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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157905
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】風防板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/26 20060101AFI20221006BHJP
   B62J 17/04 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02B5/26
B62J17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062402
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】愛須 淳平
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148FA05
2H148FA09
2H148FA13
2H148FA15
(57)【要約】
【課題】長期に亘って、優れた意匠性および光学特性を発揮し得る風防板を提供すること。
【解決手段】本発明の風防板10は、光透過性を有する第1基材1と、第1基材1の一方の面側に設けられた第2基材2(保護層)と、第1基材1と第2基材2との間に設けられた中間層3と、を備える積層体で構成され、中間層3は、入射する光の一部を透過し、残部を反射させる、金属材料を主材料として構成される金属ハーフミラー層32と、金属ハーフミラー層32に積層され、金属ハーフミラー層32より光屈折率が高い高屈折率層31と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する第1基材と、
前記第1基材の一方の面側に設けられた保護層と、
前記第1基材と前記保護層との間に設けられた中間層と、を備える積層体で構成され、
前記中間層は、入射する光の一部を透過し、残部を反射させる、金属材料を主材料として構成される金属ハーフミラー層と、該金属ハーフミラー層に積層され、前記金属ハーフミラー層より光屈折率が高い高屈折率層と、を有することを特徴とする風防板。
【請求項2】
前記金属ハーフミラー層は、In、Al、Ag、CrおよびSnのうちの少なくとも1種を主材料として含む請求項1に記載の風防板。
【請求項3】
前記高屈折率層は、CeO、NbおよびTiOのうちの少なくとも1種を主材料として含む請求項1または2に記載の風防板。
【請求項4】
当該風防板を、前記第1基材側から見たとき、金色に視認される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の風防板。
【請求項5】
前記第1基材と、前記中間層との間に設けられ、アクリル樹脂、無機含有アクリル樹脂、オルガノシロキサンのうちの少なくとも1種を主材料として含む、前記中間層との密着性を向上させる第1密着層を、さらに備える請求項1ないし4のいずれか1項に記載の風防板。
【請求項6】
前記保護層は、光透過性を有する第2基材である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の風防板。
【請求項7】
前記中間層と、前記第2基材との間に設けられた接着剤層を、さらに備える請求項6に記載の風防板。
【請求項8】
前記中間層と、前記接着剤層との間に設けられ、SiOおよびAlのうちの少なくとも1種を主材料として含む、前記中間層との密着性を向上させる第2密着層を、さらに備える請求項7に記載の風防板。
【請求項9】
前記保護層は、光透過性を有し、前記中間層側を被覆する被覆層である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の風防板。
【請求項10】
前記中間層と、前記被覆層との間に設けられ、SiOおよびAlのうちの少なくとも1種を主材料として含む、前記中間層との密着性を向上させる第2密着層を、さらに備える請求項9に記載の風防板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風防板に関する。
【背景技術】
【0002】
オートバイ、ゴルフカートおよびフォークリフト等の車両に用いられる風防板、さらには、ヘルメットおよびゴーグル等の頭部装着物に用いられる風防板(バイザー)としては、その軽量性、透明性、加工性、割れにくさ、および割れた場合の安全性等の観点から、各種プラスチック材料が使用されている。
【0003】
近年、この風防板として、その意匠性の向上を図ることを目的に、特定の波長領域の光を反射するミラー層や、模様を、最外層に備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる構成の風防板では、前記ミラー層および模様等が、表面の部分で最外層として露出していることに起因して、摩耗等により損傷することがある。そして、この損傷により、風防板の意匠性、さらには光学特性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02-229574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、長期に亘って、優れた意匠性および光学特性を発揮し得る風防板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(10)に記載の本発明により達成される。
(1) 光透過性を有する第1基材と、
前記第1基材の一方の面側に設けられた保護層と、
前記第1基材と前記保護層との間に設けられた中間層と、を備える積層体で構成され、
前記中間層は、入射する光の一部を透過し、残部を反射させる、金属材料を主材料として構成される金属ハーフミラー層と、該金属ハーフミラー層に積層され、前記金属ハーフミラー層より光屈折率が高い高屈折率層と、を有することを特徴とする風防板。
【0008】
(2) 前記金属ハーフミラー層は、In、Al、Ag、CrおよびSnのうちの少なくとも1種を主材料として含む上記(1)に記載の風防板。
【0009】
(3) 前記高屈折率層は、CeO、NbおよびTiOのうちの少なくとも1種を主材料として含む上記(1)または(2)に記載の風防板。
【0010】
(4) 当該風防板を、前記第1基材側から見たとき、金色に視認される上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の風防板。
【0011】
(5) 前記第1基材と、前記中間層との間に設けられ、アクリル樹脂、無機含有アクリル樹脂、オルガノシロキサンのうちの少なくとも1種を主材料として含む、前記中間層との密着性を向上させる第1密着層を、さらに備える上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の風防板。
【0012】
(6) 前記保護層は、光透過性を有する第2基材である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の風防板。
【0013】
(7) 前記中間層と、前記第2基材との間に設けられた接着剤層を、さらに備える上記(6)に記載の風防板。
【0014】
(8) 前記中間層と、前記接着剤層との間に設けられ、SiOおよびAlのうちの少なくとも1種を主材料として含む、前記中間層との密着性を向上させる第2密着層を、さらに備える上記(7)に記載の風防板。
【0015】
(9) 前記保護層は、光透過性を有し、前記中間層側を被覆する被覆層である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の風防板。
【0016】
(10) 前記中間層と、前記被覆層との間に設けられ、SiOおよびAlのうちの少なくとも1種を主材料として含む、前記中間層との密着性を向上させる第2密着層を、さらに備える上記(9)に記載の風防板。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属ハーフミラー層と高屈折率層とが、最外層ではなく、中間層として、第1基材と保護層との間に配置された構成とされる。したがって、風防板を、優れた意匠性および光学特性が長期に亘って維持されたものとし得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の風防板の第1実施形態を示す縦断面図である。
図2図1に示す風防板における透過光および反射光の光吸収スペクトルの一例を示すグラフである。
図3】本発明の風防板の第2実施形態を示す縦断面図である。
図4】本発明の風防板の第3実施形態を示す縦断面図である。
図5】本発明の風防板の第4実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の風防板を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<風防板>
本発明の風防板10は、光透過性を有する第1基材1と、第1基材1の一方の面側に設けられた保護層(第2基材2または被覆層7)と、第1基材1と保護層との間に設けられた中間層3とを備える積層体で構成され、中間層3は、入射する光の一部を透過し、残部を反射させる、金属材料を主材料として構成される金属ハーフミラー層32と、この金属ハーフミラー層32に積層され、金属ハーフミラー層32より光屈折率が高い高屈折率層31とを有している。風防板10をかかる構成をなすものとすることで、金属ハーフミラー層32と高屈折率層31とが、最外層ではなく、中間層3として、第1基材1と保護層(第2基材2または被覆層7)との間に配置された構成とされる。したがって、風防板10を、優れた意匠性および光学特性が長期に亘って維持されたものとし得る。
【0020】
なお、この風防板10は、例えば、車両に用いられる風防板(車両用風防板)であり、車両とは、人、または物を乗せて移動や作業をする乗り物全般を指す。例えば、乗用車、トラック、船舶、鉄道車両、飛行機、バス、オートバイ、自転車、フォークリフト、工事現場等で所定の作業をする作業車、ゴルフカート、玩具用車両、遊園地の各種乗物等を含むものである。
【0021】
また、車両用風防板とは、車両に乗った人または物と、外部との間に配され、車両に乗った人または物と外部とを、少なくとも一方向において遮る板状の構造体を指す。例えば、オートバイや自転車の風防(スクリーン)、その他車両に備えられた窓材等を含むものである。
【0022】
さらに、この風防板10は、車両用風防板の他、例えば、ヘルメット、ゴーグルおよびサングラス等の頭部装着物に用いられる風防板(バイザー、レンズ)等にも、適用することができる。
【0023】
したがって、車両および頭部装着物を、かかる風防板10を備えるものとすることで、優れた信頼性および意匠性を有するものとし得る。
【0024】
なお、風防板10は、以下に示す図1図3図5のように、平板状をなす積層体である場合の他、その用途に応じて、例えば、その少なくとも一部が湾曲形状に湾曲した構成をなす熱成形体であってもよい。
【0025】
以下、この風防板10について詳述する。
<<第1実施形態>>
図1は、本発明の風防板の第1実施形態を示す縦断面図、図2は、図1に示す風防板における透過光および反射光の光吸収スペクトルの一例を示すグラフである。
【0026】
なお、以下では、説明の都合上、図1の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、上述の通り、風防板を車両または頭部装着物に設けた際に、人または物側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言うことから、図1では、上側の面を「表側の面」、下側の面を「裏側の面」と言うこともある。さらに、図1では、風防板の厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0027】
風防板10(光学基板)は、本実施形態では、図1に示すように、光透過性を有する第1基材1と、第1基材1の一方の面(裏側の面)側に設けられた光透過性を有する保護層としての第2基材2と、第1基材1と第2基材2との間に設けられた中間層3と、中間層3と第1基材1(一方の基材)との間に設けられ、中間層3との密着性の向上を図る第1密着層6と、中間層3と第2基材2(他方の基材)との間に設けられ、接着剤層5との密着性の向上を図る第2密着層4と、第2基材2と第2密着層4との間に設けられ、第2基材2と第2密着層4とを接合する接着剤層5と、を備えている。
【0028】
また、中間層3は、入射する光の一部を透過し、残部を反射させる、金属材料を主材料として構成される金属ハーフミラー層32と、この金属ハーフミラー層32より光屈折率(以下、単に「屈折率」と言うこともある。)が高い高屈折率層31と、を有する積層体であり、本実施形態では、高屈折率層31を第1基材1(表側の面)側、金属ハーフミラー層32を第2基材2(裏側の面)側として互いに接触した状態で積層されている。
【0029】
風防板10において、各層が配置される位置関係を上記のように設定することで、中間層3は、風防板10の表面に露出していない。すなわち、風防板10の上面または下面で露出する最外層を構成していない。そのため、最外層を構成した場合のように、中間層3に砂ほこりや飛び石、さらには雨等が衝突したり、中間層3が他の部材等により摩耗されるのを確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩擦により、中間層3が傷つくのを確実に防止することができる。よって、風防板10を、優れた意匠性および光学特性が長期に亘って維持されたものとし得る。
【0030】
さらに、かかる構成をなす風防板10において、入射する光の一部を透過し、残部を反射させる、金属材料を主材料として構成される金属ハーフミラー層32と、この金属ハーフミラー層32より屈折率が高い高屈折率層31と、を有する積層体で構成されている。これにより、金属ハーフミラー層32は、入射する光の一部を透過し、残部を反射させることから、風防板10の裏面側に人が位置する場合には、人により風防板10を介して、風防板10の表側を視認することができる。また、高屈折率層31は、金属ハーフミラー層32に接触して積層された層であり、その屈折率が金属ハーフミラー層32よりも高く設定されている。高屈折率層31をかかる構成をなすものとすることで、金属ハーフミラー層32と高屈折率層31との界面、さらに第1密着層6と高屈折率層31との界面において、特定の波長領域の光を選択的に反射するミラー層としての機能を高屈折率層31に発揮させることができる。そのため、風防板10の表側において、反射された特定の波長領域の光を視認し得ることから、風防板10を優れた意匠性を備えるものとし得る。
【0031】
以下、この風防板10を構成する各層について説明する。
第1基材1および第2基材2は、中間層3(光学多層膜)を支持するとともに、第1基材1と第2基材2との間に中間層3を配置させる、風防板10の最外層を構成し、中間層3を保護する保護層としての機能を有している。
【0032】
風防板10において、第1基材1および第2基材2が、風防板10の最外層を構成することで、中間層3は、風防板10の表面に露出していない。そのため、中間層3が最外層を構成して風防板において露出している場合のように、中間層3に砂ほこりや飛び石、さらには雨等が衝突したり、中間層3が他の部材等により摩耗されるのを、確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩擦により、中間層3が傷つくのを確実に防止することができる。よって、風防板10を、優れた意匠性および光学特性が長期に亘って維持されたものとし得る。
【0033】
第1基材1および第2基材2は、光透過性(可視光透過性)を有する樹脂材料を主材料として構成されている。
【0034】
この樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として)用いることができる。これらの中でも、ポリカーボネートまたはポリアミド系樹脂であることが好ましい。ポリカーボネートを用いることにより、風防板10の耐熱性および耐衝撃性を優れたものとし得る。また、ポリアミド系樹脂を用いることにより、耐衝撃性および耐薬品性を優れたものとし得る。
【0035】
なお、第1基材1および第2基材2は、構成材料が同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0036】
第1基材1および第2基材2の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよいが、例えば、0.1mm以上10.0mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上5.0mm以下であるのがより好ましい。
【0037】
また、第1基材1および第2基材2は、光透過性を有していれば、その色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよい。
【0038】
これらの色の選択は、第1基材1および第2基材2の少なくとも一方に染料または顔料を含有させることにより可能になる。この染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35等が挙げられる。
【0040】
また、第1基材1の屈折率n1は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。
【0041】
また、第2基材2の屈折率n2は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。
【0042】
第1基材1の屈折率n1および第2基材2の屈折率n2を上記数値範囲とすることにより、入射する光の一部を透過し、残部を反射させる中間層3としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0043】
なお、第1基材1および第2基材2は、それぞれ、非延伸のものであってもよいし、延伸されたものであってもよい。
【0044】
中間層3は、第1基材1と第2基材2との間に設けられている。この中間層3は、入射する光の一部を透過し、残部を反射させるハーフミラー層としての機能と、特定の波長領域の光を選択的に反射するミラー層としての機能との双方の機能を併せ持つものである。
【0045】
この中間層3は、図1に示すように、高屈折率層31と、高屈折率層31よりも屈折率が低い金属ハーフミラー層32と、を有している。図示の構成では、表側となる上側(第1基材1側)から、高屈折率層31と金属ハーフミラー層32とが、この順に接触して積層された光学多層膜である。
【0046】
高屈折率層31と金属ハーフミラー層32とは、それぞれ、第1基材1の下側に設けられた第1密着層6に対して、この順で、例えば、抵抗加熱法、電子ビーム加熱法(EB法)の真空蒸着法、スパッタリング法のような物理的気相成長法(PVD法)を用いて成膜されたものであり、中間層3はこれらの積層体で構成される。
【0047】
これら高屈折率層31および金属ハーフミラー層32のうち、金属ハーフミラー層32は、金属材料を主材料として構成される単層体であり、これにより、入射する光の一部を透過し、残部を反射させるハーフミラー層としての機能を発揮する。
【0048】
このように、金属ハーフミラー層32がハーフミラー層として機能を発揮することにより、風防板10の上側(表側の面)から入射した光の一部が金属ハーフミラー層32を透過し、風防板10の下側(裏側の面)から出射される。そのため、風防板10の裏面側に位置する人により、この風防板10を介して、風防板10の表側を視認することができる。また、入射する光の残部が、図1中の白抜き矢印のように、金属ハーフミラー層32を反射することから、風防板10を表面側から見たとき、この金属ハーフミラー層32は、ミラー層としての機能も発揮する。
【0049】
金属ハーフミラー層32は、入射する光の一部を透過し、残部を反射させるハーフミラー層としての機能を発揮し得るものであれば、いかなる金属材料を主材料として構成されるものであってもよく、この金属材料としては、例えば、In、Al、Ag、Cr、Au、Cu、およびSn等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、金属ハーフミラー層32は、In、Al、Ag、CrおよびSnのうちの少なくとも1種を主材料として含むものであるのが好ましい。金属ハーフミラー層32を、これらの金属材料を主材料として含むものとすることで、後述する高屈折率層31を構成する主材料との組み合わせにより、金属ハーフミラー層32と高屈折率層31との界面、さらに第1密着層6と高屈折率層31との界面において、選択的に反射される、特定の波長領域の光を、金色に視認されるものに、比較的容易に設定することができ、風防板10の意匠性の向上を図ることができる。
【0050】
金属ハーフミラー層32の平均厚さ(物理厚さ)は、特に限定されないが、1nm以上200nm以下であるのが好ましく、1.5nm以上150nm以下であるのがより好ましい。
【0051】
また、この金属ハーフミラー層32の平均厚さ(光学厚さ:500nmの波長に対して)は、0.02/4λnm以上0.8/4λnm以下であるのが好ましく、0.08/4λnm以上0.6/4λnm以下であるのがより好ましい。
【0052】
金属ハーフミラー層32をこのような平均厚さを有するものとすることで、金属ハーフミラー層32に、ハーフミラーとしての機能を確実に発揮させることができる。
【0053】
高屈折率層31は、金属ハーフミラー層32の上側に接触して積層される層であり、金属ハーフミラー層32より、その光屈折率が高く設定されている。これにより、金属ハーフミラー層32と高屈折率層31との界面、さらに第1密着層6と高屈折率層31との界面において、特定の波長領域の光を選択的に反射するミラー層としての機能を発揮する。
【0054】
このように、高屈折率層31が特定の波長領域の光を選択的に反射するミラー層としての機能を発揮することにより、図1中の実線矢印のように、風防板10の上側(表側の面)から入射した光のうち、特定の波長領域の光が、金属ハーフミラー層32と高屈折率層31との界面、さらに第1密着層6と高屈折率層31との界面において、すなわち、高屈折率層31の双方の面側の界面において、選択的に反射する。そのため、風防板10を表面側では、前述した金属ハーフミラー層32で反射された前記光の残部と、高屈折率層31で反射された特定の波長領域の光とが視認されることから、結果的に、高屈折率層31において選択的に反射された特定の波長領域の光に基づく色が視認される。
【0055】
高屈折率層31は、特定の波長領域の光を選択的に反射するミラー層としての機能を発揮し得るものであれば、いかなる構成材料を主材料として構成されるものであってもよく、この構成材料としては、例えば、SiO2、SiO、TiO、TiO、Ti23、Ti25、Al23、TaO2、Ta25、NdO2、NbO、Nb23、NbO2、Nb25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、WO3、HfO2、ZrO2、Sc3、CrO、Cr、In、Laのような酸化物、および、CaF、MgF2、NaAlF、AlF、BaF、CeF、CaF、LaF、LiF、NaAl14、NdF、YFのようなフッ化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、高屈折率層31は、CeO、NbおよびTiOのうちの少なくとも1種を主材料として含むものであるのが好ましい。高屈折率層31を、これらの金属酸化物を主材料として含むものとすることで、前述した金属ハーフミラー層32を構成する金属材料との組み合わせにより、金属ハーフミラー層32と高屈折率層31との界面、さらに第1密着層6と高屈折率層31との界面において、選択的に反射される、特定の波長領域の光を、金色に視認されるものに、比較的容易に設定することができ、風防板10の意匠性の向上を図ることができる。
【0056】
また、高屈折率層31は、金属ハーフミラー層32の屈折率よりも高い屈折率を有するものであればよいが、高屈折率層31と金属ハーフミラー層32との屈折率差(光屈折率差)は、0.3以上2以下であるのが好ましく、0.4以上1.5以下であるのがより好ましい。これにより、特定の波長領域の光を選択的に反射させる機能を高屈折率層31に確実に発揮させることができる。
【0057】
高屈折率層31の平均厚さ(物理厚さ)は、特に限定されないが、1nm以上200nm以下であるのが好ましく、1.5nm以上150nm以下であるのがより好ましい。
【0058】
また、この高屈折率層31の平均厚さ(光学厚さ:500nmの波長に対して)は、0.02/4λnm以上0.8/4λnm以下であるのが好ましく、0.08/4λnm以上0.6/4λnm以下であるのがより好ましい。
【0059】
高屈折率層31をこのような平均厚さの範囲内で調整し、さらに、高屈折率層31の主材料として構成する構成材料の種類を適宜選択することで、選択的に反射される光の波長領域を、所望の領域を有するものに設定することができる。すなわち、風防板10を表面側で視認される光の色を、所望の色に設定することができる。
【0060】
なお、高屈折率層31および金属ハーフミラー層32を含む風防板10を構成する各層の平均厚さは、例えば、風防板10における各層の断面を露出させSEMまたはTEMを用いて測定された値の平均値を求めることで得ることができる。
【0061】
また、中間層3の総厚(高屈折率層31および金属ハーフミラー層32の厚さの和)は、5nm以上500nm以下であるのが好ましく、10nm以上400nm以下であるのがより好ましい。これにより、中間層3が備える高屈折率層31と金属ハーフミラー層32との双方の層が有する機能を、確実に発揮させることができる。
【0062】
ここで、中間層3を構成する高屈折率層31および金属ハーフミラー層32において、前述の通り、金属ハーフミラー層32の主材料として構成する金属材料として、In、Al、Ag、CrおよびSnのうちの少なくとも1種を用いた場合、高屈折率層31を構成する主材料として、CeO、NbおよびTiOのうちの少なくとも1種を用いることで、高屈折率層31において選択的に反射される、特定の波長領域の光(反射光)を、金色に視認されるものに、比較的容易に設定することができるが、この金属ハーフミラー層32に含まれる金属材料と、高屈折率層31に含まれる構成材料との具体的な組み合わせとしては、例えば、AlとCeOとの組み合わせ、InとCeOの組み合わせ、AlとNbとの組み合わせ等が挙げられる。このような構成材料の組み合わせにおいて、金属ハーフミラー層32の厚さを変化させることにより、反射光の反射率が変化することに起因して、金色の色目を示す反射光の強度が変化する。また、高屈折率層31の厚さを変化させることにより、反射光の色目が変化する。そのため、金属ハーフミラー層32の厚さと、高屈折率層31の厚さとのバランスをとることで、反射光の色目を、明瞭な金色を示すものに調整することができる。
【0063】
また、高屈折率層31において選択的に反射される、特定の波長領域の光が、風防板10の表面側において、反射光として金色に視認されるとき、風防板10を透過する透過光は、風防板10の裏面側において、銀色に視認される。このときの反射光および透過光の光吸収スペクトルは、例えば、図2に示すようなスペクトル特性をなすものとなり、金色に視認される反射光の光吸収スペクトルは、赤と黄色領域の反射が強い右肩上がりのスペクトル特性を示し、赤とオレンジの領域(590~780nm)の反射率の平均と青の領域(430~500nm)の反射率の平均との差が、好ましくは5%以上50%以下程度、より好ましくは15%以上25%以下程度となっている。
【0064】
なお、風防板10の表面側において、金色に視認される特定の波長領域の光(反射光)の反射率の高低は、金属ハーフミラー層32の平均厚さを適宜設定することで調整することができ、前記反射光の反射率が高くなるほど、青の領域(430~500nm)の光の透過率が高くなるため、透過光は、風防板10の裏面側において、青色が強調された銀色に視認される傾向を示す。
【0065】
さらに、風防板10は、前述の通り、図1に示したように、平板状をなす積層体である場合の他、その用途に応じて、その少なくとも一部を湾曲形状に湾曲させた熱成形体で構成されることがある。このように風防板10が湾曲形状に湾曲した領域を有する場合、金属ハーフミラー層32の主材料として構成する金属材料として、Sn、Al、AgおよびInのうちの少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、風防板10を湾曲形状に湾曲させたとしても、金属ハーフミラー層32において、クラックが発生するのを的確に抑制または防止することができる。
【0066】
なお、このような金属材料を主材料として構成される金属ハーフミラー層32は、そのモース硬度が1以上4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。これにより、金属ハーフミラー層32におけるクラックの発生をより的確に抑制または防止することができる。
【0067】
第1密着層6は、中間層3と第1基材1(一方の基材)との間に設けられ、中間層3との密着性の向上を図る機能を有するプライマー層(コート層)である。これにより、第1密着層6を介した中間層3と第1基材1との接合強度の向上が図られる。
【0068】
第1密着層6の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、無機含有アクリル樹脂、オルガノシロキサン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アクリル樹脂であるのが好ましい。これにより、第1密着層6としての機能を確実に発揮させることができる。
【0069】
第1密着層6の厚さは、0.1μm以上100μm以下であるのが好ましく、1μm以上20μm以下であるのがより好ましい。これにより、前記効果を確実に発揮させることができる。
【0070】
なお、第1密着層6は、風防板10の用途によって、中間層3と第1基材1との間において、より優れた接合強度を必要としない場合には、その形成を省略することもできる。
【0071】
第2密着層4は、中間層3と接着剤層5との間に設けられ、接着剤層5との密着性の向上を図る機能を有する層である。これにより、第2密着層4および接着剤層5を介して、第2基材2と中間層3との間に、優れた密着力を付与することができる。
【0072】
このような第2密着層4を風防板10が有することで、風防板10を、例えば、湾曲形状をなすように熱成形したとしても、接着剤層5を介して第2密着層4と第2基材2との間で剥離が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0073】
この第2密着層4は、前述した高屈折率層31と金属ハーフミラー層32とをこの順で、第1基材1上に形成された第1密着層6上に積層した後に、高屈折率層31および金属ハーフミラー層32と同様に、例えば、抵抗加熱法、電子ビーム加熱法(EB法)等の真空蒸着法、スパッタリング法のような物理的気相成長法(PVD法)を用いて成膜される。
【0074】
この第2密着層4は、特に限定されないが、SiOおよびAlのうちの少なくとも1種を主材料として構成される。このように第2密着層4を主としてSiOおよびAlのうちの少なくとも1種で構成されるものとすることで、接着剤層5を介した第2密着層4と第2基材2との間における密着力を優れた大きさのものに設定することができる。そのため、接着剤層5を介して第2密着層4と第2基材2との間で剥離が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0075】
また、第2密着層4は、その厚さが1nm以上200nm以下であることが好ましく、1nm以上15nm以下であることがより好ましい。第2密着層4の厚さを、かかる範囲内に設定することにより、第2密着層4としての機能を確実に付与することができる。
【0076】
接着剤層5は、第2基材2(他方の基材)と、第2密着層4との間に設けられ、第2基材2と第2密着層4とを接合する機能を有する。これにより、第2密着層4および接着剤層5を介して、第2基材2と中間層3との間に、優れた密着力を付与することができる。
【0077】
接着剤層5は、光透過性を有する接着剤により構成されている。この接着剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系、シリル化ウレタン樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ系、ポリオレフィン系、塩素化ポリオレフィン系、アクリル系、シアノアクリレート系、ゴム系、ポリエステル系、ポリイミド系、フェノール系等の接着剤が挙げられる。
【0078】
これらの中でも、接着剤層5は、ウレタン樹脂系の接着剤により構成されていることが好ましい。これによりレンズ加工時に必要な耐熱性を付与することができる。さらには、シリコーン系の接着剤により構成されていることも好ましい。これにより、接着剤の硬化時にガスが発生するのを的確に抑制または防止することができる。特に、中間層3は、ガスバリア性が比較的高い。そのため、接着剤層5に気泡が発生した場合、接着剤層5に気泡が残存し易くなるがシリコーン系の接着剤を用いることで、この気泡の残存を的確に抑制または防止することができる。
【0079】
また、接着剤層5の屈折率n5は、1.3以上1.7以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。
【0080】
接着剤層5の厚さは、特に限定されず、例えば、2μm以上100μm以下であるのが好ましく、5μm以上35μm以下であるのがより好ましい。このような接着剤層5により、第2基材2と第2密着層4とを確実に接合することができる。
【0081】
このような風防板10は、例えば、第1基材1に塗布法等を用いて第1密着層6を形成した後に、この第1密着層6上に中間層3と第2密着層4とを、例えば、前述した物理的気相成長法を用いて順次積層し、その後、第2密着層4上に接着剤を塗布し、該接着剤上に第2基材2を貼り合わせた状態で、接着剤を固化させて、接着剤層5を形成することにより得ることができる。
【0082】
なお、風防板10の総厚は、特に限定されないが、1.0mm以上10.0mm以下であるのが好ましく、1.2mm以上5.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、風防板10に優れた強度を付与しつつ、風防板10を、湾曲形状をなす部分を有するものに成形する場合には、この風防板10に優れた熱成形性を付与することができる。
【0083】
<第2実施形態>
また、風防板10は、前記第1実施形態で説明した構成をなすものの場合の他、以下に示すような構成をなすものであってもよい。
図3は、本発明の風防板の第2実施形態を示す縦断面図である。
【0084】
なお、以下では、説明の都合上、図3の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、上述の通り、風防板を車両または頭部装着物に設けた際に、人または物側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言うことから、図3では、図1とは逆に、上側の面を「裏側の面」、下側の面を「表側の面」と言うこともある。さらに、図3では、風防板の厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0085】
以下、この図を参照して本発明の風防板の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0086】
本実施形態の風防板10は、中間層3における、金属ハーフミラー層32と高屈折率層31との積層順が異なること以外は前記第1実施形態の風防板10と同様である。
【0087】
すなわち、図3に示すように、本実施形態では、風防板10は、金属ハーフミラー層32と高屈折率層31とが積層された中間層3を、金属ハーフミラー層32を第1基材1側とし、高屈折率層31を第2基材2側として、第1密着層6と第2密着層4との間に介挿されている。
【0088】
換言すれば、中間層3は、本実施形態では、表側となる下側(第2基材2側)から、高屈折率層31と金属ハーフミラー層32とが、この順に接触して積層された光学多層膜である。
【0089】
中間層3を、かかる構成をなすものとすることで、風防板10の下側(表側の面)から入射した光の一部が金属ハーフミラー層32を透過し、風防板10の上側(裏側の面)から出射される。そのため、風防板10の上側(裏面側)に位置する人により、この風防板10を介して、風防板10の下側(表側)を視認することができる。また、入射する光の残部が、図3中の白抜き矢印のように、金属ハーフミラー層32を反射することから、風防板10を下面側(表面側)から見たとき、この金属ハーフミラー層32は、ミラー層としての機能も発揮する。
【0090】
また、高屈折率層31が特定の波長領域の光を選択的に反射するミラー層としての機能を発揮することにより、図3中の実線矢印のように、風防板10の下側(表側の面)から入射した光のうち、特定の波長領域の光が、金属ハーフミラー層32と高屈折率層31との界面、さらに第1密着層6と高屈折率層31との界面において、選択的に反射する。そのため、風防板10を下面側(表面側)すなわち第2基材2側では、金属ハーフミラー層32で反射された前記光の残部と、高屈折率層31で反射された特定の波長領域の光とが視認されることから、結果的に、高屈折率層31において選択的に反射された特定の波長領域の光に基づく色が視認される。
【0091】
このような第2実施形態の風防板10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0092】
<第3実施形態>
また、風防板10は、前記第1実施形態で説明した構成をなすものの場合の他、以下に示すような構成をなすものであってもよい。
図4は、本発明の風防板の第3実施形態を示す縦断面図である。
【0093】
なお、以下では、説明の都合上、図4の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、上述の通り、風防板を車両または頭部装着物に設けた際に、人または物側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言うことから、図4では、上側の面を「表側の面」、下側の面を「裏側の面」と言うこともある。さらに、図4では、風防板の厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0094】
以下、この図を参照して本発明の風防板の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0095】
本実施形態の風防板10は、第2密着層4の形成が省略されていること以外は前記第1実施形態の風防板10と同様である。
【0096】
すなわち、図4に示すように、本実施形態では、風防板10は、高屈折率層31と接着剤層5との間における第2密着層4の形成が省略されて、高屈折率層31に接して接着剤層5が接合されている。
【0097】
風防板10の用途によって、中間層3(高屈折率層31)と第2基材2との間において、接着剤層5を介した接合により、より優れた接合強度を必要としない場合、または、高屈折率層31と接着剤層5との組み合わせにより、これら同士の間で優れた接合強度が得られる場合には、本実施形態のように、第2密着層4の形成を省略することができる。
【0098】
このような第3実施形態の風防板10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0099】
<第4実施形態>
また、風防板10は、前記第1実施形態で説明した構成をなすものの場合の他、以下に示すような構成をなすものであってもよい。
図5は、本発明の風防板の第4実施形態を示す縦断面図である。
【0100】
なお、以下では、説明の都合上、図5の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、上述の通り、風防板を車両または頭部装着物に設けた際に、人または物側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言うことから、図5では、上側の面を「表側の面」、下側の面を「裏側の面」と言うこともある。さらに、図5では、風防板の厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0101】
以下、この図を参照して本発明の風防板の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0102】
本実施形態の風防板10は、保護層として第2基材2に代えて被覆層7を有するとともに、接着剤層5の形成が省略されていること以外は前記第1実施形態の風防板10と同様である。
【0103】
すなわち、図5に示すように、本実施形態では、風防板10は、第1基材1の一方の面側に、最外層として配置された保護層としての第2基材2に代えて被覆層7を有している。そして、接着剤層5の形成が省略されて、第2密着層4に接して被覆層7が積層されている。換言すれば、本実施形態の風防板10では、被覆層7、第2密着層4、中間層3、第1密着層6および第1基材1が、風防板10の裏側の面から表側の面に向かって、この順で積層された積層体で構成されている。
【0104】
以下、この積層体すなわち風防板10における、被覆層7について説明する。
被覆層7(コート層)は、本実施形態では、図5に示すように、第1基材1の一方の面側の最外層として第2密着層4の下面に形成され、樹脂組成物を用いて形成された、いわゆるハードコート層である。
【0105】
第2基材2に代えて、第1基材1の一方の面側の最外層として、樹脂組成物を用いて形成された被覆層7を形成することによっても、最外層としての被覆層7に、中間層3を保護する保護層としての機能を発揮させることができる。そのため、中間層3が最外層を構成した場合のように、中間層3に砂ほこりや飛び石、さらには雨等が衝突したり、中間層3が他の部材等により摩耗されるのを確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩擦により、中間層3が傷つくのを確実に防止することができる。よって、風防板10を、優れた意匠性および光学特性が長期に亘って維持されたものとし得る。
【0106】
この被覆層7、すなわち、中間層3を保護する保護層としての機能を確実に発揮させるために、被覆層7を形成するために用いられる樹脂組成物として、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含むものが好ましく用いられる。以下、このシリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物について説明する。
【0107】
(シリコン変性(メタ)アクリル樹脂)
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂(シロキサン変性(メタ)アクリレート)は、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する構成単位が繰り返された主鎖と、この主鎖に連結し、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体(副鎖)とを有するポリマー(プレポリマー)である。
【0108】
すなわち、主鎖としての(メタ)アクリル系化合物と、副鎖としてのシロキサン結合(-Si-O-Si-)を有する化合物とが連結したポリマー(プレポリマー)である。
【0109】
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂は、前記主鎖を有することにより、被覆層7に優れた透明性を付与し、また、前記シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体を有することにより、被覆層7に優れた耐擦傷性および耐候性を付与すること
すなわち被覆層7に保護層としての機能を付与することができる。
【0110】
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂の主鎖としては、具体的には、下記式(1)および式(2)の少なくとも一方の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構成単位の繰り返しで構成されているものが挙げられ、これら双方のモノマーに由来する構成単位の繰り返しを備えるものとして、下記式(12)で示す化学式を有するものが挙げられる。
【0111】
【化1】
(式(1)中、nは、1以上の整数を示し、R1は、独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
【0112】
【化2】
(式(2)中、mは、1以上の整数を示し、R2は、独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
【0113】
【化3】
(式(12)中、m、nは、1以上の整数を示し、R1、R2、R3は、それぞれ独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
【0114】
また、かかる構成の主鎖の少なくとも1つの末端または側鎖には、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体(副鎖)が結合している。
【0115】
シロキサン結合は、結合力が高いため、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体を有することにより、耐熱性、耐候性がより良好な被覆層7を得ることができる。また、シロキサン結合の結合力が高いことで、硬質な被覆層7を得ることができるため、風防板10の砂ほこりや飛び石等の衝撃に対する耐擦傷性をさらに増大させることができる。
【0116】
シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体としては、具体的には、下記式(3)および式(4)の少なくとも一方のシロキサン結合を有する構成単位の繰り返しで構成されているものが挙げられる。
【0117】
【化4】
(式(3)中、Xは、炭化水素基または水酸基を示す。)
【0118】
【化5】
(式(4)中、Xは、炭化水素基または水酸基を示し、Xは、炭化水素基または水酸基から水素が離脱した2価の基を示す。)
【0119】
前記シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体としては、具体的には、ポリオルガノシロキサンを有するものや、シルセスキオキサンを有するものが挙げられる。なお、シルセスキオキサンの構造としては、ランダム構造、籠型構造、ラダー構造(はしご型構造)等、いかなる構造であってもよい。
【0120】
前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、2-メチルフェニル基等のアリール基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0121】
また、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖には、不飽和二重結合が導入されていることが好ましい。これにより、樹脂組成物中に後述するウレタン(メタ)アクリレートが含まれる場合、このウレタン(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基と結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとのネットワークを形成することができる。そのため、被覆層7において、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとがより均一に分散し、その結果、被覆層7は、前述した特性をその全体にわたってより均一に発現することができる。
【0122】
前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、5質量部以上、45質量部以下であることが好ましく、11質量部以上、28質量部以下であることがより好ましい。前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量が前記下限値未満であると、前記樹脂組成物により得られた被覆層7の硬さが低下する場合がある。また、前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量が前記上限値を超えると、前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂以外の材料の含有量が相対的に減ってしまい、前記樹脂組成物を用いて形成された被覆層7の撓み性が低下してしまう可能性がある。
【0123】
以上のような構成を有するシリコン変性(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、下記式(5)、式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0124】
【化6】
(式(5)中、Meは、メチル基を示し、m、n、pは、それぞれ1以上の整数を示す。)
【0125】
【化7】
(式(6)中、Meは、メチル基を示し、m、n、pは、それぞれ1以上の整数を示し、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示す。)
【0126】
(ウレタン(メタ)アクリレート)
また、樹脂組成物は、さらに、ウレタン(メタ)アクリレートを含むものであることが好ましい。
【0127】
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖に不飽和二重結合が導入されている場合、樹脂組成物中にウレタン(メタ)アクリレートが含まれることで、このウレタン(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとのネットワークが形成される。その結果、樹脂組成物が硬化して硬化物が得られることにより、この硬化物で構成される被覆層7が形成される。なお、この(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合することによる樹脂組成物の硬化は、樹脂組成物を紫外線のようなエネルギー線を照射することにより硬化する光硬化により行われる。
【0128】
以上のようにして形成される被覆層7において、ウレタン(メタ)アクリレートが含まれることにより、被覆層7の柔軟性を向上させることができ、風防板10を、その一部または全部を、湾曲形状を有するものに適用するため、風防板10を熱曲げする際に、被覆層7表面におけるクラックの発生を的確に抑制し得ることから、風防板10に優れた熱成形性を付与することができる。
【0129】
さらに、上述したシリコン変性(メタ)アクリル樹脂と、このウレタン(メタ)アクリレートとの組み合わせとすることにより、優れた耐擦傷性と熱成形性とを高度に両立した風防板10を得ることができる。また、耐擦傷性の向上により、たとえ風防板10の使用により、太陽光に含まれる紫外線が照射された後に、砂ほこりや飛び石等が被覆層7に衝突したとしても、被覆層7の表面に傷が付くのを的確に抑制することができるる。
【0130】
このウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合(-OCONH-)を有する主鎖と、この主鎖に連結した(メタ)アクリロイル基とを有する化合物のことを言う。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、モノマーまたはオリゴマーである。
【0131】
かかる構成のウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有するため、柔軟性に優れた化合物である。このため、被覆層7がウレタン(メタ)アクリレートを含むことで、被覆層7にさらなる撓み性(柔軟さ)を付与することができる。そのため、風防板10を湾曲形状に成形した際の、曲げ部におけるクラックの発生を的確に抑制することができる。
【0132】
なお、このウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。
【0133】
また、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0134】
また、ポリエステルポリオールは、例えば、ジオールとジカルボン酸もしくはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させたり、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させたりすることにより得ることができる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられ、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
【0135】
さらに、ポリカーボネートジオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-へキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール等が用いられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0136】
また、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
【0137】
また、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、10質量部以上75質量部以下であることが好ましく、17質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量が、前記下限値未満であると、ウレタン(メタ)アクリレートの種類によっては、被覆層7の柔軟性が乏しくなるおそれがある。また、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量が前記上限値を超えると、ウレタン(メタ)アクリレートの種類によっては、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレート以外の材料の含有量が相対的に減少し、風防板10の耐擦傷性が低下するおそれがある。
【0138】
((メタ)アクリレートモノマー)
また、樹脂組成物は、さらに(メタ)アクリレートモノマーを含むものであることが好ましい。
【0139】
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖に不飽和二重結合が導入されている場合、樹脂組成物中に(メタ)アクリレートモノマーが含まれることで、この(メタ)アクリレートモノマーが有する(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂と(メタ)アクリレートモノマーとのネットワークが形成され、その結果、樹脂組成物が硬化することで被覆層7が形成される。
【0140】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、イソボロニルアクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、風防板10の耐候性を向上させる観点から、芳香族を含まない樹脂であることが好ましい。
【0141】
樹脂組成物中における(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、15質量部以上、55質量部以下であることが好ましく、27質量部以上、55質量部以下であることがより好ましい。
【0142】
(イソシアネート)
また、樹脂組成物は、さらにイソシアネートを含むものであることが好ましい。
【0143】
これにより、樹脂組成物中において、イソシアネートは、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を分子間で結合(架橋)させる架橋剤として機能する。すなわち、架橋剤としてのイソシアネートが含まれることで、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する構成単位が繰り返された主鎖が備える水酸基と、イソシアネートが有するイソシアネート基とが反応してウレタン結合で構成された架橋構造が形成され、その結果、樹脂組成物の硬化物で構成される被覆層7が形成される。なお、この水酸基とイソシアネート基とが結合することによる樹脂組成物の硬化は、樹脂組成物を加熱することにより硬化する熱硬化により行われる。
【0144】
以上のようにして形成される被覆層7において、水酸基とイソシアネート基とが結合することにより形成されるネットワークを構築することができるため、被覆層7の耐擦傷性および耐候性をより向上させることができる。
【0145】
樹脂組成物中におけるイソシアネートの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、3質量部以上、40質量部以下であることが好ましく、10質量部以上、25質量部以下であることがより好ましい。
【0146】
(その他の材料)
さらに、樹脂組成物には、上述した各種材料以外に、その他の材料が含まれていてもよい。
【0147】
その他の材料としては、特に限定されないが、例えば、前記シリコン変性(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂材料、光重合開始剤、紫外線吸収剤、着色剤、増感剤、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、還元防止剤、帯電防止剤、表面調整剤、親水化添加剤、充填材および溶剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0148】
以上のような樹脂組成物の硬化物で構成される被覆層7の平均厚さは、特に限定されないが、1μm以上、40μm以下であることが好ましく、2μm以上、30μm以下であることがより好ましく、5μm以上、20μm以下であることがさらに好ましい。被覆層7の厚さが前記下限値未満であると、風防板10の耐候性が低下する場合がある。一方、被覆層7の厚さが前記上限値を超えると、風防板10を湾曲形状に成形した際、曲げ部においてクラックが発生する場合がある。
【0149】
このような第4実施形態の風防板10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0150】
以上、本発明の風防板を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、風防板を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0151】
なお、本発明の風防板は、前記第1~第4実施形態で示した、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0152】
また、本発明の風防板は、前記実施形態で説明した眼鏡レンズに貼着する場合に限らず、例えば、自動車、オートバイ、鉄道等の車両や、航空機、船舶、住宅等が有する湾曲形状をなす窓部材に貼着して用いることもできる。なお、この窓部材は、ヒトと、このヒトが目視する対象物との間に位置する、車両等のものが備える窓部材に適用できる他、車両等のものが備えるセンサーや表示装置のような各種装置と対象物との間に位置する窓部材にも適用することができる。
【実施例0153】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
<<風防板の検討>>
1.風防板の形成
(実施例1)
まず、100質量部のビスフェノールA型ポリカーボネート(三菱エンジニアプラスチックス社製、「E2000FN」)を押し出し成形することで、2枚の基材(厚さ0.5mm、2.5mm)を得て、これらを第1基材1および第2基材2とした。
【0154】
次いで、第1基材1の一方の面上に、アクリル樹脂を塗布した後に乾燥させることで第1密着層6(厚さ8μm)を形成した。
【0155】
次いで、第1密着層6上に、蒸着源の種類を適宜変更した真空蒸着法を用いて、Alで構成される金属ハーフミラー層32(厚さ20nm)と、CeOで構成される高屈折率層31(厚さ20nm)とを、この順で積層することにより得た。
【0156】
一方で、第2基材2の一方の面上に、硬化後に形成される接着剤層5の厚さが、100nmになるように、シリコーン接着剤で構成される塗膜を塗工した。
【0157】
そして、第1基材1を含む積層体と、第2基材2を含む積層体とを、第2密着層4と塗膜とが接触するように貼り合わせ、その後、温度25℃、湿度50%RH環境下で7日間養生して塗膜を固化させて接着剤層5を形成した。
【0158】
次いで、第2基材2の他方の面上に、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含むアクリル樹脂を塗布した後に乾燥させることで被覆層7(厚さ8μm)を形成することで、風防板10を得た。
【0159】
(実施例2~実施例8)
各層の構成を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2~実施例8の風防板10を得た。
【0160】
(実施例9)
まず、100質量部のビスフェノールA型ポリカーボネート(三菱エンジニアプラスチックス社製、「E2000FN」)を押し出し成形することで、1枚の基材(厚さ3.0mm)を得て、これを第1基材とした。
【0161】
次いで、第1基材1の一方の面上に、アクリル樹脂を塗布した後に乾燥させることで第1密着層6(厚さ8μm)を形成した。
【0162】
次いで、第1密着層6上に、蒸着源の種類を適宜変更した真空蒸着法を用いて、Alで構成される金属ハーフミラー層32(厚さ17nm)と、CeOで構成される高屈折率層31(厚さ20nm)と、SiOで構成される第2密着層4(厚さ20nm)とを、この順で積層することにより得た。
【0163】
次いで、第2密着層4上に、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含むアクリル樹脂を塗布した後に乾燥させることで被覆層7(厚さ8μm)を形成することで、風防板10を得た。
【0164】
2.評価
各実施例および各比較例の風防板を、以下の方法で評価した。
【0165】
<1>視認性評価
各実施例の風防板について、それぞれ、風防板の表面側で視認される反射光の色目、および風防板の裏面側で視認される透過光を観察し、次のように評価した。
【0166】
A:反射光の色目が明瞭な金色であり、透過光の観察により、風防板の表面側の状態を明確に認識することができる。
B:反射光の色目が金色であり、透過光の観察により、風防板の表面側の状態を認識することができる。
C:反射光の色目が金色であると言うことが可能な範囲内であり、透過光の観察により、風防板の表面側の状態を認識することができる。
D:透過光の観察により、風防板の表面側の状態を認識することができるものの、反射光の色目が金色であるとは言えない。
【0167】
<2>熱成形性評価
各実施例の風防板について、それぞれ、試料(幅60mm、長さ120mm、厚さ4mm)を170℃設定の熱風循環型オーブンで10分間加熱し軟化させ、取り出した直後に塗膜面を外側にして各半径の木製円柱にネル布を介して添わせ、試料が室温付近に冷却されるまでそのままに保つことで単曲面成形を行い、その後、外観を観察し、次のように評価した。
【0168】
A:半径25mmの木型で熱成形し、クラックや塗膜剥離の発生および外観の変化がない。
B:半径30mmの木型で熱成形し、クラックや塗膜剥離の発生および外観の変化がない。
C:半径40mmの木型で熱成形し、クラックや塗膜剥離の発生および外観の変化がない。
D:半径50mmの木型で熱成形し、クラックや塗膜剥離の発生および白濁や表面の肌荒れなどの外観変化が発生する。
【0169】
以上のようにして得られた各実施例および比較例の風防板における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0170】
【表1】
【0171】
表1に示したように、各実施例における風防板では、風防板の表面側で視認される反射光を、金色の光として観察される、結果を示した。
【符号の説明】
【0172】
1 第1基材
2 第2基材
3 中間層
4 第2密着層
5 接着剤層
6 第1密着層
7 被覆層
10 風防板
31 高屈折率層
32 金属ハーフミラー層
図1
図2
図3
図4
図5