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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157943
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】アルコール性飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20221006BHJP
【FI】
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062491
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LH12
4B115LP02
(57)【要約】
【課題】 熟成蒸留酒は、水などで希釈して飲用されることが多いところ、希釈により失われるコクや香味を維持・改善する方法が望まれている。一方、水溶性食物繊維は、そのようなアルコール性飲料にコク付与目的で利用されることがある。しかし、水溶性食物繊維は、コク付与機能のほかにマスキング機能を兼ね備えることから、対象となる食品によっては、むしろその食品自体の好ましい香味をマスキングしてしまうという問題がある。本発明の目的は、特に、水溶性食物繊維を含有するアルコール性飲料において、当該飲料が本来有すべき香味を維持又は増強させる手段を提供することにある。
【解決手段】 ウイスキーなど比較的香味の強い熟成蒸留酒が希釈されて得られるアルコール性飲料、特に水溶性食物繊維を含むアルコール性飲料において、希少糖含有シロップ、D-プシコース、D-タガトース及びD-アロースから選ばれる一以上を添加することにより、上記課題は達成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熟成蒸留酒、水溶性食物繊維、希少糖及び水を含有するアルコール性飲料であって、水溶性食物繊維が、難消化性デキストリン、ポリデキストロース及びイヌリンから選ばれる一以上であり、希少糖が、希少糖含有シロップ、D-プシコース、D-タガトース及びD-アロースから選ばれる一以上である、アルコール性飲料。
【請求項2】
熟成蒸留酒が、ブランデー、ラム酒、ウイスキー及び焼酎から選ばれる一以上である、請求項1記載のアルコール性飲料。
【請求項3】
水溶性食物繊維を0.1~5.0 質量%含有する、請求項1又は2に記載のアルコール性飲料。
【請求項4】
希少糖を0.1~2.0質量%含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のアルコール性飲料。
【請求項5】
熟成蒸留酒を水で希釈する工程と、難消化性デキストリン、ポリデキストロース及びイヌリンから選ばれる一以上を0.1~5.0 質量%となるよう添加する工程と、希少糖含有シロップ、D-プシコース、D-タガトース及びD-アロースから選ばれる一以上を0.1~2.0質量%となるよう添加する工程を含む、アルコール性飲料の製造方法。
【請求項6】
希少糖含有シロップ、D-プシコース、D-タガトース及びD-アロースから選ばれる一以上を添加することにより、希釈により低減した熟成蒸留酒の香味を改善する方法。
【請求項7】
香味が、オクタン酸エチル、デカン酸エチル及びラウリン酸エチルから選ばれる一以上である、請求項6記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性食物繊維を含有するアルコール性飲料に関し、詳細には、水溶食物繊維、希少糖及び蒸留酒を含有するアルコール性飲料であって、蒸留酒由来の好ましい香味が維持又は増強されたアルコール性飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性食物繊維とは、水溶性の溶媒には容易に溶解するが、ヒトの消化酵素では消化されにくいものをいい、具体的には、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、難消化性グルカンなどが挙げられる。
【0003】
水溶性食物繊維は飲食品の原材料としてよく用いられ、その使用目的は食物繊維強化表示のほか、整腸作用や血糖上昇抑制作用などの生理機能表示が主であるが、飲食品にコクみを付与したり、異味異臭をマスキングしたりといった、生理機能以外の機能を求めて使用することもある。例えば、低糖質ビール様発泡性飲料においては、麦芽等発酵原料の使用量を抑えることからコクが低減して水っぽくなるため、これを補ってコクを付与するために水溶性食物繊維が用いられ(特許文献1)、また、焼酎をはじめとする蒸留酒を希釈したときに生じるアルコール臭をマスキングするために、難消化性デキストリンが用いられることもある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2016/163200号
【特許文献2】特開2015-019650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、水溶性食物繊維、特に難消化性デキストリンは、コクの付与機能と異味異臭のマスキング機能を兼ね備えるが、コクの付与を目的として使用したときに、対象となる食品によっては、むしろその食品自体の好ましい香味をマスキングしてしまうという問題が生じることがあった。例えば、ウォッカや焼酎の希釈液に難消化性デキストリンを添加すると不快なアルコール臭はマスキングされるが、ウォッカや焼酎は、通常、蒸留後に熟成を経ないため、希釈した時点ですでに香味や風味が少なく、難消化性デキストリンを添加しても、香味がマスキングされる事象を体感することは難しい。しかし、蒸留後に樽熟などの熟成を経たウイスキーなどの場合は、その希釈液に難消化性デキストリンを添加すると、樽香などの好ましい香味が大いにマスキングされてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、水溶性食物繊維を含有しながらも、そのアルコール性飲料が本来有すべき香味が維持又は増強された、アルコール性飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、ウイスキーなど比較的香味の強い蒸留酒が希釈されて得られるアルコール性飲料が水溶性食物繊維を含む場合において、特定の希少糖を添加することにより、その蒸留酒本来の香味が維持又は増強されることを発見し、その知見をもって本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]から構成されるものであり、第一の発明は、以下[1]~[4]に記載のアルコール性飲料である。
[1]熟成蒸留酒、水溶性食物繊維、希少糖及び水を含有するアルコール性飲料であって、水溶性食物繊維が、難消化性デキストリン、ポリデキストロース及びイヌリンから選ばれる一以上であり、希少糖が、希少糖含有シロップ、D-プシコース、D-タガトース及びD-アロースから選ばれる一以上である、アルコール性飲料。
[2]熟成蒸留酒が、ブランデー、ラム酒、ウイスキー及び焼酎から選ばれる一以上である、上記[1]記載のアルコール性飲料。
[3]水溶性食物繊維を0.1~5.0質量%含有する、上記[1]又は[2]に記載のアルコール性飲料。
[4]希少糖を0.1~2.0質量%含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載のアルコール性飲料。
【0009】
第二の発明は、以下[5]に記載のアルコール性飲料の製造方法である。
[5]熟成蒸留酒を水で希釈する工程と、難消化性デキストリン、ポリデキストロース及びイヌリンから選ばれる一以上を0.1~5.0質量%となるよう添加する工程と、希少糖含有シロップ、D-プシコース、D-タガトース及びD-アロースから選ばれる一以上を0.1~2.0質量%となるよう添加する工程を含む、アルコール性飲料の製造方法。
【0010】
第三の発明は、以下[6]及び[7]に記載のアルコール性飲料の香味改善方法である。
[6]希少糖含有シロップ、D-プシコース、D-タガトース及びD-アロースから選ばれる一以上を添加することにより、希釈により低減した熟成蒸留酒の香味を改善する方法。
[7]香味が、オクタン酸エチル、デカン酸エチル及びラウリン酸エチルから選ばれる一以上である、上記[6]記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウイスキーなどの熟成された蒸留酒を希釈して調製されたアルコール性飲料において、水溶性食物繊維を添加することによるコクみ付与や食品表示などのメリットを享受しながら、希釈されることによって失われがちな蒸留酒由来の芳醇さが維持又は増強されたアルコール性飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にいう「アルコール性飲料」とは、蒸留酒など高度アルコール液を水又は炭酸水で希釈して得られるアルコール性飲料を基本とし、消費者の嗜好に合わせて適宜、液糖、糖類、高甘味度甘味料などの甘味料、酸味料、香料、色素などの副原料を含ませたものを指す。ここで、「蒸留酒」とは、米、麦、とうもろこし、芋などの穀物類、ブドウをはじめとする果実、サトウキビなど、糖質を多く含む植物又は砂糖などを原料としてアルコール発酵により得られるアルコール含有液を蒸留・濃縮してアルコール度数が高度となるよう調整されたものをいい、具体例としては、ラム、テキーラ、メスカル、ウイスキー、ブランデー、焼酎などが挙げられる。例えば、ブランデーは、ブドウ、サクランボ、リンゴなどの果実を原料としてアルコール発酵させて得た醸造酒を蒸留したものをいい(これを原酒ともいう)、ウイスキーは、大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀類を発芽させたものを原料としてアルコール発酵した醸造酒を蒸留したものをいう(=原酒)。これら原酒の多くは、後述のとおり、オーク樽などに入れたりオークチップを浸したりして熟成され、また、場合によっては、スピリッツや香味料が添加されて、好ましい香味が付与されることとなる。
【0013】
本発明にいう「熟成」とは、上述の蒸留酒(原酒)を木樽、木製容器、又は木質素材や木質成分を入れたタンクなどの中で一定期間貯蔵され、又は香味料などが添加されて、好ましい熟成香が付与された状態をいう。蒸留酒を熟成させると、硫黄化合物等の不快臭が消失する一方、果実のような華やかな香り(熟成香)が得られる。この熟成香は、多種多様な物質により複雑に構成され、具体的にどの物質に主に起因して生じるかの特定は難しいものの、例えば、ウイスキーの場合、オクタン酸エチル(発酵を想起させる甘いアプリコット・パイナップル様のフルーティー香)、デカン酸エチル(オイリーなナッツ・ワイン粕のような甘い匂い)、ラウリン酸エチル(花様の香り、フルーティー香)が熟成香に少なくとも関与するといわれている。よって、本発明において「熟成」されたものであるかの判断は、この三成分の増減を確認することである程度行うことができる。また、その成分分析は、WAXカラムを装着したガスクロマトグラフィーにおいて実施することができる。カラム内で分離した熟成香の成分は、特定のリテンションタイムで検出器によって検出することができる。これらの分離された物質を特定するために、マススペクトロメトリーの装置を接続させた、ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー、いわゆるGC/MSで行うことが望ましい。分離した物質の含量を測定するには、単純にクロマトグラフィーの面積を比較する方法もあるが、より正確に実施する場合は、分析したい物質の5種類の異なる濃度の標準液を調製してGC/MSで物質を特定させた上で、検量線を作成しておき、これと対比することによりサンプルに含まれる当該物質の濃度を算出することができる。
【0014】
本発明にいう「水溶性食物繊維」とは、水溶性の溶媒には容易に溶解するが、ヒトの消化酵素では消化されにくいものをいい、具体的には、難消化性デキストリン、イヌリン、ポリデキストロース、難消化性グルカン、イソマルトデキストリンなどが挙げられる。一般に市販される代表的な商品としては、ロケット・フルーレ社の「ニュートリオース」、テイト&ライル社の「プロミター85」、松谷化学工業(株)の「ファイバーソル2」(難消化性デキストリン)、ダニスコ社の「ライテス」「ライテスII」(ポリデキストロース)、フジ日本精糖社の「Fuji FF」(イヌリン)、帝人社の「イヌリア」(イヌリン)、日本食品化工社の「フィットファイバー」(難消化性グルカン)、林原社のファイバリクサ(イソマルトデキストリン)などがある。水溶性食物繊維には、整腸作用や食後血糖上昇抑制作用があることから、特定保健食品や機能性表示食品の関与成分として用いられるほか、一般食品においても「食物繊維強化」などの強調表示目的で使用されることがある。これら食品表示のための水溶性食物繊維の摂取目安量は、一食当たり2~5g程度であり、一日当たりの摂取目安量は2~10g程度である。一方、水溶性食物繊維を味質調整目的で使用する場合は、飲食品中に0.1~5質量%の範囲で用いることが多く、香気や風味をマスキングする不具合も、同様に、飲食品中に0.1~5.0質量%の範囲で含む場合に確認される。
【0015】
本発明にいう「希少糖」とは、自然界において存在量が非常に少ない糖のことであり、D-タガトース、D-アロース、D―プシコース、D-ソルボースをはじめとする単糖及びそれらの糖アルコールの総称である。「希少糖」の多くは試薬として市販品が存在するが、食品一般に使用しうる量を入手したい場合、純品としては、例えば、「ASTRAEA」(松谷化学工業株式会社製)などを、混合品としては、D-プシコースを約5~6%含有する希少糖含有シロップ「レアシュガースウィート」(松谷化学工業株式会社製)などを利用することができる。また、D-タガトースは、例えば、NewNaturals,Inc.社の「Sweet Health Tagatose」として入手でき、また、D-アロースは、市販試薬を用いることもできるが、特許第6746838号の記載などを参考に、市販のD-プシコースにL-ラムノースイソメラーゼ(酵素)を作用させて調製することができる。また、D-ソルボースは、特許第5943516号の記載などを参考に、D-フラクトースに3-エピメラーゼ(酵素)を作用させて調製することができる。これら希少糖は、本発明の水溶性食物繊維を含むアルコール性飲料に0.1~5.0、好ましくは0.1~2.0、より好ましくは0.1~0.5の範囲で含ませることにより、熟成蒸留酒本来の好ましい香味やコクみを引き立たせることができる。
【0016】
本発明において「香味の改善」とは、熟成蒸留酒を水で希釈するなどして失われる香味が回復することをいい、具体的には、熟成蒸留酒を水で希釈したものと比較したときに、同じ希釈度であっても、本発明の有効成分によって香味が多い状態になったことをいう。その香味の判断は、一般に官能評価により行うことが可能であるが、熟成蒸留酒の「熟成香」として知られる上述の香気成分をGC/MSなどで分析したときの数値の比較により行うこともできる。
【0017】
以下、本発明について具体的に詳述するが、本発明はこれに限定されるものでない。
【実施例0018】
アルコール性飲料の香気成分は、シリカモノリスを利用したジーエルサイエンス(株)の「モノトラップ」により行うこととした。「モノリス」とはマイクロメートルオーダーの網目状の骨格が繋がった特徴的な構造をもつ一体型の多孔質体のことを指し、通気性、通液性に優れることから、非常に簡便に目的物質を捕集することができる。以降の実験では、このシリカモノリスのうち、吸着剤として活性炭を含有するタイプ(Monotrap DCC18)を使用し、分析を実施した。
【0019】
まず、バイアルにアルコール性飲料(サンプル液)30mlを入れ、スタンドと呼ばれる棒状の保持材に、シリカモノリス捕集材を固定した後、60℃で60分間の吸着操作を実施した。なお、この吸着操作温度は、ジーエルサイエンス(株)がホームページなどで開示するワインの香気成分の分析条件と同じ(60℃)であり、また、吸着操作時間は、経時的に吸着操作を行った結果、最も吸着効率が良かった時間(60分)を採用した。なお、吸着操作は、ヘッドスペース法でなく、浸漬法により行った。吸着操作後、捕集材のみを回収用バイアルに回収し、アセトン:ヘキサン=1:1の混合溶媒300μlを添加して超音波破砕器による処理を5分間実施後、その溶媒を回収した。捕集材は、同混合溶媒300μlによる洗浄を数回行い、その洗浄液を先の回収液に統合し、0.20μmのフィルタに通液して、捕集材由来の不純物を除去した。その後、0.2mlバイアルに封入してGC/MS分析に供した。GC/MS分析の条件は以下である。分析後、ソフトウェア(日本電子株式会社、ESCRIME)で解析した。
【0020】
【表1】
【0021】
まず、オクタン酸エチル、デカン酸エチル、ラウリン酸エチルの3つの成分について、それぞれ5つの濃度の異なる標準液を調製し、GC/MS分析による検量線を作成しておいた。次に、市販ウイスキー(南アルプスワインアンドビバレッジ(株)の「蜂角鷹」(アルコール度数37度))を7度となるよう希釈し、各水溶性食物繊維と各希少糖を各量範囲で添加したときの香味を上述の方法により分析した。水溶性食物繊維は、難消化性デキストリン(松谷化学工業(株)の「ファイバーソル2」。以降、FS2と略す。)を用い、希少糖は、D-アロース、D-プシコース、D-ソルボース、D-タガトース、又は希少糖含有シロップ(松谷化学工業(株)製品の「レアシュガースウィート」、Brix75。以降、「RSS」と略す。)を用いた。「RSS」は、固形分当り換算(w/w)でD-プシコース5.4%、D-ソルボース5.3%、D-タガトース2.0%、D-アロース1.4%などの希少糖群を13~15%程度含み、マンノース4.3%を含む。また、「RSS」の主成分はブドウ糖約45%及び果糖約30%であって、その主成分はいわゆる異性化糖であることから、異性化糖を用いた場合についても検討した。
【0022】
【表2】
【0023】
FS2を0.1%以上添加すると、オクタン酸エチルの量が減少する傾向にあったが、砂糖、又は異性化糖を2.0%添加しても、オクタン酸エチルの量に大きな変化はみられなかった。次に、各種希少糖を0.1%以上添加したところ、RSS、D-プシコース、D-タガトースでは、量依存的にオクタン酸エチルが増加し、D-アロースでは、量依存的にオクタン酸エチルが顕著に増加した。一方、各種希少糖と併用でFS2を2.0%添加すると、RSS、D-プシコース又はD-タガトースでは、若干減少したオクタン酸エチルが単に量依存的に増加するというのでなく、飛躍的に増加する現象がみられた。一方、D-アロースでは、若干減少したオクタン酸エチルが増加する傾向にあったものの、FS2併用による相乗的な増加効果はみられなかった。また、D-ソルボースにはオクタン酸エチルを増加させる効果はみられず、FS2との併用の場合にもその効果はみられなかった(表2)。
【0024】
【表3】
【0025】
FS2を0.1%以上添加すると、デカン酸エチルの量が減少する傾向にあったが、砂糖、又は異性化糖を2.0%添加しても、デカン酸エチルの量に大きな変化はみられなかった。次に、各種希少糖を0.1%以上添加したところ、RSS、D-プシコース、D-タガトースでは、量依存的にデカン酸エチルが増加する傾向にあり、D-アロースでは、量依存的にデカン酸エチルが顕著に増加した。一方、各希少糖と併用でFS2を2.0%添加すると、RSS、D-プシコース又はD-タガトースでは、若干減少したデカン酸エチルが単に量依存的に増加するというのでなく、飛躍的に増加する現象がみられた。一方、D-アロースでは、若干減少したデカン酸エチルが増加する傾向にあったものの、FS2併用による相乗的な増加効果はみられなかった。また、D-ソルボースにはデカン酸エチルを増加させる効果はみられず、FS2との併用の場合にもその効果はみられなかった(表3)。
【0026】
【表4】
【0027】
FS2を0.1%以上添加すると、ラウリン酸エチルの量が減少する傾向にあったが、砂糖、又は異性化糖を2.0%添加しても、ラウリン酸エチルの量に大きな変化はみられなかった。次に、各種希少糖を0.1%以上添加したところ、D-アロース、D-タガトースでは、量依存的にラウリン酸エチルが若干増加する傾向にあった。一方、各希少糖と併用でFS2を2.0%添加し、各希少糖の添加量を順次増やしても、量依存的にラウリン酸エチルを増加させる効果はあまりみられなかった(表4)。
【0028】
【表5】
【0029】
先の実験では、FS2を添加すると、その添加量に応じてオクタン酸エチル、デカン酸エチル及びラウリン酸エチルの三成分の量はいずれも減少したが、RSSを0.5%添加したものに対してFS2の添加量を順次増やしていくと、その添加量に応じてオクタン酸エチル、デカン酸エチル、ラウリン酸エチルの量が減るということはなく、微増する傾向にあった(表5)。
【0030】
【表6】
【0031】
次に、FS2以外の各種水溶性食物繊維について、同様の効果がみられるかについて調べることとした。これまでの結果から、希少糖のなかでもRSSとD-タガトースが三成分に及ぼす影響が大きかったため、RSS又はD-タガトースの各0.5%に対して各水溶性食物繊維2.0%を添加したときの状態を調べることとした。FS2以外の水溶性食物繊維として、ダニスコ社製の「ライテスII」(ポリデキストロース)、ロケット・フルーレ社製の「ニュートリオース」、テイト&ライル社製の「プロミター85」、日本食品化工(株)製の「フィットファイバー」(難消化性グルカン)を用いた。その結果、「フィットファイバー」以外の水溶性食物繊維と、RSS若しくはD-タガトースが併存したときに、オクタン酸エチルの量が若干増加する傾向にあった(表6)。
【0032】
【表7】
【0033】
デカン酸エチルについても、「フィットファイバー」以外の水溶性食物繊維は、希少糖(RSS又はD-タガトース)と併存したときに、デカン酸エチルの量が増加する現象がみられた(表7)。
【0034】
【表8】
【0035】
ラウリン酸エチルについても、「フィットファイバー」以外の水溶性食物繊維と、希少糖(RSS又はD-タガトース)とが併存すると、ラウリン酸エチルの量が若干増加する傾向にあった(表8)。