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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157945
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】スローアウェイチップ
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/22 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B23B27/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062495
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 将司
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046JJ03
3C046JJ12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高速の加工速度であってもスローアウェイチップにおける熱亀裂の発生および進行を抑制する。
【解決手段】多角形板状をなし、すくい面10と逃げ面20との交差稜線に形成された切刃15と、互いに隣接する2つの切刃15を接続するノーズ部16と、すくい面10から上方へ隆起し且つノーズ部16に向けて延びるブレーカ突起40とを備え、すくい面10は、切刃15に連なる第1すくい面11と、第1すくい面11の内側に連なり、第1すくい面11よりも大きく傾斜した第2すくい面12とを有し、ノーズ部16とブレーカ突起40との間に、すくい面から下方に窪む凹部30を有し、凹部30は、ノーズ部16において第1すくい面11の内側に連なると共に、ノーズ部16の両側において延びる2つの第2すくい面12の端部の内側にも連なり、第1すくい面11または第2すくい面12に接続する傾斜面が第2すくい面12よりも大きく傾斜している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形板状をなし、すくい面と逃げ面との交差稜線に形成された切刃と、互いに隣接する2つの前記切刃を接続するノーズ部と、前記すくい面から上方へ隆起し且つ前記ノーズ部に向けて延びるブレーカ突起と、を備えるスローアウェイチップにおいて、
前記すくい面は、
前記切刃に連なる第1すくい面と、
前記第1すくい面の内側に連なり、前記第1すくい面よりも大きく傾斜した第2すくい面と、を有し、
前記ノーズ部と前記ブレーカ突起との間に、前記すくい面から下方に窪む凹部を有し、
該凹部は、
前記ノーズ部において前記第1すくい面の内側に連なると共に、前記ノーズ部の両側において延びる2つの前記第2すくい面の端部の内側にも連なり、
前記第1すくい面または前記第2すくい面に接続する傾斜面が前記第2すくい面よりも大きく傾斜していることを特徴とする、スローアウェイチップ。
【請求項2】
請求項1に記載のスローアウェイチップにおいて、
前記ノーズ部の内側において、前記第1すくい面と前記凹部とが隣接して設けられた部分を第1領域としたとき、前記ノーズ部から離間する方向には、さらに、
前記第1すくい面、前記第2すくい面、及び前記凹部がそれぞれ隣接して設けられた第2領域と、
前記第1すくい面、前記第2すくい面、及び前記凹部よりも浅い窪みを形成するブレーカ底面がそれぞれ隣接して設けられた第3領域と、を有することを特徴とする、スローアウェイチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スローアウェイチップに関する。
【背景技術】
【0002】
すくい面と逃げ面との交差稜線に切刃が形成されたスローアウェイチップが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたスローアウェイチップでは、すくい面は、それぞれのすくい角が異なる第1すくい面と第2すくい面とにより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4923569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のスローアウェイチップでは、すくい面が第1すくい面と第2すくい面とで構成されることにより、加工時の切屑接触面積が減少する。これにより、旋削時のスローアウェイチップにおける熱の発生を小さくして、熱亀裂の発生および進行が抑制されている。通常の加工速度(例えば切削速度250m/min以下)であれば、特許文献1のすくい面により熱亀裂の発生および進行が抑制されるが、高速の加工速度(例えば切削速度400/min以上)では、すくい面のクレータ摩耗の進行が早くなる。これにより、第1すくい面および第2すくい面を早期に均してしまい、旋削時にスローアウェイチップと切屑の接触面積が増大し、熱亀裂を発生および進行させてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、高速の加工速度であってもスローアウェイチップにおける熱亀裂の発生および進行を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、多角形板状をなし、すくい面と逃げ面との交差稜線に形成された切刃と、互いに隣接する2つの前記切刃を接続するノーズ部と、前記すくい面から上方へ隆起し且つ前記ノーズ部に向けて延びるブレーカ突起と、を備えるスローアウェイチップが提供される。このスローアウェイチップでは、前記すくい面は、前記切刃に連なる第1すくい面と、前記第1すくい面の内側に連なり、前記第1すくい面よりも大きく傾斜した第2すくい面と、を有し、前記ノーズ部と前記ブレーカ突起との間に、前記すくい面から下方に窪む凹部を有し、該凹部は、前記ノーズ部において前記第1すくい面の内側に連なると共に、前記ノーズ部の両側において延びる2つの前記第2すくい面の端部の内側にも連なり、前記第1すくい面または前記第2すくい面に接続する傾斜面が前記第2すくい面よりも大きく傾斜している。
【0008】
スローアウェイチップを用いて被削材を加工すると、切屑とスローアウェイチップの凹部またはブレーカ底面とが接触し、接触により熱が発生する。特に、加工速度が高速である場合に、ノーズ部における切削熱が溜まりやすい。それに対して、本構成のスローアウェイチップでは、ノーズ部において第1すくい面と凹部とが接続している。ノーズ部の両側において、凹部は第2すくい面を介して第1すくい面に接続している。さらに、凹部の傾斜面が第1すくい面と第2すくい面とのいずれよりも大きく傾斜している。そのため、第1すくい面の摩耗が進行しても、被削材の切屑は付近の第2すくい面で受けることができるので、ノーズ部において被削材の切屑と凹部との接触面積の増加を抑制できる。これにより、ノーズ部において切削熱が溜まることが抑制され、スローアウェイチップにおける熱亀裂の発生および進行を抑制できる。一方で、ノーズ部の両側では、第2すくい面が、第1すくい面と凹部の傾斜面との間に形成されている。そのため、加工速度が高速とされることに伴いすくい面のクレータ摩耗の進行が早い場合であっても、第1すくい面が摩耗しても第2すくい面が切刃として機能する。この結果、切削熱が溜まりやすいノーズ部における熱亀裂の発生および進行を抑制した上で、すくい面が完全に摩耗し凹部まで切屑が接触するまでの時間を延長でき、スローアウェイチップの加工時間を延長できる。
【0009】
(2)上記態様のスローアウェイチップにおいて、前記ノーズ部の内側において、前記第1すくい面と前記凹部とが隣接して設けられた部分を第1領域としたとき、前記ノーズ部から離間する方向には、さらに、前記第1すくい面、前記第2すくい面、及び前記凹部がそれぞれ隣接して設けられた第2領域と、前記第1すくい面、前記第2すくい面、及び前記凹部よりも浅い窪みを形成するブレーカ底面がそれぞれ隣接して設けられた第3領域と、を有していてもよい。
この構成によれば、切削熱が溜まりやすいノーズ部に近い領域ほど、第1すくい面と凹部との距離が近く、ノーズ部から離れた領域ほど、第2すくい面が形成された部分が大きい。これにより、ノーズ部における熱亀裂の発生および進行をより一層抑制した上で、スローアウェイチップの加工時間をより一層延長できる。
【0010】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、スローアウェイチップ、切削インサート、加工装置、およびこれらを備えるシステム等の形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態のスローアウェイチップの正面図である。
図2】スローアウェイチップの一部の斜視図である。
図3】スローアウェイチップの断面についての説明図である。
図4】スローアウェイチップの断面についての説明図である。
図5】スローアウェイチップの断面についての説明図である。
図6】スローアウェイチップの断面についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
図1は、本発明の実施形態のスローアウェイチップ100の正面図である。図2は、スローアウェイチップ100の一部の斜視図である。本実施形態のスローアウェイチップ100は、旋削を行うためのインサートであり、主に鋼を被削材とする高速加工に使用される。詳細については後述するが、スローアウェイチップ100は、第1すくい面11および第2すくい面12を有するすくい面10と、すくい面10からさらに下方にくぼむ凹部30と、を備えている。凹部30が、第1すくい面11よりも大きく傾斜した第2すくい面12に対して、さらに大きく傾斜しているため、スローアウェイチップ100を用いた高速加工時において、熱亀裂の発生および進行を抑制できる。
【0013】
図1,2に示されるように、スローアウェイチップ100は、菱形板状の形状を有する。スローアウェイチップ100の材質は、超硬合金、サーメット、セラミック等の硬質材料、または、これらの硬質材料の表面にPVD(Physical Vapor Deposition)もしくはCVD(Chemical Vapor Deposition)コーティング膜を被覆した材料等である。スローアウェイチップ100は、すくい面10と、すくい面10の外側の周縁で接している逃げ面20と、すくい面10から下方にくぼむ凹部30と、ブレーカ突起40と、窪みを形成するブレーカ底面50と、中央部に厚さ方向(Z軸方向)に貫通する取付穴60と、ブレーカ底面50と取付穴60とを接続しているボス70と、を備えている。
【0014】
本実施形態では、図1から図6までの各図に示され、それぞれが対応している直交座標系CSが定義されている。直交座標系CSでは、スローアウェイチップ100の厚さ方向がZ軸方向と定義され、Z軸方向に直交するXY平面を構成するX軸とY軸とのそれぞれが定義されている。本実施形態のスローアウェイチップ100は、取付穴60の中心を通るZX平面およびYZ平面を中心として対称の形状を有している。
【0015】
取付穴60には、スローアウェイチップ100が装着される切削工具等の工具本体の一部が挿入される。ボス70は、取付穴60の周囲を囲むように形成されている。ボス70は、工具本体に設けられたチップ座(図1では不図示)に装着される際に、チップ座の底面に当接する着座面として機能する。
【0016】
図1,2に示されるように、すくい面10と逃げ面20との交差稜線は、被削材を切削する切刃15を形成する。本実施形態の逃げ面20は、上下面(Z軸正方向側および負方向側の面)に直角に交差した逃げ角が0°の、いわゆるネガの逃げ面である。スローアウェイチップ100は、Z軸方向から見たときに、菱形形状を有するため、X軸またはY軸に対して傾きの異なる4つの直線状の切刃15を備えている。互いに隣接する2つの切刃15は、XY平面において円弧形状のノーズ部16により接続されている。
【0017】
スローアウェイチップ100では、各ノーズ部16から中央部に向かって、すくい面10、凹部30、すくい面10から上方(Z軸正方向)へと隆起したブレーカ突起40、およびボス70が順番に形成されている。図1に示されるように、ブレーカ突起40は、スローアウェイチップ100の中央部からノーズ部16に向けて延びている。
【0018】
すくい面10は、図1,2に示される状態において、切刃15に連なる第1すくい面11と、第1すくい面11の内側(スローアウェイチップ100の中央側)に連なる第2すくい面12と、を有している。凹部30は、ノーズ部16において第1すくい面11の内側に連なる。さらに、凹部30は、ノーズ部16の両側の切刃15に接続している側で延びる2つの第2すくい面12の端部の内側に連なる。
【0019】
図3から図6までの各図は、スローアウェイチップ100の断面についての説明図である。図4から図6までの各図には、図3に示される1つの切刃15に直交する断面A-A,B-B,C-Cのそれぞれの一部が示されている。
【0020】
図3に示されるように、断面A-Aは、Y軸正方向側において、ノーズ部16の断面であり、第1すくい面11と凹部30とが隣接して設けられた領域(第1領域)である。本実施形態では、第1領域は、ノーズ部16が接続している両側の切刃15の境界において切刃15に直交する断面から内側の領域である。換言すると、ノーズ部16のRエンドの内側である第1領域では、第2すくい面12が存在しない。
【0021】
断面B-Bは、断面A-Aに対して、ノーズ部16から離間する方向における切刃15の断面である。断面B-Bは、Y軸正方向側において、第1すくい面11、第2すくい面12、および凹部30がそれぞれ隣接して設けられた領域(第2領域)である。換言すると、第2領域では、第1領域で存在していなかった第2すくい面12が、第1すくい面11と凹部30との間に存在している。
【0022】
断面C-Cは、断面B-Bよりもさらにノーズ部16から離間する方向における切刃15の断面である。断面C-Cは、Y軸正方向側において、第1すくい面11、第2すくい面12、およびブレーカ底面50がそれぞれ隣接して設けられた領域(第3領域)である。換言すると、第3領域では、第2領域では存在していた凹部30が第1すくい面11と第2すくい面12との間に形成されていない。第2すくい面12は、切刃15からスローアウェイチップ100の中央部に向かう方向でブレーカ底面50に接続されている。
【0023】
図4に示されるように、第1領域の凹部30は、第1すくい面11に接続する傾斜面31と、傾斜面31よりも下方に窪んで傾斜面31とブレーカ突起40とを接続している底部32と、を備えている。傾斜面31がXY平面に対して成す傾斜角α31は、第1すくい面11がXY平面に成すすくい角α11よりも大きく、すなわち、傾斜面31は、第1すくい面11よりも大きく傾斜している。断面A-Aでは、ノーズ部16から内側になるにつれて、第1すくい面11がさらに傾斜した傾斜面31に連なる。凹部30における最も窪んだ底部32を介して、傾斜面31とブレーカ突起40とが接続されている。傾斜面31に接続している底部32は、場所によって基準面(例えば切刃15を含むXY平面)からの窪み量が異なる。
【0024】
図5に示されるように、XY平面を基準として、第2すくい面12が成すすくい角α12は、第1すくい面11が成すすくい角α11よりも大きく、傾斜面31が成す傾斜角α31よりも小さい。すなわち、第2すくい面12は、第1すくい面11よりも大きく傾斜している。また、傾斜面31は、第1すくい面11と第2すくい面12とのいずれよりも大きく傾斜している。B-B断面では、ノーズ部16の内側になるにつれて、第1すくい面11が第2すくい面12に連なり、第2すくい面12がさらに傾斜した傾斜面31に連なる。凹部30における最も窪んだ底部32を介して、傾斜面31とブレーカ突起40とが接続されている。
【0025】
図6に示されるC-C断面では、ノーズ部16の内側からスローアウェイチップ100の中央部に近づくにつれて、第1すくい面11が第2すくい面12に連なり、第2すくい面12がブレーカ底面50に連なる。ブレーカ底面50は凹部30よりZ軸方向に浅い窪みであり、ブレーカ突起40に接続されている。換言すると、C-C断面では、第1すくい面11、第2すくい面12、および凹部30よりも浅い窪みを形成するブレーカ底面50が、それぞれ隣接して設けられている。
【0026】
以上説明したように、本実施形態のスローアウェイチップ100では、すくい面10は切刃15に連なる第1すくい面11と、第1すくい面11の内側に連なり第1すくい面11よりも大きく傾斜した第2すくい面12と、を有している。また、図1に示されるように、ノーズ部16とブレーカ突起40との間に、すくい面10から下方に窪む凹部30が形成されている。凹部30は、ノーズ部16において第1すくい面11の内側に連なる。さらに、凹部30は、ノーズ部16の両側の切刃15に接続している側で延びる2つの第2すくい面12の端部の内側に連なる。図4に示されるように、凹部30は、第1すくい面11に接続し、第1すくい面11よりも大きく傾斜した傾斜面31を有している。スローアウェイチップ100を用いて被削材を加工すると、切屑とスローアウェイチップ100の凹部30またはブレーカ底面50とが接触し、接触により熱が発生する。特に、加工速度が高速である場合に、ノーズ部16における切削熱が溜まりやすい。それに対して、本実施形態のスローアウェイチップ100では、ノーズ部16において、第1すくい面11と凹部30とが接続している。ノーズ部16の両側において、凹部30は第2すくい面12を介して第1すくい面11に接続している。さらに、凹部30の傾斜面31の傾斜角α31が第1すくい面11のすくい角α11と第2すくい面12のすくい角α12とのいずれよりも大きく傾斜している。そのため、第1すくい面11の摩耗が進行しても、被削材の切屑は付近の第2すくい面12で受けることができるので、ノーズ部16において被削材の切屑と凹部30との接触面積の増加を抑制できる。これにより、ノーズ部16において切削熱が溜まることが抑制され、スローアウェイチップ100における熱亀裂の発生および進行を抑制できる。一方で、ノーズ部16の両側では、第2すくい面12が、第1すくい面11と凹部30の傾斜面31との間に形成されている。そのため、加工速度が高速とされることに伴いすくい面10のクレータ摩耗の進行が早い場合であっても、第1すくい面11が摩耗しても第2すくい面12が切刃15として機能する。この結果、切削熱が溜まりやすいノーズ部16における熱亀裂の発生および進行を抑制した上で、すくい面10が完全に摩耗し凹部30まで切屑が接触するまでの時間を延長でき、スローアウェイチップ100の加工時間を延長できる。
【0027】
また、本実施形態のスローアウェイチップ100では、ノーズ部16の内側において、第1すくい面11と凹部30とが隣接して設けられた領域(第1領域)が存在する。この領域のノーズ部16から離間する方向には、第1すくい面11、第2すくい面12、および凹部30がそれぞれ隣して設けられた領域(第2領域)が存在する。さらに、この領域のノーズ部16から離間する方向には、第1すくい面11、第2すくい面12、およびブレーカ底面50がそれぞれ隣接して設けられた領域(第3領域)が存在する。すなわち、切削熱が溜まりやすいノーズ部16に近い領域ほど、第1すくい面11と凹部30との距離が近く、ノーズ部16から遠い領域ほど、第2すくい面12が形成された部分が大きい。これにより、ノーズ部16における熱亀裂の発生および進行をより一層抑制した上で、スローアウェイチップ100の加工時間をより一層延長できる。
【0028】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0029】
上記実施形態のスローアウェイチップ100は、一例であって、スローアウェイチップ100の構成および形状について変形可能である。多角形板状をなすスローアウェイチップ100は、菱形形状でなくてもよい。逃げ面20は、上下面に直角に交差していたが、交差する角度については90°以外であってもよい。
【0030】
ノーズ部16と切刃15との境界からノーズ部16側において、凹部30が第1すくい面11に連なる第1領域が形成されていたが、凹部30と第1すくい面11とが連なる位置については変形可能である。凹部30と第1すくい面11とが連なる第1領域は、ノーズ部16の内側の少なくとも一部に形成されていればよく、ノーズ部16において第1領域の外側に第2領域が形成されていてもよい。一方で、第1領域は、ノーズ部16の外側の切刃15に直交する断面に形成されていてもよい。また、必ずしも第2領域と第3領域との両方が形成されている必要はなく、第1領域と、第2領域とのみが形成されていてもよい。
【0031】
上記実施形態では、図1~6に示される直交座標系CSが定義されたが、定義される座標系については、任意に変更可能である。上記実施形態では、厚さ方向に平行なZ軸方向が定義され、図1がZ軸正方向側として説明されたが、定義される座標系に応じて、上下方向等は対応させて表現できる。
【0032】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0033】
10…すくい面
11…第1すくい面
12…第2すくい面
15…切刃
16…ノーズ部
20…逃げ面
30…凹部
31…傾斜面
32…底部
40…ブレーカ突起
50…ブレーカ底面
60…取付穴
70…ボス
100…スローアウェイチップ
CS…直交座標系
α11…第1すくい面のすくい角
α12…第2すくい面のすくい角
α31…傾斜面の傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6