(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158006
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】表示装置及び表示方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20221006BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221006BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20221006BHJP
G09G 5/22 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02B27/01
G09F9/00 359
G09F9/00 366G
G09G5/00 510V
G09G5/00 550C
G09G5/22 630Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062586
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大山 実
【テーマコード(参考)】
2H199
5C182
5G435
【Fターム(参考)】
2H199DA17
2H199DA20
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA05
5C182AA27
5C182AB25
5C182AC02
5C182AC37
5C182BA14
5C182BA28
5C182BA35
5C182BA55
5C182BA56
5C182BA57
5C182BA66
5C182BB02
5C182BB13
5C182BC26
5C182DA68
5G435AA00
5G435AA17
5G435BB05
5G435BB12
5G435EE49
5G435FF03
5G435FF05
5G435GG09
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】装置の製造コストを抑えるとともに、互いに対向する複数の観察者について、一方の観察者に他方の観察者とは異なる文字情報を視認させることが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】本実施の形態に係る表示装置1は、互いを対向させた第1表示パネル11及び第2表示パネル12と、第1表示パネル11と第2表示パネル12との間に傾斜して設置されるハーフミラー13と、を備える。表示装置1は、ハーフミラー13を介して第1観察者U1と第2観察者U2とが互いに実像を視認可能な状態で設置される。ハーフミラー13は、第1表示パネル11に表示させた第1画像を第1観察者U1が視認可能な方向へ反射させ、且つ、第2表示パネル12に表示させた第2画像を第2観察者U2が視認可能な方向へ反射させる。第2画像は文字情報を含む画像であり、第1画像は第2画像と異なる文字情報を含む画像である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いを対向させた第1表示パネル及び第2表示パネルと、前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとの間に傾斜して設置されるハーフミラーと、を備え、
前記ハーフミラーを介して第1観察者と第2観察者とが互いに実像を視認可能な状態で設置され、
前記ハーフミラーは、前記第1表示パネルに表示させた第1画像を前記第1観察者が視認可能な方向へ反射させ、且つ、前記第2表示パネルに表示させた第2画像を前記第2観察者が視認可能な方向へ反射させ、
前記第2画像は文字情報を含む画像であり、前記第1画像は前記第2画像と異なる文字情報を含む画像である、
表示装置。
【請求項2】
前記第1画像に含まれる文字情報及び前記第2画像に含まれる文字情報は、表示言語と視認対象の観察者についての観察者情報との少なくとも一方が互いに異なる、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2観察者についての観察者情報を検出するセンサをさらに備え、
前記第1画像は、前記センサの検出結果に応じた、前記第2観察者についての観察者情報を示す画像である、
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ハーフミラーは、偏光依存型とし、
前記第1画像の前記第1表示パネルからの出射偏光と前記第2画像の前記第2表示パネルからの出射偏光とを、前記ハーフミラーの反射面基準でS偏光に定める、
請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
互いを対向させた第1表示パネル及び第2表示パネルと、前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとの間に傾斜して設置されるハーフミラーと、を備えた表示装置を、前記ハーフミラーを介して第1観察者と第2観察者とが互いに実像を視認可能な状態で設置し、
前記第2表示パネルに文字情報を含む画像である第2画像を表示し、
前記第1表示パネルに前記第2画像と異なる文字情報を含む画像である第1画像を表示し、
前記ハーフミラーを介して前記第1画像を前記第1観察者が視認可能な方向へ反射させ、前記ハーフミラーを介して前記第2画像を前記第2観察者が視認可能な方向へ反射させる、
表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明ディスプレイは、拡張現実(AR:Augmented Reality)の分野で期待され、光学的な現実像(背景)像に画像情報を重畳するために用いられる。透明ディスプレイには、透明板又は半透明板の面に表示される実像方式や、視線方向に対し傾斜設置したハーフミラー等で反射し空中に表示する虚像方式が採用されており、後者は展示等で用いられている。
【0003】
特許文献1には、映像信号処理にて映像の左右を反転する映像左右反転手段と、映像表示手段と、反射透過手段と、を備えた車両後部座席用映像表示装置が記載されている。上記映像表示手段は、車両室内の天井部の中央付近に表示面を下にして設置され上記映像左右反転手段によって左右反転された映像を表示する。上記反射透過手段は、上記映像表示手段の下方に設置され該映像を反射すると共に、背景を透過する。
【0004】
特許文献2には、観察者の前方に配置された複数のハーフミラーと、ハーフミラー面に映像を映して反射像を形成する映像投影装置とを備え、ハーフミラー面に形成した上記反射像を観察する表示装置が記載されている。特許文献1に記載の表示装置は、複数の覗き窓をもった暗箱と、上記覗き窓に臨み水平面に対し傾斜して角錐台の側面を形成するようにして覗き窓ごとに暗箱内に配置されたハーフミラーと、を備える。そして、上記映像投影装置は、映像面がハーフミラーに面するようにしてハーフミラーごとに配置される。
【0005】
特許文献3には、基台上に略水平に配した舞台と、少なくとも舞台を挟んで舞台に接する空間に斜めに配置した複数のハーフミラーと、映像表示手段と、からなる疑似立体映像表示装置が記載されている。上記映像表示手段は、外部略水平方向からハーフミラーを透過して舞台を観察した場合にハーフミラーのミラー面により反射されてあたかも舞台上に映像が映し出されて見える位置に配置する。
【0006】
特許文献4には、実鏡映像結像光学系、鏡面反射機能を有する反射面、第1被観察物、及び第2被観察物を具備している表示装置が記載されている。上記実鏡映像結像光学系は、所定位置に配置される観察対象物の実像である実鏡映像を所定の対称面に対して当該観察対象物の面対称位置に結像させる。上記第1被観察物は、上記反射面における鏡面反射による虚像である鏡映像を上記対称面に対して上記実像と同じ側から観察し得る位置に配置される。上記第2被観察物は、上記対称面を挟んで上記第1被観察物とは反対側の空間に配置される上記観察対象物である。
【0007】
特許文献5には、対向させた2つの映像表示装置と、これら2つの映像表示装置の間に傾斜して設置されたハーフミラーを備えた映像装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4137344号公報
【特許文献2】特公平6-34143号公報
【特許文献3】特許第2759173号公報
【特許文献4】特許第5063494号公報
【特許文献5】特開平8-122695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、車両の主に後部乗客に反射虚像を提示するものであり、後部乗客に対して一方的な一系統の表示しかできない。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術は、複数の観察者に対し、複数方向の視点に見合う映像を虚像で提供するものであるが、観察者(観察方向)の数だけハーフミラーが必要であり、大きなスペースを要しコストが嵩む。また、特許文献3に記載の技術も、特許文献2に記載の技術と同様の課題を有する。
【0011】
また、特許文献4に記載の技術は、奥行き方向に2多重の像を同一方向(同一人物側)で観察可能にする技術であり、互いに対向する2人の観察者への表示を考慮した技術ではない。
【0012】
本発明者は、対面コミュニケーションの場面において、一方の観察者に対して提示することが適切とは言えない情報を、他方の観察者だけに対して提示すべきような場面を想定した。このような場面であっても、そのような提示が可能な表示装置が望まれる。
【0013】
特許文献5に記載の技術では、互いに対向する2人の観察者に対し互いに独立の映像を視認させるものの、それらの映像は同じ被写体を互いに対向する方角から映写した映像を想定している。しかしながら、特許文献5に記載の技術は、互いに対向する2人の観察者に異なる文字情報を提示することを想定しておらず、その用途が限られ、上述のような場面で使用できるものではない。
【0014】
本開示は、上記の点に鑑みなされたものであり、装置の製造コストを抑えるとともに、互いに対向する複数の観察者について、一方の観察者に他方の観察者とは異なる文字情報を視認させることが可能な表示装置及び表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本実施の形態に係る表示装置は、互いを対向させた第1表示パネル及び第2表示パネルと、前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとの間に傾斜して設置されるハーフミラーと、を備え、前記ハーフミラーを介して第1観察者と第2観察者とが互いに実像を視認可能な状態で設置され、前記ハーフミラーは、前記第1表示パネルに表示させた第1画像を前記第1観察者が視認可能な方向へ反射させ、且つ、前記第2表示パネルに表示させた第2画像を前記第2観察者が視認可能な方向へ反射させ、前記第2画像は文字情報を含む画像であり、前記第1画像は前記第2画像と異なる文字情報を含む画像である、ものである。
【0016】
本実施の形態に係る表示方法は、互いを対向させた第1表示パネル及び第2表示パネルと、前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとの間に傾斜して設置されるハーフミラーと、を備えた表示装置を、前記ハーフミラーを介して第1観察者と第2観察者とが互いに実像を視認可能な状態で設置し、前記第2表示パネルに文字情報を含む画像である第2画像を表示し、前記第1表示パネルに前記第2画像と異なる文字情報を含む画像である第1画像を表示し、前記ハーフミラーを介して前記第1画像を前記第1観察者が視認可能な方向へ反射させ、前記ハーフミラーを介して前記第2画像を前記第2観察者が視認可能な方向へ反射させる、ものである。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、装置の製造コストを抑えるとともに、互いに対向する複数の観察者について、一方の観察者に他方の観察者とは異なる文字情報を視認させることが可能な表示装置及び表示方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1に係る表示装置の一構成例を示す概略側面図である。
【
図2】
図1の表示装置において第2観察者によって視認される第2画像と第1観察者とが重畳された視覚像の一例を示す図である。
【
図3】
図1の表示装置において第1観察者によって視認される第1画像と第2観察者とが重畳された視覚像の一例を示す図である。
【
図4】
図1の表示装置におけるパネル視認の光路について説明するための概略側面図である。
【
図5】
図1の表示装置における対面相手視認の光路について説明するための概略側面図である。
【
図6】
図1の表示装置における相手が視認するためのパネルを直視する光路について説明するための概略側面図である。
【
図7】
図1の表示装置における相手が視認するためのパネルを視認する光路について説明するための概略側面図である。
【
図8】実施の形態2に係る表示装置の一構成例を示す概略側面図である。
【
図9】実施の形態2に係る表示装置の他の構成例を示す概略側面図である。
【
図10】表示装置の一構成例を示す制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0020】
<実施の形態1>
実施の形態1に係る表示装置の構成例について、
図1~
図7を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態に係る表示装置の一構成例を示す概略側面図である。
図2は、
図1の表示装置において第2観察者によって視認される第2画像と第1観察者とが重畳された視覚像の一例を示す図で、
図3は、
図1の表示装置において第1観察者によって視認される第1画像と第2観察者とが重畳された視覚像の一例を示す図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係る表示装置1は、互いを対向させた第1表示パネル11及び第2表示パネル12と、第1表示パネル11と第2表示パネル12との間に傾斜して設置されるハーフミラー13と、を備える。なお、表示装置1の筐体やその筐体において第1表示パネル11、ハーフミラー13、及び第2表示パネル12を保持する機構など、その他の構成は問わない。
【0022】
表示装置1は、ハーフミラー13を介して(ハーフミラー13を経て)第1観察者U1と第2観察者U2とが互いに実像を視認可能な状態で設置される。
【0023】
第1表示パネル11、第2表示パネル12はいずれも液晶パネル又はOLED(Organic Light Emitting Diode)パネルなどとすることができるが、レーザ光源を有する他の表示方式のパネルなど、その表示方式は問わない。但し、表示装置1はハーフミラー13を用いて反射等を行わせることから、第1表示パネル11及び第2表示パネル12はいずれも偏光性を有する表示パネルとする。また、第1表示パネル11と第2表示パネル12とは、表示方式と、表示面での画素数や最大表示輝度や最小表示輝度などの表示性能とが同じであることが好ましい。但し、ハーフミラー13の透過性能、反射性能等との兼ね合いで、いずれか1又は複数又は全てを異ならせることもできる。
【0024】
第1表示パネル11には第1画像(以下、
図3の第1画像31で例示)を表示させ、第2表示パネル12には第2画像(以下、
図2の第2画像32で例示)させる。そのため表示装置1は、第1表示パネル11、第2表示パネル12のそれぞれに対して独立した表示制御(異なる画像データの入力)を行うことが可能になっている。第1画像31、第2画像32による表示内容は本実施の形態の特徴の一つとすることができ、その詳細については後述する。
【0025】
ハーフミラー13は、第1表示パネル11に表示させた第1画像31を第1観察者U1が視認可能な方向へ反射させ、且つ、第2表示パネル12に表示させた第2画像32を第2観察者U2が視認可能な方向へ反射させる。
【0026】
ハーフミラー13はこのような機能をもつように構成された単一の(1枚の)ハーフミラーである。ハーフミラー13は、例えば、透明基板21の片面に半透過反射膜(偏光性反射膜等)22、対面には反射防止膜23が成膜されて構成されることができる。透明基板21、半透過反射膜22、及び反射防止膜23は一体としてハーフミラーとしての機能を果たすことができる。
【0027】
上述のようにハーフミラー13は、第1表示パネル11と第2表示パネル12との間に傾斜して設置される。例えば、ハーフミラー13を仰角45度程度に設置し、その上方、下方に独立の表示面としてそれぞれ第1表示パネル11、第2表示パネル12の表示面が位置するように配設することができる。表示装置1における各構成要素の配置は、本実施の形態の特徴の一つとすることができ、その詳細例については後述する。
【0028】
第1表示パネル11、第2表示パネル12、及びハーフミラー13を備える表示装置1は、2名の観察者(第1観察者U1と第2観察者U2)との間(例えば中間)に設置され、透明基板21により空間を概ね遮蔽することができる。
【0029】
このとき、ハーフミラー13は、飛沫感染防止用の透明シールドとして機能させることができる。表示装置1を設置しておくことで、受付業務、対面窓口業務等の対面業務の担当者(第1観察者U1)と不特定多数の来客(第2観察者U2)とが対峙した場合でも、その間に透明シールドの板を配することになる。よって、ハーフミラー13は、このような場面において、防犯用途だけでなく、ウイルス(新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス等)や菌等の病原体の飛沫を遮断する遮蔽シールド(隔離シールド)として、空気流通経路を遮断する役割を果たすことができる。
【0030】
ここで、上述した対面業務は、例えば、各種商品の対面販売場所、空港や国境の税関のカウンタ、観光案内所のカウンタ、病院の受付、役所の受付、銀行窓口、商品販売店舗のレジスターなどの業務を指すことができ、いずれも不特定多数の者との対話が必要な業務である。このような業務においては、対面コミュニケーション時のウイルスや菌等の拡散防止の観点から飛沫感染防止の対策が求められ、特に外国人の入国や観光客の案内に関する業務についてはより求められる。しかし、その対策は、ハーフミラー13が遮蔽シールドとして機能するため、表示装置1を使用することで実現できる。
【0031】
上述したように、表示装置1は、ハーフミラー13を介して第1観察者U1と第2観察者U2とが互いに実像を視認可能な状態で設置され、且つ、ハーフミラー13は上述のような反射機能を有する。なお、ハーフミラー13は、反射光と透過光の強さがほぼ同じとすることができるが、両者が完全に一致する必要はなく、両者に差があってもよい。つまり、ハーフミラー13の両側の反射面での反射率は50%に限ったものではなく、両側の観察者がいずれもハーフミラー13での透過光と反射光とを双方視認可能であればよい。
【0032】
よって、表示装置1では、
図2及び
図3で例示するように、表示内容を実像(ハーフミラー13を透過した像)に重畳して表示することができる。より具体的には、表示装置1はハーフミラー13を介して、第1観察者U1に第1画像31と第2観察者U2の実像41とを重畳して提示し(
図3)、且つ、第2観察者U2に第2画像32と第1観察者U1の実像42とを重畳して提示する(
図2)ことができる。
【0033】
このように、表示装置1では、半透明シールドとしてのハーフミラー13を介してお互いが透過像として視認され、パネル表示面の表示情報(第1画像31、第2画像32)が拡張現実(AR)的に重畳表示される。ここで、
図2及び
図3で例示したように、2人の観察者それぞれの視界に、奥行上概ね相手の顔面程度の距離にパネル表示面の表示画像がAR的に重畳表示されるように、表示装置1の各観察者に対する配置や表示情報のサイズなどを設定しておくことが好ましい。
【0034】
また、第1表示パネル11及び第2表示パネル12にそれぞれスピーカを設置又は内蔵しておくこともでき、その場合、スピーカからの出力音もハーフミラー13に反射させて双方向に伝達することができる。
【0035】
(第1画像31及び第2画像32の詳細及び変形例)
次に、本実施の形態における特徴の一つである第1画像31と第2画像32について説明する。第2画像32は文字情報を含む画像とし、第1画像31は第2画像32と異なる文字情報を含む画像とする。
【0036】
表示装置1は、第1表示パネル11、第2表示パネル12に偏光性を有するものを用い、また観察者の相手方が無偏光(ランダム偏光)照明下で視認されることを念頭に、互いに異なる画像(第1画像31、第2画像32)を相手の実像とともに視認させるものである。異なる画像を視認させることで、表示効率が上がるだけでなく、相対して位置する第1観察者U1と第2観察者U2とが互いに異なる画像を視認させることができることから、情報の秘匿化を行うこともできる。
【0037】
つまり、表示装置1は、2人の観察者それぞれに独立な情報を表示させることができ、且つ2人の観察者それぞれが相手方を透明なパネル(ハーフミラー13)を介して直接視認することができ、且つ相手方の観察者の視認情報を他方には不可視とできる。このように、表示装置1によれば、互いに対向する複数の観察者について、一方の観察者に他方の観察者とは異なる文字情報を視認させることが可能になり、その構成も簡易なため、装置の製造コストを抑えることもできる。
【0038】
また、表示装置1は、相手方の観察者の視認情報を他方には不可視とし、一方に対して秘匿すべき情報を他方に表示させることができるため、特に対面コミュニケーションを要する場所で有益に使用されることができる。つまり、表示装置1は、特に対面コミュニケーションの場面において、一方の観察者に対して提示することが適切とは言えない情報を、他方の観察者だけに対して提示すべきような場面であっても、そのような提示が可能になる。
【0039】
図2の例における第2画像32は、第2表示パネル12に表示されてハーフミラー13で反射され第2観察者U2が視認可能となるものであり、第2観察者U2へ伝える情報(ここでは挨拶文)が文字情報として含まれる画像となっている。挨拶文のような文字情報を表示させることで、第1観察者U1は第2観察者U2との会話を減らすことができるため、より飛沫感染防止対策として有益になる。
【0040】
また、第2画像32のような挨拶文は第1観察者U1には伝える必要がない文字情報であり、これを
図3の例のように第1画像31に含めないことで、表示領域の有効活用ができ表示効率を向上させることができると言える。
【0041】
図3の例における第1画像31は、第1表示パネル11に表示されてハーフミラー13で反射され第1観察者U1が視認可能となるものであり、第2観察者U2の体温、入国元及び入国日等の渡航履歴、注意喚起情報、犯罪歴などの文字情報が含まれる画像となっている。このような第1画像31の表示により、接客業務等の対面業務に携わる第1観察者U1は、ここに含まれる情報を心得た対応を行うことができる。
【0042】
第1画像31、第2画像32に含まれる文字情報又は画像そのものは、表示装置1に内蔵された記憶装置から読み出すこと、外部装置から受信することなど、その入手元は問わない。また、表示装置1は、第1画像31、第2画像32として、例えば同じ又は異なる動画に、異なる文字情報を重畳するように嵌め込んだものを表示させることができる。なお、このように重畳される文字情報は上記動画を拡張させる情報に該当する。
【0043】
上述した体温の例のように、文字情報又は画像そのものは、表示装置1に内蔵又は外付けたセンサによる検知結果から得ること、あるいはその検知結果に基づき生成することもできる。このセンサは、複数種類のセンサとすることができ、表示装置1に内蔵されるか、有線又は無線により接続され、表示装置1の本体の設置場所又はそこから離れた場所(例えばカウンタが設置された部屋等の入り口など)に設置することができる。
【0044】
図1~
図3では、対面業務の担当者(職員等)を第1観察者U1、旅行者や来客等の不特定多数の観察者を第2観察者U2として説明している。この場合、特に第2観察者U2についての観察者情報は、それを検出するセンサ(図示せず)を表示装置1に備えることで得るようにすることが好ましい。ここで観察者情報とは観察者に関連する情報である。これにより、第1表示パネル11に表示させてハーフミラー13で反射させる第1画像31は、そのセンサの検出結果に応じた、第2観察者U2についての観察者情報を示す画像とすることができる。特にウイルス対策としては、クラスタ発生場所からの移動、変異種の感染可能性等のリスクがあることから、体温計測等の観察者情報を得るためのセンシングを対面以前の入口で実施することが望ましい。
【0045】
第2観察者U2についての観察者情報及びそれを検出するセンサの例について説明する。
上述したように第2観察者U2の観察者情報は第2観察者U2の体温とすることができ、その場合のセンサは非接触体温計、サーモセンサなどとすることができる。また、観察者情報は、体温以外の生体情報とすることもでき、その場合、生体情報の種類に応じたセンサを設けておけばよい。
【0046】
また、観察者情報は、不審者である度合いを評価した結果を示す情報とすることができる。その場合、センサは、視線センサとすること、あるいはカメラとカメラで撮影した撮影画像に基づく画像認識処理により第2観察者U2の挙動の特徴を検知し不審者である度合いを評価する評価部とすることができる。また、観察者情報は、第2観察者U2の人種、年齢、性別などを示す属性情報とすることができ、その場合、センサとして、カメラとカメラで撮影した撮影画像に基づく画像認識処理により属性情報を推測する推測部とを有することができる。また、観察者情報は、国籍、氏名、性別、年齢、渡航履歴、犯罪履歴、菌やウイルス等の感染歴などの個人情報とすることができ、その場合、センサとして、カメラとカメラで撮影した撮影画像に基づく画像認識処理により上記個人情報を判定する判定部とを有することができる。無論、観察者情報はこれらの個人情報のうちの一部とすることもできる。
【0047】
また、表示装置1では、このように個人情報あるいは属性情報を特定して文字情報として提示するとともに、それに基づき抽出したリスク情報もテキスト化し、受付担当者(ここでは第1観察者U1)に表示、認識させ対応を促すこともできる。なお、上述した画像認識処理としては、例えば撮影画像から特徴量を抽出して予め記憶された特徴量とのマッチング(照合)を行う処理など、様々な処理を適用することができる。
【0048】
上述した評価部、推測部、及び判定部はいずれも、例えば表示装置1の本体にネットワークを介して接続されたクラウドサーバ装置等のサーバ装置(図示せず)に搭載することもできる。このサーバ装置は、それぞれ評価、推測、判定のために必要なデータを蓄積したデータベースを搭載又は接続しておくことができ、またそれぞれ評価、推測、判定を行うように機械学習した学習済みモデルを搭載しておくこともできる。
【0049】
また、表示装置1は、例えば渡航履歴及び犯罪履歴の少なくとも一方を得ることで、上述した注意喚起情報の提示の要否を判定し、必要であれば履歴に合った注意喚起情報を第1画像31に含めて表示させることができる。この例のように、表示装置1は、センサで検出した結果(検出情報)そのものではなく、その結果に基づき生成した情報を観察者情報として第1画像31に含めて表示させることもできる。
【0050】
そして、表示装置1は、例示したような第2観察者U2についての観察者情報を第1観察者U1にのみ視認できるように、第1画像31のみに含め第2画像32には含めないようにする。
【0051】
また、表示装置1はタクシーやハイヤー等の自動車の運転席と助手席との間や運転席と後部座席との間に配設しておくこともできる。特にタクシーやハイヤーには主に防犯の観点から運転席と後席の間に透明遮蔽版が設けられていたが、飛沫感染防止の観点では車室内を前後左右において隔離するような全面タイプも求められている。
【0052】
自動車に表示装置1を配設する場合、不特定多数の搭乗者(乗客)となる第2観察者U2についての注意喚起情報は、次のような場合にのみ表示させるようにしてもよい。即ち、第2観察者U2がもつ特定の不審なバック、刃物や銃器等の危険物、第1観察者U1となるドライバの振向きのいずれか1又は複数を検知した場合にのみ、注意喚起情報を表示させるようにしてもよい。
【0053】
危険物は、第2観察者U2がもつバックや衣服のポケットから取り出される場合や、背中に隠し持っていたものをドライバ側に出す場合があり、カメラとカメラでの撮影画像に基づく検出部とにより検知できる。また、ドライバの振り向きは搭乗者が危険人物として接近したことを気づいた場合になされることがあり、この振り向きもカメラと検知部とにより検知できる。
【0054】
このようにして、表示装置1は、ドライバの後方(運転席と助手席との隣に設置されている場合には隣り)に危険物が接近したことや危険人物が接近したことを検知した場合にのみ注意喚起情報を表示させることができる。この場合、注意喚起情報は、文字情報の代わりに又は文字情報に加えて危険人物を示すマーカやアイコンとして表示することもできる。
【0055】
このように、表示装置1は、危険物や危険人物の接近を検知した場合にのみ、観察者情報を表示させるように表示内容を能動的に切替えることもでき、これにより処理負荷の軽減が図れる。上記切替えの処理は、搭乗者をデータベースから評価、推測、判定などの処理と、ドライバにのみ視認可能な状態で注意喚起情報等の観察者情報を表示させる処理と、を含むことになる。これにより、搭乗者に気づかれることなくドライバにのみ警告を行い、犯罪を未然に防止することができる。特に、犯罪履歴をもつ搭乗者の場合にはその点もドライバが把握できるため、犯罪を未然に防止し易くなる。また、上記接近をネットワーク経由ではなく表示装置1の本体のみで検知させ、その検知の時点で上記マーカやアイコンを表示させることで、詳細な観察者情報を得る前に素早く注意喚起を行うことができる。
【0056】
また、上述の例のように表示装置1を自動車の運転席と助手席との間や運転席と後部座席との間に配設しておくことで、外国旅行者等の搭乗者への利便性を図りつつ、感染防止やドライバへのリスク回避、警告情報提示等を両立でき、車載機器としても有効である。また、自動車の運転席と後部座席の間に表示装置1を設置する場合には、例えば感染予防のための遮蔽板(遮蔽シールド)として天井とシート間に設置することができる。また、表示装置1を自動車に設置する場合には、バックミラー経由でも
図3の実像41及び第1画像31を視認可能としておき、ドライバの頭部回転を検知してそれに応じて第1画像31の左右を反転するように構成しておくこともできる。
【0057】
また、表示装置1をタクシーやハイヤーに搭載する場合に限らず、第2観察者U2についての注意喚起情報等の観察者情報の一部は、別途設けた表示ボタンの押下があった場合にのみ表示させることもできる。あるいは、第1観察者U1の所定の表情や所定のジェスチャーを検知するセンサでの検知があった場合のみ表示させることもできる。
【0058】
また、第1画像31で例示したように、様々な種類の観察者情報のそれぞれを示す文字情報を含むことができ、どのような種類の観察者情報を含めるかは表示装置1の用途、設置場所などによって決めればよい。
【0059】
第1画像31に含まれる文字情報のうち一部は第1観察者U1が第2観察者U2から直接聞き出すこともできる情報である。しかし、表示装置1側で取得して表示させることで、第1観察者U1は第2観察者U2との会話を減らすことができるため、より飛沫感染防止対策として有益になる。
【0060】
また、第1画像31に含まれる文字情報の一部又は全部は、上述した様々な例からも分かるように、第2観察者U2にとって不快に感じるものであり、見えてはならないものである場合が多い。よって、第2画像32には、このような文字情報の一部又は全部を含めないことが、第1観察者U1と第2観察者U2との円滑な対面コミュニケーションや第1観察者U1の第2観察者U2に対する対応を行う上で有益となる。
【0061】
また、
図2で例示する第2画像32に含まれる文字情報は英文で記述された情報となっているのに対し、
図3で例示する第1画像31に含まれる文字情報は日本語で記述された情報となっている。この例のように、第1画像31と第2画像32とで文字情報における表示言語を異ならせることもできる。
【0062】
ここで、第1画像31に含める文字情報の表示言語は、第1観察者U1用に予め設定しておくことができる。第2画像32に含める文字情報の表示言語は、第2観察者U2についての観察者情報を得て、そこから母国語を推定して決定することや、推定精度が低ければ推定した上位数か国で多用されている言語に決定することができる。また、さらに推定精度が低ければ英語に決定することができる。挨拶文などの定型文は、予め各言語の定型文を格納しておきそれを読み出すことができるが、第1観察者U1用に設定した言語から決定した母国語へ自動翻訳する自動翻訳システムを利用することで上記母国語の文字情報を得ることもできる。
【0063】
定型文以外の発言についても同様に自動翻訳システムを利用して得ることができる。発言は、その観察者についての観察者情報として取り扱うことができ、センサとしてはマイクロフォンを用いることができる。例えば、表示装置1において、1か所又は各観察者用に2か所、マイクロフォン(図示せず)を内蔵又は接続しておくことができる。そして、このマイクロフォンで取得した音声をいずれの観察者からの音声か判別(音声解析)し、テキスト変換、自動翻訳して、相手側が視認する画像に相手の発言情報を相手の母国語での文字情報として含めて提示することができる。この場合、第1観察者U1についての観察者情報としての発言情報も同様に、センサとしてのマイクロフォンで取得して第2観察者U2側に表示させることになる。
【0064】
例えば、飛沫感染防止対策を施しながら異言語でのコミュニケーション等を行う場合、一方へ表示させる情報はもう一方には不要であるため、対話者がそれぞれ表示装置を使用し、且つ両者の間に鏡像で視界を遮る不要なシールドを配することが考えられる。しかし、そのような場面でも、本実施の形態に係る表示装置1は、ハーフミラー13を有効活用して一方へ表示させる情報はもう一方には不要とする表示が可能で且つ飛沫感染防止対策も施すことができる。よって、表示装置1は、上記コミュニケーション等を支援する双方向性を有する新世代の透明ディスプレイとして活用することができる。
【0065】
第2観察者U2には、透過視した第1観察者U1(接客担当者等)の実像42とともに、自国語の文字情報(翻訳文等)も視認できるようになるため、第1観察者U1に対する第2観察者U2の警戒を解き、両者の意思疎通が図れ、利便性を向上させることができる。
【0066】
これらの様々な例のように、表示装置1では、対面業務の入口等において体温計測や画像認識などの処理を実施し、第2観察者U2についての観察者情報を実像41と紐づけるようにして文字等でAR的に情報を表示することができる。
【0067】
よって、タクシー等の運行業務も含めた対面業務において、不特定多数の外来者等の観察者についての出身国や感染履歴や犯罪履歴や体温等のリスク情報も担当者側だけに提示される観察者情報に含むことができる。この観察者情報は、担当者にとっては有益な情報となり、且つ、外来者等の観察者には不可視であり秘匿され、当該観察者の属性情報や個人情報が表示されていることを当該観察者に悟られることもないため当該観察者の感情を害するリスクもなくなる。また、当該観察者の感情を害するリスクがないため、犯罪を誘発する危険性も減らすことができる。
【0068】
さらに、表示装置1は、自動翻訳機能を付加することで異国語にも対応してAR重畳表示を行うことができ、リスク情報や個人情報が視認されることを認知、警戒されないよう、少なくとも一方向には秘匿情報の不可視化も同時に実現することができる。表示装置1は、このように有益な双方向性且つ透明なAR重畳表示ディスプレイとして実現させることができる。
【0069】
また、主に第1画像31が第2画像32と異なる文字情報を含む画像とした点を強調して説明したが、上述したように、これと併せて第2画像32は第1画像31と異なる文字情報を含む画像とすることもできる。即ち、第1画像31と第2画像32とは互いに異なる文字情報を含む画像とすることもできる。
【0070】
以上の例のように、第1画像31に含まれる文字情報及び第2画像32に含まれる文字情報は、表示言語と視認対象の観察者についての観察者情報との少なくとも一方が互いに異なるようにすることができる。
【0071】
また、受付業務等の担当者(職員等)を第1観察者U1、不特定多数の観察者を第2観察者U2として説明したが、例えば対面でのお見合い等の場合のように、両者が不特定多数の観察者である場合にも表示装置1を用いることもできる。その場合には、第1観察者U1についての観察者情報も同様にセンサで取得して第2観察者U2側に表示させることが望ましい。
【0072】
この場合の表示言語に関して補足すると、お見合いの場面など、表示装置1の使用場面によっては、第1画像31に含める文字情報の表示言語も同様に、第1観察者U1についての観察者情報を得て、そこから母国語を決定して得ることもできる。
【0073】
(表示装置1における各構成要素の配置例)
次に、
図4及び
図5を参照し、ハーフミラー13、第1表示パネル11、及び第2表示パネル12の配置例における単純なハーフミラーとの違いについて説明する。
図4は、
図1の表示装置1におけるパネル視認の光路について説明するための概略側面図で、
図5は、
図1の表示装置1における対面相手視認の光路について説明するための概略側面図である。
【0074】
図4において対峙する第1観察者U1及び第2観察者U2を側面視したように、まず上下にそれぞれ液晶パネル等の第1表示パネル11及び第2表示パネル12を配し、半透過板(透明基板21)を概ね45度で2者間に設置する。以下、第1表示パネル11、第2表示パネル12がいずれも液晶パネルである例を挙げて説明するが、他の表示方式でも同様である。各液晶パネルの出射偏光方向としては各種仕様が存在するが、ここでは透明基板21の傾斜を基準としてS偏光(電解振動方向が
図4の紙面に垂直)に定める。
【0075】
また、透明基板21の一面には偏光性反射膜22として偏光選択フィルムを貼合する。偏光選択フィルムとしては、様々な膜を採用することができるが、例えば金属製で高アスペクト比且つ波長未満の微細縞状構造による、いわゆるワイヤグリッドフィルムが好適である。
【0076】
まず
図4を参照して、ハーフミラー13であるパネルで液晶パネルでの表示画像を反射像として視認する場合について説明する。S偏光に定めた液晶パネルの出射光は、偏光性反射膜22の例として選定した偏光選択性反射膜にて入出射角45度で反射されるが、S偏光反射率はほぼ90%(可視域の代表値として波長550nmで概算)反射され、良好に視認できる。つまり、第1観察者U1のパネル視認効率Ep1はS偏光反射率Rsにほぼ等しく、第2観察者U2のパネル視認効率Ep2もS偏光反射率Rsにほぼ等しく、いずれも約90%となる。なお、このS偏光反射率Rsも含め、以下に説明する反射率や透過率の値は選定した偏光選択性反射膜についての一例である。ハーフミラー13について反射率が50%である例を挙げたが、ガラス等の透明基板21自体の透過率や膜の吸収で数%劣化することも考慮すると、この例では事実上約2倍の明るさが得られる、もしくは半分の表示輝度で済む。
【0077】
図5を参照して、相互に相手を直接視認する場合について説明する。通常蛍光灯、白熱灯、LED(light emitting diode)等の照明装置51,52や、太陽光等は無偏光(ランダム偏光)であって、これによって照明された人物像もまた無偏光であり、成分で考えるとP偏光、S偏光とも反射率は50%と考えてよい。つまり、第1観察者U1の相手視認効率Ec1はP偏光透過率TpとS偏光透過率Tsの平均値にほぼ等しく、第2観察者U2の相手視認効率Ec2もP偏光透過率TpとS偏光透過率Tsの平均値にほぼ等しい。S偏光成分は事実上0.03%に遮断されるが、P偏光成分は88%透過するため、相手視認透過率Ec1、Ec2ともに全体として44%となる。ハーフミラー13について反射率が50%(透過率が50%)の例を挙げたが、ガラス等の透明基板21自体の透過率や膜の吸収で数%劣化することも考慮すると、この例では同等の明るさで相手を視認できることになる。
【0078】
これらの試算から、S偏光を上述のように定めた場合の偏光選択性反射膜では、通常のハーフミラーと比較して相互視認において同等、液晶パネル視認において約2倍の効率が得られることが判る。
【0079】
このように、ハーフミラー13は偏光依存型(つまり偏光素子を有するもの)とし、且つ、第1画像31の第1表示パネル11からの出射偏光と第2画像32の第2表示パネル12からの出射偏光とを、ハーフミラー13の反射面基準でS偏光に定めることができる。これにより、ハーフミラー13は高透過率と高反射率を両立させることができるようになる。
【0080】
さらに、表示装置1では、上述したように、両観察者がハーフミラー13越しに前方を視認可能であるため、ハーフミラー13を介して第1観察者U1と第2観察者U2とが相互に実像を視認できる。さらに、表示装置1では、両観察者がそれぞれ異なる重畳画像を視認でき、この重畳画像のうち第1画像31は第2画像32と異なる文字情報を含む画像である。よって、偏光依存型のハーフミラー13を用い且つS偏光を定めた例では、そうでない例に比べて、文字情報を含む画像の視認と相手視認とを同等以上の効率で実現するとともに、秘匿すべき情報を事実上不可視とすることができる。
【0081】
ここで、
図6及び
図7を参照しながら、
図1の表示装置1における情報の秘匿性について説明する。
図6は、
図1の表示装置1における相手が視認するためのパネルを直視する光路について説明するための概略側面図である。また、
図7は、
図1の表示装置1における相手が視認するためのパネルを視認する光路について説明するための概略側面図である。
【0082】
第2観察者U2が第1表示パネル11を直視する光路は、
図6に示すようになる。ここで、
図6上、S偏光の振動方向は紙面に垂直であり、第2観察者U2第1表示パネル11を浅い角度で観察する場合もこの振動方向は全く同方向に維持されている。実施の形態1で説明した各構成要素の配置及び偏光性反射膜22として選定した偏光選択性反射膜においては、第2観察者U2が視認する第1観察者U1用パネルの光路が偏光選択性反射膜面に入射する角度は20度程度である。第2観察者U2の秘匿側パネルの視認効率Ed2はほぼ20度でのS偏光透過率Tsである。そして、選定した偏光選択性反射膜は、透過率角度依存性(S偏光透過率)が20度、550nmにおいて0.04%であり、液晶パネルの原理上直線偏光成分を可視としていることから、実用上十分不可視とできることが分かる。
【0083】
さらにこれに次ぐ秘匿化したい画像が見えてしまう可能性として、もう一面の液晶パネルの反射光が再度偏光選択性反射膜で反射される経路が想定され、この経路は
図7に示すようになる。最初に偏光選択性反射膜を通過する時点でS偏光透過率である0.04%、さらに未知の液晶パネル反射率P(おそらく10%未満)、さらに再度偏光選択性反射膜に至り反射されるS偏光反射率44%を乗じた値は0.02%×Pとなり、さらに不可視となっているのが分かる。
【0084】
ここで、どの程度不可視であれば良いかは厳密的に定義することが容易ではない。しかし、例えばガラス表面の無反射コートの例では、ガラス両面を加算した反射率8%に対し、簡易的にはMgF2単層を用いたのもので約1.5%、誘電体膜を用いたもので8%の約1/10である0.8%であることが当業者にとって共通認識となっている。従って、1%~0.8%を下回る効率は事実上十分、不可視と言えると推察できる。
【0085】
ここまで説明したように、本実施の形態に係る表示装置1は、両観察者それぞれに独立な文字情報を含む画像を表示し、両観察者それぞれが相手方を透明なパネルを介して直接視認でき、相手方の観察者の視認情報を他方には不可視とすることができる。よって、表示装置1では、装置の製造コストを抑えるとともに、互いに対向する複数の観察者について、一方の観察者に他方の観察者とは異なる文字情報を視認させること、つまり秘匿情報の不可視化が可能となる。
【0086】
一方で、透明液晶が蛍光膜のような実像型透明ディスプレイは、表裏双方向から同一映像が視認され、且つ一方は鏡像として視認されてしまう。本実施の形態に係る表示装置1では、ハーフミラー13において双方向に独立の情報を表示でき且つ透明であるため、このような現象を回避して、表示装置1を挟んで正対する複数名に、相手の視界に漏洩することなく文字情報等の情報を表示することができる。また、本実施の形態に係る表示装置1によれば、2系統の表示光学系を合体させるような大掛かりな構造も不要であり、製造コストも低減できる。本実施の形態に係る表示装置1は、例えば、インバウンド観光での対面コミュニケーションを支援する際においても、外来種病原体の隔離防止やその検出結果の一方向限定警告表示に有効に活用することができる。
【0087】
なお、
図2及び
図3では第1画像31と第2画像32とでハーフミラー13上での反射領域の形状やサイズが異なる(つまり視認される形状やサイズが異なる)例を挙げているが、同じ形状やサイズであってもよい。ハーフミラー13の反射面のサイズ以下の第1画像31、第2画像32であり且つ実像41,42を透過させる領域を開けておればそれぞれ第1観察者U1、第2観察者U2により視認可能となる。また、第1画像31、第2画像32の形状やサイズは適宜、表示する情報量など表示内容に応じて変更するようにしてもよい。
【0088】
<実施の形態2>
実施の形態2に係る表示装置の構成例について、
図8及び
図9を参照しながら実施の形態1との相違点を中心に説明するが、実施の形態1で説明した様々な応用例が適用可能である。
図8は、本実施の形態2に係る表示装置の一構成例を示す概略側面図で、
図9は、実施の形態2に係る表示装置の他の構成例を示す概略側面図である。
【0089】
本実施の形態では、秘匿すべき画像の不可視化のための構造が表示装置1と異なる。
まず、
図8を参照して、不可視のために光路を遮断する構成例について説明する。
【0090】
図8に示す表示装置8は、第1表示パネル11、第2表示パネル12、及びハーフミラー83を備える。ハーフミラー83は第1観察者U1側に半透過反射膜24を形成しておく。さらに、表示装置8は、第1表示パネル11の表面に薄い遮光板群であるルーバ81を備える。
【0091】
ルーバ81を構成する遮光板群は、特に位置、角度、長さが重要であって、第1観察者U1が反射面越しに第1表示パネル11を視認する光線束と角度を一致させるとともに、次のようにして設計を行うことができる。即ち、第1表示パネル11の最も第2観察者U2側の縁辺から第1の遮蔽板を設置し、その先端と第2観察者U2の視点を結ぶ光線の延長と第1表示パネル11との交点から第2の遮蔽板を設置し、このような幾何学的関係を繰り返す。これにより、第2観察者U2に不可視で且つ第1観察者U1には(遮蔽板の厚さ以外は)全可視となる幾何学的条件が満たされる。なお、このような条件を満たせば、遮光板の数や角度や長さは図示する例に限らない。
【0092】
不可視化のみを目的とする場合には、ルーバ81ではなく領域を遮蔽することも考えられるが、ルーバ81のようなルーバ構造とすることで第1観察者U1の可視角度域は良好に確保されることが
図8からも理解できる。また、
図8の構造では、単純なハーフミラーと遮蔽板となる板材のみで構成できるため、低廉な材料費で実現可能である。
【0093】
次に、更に他の構成例について
図9を参照しながら説明する。
図9に示す表示装置9は、第1表示パネル11、第2表示パネル12、及びハーフミラー93を備える。ハーフミラー93は、第1観察者U1側に半透過反射膜24を形成しておくとともに、第2観察者U2が第1表示パネル11と見込む角度範囲にのみ第2観察者U2側に偏光フィルタ25が設置される。この偏光フィルタ25は、遮光のみを目的として設置されるものであるため、例えばヨウ素系吸収タイプのような安価なフィルタで構わず、フィルムの消光比次第でその性能を決定できる。
【0094】
不可視化のみを目的とする場合にはこの領域を遮蔽するのみでも良いが、偏光フィルタ25を用いることで、その領域での明るさは低減するものの、第1観察者U1の視界は限定されず、照明装置51から発光される照明光が無偏光なため好適であると言える。この点は無偏光な太陽光等でも同様である。
【0095】
<他の実施の形態等>
上記実施の形態1,2では、表示装置の各構成要素の機能について説明したが、表示装置としてこれらの機能が実現できればよい。また、各実施の形態に係る表示装置の使用場所(使用場面)は例示したものに限らない。また、各実施の形態に係る表示装置は、ハーフミラーが第1表示パネル11及び第2表示パネル12と平行になるような状態に折り畳みが可能な装置とすることもでき、これにより、非使用時には装置の占有スペースを少なくすることができる。
【0096】
また、上記実施の形態1,2では、表示装置の両側において第1観察者U1と第2観察者U2が存在する場面について説明したが、第1観察者U1側には他の観察者が存在してもよく、第2観察者U2側にも他の観察者が存在してもよい。この場合、第2観察者側に他の観察者が存在する場合には当該他の観察者についての観察者情報も第1表示パネル11に表示させることや、第1観察者側の他の観察者についての観察者情報も第2表示パネル12に表示させることもできる。
【0097】
また、上記実施の形態1,2では、第2画像が文字情報を含む画像で且つ第1画像が第2画像と異なる文字情報を含む画像であることを前提としたが、S偏光に定める構成は、そのような第1画像と第2画像の条件を満たさない場合にも適用できる。
【0098】
また、上記実施の形態1,2に係る表示装置は、ハーフミラー、第1表示パネル、及び第2表示パネルを備えることを前提とした。但し、第2画像が文字情報を含む画像で且つ第1画像が第2画像と異なる文字情報を含む画像である構成は、次の構成を満たせば実現できる。即ち、この場合、第1、第2の観察者それぞれが相手方を透明又は半透明のパネルを介して直接視認でき、且つ、相手方の観察者の視認情報を他方には不可視とするような他の構成を採用することもできる。
【0099】
また、実施の形態1,2等に係る表示装置はいずれも、
図10に示す制御ブロックを有する表示装置100とすることができる。即ち、表示装置100は、その全体を制御する制御部10、第1表示パネル11、第2表示パネル12、センサ部14、及び外部装置15を制御系として備える。センサ部14は、実施の形態1で説明したような各種センサを有する。外部装置15は、実施の形態1で説明した外部装置であり、第1画像31、第2画像32に含まれる文字情報又は画像そのものを制御部10側に送信する。なお、センサ部14、外部装置15はいずれも外付けの装置とすることもできる。また、制御部10は、情報制御部10a、記憶装置10b、及び表示制御部10cを有することができる。記憶装置10bは、外部装置15から受信した表示対象の画像データなど、表示対象となる画像又はその生成元の画像についての画像データや表示対象となる文字情報を示す文字データ等を格納する。情報制御部10aは、センサ部14からの出力結果であるセンサ情報を受信する。また、情報制御部10aは、例えば、センサ情報等に基づき記憶装置10bに格納された画像や情報を参照しながら表示対象の2種の画像データの生成を行い、表示制御部10cに渡す。表示制御部10cは、第1表示パネル11及び第2表示パネル12に接続される。表示制御部10cは、情報制御部10aから受け取った第1表示パネル11、第2表示パネル12のそれぞれに表示させる画像データを、各パネルの表示形式や表示タイミングに合わせて出力する。これにより、第1表示パネル11、第2表示パネル12においてそれぞれ第1画像31、第2画像32が表示される。
【0100】
制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、作業用メモリ、及び制御用のプログラムを記憶した不揮発性の記憶装置、各種インタフェースなどによって実現でき、この記憶装置は記憶装置10bとすることもできる。各種インタフェースは、第1表示パネル11、第2表示パネル12、センサ部14、外部装置15のそれぞれについてのインタフェースを含む。このプログラムは、第1表示パネル11、第2表示パネル12に画像を表示させる制御を行うプログラムを含むことができる。なお、制御部10は、例えばFPGA(field-programmable gate array)又はマイクロコンピュータ等の、使用者がプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。
【0101】
上記プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含み、例えば、ハードディスクドライブ等の磁気記録媒体、光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリを含む。半導体メモリは、書き換え可能な様々な種類のROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)とすることもでき、またSSD(Solid State Drive)として提供されるものも含む。また、上記プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によって電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介してコンピュータに供給されてもよく、例えば電気信号、光信号、及び電磁波を含む。
【0102】
また、本開示は、実施の形態1,2等で説明したような表示装置における表示方法としての形態も含む。この表示方法は、まず、かかる表示装置を、ハーフミラーを介して第1観察者と第2観察者とが互いに実像を視認可能な状態で設置する。かかる表示装置は、互いを対向させた第1表示パネル及び第2表示パネルと、第1表示パネルと第2表示パネルとの間に傾斜して設置されるハーフミラーと、を備える。そして、この表示方法は、第2表示パネルに文字情報を含む画像である第2画像を表示し、第1表示パネルに第2画像と異なる文字情報を含む画像である第1画像を表示する。この表示の順序は問わず、同時とすることが好ましい。そして、この表示方法は、ハーフミラーを介して第1画像を第1観察者が視認可能な方向へ反射させ、ハーフミラーを介して第2画像を第2観察者が視認可能な方向へ反射させる。その他の応用例については、実施の形態1,2等で説明した通りであり、その説明を省略する。
【0103】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、それぞれの実施の形態や変形例を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1、8、9、100 表示装置
10 制御部
10a 情報制御部
10b 記憶装置
10c 表示制御部
11 第1表示パネル
12 第2表示パネル
13、83、93 ハーフミラー
14 センサ部
15 外部装置
21 透明基板
22 偏光性反射膜
23 反射防止膜
24 半透過反射膜
25 偏光フィルタ
31 第1画像
32 第2画像
41 第2観察者の実像
42 第1観察者の実像
51、52 照明装置
81 ルーバ
U1 第1観察者
U2 第2観察者