(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158059
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20221006BHJP
F16H 41/30 20060101ALI20221006BHJP
F16H 59/46 20060101ALI20221006BHJP
F16H 59/72 20060101ALI20221006BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20221006BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20221006BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H41/30 D
F16H41/30 E
F16H41/30 C
F16H41/30 F
F16H59/46
F16H59/72
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062687
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳宏
【テーマコード(参考)】
3J552
5H125
【Fターム(参考)】
3J552MA04
3J552MA12
3J552NA01
3J552NB05
3J552PA51
3J552PA59
3J552QA30C
3J552SA59
3J552TB13
3J552UA10
3J552VA42W
3J552VA48W
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BA09
5H125BC19
5H125CD06
5H125EE08
5H125EE64
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】適切なときにポンプを駆動させる。
【解決手段】駆動ユニット100は、第1電気モータ2と、流体継手3と、ポンプ11と、第2電気モータ12と、制御部15とを備えている。第1電気モータ2は、駆動輪101を駆動するように構成されている。流体継手3は、第1電気モータ2からのトルクが入力される。ポンプ11は、流体継手3内に作動流体を供給するように構成されている。第2電気モータ12は、ポンプ11を駆動するように構成されている。制御部15は、流体継手3の入出力回転比、流体継手3内の作動流体温度、及び流体継手3内の作動流体量の少なくとも一つに基づいて、第2電気モータ12を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を駆動するように構成された第1電気モータと、
前記第1電気モータからのトルクが入力されるように構成された流体継手と、
前記流体継手内に作動流体を供給するように構成されたポンプと、
前記ポンプを駆動するように構成された第2電気モータと、
前記制御部は、前記流体継手の入出力回転比、前記流体継手内の作動流体温度、及び前記流体継手内の作動流体量の少なくとも一つに基づいて、前記第2電気モータを制御する制御部と、
を備える、駆動ユニット。
【請求項2】
前記流体継手に供給される作動流体を貯蔵するタンクをさらに備え、
前記制御部は、前記タンク内の作動流体量に基づいて前記流体継手内の作動流体量を判定する、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記制御部は、第1電気モータの回転方向に基づき、前記第2電気モータを制御する、
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
バッテリの温度を作動流体によって調整するように構成されたバッテリ温度調整回路と、
前記作動流体を冷却するように構成された作動流体クーラと、
前記作動流体クーラを介して前記バッテリ温度調整回路へ前記作動流体を供給するように構成された第1流路と、
前記作動流体クーラを介さずに前記バッテリ温度調整回路へ前記作動流体を供給するように構成された第2流路と、
前記作動流体を供給する流路を前記第1流路と前記第2流路との間で切り替える切替弁と、
をさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記制御部は、外気温に基づき、前記切替弁を制御する、
請求項4に記載の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、トルクコンバータを有する電気自動車が提案されている。例えば、特許文献1に記載の電気自動車では、電気モータからのトルクは、トルクコンバータを介して駆動輪へと伝達される。また、特許文献1に記載の電気自動車は、トルクコンバータにオイルを供給するためのオイルポンプを備えている。このオイルポンプは、トルクコンバータのインペラに接続されており、インペラの回転によって駆動される。すなわち、オイルポンプは、電気モータによって駆動されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような構成の電気自動車では、オイルポンプは、駆動輪を駆動するための電気モータによって駆動されている。このため、走行時において、オイルポンプは常に作動した状態となっている。
【0005】
本発明の課題は、適切なときにポンプを駆動させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係る駆動ユニットは、第1電気モータと、流体継手と、ポンプと、第2電気モータと、制御部とを備えている。第1電気モータは、駆動輪を駆動するように構成されている。流体継手は、第1電気モータからのトルクが入力される。ポンプは、流体継手内に作動流体を供給するように構成されている。第2電気モータは、ポンプを駆動するように構成されている。制御部は、流体継手の入出力回転比、流体継手内の作動流体温度、及び流体継手内の作動流体量の少なくとも一つに基づいて、第2電気モータを制御する。
【0007】
この構成によれば、ポンプは、駆動輪を駆動するための第1電気モータではなく、第2電気モータによって駆動される。このため、走行時においてポンプが常に作動した状態となるわけではない。また、制御部は、流体継手の入出力回転比、流体継手内の作動流体温度、及び流体継手内の作動流体量の少なくとも一つに基づいて、第2電気モータを制御する。このため、ポンプを適切なときに駆動させることができる。
【0008】
好ましくは、駆動ユニットは、タンクをさらに備える。タンクは、流体継手に供給される作動流体を貯蔵する。制御部は、タンク内の作動流体量に基づいて流体継手内の作動流体量を判定する。
【0009】
好ましくは、制御部は、第1電気モータの回転方向に基づき、第2電気モータを制御する。
【0010】
好ましくは、駆動ユニットは、バッテリ温度調整回路と、作動流体クーラと、第1流路と、第2流路と、切替弁とをさらに備えている。バッテリ温度調整回路は、バッテリの温度を作動流体によって調整するように構成されている。作動流体クーラは、作動流体を冷却するように構成されている。第1流路は、作動流体クーラを介してバッテリ温度調整回路へ作動流体を供給するように構成されている。第2流路は、作動流体クーラを介さずにバッテリ温度調整回路へ作動流体を供給するように構成されている。切替弁は、作動流体を供給する流路を第1流路と第2流路との間で切り替えるように構成されている。
【0011】
好ましくは、制御部は、外気温に基づき、切替弁を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、適切なときにオイルポンプを駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】制御部による制御方法の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、駆動ユニットの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る駆動ユニットの概略図である。なお、以下の説明において、軸方向とは第1電気モータ2及びトルクコンバータ3の回転軸Oが延びる方向である。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。また、正回転とは、車両が前進するときの回転であり、逆回転とは、車両が後進するときの回転である。
【0015】
[駆動ユニット100]
図1に示すように、駆動ユニット100は、第1電気モータ2、トルクコンバータ3(流体継手の一例)、入力軸5、出力軸6、減速機7、トルクコンバータケース8、ポンプ11、第2電気モータ12、タンク13、及び制御部15を備えている。この駆動ユニット100は、例えば、電気自動車に搭載される。駆動ユニット100は、駆動輪101を駆動するように構成されている。
【0016】
<第1電気モータ2>
第1電気モータ2は、駆動輪101を駆動するように構成されている。第1電気モータ2は、モータケース21、ステータ22、及びロータ23を有している。本実施形態における第1電気モータ2は、いわゆるインナーロータ型のモータである。モータケース21は、車体フレームなどに固定されており、回転不能である。
【0017】
ステータ22は、モータケース21の内周面に固定されている。ステータ22は回転不能である。ロータ23は、回転軸O周りに回転する。ロータ23は、径方向において、ステータ22の内側に配置される。第1電気モータ2は、正回転及び逆回転する。第1電気モータ2が正回転すると、車両は前進する。第1電気モータ2が逆回転すると、車両は後進する。
【0018】
<トルクコンバータ3>
トルクコンバータ3は、軸方向において、第1電気モータ2と間隔をあけて配置されている。このトルクコンバータ3と第1電気モータ2との間に、減速機7が配置されている。軸方向において、第1電気モータ2、減速機7、トルクコンバータ3の順で配列している。
【0019】
トルクコンバータ3の回転軸Oは、第1電気モータ2の回転軸Oと実質的に一致している。トルクコンバータ3は、第1電気モータ2からのトルクが入力される。トルクコンバータ3は、第1電気モータ2からのトルクを増幅して減速機7へと出力する。
【0020】
図2に示すように、トルクコンバータ3は、カバー31、インペラ32、タービン33、ステータ34、第1ワンウェイクラッチ35、及び第2ワンウェイクラッチ36を有している。また、トルクコンバータ3は、遠心式ロックアップクラッチ37をさらに有している。本実施形態において、トルクコンバータ3の外殻は、カバー31、及び後述するインペラシェル321によって構成されている。トルクコンバータ3は、作動流体を介してトルクを伝達する。
【0021】
トルクコンバータ3は、インペラ32が第1電気モータ2側(
図2の左側)に配置され、カバー31が第1電気モータ2と反対側(
図2の右側)に配置されている。このトルクコンバータ3は、トルクコンバータケース8内に収容されている。トルクコンバータ3内には作動流体が満たされている。作動流体は、例えば作動油である。
【0022】
カバー31は、第1電気モータ2からのトルクが入力される。カバー31は、第1電気モータ2からのトルクによって回転する。カバー31は、入力軸5に固定されている。例えば、カバー31は、スプライン孔を有しており、入力軸5がカバー31のスプライン孔にスプライン嵌合する。このため、カバー31は、入力軸5と一体的に回転する。カバー31は、タービン33を覆うように配置されている。
【0023】
カバー31は、円板部311、円筒部312、及びカバーハブ313を有している。円板部311は、中央に開口を有する。円筒部312は、円板部311の外周端部から第1電気モータ2側に延びている。円板部311と円筒部312とは1つの部材によって構成されている。
【0024】
カバーハブ313は、円板部311の内周端部に固定されている。本実施形態では、カバーハブ313は、円板部311と別部材によって構成されているが、円板部311と一つの部材によって構成されていてもよい。
【0025】
カバーハブ313は、第1ボス部313a、第1フランジ部313b、及び突出部313cを有している。第1ボス部313a、第1フランジ部313b、及び突出部313cは、一つの部材によって構成されている。
【0026】
第1ボス部313aは、円筒状であって、スプライン孔を有している。この第1ボス部313aに、入力軸5がスプライン嵌合する。第1ボス部313aは、トルクコンバータケース8に軸受部材(図示省略)を介して回転可能に支持されている。第1ボス部313aは、軸方向において、第1フランジ部313bから第1電気モータ2と反対側に延びている。
【0027】
第1フランジ部313bは、第1ボス部313aから径方向外側に延びている。詳細には、第1フランジ部313bは、第1ボス部313aの第1電気モータ2側の端部から径方向外側に延びている。この第1フランジ部313bの外周端部に、円板部311が固定されている。
【0028】
突出部313cは、第1フランジ部313bから軸方向に延びている。突出部313cは、第1電気モータ2に向かって延びている。突出部313cは、第1フランジ部313bの外周端部から延びている。突出部313cは、円筒状である。
【0029】
インペラ32は、カバー31と一体的に回転する。インペラ32は、カバー31を介して第1電気モータ2からのトルクが入力される。インペラ32は、カバー31に固定されている。インペラ32は、インペラシェル321、複数のインペラブレード322、及びインペラハブ323を有している。
【0030】
インペラシェル321は、カバー31に固定されている。複数のインペラブレード322はインペラシェル321の内側面に取り付けられている。
【0031】
インペラハブ323は、インペラシェル321の内周端部に取り付けられている。なお、本実施形態では、インペラハブ323は、インペラシェル321と一つの部材によって構成されているが、インペラシェル321と別部材によって構成されていてもよい。
【0032】
インペラハブ323は、第2ボス部323aと、第2フランジ部323bとを有する。第2フランジ部323bは、第2ボス部323aから径方向外側に延びている。第2ボス部323aは、円筒状であって、軸方向に延びている。第2ボス部323aは、軸受部材(図示省略)を介してトルクコンバータケース8に回転可能に支持されている。
【0033】
第2ボス部323a内を、固定軸104(軸部材の一例)が軸方向に延びている。なお、この固定軸104は円筒状であり、この固定軸104内を出力軸6が軸方向に延びている。また、固定軸104は、例えば、変速機ケース72又はトルクコンバータケース8から延びている。固定軸104は、回転不能である。すなわち、固定軸104は、トルクコンバータ3と相対的に回転する。
【0034】
タービン33は、インペラ32と対向して配置されている。詳細には、タービン33は、軸方向においてインペラ32と対向している。タービン33は、作動流体を介してインペラ32からトルクが伝達される。
【0035】
タービン33は、タービンシェル331、複数のタービンブレード332、及びタービンハブ333を有している。タービンブレード332は、タービンシェル331の内側面に固定されている。
【0036】
タービンハブ333は、タービンシェル331の内周端部に固定されている。例えば、タービンハブ333は、リベットによって、タービンシェル331に固定されている。本実施形態では、タービンハブ333は、タービンシェル331と別部材によって構成されているが、タービンシェル331と一つの部材によって構成されていてもよい。
【0037】
タービンハブ333には、出力軸6が取り付けられている。詳細には、出力軸6が、タービンハブ333にスプライン嵌合している。タービンハブ333は、出力軸6と一体的に回転する。
【0038】
タービンハブ333は、第3ボス部333a及び第3フランジ部333bを有している。第3ボス部333a及び第3フランジ部333bは、一つの部材によって構成されている。
【0039】
第3ボス部333aは、円筒状であって、スプライン孔を有している。この第3ボス部333aに、出力軸6がスプライン嵌合する。第3ボス部333aは、軸方向において、第3フランジ部333bから第1電気モータ2と反対側に延びている。すなわち、第3ボス部333aは、軸方向において、第3フランジ部333bからカバーハブ313に向かって延びている。
【0040】
第3ボス部333aは、径方向において、突出部313cと間隔をあけて配置されている。すなわち、径方向において、第3ボス部333aの外側に突出部313cが配置されている。第3ボス部333aと突出部313cとの間に、第1ワンウェイクラッチ35が配置されている。なお、第1ワンウェイクラッチ35が無い状態では、第3ボス部333aの外周面と、突出部313cの内周面とが対向する。
【0041】
第3フランジ部333bは、第3ボス部333aから径方向外側に延びている。詳細には、第3フランジ部333bは、第3ボス部333aの第1電気モータ2側の端部から径方向外側に延びている。この第3フランジ部333bの外周端部に、タービンシェル331がリベットなどによって固定されている。
【0042】
ステータ34は、タービン33からインペラ32へと戻るオイルを整流するように構成されている。ステータ34は、回転軸O周りに回転可能である。例えば、ステータ34は、固定軸104に、第2ワンウェイクラッチ36を介して支持されている。このステータ34は、軸方向において、インペラ32とタービン33との間に配置される。
【0043】
ステータ34は、円板状のステータキャリア341と、その外周面に取り付けられる複数のステータブレード342と、を有している。
【0044】
第1ワンウェイクラッチ35は、カバー31とタービン33との間に配置されている。第1ワンウェイクラッチ35は、正回転方向において、カバー31をタービン33に対して相対回転可能とする。すなわち、車両が前進するように第1電気モータ2が正回転したとき、カバー31がタービン33と相対回転するように第1ワンウェイクラッチ35は構成されている。このため、車両の前進時は、第1ワンウェイクラッチ35は、カバー31からタービン33へとトルクを伝達しない。
【0045】
一方、第1ワンウェイクラッチ35は、逆回転方向において、カバー31をタービン33と一体回転させる。すなわち、車両が後進するように第1電気モータ2が逆回転したとき、カバー31がタービン33と一体回転するように第1ワンウェイクラッチ35は構成されている。このため、車両の後進時は、第1ワンウェイクラッチ35は、カバー31からタービン33へとトルクを伝達する。
【0046】
第2ワンウェイクラッチ36は、固定軸104とステータ34との間に配置されている。第2ワンウェイクラッチ36は、ステータ34を正回転方向に回転可能とするように構成されている。一方、第2ワンウェイクラッチ36は、ステータ34を逆回転方向に回転不能とする。このステータ34によって、トルクが増幅されて、インペラ32からタービン33へと伝達される。
【0047】
遠心式ロックアップクラッチ37は、トルクコンバータ3の回転によって作動するように構成されている。すなわち、遠心式ロックアップクラッチ37は、作動流体の流体圧によって作動するものではない。遠心式ロックアップクラッチ37は、タービン33に取り付けられている。遠心式ロックアップクラッチ37は、タービン33と一体的に回転する。
【0048】
遠心式ロックアップクラッチ37は、タービン33の回転によって生じる遠心力によって、インペラ32とタービン33とを作動流体を介さずに連結するように構成されている。なお、遠心式ロックアップクラッチ37は、カバー31を介してインペラ32とタービン33とを連結する。詳細には、遠心式ロックアップクラッチ37は、タービン33が所定の回転速度以上になると、カバー31からタービン33にトルクを伝達するように構成されている。
【0049】
遠心式ロックアップクラッチ37は、複数の遠心子371と、摩擦材372とを有している。摩擦材372は、遠心子371の外周面に取り付けられている。遠心子371は、径方向に移動可能に配置されている。なお、遠心子371は、周方向に移動不能に配置されている。このため、遠心子371は、タービン33とともに回転し、遠心力によって径方向外側に移動する。
【0050】
この遠心式ロックアップクラッチ37は、タービン33の回転速度が所定の回転速度以上になると、遠心子371が径方向外側に移動し、摩擦材372がカバー31の円筒部312の内周面と摩擦係合する。この結果、遠心式ロックアップクラッチ37はオン状態となり、カバー31からのトルクが遠心式ロックアップクラッチ37を介してタービン33へと伝達される。
【0051】
タービン33の回転速度が所定の回転速度未満になると、遠心子371が径方向内側に移動し、摩擦材372とカバー31の円筒部312の内周面との摩擦係合が解除される。この結果、遠心式ロックアップクラッチ37はオフ状態となり、カバー31からのトルクは遠心式ロックアップクラッチ37を介してタービン33へと伝達されない。すなわち、カバー31からのトルクは、インペラ32に伝達された後、作動流体を介してタービン33へと伝達される。
【0052】
<入力軸5>
図1及び
図2に示すように、入力軸5は、第1電気モータ2から延びている。詳細には、入力軸5は、第1電気モータ2のロータ23から延びている。なお、第1電気モータ2が出力軸を有している場合、入力軸5は、第1電気モータ2の出力軸に取り付けられる。入力軸5の回転軸は、第1電気モータ2の回転軸、及びトルクコンバータ3の回転軸と実質的に同一線上にある。
【0053】
入力軸5は、第1電気モータ2からのトルクをトルクコンバータ3に入力する。入力軸5は、トルクコンバータ3のインペラ32に接続されている。詳細には、入力軸5は、カバー31を介してインペラ32に接続されている。入力軸5の先端部は、トルクコンバータ3のカバーハブ313に取り付けられている。
【0054】
入力軸5は、出力軸6内を延びている。入力軸5は、中実状である。
【0055】
<出力軸6>
出力軸6は、トルクコンバータ3からのトルクを出力する。出力軸6は、トルクコンバータ3からのトルクを減速機7へと出力する。出力軸6は、トルクコンバータ3から第1電気モータ2に向かって延びている。
【0056】
出力軸6は、円筒状である。入力軸5は、この出力軸6内を延びている。出力軸6の一方の端部(
図2の右端部)は、トルクコンバータ3のタービン33に取り付けられている。また、出力軸6の他方の端部には、減速機7の歯車71が取り付けられている。出力軸6は、例えば、変速機ケース72に軸受部材などを介して回転可能に支持されている。
【0057】
<減速機7>
図1に示すように、減速機7は、軸方向において第1電気モータ2とトルクコンバータ3との間に配置されている。減速機7は、トルクコンバータ3からのトルクを駆動輪101側へと伝達する。詳細には、減速機7は、トルクコンバータ3からのトルクを増幅して、デファレンシャルギア109を介して、駆動輪101側へと伝達する。なお、減速機7は、複数の歯車71を有している。減速機7は、変速機ケース72内に収容される。なお、複数の歯車71のうちの一つは、出力軸6に固定されている。歯車71は出力軸6と一体的に回転する。
【0058】
<トルクコンバータケース8>
トルクコンバータケース8は、トルクコンバータ3を収容している。トルクコンバータケース8は、変速機ケース72と一つの部材によって構成されていてもよいし、別部材によって構成されていてもよい。トルクコンバータケース8とトルクコンバータ3の外殻とは、互いに間隔をあけて配置されている。このため、トルクコンバータケース8とトルクコンバータ3の外殻との間に空気層が形成されている。
【0059】
<デファレンシャルギア>
駆動ユニット100は、デファレンシャルギア109、及び一対のドライブシャフト110をさらに有している。デファレンシャルギア109は、減速機7からのトルクを一対の駆動輪101へと伝達するように構成されている。
【0060】
一対のドライブシャフト110は、デファレンシャルギア109から一対の駆動輪101へと延びている。ドライブシャフト110は、入力軸5と平行に延びている。また、ドライブシャフト110は、入力軸5に対してオフセットされて延びている。
【0061】
デファレンシャルギア109は、ドライブシャフト110が延びる方向において、一対の駆動輪101の間の中央部に配置されている。すなわち、一対のドライブシャフト110は、互いに実質的に同じ長さである。
【0062】
<ポンプ11>
ポンプ11は、トルクコンバータ3内に作動流体を供給するように構成されている。ポンプ11によって供給された作動流体は、例えば、固定軸104と第2ボス部323aとの間の流路、又は固定軸104と固定軸104と出力軸6との間の流路を介して、トルクコンバータ3内に供給される。
【0063】
ポンプ11は、第2電気モータ12によって駆動される。なお、ポンプ11は、第1電気モータ2によっては駆動されない。なお、本実施形態では、駆動ユニット100は、トルクコンバータ3内に作動流体を供給するためのポンプ11を1つのみ有している。
【0064】
<第2電気モータ12>
第2電気モータ12は、ポンプ11を駆動するように構成されている。第2電気モータ12は、ポンプ11専用のモータである。この第2電気モータ12は、駆動輪101の駆動には用いられてない。
【0065】
<タンク13>
タンク13は、トルクコンバータ3に供給する作動流体を貯蔵している。タンク13は、循環回路4を介してトルクコンバータ3と接続されている。
【0066】
<各種センサ>
駆動ユニット100は、第1回転センサ14a、第2回転センサ14b、温度センサ14c、作動流体量センサ14dをさらに備えている。第1回転センサ14aは、インペラ32の回転速度を検知するように構成されている。第2回転センサ14bは、タービン33の回転速度を検知するように構成されている。
【0067】
温度センサ14cは、トルクコンバータ3内の作動流体の温度を検知するように構成されている。作動流体量センサ14dは、タンク13内の作動流体の量を検知するように構成されている。
【0068】
<制御部15>
制御部15は、第2電気モータ12を制御するように構成されている。すなわち、制御部15は、第2電気モータ12を制御することによって、ポンプ11の動作を制御するように構成されている。制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を有する。制御部15は、例えば、マイクロコンピュータである。
【0069】
詳細には、制御部15は、トルクコンバータ3内の作動流体量、トルクコンバータ3の入出力回転比、トルクコンバータ3内の作動流体温度、及び第1電気モータ2の回転方向に基づいて、第2電気モータ12を制御する。
【0070】
制御部15は、タンク13内の作動流体量に関する情報を、作動流体量センサ14dから取得する。そして、制御部15は、このタンク13内の作動流体量に関する情報に基づいて、第2電気モータ12を制御する。詳細には、制御部15は、タンク13内の作動流体量に関する情報から、トルクコンバータ3内の作動流体量を推定する。
【0071】
そして、制御部15は、タンク13内の作動流体量が第1閾値以上であるか否か判定する。タンク13内の作動流体量が第1閾値以上の場合は、トルクコンバータ3内の作動流体量が所望の量よりも少なくなっているため、制御部15は、第2電気モータ12をオン状態とする。これによって、ポンプ11が駆動し、トルクコンバータ3内に作動流体が供給される。
【0072】
なお、タンク13内の作動流体量が第1閾値未満である場合は、トルクコンバータ3内に作動流体が十分に供給されており、トルクコンバータ3内の作動流体量は所望の量以上あることを意味する。以上のように、制御部15は、間接的にトルクコンバータ3内の作動流体量を判定し、このトルクコンバータ3内の作動流体量に基づいて、第2電気モータ12を制御している。
【0073】
トルクコンバータ3の入出力回転比(N2/N1)は、インペラ32の回転速度N1に対するタービン33の回転速度N2の割合(N2/N1)によって表すことができる。制御部15は、第1回転センサ14aによって検知されたインペラ32の回転速度N1に関する情報を取得する。また、制御部15は、第2回転センサ14bによって検知されたタービン33の回転速度N2に関する情報を取得する。そして、制御部15は、インペラ32の回転速度N1に関する情報と、タービン33の回転速度N2に関する情報とに基づいて、トルクコンバータ3の入出力回転比(N2/N1)を算出する。
【0074】
制御部15は、このトルクコンバータ3の入出力回転比(N2/N1)に基づいて、第2電気モータ12を制御する。例えば、制御部15は、トルクコンバータ3の入出力回転比(N2/N1)が第2閾値以下であるか否かを判定する。トルクコンバータ3の入出力回転比(N2/N1)が第2閾値以下の場合は、せん断熱によってトルクコンバータ3内の作動流体が高温となる。このため、制御部15は、第2電気モータ12をオン状態とする。これによって、ポンプ11が駆動し、トルクコンバータ3内に作動流体が供給される。この結果、トルクコンバータ3内で高温となった作動流体をトルクコンバータ3の外部へと送ることができ、トルクコンバータ3内が高温となることを抑制することができる。
【0075】
制御部15は、トルクコンバータ3内の作動流体の温度に関する情報を、温度センサ14cから取得する。そして、制御部15は、このトルクコンバータ3内の作動流体の温度に関する情報に基づいて、第2電気モータ12を制御する。
【0076】
制御部15は、トルクコンバータ3内の作動流体の温度が第3閾値以上であるか否か判定する。トルクコンバータ3内の作動流体の温度が第3閾値以上の場合は、制御部15は、第2電気モータ12をオン状態とする。
【0077】
制御部15は、第1電気モータ2の回転方向に関する情報を取得する。例えば、制御部15は、第1電気モータ2が正回転しているか、逆回転しているか、又は停止しているか、に関する情報を取得する。第1電気モータ2が逆回転している場合は、トルクコンバータ3内に作動流体を供給する必要はないため、制御部15は、第2電気モータ12をオフ状態とする。
【0078】
<駆動ユニット100の制御方法>
図3は、制御部15による制御方法の一例を示すフローチャートである。
図3に示すように、制御部15は、まず、作動スイッチがオン状態になったか否かを判定する(ステップS1)。作動スイッチがオン状態になることで、駆動ユニット100がオン状態となる。
【0079】
制御部15は、作動スイッチがオン状態ではない(ステップS1のNo)である、すなわち、作動スイッチがオフ状態である、と判定すると、第2電気モータ12をオフ状態にする(ステップS7)。この結果、ポンプ11は停止する。
【0080】
制御部15は、作動スイッチがオン状態である(ステップS1のYes)であると判定すると、次に、第1電気モータ2の回転方向が逆回転か否か判定する(ステップS2)。制御部15は、第1電気モータ2の回転方向が逆回転である(ステップS2のYes)と判定すると、第2電気モータ12をオフ状態とする(ステップS7)。
【0081】
制御部15は、第1電気モータ2の回転方向が逆回転ではない(ステップS2のNo)、すなわち、第1電気モータ2が正回転している又は停止している、と判定すると、次に、タンク13内の作動流体量が第1閾値以上か否か判定する(ステップS3)。制御部15は、タンク13内の作動流体量が第1閾値以上か否かを判定することによって、間接的にトルクコンバータ3内の作動流体量を判定する。
【0082】
制御部15は、タンク13内の作動流体量が第1閾値以上である(ステップS3のYes)と判定すると、第2電気モータ12をオン状態とし、ポンプ11を駆動させる(ステップS6)。
【0083】
制御部15は、タンク13内の作動流体量が第1閾値未満である(ステップS3のNo)と判定すると、次に、入出力回転比(N2/N1)が第2閾値以下であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0084】
制御部15は、入出力回転比(N2/N1)が第2閾値以下であると判定すると(ステップS4のYes)、第2電気モータ12をオン状態とし、ポンプ11を駆動させる(ステップS6)。
【0085】
制御部15は、入出力回転比(N2/N1)が第2閾値よりも大きいと判定すると(ステップS4のNo)、次に、トルクコンバータ3内の作動流体の温度が第3閾値以上であるか否か判定する(ステップS5)。
【0086】
制御部15は、トルクコンバータ3内の作動流体の温度が第3閾値以上であると判定すると(ステップS5のYes)、第2電気モータ12をオン状態とし、ポンプ11を駆動させる(ステップS6)。
【0087】
制御部15は、トルクコンバータ3内の作動流体の温度が第3閾値未満であると判定すると(ステップS5のNo)、第2電気モータ12をオフ状態とし、ポンプ11を停止させる(ステップS7)。
【0088】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0089】
変形例1
図4に示すように、駆動ユニット100は、バッテリ温度調整回路16、作動流体クーラ17、第1流路18a、第2流路18b、及び切替弁19をさらに有していてもよい。バッテリ温度調整回路16は、バッテリの温度を作動流体によって調整するように構成されている。詳細には、バッテリ温度調整回路16は、バッテリの温度が高温にならないように、作動流体によってバッテリを冷却するように構成されている。
【0090】
作動流体クーラ17は、作動流体を冷却するように構成されている。第1流路18aは、作動流体クーラ17を介してバッテリ温度調整回路16へ作動流体を供給するように構成されている。第2流路18bは、作動流体クーラ17を介さずにバッテリ温度調整回路16へ作動流体を供給するように構成されている。第1流路18a、及び第2流路18bは、互いに並列に接続されている。
【0091】
切替弁19は、作動流体を供給する流路を切り替えるように構成されている。詳細には、切替弁19は、作動流体が流れる流路を、第1流路18aと第2流路18bとの間で切り替える。
【0092】
制御部15は、外気温に関する情報を取得する。そして、制御部15は、取得した外気温の情報に基づき、切替弁19を制御する。例えば、外気温が第4閾値以上であると判定すると、制御部15は、作動流体が第1流路18aを流れるように切替弁19を制御する。また、外気温が第4閾値未満であると判定すると、制御部15は、作動流体が第2流路18bを流れるように切替弁19を制御する。
【0093】
変形例2
上記実施形態では、制御部15は、入出力回転比(N2/N1)、作動流体温度、及び作動流体量の全てに基づいて第2電気モータ12を制御していたが、制御部15の構成はこれに限定されない。例えば、制御部15は、入出力回転比(N2/N1)、作動流体温度、及び作動流体量のうち、どれか一つに基づいて、第2電気モータ12を制御してもよいし、どれか2つに基づいて第2電気モータ12を制御してもよい。
【0094】
変形例3
上記実施形態では、制御部15は、タンク13内の作動流体量を検知することでトルクコンバータ3内の作動流体量を間接的に検知していたが、制御部15の構成はこれに限定されない。例えば、制御部15は、タンク13内の作動流体量を検知するのではなく、トルクコンバータ3内の作動流体量を直接的に検知してもよい。
【0095】
変形例4
上記実施形態では、トルクコンバータ3は、遠心式ロックアップクラッチ37を有していたが、トルクコンバータ3の構成はこれに限定されない。例えば、トルクコンバータ3は、作動流体の圧力によって作動するロックアップピストンを有していてもよい。ロックアップピストンは、ポンプ11から作動流体の圧力を受けて軸方向に移動し、カバー31に摩擦係合する。
【符号の説明】
【0096】
2 :第1電気モータ
3 :トルクコンバータ
9 :タンク
11 :ポンプ
12 :第2電気モータ
13 :タンク
15 :制御部
16 :バッテリ温度調整回路
17 :作動流体クーラ
18a :第1流路
18b :第2流路
19 :切替弁
100 :駆動ユニット
101 :駆動輪