 投入シュート
330 排出シュート
331 開口
341 第1シャッタ扉(シャッタ)
342 第2シャッタ扉(シャッタ)
343 第1開閉機構(開閉機構)
344 第2開閉機構(開閉機構)
370 ホッパ
380 活物質制御装置
381 活物質制御装置
382 活物質制御装置
383 活物質制御装置
384 活物質制御装置
385 活物質制御装置
385a 活物質制御装置
385b 活物質制御装置
400 ロールプレス
1000 製造装置(電池用電極の製造装置)
D 搬送方向
D1 下流側
D2 上流側