(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157946
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062496
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕士
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA07
5D107CC09
5D107CC10
5D107DD03
5D107DD12
5D107FF10
(57)【要約】
【課題】振動方向である軸線方向の共振周波数の変化を抑制しつつ、軸線方向と直交する方向の共振周波数を従来より高くできる移動させたアクチュエータを提供すること。
【解決手段】アクチュエータ1は、可動体3と支持体2とを軸線方向Xに相対移動可能に接続する第1接続機構11と、可動体3と支持体2とを相対移動させる磁気駆動機構6を有する。第1接続機構11は、可動体3の支軸30を保持する第1内枠部材36と、ケース5に固定された環状の第1外枠部材51と、径方向で第1内枠部材36と第1外枠部材51との間に位置する中間リング55を備える。また、第1接続機構11は、第1内枠部材36と中間リング55との間に位置する内側環状部分10aおよび中間リング55と第1外枠部材51との間に位置する外側環状部分10bを有し、中間リング55を介して第1内枠部材36と第1外枠部材51とを接続する粘弾性体10を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を備える可動体と、
前記可動体を収容するケースを備える支持体と、
可動体と前記支持体とを前記軸部の軸線に沿った軸線方向に相対移動可能に接続する接続機構と、
前記可動体および前記支持体の一方に固定されたコイルおよび他方に固定されたマグネットを備え、前記可動体と前記支持体とを相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、
前記接続機構は、前記軸部を外周側から保持する内枠部材と、前記ケースに固定されて前記内枠部材を径方向外側から囲む外枠部材と、径方向で前記内枠部材と前記外枠部材との間に位置する中間リングと、前記内枠部材と前記中間リングとの間に位置する内側環状部分および前記中間リングと前記外枠部材との間に位置する外側環状部分を有し、前記中間リングを介して前記内枠部材と前記外枠部材とを接続する粘弾性体と、を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記中間リングは、筒状であり、
前記中間リングの中心軸線は、前記軸線と一致し、
前記中間リングの前記軸線方向の一方側の第1環状端面、および他方側の第2環状端面は、それぞれ前記粘弾性体から前記軸線方向に露出していることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記中間リングは、金属製であることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記中間リングは、樹脂製であることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記粘弾性体は、シリコーンゲルであることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘弾性体を備える接続機構によって可動体と支持体とを接続したアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
かかるアクチュエータは特許文献1に記載されている。同文献のアクチュエータは、筒状のケースを有する支持体と、ケースに収容された可動体と、を備える。可動体はケースの軸線に沿った軸線方向に突出する軸部を備える。また、アクチュエータは、支持体と可動体とを軸線方向に相対移動可能に接続する接続機構と、支持体と可動体とを相対移動させる磁気駆動機構と、を有する。
【0003】
接続機構は、軸部を外周側から保持する環状の内枠部材と、ケースに固定されて内枠部材を径方向外側から囲む環状の外枠部材と、内枠部材と外枠部材とを接続する粘弾性体と、を備える。粘弾性体は、円環状であり、シリコーンゲルからなる。粘弾性体は、自己の粘着力によって、内枠部材および外枠部材に接続されている。磁気駆動機構は、支持体に固定されたコイルと、可動体に固定されたマグネットと、を備える。
【0004】
このようなアクチュエータは、可動体が振動する軸線方向の共振周波数と、コイルへ流す駆動電流の周波数とが一致するときに可動体の加速度が最も大きくなるという振動特性を有する。従って、アクチュエータでは、効率よく振動を発生させるために軸線方向の共振周波数に近い周波数で磁気駆動機構を駆動する。共振周波数は、可動体の重量、および粘弾性体のバネ定数に依存する値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のアクチュエータは、複数の共振周波数を備える。それら複数の共振周波数のうち高次のものは、軸線方向の共振周波数である1次の共振数周波数と、振動方向と直交する径方向の共振周波数である2次の共振数周波数である。
【0007】
ここで、アクチュエータが搭載される機器が外部の機器との間で通信を行う場合には、2次の共振周波数が特定の周波数帯の中にあるときに、通信にノイズが乗るという現象が発生することがある。また、アクチュエータが搭載される機器によっては、2次の共振周波数が特定の周波数帯の中にあると、2次の共振周波数に起因する振動などが発生して軸線方向の振動が所望の振動とならないことがある。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、振動方向である軸線方向の共振周波数の変化を抑えながら、軸線方向と直交する方向の共振周波数を従来よりも高い周波数に移動させることができるアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、軸部を備える可動体と、前記可動体を収容するケースを備える支持体と、可動体と前記支持体とを前記軸部の軸線に沿った軸線方向に相対移動可能に接続する接続機構と、前記可動体および前記支持体の
一方に固定されたコイルおよび他方に固定されたマグネットを備え、前記可動体と前記支持体とを相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、前記接続機構は、前記軸部を外周側から保持する内枠部材と、前記ケースに固定されて前記内枠部材を径方向外側から囲む外枠部材と、径方向で前記内枠部材と前記外枠部材との間に位置する中間リングと、前記内枠部材と前記中間リングとの間に位置する内側環状部分および前記中間リングと前記外枠部材との間に位置する外側環状部分を有し、前記中間リングを介して前記内枠部材と前記外枠部材とを接続する粘弾性体と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、可動体と支持体とを接続する接続機構は、可動体に固定される内枠部材と支持体に固定される外枠部材との間に中間リングを備えるとともに、中間リングを介して内側リングと外側リングとを接続する粘弾性体を備える。従って、可動体が径方向の一方側に移動すると、軸線の径方向の一方側では、粘弾性体の内側環状部分が径方向に伸び、粘弾性体の外側環状部分が径方向で圧縮される。また、可動体が径方向の一方側に移動すると、軸線の径方向の他方側では、粘弾性体の内側環状部分が圧縮され、粘弾性体の外側環状部分が径方向に伸びる。この結果、粘弾性体の径方向のバネ定数は、中間リングを備えていない場合と比較して、高くなる。ここで、共振周波数は、粘弾性体のバネ定数に依存する。従って、アクチュエータでは、径方向の共振周波数が高くなる。この一方で、可動体が軸線方向に振動する動きは、粘弾性体のせん断方向の動きである。従って、粘弾性体の軸線方向のバネ定数は、内枠部材と外枠部材との間に中間リングを備えていない場合と比較して、大きく変化することがない。よって、振動方向である軸線方向の共振周波数の変化を抑えながら、振動方向と直交する方向の共振周波数を、従来よりも、高くすることができる。
【0011】
本発明において、前記中間リングは、筒状であり、前記中間リングの中心軸線は、前記軸線と一致し、前記中間リングの前記軸線方向の一方側の第1環状端面、および他方側の第2環状端面は、それぞれ前記粘弾性体から前記軸線方向に露出しているものとすることができる。このようにすれば、粘弾性体の径方向のバネ定数を、内枠部材と外枠部材との間に中間リングを備えていない場合と比較して、高くすることが容易である。
【0012】
本発明において、前記中間リングは、金属製とすることができる。このようにすれば、中間リングを樹脂製などとした場合と比較して、筒状の中間リングの厚みを抑制することが容易である。ここで、筒状の中間リングを薄くすれば、内枠部材と外枠部材との間に配置した中間リングが軸線方向の共振周波数に与える影響を抑制しやすい。
【0013】
本発明において、前記中間リングは、樹脂製とすることができる。このようにすれば、中間リングの製造コストを抑制できる。
【0014】
本発明において、前記粘弾性体は、シリコーンゲルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(全体構成)
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1の斜視図である。
図2は、
図1に示すアクチュエータ1の分解斜視
図である。
図3、
図4は、
図1に示すアクチュエータ1の断面図である。
図3は、
図1のA-A位置で切断した断面図である。
図4は、
図1のB-B位置で切断した断面図である。
図4は、
図3と直交する方向で切断した断面図である。
図5は、第1接続機構の断面図である。
【0017】
図1に示すように、アクチュエータ1の外観は筒型である。
図3、
図4に示すように、アクチュエータ1は、筒型のケース5を有する支持体2と、ケース5に収容された可動体3と、を備える。
図2に示すように、可動体3は、その中心を貫通する支軸30を備える。支軸30の軸線Lは、ケース5の軸線と一致する。また、アクチュエータ1は、支持体2と可動体3とを支軸30の軸線Lに沿った軸線方向Xに相対移動可能に接続する第1接続機構11および第2接続機構12を備える。第1接続機構11は、ケース5内における軸線方向Xの一方の端部において、可動体3と支持体2とを接続する。第2接続機構12は、ケース5内における軸線方向の他方の端部において、可動体3と支持体2とを接続する。
【0018】
さらに、アクチュエータ1は、可動体3を軸線方向Xに移動させる磁気駆動機構6を備える。磁気駆動機構6は、可動体3に配置されたマグネット61と、支持体2に配置されたコイル62と、を備える。以下の説明では、軸線方向Xの一方を第1方向X1とし、軸線方向Xの他方を第2方向X2とする。
【0019】
(第1接続部材および第2接続機構)
図3、
図4に示すように、第1接続機構11は、支軸30のX1方向の第1端部分30a(軸部)を外周側から保持する環状の第1内枠部材36と、第1内枠部材36の径方向外側で、ケース5のX1方向の端部分に固定された環状の第1外枠部材51と、を備える。第1内枠部材36の外周面は円環状である。第1外枠部材51の内周面は、円環状である。
【0020】
また、第1接続機構11は、径方向における第1内枠部材36と第1外枠部材51との間に配置された円筒形状の中間リング55を備える。中間リング55は、ステンレス鋼製、鉄製などの金属製とすることができる。また、中間リング55は、ポリブチレンテレフタレート樹脂など、樹脂製とすることができる。本例では、中間リング55は、鉄製である。第1内枠部材36、第1外枠部材51、および中間リング55は同軸に配置されており、これらの中心軸線は、軸線Lと一致する。中間リング55は、径方向において、第1内枠部材36と第1外枠部材51との中央部分に位置する。
【0021】
さらに、第1接続機構11は、中間リング55を介して第1内枠部材36と第1外枠部材51とを接続する粘弾性体10を備える。粘弾性体10は、第1内枠部材36と中間リング55との間に位置する内側環状部分10aと、中間リング55と第1外枠部材51との間に位置する外側環状部分10bと、を有する。粘弾性体10は、それ自身の粘着性によって、第1内枠部材36、中間リング55、および第1外枠部材51に接合されている。ここで、中間リング55のX1方向の第1環状端面55a、およびX2方向の第2環状端面55bは、それぞれ粘弾性体10から軸線方向Xに露出している。すなわち、中間リング55の軸線方向Xの高さ寸法と、粘弾性体10の軸線方向Xの厚み寸法とは同一である。
【0022】
第2接続機構12は、第1接続機構11と同様の構成を備える。すなわち、
図2、
図3、
図4に示すように、第2接続機構12は、支軸30のX2方向の第2端部分30b(軸部)を外周側から保持する環状の第2内枠部材37と、第2内枠部材37の径方向外側で、ケース5のX2方向の端部分に固定された環状の第2外枠部材52と、を備える。また、第2接続機構12は、径方向における第2内枠部材37と、第2外枠部材52との間に
配置された中間リング55を備える。さらに、第2接続機構12は、中間リング55を介して第2内枠部材37と第2外枠部材52とを接続する粘弾性体10を備える。粘弾性体10は、第2内枠部材37と中間リング55との間に位置する内側環状部分10aと、中間リング55と第2外枠部材52との間に位置する外側環状部分10bと、を有する。中間リング55のX2方向の第1環状端面55a、およびX1方向の第2環状端面55bは、それぞれ粘弾性体10から軸線方向Xに露出している。粘弾性体10は、それ自身の粘着性によって、第2内枠部材37、中間リング55、および第2外枠部材52に接合されている。
【0023】
粘弾性体10としては、シリコーンゲル等からなるゲル状部材、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いることができる。また、粘弾性体10は、シリコーンゲルにフィラーを含有するゲル状部材とすることもできる。
【0024】
(支持体)
支持体2は、ケース5と、ケース5の内側に固定されたコイルホルダ4と、を備える。
図2に示すように、ケース5は、円筒形状の筒部材20と、筒部材20の第1方向X1の開口を塞ぐ第1蓋部材21と、筒部材20の第2方向X2の開口を塞ぐ第2蓋部材22と、を備える。コイルホルダ4は、筒状であり、ケース5と同軸に配置されている。コイルホルダ4は、筒部材20の内周側で、第1蓋部材21と第2蓋部材22との間に位置する。
図3、
図4に示すように、コイルホルダ4は、コイル62を保持するとともに、第1接続機構11の第1外枠部材51を保持する。
【0025】
また、支持体2は、筒部材20の内周面から突出する環状の接続部材保持部25を備える。接続部材保持部25は、軸線方向Xでコイルホルダ4と第2蓋部材22との間に位置する。接続部材保持部25は、第2接続機構12の第2外枠部材52を保持する。
【0026】
(筒部材、第1蓋部材、および第2蓋部材)
筒部材20は、樹脂製である。
図2に示すように、筒部材20は、第1方向X1の端縁を第2方向X2に切り欠いた切欠き部65を備える。また、筒部材20は、第1方向X1の端縁の周方向の3か所、および第2方向X2の端縁の周方向の3か所に、それぞれ内周側に突出する係止突部91を備える。さらに、筒部材20は、切欠き部65の第2方向X2に基板保持部69を備える。基板保持部69には、配線基板7が固定される。配線基板7には、給電用のリード線8が電気的に接続される。配線基板7に対して周方向に隣接する位置には、リード線8を保持するリード線保持部70が設けられている。リード線8は、配線基板7を介して、コイル62に接続される。
【0027】
第1蓋部材21は、樹脂製である。第1蓋部材21は、円形の第1端板部211と、第1端板部211の外周縁から第2方向X2に延びる円環状の第1側板部212と、を備える。第1端板部211は、第1側板部212の内周側に第2方向X2に突出する円環状のリブ213を備える。リブ213は第1側板部212と同軸である。リブ213の第2方向の端面には、第2方向X2に突出する突部214が、等角度間隔で、複数、設けられている。本例では、突部214は、3つ設けられている。第1側板部212の周方向の一部には、第2方向X2に突出するカバー部分66が設けられている。また、第1側板部212の周方向の3か所には、係止部81が設けられている。各係止部81は、第1側板部212のX2方向の端縁からX1方向に向かって外周側へ拡がる方向に傾斜して延びる爪である。
【0028】
図1に示すように、第1蓋部材21は、第1方向X1の側から筒部材20に挿入されて、筒部材20の第1方向X1の端部分に固定される。第1蓋部材21が第1方向X1の側から筒部材20に挿入される際に、カバー部分66は、切欠き部65に第1方向X1の側から挿入される。カバー部分66が切欠き部65に挿入されたときにカバー部分66の第2方向X2の端縁と切欠き部65との間に形成される隙間は、コイル62のコイル線63をケース5の外側に引き出すための配線引き出し部60である。また、第1蓋部材21が第1方向X1の側から筒部材20に挿入される際に、各係止部81は、径方向に弾性変形して第1側板部212と共に筒部材20の内周側に押し込まれる。ここで、各係止部81のX1方向の端には、筒部材20のX1方向の端縁に設けられた各係止突部91がX1方向の側から当接する。これにより、第1蓋部材21は、筒部材20からX1方向に脱落することが防止される。第1蓋部材21は、各係止部81に各係止突部91が当接した状態で、接着剤によって筒部材20に固定される。
【0029】
第2蓋部材22は、樹脂製である。第2蓋部材22は、円形の第2端板部221と、第2端板部221の外周縁から第1方向X1に延びる円環状の第2側板部222と、を備える。
図3、
図4に示すように、第2蓋部材22は、第2端板部221に円環状のリブ223を備える。リブ223は、第2側板部222と同軸で、第1方向X1に突出する。リブ223の第2方向の端面には、第1方向X1に突出する突部224が、等角度間隔で3つ設けられている。また、第2側板部222の周方向の3か所には、係止部81が設けられている。各係止部81は、第2側板部222のX1方向の端縁からX2方向に向かって外周側へ拡がる方向に傾斜して延びる爪である。
【0030】
第2蓋部材22は、第2方向X2の側から筒部材20に挿入されて、筒部材20の第2方向X2の端部分に固定される。第2蓋部材22が第2方向X2の側から筒部材20に挿入される際に、各係止部81は、径方向に弾性変形して第2側板部222と共に筒部材20の内周側に押し込まれる。ここで、各係止部81のX2方向の端には、筒部材20のX2方向の端縁に設けられた各係止突部91がX2方向の側から当接する。これにより、第2蓋部材22は、筒部材20からX1方向に脱落することが防止される。第2蓋部材22は、各係止部81に各係止突部91が当接した状態で、接着剤によって筒部材20に固定される。
【0031】
(コイルホルダ)
図2に示すように、コイルホルダ4は、コイル62を保持するコイル保持部分40と、コイル保持部分40の第1方向X1で第1接続機構11の第1外枠部材51を保持する接続部材保持部分41と、を備える。
図3、
図4に示すように、コイル保持部分40に保持されたコイル62は、ケース5内において、軸線方向Xの中央部分に位置する。
【0032】
接続部材保持部分41は、環状である。接続部材保持部分41の内周面には、第1方向X1および内周側から切り欠かれた環状の第1凹部43が設けられている。第1凹部43の第2方向X2の端部分には、第1段部44が設けられている。第1凹部43には、第1接続機構11の第1外枠部材51が第1方向X1の側から圧入される。圧入に際して、第1段部44は第2方向X2の側から第1外枠部材51に当接して、第1外枠部材51を軸線方向Xで位置決めする。これにより、コイルホルダ4は、第1接続機構11の第1外枠部材51を、外周側、および第2方向X2の側から保持する。
【0033】
図2、
図3に示すように、接続部材保持部分41の外周面からは、2本の端子ピン64が外周側に突出する。2本の端子ピン64には、コイル62から引き出されたコイル線63の端部が絡げられている。コイルホルダ4がケース5に固定されたときに、2本の端子ピン64は、配線引き出し部60を介して、ケース5の外側に突出する。ここで、
図1、
図2、
図3に示すように、ケース5の外に突出する2本の端子ピン64は、配線基板7に
設けられた2箇所の穴71を貫通して、穴71の縁に設けられたランドと電気的に接続される。これにより、コイル線63と給電用のリード線8とが電気的に接続される。
【0034】
図3、
図4に示すように、第1蓋部材21が筒部材20に固定されると、第1蓋部材21の突部214は、第1外枠部材51に第1方向X1の側から当接する。すなわち、第1蓋部材21の突部214は、第1方向X1の側から第1外枠部材51に当接する当接部である。第1蓋部材21が筒部材20に固定されると、第1蓋部材21は、第1外枠部材51が第1方向X1に移動することを防止する。また、第1蓋部材21は、第1接続機構11の粘弾性体10が外部に露出することを防止する。
【0035】
(接続部材保持部)
接続部材保持部25は、コイルホルダ4の第2方向X2に位置する。接続部材保持部25は環状である。接続部材保持部25の内周面には、第2方向X2および内周側から切り欠かれた環状の第2凹部46が設けられている。第2凹部46の第1方向X1の端部分には、第2段部45が設けられている。第2凹部46には、第2接続機構12の第2外枠部材52が第2方向X2の側から圧入される。圧入に際し、第2段部45は第1方向X1の側から第2外枠部材52に当接して、第2外枠部材52を軸線方向Xで位置決めする。これにより、接続部材保持部25は、第2接続機構12の第2外枠部材52を、外周側、および第1方向X1の側から保持する。
【0036】
ここで、第2蓋部材22が筒部材20に固定されると、第2蓋部材22の突部214は、第2外枠部材52に第2方向X2の側から当接する。すなわち、第2蓋部材22の突部214は、第2外枠部材52に第2方向X2の側から当接する当接部である。第2蓋部材22が筒部材20に固定されると、第2蓋部材22は、第2外枠部材52が第2方向X2に移動することを防止する。また、第2蓋部材22は、第2接続機構12の粘弾性体10が外部に露出することを防止する。
【0037】
(可動体)
図2~
図4に示すように、可動体3は、支持体2の径方向の中心において軸線方向Xに延びる支軸30を有する。支軸30は金属製の丸棒である。支軸30の軸線は、可動体3の軸線であり、ケース5の軸線Lと一致する。支軸30には、マグネット61が支持される。マグネット61は、中心に、支軸30が貫通する軸穴610を備える。
【0038】
また、支軸30には、ヨーク35が支持される。ヨーク35は、マグネット61に軸線方向Xの第1方向X1で重なる第1ヨーク31と、マグネット61に第2方向X2で重なる第2ヨーク32と、を備える。
【0039】
第1ヨーク31は、所定の厚みを備える円盤形状である。第1ヨーク31は、中心に、支軸30が貫通する軸穴310を備える。第1ヨーク31は、マグネット61の第1方向X1の面に接着等の方法で固定されている。ここで、第1ヨーク31の外径寸法は、マグネット61の外径寸法よりも大きい。従って、第1ヨーク31の外周面は、マグネット61の外周面より径方向外側に張り出す。
【0040】
第2ヨーク32は、カップ状の第1磁性部材33と、円板状の第2磁性部材34の2つの部材からなる。第1磁性部材33は、中心に支軸30が貫通する軸穴330を備える円形の端板部331と、端板部331の外縁から第1方向X1に曲げられた曲げ部332と、曲げ部332から第1方向X1に延びる円筒部333と、を備える。第1磁性部材33の端板部331は、マグネット61の第2方向X2の端面に固定される。第2磁性部材34は、中心に支軸30が貫通する軸穴340を備える。第2磁性部材34は、第1磁性部材33の端板部331に対してマグネット61とは反対側から固定されている。
図2に示
すように、第2磁性部材34には、軸穴340の外周側に、軸線方向Xに貫通する複数の貫通孔が設けられている。各貫通孔は可動体3の重量を調節するための重量調整部38である。
【0041】
ここで、
図3、
図4に示すように、第1接続機構11の第1内枠部材36は、第1ヨーク31の第1方向X1に位置する支軸30の第1端部分30aに固定される。より具体的には、第1内枠部材36の内周面には第2方向X2の端部に径方向内側に突出する環状突部361が設けられており、第1端部分30aは、環状突部361の中心孔に圧入される。これにより、第1内枠部材36は、支軸30に固定される。
【0042】
また、第2接続機構12の第2内枠部材37は、第2ヨーク32の第2方向X2に位置する支軸30の第2端部分30bに固定される。より具体的には、第2内枠部材37の内周面には、第1方向X1の端部に径方向内側に突出する環状突部371が設けられており、第2端部分30bは、環状突部371の中心孔に圧入される。これにより、第2内枠部材37は、支軸30に固定される。
【0043】
第1内枠部材36および第2内枠部材37が支軸30に固定されたときに、第1内枠部材36は、第1方向X1の側から第1ヨーク31に当接する。また、第2内枠部材37は、第2方向X2の側から第2磁性部材34に当接する。従って、支軸30に支持されたマグネット61およびヨーク35は、第1内枠部材36および第2内枠部材37によって軸線方向Xの両側から支軸30に固定される。
【0044】
マグネット61およびヨーク35が支軸30に固定されたときに、マグネット61およびヨーク35は軸線方向Xにおける支軸30の中央部分に位置する。また、第2ヨーク32の円筒部333は、マグネット61の外周面および第1ヨーク31の外周面から径方向外側に離間した位置で、マグネット61の外周面および第1ヨーク31の径方向外側に位置する。ここで、第1接続機構11および第2接続機構とを介して支持体2と可動体3とが接続されると、第2ヨーク32の円筒部333とマグネット61の外周面との間に、可動体3のコイル62の一部が位置する。また、第2ヨーク32の円筒部333と第1ヨーク31の外周面との間に、可動体3のコイル62の一部が位置する。
【0045】
(アクチュエータの動作)
アクチュエータ1では、コイル62への通電により磁気駆動機構6が可動体3を軸線方向Xに移動させる駆動力を発揮する。コイル62への通電を断つと、可動体3は、粘弾性体10の復帰力によって原点位置へ戻る。従って、コイル62に所定の周波数の駆動電流(交流電流)を流すことにより、可動体3は軸線方向Xで振動する。また、コイル62に印加する駆動電流の波形を調整することで、可動体3がX1方向に移動する加速度と、可動体3がX2方向に移動する加速度を異なるものとすることができる。それ故、アクチュエータ1を触覚デバイスとして取り付けた機器を手にした者は、軸線方向Xにおいて方向性を有する振動を体感することができる。
【0046】
(アクチュエータの共振周波数について)
本例のアクチュエータ1は、可動体3が振動する軸線方向Xの共振周波数と、コイル62へ流す駆動電流の周波数とが一致するときに可動体3の加速度が最も大きくなるという振動特性を有する。従って、アクチュエータ1では、効率よく振動を発生させるために軸線方向Xの共振周波数に近い周波数で磁気駆動機構を駆動する。共振周波数は、可動体3の重量、および粘弾性体のバネ定数に依存する値である。
【0047】
また、本例のアクチュエータ1は、複数の共振周波数を備える。それら複数の共振周波数のうち高次のものは、軸線方向Xの共振周波数である1次の共振数周波数と、振動方向
と直交する径方向の共振周波数である2次の共振数周波数である。アクチュエータ1を軸線方向Xで振動させるには、1次の共振周波数に近い周波数で磁気駆動機構を駆動する。
【0048】
ここで、アクチュエータ1が搭載される機器が外部の機器との間で通信を行う場合には、2次の共振周波数が特定の周波数帯の中にあるときに、通信にノイズが乗るという現象が発生することがある。また、アクチュエータ1が搭載される機器によっては、2次の共振周波数が特定の周波数帯の中にあると、2次の共振周波数に起因する振動などが発生して軸線方向Xの振動が所望の振動とならないことがある。
【0049】
これに対して本例では、可動体3と支持体とを接続する第1接続機構11は、可動体3に固定される第1内枠部材36と支持体2に固定される第1外枠部材51との間に中間リング55を備える。また、第1接続機構11は、第1内枠部材36と中間リング55との間に位置する内側環状部分10aおよび中間リング55と第1外枠部材51との間に位置する外側環状部分10bを有し、中間リング55を介して第1内枠部材36と第1外枠部材51とを接続する粘弾性体10を備える。
【0050】
従って、可動体3が径方向の一方側に移動すると、軸線の径方向の一方側では、粘弾性体10の内側環状部分10aが径方向に伸び、粘弾性体10の外側環状部分が径方向で圧縮される。また、可動体3が径方向の一方側に移動すると、軸線の径方向の他方側では、粘弾性体10の内側環状部分10aが圧縮され、粘弾性体10の外側環状部分が径方向に伸びる。この結果、粘弾性体10の径方向のバネ定数は、中間リング55を備えていない場合と比較して、高くなる。ここで、共振周波数は、粘弾性体10のバネ定数に依存する。従って、アクチュエータ1では、径方向の共振周波数が高くなる。この一方で、可動体3が軸線方向Xに振動する動きは、粘弾性体10のせん断方向の動きである。従って、粘弾性体10の軸線方向Xのバネ定数は、第1内枠部材36と第1外枠部材51との間に中間リング55を備えていない場合と比較して、大きく変化することがない。よって、振動方向である軸線方向Xの共振周波数の変化を抑えながら、振動方向と直交する径方向の共振周波数を、従来よりも、高くすることができる。
【0051】
図5は、第1接続機構11が中間リング55を備える場合と、第1接続機構11が中間リング55を備えていない場合と、におけるアクチュエータ1の共振周波数を示す表である。
図5に示す共振周波数は、シミュレーションにより算出している。
図5の第1行目、および第2行目に示すように、第1接続機構11が中間リング55を備える場合には、中間リング55が樹脂製か鉄製かに拘わらわず、1次の共振周波数は63.5Hz前後である。2次の共振周波数は122Hzである。この一方で、第1接続機構11が中間リング55を備えておらず、粘弾性体10のみで第1内枠部材36と第1外枠部材51とを接続する従来の構成では、1次の共振周波数は58.4Hzである。2次の共振周波数は105Hzである。
【0052】
図5に示すシミュレーションの結果によれば、第1接続機構11が中間リング55を備える場合には、中間リング55を備えていない場合と比較して、1次の共振周波数は5Hz変化しているのに対して、2次の共振周波数は17Hz変化している。従って、本例によれば、第1接続機構11が中間リング55を備えていない場合と比較して、振動方向である軸線方向Xの共振周波数の変化を抑えながら、軸線方向Xと直交する方向の共振周波数を従来よりも高い周波数に移動させることができる。よって、磁気駆動機構を駆動する周波数を変化させることなく、2次の共振周波数を特定の周波数帯の外に移動させることができる。これにより、通信にノイズが乗るという現象が発生や、軸線方向Xの振動が所望の振動とならないなどの現象の発生を、防止或いは抑制できる。
【0053】
(変形例)
本発明において、中間リング55は、樹脂製とすることができる。このようにすれば、中間リング55の製造コストを抑制できる。
【0054】
また、磁気駆動機構6では、支持体2の側にマグネット61を保持し、可動体3の側にコイル62を保持することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1…アクチュエータ、2…支持体、3…可動体、4…コイルホルダ、5…ケース、6…磁気駆動機構、7…配線基板、8…リード線、10…粘弾性体、10a…内側環状部分、10b…外側環状部分、11…第1接続機構、12…第2接続機構、20…筒部材、21…第1蓋部材、22…第2蓋部材、25…接続部材保持部、30…支軸、30a…第1端部分、30b…第2端部分、31…第1ヨーク、32…第2ヨーク、33…第1磁性部材、34…第2磁性部材、35…ヨーク、36…第1内枠部材、37…第2内枠部材、38…重量調整部、40…コイル保持部分、41…接続部材保持部分、43…第1凹部、44…第1段部、45…第2段部、46…第2凹部、51…第1外枠部材、52…第1外枠部材、52…第2外枠部材、55…中間リング、55a…第1環状端面、55b…第2環状端面、60…配線引き出し部、61…マグネット、62…コイル、63…コイル線、64…端子ピン、65…切欠き部、66…カバー部分、69…基板保持部、70…リード線保持部、71…穴、81…係止部、91…係止突部、211…第1端板部、212…第1側板部、213…リブ、214…突部、221…第2端板部、222…第2側板部、223…リブ、224…突部、310…軸穴、330…軸穴、331…端板部、332…曲げ部、333…円筒部、340…軸穴、361…環状突部、371…環状突部、610…軸穴、X…軸線方向