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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158011
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】活物質層形成装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20221006BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221006BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221006BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20221006BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/62 Z
H01M4/36 C
H01M4/139
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062593
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮島 桃香
(72)【発明者】
【氏名】上薗 知之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 壮吉
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 汀
(72)【発明者】
【氏名】松山 美由紀
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA23
5H050FA17
5H050GA10
5H050GA11
5H050GA29
5H050HA01
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】集電箔上に形成する活物質層の目付(単位面積当たりの重量)を増大させることができる活物質層形成装置を提供する。
【解決手段】活物質層形成装置103は、磁性粒子201と磁性粒子201の表面を被覆する被膜202とからなるキャリア粒子200と、複合粒子15とキャリア粒子200とを混合する粒子混合部120と、集電箔3を搬送するバックアップロール130と、粒子混合部120において混合された複合粒子15及びキャリア粒子200を、第1間隙K1を含む成膜領域MRに向けて搬送するマグネットロール140と、バックアップロール130とマグネットロール140との間に直流電圧を印加する直流電源150と、を備える。キャリア粒子200の被膜202は、電気絶縁性樹脂からなる樹脂膜203内に複数の導電性粒子204が分散した構造である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の集電箔上に、活物質粒子及びバインダ粒子を含む活物質層を形成する、活物質層形成装置において、
磁性粒子と前記磁性粒子の表面を被覆する被膜とからなるキャリア粒子と、
前記活物質粒子の表面に前記バインダ粒子が結合した複合粒子と、前記キャリア粒子とを混合する粒子混合部と、
前記集電箔をその長手方向に沿った搬送方向に搬送するバックアップロールと、
前記バックアップロールの外周面に沿って周方向に搬送される前記集電箔に第1間隙を空けて、前記バックアップロールに平行に配置されたマグネットロールであって、前記粒子混合部において前記複合粒子と混合された前記キャリア粒子を当該マグネットロールの外周面に磁気吸着することによって、当該マグネットロールの外周面に磁気吸着した前記キャリア粒子に前記複合粒子が保持された状態として、前記第1間隙に向けて、前記複合粒子及び前記キャリア粒子を当該マグネットロールの周方向に搬送するマグネットロールと、
前記バックアップロールと前記マグネットロールとの間に直流電圧を印加して、前記第1間隙を含む成膜領域において、前記キャリア粒子によって保持されていた前記複合粒子を、前記バックアップロールによって搬送されている前記集電箔に向けて空中移動させて、前記集電箔上に堆積させる直流電源と、を備え、
前記キャリア粒子の前記被膜は、電気絶縁性樹脂からなる樹脂膜内に複数の導電性粒子が分散した構造の被膜である
活物質層形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の活物質層形成装置であって、
前記キャリア粒子の前記被膜において、前記電気絶縁性樹脂はシリコーン樹脂であり、前記導電性粒子はカーボン粒子であり、
前記被膜における前記カーボン粒子の含有率が、5wt%以上10wt%以下である
活物質層形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活物質層形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、帯状の集電箔上に、活物質粒子及びバインダ粒子を含む活物質層を形成する、活物質層形成装置が開示されている。この活物質層形成装置は、キャリア粒子と粒子混合部とバックアップロールとマグネットロールと直流電源とを備える。このうち、キャリア粒子は、磁性粒子と、この磁性粒子の表面を被覆する被膜とからなる。また、粒子混合部は、活物質粒子の表面にバインダ粒子が結合した複合粒子と、キャリア粒子とを混合して、磁性キャリア粒子の表面に複合粒子が付着した複合キャリア粒子を作製する。また、バックアップロールは、集電箔をその長手方向に沿った搬送方向に搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-149862号公報
【0004】
また、マグネットロールは、バックアップロールの外周面に沿って周方向に搬送される集電箔に第1間隙を空けて、バックアップロールに平行に配置されている。このマグネットロールは、粒子混合部において作製された複合キャリア粒子を当該マグネットロールの外周面に磁気吸着して、第1間隙に向けて当該マグネットロールの周方向に搬送する。直流電源は、バックアップロールとマグネットロールとの間に直流電圧を印加して、第1間隙を含む成膜領域(電界)において、キャリア粒子の表面に付着していた複合粒子を、バックアップロールによって搬送されている集電箔に向けて空中移動させて、集電箔上に堆積させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の活物質層形成装置では、キャリア粒子として、磁性粒子とこの磁性粒子の表面を被覆する被膜とからなるキャリア粒子を用いている。詳細には、磁性粒子の表面を被覆する被膜として、電気絶縁性樹脂(例えば、シリコーン樹脂)のみからなる被膜を有している。このため、粒子混合部において複合粒子とキャリア粒子とが擦り合わされることで、キャリア粒子の被膜に大きな帯電量の静電気が発生する。
【0006】
従って、粒子混合部において複合粒子とキャリア粒子とを混合して作製した複合キャリア粒子は、強い静電気力によってキャリア粒子の表面に複合粒子が付着する態様で、複合粒子がキャリア粒子に保持された形態となる。このため、成膜領域において、マグネットロールによって搬送されているキャリア粒子による保持から複合粒子が解放され難く、キャリア粒子によって保持されて搬送されている複合粒子が、成膜領域に放出され難くなっていた。従って、上述の活物質層形成装置では、集電箔上に多くの複合粒子を堆積させることが難しく、集電箔上に形成する活物質層の目付(単位面積当たりの重量)を増大させることが難しかった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、集電箔上に形成する活物質層の目付(単位面積当たりの重量)を増大させることができる活物質層形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、帯状の集電箔上に、活物質粒子及びバインダ粒子を含む活物質層を形成する、活物質層形成装置において、磁性粒子と前記磁性粒子の表面を被覆する被膜とからなるキャリア粒子と、前記活物質粒子の表面に前記バインダ粒子が結合した複合粒子と、前記キャリア粒子とを混合する粒子混合部と、前記集電箔をその長手方向に沿った搬送方向に搬送するバックアップロールと、前記バックアップロールの外周面に沿って周方向に搬送される前記集電箔に第1間隙を空けて、前記バックアップロールに平行に配置されたマグネットロールであって、前記粒子混合部において前記複合粒子と混合された前記キャリア粒子を当該マグネットロールの外周面に磁気吸着することによって、当該マグネットロールの外周面に磁気吸着した前記キャリア粒子に前記複合粒子が保持された状態として、前記第1間隙に向けて、前記複合粒子及び前記キャリア粒子を当該マグネットロールの周方向に搬送するマグネットロールと、前記バックアップロールと前記マグネットロールとの間に直流電圧を印加して、前記第1間隙を含む成膜領域において、前記キャリア粒子によって保持されていた前記複合粒子を、前記バックアップロールによって搬送されている前記集電箔に向けて空中移動させて、前記集電箔上に堆積させる直流電源と、を備え、前記キャリア粒子の前記被膜は、電気絶縁性樹脂からなる樹脂膜内に複数の導電性粒子が分散した構造の被膜である活物質層形成装置である。
【0009】
上述の活物質層形成装置は、キャリア粒子として、磁性粒子と、この磁性粒子の表面を被覆する被膜と、からなるキャリア粒子を備える。さらに、このキャリア粒子の被膜は、電気絶縁性樹脂と導電性粒子とからなる。詳細には、この被膜は、電気絶縁性樹脂からなる樹脂膜内に、複数の導電性粒子が分散した構造を有する。
【0010】
このキャリア粒子は、被膜内部に導電性粒子を含んでいるため、電気絶縁性樹脂のみからなる被膜を有する従来のキャリア粒子と比較して、粒子混合部において複合粒子と擦り合わされたときの被膜の帯電量(静電気の量)が小さくなる。このため、上述の活物質層形成装置では、粒子混合部において複合粒子とキャリア粒子とを混合したときに、キャリア粒子と複合粒子との間に働く静電気力を低減させることができる。これにより、キャリア粒子と複合粒子との間の結合力を弱めることができ、複合粒子がキャリア粒子から離れ易くなる。
【0011】
従って、第1間隙を含む成膜領域において、マグネットロールによって搬送されているキャリア粒子による保持から複合粒子が解放され易くなるので、キャリア粒子によって保持されて搬送される複合粒子の多くを、成膜領域に放出することができる。これにより、成膜領域において、多くの複合粒子を、バックアップロールによって搬送されている集電箔に向けて空中移動させることができ、集電箔上に多くの複合粒子を堆積させることができる。なお、キャリア粒子による保持から解放されて成膜領域に放出された複合粒子は、直流電源によってマグネットロールとバックアップロールとの間に生じさせた電位差による静電気力によって、バックアップロールによって搬送されている集電箔に引き寄せられて、集電箔上に付着する。
【0012】
また、上述の活物質層形成装置では、マグネットロールの外周面に磁気吸着したキャリア粒子に複合粒子が保持される形態が、以下の2つの形態になる。1つ目は、弱い静電気力によってキャリア粒子の表面に複合粒子が付着する態様で、キャリア粒子に複合粒子が保持される形態である。2つ目は、静電気力による付着ではなく、隣り合うキャリア粒子間に複合粒子が挟まれる態様で、キャリア粒子に複合粒子が保持される形態である。すなわち、上述の活物質層形成装置では、弱い静電気力によってキャリア粒子の表面に付着する形態でキャリア粒子に保持された複合粒子と、(静電気力による付着ではなく)隣り合うキャリア粒子間に挟まれる態様でキャリア粒子に保持された複合粒子とが混在して、複合粒子と共にキャリア粒子がマグネットロールの外周面に磁気吸着して搬送される。
【0013】
以上説明したように、上述の活物質層形成装置は、従来の活物質層形成装置(電気絶縁性樹脂のみからなる被膜を有するキャリア粒子を用いた活物質層形成装置)に比べて、集電箔の表面に付着する複合粒子の量を増大させることができるので、活物質層の目付(単位面積当たりの重量)を増大させることができる。
【0014】
さらに、前記の活物質層形成装置であって、前記キャリア粒子の前記被膜において、前記電気絶縁性樹脂はシリコーン樹脂であり、前記導電性粒子はカーボン粒子であり、前記被膜における前記カーボン粒子の含有率が、5wt%以上10wt%以下である活物質層形成装置とすると良い。
【0015】
上述の活物質層形成装置では、キャリア粒子として、シリコーン樹脂(電気絶縁性樹脂)からなる樹脂膜内に、複数のカーボン粒子(導電性粒子)が分散した構造の被膜を有するキャリア粒子を備える。そして、このキャリア粒子の被膜は、カーボン粒子の含有率を5wt%以上10wt%以下とされている。このようなキャリア粒子は、粒子混合部において複合粒子と擦り合わされたときの被膜の帯電量が小さくなる。このため、粒子混合部において複合粒子とキャリア粒子とを混合したときに、キャリア粒子と複合粒子との間に働く静電気力を小さくすることができる。これにより、キャリア粒子と複合粒子との間の結合力が弱くなるので、複合粒子がキャリア粒子から離れ易くなる。
【0016】
従って、上述の活物質層形成装置では、成膜領域において、マグネットロールによって搬送されているキャリア粒子による保持から複合粒子が解放され易くなるので、キャリア粒子によって保持されて搬送されている複合粒子の多くを、成膜領域に放出することができる。これにより、成膜領域において、多くの複合粒子を、バックアップロールによって搬送されている集電箔に向けて空中移動させて、集電箔上に多くの複合粒子を堆積させることができるので、活物質層の目付を大きくすることができる。
【0017】
なお、上述のキャリア粒子を用いた場合、静電気力によってキャリア粒子の表面に付着する複合粒子の量は少なくなるが、マグネットロールの外周面に磁気吸着した隣り合うキャリア粒子間に複数の複合粒子が挟まれる態様で、多くの複合粒子がキャリア粒子に保持される。これにより、多くの複合粒子をマグネットロールによって成膜領域まで搬送することができる。
【0018】
さらに、前記いずれかの活物質層形成装置であって、前記キャリア粒子は、三菱化学アナリテック社製の粉体抵抗測定システムMCP-PD51を用いて、設定荷重を8kNにして、複数の前記キャリア粒子を加圧して測定した体積抵抗率の値が、3.84×10(Ω・cm)以上2.22×10(Ω・cm)以下の範囲内となるキャリア粒子である活物質層形成装置とするのが好ましい。
【0019】
上述の条件で測定した体積抵抗率の値が、3.84×10(Ω・cm)以上2.22×10(Ω・cm)以下の範囲内となるキャリア粒子は、粒子混合部において複合粒子と擦り合わされたときの被膜の帯電量が小さくなる。このため、粒子混合部において複合粒子とキャリア粒子とを混合したときに、キャリア粒子と複合粒子との間に働く静電気力を小さくすることができる。従って、上述の活物質層形成装置では、成膜領域において、マグネットロールによって搬送されているキャリア粒子による保持から複合粒子が解放され易くなる。これにより、成膜領域において、多くの複合粒子を、バックアップロールによって搬送されている集電箔に向けて空中移動させて、集電箔上に多くの複合粒子を堆積させることができるので、活物質層の目付を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態にかかる活物質層形成装置を有する電極シート製造装置の側面視概略図である。
図2】キャリア粒子の断面概略図である。
図3図1のB部拡大図である。
図4】マグネットロールの説明図である。
図5図1のC部拡大図である。
図6】集電箔上に活物質層が形成された電極シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施形態にかかる電極シート製造装置100は、活物質層形成装置103とロールプレス装置105とを備える。活物質層形成装置103は、帯状の集電箔3の第1表面3b上に、活物質粒子11及びバインダ粒子13を含む活物質層5を形成する。この活物質層形成装置103は、粒子供給部110とキャリア粒子200と粒子混合部120とバックアップロール130とマグネットロール140と直流電源150とを備える(図1参照)。
【0022】
粒子供給部110は、粒子混合部120の上方に配置されており、複合粒子15を収容する収容部111と、この収容部111内に設けられた攪拌翼113及び送りロール115とを有する(図1参照)。この粒子供給部110は、複合粒子15を一時的に収容すると共に、複合粒子15を粒子混合部120へ供給する。なお、複合粒子15は、溶媒を含むことなく、活物質粒子11と、活物質粒子11の表面に結合したバインダ粒子13とからなる。
【0023】
キャリア粒子200は、図2に示すように、フェライトからなる磁性粒子201と、この磁性粒子201の表面201bを被覆する被膜202とからなる。被膜202は、膜状の電気絶縁性樹脂(樹脂膜203)と複数の導電性粒子204とからなる。詳細には、被膜202は、電気絶縁性樹脂からなる樹脂膜203内に、複数の導電性粒子204が分散した構造を有する(図2参照)。なお、本実施形態では、樹脂膜203を構成する電気絶縁性樹脂はシリコーン樹脂であり、導電性粒子204はカーボン粒子である。このキャリア粒子200は、後述する粒子混合部120の収容部121b内に一定量収容される。
【0024】
粒子混合部120は、複数の複合粒子15と複数のキャリア粒子200とを攪拌しつつ混合する。この粒子混合部120は、粒子供給部110及びマグネットロール140の下方に配置されており、複合粒子15及びキャリア粒子200を収容する収容部121bと、この収容部121b内に設けられた3つの攪拌翼(第1攪拌翼123、第2攪拌翼124、及び第3攪拌翼125)とを有する(図1参照)。なお、収容部121bは、箱体121の一部である。箱体121は、収容部121bと、収容部121bの第1側壁部121dの上端から上方に延びる上方側壁部121cとを有する。
【0025】
粒子混合部120のうち、図1において最も左側に位置する第1攪拌翼123は、図1において反時計回りに回転し、粒子供給部110から粒子混合部120の収容部121b内に供給された複合粒子15と、予め収容部121b内に収容されているキャリア粒子200とを攪拌しつつ混合すると共に、混合した複合粒子15及びキャリア粒子200を、図1において中央に位置する第2攪拌翼124に送る。
【0026】
第1攪拌翼123と第3攪拌翼125との間に位置する第2攪拌翼124は、図1において反時計回りに回転し、第3攪拌翼125は、図1において時計回りに回転する。これにより、複合粒子15とキャリア粒子200とを更に攪拌しつつ混合すると共に、第2攪拌翼124と第3攪拌翼125との中間部分において、混合した複合粒子15及びキャリア粒子200を、上方のマグネットロール140に向けて送る。
【0027】
バックアップロール130は、マグネットロール140の上方に配置されている。また、バックアップロール130の近傍には、バックアップロール130と平行に搬送ロール135が配置されている。バックアップロール130及び搬送ロール135は、集電箔3を、その長手方向DLに沿った搬送方向DMに搬送する(図1参照)。具体的には、搬送ロール135は、集電箔3の第1表面3bに接触して、集電箔3をバックアップロール130に向けて搬送する。
【0028】
また、バックアップロール130には、バックアップロール130を回転駆動させるモータ(不図示)が連結されている。これにより、バックアップロール130は、図1において時計回りに回転し、当該バックアップロール130の外周面130mに集電箔3の第2表面3cが接触する態様で、搬送ロール135から送られてきた集電箔3を外周面130mに巻き付けるようにして、集電箔3をロールプレス装置105に向けて搬送する。
【0029】
マグネットロール140は、バックアップロール130の外周面130mに沿って周方向に搬送される集電箔3の下方に第1間隙K1を空けて、バックアップロール130に平行に配置されると共に、粒子混合部120の上方に配置されている。なお、マグネットロール140は、バックアップロール130の下方に第3間隙K3を空けて配置されている。本実施形態では、第3間隙K3の大きさは4.0mmであり、第1間隙K1の大きさは、第3間隙K3よりも集電箔3の厚み分だけ小さい。
【0030】
マグネットロール140は、外周面140mに生じた磁力Fgによって、キャリア粒子200を外周面140mに吸着可能に構成されている。このマグネットロール140は、粒子混合部120において複合粒子15と混合されたキャリア粒子200を当該マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着することによって、当該マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着したキャリア粒子200に複合粒子15が保持された状態として、第1間隙K1に向けて、複合粒子15及びキャリア粒子200を当該マグネットロール140の周方向に搬送する。なお、マグネットロール140の外周面140mに生じる磁力Fgの大きさは、マグネットロール140の周方向位置によって異なっており、外周面140mのうち、後述する成膜領域MRを構成する成膜領域構成部140mp(第1磁石143N1が径方向内側に存在する部位、図4参照)において最も強い。
【0031】
具体的には、マグネットロール140は、図4に示すように、アルミニウムからなる円筒状の金属筒141と、この金属筒141の内部に金属筒141と同軸に配置された、5極構造を有する円柱状のマグネット部143とを有する。金属筒141の外周面141mは、マグネットロール140の外周面140mをなす。この金属筒141には、金属筒141を回転駆動させるモータ(不図示)が連結されており、これにより、金属筒141は、図1において反時計回りに回転する。
【0032】
一方、マグネット部143は、固定されており回転しない。マグネット部143は、マグネットロール140のロール軸に直交する断面が、それぞれ扇状の5つのフェライト磁石からなる磁石(第1磁石143N1、第2磁石143S1、第3磁石143S2、第4磁石143N2、及び第5磁石143S3)により構成されている。第1磁石143N1及び第4磁石143N2は、それぞれ、径方向外側にN極を有する磁石であり、第2磁石143S1、第3磁石143S2、及び第5磁石143S3は、それぞれ、径方向外側にS極を有する磁石である(図1及び図4参照)。このうち第1磁石143N1は、上方に配置されており、金属筒141、及び、バックアップロール130で搬送される集電箔3を介して、バックアップロール130に対向する。図1において、この第1磁石143N1から反時計回りに、第2磁石143S1、第3磁石143S2、第4磁石143N2、第5磁石143S3が配置されている。
【0033】
直流電源150は、バックアップロール130とマグネットロール140との間に直流電圧Vdを印加して、第1間隙K1を含む成膜領域MRにおいて、キャリア粒子200によって保持されていた複合粒子15を、バックアップロール130によって搬送されている集電箔3に向けて空中移動させて、集電箔3の第1表面3b上に堆積させる(図1参照)。具体的には、直流電源150は、その負極がマグネットロール140に、正極がバックアップロール130に電気的に接続されている。なお、バックアップロール130は接地されている。本実施形態では、この直流電源150により、マグネットロール140の電位が-600V、バックアップロール130の電位が0Vとなるため、マグネットロール140とバックアップロール130との間に直流電圧Vd=-600Vが掛けられる。
【0034】
これにより、バックアップロール130に巻きつけられて搬送される集電箔3とマグネットロール140との第1間隙K1を含む成膜領域MRにおいて、静電気力Fsが生じる。本実施形態では、キャリア粒子200によって保持されつつマグネットロール140によって搬送されていた複合粒子15が、成膜領域MRにおいて、集電箔3に向けて空中移動(飛翔)して、集電箔3との間に働く静電気力Fsによって集電箔3の第1表面3bに引きつけられて付着(吸着)する(図1及び図5参照)。図1では、キャリア粒子200及び複合粒子15の図示を一部省略している。なお、成膜領域MRは、バックアップロール130によって搬送されている集電箔3とマグネットロール140の外周面140mとに挟まれた領域であって、複合粒子15が、集電箔3との間に働く静電気力Fsによって集電箔3に引き寄せられることによって、集電箔3の第1表面3bに向かって空中移動する領域(電界)である。直流電源150は、バックアップロール130とマグネットロール140との間に直流電圧Vdを印加することによって、この成膜領域MRを形成する。
【0035】
また、ロールプレス装置105は、第1加熱加圧ロール171と、この第1加熱加圧ロール171の下方に第4間隙K4を空けて第1加熱加圧ロール171に平行に配置された第2加熱加圧ロール173とを有する。第1加熱加圧ロール171及び第2加熱加圧ロール173には、それぞれ、これらを回転駆動させるモータ(不図示)が連結されている。また、第1加熱加圧ロール171及び第2加熱加圧ロール173には、それぞれヒータ(不図示)が内蔵されている。このロールプレス装置105は、活物質層形成装置103によって作製されて搬送される電極シート1(集電箔3上に活物質層5が形成されたシート)を、第1加熱加圧ロール171と第2加熱加圧ロール173との間で、ホットロールプレスする。
【0036】
ところで、従来の活物質層形成装置では、キャリア粒子として、磁性粒子と、この磁性粒子の表面を被覆する被膜であって電気絶縁性樹脂(例えば、シリコーン樹脂)のみからなる被膜と、からなるキャリア粒子を用いていた。このため、粒子混合部において複合粒子とキャリア粒子とが擦り合わされることで、キャリア粒子の被膜に大きな帯電量の静電気が発生する。従って、粒子混合部において複合粒子とキャリア粒子とを混合することで、強い静電気力によってキャリア粒子の表面に複合粒子が付着する態様で、複合粒子がキャリア粒子に保持される。このため、成膜領域において、マグネットロールによって搬送されているキャリア粒子による保持から複合粒子が解放され難くなり、キャリア粒子によって保持されて搬送されている複合粒子が、成膜領域に放出され難くなっていた。従って、従来の活物質層形成装置では、集電箔上に多くの複合粒子を堆積させることが難しく、集電箔上に形成する活物質層の目付を増大させることが難しかった。
【0037】
これに対し、本実施形態の活物質層形成装置103では、キャリア粒子200の被膜202は、膜状の電気絶縁性樹脂(樹脂膜203)と、この内部に位置する複数の導電性粒子204とからなる。詳細には、被膜202は、電気絶縁性樹脂からなる樹脂膜203内に、複数の導電性粒子204が分散した構造を有する(図2参照)。このように、本実施形態のキャリア粒子200は、被膜202の内部に導電性粒子204を含んでいるため、電気絶縁性樹脂のみからなる被膜を有する従来のキャリア粒子と比較して、粒子混合部120において複合粒子15と擦り合わされたときの被膜202の帯電量(静電気の量)が小さくなる。このため、本実施形態の活物質層形成装置103では、粒子混合部120において複合粒子15とキャリア粒子200とを混合したときに、キャリア粒子200と複合粒子15との間に働く静電気力を低減させることができる。これにより、キャリア粒子200と複合粒子15との間の結合力を弱めることができ、複合粒子15がキャリア粒子200から離れ易くなる。
【0038】
従って、成膜領域MRにおいて、マグネットロール140によって搬送されているキャリア粒子200による保持から複合粒子15が解放され易くなるので、キャリア粒子200によって保持されて搬送される複合粒子15の多くを、成膜領域MR(電界)に放出することができる。これにより、成膜領域MRにおいて、多くの複合粒子15を、バックアップロール130によって搬送されている集電箔3に向けて空中移動させることができ、集電箔3上に多くの複合粒子15を堆積させることができる。なお、キャリア粒子200による保持から解放されて成膜領域MRに放出された複合粒子15は、直流電源150によってマグネットロール140とバックアップロール130との間に生じさせた電位差による静電気力Fsによって、バックアップロール130によって搬送されている集電箔3に引き寄せられて、集電箔3上に付着する(図5参照)。
【0039】
また、本実施形態の活物質層形成装置103では、マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着したキャリア粒子200に複合粒子15が保持される形態が、以下の2つの形態になる。1つ目は、弱い静電気力によってキャリア粒子200の表面に複合粒子15が付着する態様で、キャリア粒子200に複合粒子15が保持される形態である。2つ目は、静電気力による付着ではなく、隣り合うキャリア粒子200間に複合粒子15が挟まれる態様で、キャリア粒子200に複合粒子15が保持される形態である。すなわち、本実施形態の活物質層形成装置103では、弱い静電気力によってキャリア粒子200の表面に付着する形態でキャリア粒子200に保持された複合粒子15と、(静電気力による付着ではなく)隣り合うキャリア粒子200間に挟まれる態様でキャリア粒子200に保持された複合粒子15とが混在して、複合粒子15と共にキャリア粒子200がマグネットロール140の外周面140mに磁気吸着して搬送される(図3参照)。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の活物質層形成装置103は、従来の活物質層形成装置(電気絶縁性樹脂のみからなる被膜を有するキャリア粒子を用いた活物質層形成装置)に比べて、集電箔3の表面(第1表面3b)に付着する複合粒子15の量を増大させることができるので、活物質層5の目付を増大させることができる。
【0041】
次に、本実施形態の電極シート1の製造方法について説明する。まず、粒子混合部120において、複合粒子15とキャリア粒子200とを混合する。続いて、粒子混合部120において複合粒子15と混合されたキャリア粒子200を、マグネットロール140の下側において、複合粒子15を保持した状態でマグネットロール140の外周面140mに吸着させる。具体的には、粒子混合部120の第2攪拌翼124と第3攪拌翼125によって上方のマグネットロール140に向けて、複合粒子15と共に送られたキャリア粒子200が、マグネットロール140の外周面140mに生じている磁力Fgによって、マグネットロール140の外周面140mに吸着することで、マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着したキャリア粒子200に複合粒子15が保持された状態となる。
【0042】
これにより、マグネットロール140の外周面140mに、複数のキャリア粒子200と、これらに保持された複数の複合粒子15とからなる粒子層210が形成される。この粒子層210は、マグネットロール140の回転に伴って上方に移動し、スキージ127によって均される(図3参照)。なお、スキージ127は、粒子混合部120の上方において、マグネットロール140の外周面140mに対して第2間隙K2を空けてマグネットロール140の側方に配置されている。このため、粒子層210の厚みは、スキージ127によって第2間隙K2の寸法に調整される。その後、この粒子層210は、マグネットロール140の回転に伴って、第1間隙K1を含む成膜領域MRまで移動する。また、バックアップロール130によって、集電箔3が長手方向DLに沿った搬送方向DM搬送される。
【0043】
ところで、マグネットロール140の外周面140mに生じる磁力Fgの大きさは、成膜領域MRを構成する成膜領域構成部140mp(図4参照)において最も強くなる。このため、マグネットロール140によって搬送されて成膜領域MRに達したキャリア粒子200(粒子層210を形成していたキャリア粒子200)は、複数のキャリア粒子200が線状に連なった磁気穂220を形成する(図5参照)。そして、成膜領域MRにおいて、磁気穂220が形成されるときに、キャリア粒子200によって保持されていた複合粒子15が、キャリア粒子200による保持から解放されて、空中移動(飛翔)する。そして、この複合粒子15は、集電箔3との間に働く静電気力Fsによって集電箔3の第1表面3bに引きつけられることで、集電箔3に向かって空中移動(飛翔)し、集電箔3の第1表面3bに付着(吸着)する(図5参照)。これにより、集電箔3の第1表面3b上には、複合粒子15(活物質粒子11とバインダ粒子13)が堆積した活物質層5が連続して形成される。なお、マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着しているキャリア粒子200は、そのまま外周面140m上に残る。
【0044】
その後、マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着したまま残ったキャリア粒子200は、マグネットロール140の回転に伴って反時計回りに下方に移動する。そして、S極同士が隣り合う第2磁石143S1と第3磁石143S2との境界部140mq(図4参照)で、外周面140mから剥がれ落ち、粒子混合部120の収容部121b内に戻る。その後、このキャリア粒子200は、粒子混合部120において複合粒子15と混合される。このようにして、帯状の集電箔3と、集電箔3の第1表面3b上に形成された活物質層5とを備える電極シート1(図6参照)が作製される。
【0045】
続いて、上述のようにして活物質層形成装置103によって作製された電極シート1(集電箔3上に活物質層5が形成されたシート)を、ロールプレス装置105によってホットロールプレスする(図1参照)。これにより、集電箔3上の活物質層5が圧密化されると共に、活物質層5中のバインダ粒子13が軟化(または溶融)して結着作用を生じる。これにより、活物質層5中の活物質粒子11同士がバインダ粒子13によって結着すると共に、活物質層5がバインダ粒子13によって集電箔3に結着した電極シート1(図6参照)が作製される。この電極シート1は、例えば、リチウムイオン二次電池の電極シート(負極シートまたは正極シート)として用いることができる。また、本実施形態では、集電箔3の第1表面3bのみに活物質層5を形成したが、第2表面3cにも活物質層5を形成するようにしても良い。
【0046】
<実施例1,2と比較例1>
実施例1では、キャリア粒子200として、被膜202における導電性粒子204(カーボン粒子)の含有率が5wt%であるキャリア粒子200を備える活物質層形成装置103を用いて、電極シート1を作製した。そして、作製した電極シート1について、活物質層5の目付を測定したところ、6.93(mg/cm)であった。また、実施例1のキャリア粒子200について体積抵抗率を測定したところ、2.22×10(Ω・cm)であった。なお、体積抵抗率は、三菱化学アナリテック社製の粉体抵抗測定システムMCP-PD51及び低抵抗計ロレスターGPを用いて、設定荷重を8kNにして、シリンダー内に充填した複数のキャリア粒子200(具体的には、複数のキャリア粒子200からなる2.0gの粉体)を加圧して測定したときの値である。
【0047】
実施例2では、実施例1と比較して、キャリア粒子200のみが異なる活物質層形成装置103を用いて、電極シート1を作製した。具体的には、実施例2では、キャリア粒子200として、被膜202における導電性粒子204の含有率が10wt%であるキャリア粒子200を用いている。そして、作製した電極シート1について、活物質層5の目付を測定したところ、7.59(mg/cm)であった。また、実施例1と同様にして、本実施例2のキャリア粒子200について体積抵抗率を測定したところ、3.84×10(Ω・cm)であった。
【0048】
比較例1では、実施例1と比較して、キャリア粒子200のみが異なる活物質層形成装置103を用いて、電極シート1を作製した。具体的には、比較例1では、キャリア粒子として、導電性粒子を含有することなくシリコーン樹脂のみからなる被膜を有する(すなわち、被膜202における導電性粒子204の含有率が0wt%である)キャリア粒子200を用いている。そして、作製した電極シート1について、活物質層5の目付を測定したところ、2.68(mg/cm)であった。また、実施例1と同様にして、本比較例1のキャリア粒子について体積抵抗率を測定したところ、4.76×10(Ω・cm)であった。
【0049】
なお、比較例1では、強い静電気力によってキャリア粒子200の表面に多くの複合粒子15が付着した態様で、多くの複合粒子15がキャリア粒子200に保持されていた。このため、成膜領域MRにおいて複合粒子15がキャリア粒子200から離れて飛翔し難くなっていた。一方、実施例1,2では、静電気力によってキャリア粒子200の表面に付着する複合粒子15の量は極めて少なくなったが、マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着した隣り合うキャリア粒子200間に複数の複合粒子15が挟まれる態様で、多くの複合粒子15がキャリア粒子200に保持されていた。これにより、多くの複合粒子15をマグネットロール140によって成膜領域MRまで搬送して、成膜領域MRにおいて複合粒子15をキャリア粒子200から離して飛翔させることができた。
【0050】
以上説明したように、実施例1,2では、比較例1に比べて、活物質層5の目付を大きくすることができた。その理由は、実施例1,2では、比較例1とは異なり、被膜202の内部に導電性粒子204を含有するキャリア粒子200を用いているからであるといえる。詳細には、実施例1,2では、電気絶縁性樹脂からなる樹脂膜203内に複数の導電性粒子204が分散した構造の被膜202を有するキャリア粒子200を用いているからであるといえる。
【0051】
さらに、実施例1,2の結果から、キャリア粒子200として、被膜202における導電性粒子204の含有率が5wt%以上10wt%以下であるキャリア粒子200を用いるのが好ましいといえる。また、キャリア粒子200として、前述の条件で測定した体積抵抗率の値が3.84×10(Ω・cm)以上2.22×10(Ω・cm)以下の範囲内となるキャリア粒子200を用いるのが好ましいといえる。
【0052】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。例えば、実施形態では、複合粒子として、活物質粒子11と、活物質粒子11の表面に結合したバインダ粒子13とからなる複合粒子15を用いたが、活物質粒子と、活物質粒子の表面に結合したバインダ粒子及び導電粒子とからなる複合粒子を用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 電極シート
3 集電箔
5 活物質層
11 活物質粒子
13 バインダ粒子
15 複合粒子
103 活物質層形成装置
120 粒子混合部
130 バックアップロール
140 マグネットロール
150 直流電源
200 キャリア粒子
201 磁性粒子
202 被膜
203 樹脂膜
204 導電性粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6