(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157919
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】火災感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
G08B17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062439
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長藤 真作
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 宣裕
(72)【発明者】
【氏名】秋元 克裕
(72)【発明者】
【氏名】入内嶋 陽子
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA01
5G405AD07
5G405BA01
5G405CA13
5G405CA20
5G405CA21
5G405CA30
5G405CA53
5G405EA31
(57)【要約】
【課題】火災感知器のメンテナンスに際して、火災受信機と受信機との接続確認作業を容易に行える火災感知器を提供することである。
【解決手段】受信機と感知器回線を介して接続される伝送回路と、設置位置での環境データを取得する感知回路と、表示灯の点灯を制御する表示灯制御回路と、前記伝送回路と前記感知回路及び前記表示灯制御回路に接続された演算部を備え、前記演算部は、前記伝送回路が前記感知器回線に接続されたと前記伝送回路から通知された時を始点として所定時間以内に前記受信機から自身宛の通信が前記伝送回路で受信されたとの通知がないときに前記表示灯制御回路に前記表示灯を周期的な第1パターンで点灯させるよう制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機と感知器回線を介して接続される伝送回路と、設置位置での環境データを取得する感知回路と、表示灯の点灯を制御する表示灯制御回路と、前記伝送回路と前記感知回路及び前記表示灯制御回路に接続された演算部を備え、
前記演算部は、前記伝送回路が前記感知器回線に接続されたと前記伝送回路から通知された時を始点として所定時間以内に前記受信機から自身宛の通信が前記伝送回路で受信されたとの通知がないときに前記表示灯制御回路に前記表示灯を周期的な第1パターンで点灯させるよう制御することを特徴とする火災感知器。
【請求項2】
前記演算部は更に、前記伝送回路が前記感知器回線に接続されたと前記伝送回路から通知された時に、前記表示灯制御回路に前記表示灯を第2パターンで点灯するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の火災感知器。
【請求項3】
前記演算部は更に、前記伝送回路が前記感知器回線に接続されたと前記伝送回路から通知された時に、前記感知回路にセルフチェックの実行を指示し、前記感知回路から、セルフチェックの結果が正常と通知されたときに、前記表示灯制御回路に前記表示灯を第2パターンで点灯するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の火災感知器。
【請求項4】
前記演算部は更に、前記受信機から前記感知器回線を介して発報信号あるいは自動試験信号を前記伝送回路が受信したと通知された時に稼働時間の計測を開始し、
稼働時間の計測の開始後に前記感知器回線を介して発報信号あるいは自動試験信号を前記伝送回路が受信したと通知された時に稼働時間の計測値をリセットし、
稼働時間の計測値が所定の点検期間を超過した時に、前記表示灯制御回路に前記表示灯を周期的な第3パターンで点灯させるよう制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の火災感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固有のアドレスが付与された火災感知器と受信機を備えた防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、受信機から引き出された信号回線(感知器回線)に火災感知器を接続して火災を監視する防災システムとしては、R型(Record type)の防災システムが知られている。
【0003】
R型の防災システムは、受信機から引き出された信号回線(感知器回線)に、固有のアドレスが設定され伝送機能を有するアナログ型の火災感知器を接続し、煙濃度又は温度等のアナログデータを火災感知器で定期的に取得し、受信機からポーリング信号の受信時に取得したアナログデータを受信機に送信する。受信機では、受信したアナログデータが連続して火災発生を示している時、火災の発生と判断し、受信機の表示器に火災発生や発生場所等の情報を表示するとともに警報の発報などの処理を行う。また、受信機では火災の発生と判断した場合、少なくとも火災の発生が感知された火災感知器の表示灯を点灯させるよう信号回線(感知器回線)を介して火災感知器に指示を行っている。
【0004】
このように、火災と判断されたアナログデータが取得された火災感知器の位置が固有のアドレスと火災感知器の配置情報から特定できるため、特定された位置に基づいて避難誘導や消火活動の支援が可能となる。
特に規模の大きな施設の火災監視には不可欠な機能となっている。
【0005】
また、R型火災報知設備の受信機から引き出された信号回線(感知器回線)には、伝送機能を備えた中継器を介して防火扉や防排煙等の機器が接続されており、火災時には受信機からの制御信号により防火扉の保持を解除して閉鎖させる等の制御を行っている。
【0006】
このように利用されるR型の防災システムであるが、受信機に対して複数の系統(例えば、ビルの1フロアを単位とした範囲を1系統)として火災の監視を行うが、火災感知器の設置環境の違いから火災感知器毎に異常(塵や埃等を原因とした異常)の発生状態が異なる。
【0007】
例えば、1系統の中でも、事務作業スペース,水回りスペース,作業スペース、人の出入りが多い出入り口近辺、等で環境が異なる。この設置環境の違いにより火災感知器への埃や塵の侵入による異常や、湿気に起因した異常等、環境条件が一定ではなく、設置場所によっては機器異常が早く検出され交換などのメンテナンスが早く必要になることがある。
【0008】
一旦火災感知器で異常が検出された場合、その対処としては、設置されている火災感知器の交換が主な対処方法となる。そこで、火災感知器の交換を行う際に火災受信機の1つの系統の電源を切って、火災感知器の交換を行う方法もあるが、1系統全体の電源を切る場合、広大な範囲の未監視状態を生み出してしまう。広大な未監視領域が生じるのは防災という観点からは避ける必要がある。そこで、電源を切らず監視状態を継続した状態で、メンテナンス対象の火災感知器を交換することが望まれている。
【0009】
火災感知器の交換時の作業としては、天井面に設置された火災感知器を脚立に上って取外し及び取付けを行い、交換した感知器アドレスを指定した動作確認の指示を受信機から行うことで、例えば表示灯の点灯を行わせ、火災感知器の取付け位置で表示灯の点灯を確認することで正常に感知器の交換が行えたか確認することが行われる(特許文献1)。
【0010】
または、平面図等に示された火災感知器等の防災端末と現場に設置されている防災端末との対応関係を簡単且つ確実に確認可能とするために、携帯端末からインターネットやサーバを介して受信機に確認したい感知器のアドレスを伝え、受信機から指定された感知器の表示灯を点灯させることで、携帯端末所持者は表示灯が点灯した感知器を確認することができる(特許文献2)。
【0011】
以上のように、防災システムに接続される火災感知器の交換と、交換された火災感知器の動作確認作業は実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2017-10367号公報
【特許文献2】特開2020-181353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の防災システムにおいては、火災感知器を交換した際に、交換した火災感知器が適切に取り付けられたのかを確認するために受信機から火災感知器に正常な取り付けが確認できるような操作(例えば交換した火災感知器の表示灯を点灯させる指示)が必要となる。受信機は一般に防災センタに設置され、火災感知器が設置される監視対象エリアとは離れている。また、火災感知器の設置位置は商業施設やオフィスフロアについては一定の面積毎に設置され、会議室等の区切られた領域では、一定の面積毎又は領域に対して1つ設置されるため、火災感知器を交換後に受信機から交換した火災感知器を操作し、交換した火災感知器の確認を行うという作業は、1人で実施しようとすると操作場所(受信機の設置位置)と確認場所(火災感知器の設置位置)の往復移動が必要で大変な作業となる。
【0014】
他に特許文献2に開示されるように、火災感知器の交換をした際に作業者が携帯端末からネットワークを介して受信機を操作する方法も提案されているが、交換した火災感知器に対しての操作を携帯端末から行うことは必要であり、交換した火災感知器の確認作業に手間がかかるという問題は依然として残る。
【0015】
また、広いエリアに設置された多数の火災感知器の動作試験を人手で行う場合、火災感知器1台毎に動作試験を実施するために、何らかの要因で動作試験が漏れる火災感知器が発生する可能性があり、その対応が求められる。
【0016】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたもので、その目的は、火災感知器のメンテナンスに際して、火災感知器と受信機との接続確認作業を容易に行える火災感知器を提供することである。
また、火災感知器の定期的な動作試験時の際に、試験漏れがあったとしても試験漏れとなった火災感知器を容易に特定できる火災感知器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、受信機と感知器回線を介して接続される伝送回路と、設置位置での環境データを取得する感知回路と、表示灯の点灯を制御する表示灯制御回路と、前記伝送回路と前記感知回路及び前記表示灯制御回路に接続された演算部を備え、前記演算部は、前記伝送回路が前記感知器回線に接続されたと前記伝送回路から通知された時を始点として所定時間以内に前記受信機から自身宛の通信が前記伝送回路で受信されたとの通知がないときに前記表示灯制御回路に前記表示灯を周期的な第1パターンで点灯させるよう制御する火災感知器である。
【0018】
また、本発明の一態様の前記演算部は更に、前記伝送回路が前記感知器回線に接続されたと前記伝送回路から通知された時に、前記表示灯制御回路に前記表示灯を第2パターンで点灯するよう制御する火災感知器である。
【0019】
また、本発明の一態様の前記演算部は更に、前記伝送回路が前記感知器回線に接続されたと前記伝送回路から通知された時に、前記感知回路にセルフチェックの実行を指示し、前記感知回路から、セルフチェックの結果が正常と通知されたときに、前記表示灯制御回路に前記表示灯を第2パターンで点灯するよう制御する火災感知器である。
【0020】
また、本発明の一態様の前記演算部は更に、前記受信機から前記感知器回線を介して発報信号あるいは自動試験信号を前記伝送回路が受信したと通知された時に稼働時間の計測を開始し、稼働時間の計測の開始後に前記感知器回線を介して発報信号あるいは自動試験信号を前記伝送回路が受信したと通知された時に稼働時間の計測値をリセットし、稼働時間の計測値が所定の点検期間を超過した時に、前記表示灯制御回路に前記表示灯を周期的な第3パターンで点灯させるよう制御する火災感知器である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、火災感知器が自律的に受信機の通常監視動作を利用した動作確認を行うことができ、火災感知器のメンテナンス終了時に受信機からの操作による確認を省略でき(待たずして)、火災感知器のメンテナンスの作業性を大幅に改善できる。
【0022】
また、防災システムの1系統に接続される火災感知器の定期的な検査の際に検査漏れが生じてしまった場合にでも、検査に漏れた火災感知器の表示灯を自律的に点灯させることで、試験漏れを監視領域の利用者もしくは管理者に提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一例としてのR型の防災システムの概略構成を示す図である。
【
図3】火災感知器の取付け(接続)で始動する火災感知器内(演算部)の第1処理フローである。
【
図4】火災感知器の交換と火災感知器の表示灯の点灯タイミングを示す図である。
【
図5】火災感知器の取付け(接続)で始動する火災感知器内(演算部)の第2処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を適用したR型の防災システムの1例について簡単に説明する。
図1は一例としてのR型の防災システムの概略構成を示す図である。
図1において、R型受信機1は、制御部11と監視の系統毎に設けられる伝送回路12を備えており、制御部11に対して監視の系統毎に設置される伝送回路12に感知器回線21が接続される。R型受信機1の感知器回線21には複数の火災感知器3-1,3-2,3-nが固有の識別コードが付与されて接続され、火災感知器の設置位置における環境データの取得を定期的に行っている。
【0025】
R型受信機1には、他に、表示機能,操作機能,警報機能,移報機能等の機能があるが、
図1では省略している。
また、監視を行う「系統」とは、例えばビルの1フロアを1つの系統とし、フロア内の所定面積毎又は会議室等の区切られた領域毎に設置される火災感知器3-1を感知器回線21で連結したものを表している。
また、R型の防災システムとしては複数の系統を一括して管理する場合もある。
このようなR型の防災システムでは、R型受信機1主導で各火災感知器3-1~3-nが取得した環境データの収集を行っている。
【0026】
例えば、R型受信機1の系統毎に設けられた伝送回路12から、感知器回線21に接続された各火災感知器3-1,3-2,3-n・・に対して、固有の識別コードを用いたポーリングを行う。
【0027】
ポーリングは、各火災感知器3-1,3-2,3-nに定期的(例えば3秒毎)に行われ、一定時間内(例えば3秒以内)に全ての火災感知器3-1,3-2,3-nのポーリングが完了するようにする。例えば、100台の火災感知器が1系統に設置されている場合、R型受信機1から1つの火災感知器3-1~3-nに対してのポーリングと応答の割り当て時間を10msとすれば、3秒以内に余裕をもって完了する。
以降、便宜的に火災感知器3-1,3-2,3-nには少なくとも3秒に1回自身の固有識別コードを指定したポーリングが受信されることとして説明をする。
【0028】
火災感知器3-1は、R型受信機1の伝送回路12から自身の識別コードを指定したポーリングを受信した時に、火災感知器3-1の設置環境で取得した環境データを感知器回線21を介してR型受信機1に送信する。
R型受信機1では、制御部11が伝送回路12を介して受信した各火災感知器3-1~3-nの設置環境で取得した環境データを取得し、取得した環境データが火災発生の基準を複数回(例えば2回)続けて満たした場合に火災発生と判定する。
【0029】
制御部11で火災発生と判定された場合、R型受信機1での発報処理(警報の表示や、移信等の処理)を行う。
また制御部11は、少なくとも火災発生と判定した環境データの送信元の火災感知器(例えば、3-1とする)に対して火災発生を感知したことを伝送回路12を介して通知し、火災発生が検知されたことを表示灯35の点灯により、火災感知器1の設置位置の周辺に居る人に知らせる。
【0030】
火災感知器3-1の表示灯35の点灯は、火災を感知した火災感知器3-1に留まらず系統全体もしくは、監視領域が近接する火災感知器3-2~3-nに対して行ってもよい。
【0031】
図2は、火災感知器3-1の機能ブロックを示している。
火災感知器3-1は、感知器回線21に接続された火災感知器3-1側の伝送回路31と、火災感知器3-1の設置環境の環境データを取得する感知回路33と、表示灯35の点灯を制御する表示灯制御回路34と、伝送回路31と感知回路33及び表示灯制御回路34に接続され火災感知器3-1の各回路を制御する演算部32を備えている。
【0032】
火災感知器3-1の基本的な動作としては、感知回路33が火災感知器3-1の設置環境で定期的に環境データを取得する。
感知器回線21を介してR型受信機1から火災感知器3-1に対するポーリング信号を火災感知器側3-1の伝送回路31で受信した時に、演算部32に自身宛のポーリング信号の受信が通知され、演算部32は感知回路33で取得された環境データをR型受信機1宛に送信するよう伝送回路31を制御する。
【0033】
また、感知器回線21を介してR型受信機1から火災感知器3-1の表示灯35の点灯を指示する通信を受信した時(火災検知の通知の場合も同様)は、演算部32から表示灯制御回路34を制御して表示灯35の点灯を制御する。
【0034】
基本的なR型の防災システムの動作は以上のような形となる。
以上の基本的なR型の防災システムの動作を前提に、以降本発明に係る火災感知器3-1の交換を伴うメンテナンス時の対応を例に説明する。
【0035】
R型の防災システムの火災監視の一系統はビルの1フロア等広範囲となる。その広範囲に多数の火災感知器3-1~3-nが1系統として設置されるため、設置される場所により火災感知器3-1~3-nの設置環境が異なる。例えば、事務作業スペース、水回りスペース、作業スペース、人の出入りが多い出入り口近辺、等で環境が異なる。
【0036】
この設置環境の違いにより火災感知器3-1~3-nへの埃や塵の侵入による異常や、湿気に起因した異常、等、環境条件が一定ではなく、設置場所によっては機器の交換などのメンテナンスが早く必要になることがある。
【0037】
火災感知器3-1~3-nの異常は、通常R型受信機1で取得している火災検知器3-1~3-n毎の環境データの異常やデータ未受信等で検知されるため、異常となった火災感知器3-1~3-nは火災感知器3-1~3-nに固有の識別コードで特定できる。よって、固有の識別コードで特定された火災感知器(例えば、3-1)を指定した交換等のメンテナンスを手配することとなる。
【0038】
その際、短期間で、交換作業ができる場合は、R型受信機1は、火災感知器3-1の環境データの異常又はデータ未受信であることを示すアラームを出したままとすることもできるが、短期間で作業ができない場合は、特定された火災感知器3-1からのアラームを「マスク」し、R型受信機1ではアラームが出力されないように設定する機能もある。
【0039】
ここで、特定された火災感知器3-1の交換等のメンテナンスを行う場合、1つの系統の火災の監視範囲が広範囲となるため、系統全体の電源を落として火災感知器3-1の交換を行うと、広範囲な未監視領域が生じることになり、防災管理上好ましくない。
【0040】
従って、系統の監視を継続したままで異常が検出された火災感知器3-1の交換等のメンテナンスが行われる。
R型の防災システムに接続される火災感知器は固有の識別コードが付与され感知器回線から給電を受けて動作するものとする。
本実施例での火災感知器3-1の交換においては、交換対象の火災感知器3-1にR型受信機1からの命令とは独立した処理として、火災感知器3-1の状態を火災感知器側で簡易的に表示できる機能を持たせることが特徴となる。
【0041】
以降、火災感知器3-1の状態を簡易的に表示できる機能を火災感知器に持たせることにより、火災感知器3-1の交換作業の効率化ができることを説明する。
まず、R型受信機1による火災監視中に、火災感知器3-1の交換を行う際の火災感知器3-1内の処理について、火災感知器3-1の交換した以降の処理について
図3の第1処理フローを参照して説明する。
【0042】
交換を実施した火災感知器3-1の接続される系統は監視中のため、同じアドレスを設定した新たな火災感知器を取り付ける作業の実施と同時にその交換した新たな火災感知器3-1に電源が入ることとなる。
交換する火災感知器3-1には、交換元の火災感知器3-1の固有アドレスを引き継ぐように、事前又は取付け前に固有アドレスを設定する。
【0043】
固有アドレスが設定された火災感知器3-1の取付けにより電源が入ったタイミングで火災感知器3-1の表示灯35を第2パターンで点灯させる「ステップ01」(S01)。
第2パターンは例えば、電源接続時に1回短時間(例えば、1秒間)だけ点灯するパターンとすることができる。
【0044】
また、火災感知器3-1の取付けにより電源の入ったタイミングで、火災感知器3-1の初期の動作確認としてセルフチェック「ステップ00」(S00)を行い、問題なく動作可能であることが確認できた時(初期動作の確認として、例えば散乱光式煙感知器であれば煙検知領域への投光と、フォトダイオードPDでオフセット光の受信ができた時)に火災感知器3-1への電源接続と火災感知器3-1の正常動作ができる状況であると判断し、火災感知器3-1の表示灯35を第2パターンで点灯「ステップ01」(S01)させてもよい。
【0045】
この「ステップ00」(S00)と「ステップ01」(S01)の機能を火災感知器3-1の自律的な機能として持たせることで、火災感知器3-1の交換時にその場で、新たに取り付けられた火災感知器3-1への通電又は火災感知器3-1のセルフチェックで問題ないことを表示灯35の点灯の目視で確認できる。即ち、R型受信機1での操作を必要とせずに、通電及び/又はセルフチェックで問題がないことを、火災感知器3-1の交換位置で確認できる。
【0046】
火災感知器3-1の稼働後は、電源が常に入った状態となるため「ステップ00」(S00),「ステップ01」,(S01)の処理は作動せず、第2パターンで点灯する場面は発生じない。
【0047】
上記「ステップ00」(S00)及び/又は「ステップ01」(S01)の確認後に続いて、R型受信機1から交換した火災感知器3-1が認識されているかを確認する処理を開始する。
【0048】
「ステップ01」(S01)の処理に続いて、演算部32で秒単位のカウンタのカウントを開始する。「ステップ02」(S02)
カウントは秒単位でカウントアップ(+1)し「ステップ03」(S03)、カウントアップ毎にカウント値(a)が基準値の9秒(ここでは、R型受信機1から火災感知器3-1へのポーリング間隔は3秒とし、火災感知器3-1へのポーリング信号を少なくとも2回連続で受信できる事を確認するためこの例では9秒に設定している)に達しているか判断し「ステップ04」(S04)、9秒に達していない場合は、「No」で、「ステップ03」(S03)に戻る。
【0049】
一方、「ステップ04」でカウント値(a)が基準値の9秒に達した場合、「Yes」で、表示灯35を第1パターンで点灯させる「ステップ05」(S05)。
即ち、交換した火災感知器3-1に電源が接続されてから9秒以上経過すると表示灯35が第1パターンで点灯することになる。
【0050】
ここで、表示灯35の第1パターンでの点灯とは、例えば、1秒間に2回の点灯と1秒間の消灯の繰り返しの周期的な点灯パターンとすることができる。(第1パターンと第2パターンは少なくとも区別ができるようなパターンであれば良いため、周期性の有無で区別してもよい。)
【0051】
また、演算部32は、新たな火災感知器3-1に交換後にR型受信機1から自身の火災感知器3-1宛のポーリング信号を伝送回路31経由で受信する「ステップ10」(S10)。そして、自身の火災感知器3-1宛のポーリング信号の受信後3秒間隔で連続してポーリング信号を受信したかを「ステップ11」(S11)で確認する。
【0052】
そして、「ステップ11」(S11)で、自身の火災感知器3-1宛のポーリング信号の1回目の受信から3秒間隔でポーリング信号が受信(2回続けて受信)できた場合(Yes)に、「ステップ03」(S03)でカウントしたカウント値をリセットする[リセット]信号を出力する。
【0053】
この[リセット]信号により、「ステップ03」(S03)のカウント値がリセットされるため、「ステップ04」(S04)の判断は「No」となり、表示灯35は点灯しない。この状態は正常稼働中であれば常に[リセット]信号がステップ03(S03)に供給されることになり、表示灯35が第1パターンで点灯することはない。
【0054】
さらに、「ステップ11」(S11)で、自身の火災感知器3-1宛のポーリング信号の受信(1回目)から3秒間隔で受信できていない場合は(No)で、処理を終了する。
この処理により、「ステップ03」(S03)でカウント値はリセットされず、カウントが継続され、「ステップ04」(S04)で基準の9秒に到達(Yes)で、「ステップ05」(S05)で、表示灯35を周期的な第1パターンで点灯させる。
【0055】
「ステップ05」(S05)で火災感知器3-1の表示灯35が周期的な第1パターンで点灯した場合は、感知器回線21で接続されているR型受信機1から火災感知器3-1に送信されるポーリング信号が(定期的に)受信できていない状態であることが判断できる。
【0056】
このような状態は、R型受信機1に接続した火災感知器3-1をR型受信機1が認識できていない場合に生じる。
一方、「ステップ11」(S11)で、自身の火災感知器3-1宛のポーリング信号の受信(1回目)から3秒間隔でポーリング信号が受信できた(2回続けて受信できた)場合(Yes)には、「ステップ03」(S03)のカウント値がリセットされる。このような状態は、動作しているR型受信機1から交換した火災感知器3-1は認識できておりR型受信機1から送信されるポーリング信号が適切(定期的に)に受信できていることを表している。
【0057】
よって、R型の防災システムで用いられる火災感知器3-1の交換を行う場合、火災感知器3-1を交換後、速やかに第2パターンでの表示灯35の点灯を確認することで、電源に接続されたこと及び/又はセルフチェックで問題がないことが火災感知器3-1を取り替えた場所で確認できる。
【0058】
また、火災感知器3-1の交換後、その場で10秒程度待ち表示灯35の周期的な第1パターン(第2パターンとは区別できる周期的なパターン)での点灯がないことを確認することで、交換した火災感知器3-1がR型受信機1から認識されて、ポーリング信号が受信できていることが確認できる。
【0059】
次に、「ステップ05」(S05)で表示灯35が周期的な第1のパターンでの点灯後、ステップ11からポーリング信号の受信(3秒間隔でポーリング信号を受信した時)を「ステップ06」(S06)で確認する。ポーリング信号の受信(3秒間隔でポーリング信号の受信)が確認できない場合は(No)で、「ステップ06」(S06)のポーリング信号の受信確認の処理を繰り返す。
【0060】
ポーリング信号の受信(3秒間隔で受信した時)が確認できた場合は(Yes)で、「ステップ05」(S05)で点灯させた表示灯35を消灯する「ステッ07」(S7)。
「ステップ07」(S07)で表示灯35の消灯を行うことで、火災感知器の接続確認が正常にできたことが確認できるため処理の終了となる「エンド」。
【0061】
以上の処理を実施することで、火災感知器3-1の交換作業時に、火災感知器3-1の表示灯35の点灯と消灯の状態を確認すれば、火災感知器3-1の接続(電源接続又は及び火災感知器のセルフチェック結果と、R型受信機1が交換した火災感知器3-1を認識している事)確認ができ、R型受信機1から火災感知器3-1への確認操作を待たずに交換した火災感知器3-1の設置場所で接続確認ができる。よって、火災感知器3-1の交換作業の効率化または、少人数で効率的な交換作業が実現できる。
【0062】
R型の防災システムにおいて、通常監視状態で火災感知器3-1の交換を行う際の時間経過と、火災感知器3-1の表示灯35の点灯タイミングについて、
図4を用いて説明する。
(1)は、火災感知器3-1のR型受信機1からのポーリング信号の受信タイミングで、3秒に1回ポーリング信号を受信するものとする。
【0063】
(2)は、自身の火災感知器3-1宛のポーリング信号の受信(3秒に1回に合わせて)に応答する形で火災感知器3-1の設置場所での環境データの取得結果を送信する。
【0064】
(3)は、時間(秒)を示している。
通常の監視状態では、(1)のポーリングの受信されたタイミングに続いて、(2)のタイミングで取得した環境データをR型受信機1に送信する。
【0065】
この
図4の例では、(1)のポーリング受信に続いて(2)のタイミング(タイミングとして重ならないタイミング)で応答送信することを示しているが、R型受信機1からのポーリング受信期間中のタイミング(ポーリングで自身の固有アドレスを確認出来たら即応答送信を開始するタイミング)で火災感知器3-1から応答を送信してもよい。
【0066】
(4)は、火災感知器3-1の交換タイミングを示しており、(2)の1回目のポーリング応答の送信後に交換を実施したタイミングを表している。
【0067】
(5)は、
図3の第1処理フローの「ステップ01」(S01)での表示灯35の点灯パターンとタイミングを表しており、火災感知器3-1の交換直後に表示灯35が1回1秒間点灯する(第2パターンで点灯する)ことを示している。
【0068】
(6)は、
図3の第1処理フローの「ステップ00」(S00)+「ステップ01」+(S01)での表示灯35の点灯パターンとタイミングを表しており、火災感知器3-1の交換後にセルフチェックで問題がないことを確認後に表示灯35が1回1秒間点灯する(第2パターンで点灯する)ことを示している。よって、(5)に比べると、表示灯35の点灯タイミングが少し遅れている。
【0069】
(7)は、火災感知器3-1の交換後にR型受信機1からポーリング信号が受信できている場合の火災感知器3-1の交換タイミング(1点鎖線)とポーリング信号の受信タイミング(点線)を示している。
【0070】
(8)は、
図3の第1処理フローの「ステップ11」(S11)で、3秒間隔でR型の受信機1からポーリング信号が受信できている場合のリセット信号のタイミングを表しており、(7)のポーリング信号が2回続けて受信できたタイミング(図中で点線で囲んで示している)で「ステップ03」(S03)のカウント値がリセットされる。
この場合、正常に火災感知器が交換でき、交換した火災感知器とR型受信機の間の通信が通常に行われているため、(8)′の通り表示灯35は周期的な第1パターンでの点灯はせず、消灯したままとなる。((8)′では、点線で点灯した場合のタイミングを参考に示している。)
【0071】
ここで、ポーリング信号の受信が2回連続できた場合としたが、2回とすることで、継続的に受信できていると判断できるためである。1回の受信でもR型受信機1から交換した火災感知器3-1が認識されていることが判断できるため、1回としてもよい。
【0072】
(9)は、火災感知器3-1の交換後にR型受信機1からポーリング信号が受信できていない場合、即ちR型受信機1が交換した火災感知器3-1を認識できておらず、ポーリングがされていない状態を示している。
この場合、(9)でポーリング信号が受信できないため、(9)′では(8)のようにリセット信号が生成されないことを示している。
【0073】
(10)は、交換した火災感知器3-1自身へのポーリングが受信できない場合、「ステップ11」(S11)でリセット信号が出力されないため、「ステップ03」(S03)のカウント値がカウントアップされ、火災感知器3-1の交換から閾値の9秒を超えたタイミングで、「ステップ05」(S05)による表示灯35の点灯が行われる。表示灯35の点灯パターンは、第2パターンとは区別できるように、この例では周期的に1秒に2回点灯と次の1秒の消灯を繰り返すパターンを第1パターンとした例を示している。
【0074】
(11)は、火災感知器3-1の交換からの秒数を示している。
以上の通り、火災感知器3-1の交換時の正常な作業が行えたかを交換した場所で短時間に目視判断が可能となり、火災感知器3-1の交換等の作業性を良くでき、また、確認のための移動端末からの操作も不要になるため、作業負荷も軽減することができる。
【0075】
第1パターンで、表示灯35が点灯した後はR型受信機1からのポーリング信号の受信(R型受信機1に認識されポーリングが開始されたことが確認できること)で表示灯35を消灯させ、通常の監視状態に戻る。
なお、表示灯が周期的な第1パターンで点灯のままとなる場合は、火災感知器を再度新たなものに交換して前述の第2パターン-第1パターンの点灯・消灯により初期確認を繰り返して行ってもよい。
(他の実施例)
【0076】
図5に、火災感知器3-1に更にR型受信機1から自律した機能として、法令で定められた定期的な感知試験が行われているかを確認する機能を搭載する例を説明する。
図5において、
図3との相違は、火災感知器3-1の交換後の「ステップ02」(S02)までは変わりなく、「ステップ02」(S02)以降が異なる。
以降、異なる点を主に説明する。
【0077】
「ステップ02」(S02)に続く「ステップ31」(S31)は、確認の対象が定期的な感知試験を対象とするため、カウントできる値が大きく設定されている。
「ステップ32」(S32)では、カウントのスタートからカウントした値を比較する閾値が、法令で定められた定期的な試験が実施されるべき期限に対応した値となる。例えば、半年に1回の定期的な感知試験が義務付けられる場合、1時間(h)に1回カウントアップするとした場合、24(h)×365(日)÷2=4380カウントが閾値となる。閾値の設定は余裕をもって少なめに設定し、閾値超過による検知後の対処(試験の実施)でも法令の定めた期間(所定の点検期間)を超過しないように設定してもよい。
【0078】
「ステップ32」(S32)で、カウント結果が閾値未満の場合(No)で「ステップ31」(S31)に戻り、カウント結果が閾値に到達した場合(Yes)で「ステップ33」(S33)に進む。
【0079】
「ステップ33」(S33)では、演算部32から表示灯制御回路34を制御して表示灯35を周期的な第3パターンで点灯するよう制御する。
この、周期的な第3パターンは、定期的な感知試験(または、感知器発報)が所定期間行われていないことを提示するための表示灯35による点灯表示であり、第1パターンと同じであっても良い。その理由は、第1パターンとは表示灯35が点灯される状況が異なる。
図3で示した火災感知器の交換時とは異なり、火災感知器の取付け後一定期間稼働した後となるため、同じ点灯パターンでも異なる意味であることは十分認識できる。
【0080】
「ステップ33」(S33)で表示灯35を第3パターンで点灯させたあとは、「ステップ34」(S34)で伝送回路31から発報信号又は自動試験機能がある場合は自動試験信号(コマンド)が受信されるかを確認し、ない場合は「No」で「ステップ34」(S34)を繰り返す。
【0081】
「ステップ34」(S34)で伝送回路31から発報信号又は自動試験信号(コマンド)の受信が確認された時は、「Yes」で「ステップ35」(S35)に進み、表示灯35を消灯し、処理を完了する「エンド」。
また、表示灯の消灯とは別に「ステップ02」(S02)に戻り、新たにカウントを開始する。
【0082】
また、図示はしていないが、上記演算部32に感知回路33で取得した環境データに基づいて火災発生を判断する機能を持たせてもよく、演算部32に火災発生を判断する機能がある場合は、伝送回路31からの発報信号の受信通知に替えて、演算部32で火災発生との判断で、「ステップ34」(S34)を「Yes」として、「ステップ35」(S35)に進み、表示灯35を消灯してもよい。
【0083】
一方、「ステップ31」(S31)のカウント値は、「ステップ20」(S20)で、伝送回路31から発報信号(火災発生を示す信号)又は自動試験信号(コマンド)を受信した時にリセットする。R型の防災システムでは、火災感知器3-1から取得した環境データの値に基づいてR型受信機1が火災検知し、火災感知器3-1に通知(発報信号)する。この火災検知と火災感知器3-1への通知(発報信号)は、火災感知器3-1の定期的な感知試験(自動試験も含め)でも同様であり、感知結果はR型受信機1から火災感知器3-1に通知(発報信号)という形で伝えられる。
【0084】
火災感知器3-1の試験に伴う火災検知の通知(発報信号)はR型受信機1から火災感知器3-1に通知されることになる。
よって、R型受信機1から火災検知の通知(発報信号)を火災感知器3-1が受信した場合は、所定期間内に火災感知器3-1から火災検知に対応する環境データが得られた(火災感知器3-1の感知試験が実施された)と判断してもよい。
【0085】
そして、カウント値のリセットにより火災感知器3-1の作動試験が行われていない期間が0からスタートすることになり、継続して定期的な感知試験の実施を自律的にチェックする機能が火災感知器3-1で働くことになる。
【0086】
火災感知器3-1の作動試験は火災感知器毎に人手で行われるが、定期的な作動試験対象の火災感知器3-1~3-nは、例えばビルの1フロアを単位に多数設置された火災感知器3-1~3-nであり、火災感知器の試験を一部漏らす可能性がある。本実施例を利用することで試験漏れがあったとしても火災感知器3-1~3-nの自律的なカウント機能によりユーザ又は管理者に火災感知器の試験漏れを知らせることができる。
【0087】
なお、R型受信機1からの自動試験信号に基づく火災感知器の自動試験については、R型受信機からの制御により短期間(例えば、1週間)で実施される場合は、カウント値のリセットの対象とはせず、自動試験によらないR型受信機から通知される発報信号のみをリセット対象としてもよい。
【0088】
あくまでも、一定期間毎の感知検査漏れを利用者又は管理者に通知する場合は、R型受信機からの発報信号のみを対象としても十分意義がある。
また、上記の実施形態では、時間経過を計測する手法としてカウンタのカウント処理を利用した説明をしたが、時間を設定したタイマーを用いたカウントダウン形式で、リセットにより初期値に戻るような形でも実現可能である。
【0089】
以上の説明では、R型の防災システムの例を説明したが、P型の防災システムで、接続される火災感知器に固有のアドレスが付与される場合には、火災感知器での自律した機能として上記の説明と同じ様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 R型受信機
11 制御部
12 伝送回路
21 感知器回線
3-1,3-2,3-3,3-n 火災感知器
31 伝送回路
32 演算部
33 感知回路
34 表示灯制御回路
35 表示灯