(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157935
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】磁気ヘッド、サーボパターン記録装置、テープドライブ装置、磁気テープの製造方法および記録方法
(51)【国際特許分類】
G11B 5/584 20060101AFI20221006BHJP
G11B 5/008 20060101ALI20221006BHJP
G11B 21/10 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G11B5/584
G11B5/008 Z
G11B21/10 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062474
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】森田 博司
【テーマコード(参考)】
5D091
【Fターム(参考)】
5D091AA01
5D091CC15
5D091GG24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サーボパターンの記録の精度を向上させることができるサーボライトヘッド等の磁気ヘッド、サーボパターン記録装置、テープドライブ装置、磁気テープの製造方法、記録方法を提供する。
【解決手段】磁気ヘッド(サーボライトヘッド)は、長さ方向(Y軸方向)において磁気ギャップ26が設けられる位置に対応する第1の領域23と、長さ方向において磁気ギャップが設けられていない位置に対応し長さ方向に直交する幅方向(X軸方向:磁気テープの走行方向)の一端から幅方向の他端に架けて横切る複数の溝部33が設けられた第2の領域24とを有し、磁気ギャップにより磁気テープに信号を記録する記録面22を具備する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向において磁気ギャップが設けられる位置に対応する第1の領域と、前記長さ方向において前記磁気ギャップが設けられていない位置に対応し前記長さ方向に直交する幅方向の一端から前記幅方向の他端に架けて横切る複数の溝部が設けられた第2の領域とを有し、前記磁気ギャップにより磁気テープに信号を記録する記録面
を具備する磁気ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気ヘッドであって、
前記第1の領域と前記第2の領域は前記長さ方向に交互に複数ずつ配列され、
前記複数の溝部は、前記第1の領域に挟まれた前記第2の領域に設けられる
磁気ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気ヘッドであって、
前記記録面は、前記長さ方向の両端に位置する2つの前記第1の領域にそれぞれ設けられ前記記録面に接触する前記磁気テープにより外気と遮蔽される凹部をさらに有する
磁気ヘッド。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気ヘッドであって、
前記複数の溝部は、前記幅方向に沿って直線的に形成される
磁気ヘッド。
【請求項5】
請求項1に記載の磁気ヘッドであって、
前記長手方向に沿った前記複数の溝部の幅寸法は、前記複数の溝部の深さ寸法よりも大きい
磁気ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気ヘッドであって、
前記長手方向に沿った前記複数の溝部の底部の幅寸法は、前記複数の溝部の間の頂部の幅寸法よりも大きい
磁気ヘッド。
【請求項7】
請求項1に記載の磁気ヘッドであって、
前記第1の領域は、前記幅方向に第1の幅で形成され、
前記第2の領域は、前記第1の幅よりも狭い第2の幅で形成される
磁気ヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の磁気ヘッドであって、
前記第2の領域は、前記記録面が前記幅方向で所定形状に切り欠かれるようにして形成される
磁気ヘッド。
【請求項9】
請求項8に記載の磁気ヘッドであって、
前記所定形状は、円弧である
磁気ヘッド。
【請求項10】
請求項1に記載の磁気ヘッドであって、
前記磁気ヘッドは、前記磁気テープにサーボパターンを記録するサーボライトヘッドである
磁気ヘッド。
【請求項11】
請求項1に記載の磁気ヘッドであって、
前記磁気ヘッドは、前記磁気テープにデータ信号を記録する記録ヘッドである
磁気ヘッド。
【請求項12】
長さ方向において磁気ギャップが設けられる位置に対応する第1の領域と、前記長さ方向において前記磁気ギャップが設けられていない位置に対応し前記長さ方向に直交する幅方向の一端から前記幅方向の他端に架けて横切る複数の溝部が設けられた第2の領域とを有し、前記磁気ギャップにより磁気テープにサーボパターンを記録する記録面を有するサーボライトヘッド
を具備するサーボパターン記録装置。
【請求項13】
長さ方向において磁気ギャップが設けられる位置に対応する第1の領域と、前記長さ方向において前記磁気ギャップが設けられていない位置に対応し前記長さ方向に直交する幅方向の一端から前記幅方向の他端に架けて横切る複数の溝部が設けられた第2の領域とを有し、前記磁気ギャップにより磁気テープにデータ信号を記録するヘッド面を有する磁気ヘッド
を具備するテープドライブ装置。
【請求項14】
長さ方向において磁気ギャップが設けられる位置に対応する第1の領域と、前記長さ方向において前記磁気ギャップが設けられていない位置に対応し前記長さ方向に直交する幅方向の一端から前記幅方向の他端に架けて横切る複数の溝部が設けられた第2の領域とを有するサーボライトヘッドの記録面上で、磁気テープを前記幅方向に走行させ、
前記磁気テープを、前記第1の領域に接触させつつ、前記第2の領域から少なくとも一部を浮上させながら、前記磁気ギャップによりサーボパターンを前記磁気テープに記録する
磁気テープの製造方法。
【請求項15】
長さ方向において磁気ギャップが設けられる位置に対応する第1の領域と、前記長さ方向において前記磁気ギャップが設けられていない位置に対応し前記長さ方向に直交する幅方向の一端から前記幅方向の他端に架けて横切る複数の溝部が設けられた第2の領域とを有するサーボライトヘッドの記録面上で、磁気テープを前記幅方向に走行させ、
前記磁気テープを、前記第1の領域に接触させつつ、前記第2の領域から少なくとも一部を浮上させながら、前記磁気ギャップによりデータ信号を前記磁気テープに記録する
記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、磁気テープにサーボパターンを記録するサーボライトヘッド等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子データのバックアップなどの用途で磁気テープが広く普及している。磁気テープは、容量が多く長期保存が可能なことから、ビッグデータ等の蓄積媒体としてますます注目が集まっている。
【0003】
磁気テープには、複数の記録トラックを含む複数のデータバンドと、ストライプ状の複数のサーボパターンを含む複数のサーボバンドが設けられている。磁気テープの製造においては、まず、サーボパターン記録装置のサーボライトヘッドにより、サーボバンドに対してサーボパターンが記録される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
その後、データ記録/再生装置のヘッドユニットにより、サーボバンド内のサーボパターンが読み取られて、データバンド内の記録トラックに対する位置合わせが行われ、記録トラックに対してデータが記録される。
【0005】
近年においては、磁気テープに対する高密度記録化の要請から、記録トラック数が大幅に増加する傾向にある。例えば、LTO(Linear Tape Open)規格の磁気テープの記録トラック数は、初代のLTO-1が384本であったのが、LTO-2~LTO8ではそれぞれ、512本、704本、896本、1280本、2176本、3584本、6656本となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
記録トラックに対する位置合わせは、サーボパターンに基づいて行われるので、記録トラック数が増加すると、これに伴ってサーボパターンの記録の精度を向上させる必要がある。一方、サーボライトヘッドと磁気テープとの間の摩擦が原因でサーボパターンの記録の精度が低くなってしまう場合がある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、サーボパターンの記録の精度向上させることができるサーボライトヘッド等の技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術の一形態に係る磁気ヘッドは、長さ方向において磁気ギャップが設けられる位置に対応する第1の領域と、前記長さ方向において前記磁気ギャップが設けられていない位置に対応し前記長さ方向に直交する幅方向の一端から前記幅方向の他端に架けて横切る複数の溝部が設けられた第2の領域とを有し、前記磁気ギャップにより磁気テープに信号を記録する記録面
を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】サーボパターン記録装置を示す模式図である。
【
図4】サーボライトヘッドを磁気テープ側から見た斜視図である。
【
図5】サーボライトヘッドを磁気テープ側から見た平面図である。
【
図7】サーボライトヘッドを磁気テープ側から見た部分拡大図である。
【
図8】サーボライトヘッドの上部を側方から見た模式的な部分拡大図である。
【
図9】サーボライトヘッドに設けられた磁気ギャップを示す模式図である。
【
図10】サーボライトヘッドに設けられた溝部を示す模式図である。
【
図11】各種のダミーの記録面を示す模式図である。
【
図12】ダミーにおける長さ方向での一部を示す斜視図である。
【
図13】記録面と、走行する磁気テープとの間の接触状態を評価するための評価装置を示す模式図である。
【
図14】評価装置において、ダミーと、磁気テープとの関係を示す拡大図である。
【
図16】評価装置の撮像部により撮像された画像を示す図である。
【
図17】評価装置の撮像部により撮像された画像を示す図である。
【
図18】評価装置の撮像部により撮像された画像を示す図である。
【
図19】本実施形態のサーボライトヘッドの作用を説明する実験結果である。
【
図20】記録再生用の磁気ヘッドの構成を示す概略図である。
【
図21】磁気ヘッドの記録面を示す拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
本実施形態では、磁気ヘッドとして、磁気テープへサーボパターンを記録するサーボライトヘッドへの適用例について説明する。
【0013】
[磁気テープ]
まず、本技術の一実施形態に係る磁気テープ1の基本的な構成について説明する。
図1は、磁気テープ1を側方から見た模式図であり、
図2は、磁気テープ1を上方からみた模式図である。なお、図面中においては、磁気テープ1を基準とした直交座標系をX'Y'Z'座標系により表すことする。
【0014】
図1及び
図2に示すように、磁気テープ1は、長さ方向(X'軸方向)に長く、幅方向(Y'軸方向)に短く、厚さ方向(Z'軸方向)に薄いテープ状に構成されている。
【0015】
磁気テープ1は、長さ方向(X'軸方向)に長いテープ状の基材2と、基材2の一方の主面上に設けられた非磁性層3と、非磁性層3上に設けられた磁性層4と、基材2の他方の主面上に設けられたバック層5とを含む。なお、バック層5は、必要に応じて設けられればよく、このバック層5は省略されてもよい。
【0016】
基材2は、非磁性層3および磁性層4を支持する非磁性支持体である。基材2は、例えば、ポリエステル類、ポリオレフィン類、セルロース誘導体、ビニル系樹脂、およびその他の高分子樹脂のうちの少なくとも1種を含む。
【0017】
磁性層4は、データを記録するための記録層である。この磁性層4は、磁性粉、結着剤、導電性粒子等を含む。磁性層4は、必要に応じて、潤滑剤、研磨剤、防錆剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0018】
磁性層4は、垂直配向とされていてもよいし、長手配向とされていてもよい。磁性層4に含まれる磁性粉は、例えば、ε酸化鉄を含有するナノ粒子(ε酸化鉄粒子)、六方晶フェライトを含有するナノ粒子(六方晶フェライト粒子)、Co含有スピネルフェライトを含有するナノ粒子(コバルトフェライト)等により構成される。
【0019】
非磁性層3は、非磁性粉及び結着剤を含む。非磁性層3は、必要に応じて、電動性粒子、潤滑剤、硬化剤、防錆材などの添加剤を含んでいてもよい。
【0020】
バック層5は、非磁性粉及び結着剤を含む。バック層5は、必要に応じて潤滑剤、硬化剤及び帯電防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0021】
磁気テープ1の平均厚み(平均全厚)の上限値は、例えば、5.6μm以下、5.0μm以下、4.4μm以下などとされる。磁気テープ1の平均厚みが5.6μm以下であると、カートリッジ21内に記録できる記録容量を一般的な磁気テープ1よりも高めることができる。
【0022】
図2に示すように、磁性層4は、データが書き込まれる長さ方向(X'軸方向)に長い複数のデータバンドd(データバンドd0~d3)と、サーボパターン7が書き込まれる長さ方向に長い複数のサーボバンドs(サーボバンドs0~s4)とを有している。サーボバンドsは、幅方向(Y'軸方向)で各データバンドdを挟み込む位置に配置される。
【0023】
図2に示す例では、データバンドdの本数が4本とされ、サーボバンドsの本数が5本とされた場合の一例が示されている。なお、データバンドdの本数、サーボバンドsの本数は、適宜変更することができる。
【0024】
データバンドdは、長さ方向に長く、幅方向に整列された複数の記録トラック6を含む。データは、この記録トラック6に沿って、記録トラック6内に記録される。データバンドdに記録されるデータにおける長さ方向の1ビット長は、例えば、48nm以下とされる。サーボバンドsは、サーボパターン記録装置100(
図3参照)によって記録されるサーボパターン7を含む。
【0025】
ここで、LTO規格の磁気テープ1は、世代ごとに記録トラック数が増加して記録容量が飛躍的に向上している。一例を挙げると、初代のLTO-1が384本であった記録トラック数が、LTO-2~LTO8ではそれぞれ、512本、704本、896本、1280本、2176本、3584本及び6656本となっている。データの記録容量についても同様に、LTO-1では100GB(ギガバイト)であったのが、LTO-2~LTO-8ではそれぞれ、200GB、400GB、800GB、1.5TB(テラバイト)、2.5TB、6.0TB及び12TBとなっている。
【0026】
本実施形態では、記録トラック6の本数や記録容量は、特に限定されず、適宜変更可能である。但し、本技術は、例えば、記録トラック6の本数や記録容量が多く(例えば、6656本以上、12TB以上:LTO8以降)、厳密に正確にサーボパターン7を記録する必要がある磁気テープ1に適用されると有利である。
【0027】
[サーボパターン記録装置]
次に、磁気テープ1のサーボバンドsに対してサーボパターン7を記録するサーボパターン記録装置100について説明する。
図3は、サーボパターン記録装置100を示す模式図である。
【0028】
図3に示すように、サーボパターン記録装置100は、磁気テープ1の搬送方向の上流側から順番に、送り出しローラ11、消磁部12、サーボライトヘッド13、サーボリードヘッド14及び巻き取りローラ15を備えている。
【0029】
送り出しローラ11は、ロール状の磁気テープ1を回転可能に支持することが可能とされている。送り出しローラ11は、モータなどの駆動源の駆動に応じて回転され、回転に応じて磁気テープ1を下流側に向けて送り出す。
【0030】
巻き取りローラ15は、ロール状の磁気テープ1を回転可能に支持することが可能とされている。巻き取りローラ15は、モータなどの駆動源の駆動に応じて送り出しローラ11と同調して回転し、磁気テープ1を回転に応じて巻き取っていく。
【0031】
送り出しローラ11及び巻き取りローラ15は、搬送路内において磁気テープ1を一定の速度で移動させることが可能とされている。
【0032】
サーボライトヘッド13は、例えば、磁気テープ1の上方側(磁性層4側)に配置される。サーボライトヘッド13は、矩形波のパルス信号に応じて所定のタイミングで磁界を発生し、磁気テープ1が有する磁性層4の一部に対して磁場を印加する。
【0033】
これにより、サーボライトヘッド13は、磁性層4の一部を磁化させて磁性層4にサーボパターン7を記録する。サーボライトヘッド13は、サーボライトヘッド13の下側を磁気テープ1が通過するときに、5つのサーボバンドs0~s4に対してそれぞれサーボパターン7を記録することが可能とされている。
【0034】
消磁部12は、例えば、サーボライトヘッド13よりも上流側において、磁気テープ1の下側(基材2側)に配置される。消磁部12は、永久磁石により構成される。永久磁石は、サーボライトヘッド13によってサーボパターン7が記録される前に、直流磁界によって磁性層4の全体に対して磁場を印加して、磁性層4の全体を消磁する。
【0035】
サーボリードヘッド14は、サーボライトヘッド13よりも下流側において、磁気テープ1の上側(磁性層4側)に配置される。サーボリードヘッド14は、磁気テープ1に記録されたサーボパターン7から発生する磁界をMR素子(MR:Magneto Resistive)、GMR素子(GMR:Giant Magneto Resistive)、TMR素子(TMR:Tunnel Magneto Resistive)、インダクティブヘッドなどにより読み取ることで、サーボ信号を再生可能に構成されている。サーボリードヘッド14によって読み取られたサーボ信号の再生波形は、サーボパターン7が正確に記録されたかどうかの確認に用いられる。
【0036】
なお、図示は省略しているが、サーボパターン記録装置100は、サーボパターン記録装置100の各部を統括的に制御する制御装置を備えている。
【0037】
制御装置は、例えば、制御部、記憶部、通信部などを含む。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等により構成されており、記憶部に記憶されたプログラムに従い、サーボパターン記録装置100の各部を統括的に制御する。
【0038】
記憶部は、各種のデータや各種のプログラムが記録される不揮発性のメモリと、制御部の作業領域として用いられる揮発性のメモリとを含む。上記各種のプログラムは、光ディスク、半導体メモリ等の可搬性の記録媒体から読み取られてもよいし、ネットワーク上のサーバ装置からダウンロードされてもよい。通信部は、例えば、サーバ装置等の他の装置との間で互いに通信可能に構成されている。
【0039】
ここで、本実施形態においては、特に、サーボライトヘッド13に特徴を有している。このサーボライトヘッド13の説明の前に、本技術の基本的な考え方について触れておく。
【0040】
データバンドd内の記録トラック6に対する位置合わせは、サーボバンドs内のサーボパターン7に基づいて行われる。従って、記録トラック数が増加すると、これに伴ってサーボパターン7の記録の精度を向上させる必要がある。記録トラック数については、LTO8では、6656本の記録トラック6を用意する必要があり、また、LTO9以降においては、記録トラック数はさらに増加することが予想される。従って、このような場合、厳密に正確に(例えば、ナノオーダで)サーボパターン7を記録することが要求される。
【0041】
一方、一般的なサーボライトヘッドの場合、サーボライトヘッドと磁気テープ1との間の摩擦が原因で、サーボパターン7の記録の精度が低くなってしまう場合がある。本発明者らが、一般的なサーボライトヘッドによって書き込まれたサーボパターン7の再生波形を実際に周波数解析したところ、特定の周波数領域において摩擦を原因とした誤差があることが確認された。
【0042】
記録トラック数が多くなると、このような摩擦を原因とした誤差も排除する必要がある。このため、本実施形態では、サーボライトヘッド13において磁気テープ1に対して摺動する箇所(後述の対向部21、記録面22)の形状などを工夫することによって、摩擦による影響を低減して、サーボパターン7の記録の精度を向上させることとしている。
【0043】
なお、本技術は、記録トラック6の本数が多い(例えば、6656本以上:LTO8以降)磁気テープ1に対するサーボパターン7の記録に適用されると有利であるが、記録トラック数が少ない(例えば、6656本未満)磁気テープ1に対するサーボパターン7の記録についても勿論適用可能である。
【0044】
(サーボライトヘッド)
次に、サーボライトヘッド13の具体的な構成について詳細に説明する。
図4は、サーボライトヘッド13を磁気テープ1側から見た斜視図である。
図5は、サーボライトヘッド13を磁気テープ1側から見た平面図である。
【0045】
また、
図6は、
図5に示すA-A'間の断面図である。
図7は、サーボライトヘッド13を磁気テープ1側から見た部分拡大図である。
図8は、サーボライトヘッド13の上部を側方から見た模式的な部分拡大図である。また、
図9は、サーボライトヘッド13に設けられた磁気ギャップ26を示す模式図である。
【0046】
なお、本明細書中において説明される各図においては、サーボライトヘッド13(ヘッドブロック20、ダミー70)を基準とした直交座標系をXYZ座標系により表すこととする。
【0047】
サーボライトヘッド13において、長さ方向(Y軸方向)は、磁気テープ1の幅方向(Y'軸方向)に対応し、幅方向(X軸方向)は、磁気テープ1の長さ方向(X'軸方向)及び磁気テープ1の走行方向に対応する。また、サーボライトヘッド13において、高さ方向(Z軸方向)は、磁気テープ1の厚さ方向(Z'軸方向)に対応する。
【0048】
これらの図に示すように、サーボライトヘッド13は、ヘッドブロック20と、シールドケース50と、複数のコイル60とを備えている。
【0049】
シールドケース50は、サーボライトヘッド13が有するコイル60から発生する磁界が外部の他の部品に悪影響を与えないように、コイル60からの磁界をシールドする。また、シールドケース50は、外部の他の部品から発生する磁界がコイル60に悪影響を与えないように、外部からの磁界をシールドする。
【0050】
シールドケース50は、長さ方向(Y軸方向)に長く、幅方向(X軸方向)に短く、高さ方向(Z軸方向)に高い、内部が中空の直方体形状を有している(特に、
図4、
図5参照)。本実施形態では、シールドケース50は、長さLs(Y軸方向)が、38mmとされ、幅Ws(X軸方向)が、6.4mmとされ、高さHs(Z軸方向)が、30mmとされている。なお、本明細書において挙げられる、各部材の具体的な寸法や、部材の数などは、単なる一例に過ぎず、適宜変更することができる。
【0051】
シールドケース50の上部には、ヘッドブロック20をシールドケース50から露出させるための開口51が設けられている。また、シールドケース50の下部には、コイル60と繋がる導線61をシールドケース50の外部に引き出すための開口が設けられている。
【0052】
ヘッドブロック20は、長さ方向(Y軸方向)に長く形成されており、また、長さ方向から見て、上部(磁気テープ1側)が湾曲した逆U字状(部分的に筒状)に形成されている(特に、
図5~
図7を参照)。本実施形態では、ヘッドブロック20は、長さLh(Y軸方向)が、24mmとされ、幅Wh(X軸方向)が、3.2mmとされ、高さHh(Z軸方向)が、3.8mmとされている。
【0053】
ヘッドブロック20の上部において、幅方向(X軸方向)の中央近傍には、長さ方向(Y軸方向)に沿って、磁気テープ1に対向する対向部21が設けられている。この対向部21は、ヘッドブロック20の上部において他の部分よりも上方(磁気テープ1側)に一段高く突出するようにヘッドブロック20に設けられている。
【0054】
本実施形態では、対向部21は、長さLc(Y軸方向)が、24mmとされ、幅Wc(X軸方向)が、1mmとされ、高さHc(Z軸方向)が、0.1mmとされている。
【0055】
ヘッドブロック20の上部において、幅方向で対向部21を挟み込む位置には、水平面に対して相対する方向に傾斜する2つのテーパ面25が設けられている。テーパ面25が水平面に対して傾斜する角度φは、本実施形態では、25°とされている。
【0056】
対向部21の表面は、平坦面とされている。この対向部21の表面を本明細書中において、記録面22と呼ぶ。この記録面22は、走行する磁気テープ1に対向して、記録面22に設けられた磁気ギャップ26により磁気テープ1に対してサーボパターン7を記録する。
【0057】
本実施形態では、サーボライトヘッド13と磁気テープ1との間の摩擦を低減させるために、記録面22の形状(対向部21の形状)を通常の形状とは異ならせている。本実施形態では、この記録面22の形状(対向部21の形状)により、記録面22の一部(第1の領域23)に対して磁気テープ1を接触させ、記録面22の他の部分(第2の領域24)について磁気テープ1を接触させないようにすることが可能とされている。
【0058】
なお、記録面22は、磁気テープ1に対して摺動する摺動面となるが、本実施形態では、記録面22に対して磁気テープ1が部分的に離れるので、記録面22の全てが摺動面となるわけではない。また、ヘッドブロック20の上部において、記録面22以外の部分、例えば、テーパ面25等は、摩擦低減のため、磁気テープ1には接触しないように構成されている。
【0059】
記録面22には、長さ方向(Y軸方向)に沿って、所定の間隔で複数組の磁気ギャップ26が設けられている(特に、
図9参照)。1組の磁気ギャップ26は、所定のアジマス角ψを持って互いに相対する方向に傾斜するように配置された2つの磁気ギャップ26(「/」及び(\))によって構成されている。アジマス角ψは、例えば、12°±3°とされる。また、磁気ギャップ26の長さPL(Y軸方向)は、例えば、96μm±3μmとされ、磁気ギャップ26自体の幅であるギャップ幅(X軸方向)は、例えば、0.9μmとされる。
【0060】
磁気ギャップ26の組の数は、磁気テープ1におけるサーボバンドsの数に対応しており、本実施形態では、磁気ギャップ26の組の数は、5組とされている。また、この5組の磁気ギャップ26において、互いに隣接する2組の磁気ギャップ26の長さ方向(Y軸方向)での間隔PPは、互いに隣接する2本のサーボバンドsの間隔に対応しており、この間隔PPは、例えば、2858.8μm±4.6μmとされる。
【0061】
対向部21の上部において、長さ方向で互いに隣接する磁気ギャップ26の間の領域(4箇所)にはそれぞれ切欠き部30が設けられている(特に、
図7参照)。この4組の切欠き部30は、それぞれ、第1の切欠き31と、第2の切欠き32との2つの切欠きを有している。
【0062】
第1の切欠き31は、対向部21の上部において、幅方向(X軸方向)における一方の端部側が切欠かれるようにして形成される。また、第2の切欠き32は、対向部21の上部において、幅方向における他方の端部側が切欠かれるようにして形成される。第1の切欠き31と、第2の切欠き32とは、対向部21(記録面22)における幅方向での中央線を基準として線対称に形成されている。
【0063】
本実施形態において、第1の切欠き31及び第2の切欠き32は、円弧状に形成されている。この円弧の曲率半径Rは、2.2mmとされている。また、切欠き部30の深さは、5μm~7μmとされている。
【0064】
対向部21の上部に切欠き部30が形成されることによって、記録面22に対して第1の領域23と、第2の領域24が形成される。第1の領域23は、幅方向(X軸方向)に第1の幅W1で形成され、幅方向に直交する長さ方向(Y軸方向)で磁気ギャップ26が設けられる位置に対応する領域である。第2の領域24は、第1の幅W1よりも狭い第2の幅W2で形成され、長さ方向で磁気ギャップ26が設けられない位置に対応する領域である。第2の領域24は、記録面22が幅方向で所定形状に切り欠かれるようにして形成されている。
【0065】
第1の領域23と、第2の領域24とは、長さ方向(Y軸方向)方向に沿って交互に配置されている。第1の領域23の数は、磁気ギャップ26の組数に対応しており、本実施形態では、5つとされている。また、第2の領域24の数は、本実施形態では、4つとされている。なお、本実施形態では、第2の領域24は、隣接する2組の磁気ギャップ26の間の領域とされているが、第2の領域24は、長さ方向(Y軸方向)で最も端の磁気ギャップ26のさらに外側の領域に設定されていてもよい。
【0066】
図7に示すように、5つの第1の領域23のうち、記録面22の長さ方向(Y軸方向)の両端に位置する2つの第1の領域23には、凹部34がそれぞれ設けられる。凹部34は、記録面22の幅方向(X軸方向)に長辺を有する平面形状が矩形の有底の凹所であり、磁気ギャップ26よりも記録面22の長手方向の両端側に位置している。
【0067】
特に、凹部34は、記録面22に磁気テープ1が接触した際、磁気テープ1のエッジ側の領域に被覆されることで外気と遮断される位置に設けられる。これにより、磁気テープ1の走行時に凹所34の内部に負圧が形成されるため、外気との圧力差を利用して磁気テープ1のエッジ部と記録面22との接触状態を維持し、凹所34に隣接する磁気ギャップ26による磁気テープ1へのサーボパターンの記録を安定して行うことが可能となる。
【0068】
凹部34の形状は上述の例に限られず、円形、楕円形等の任意の形状に形成されてもよい。また、凹部34は単独で形成される場合に限られず、例えばスロット形状の複数の凹部の配列体などで構成されてもよい。
【0069】
記録面22における第1の領域23は、中央に1組の磁気ギャップ26が設けられており、幅W1(第1の幅:X軸方向)が1mmとされ、長さL1(Y軸方向)が0.5mmとされている。第1の領域23の幅W1(第1の幅)は、対向部21の幅Wcと同じである。
【0070】
第1の領域23の長さL1ついては、磁気ギャップ26の長さPL(96μm±3μm)に対して余白の長さ(+α)が設定されて決定されている。この余白の長さは、例えば、磁気ギャップ26の長さの2倍から10倍程度とされる。なお、本実施形態では、この余白の長さは、磁気ギャップ26の長さの約4倍とされている。
【0071】
記録面22における第2の領域24は、切欠き部30によって第1の領域23の幅(第1の幅W1)よりもその幅(第2の幅W2)が狭められている。第2の領域24の幅(第2の幅W2)は、切欠き部30の形状が円弧状である関係で、第2の領域24の中央(長さ方向)に向けて徐々に細くなり、その中央で最も細くなっている。本実施形態では、第2の領域24における長さ方向中央の最も細くなった箇所の幅W2mが、0.3mmとされている。
【0072】
本実施形態では、第2の領域24において最も幅が狭い箇所に対応する幅W2m(0.3mm)は、第1の領域23の幅(第1の幅W1:1mm)の0.3倍とされている。なお、円弧の曲率半径R(2.2mm)は、第1の領域23の幅(第1の幅W1:1mm)の2.2倍とされている。
【0073】
第2の領域24の長さL2(Y軸方向)は、1.9mmとされている。第2の領域24の長さL2については、例えば、第1の領域23の長さL1の2倍から10倍程度とされる。なお、本実施形態では、この第2の領域24の長さL2は、第1の領域23の長さL1の約4倍とされている。
【0074】
また、第2の領域24には、
図7に示すように、複数の溝部33が設けられている。複数の溝部33は、第2の領域24において、記録面22の幅方向(X軸方向)の一端からその他端に架けて記録面22を横切るように形成される。本実施形態において複数の溝部33は、記録面22の長さ方向(Y軸方向)に間隔をおいて配列されるとともに、記録面22の幅方向(X軸方向)に平行に直線的に形成される。
【0075】
複数の溝部33は、後述するように、磁気テープ1の走行時に、第2の領域24を流れる空気の量を増やして磁気テープ1を第2の領域24から効率よく浮上させるためのものである。このため、記録面22の長手方向(Y軸方向)に沿った複数の溝部33の幅寸法は、それらの深さ寸法よりも大きく形成されるのが好ましい。
【0076】
図11に、溝部33の構成例を示す。
図11において上側の溝部331は、平坦な底部を有する角溝G1で形成される。隣接する2つの角溝G1の間には平坦な頂部T1が形成される。この例では、角溝G1の深さは約1μm、角溝G1の底部の溝幅は約5μm、頂部T1の幅は約5μm、角溝G1の配列ピッチは約10μmとされる。
【0077】
一方、
図11において下側の溝部332は、平坦な底部を有する角溝G2で形成される。隣接する2つの角溝G2の間には平坦な頂部T2が形成される。この例では、溝部の底部の幅寸法が、頂部の幅寸法よりも大きい点で
図10の溝部331と異なり、この例では、角溝G1の深さは約1μm、角溝G2の底部の溝幅は約10μm、頂部T2の幅は約5μm、角溝G2の配列ピッチは約15μmとされる。
【0078】
本実施形態のサーボライトヘッド13においては、複数の溝部33として、
図10において下側の構成例に係る溝部332が採用される。
なお、溝部33の形状は上記の例に限られず、V溝、U溝などの各種断面形状の溝部が採用可能である。また、溝部33の配列ピッチは一定でなくてもよい。また、溝部33の形成方向は記録面22の幅方向(X軸方向)に対して若干傾斜していてもよいし、異なる方向に傾斜した溝を組み合わせてもよい。さらに溝部33の深さや幅も一様である場合に限られない。
【0079】
複数の溝部33は、典型的には、第2の領域24の全域にわたって形成される。溝部33の形成方法は特に限定されず、例えばドライエッチング等の表面加工技術が用いられるが、これ以外にも、レーザー加工法や機械加工法等が用いられてもよい。
【0080】
ヘッドブロック20は、ヘッドブロック20の核となるコア部40と、磁気ギャップ26が形成されるベースとなるベース部45と、対向部21の表面を構成する薄膜部46とを備えている(特に、
図6、
図8参照)。薄膜部46は、対向部21において第1の領域23に対応する位置に設けられた金属磁性膜47(
図8)と、第2の領域24に対応する位置に設けられた非磁性硬質膜48(
図6)とを含む。なお、上述の記録面22は、実際には、金属磁性膜47及び非磁性硬質膜48の表面(薄膜部46の表面)に対応する。
【0081】
コア部40は、長さ方向(Y軸方向)に長く形成されており、また、長さ方向から見て、上部が湾曲した逆U字状(部分的に筒状:後述の第1のコア41に対応する箇所)に形成されている。本実施形態では、コア部40は、長さLh(Y軸方向)が、24mmとされ、幅Wh(X軸方向)が、3.2mmとされ、高さHh(Z軸方向)が、3.8mmとされている(上述のヘッドブロック20の寸法と同じ)。
【0082】
コア部40の上部における幅方向(X軸方向)の中央近傍には、長さ方向(Y軸方向)に沿って上下方向に貫通する開口49が形成されている。ベース部45は、コア部40の上部に形成された開口49を埋めるように、この開口49に配置されている。
【0083】
ベース部45は、長さ方向(Y軸方向)に長く、幅方向(X軸方向)及び厚さ方向(Z軸方向)に短い形状を有している。本実施形態では、ベース部45は、長さ(Y軸方向)が、24mmとされ、幅Wb(X軸方向)が、0.33mmとされ、高さHb(Z軸方向)が、0.4mmとされている。なお、ベース部45の幅Wbは、対向部21の幅Wcの約1/3である。
【0084】
ベース部45の材料としては、ヘッドブロック20製造時において各種の接合のためや、金属磁性膜47の磁気特性確保のために熱処理が施されることを考慮して、高融点である硬質の非磁性材料(各種ガラス材料、各種セラミック材料)が用いられる。
【0085】
金属磁性膜47は、対向部21において第1の領域23(全領域)に対応する領域に設けられている。金属磁性膜47は、例えば、Fe系微結晶、NiFe、あるいは、これらに類似した高飽和磁束密度を有するその他の軟磁性合金によって構成されている。また、金属磁性膜47の厚さは、数μmとされている。
【0086】
金属磁性膜47には、磁気ギャップ26に対応する位置に、磁気ギャップ26に対応する形状の開口27が設けられている。この開口27は、金属磁性膜47を上下方向に貫通するように金属磁性膜47に設けられている。この開口27には、非磁性材料が埋め込まれている。この非磁性材料の上面は、金属磁性膜47の表面(記録面22)と同じ高さとなっており、非磁性材料の下面は、ベース部45の上面と接続されている。金属磁性膜47に埋め込まれたこの非磁性材料により、磁気ギャップ26が形成される。
【0087】
コイル60によりコア部40(第1のコア41)が励磁されると、金属磁性膜47に埋め込まれた非磁性材料(磁気ギャップ26)が、金属磁性膜47を通過しようとする磁束を妨げることにより、磁気ギャップ26の位置で漏れ磁界が発生する。この漏れ磁界によってサーボバンドsに対してサーボパターン7を書き込むことが可能とされている。
【0088】
非磁性硬質膜48は、対向部21において第2の領域24(全領域)に対応する領域に設けられている。また、非磁性硬質膜48は、対向部21において、長さ方向(Y軸方向)で最も端の第1の領域23のさらに外側の領域にも設けられている。非磁性硬質膜48は、例えば、SiO2膜で構成されており、金属磁性膜47と同じ厚みで形成されている。
【0089】
なお、金属磁性膜47の表面及び非磁性硬質膜48の表面(つまり、記録面22)の高さは同じとされており、これらの表面は平坦面とされている。溝部33は、非磁性硬質膜48を加工することで形成される。凹部34は、金属磁性膜47を加工することで形成される。
【0090】
コア部40は、第1の領域23に対応する5つの第1のコア41と、第2の領域24に対応する4つの第2のコア42と、長さ方向の両端側に位置する2つの端部コア43とを含む(特に、
図7参照)。互いに隣接する2つのコア41、42、43の間には、接着層44がそれぞれ介在されており、各コア41、42、43は、接着層44を介して相互に接続される。
【0091】
第1のコア41は、磁性体材料により構成されており、一方で、第2のコア42及び端部コア43は、非磁性体材料により構成されている。なお、第1のコア41の間に、非磁性体材料により構成される第2のコア42が介在されることで、個々の第1のコア41を磁気的に分離することが可能とされている。
【0092】
第1のコア41を構成する磁性体材料としては、例えば、単結晶フェライトや多結晶フェライトなどの材料が用いられる。フェライト材料としては、例えば、Mn-Zn系フェライト等が挙げられる。
【0093】
第2のコア42、端部コア43を構成する非磁性体材料としては、各種の接合のためや、金属磁性膜47の磁気特性確保のために熱処理が施されることを考慮して、熱膨張率が第1のコア41及び金属磁性膜47の熱膨張率と同等の材料が用いられる。例えば、非磁性体材料としては、BaO-TiO2セラミックス、CaO-TnO2セラミックス、熱膨張率がフェライト材料に近いガラスセラミックス等が用いられる。
【0094】
第2のコア42及び端部コア43は、長手方向から見て、下部が開放された逆U状に形成されている(特に、
図6参照)。一方、第1のコア41は、その上部は第2コア及び端部コア43と同じ形状とされているものの、下部が開放されておらず、全体として筒状(O字状)に形成されている点で、第2のコア42及び端部コア43とは形状が異なっている。
【0095】
5つの第1のコア41の下部には、それぞれ個別の導線61がコイル状に巻回されてそれぞれ個別のコイル60が形成されている。
【0096】
5つのコイル60に対しては、それぞれ個別のパルス信号が供給可能とされており、5つの第1のコア41を個別に励磁することが可能とされている。これにより、5つの第1のコア41は、それぞれ、サーボバンドsに対して異なるタイミングでサーボパターン7を書き込むことが可能とされている。
【0097】
なお、第1のコア41において対向部21の表面を構成する薄膜部46は、金属磁性膜47であり、一方で、第2のコア42及び端部コア43において対向部21の表面を構成する薄膜部46は、非磁性硬質膜48である。
【0098】
サーボライトヘッド13は、図示しないヘッド移動機構により、高さ方向(Z軸方向)に移動可能とされていてもよい。この場合、ヘッドブロック20の記録面22を磁気テープ1側に突き出すことが可能とされ、磁気テープ1側への侵入距離Pや、磁気テープ1に対するラップ角θを調整することが可能となる。
【0099】
[記録面と磁気テープとの間の接触状態の評価]
次に、記録面22と、走行する磁気テープ1との間の接触状態の評価について説明する。この評価においては、まず、ヘッドブロック20の上部を模した複数種類のダミー70が用意され、次に、これらのダミー70がそれぞれ評価装置200にセットされて接触状態の評価が行われた。
【0100】
図11は、各種のダミー70の記録面22(22a,22b)を示す模式図である。
図12は、ダミー70における長さ方向での一部を示す斜視図である。
【0101】
ここで、ダミー70の形状は、実際のヘッドブロック20の上部の形状と同じであるが、ダミー70は、全ての部分がガラス材料で構成されている点で実際のヘッドブロック20の上部とは異なっている。
【0102】
ダミー70の材料としてガラス材料が用いられているのは、光の干渉縞によって記録面22と磁気テープ1との間の接触状態を評価するためである。なお、ダミー70を含む各図においては、磁気ギャップ26の位置を示すために磁気ギャップ26が描かれているが、ダミー70においては、実際には磁気ギャップ26は設けられていない。
【0103】
図11においては、2つのダミー70(70a,70b)が示されている。この2つのダミー70については、効率よく接触状態の評価を行うために、それぞれ、異なる2種類の記録面22(22a,22b)が用意されている。
【0104】
図11における上側のダミー70aは、
図7等に示す本実施形態のサーマルヘッド13の記録面22と同一構造の記録面22aを有している。ダミー70aには、溝部33として
図10における上側の溝部331が採用されたダミーと、
図10における下側の溝部332が採用されたダミーを準備した。一方、
図11における下側のダミー70bは、溝部33および凹部34に相当する構造体が形成されていない記録面22bを有している。
図12はこの記録面22bを有するダミー70bの斜視図に相当する。
【0105】
図13は、記録面22と、走行する磁気テープ1との間の接触状態を評価するための評価装置200を示す模式図である。
【0106】
図13に示すように、評価装置200は、光源81と、ビームスプリッタ82と、撮像部83と、増幅部84と、制御装置85と、表示部86と、入力部87とを備えている。
【0107】
光源81は、特定の波長領域(例えば、赤)の単色光を出射可能に構成されている。ビームスプリッタ82は、光源81からの出射光を透過させつつ、ダミー70および磁気テープ1によって反射された反射光を撮像部83側に導く。
【0108】
撮像部83は、ダミー70および磁気テープ1の反射光による画像を撮像する。増幅部84は、撮像部83により撮像された画像の信号を増幅して制御装置85へと出力する。
【0109】
制御装置85は、例えば、制御部、記憶部、通信部などを含む。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等により構成されており、記憶部に記憶されたプログラムに従い、評価装置200の各部を統括的に制御する。
【0110】
記憶部は、各種のデータや各種のプログラムが記録される不揮発性のメモリと、制御部の作業領域として用いられる揮発性のメモリとを含む。上記各種のプログラムは、光ディスク、半導体メモリ等の可搬性の記録媒体から読み取られてもよいし、ネットワーク上のサーバ装置からダウンロードされてもよい。通信部は、例えば、サーバ装置等の他の装置との間で互いに通信可能に構成されている。
【0111】
表示部86は、例えば、液晶ディスプレイや、EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等により構成され、制御装置85からの指示に応じて、撮像部83により撮像された画像をディスプレイ上に表示させる。入力部87は、例えば、キーボードや接触センサ等であり、ユーザからの各種の指示を入力して制御装置87へと出力する。
【0112】
ここで、光の動きについて説明すると、まず、光源81から出射された光は、ビームスプリッタ82を通過して、ダミー70の背面側(記録面22とは反対側)からダミー70内に入射される。ダミー70内に入射された光は、一部が記録面22により反射される。また、ダミー70内に入射された光は、他の一部が記録面22を透過して、磁気テープ1により反射される。記録面22及び磁気テープ1により反射された光は、ビームスプリッタ82により撮像部83側に導かれ、撮像部83により画像が撮像される。
【0113】
記録面22と、磁気テープ1との間に距離があると、この距離に応じて記録面22による反射光と磁気テープ1による反射光とが強め合ったり弱め合ったりするので、撮像部83により撮像される画像において干渉縞となって現れることになる。
【0114】
図14は、評価装置200において、ダミー70と、磁気テープ1との関係を示す拡大図である。
図14の左側には、磁気テープ1側から評価装置200を見たときの様子が示されている。また、
図14の右側には、ダミー70及び磁気テープ1を撮像した画像の様子が示されている。
図15は、
図14に示されるA-A'間の断面図である。
【0115】
図14及び
図15に示すように、評価装置200は、
図13に示す各部の他に、磁気テープ1をガイドするためのガイド88を備えている。なお、図示は省略しているが、評価装置200は、磁気テープ1を走行させるための駆動装置や、ダミー70を磁気テープ1側に移動させるためのダミー移動機構なども備えている。
【0116】
2つのガイド88は、ダミー70の幅方向(X軸方向:磁気テープ1の走行方向)で、ダミー70を挟み込む位置にダミー70と所定の距離を開けて配置されている。ダミー70とガイド88との間の距離Dは、本実施形態では、19.5mmとされている。
【0117】
ダミー70は、ダミー移動機構によりダミー70の厚さ方向(Z軸方向)へ移動可能とされており、磁気テープ1側に突き出すことが可能とされている。なお、ダミー70が磁気テープ1側に突き出されて磁気テープ1側に侵入する距離を、以降では、侵入距離Pと呼ぶ。侵入距離Pは、磁気テープ1が平坦とされて、この平坦な磁気テープ1にダミー70が接触しているときのダミー70の位置が基準となる(侵入距離P=0)。
【0118】
また、ダミー70の長さ方向(Y軸方向:磁気テープ1の幅方向)から見て、ダミー70の記録面22と、磁気テープ1との間の成す角を、以降では、ラップ角θと呼ぶ(磁気テープ1において記録面22に対向する部分ではなく、磁気テープ1の走行方向で、記録面22に対向する部分を挟み込む両側の部分)。なお、侵入距離Pが0の場合、ラップ角θは0°である。
【0119】
なお、磁気テープ1を走行させる速度Vは、本実施形態では、10m/sである。
【0120】
(溝部の評価)
まず、記録面22における第2の領域22に形成した溝部33について評価した。
【0121】
図16は、評価装置200の撮像部83により撮像されたダミー70aの画像を示す。
図16において上側は、
図10の上側に示した溝部33(331)を有するダミー70aの画像であり、
図16において下側は、
図10の下側に示した溝部33(332)を有するダミー70aの画像である。いずれのダミー70aについても、侵入距離Pを1mm、X軸方向における記録面22に対する磁気テープ1の摺動幅(以下単に、摺動幅ともいう)を0.8mmとした。
【0122】
図16の上側および下側のいずれにおいても、第1の領域23に対応する箇所は、略全域において黒となっている。これは、磁気テープ1が第1の領域23の略全域において平坦に接触していることを表している。
【0123】
一方、第2の領域24に対応する箇所を比較すると、
図16の上側の図よりもその下側の図の方が、干渉縞の形成領域が広い。特に、第2の領域24の長手方向(Y軸方向)の中央部に明暗のピッチが狭い明瞭な干渉縞が確認された。これは、溝幅の広い溝部332を有するダミー70a(
図16下)の方が、磁気テープ1が第2の領域24からの浮上量が高いことを示している。
【0124】
なお、干渉縞は、いわば等高線を示している。第2の領域24における干渉縞について、具体的に説明すると、磁気テープ1は、第2の領域24における長さ方向(Y軸方向)の中心部分において記録面22から最も離れており、第2の領域24における長さ方向の両端側に近づくに従って徐々に記録面22に近づいている。
【0125】
なお、磁気テープ1が記録面22の第2の領域24に対して浮くのは、以下の理由に基づくと考えられる。まず、磁気テープ1が走行すると磁気テープ1に付着した空気層により走行方向に向けて微量な気流が発生する。対向部21には、第2の領域24を形成するための切欠き部30が設けられているが、この切欠き部30のうちテープ走行方向の上流側に位置する切欠き31(画像において左側)に対して、気流が流れ込む。
【0126】
テープ走行方向の上流側の切欠き31に流れ込んだ気流は、記録面22の第2の領域24と磁気テープ1との間に入り込み、記録面22の第2の領域24から磁気テープ1を浮上させる。磁気テープ1を浮上させた後、この気流は、テープ走行方向の下流側の切欠き32に流れ込んで、外部へと放出される。磁気テープ1が浮上するのは、このような理由からである。
【0127】
第2の領域24に設けられた溝部33は、第2の領域24と磁気テープ1との間に入り込む空気量を増加させる。
図16の上と下を比較すると、第2の領域24における磁気テープ1の浮上は認められるものの、溝幅が広い溝部332を採用する方が、第2の領域24を流れる空気の量が多い結果、磁気テープ1の浮上量が高いと考えられる。
【0128】
以上の考察により、以下の評価では、ダミー70aとして、溝幅の広い溝部332(
図10下)を有するダミー70aを用いて実験を行った。
【0129】
(ダミー70aとダミー70bとの比較)
続いて、溝部33(332)を有するダミー70aおよび溝部33を有しないダミー70bを用いて第2の領域24における磁気テープ1の浮上の効果を比較した。
【0130】
図17は、評価装置200の撮像部83により撮像されたダミー70a,70bの画像を示す。
図17において上側はダミー70aの画像であり、
図17において下側はダミー70bの画像である。いずれのダミー70a,70bについても、侵入距離Pを1mm、摺動幅を1mmとした。
【0131】
図17の上下の画像を比較すると、第1の領域23に対応する箇所については、略全域において黒となっている点で共通する。つまり、ダミー70a,70bのいずれについても磁気テープ1が第1の領域23に平坦に接触していることを示している。
【0132】
一方、第2の領域24に対応する箇所に着目すると、ダミー70a(
図17上)は、第2の領域24の全域から磁気テープ1が浮上しているのが確認された。
これに対して、ダミー70b(
図17下)では、第2の領域24の中央部付近にのみ干渉縞が確認された。これは、第2の領域24における磁気テープ1の浮上範囲は部分的であることを示している。
【0133】
図18は、記録面22の長手方向(Y軸方向)の一方の端部に位置する第1の領域23についての評価装置200の画像である。同図においても第1の領域23における磁気テープ1の平坦な接触が確認される。特に、この第1の領域23は磁気テープ1のエッジ側に位置しているため、走行時の気流により磁気テープ1のエッジが捲れやすい。
しかし同図に示すように、本実施形態では当該第1の領域23に凹部34が設けられているため、当該凹部34の内部と外気との間に生じる圧力差を利用して、磁気テープ1のエッジ領域を安定に第1の領域23へ接触させることができる。
【0134】
以上の結果から明らかなように、記録面22の第2の領域24に溝部33を設けることで、溝部を設けない場合と比較して、第2の領域24における磁気テープ1の浮上範囲を広げることができる。これにより、磁気ギャップ26を有する第1の領域23に磁気テープ1を安定に接触させつつ、磁気テープ1を第2の領域24とはほぼ非接触で走行させることができるため、記録面22と磁気テープ1との間の摩擦を低減することが可能となる。これにより、記録面22に対する磁気テープ1の流れをスムーズにすることができるので、サーボパターン7の記録の精度を向上させることができる。
【0135】
図19は、溝部33を有する本実施形態のサーマルヘッド13に対する摩擦係数が異なる3つの磁気テープを用いて行ったサーマルヘッド13の周波数特性を示す実験結果である。比較として、溝部33を有しないサーマルヘッド(比較例)についての実験結果も併せて示している。
ここでは、サーマルヘッド13に対する摩擦係数が0.38(同図上)、0.33(同図中央)および0.28(同図下)の磁気テープを用いた。
同図に示すように、摩擦係数が高いほど、高周波数側(4000~5000Hz)での改善が確認された。
【0136】
<第2の実施形態>
次に、本実施形態の第2の実施形態について説明する。
本実施形態では、磁気ヘッドとして、テープドライブ装置の磁気ヘッドへの適用例について説明する。
【0137】
図20は、磁気ヘッド20の概略構成図であり、a)は平面図、b)はa)の拡大図、c)はb)におけるc-c断面図、d)はb)におけるd-d断面図である。
同図a),b)において、X軸方向は磁気ヘッドの幅方向(テープ走行方向)に相当し、Y軸は磁気ヘッドの長さ方向(テープ幅方向)に相当する。
【0138】
同図b)に示すように、磁気ヘッド80は、記録用の記録再生ヘッド部が配置されるヘッド配置領域81と、その長さ方向(Y軸方向)の両端に位置する、記録再生ヘッド部が配置されていない両端領域82とを有する記録面83を備える。
【0139】
図21は、ヘッド配置領域81の更なる概略拡大図である。同図に示すように、ヘッド配置領域81には、ヘッド長手方向に、複数の記録再生ヘッド部63が間隔をおいて配置されている。記録再生ヘッド部63は、データライトヘッド部64と、データリードヘッド部65とを有する。データライトヘッド部64は、磁気ギャップで構成される。データリードヘッド部65は、磁気抵抗効果素子(MR素子)で構成される。
【0140】
ヘッド配置領域81は、記録再生ヘッド部63が設けられる第1の領域101と、記録再生ヘッド部63が設けられてない第2の領域102とを有する。本実施形態では、第2の領域102に、ヘッド幅方向(X軸方向)の両端にわたって複数の溝部111が設けられる。溝部111の形状は、上述の第1の実施形態における溝部33(
図10)と同様に形成される。
【0141】
複数の溝部111は、ヘッド幅方向(X軸方向)に平行に直線的に形成される。溝部111は、第2の領域102においてヘッド長さ方向(Y軸方向)に間隔をおいて配列されている。溝部111の配列ピッチは、記録再生ヘッド部63が32個配置される32ch構造の磁気ヘッドにおいては、例えば、83μmである。
【0142】
以上のように構成される本実施形態の磁気ヘッド80においては、記録再生ヘッド部63が配置されていない第2の領域102に複数の溝部が配置されているため、記録面83上を走行する磁気テープの第2の領域102に対する摩擦を低減することができる。これにより、データ信号の記録の精度を向上させることができる。また、データ信号の再生の精度をも向上させることができる。
【符号の説明】
【0143】
1…磁気テープ
13…サーボライトヘッド
21…対向部
22…記録面
23…第1の領域
24…第2の領域
26…磁気ギャップ
30…切欠き部
33…溝部
70…ダミー
100…サーボパターン記録装置
200…評価装置