(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158008
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】体外診断用ブロッキング剤、これを含む体外診断用担体、およびキット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/531 20060101AFI20221006BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G01N33/531 B
G01N33/543 501M
G01N33/543 501J
G01N33/543 525W
G01N33/543 525U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062588
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荻原 直人
(72)【発明者】
【氏名】金井 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】田尾 文哉
(57)【要約】
【課題】 本発明は、標的の抗原(抗体)に対する抗体(抗原)の特異吸着による発色を妨げない性能や、標的以外の抗原(抗体)を十分に覆い、標的以外の抗原(抗体)に対する染色剤の非特異吸着を防止し、発色を防止する性能を安定して発現できる、体外診断用ブロッキング剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 一般式1~3で示される少なくともいずれかのベタイン構造とポリエチレンオキサイド構造を有する水溶性ビニル系重合体(a)を含むことを特徴とする、体外診断用ブロッキング剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1~3で示される少なくともいずれかの構造およびポリエチレンオキサイド構造を含む水溶性ビニル系重合体(a)を含むことを特徴とする、体外診断用ブロッキング剤。
一般式1
【化1】
一般式2
【化2】
一般式3
【化3】
(式中、
R
2は炭素数1~6のアルキレン基、
R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基、
R
5は炭素数1~4のアルキレン基
Xは酸素原子または-NH-、
Yは-COO
-または-SO
3
-、
R
7は水素原子またはメチル基、
R
8は炭素数1~6のアルキレン基または炭素数1~6のヒドロキシアルキレン基、
R
10~R
14のうち4つは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基を表し、R
10~R
14のうちの1つはビニル系重合体の主鎖との結合位置を表し、
R
15は炭素数1~6のアルキレン基または炭素数1~6のヒドロキシアルキレン基を表し、
*はビニル系重合体の主鎖との結合位置を表す。)
【請求項2】
水溶性ビニル系重合体(a)100質量%を基準として、一般式1~3で示される構造を合計で20~80質量%含む、請求項1記載の体外診断用ブロッキング剤。
【請求項3】
水溶性ビニル系重合体(a)100質量%を基準として、ポリエチレンオキサイド構造を5~40質量%含む、請求項1または2記載の体外診断用ブロッキング剤。
【請求項4】
水溶性ビニル系重合体(a)が、下記(a1)または(a2)であることを特徴とする、請求項1~3いずれか記載の体外診断用ブロッキング剤。
(a1)下記一般式4~6で示される少なくともいずれかの単量体(A1)~(A3)を含む単量体の共重合体である。
(a2)下記一般式7~9で示される少なくともいずれかの単量体(A4)~(A6)を含む単量体の共重合体と、環状スルホン酸エステル(D1)、ω‐ハロゲン化アルキルスルホン酸金属塩(D2)、環状カルボン酸エステル(D3)およびω‐ハロゲン化アルキルカルボン酸金属塩(D4)からなる群から選ばれる一つ以上のベタイン化剤(D)との反応生成物である。
一般式4(A1)
【化4】
一般式5(A2)
【化5】
一般式6(A3)
【化6】
一般式7(A4)
【化7】
一般式8(A5)
【化8】
一般式9(A6)
【化9】
(式中、
R
1は水素原子またはメチル基、
R
2は炭素数1~6のアルキレン基、
R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基、
R
5は炭素数1~4のアルキレン基
Xは酸素原子または-NH-、
Yは-COO
-または-SO
3
-、
R
6は水素原子またはメチル基、
R
7は水素原子またはメチル基、
R
8は炭素数1~6のアルキレン基または炭素数1~6のヒドロキシアルキレン基、
R
16~R
20のうち4つは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基を表し、R
16~R
20のうちの1つはCH
2=C(R
21)を表し、
R
15は炭素数1~6のアルキレン基または炭素数1~6のヒドロキシアルキレン基を表し、
R
21は水素原子またはメチル基を表し、
**はベタイン化剤(D)との反応部位を表す。)
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の体外診断用ブロッキング剤で一部または全部が被覆されていることを特徴とする、標的物質に対する抗原または抗体が固定化された担体。
【請求項6】
請求項5に記載の固定化された担体を備えることを特徴とする体外診断による検体中の標的物質の検出に用いるためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外診断における担体への非特異的な吸着を防止するため、または当該非特異的な吸着による担体の凝集発生を防ぐために用いるブロッキング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
体外診断の分野では、抗原抗体反応による特異吸着を利用し、DNAやタンパク質を検出し可視化する方法が、サザンブロッティング法、ウエスタンブロッティング法、ELISA法、免疫染色法等として広く知られている。
抗体は、標的タンパク質以外とも非特異的な吸着反応を起こす。このような非特異的吸着を防ぐために、検出・測定対象表面を、非特異的な吸着は防ぐけれど特異的吸着は妨げないようなブロッキング剤で覆うような前処理が行われる。
【0003】
ブロッキング剤としては、正常血清、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、スキムミルクのような生体由来のタンパク質が知られている(特許文献1、非特許文献1)。
【0004】
また、生体由来成分を含まないブロッキング剤としては、Tween(登録商標)、Pluronic(登録商標)、ポリビニルアルコール、(メタ)アクリロイルモルホリンとその他のモノマーとの共重合体なども知られている(特許文献2、3、4、5)。
【0005】
また、ホスホリルコリン基を側鎖に有する共重合体を用いたブロッキング剤、スルホベタインやカルボベタイン構造を側鎖に有する共重合体を用いたブロッキング剤の開発も検討されている(特許文献6、非特許文献2、特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開公報WO2016/052690
【特許文献2】特開2004-219111号公報
【特許文献3】国際公開公報WO2016/17037
【特許文献4】特開平04-19561号公報
【特許文献5】特開2008-209114号公報
【特許文献6】特開平7-83923号公報
【特許文献7】特開2018-72148号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「渡辺・中根 酵素抗体法」学際企画株式会社刊 2002年
【非特許文献2】高分子論文集 第35巻 7号 423(1978)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1や非特許文献1に開示されるような生体由来のタンパク質は、ロットによって性能にばらつきが生じやすく、品質や供給の安定化の面で潜在的な課題を有している。
ところで、ブロッキング剤には、染色の標的である抗原(抗体)に抗体(抗原)が特異吸着し、発色する際、その発色を妨げないと共に、標的以外の抗原(抗体)を覆い、標的以外の抗原(抗体)には抗体(抗原)が吸着せずに発色しないことが求められる。また、標的物質である抗原(抗体)と、これに対する抗体(抗原)との間で生じる凝集反応を利用したイムノクロマト法やラテックス凝集測定法などの免疫測定系で用いる際は、ラテックス粒子や金コロイド粒子、磁性粒子などの分散安定性を発現することが求められる。
しかし、特許文献2~5に開示される界面活性剤や合成ポリマー等は、標的の抗原(抗体)に対する抗体(抗原)の特異吸着による発色を妨げたり、標的以外の抗原(抗体)を十分には覆えず、標的以外の抗原(抗体)にも抗体(抗原)が吸着し、発色してしまったり、粒子の分散安定化効果を発揮せず、凝集してしまったりするなどの課題を有している。
また、特許文献6や非特許文献2に開示される共重合体は、原料の単量体合成時に複数の反応やそれに伴う精製が必要であるなど生産性に問題を有していた。
さらに、特許文献7に開示される共重合体は、ブロッキング性には優れるものの、イムノクロマト法やラテックス凝集測定法などの免疫測定系で用いる微粒子の分散安定性に課題があった。
【0009】
本発明は、標的の抗原(抗体)に対する抗体(抗原)の特異吸着による発色を妨げない性能や、標的以外の抗原(抗体)を十分に覆い、標的以外の抗原(抗体)に対する抗体(抗原)の非特異吸着を防止し、発色を防止する性能を安定して発現でき、かつ、微粒子の分散安定性に優れた体外診断用ブロッキング剤、これを含む体外診断用担体、およびキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、下記の発明のいずれかに関する。
【0011】
下記一般式1~3で示される少なくともいずれかの構造およびポリエチレンオキサイド構造を含む水溶性ビニル系重合体(a)を含むことを特徴とする、体外診断用ブロッキング剤。
一般式1
【化1】
一般式2
【化2】
一般式3
【化3】
(式中、
R
2は炭素数1~6のアルキレン基、
R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基、
R
5は炭素数1~4のアルキレン基
Xは酸素原子または-NH-、
Yは-COO
-または-SO
3
-、
R
7は水素原子またはメチル基、
R
8は炭素数1~6のアルキレン基または炭素数1~6のヒドロキシアルキレン基、
R
10~R
14のうち4つは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基を表し、R
10~R
14のうちの1つはビニル系重合体の主鎖との結合位置を表し、
R
15は炭素数1~6のアルキレン基または炭素数1~6のヒドロキシアルキレン基を表し、
*はビニル系重合体の主鎖との結合位置を表す。)
【0012】
水溶性ビニル系重合体(a)100質量%を基準として、一般式1~3で示される構造を合計で20~80質量%含む、前記の体外診断用ブロッキング剤。
【0013】
水溶性ビニル系重合体(a)100質量%を基準として、ポリエチレンオキサイド構造を5~40質量%含む、前記の体外診断用ブロッキング剤。
【0014】
水溶性ビニル系重合体(a)が、下記(a1)または(a2)であることを特徴とする、前記の体外診断用ブロッキング剤。
(a1)下記一般式4~6で示される少なくともいずれかの単量体(A1)~(A3)を含む単量体の共重合体である。
(a2)下記一般式7~9で示される少なくともいずれかの単量体(A4)~(A6)を含む単量体の共重合体と、環状スルホン酸エステル(D1)、ω‐ハロゲン化アルキルスルホン酸金属塩(D2)、環状カルボン酸エステル(D3)およびω‐ハロゲン化アルキルカルボン酸金属塩(D4)からなる群から選ばれる一つ以上のベタイン化剤(D)との反応生成物である。
一般式4(A1)
【化4】
一般式5(A2)
【化5】
一般式6(A3)
【化6】
一般式7(A4)
【化7】
一般式8(A5)
【化8】
一般式9(A6)
【化9】
(式中、
R
1は水素原子またはメチル基、
R
2は炭素数1~6のアルキレン基、
R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基、
R
5は炭素数1~4のアルキレン基
Xは酸素原子または-NH-、
Yは-COO
-または-SO
3
-、
R
6は水素原子またはメチル基、
R
7は水素原子またはメチル基、
R
8は炭素数1~6のアルキレン基または炭素数1~6のヒドロキシアルキレン基、
R
16~R
20のうち4つは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基を表し、R
16~R
20のうちの1つはCH
2=C(R
21)を表し、
R
15は炭素数1~6のアルキレン基または炭素数1~6のヒドロキシアルキレン基を表し、
R
21は水素原子またはメチル基を表し、
**はベタイン化剤(D)との反応部位を表す。)
【0015】
前記の体外診断用ブロッキング剤で一部または全部が被覆されていることを特徴とする、標的物質に対する抗原または抗体が固定化された担体。
【0016】
前記の固定化された担体を備えることを特徴とする体外診断による検体中の標的物質の検出に用いるためのキット。
【発明の効果】
【0017】
本発明のブロッキング剤は、標的の抗原(抗体)に対する抗体(抗原)の特異吸着による発色を妨げない性能や、標的以外の抗原(抗体)を十分に覆い、標的以外の抗原(抗体)に対する抗体(抗原)の非特異吸着を防止し、発色を防止する性能を安定して発現でき、かつ、微粒子の分散安定性を、従来のブロッキング剤とは異なり、安定して発現できる。このブロッキング剤を用いることにより、感度よくウエスタンブロッティングや免疫組織染色などの抗原抗体反応を利用した体外診断を行うことが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のブロッキング剤は、水溶性ビニル系重合体(a)を含むことを特徴とする。水溶性ビニル系重合体(a)を、水溶性ベタイン樹脂(a)と言うこともある。
【0019】
<水溶性ビニル系重合体(a)>
本発明において水溶性とは、25℃のイオン交換水中99g中に樹脂を1g入れて撹拌し、25℃で24時間放置した後、分離・析出せずに水中で樹脂が完全に溶解可能であることを指す。また、水溶性ビニル系重合体(a)とは、分子構造中に一般式1~3で示される少なくともいずれかのベタイン構造、及びポリエチレンオキサイド構造を有する水溶性のビニル系重合体である。ベタイン構造とは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷をもつ原子には解離しうる水素原子が結合していない構造を指す。分子内にこのベタイン構造およびポリエチレンオキサイド構造を有することで、タンパク質への吸着性が制御され、優れたブロッキング性能を有することができる。
【0020】
水溶性ビニル系重合体(a)は、下記一般式1~3で示される少なくともいずれかの構造を側鎖に有する。一般式1~3で示される構造は、水溶性ビニル系重合体(a)100質量%に対して20~80質量%含まれることが好ましい。上記範囲であることによって、好適な水溶性を発現すると共に、染色の標的以外の抗原(抗体)を十分に覆い、標的以外の抗原(抗体)に対する抗体(抗原)の非特異吸着を防止し、発色を防止する性能を安定して発現できる。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
(式中、
R2は炭素数1~6のアルキレン基、
R3、R4はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基、
R5は炭素数1~4のアルキレン基
Xは酸素原子または-NH-、
Yは-COO-または-SO3
-、
R7は水素原子またはメチル基、
R8は炭素数1~6のアルキレン基または炭素数1~6のヒドロキシアルキレン基、
R10~R14のうち4つは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基を表し、R10~R14のうちの1つはビニル系重合体の主鎖との結合位置を表し、
R15は炭素数1~6のアルキレン基または炭素数1~6のヒドロキシアルキレン基を表し、
*はビニル系重合体の主鎖との結合位置を表す。)
【0025】
水溶性ビニル系重合体(a)にベタイン構造を導入する方法としては、以下の方法が好ましい。
即ち、
(1)下記一般式4~6で示される少なくともいずれかの単量体(A1)~(A3)と、必要に応じて他の単量体とを共重合する。得られる共重合体を水溶性ビニル系重合体(a1)という。
あるいは、
(2)下記一般式7~9で示される少なくともいずれかの単量体(A4)~(A6)と、必要に応じて他の単量体とを共重合し、得られた共重合体中の単量体(A4)~(A6)に由来する部分に後述するベタイン化剤(D)を反応させる。得られる反応生成物は、単量体(A1)を用いた共重合体と同様にベタイン構造を有し、水溶性ビニル系重合体(a2)という。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
(式中、
R1は水素原子またはメチル基、
R6は水素原子またはメチル基、
R16~R20のうち4つは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基を表し、R16~R20のうちの1つはCH2=C(R21)を表し、
R21は水素原子またはメチル基を表し、
**はベタイン化剤(D)との反応部位を表す。)
その他の記号は、一般式1~3と同様である。
【0033】
<水溶性ビニル系重合体(a1)>
水溶性ビニル系重合体(a1)は、前述の通り、一般式4~6で示される群から選択される少なくともいずれかの単量体(A1)~(A3)を共重合体の構成単位とするものである。単量体(A1)~(A3)の利用によって、ビニル重合体の側鎖にベタイン構造を導入することができる。
【0034】
<単量体(A1)>
単量体(A1)は、一般式4に示す通り、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ベタイン構造とを有する。
このような単量体としては、例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジエチルアンモニウムメチル-α-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジエチルアンモニウムメチル-α-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジエチルアンモニウムメチル-α-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジエチルアンモニウムメチル-α-カルボキシベタイン、などのN-(メタ)アクリロイルオキシアルキル-N,N-ジアルキルアンモニウムアルキル-α-カルボキシベタイン;N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジエチルアンモニウムメチル-α-カルボキシベタイン、などのN-(メタ)アクリルアミドアルキル-N,N-ジアルキルアンモニウムアルキル-α-カルボキシベタイン;N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジエチルアンモニウムメチル-α-カルボキシベタイン、などのN-(メタ)アクリルアミドアルキル-N,N-ジアルキルアンモニウムアルキル-α-カルボキシベタイン;N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、などのN-(メタ)アクリロイルオキシアルキル-N,N-ジメチルアンモニウムアルキル-α-スルホベタイン;N-(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキプロポキシプロポキシ-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、などのN-(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアネルコキシ-N,N-ジメチルアンモニウムアルキル-α-スルホベタイン;N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタインなどのN-(メタ)アクリルアミドアルキル-N,N-ジアルキルアンモニウムアルキル-α-スルホベタインなどが挙げられる。本発明において(メタ)アクリルと表記した場合、メタクリルもしくはアクリルであることを示す。
【0035】
<単量体(A2)>
単量体(A2)も、一般式5に示す通り、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ベタイン構造とを有する。
このような単量体としては、例えば、1-ビニル-3-(3-スルホプロピル)イミダゾリウム内部塩、1-ビニル-3-(3-スルホブチル)イミダゾリウム内部塩、1-ビニル-2-メチル-3-(3-スルホプロピル)イミダゾリウム内部塩、1-ビニル-2-メチル-3-(4-スルホブチル)イミダゾリウム内部塩などの1-ビニル-2-アルキル-3-(4-スルホアルキル)イミダゾリウム内部塩などが挙げられる。
【0036】
<単量体(A3)>
単量体(A3)も、一般式6に示す通り、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ベタイン構造とを有する。
このような単量体としては、例えば、2-ビニル-1-(3-スルホプロピル)ピリジニウム内部塩、2-ビニル-1-(3-スルホブチル)ピリジニウム内部塩、などの2-ビニル-1-(3-スルホアルキル)ピリジニウム内部塩;4-ビニル-1-(3-スルホプロピル)ピリジニウム内部塩、4-ビニル-1-(3-スルホブチル)ピリジニウム内部塩、などの4-ビニル-1-(3-スルホアルキル)ピリジニウム内部塩が挙げられる。
【0037】
<水溶性ビニル系重合体(a2)>
本発明における水溶性ビニル系重合体(a)は、前述の通り、単量体(A1)~(A3)そのものを共重合した共重合体である必要はなく、以下のような段階を経て得ることができる。
即ち、単量体(A1)~(A3)の前駆体ともいうべき一般式7~9で示される単量体(A4)~(A6)のうち少なくともいずれかと、必要に応じて他の単量体を共重合し、得られた共重合体中の**で示された窒素の少なくとも一部とベタイン化剤(D)とを反応させて得ることができる。得られる水溶性ビニル系重合体(a2)は、単量体(A4)~(A6)を用いた共重合体と同様にベタイン構造を側鎖に有する。ベタイン化剤(D)は単量体(A4)~(A6)を全てベタイン化するように使用することが好ましいが、これに限定されない。
【0038】
このような単量体(A4)としては、例えば、
N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアミン、
N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアミン、
N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアミン、
N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアミン、
N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジエチルアミン、
N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジエチルアミン、
N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジエチルアミン、
N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジエチルアミン、
などのN-(メタ)アクリロイルオキシアルキル-N,N-ジアルキルアミン;
N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジメチルアミン、
N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジエチルアミン、
などのN-(メタ)アクリルアミドアルキル-N,N-ジアルキルアミン;
N-(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ-N,N-ジメチルアミン、
N-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ-N,N-ジメチルアミン、
N-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ-N,N-ジメチルアミン、
N-(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ-N,N-ジメチルアミン、
などのN-(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアネルコキシ-N,N-ジメチルアミンなどが挙げられる。
【0039】
このような単量体(A5)としては、例えば、
1-ビニルイミダゾール、1-ビニル-2-メチル-イミダゾール、
などの1-ビニル-2-アルキル-イミダゾールが挙げられる。
【0040】
このような単量体(A6)としては、例えば、4-ビニル-ピリジン、2-ビニル-ピリジンなどのビニルピリジンが挙げられる。
【0041】
<ベタイン化剤(D)>
ベタイン化剤(D)は、環状スルホン酸エステル(D1)、ω‐ハロゲン化アルキルスルホン酸金属塩(D2)、環状カルボン酸エステル(D3)およびω‐ハロゲン化アルキルカルボン酸金属塩(D4)からなる群より選択される。一般式7~9で示される単量体(A4)~(A6)の**で示される窒素を重合後に、スルホベタイン化もしくはカルボベタイン化するために用いられる化合物群である。
【0042】
このような環状スルホン酸エステル(D1)としては、例えば、1,2-エタンスルトン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトンが挙げられる。
【0043】
このようなω‐ハロゲン化アルキルスルホン酸金属塩(D2)としては、例えば、2-クロロエタンスルホン酸ナトリウム、2-ブロモエタンスルホン酸ナトリウム、3-クロロプロパンスルホン酸ナトリウム、3-ブロモプロパンスルホン酸ナトリウム、4-クロロブタンスルホン酸ナトリウム、4-ブロモブタンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0044】
このような環状カルボン酸エステル(D3)としては、例えば、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトンなどが挙げられる。
【0045】
このようなω‐ハロゲン化アルキルカルボン酸金属塩(D4)としては、例えば、2-クロロ酢酸ナトリウム、2-ブロモ酢酸ナトリウム、3-クロロプロピオン酸ナトリウム、3-ブロモプロピオン酸ナトリウム、4-クロロ酪酸ナトリウム、4-ブロモ酪酸ナトリウム、5-クロロペンタン酸ナトリウム、5-ブロモペンタン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0046】
<ポリエチレンオキサイド構造>
水溶性ビニル系重合体(a)は、ポリエチレンオキサイド構造を側鎖または主鎖に有する。水溶性ビニル系重合体(a)にポリエチレンオキサイド構造を導入する方法としては、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ポリエチレンオキサイドを有する単量体(B)を共重合してもよいし、後述するポリエチレンオキサイドを有する高分子アゾ重合開始剤を用いてもよい。ポリエチレンオキサイド構造は、重合体の側鎖または主鎖のどちらに位置してもよく、側鎖と主鎖の両方に位置してもよい。ポリエチレンオキサイドの導入により、標的以外の抗原(抗体)に対する抗体(抗原)の非特異吸着を防止し、微粒子の分散安定性を付与することができる。
【0047】
ポリエチレンオキサイド構造は、水溶性ビニル系重合体(a)100質量%に対して5~40質量%含まれることが好ましく、10~30質量%含まれることがより好ましい。単量体(B)が上記範囲にあることによって、従来のブロッキング剤とは異なり、微粒子の分散安定性を安定して発現することができ、よりブロッキング性の優れたブロッキング剤を得ることが可能になる。
ポリエチレンオキサイド構造の含有量は、単量体(B)およびポリエチレンオキサイドを有する高分子アゾ重合開始剤の配合量から求めることができる。
【0048】
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ポリエチレンオキサイドを有する単量体(B)としては、
ポリエチレングリコ-ル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコ-ルポリプロピレングリコ-ル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコ-ルポリテトラメチレングリコ-ル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコ- ル(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコ-ル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレングリコ-ル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコ-ル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0049】
ポリエチレンオキサイド構造を主鎖に導入する場合は、水溶性ビニル系重合体(a)を合成する際のラジカル重合開始剤として、下記式(10)で示される、ポリエチレンオキサイドブロックとアゾ基を含む構造単位を有する高分子アゾ重合開始剤を用いて、重合することができる。式中、m 及びn は、それぞれ独立に1以上の整数である。高分子アゾ重合開始剤は、高分子セグメントとアゾ基(-N =N-) が繰り返し結合した構造を有しており、本実施形態では、高分子セグメントとしてPEGブロックを含む高分子アゾ開始剤を用いることで、容易にブロッキング剤を合成できる。
【0050】
【0051】
前記高分子アゾ重合開始剤は、PEGブロックを有しているため、水、アルコール、及び有機溶剤に可溶であり、溶液重合、乳化重合、又は分散重合によりブロック重合体の合成が可能である。また、分子鎖骨格中に重合開始部分(ラジカル発生部分:―N=N-)を有しているため、別途重合開始剤を使用する必要がなく、さらには末端反応性マクロモノマーに比べてラジカルの反応性、及び安定性が高いという特徴を有している。
前記高分子アゾ重合開始剤は、・C(CH3)CN-(CH2)2-COO-(CH2CH2O)m-CO-(CH2)2-C(CH3)CN・にて示されるようなラジカルを生じ、単量体を重合させる。
高分子アゾ重合開始剤の具体例としては、富士フイルム和光純薬製の高分子アゾ開始剤VPE0201(上記式(II)の(CH2CH2O)mの部分の分子量が約2000、nが6程度)などが例示される。
【0052】
<単量体(C)>
水溶性ビニル系重合体(a1)、(a2)を得る際に、単量体(A1)~(A3)、(A4)~(A6)、(B)以外のその他の単量体(C)も使用することができる。単量体(C)としては水溶性ビニル系重合体(a)に分散安定性を付与する観点から、水不溶性の疎水性モノマーを用いることが好ましい。
【0053】
単量体(C)としては、特に限定されないが、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー、マクロモノマー等が挙げられる。
【0054】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1~22、好ましくは炭素数6~18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。
【0055】
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6~22の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレートがより好ましい。スチレン系モノマーとしてはスチレン、2-メチルスチレン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0056】
マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物であり、体外診断で使用される微粒子に分散安定性を付与する観点から、水不溶性ポリマーのモノマー成分として用いられることが好ましい。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。マクロモノマーの数平均分子量は1,000以上10,000以下が好ましい。芳香族基含有モノマー系マクロモノマー及びシリコーン系マクロモノマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロモノマーがより好ましい。芳香族基含有モノマー系マクロモノマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、上記芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0057】
単量体(C)は、上記のモノマーを2種類以上を使用してもよく、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレート、マクロモノマーを併用してもよい。
【0058】
単量体(C)は、水溶性ビニル系重合体(a)を構成する成分の合計100質量%に対して、5~45質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。単量体(C)が上記範囲にあることによって、疎水性の固相表面と疎水性相互作用することが可能となり、ブロッキング性を安定して発現できる。
【0059】
水溶性ビニル系重合体(a1)の場合、単量体(A1)~(A3)と、単量体(B)およびポリエチレンオキサイドを有する高分子アゾ重合開始剤と、単量体(C)との合計100質量%中、単量体(A1)~(A3)の合計が20~80質量%であることが好ましく、単量体(B)およびポリエチレンオキサイドを有する高分子アゾ重合開始剤が5~40質量%、単量体(C)が5~45質量%であることが好ましい。
また、水溶性ビニル系重合体(a2)の場合は、単量体(A4)~(A6)と、単量体(B)およびポリエチレンオキサイドを有する高分子アゾ重合開始剤と、他の単量体(C)との合計100質量%中、単量体(A4)~(A6)に由来する構造のうちベタイン化剤(D)と反応している部分が20~80質量%であり、単量体(B)およびポリエチレンオキサイドを有する高分子アゾ重合開始剤が5~40質量%、単量体(A4)~(A6)に由来する構造のうちベタイン化剤(D)と反応していない部分とその単量体(C)との合計が5~45質量%であることがより好ましい。
【0060】
そして、水溶性ビニル系重合体(a)で、検体中の標的物質に対する抗原または抗体が固定化された担体を被覆することによって、担体に対する非特異吸着を防止し、発色を防止する性能を安定して発現でき、かつ、微粒子の分散安定性を発現できる。
【0061】
ここで、本明細書において、ブロッキングとは、体外診断において、検体中の標的物質と該標的物質に対する抗原または抗体との抗原抗体反応以外に起因する非特異的な吸着を防止すること、また上記非特異的な吸着による担体の凝集の発生を防ぐことをいう。なお、検体中の標的物質が標的物質に対する抗原または抗体を介さずに担体に吸着すると測定値の異常が発生することがあり、それを防ぐことも含む。上記体外診断としては、ラテックス凝集法、ELISA法、化学発光法、免疫比濁法(TIA)法、放射免疫測定(RIA)、イムノクロマトグラフィー等による診断が挙げられる。
【0062】
検体としては、通常、血清や血漿、尿、唾液等の各種生物学的液体サンプル、糞便や食品の検体粉砕物等が挙げられる。測定サンプルとして、p H 緩衝液、タンパク質、アミノ酸等で検体を希釈した検体希釈液を用いてよい。
【0063】
<固定化された担体>
本発明の標的物質に対する抗原または抗体が固定化された担体は、水溶性ビニル系重合体(a)で一部または全部が被覆(コーティング)されていることを特徴とするものである。
上記担体は特に限定されないが、ELISA用プレート、イムノクロマトグラフィー用メンブレン、ラテックス粒子、金コロイド等が挙げられる。また、ラテックス粒子や金コロイドの平均粒子径は、好ましくは0.01~1μmである。
ラテックス粒子としては、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリレート化合物、不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物または不飽和無水カルボン酸化合物、不飽和スルホン酸化合物、スチレン化合物等のモノマーから誘導されるポリマー粒子が挙げられる。ポリマー粒子の中でも、スチレン化合物と不飽和カルボン酸化合物との共重合体であるものが好ましい。
【0064】
また、上記標的物質に対する抗原または抗体としては、上記抗原や抗体と同様のものが挙げられる。
【0065】
また、標的物質に対する抗原または抗体を担体に固定化する方法は、疎水-疎水相互作用による物理吸着、水溶性カルボジイミド系縮合剤を用いた化学的結合等の常法に従って両者を接触させればよい。
【0066】
また、水溶性ビニル系重合体(a)を担体に被覆するときの溶液中の濃度としては、0.01~50質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましい。
【0067】
<キット>
本発明の体外診断による検体中の標的物質の検出に用いるためのキットは、上記担体を
少なくとも備えることを特徴とするものである。本発明のキットは、通常の体外診断による検体中の標的物質の検出に用いるためのキットと同様にして、本発明の標的物質の検出方法に使用できる。また、常法に従い標的物質の濃度も測定できる。
【実施例0068】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「質量部」を表し、wtとは質量を表し、wt%は全単量体中の質量の割合を表す。
【0069】
<各種ベタインモノマーの合成>
水溶性ビニル系重合体(a)の合成に用いたN-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタインは、特許5690645号を参考に合成した。同様に、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-カルボベタインは特許3878315号を、1-ビニル-3-(3-スルホプロピル)イミダゾリウム内部塩と2-ビニル-1-(3-スルホプロピル)ピリジニウム内部塩は特許3584998号を参考に合成した。
【0070】
[実施例1]
<水溶性ビニル系重合体(a1)の調製>
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、エタノール100部を仕込み、内温を75℃に昇温し十分に窒素置換した。別途用意しておいた、2 , 2 ’ - アゾビス( イソ酪酸) ジメチルを0.5部、単量体(A1)としてN-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタインを50部(50wt%)、単量体(B)としてPME100(日油製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)を40部(40wt%)、単量体(C)としてメチルメタクリレートを5部(5wt%)、単量体(C)としてスチレンを5部(5wt%)混合したものを、内温を75℃に保ちながら3時間滴下を続け、さらに2時間撹拌を続けた。固形分測定によって転化率が98%超えたことを確認後、冷却して取出した。その後、オーブンでエタノールを完全に揮発させ、水溶性ビニル系重合体(a1)を得た。
なお、25℃のイオン交換水中99g中に、得られたビニル系重合体(a1)を1g入れて撹拌し溶解後、25℃で24時間放置した。その結果これらの樹脂は分離、析出ともに見られず、完全に溶解可能であり、水溶性であることが示された。
【0071】
<ブロッキング剤の調製>
上記で得られた水溶性ビニル系重合体(a)を、リン酸緩衝生理食塩水(以下PBS溶液)に溶かし、濃度:1質量%の実施例1のブロッキング剤を得た。
【0072】
[実施例2~8][比較例1、3~6]
表1に示す配合組成で、実施例1と同様の方法で水溶性ビニル系重合体(a)を合成し、PBS溶液に溶解し、実施例2~8のブロッキング剤を得た。また、表1に示す配合組成で、実施例1と同様の方法で比較例1~6の重合体を合成し、PBS溶液に溶解し、比較例1~6のブロッキング剤を得た。
【0073】
【0074】
表中の記号は以下の通りである。
DMBS:N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン
DMMC:N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-カルボベタイン
VSPI:1-ビニル-3-(3-スルホプロピル)イミダゾリウム内部塩
VSPP:2-ビニル-1-(3-スルホプロピル)ピリジニウム内部塩
PME100:日油社製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート
PME1000:日油社製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
St:スチレン
V601:2 , 2 ’ -アゾビス(イソ酪酸) ジメチル
VPE0201:富士フイルム和光純薬社製マクロアゾ開始剤
【0075】
[実施例9]
<水溶性ビニル系重合体(a2)の調製>
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、エタノール100部を仕込み、内温を75℃に昇温し十分に窒素置換した。別途用意しておいた、2,2’-アゾビス(イソ酪酸) ジメチルを0.5部、単量体(A4)としてメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを50部(50wt%)、単量体(B)としてPME1000(日油製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)を20部(20wt%)、単量体(C)としてメチルメタクリレートを30部(30wt%)混合したものを、内温を75℃に保ちながら3時間滴下を続け、さらに2時間撹拌を継続し、共重合体を得た。
固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、1,4-ブタンスルトンを43.3部(前記単量体(A4)の1等量)加え、更に3時間撹拌を続けた。
以下の反応式に示すように、1,4-ブタンスルトンの開環反応により、単量体(A1)の一種であるN-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン由来の構造と同じ構造をビニル系重合体の側鎖に有すことができる。
【0076】
【0077】
次いで、冷却して取出し、オーブンでエタノールを完全に揮発させた。乾燥させた樹脂をアセトンでよく洗浄し、副生成物や残存した原料を取り除いた。これをPBS溶液に溶解し、濃度:1質量%のブロッキング剤を得た。
【0078】
[実施例10~14]
表2示す組成にてビニル系重合体を得、ビニル系重合体中の単量体(A4)~(A6)に由来する部分にベタイン化剤(D)を反応させ、水溶性ビニル系重合体(a)を合成し、PBS溶液に溶解し、実施例10~14のブロッキング剤を得た。ビニル系重合体中の単量体(A4)~(A6)に由来する部分と、ベタイン化剤(D)との反応式を下記式11~15に示す。この反応の結果、水溶性ビニル重合体(a)がベタイン構造を側鎖に有することがわかる。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
[比較例2]
表2示す組成にてビニル系重合体を得、ビニル系重合体中の単量体(A4)~(A6)に由来する部分にベタイン化剤(D)を反応させ、水溶性ビニル系重合体を合成し、PBS溶液に溶解し、比較例2のブロッキング剤を得た。
【0084】
【0085】
表中の記号は以下の通り。
DM:N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアミン
VI:1-ビニルイミダゾール
VP:2-ビニルピリジン
【0086】
<水への溶解性>
上記で得られた重合体を、リン酸緩衝生理食塩水(以下PBS溶液)に溶かし、濃度:1質量%にした際の溶解性を評価した。
【0087】
「評価」
○:水に可溶
×:水に不溶
【0088】
<ブロッキング剤による処理および抗原-抗体反応評価>
[アクチンの付着]
ヒト血小板由来アクチン(Cytoskeleton社製)を1質量%となるようにPBS溶液で希釈し、評価用アクチン溶液を調整した。
ニトロセルロース膜(メンブレン L-08002-010_アズワン製)2枚、各1カ所に、前記評価用アクチン溶液を、マイクロピペッターを用いてそれぞれ2μLずつ滴下し、静置し乾燥させた。
【0089】
[ブロッキング剤による処理]
次いで、上記で調整したブロッキング剤に、アクチンを付着したニトロセルロース膜を入れ、室温で1時間振とうし、ブロッキング処理を行った。
その後、ブロッキング剤からニトロセルロース膜を取り出し、取り出したニトロセルロース膜をPBS溶液に入れ、室温で15分間振とうした。PBS溶液を新しくし、同様の洗浄作業をもう1回繰り返し、余分なブロッキング剤を取り除いた。
【0090】
[アクチンに対する2種類の抗体の付着]
抗β-アクチン,モノクローナル抗体,ペルオキシダーゼ結合(富士フイルム和光純薬社製)を、PBS溶液に溶解し、濃度0.01質量%のアクチン抗体希釈液を得た。また同様に、抗GAPDH,モノクローナル抗体, ペルオキシダーゼ結合(富士フイルム和光純薬社製)を、PBS溶液に溶解し、濃度0.01質量%のGAPDH抗体希釈液を得た。
余分なブロッキング剤を除去した前述のニトロセルロース膜を、それぞれの抗体希釈液に入れ、室温で1時間振とうした。次いで、抗体希釈液からニトロセルロース膜を取り出し、取り出したニトロセルロース膜をPBS溶液に入れ、室温で一時間振とうし、余分な抗体を取り除いた。
なお、GAPDHとはグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼの略である。
【0091】
[染色と評価]
DAB錠(富士フイルム和光純薬社製)10mgを0.05mol/L トリス-塩酸バッファー50mLに溶解し、さらに30%過酸化水素水を10μL加えて染色液を調整した。
余分な抗体を取り除いた前述の2枚のニトロセルロース膜をそれぞれ染色液で覆い、表面の余分な染色液はタオルで除去した。
以下の基準に従い、2種類の抗体希釈液を用いた場合におけるアクチン付着部位の染色状態を評価した。評価結果を表3に示す。
【0092】
「アクチン抗体希釈液を用いた場合」
○:明確な染色あり
○△:染色あり
△:ほとんど染色なし
×:染色なし
「GAPDH抗体希釈液を用いた場合」
○:染色なし
○△:ほとんど染色なし
△:染色あり
×:明確な染色あり
「総合評価」
○:アクチン抗体希釈液を用いた場合のみが染色され、GAPDH抗体希釈液を用いた場合に染色が無い。
○△:アクチン抗体希釈液を用いた場合、染色がわずかに薄く、GAPDH抗体希釈液を用いた場合とのコントラストが小さい、もしくは、アクチン抗体希釈液を用いた場合、染色されるが、GAPDH抗体希釈液を用いた場合もわずかに染色が見られる。
△:アクチン抗体希釈液を用いた場合染色が薄く、GAPDH抗体希釈液を用いた場合とのコントラストが小さい、もしくは、アクチン抗体希釈液を用いた場合染色されるが、GAPDH抗体希釈液を用いた場合にも明確な染色が見られる。
×:アクチン抗体希釈液を用いた場合とGAPDH抗体希釈液を用いた場合との染色程度は変わらない(ブロッキング性能無し)
【0093】
<ブロッキング剤による微粒子の分散安定性評価>
[金コロイドへのブロッキング剤添加]
直径40nm金コロイド溶液(BBI社製)9mLに50mM のリン酸二水素カリウムバッファー(pH7.5)1mLを加えることでpHを調整した金コロイド溶液を96穴平底プレートに100μLずつ分注した。ここに上記で調整したブロッキング剤を10μL加え、優しくピペッティングした。室温で2分間静置した後、10%塩化ナトリウム溶液を10μL加え、優しくピペッティングし、5分間静置した。
【0094】
[吸光度測定と評価]
Mithras LB943(BERTHOLD社製)を用い、各ウェルについて620nmの吸光度に対する520nmの吸光度を測定することにより、金コロイド粒子の分散安定性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0095】
「金コロイド分散安定性」
○:分散安定性あり (吸光度が0.4以上)
○△:やや分散安定性あり (吸光度が0.3以上0.4未満)
△:ほとんど分散安定性なし (吸光度が0.2以上0.3未満)
×:分散安定性なし (吸光度が0.2未満)
【0096】
【0097】
本発明のブロッキング剤は、標的の抗原(抗体)に対する抗体(抗原)の特異吸着による発色を妨げない性能や、標的以外の抗原(抗体)を十分に覆い、標的以外の抗原(抗体)に対する抗体(抗原)の非特異吸着を防止し、発色を防止する性能を安定して発現でき、かつ、微粒子の分散安定性を、従来のブロッキング剤とは異なり、安定して発現できる。このブロッキング剤を用いることにより、感度よくウエスタンブロッティングや免疫組織染色などの抗原抗体反応を利用した体外診断を行うことが可能になる
【0098】
表3に示すように、本発明の体外診断用ブロッキング剤を用いることで、アクチンとアクチン抗体との抗原抗体反応評価を行うことができた。これは本発明の体外診断用ブロッキング剤に含まれる水溶性ビニル系重合体(a)がタンパク質と適切に吸着することで、抗原抗体反応を阻害せず、非特異的な吸着反応を抑えることができたためであると考えられる。また、本発明の体外診断用ブロッキング剤を用いることで、金コロイドの分散安定性を安定して発現することができた。これは水溶性ビニル系重合体(a)がポリエチレンオキサイドを有することによる排除体積効果と、疎水性モノマーを適切に有することにより、金コロイド表面と疎水性相互作用することが可能となったためであると考えられる。
【0099】
それに対して、ポリエチレンオキサイド構造を有さない水溶性樹脂を用いたブロッキング剤を使用した比較例1~3は、金コロイドの分散安定性に優れず、10%塩化ナトリウム溶液の添加によって凝集沈降してしまった。これは、ポリエチレンオキサイド構造を有さないために粒子間の立体反発を付与できなかったためと考えられる。また、ベタイン構造を有さない水溶性樹脂を用いたブロッキング剤を使用した比較例4~6は、アクチン抗体希釈液を用いた場合とGAPDH抗体希釈液を用いた場合とに明確な差は見られず、分析として十分な感度を得ることができなかった。これは、タンパク質への吸着が小さすぎて抗体の非特異的吸着を抑えることができなかったため、もしくは、強力に非特異的吸着を起こしてしまったため抗原抗体反応自体を阻害してしまったためであると考えられる。