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特開2022-15806車両管理システム及び車両管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015806
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】車両管理システム及び車両管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20220114BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118911
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】橋口 壮太
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】複数の車両に対して実行予定の作業に係るコストを低減する可能性を高める。
【解決手段】管理対象の複数の車両それぞれの利用予定期間を示す予約情報を取得する取得部と、管理対象の複数の車両から選択された、巡回作業の対象の複数の車両それぞれの車両拠点の巡回順を含む巡回作業計画を、予約情報及び複数の車両それぞれの車両拠点の位置に基づいて生成する生成部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象の複数の車両それぞれの利用予定期間を示す予約情報を取得する取得部と、
前記管理対象の複数の車両から選択された、巡回作業の対象の複数の車両それぞれの車両拠点の巡回順を含む巡回作業計画を、前記予約情報及び前記複数の車両それぞれの前記車両拠点の位置に基づいて生成する生成部と
を備える車両管理システム。
【請求項2】
前記生成部は、前記巡回作業において実行予定の前記管理対象の複数の車両それぞれの作業優先度を取得し、第1の作業優先度よりも高い第2の作業優先度が割り当てられた車両を、前記第1の作業優先度が割り当てられた車両よりも優先して、前記巡回作業の対象の車両として選択する、
請求項1に記載の車両管理システム。
【請求項3】
前記作業優先度は、車両の状態に基づいて決定される、請求項2に記載の車両管理システム。
【請求項4】
前記生成部は、前記巡回作業の対象の複数の車両それぞれにおいて実行予定の作業項目と、複数の作業者それぞれの前記作業項目に対応した作業実績に基づいて、前記巡回作業の対象の車両それぞれを担当する作業者を決定し、前記担当する作業者それぞれの前記巡回作業計画を生成する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両管理システム。
【請求項5】
前記生成部は、作業対象の車両の作業時間と、前記巡回順に沿った巡回経路と、前記巡回経路の出発時刻と、に基づいて、前記作業対象の車両における作業開始時刻を推定し、
前記巡回作業計画は、前記作業対象の車両に対する前記作業開始時刻を含む、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両管理システム。
【請求項6】
コンピュータを、
管理対象の複数の車両それぞれの利用予定期間を示す予約情報を取得する取得部及び、
前記管理対象の複数の車両から選択された、巡回作業の対象の複数の車両それぞれの車両拠点の巡回順を含む巡回作業計画を、前記予約情報及び前記複数の車両それぞれの前記車両拠点の位置に基づいて生成する生成部
として機能させるための車両管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両管理システム及び車両管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カーシェアリングに利用される車両のメンテナンスが行われている。特許文献1には、カーシェアリングを管理する事業体単位で、事業体が管理する車両のメンテナンスを行う計画を生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-8660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術のように、事業体単位で、事業体に所属する作業者が車両のメンテナンスを行うこととすると、事業体毎に作業者を配置する必要があり、人件費がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みなされたもので、複数の車両に対して実行予定の作業に係るコストを低減する可能性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の車両管理システムは、管理対象の複数の車両それぞれの利用予定期間を示す予約情報を取得する取得部と、前記管理対象の複数の車両から選択された、巡回作業の対象の複数の車両それぞれの車両拠点の巡回順を含む巡回作業計画を、前記予約情報及び前記複数の車両それぞれの前記車両拠点の位置に基づいて生成する生成部とを備える。
【0007】
さらに、上記の目的を達成するため、本発明の車両管理プログラムは、コンピュータを、管理対象の複数の車両それぞれの利用予定期間を示す予約情報を取得する取得部及び、前記管理対象の複数の車両から選択された、巡回作業の対象の複数の車両それぞれの車両拠点の巡回順を含む巡回作業計画を、前記予約情報及び前記複数の車両それぞれの前記車両拠点の位置に基づいて生成する生成部として機能させるための車両管理システムである。
【0008】
上記車両管理システム及び車両管理プログラムは、車両拠点の位置及び予約情報に基づいて、複数の車両それぞれの車両拠点の巡回順を含む巡回作業計画を生成する。作業者は、巡回作業計画に従い、複数の車両それぞれの車両拠点を巡回しながら作業を行うことができる。これにより、1人の作業者が複数の車両拠点に駐車され車両の作業を担当することができるので、作業者を車両拠点毎、あるいは車両拠点を管理する事業所毎に配置しておく必要がなくなり、コストを低減する可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】システムの全体図。
図2図2Aは、作業項目テーブルのデータ構成例を示す図。図2Bは、必要度テーブルのデータ構成例を示す図。図2Cは、車両情報のデータ構成例を示す図。
図3図3A及び図3Bは、作業者情報のデータ構成例を示す図。
図4】巡回作業計画の一例を示す図。
図5】巡回作業計画の表示例を示す図である。
図6】車両管理処理を示すフローチャート。
図7】車両情報生成処理を示すフローチャート。
図8】作業対象車両及び担当車両決定処理を示すフローチャート。
図9】巡回作業計画生成処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここでは、下記の順序に従って実施の形態について説明する。
(1)システムの構成:
(2)車両管理処理:
(3)他の実施形態:
【0011】
(1)システムの構成:
図1は、車両管理に係るシステムの全体図である。本実施形態のシステムは、カーシェアリングに利用される複数の車両の作業計画を生成する。システムは、車両管理システム10と、車両システム20と、管理者端末30とを備える。車両管理システム10は、情報処理装置であり、車両システム20及び管理者端末30と通信可能に設けられている。
【0012】
車両管理システム10は、車両の管理を行う。具体的には、車両管理システム10は、カーシェアリングに利用される複数の車両の作業計画を生成する。ここで、車両管理システム10が管理対象とする車両は、ある企業に属する複数の事業所それぞれが管理する複数のステーション(カーシェアリングに利用される車両の拠点、すなわち車両拠点)に駐車された車両である。また、車両に対する作業を行う作業者は、自身が所属する事業所が管理するステーションを拠点とする車両だけでなく、他の事業所が管理するステーションを拠点とする車両についての作業も担当する。より詳しくは、1人の作業者が複数の車両拠点を巡回し、各車両拠点に駐車された車両に対する作業を順に行う。このように複数の車両拠点を巡回し、各車両拠点において作業を行うといった一連の作業を巡回作業と称する。ここで、車両拠点は、カーシェアリングに利用されていないときに、車両が駐車される駐車場、すなわち車両の拠点となる駐車場である。
【0013】
巡回作業において車両に施される作業は、車両の汚れの清掃、異常の修理など、車両のメンテナンスのための作業である。車両管理システム10は、作業計画として、このような巡回作業の計画、すなわち巡回作業計画を生成する。巡回作業計画には、巡回作業の対象の車両、巡回作業の対象の車両が駐車される車両拠点の巡回順等が含まれる。巡回作業計画については後に詳述する。
【0014】
車両システム20は、カーシェアリングに利用される車両に搭載されるシステムである。車両システム20は、車両の状態を検知し、車両管理システム10に送信する。管理者端末30は、システムの管理者により利用される。管理者端末30は、管理者による入力操作を受け付け、入力に応じた指示等を車両管理システム10に送信する。管理者端末30はまた、車両管理システム10により生成された巡回作業計画を受信し、これを表示する。
【0015】
車両システム20は、通信部21と、制御部22と、記録媒体23と、信号入力部24と、臭気センサ25と、損傷センサ26と、ユーザI/F部27とを備える。制御部22は、CPU,RAM,ROM等を備える。通信部21は、車両管理システム10など外部の装置と無線通信を行うための装置であり、外部装置との間で情報の送受信を行う。制御部22は、記録媒体23やROMに記憶された種々のプログラムを実行することができる。本実施形態の制御部22は、このプログラムの1つとして、送信プログラム220を実行することができる。制御部22は、送信プログラム220の処理により、車両管理システム10が車両を管理するために必要な情報を送信する。
【0016】
信号入力部24には、車両において異常検知のために設けられたセンサのうち予め定められたセンサによる検知信号が入力される。本実施形態においては、信号入力部24には、バッテリーの異常、いわゆるバッテリー上がりを検知するバッテリーセンサー51から出力されたバッテリー上がりの検知信号が入力される。信号入力部24にはまた、タイヤの空気圧センサー52から出力されたパンクの検知信号が入力される。バッテリーセンサー51は、例えばSOC(States Of Charge)を検知し、SOCが閾値以下でバッテリー上がりを検知する。バッテリーセンサー51は、バッテリー上がりを検知した場合に検知信号を出力する。空気圧センサー52は、タイヤの空気圧に基づいてパンクを検知し、パンクを検知した場合に検知信号を出力する。
【0017】
臭気センサ25は、車内に設けられており、車内の臭気を検出する。臭気センサ25は、予め定められた1又は複数の臭気成分の濃度を検出する。損傷センサ26は、車体(ボディ)のキズやへこみなどの損傷の発生を検知する。損傷センサ26は、車体の振動センサであり、振動に応じて損傷を検知する。なお、損傷センサ26は、車両の加速度や発生音に基づいて損傷の発生を検出するものであってもよい。本実施形態においては、臭気センサ25及び損傷センサ26は、車両システム20として車両に搭載されるものとした。ただし、臭気センサ25及び損傷センサ26が車両に予め搭載されている場合には、車両システム20は、信号入力部24を介してこれらのセンサの検知信号を取得してもよい。
【0018】
ユーザI/F部27は、ユーザの指示を入力し、また、ユーザに各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネル式のディスプレイやスイッチ等やスピーカー等を備えている。すなわち、ユーザI/F部27は画像や音声の出力部およびユーザによる指示の入力部を備えている。
【0019】
車両システム20の制御部22が実行する送信プログラム220は、車両の状態を示す情報を車両管理システム10に送信するためのモジュールとして、取得部221と、通信処理部222と、を備えている。
【0020】
取得部221は、車両の状態を示す情報を取得する機能を制御部22に実現させるプログラムモジュールである。制御部22は、取得部221の機能により以下の処理を行う。制御部22は、信号入力部24に入力されたバッテリー上がりの検知信号及びパンクの検知信号を取得する。制御部22はまた、臭気センサ25から臭気成分の濃度の計測値を取得する。制御部22はまた、損傷センサ26から振動の計測値を取得する。制御部22はさらに、計測値から損傷の有無と損傷の種類を特定する。具体的には、制御部22は、第1の周波数帯の振動が検出された場合にへこみの発生を検出し、第2の周波数帯の振動が検出された場合にキズの発生を検出する。ここで、第1の周波数帯と第2の周波数帯は異なる周波数帯である。
【0021】
通信処理部222は、通信部21を介した情報の送受信を制御する機能を制御部22に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、通信処理部222の機能による制御部22の情報の送受信は、いずれも通信部21を介して行われる。制御部22は、通信処理部222の機能により以下の処理を行う。制御部22は、車両管理システム10からの要求に応じて、臭気センサ25の計測値を車両管理システム10に送信する。制御部22はまた、信号入力部24からバッテリー上がりが検知された場合には、バッテリー上がり検知情報を車両管理システム10に送信する。制御部22はまた、パンクが検知された場合には、パンク検知信号を車両管理システム10に送信する。制御部22はまた、損傷センサ26の計測値から損傷の発生が検出された場合には、損傷の種類を示す損傷検知情報を車両管理システム10に送信する。なお、臭気センサ25の計測値、バッテリー上がり検知情報、パンク検知情報、損傷検知情報には、車両を識別する車両IDが含まれる。
【0022】
管理者端末30は、通信部31と、制御部32と、ユーザI/F部33と、記録媒体34とを備える。通信部31は、車両管理システム10など外部の装置と無線通信を行うための装置であり、外部装置との間で情報の送受信を行う。制御部32は、CPU,RAM,ROM等を備える。制御部32は、記録媒体34やROMに記憶された種々のプログラムを実行することができる。ユーザI/F部33は、ユーザの指示を入力し、また、ユーザに各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネル式のディスプレイやスイッチ等やスピーカー等を備えている。すなわち、ユーザI/F部33は、画像や音声の出力部およびユーザによる指示の入力部を備えている。
【0023】
管理者は、巡回作業計画を生成する場合に、巡回作業計画を行う希望日時をユーザI/F部33を介して入力する。これに対し、希望日時が通信部31を介して車両管理システム10に送信される。本実施形態においては、巡回作業計画の生成は、1日単位で行われ、管理者は、希望日時として、巡回作業の実施日と、開始時刻と、を指定するものとする。また、車両管理システム10において巡回作業計画が生成されると、通信部31は巡回作業計画を受信する。そして、ユーザI/F部33としてのディスプレイに巡回作業計画が表示される。
【0024】
車両管理システム10は、通信部11と、制御部12と、記録媒体13とを備える。通信部11は、車両システム20及び管理者端末30と情報の送受信を行う。制御部12による車両システム20及び管理者端末30との間の情報の送受信は、通信部11を介して行われる。制御部12は、CPU,RAM,ROM等を備える。制御部12は、記録媒体13やROMに記憶された種々のプログラムを実行することができる。本実施形態の制御部12は、このプログラムの1つとして、車両管理プログラム120を実行することができる。制御部12は、車両管理プログラム120の処理により、カーシェアリングに利用される車両の巡回作業計画を生成することができる。
【0025】
記録媒体13は、地図情報131、予約情報132、作業項目テーブル133、必要度テーブル134、車両情報135及び作業者情報136を記憶している。地図情報131は、記録媒体13に予め記憶されている。地図情報131は、道路区間の端点に対応するノードの位置を示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士を接続するリンクを示すリンクデータ等を含んでいる。ここで、ノードは、交差点に対応し、リンクは、交差点から交差点までの道路区間に対応する。また、各リンクには、リンクの道路種別と所要距離とが対応付けられている。地図情報131は、車両の位置の特定や目的地までの経路探索、経路案内等に利用される。地図情報131はさらに、施設情報を含んでいる。施設情報は、施設を識別する施設IDと、ポリゴンデータと、を対応付けた情報である。ここで、施設には、車両拠点や事業所が含まれるものとする。また、ポリゴンデータは、施設の位置、サイズ及び形状を示す二次元のポリゴンデータである。
【0026】
予約情報132は、カーシェアリングの利用者が所持する携帯端末(不図示)における入力操作に応じて入力され、車両管理システム10に送信、記録される。ここで、利用者は、カーシェアリングのサービスを利用するとして登録された者である。予約情報132には、車両IDと、利用予定期間と、利用者IDとが対応付けて記録される。ここで、車両IDは、カーシェアリングに利用される車両、すなわち、車両管理システム10の管理対象の車両を識別する情報である。利用予定期間は、利用者により予約された予約開始日時から予約終了日時までの期間を示す情報である。利用者IDは、利用者を識別する情報である。予約情報132は、利用者による携帯端末の操作に応じた予約の有無、利用予定期間の変更に応じて、制御部12により、適宜追加、変更又は削除される。
【0027】
作業項目テーブル133は、車両に施される作業項目毎の作業時間を示す情報である。作業項目テーブル133は、記録媒体13に予め設定されているものとする。図2Aは、作業項目テーブル133のデータ構成例を示す図である。作業項目テーブル133において、作業項目と作業時間とが対応付けられている。作業項目は、ボディ清掃や内装清掃、パンク修理など、巡回作業計画において実行される作業内容の種類を示す情報である。作業時間は、作業に要する時間である。作業項目テーブル133に記録される作業時間は、作業者に依存しない一般的な値である。本実施形態においては、複数の作業者による作業時間の平均値が作業時間として記録される。ただし、作業時間は、平均値に限定されるものではなく、作業内容から管理者が適切と考える値が登録されてもよい。このように、作業時間は、管理者等が任意に設定、変更可能である。図2Aの例では、例えば、ボディ清掃に対しては、作業時間10分が対応付けられている。
【0028】
必要度テーブル134は、車両に対して実施予定の作業の必要度を決定するための情報である。必要度は、作業の必要性が高いほど高い値を示す評価値である。例えば、ブレーキ異常が発生した場合、修理などの作業が必須となる。一方で、内装のわずかな汚れであれば、清掃を行った方がよいものの、必ずしも清掃する必要はない。したがって、ブレーキ修理の必要度は内装のわずかな汚れの清掃に比べて必要度は高くなる。本実施形態においては、必要度は、車両の状態に基づいて決定される。ここで、車両の状態とは、車内の汚れやパンクの発生の有無等、車両のメンテナンスが必要になり得る状態として、予め設定された複数の状態である。本実施形態においては、車両の状態として、車内(内装)の汚れ、パンク発生の有無の他、ボディ(車体)の汚れ、車内の臭気(タバコのニオイなど)、バッテリー上がりの有無、ボディの損傷の有無の6つの状態が参照される。例えば、内装の汚れは、複数段階の状態をとり、バッテリー上がりは有りと無しの2つの状態をとる。
【0029】
本実施形態においては、車両の状態は、「車両の汚れ度」及び「緊急度」の2つのパラメータにグループ化され、これらのパラメータに基づいて必要度が決定される。車両の汚れ度は、汚れの程度が大きいほど大きい値を示す。緊急度は、急を要する作業ほど大きい値を示す。例えば、バッテリー上がりの状態では走行不可能であり、カーシェアリングの利用が行えない。このように作業による正常な状態への復帰が早急に要求される状態においては、緊急度は高い値となる。一方で、車内の臭気については、バッテリー上がりに比べると緊急度は低くなる。このように、緊急度は、状態変化が検知された車両の状態の種類(バッテリー上がりやタイヤのパンク、ボディの損傷、車内の臭気)に依存するものである。本実施形態においては、車両の状態の種類(検知結果の種類)と緊急度とが予め対応付けられているものとする。なお、緊急度に対応付けられる車両の状態は、上述のように作業が行われないと車両が利用できなくなるような状態であることが好ましい。
【0030】
必要度は、作業優先度を決定するために利用される。作業優先度は、複数の車両のうちいずれの車両に対する作業を優先的に実行するかを示す評価値である。なお、作業優先度は、車両に対して割り当てられるものであり、1台の車両に複数の作業が割り当てられている場合、当該車両に割り当てられた複数の作業に対して1つの作業優先度が決定される。作業優先度を決定する処理については後に詳述する。
【0031】
図2Bは、必要度テーブル134のデータ構成例を示す図である。本実施形態においては、必要度は、低、中、高の3段階の値をとる。車両の汚れ度と緊急度はそれぞれ低、中、高の3段階の値をとる。必要度テーブル134は、車両の汚れ度と緊急度の組み合わせに対し、1つの必要度を対応付けている。すなわち、必要度テーブル134を参照することにより、車両の汚れ度と緊急度とに基づいて、必要度を決定することができる。また、本実施形態においては、必要度よりも緊急度が重視されるものとした。車両の汚れ度及び緊急度を決定する処理については後に詳述する。上述のように、車両が走行不可能な状態は、走行可能な状態より緊急度が高く、この結果、車両が走行不可能な状態は、走行可能な状態より作業必要度が高くなる。従って、車両が走行不可能な状態は、走行可能な状態より優先的に作業が実行される。
【0032】
車両情報135は、車両管理システム10の管理対象の複数の車両それぞれに関する情報を含む。図2Cは、車両情報135のデータ構成例を示す図である。車両情報135において、車両IDと、拠点位置と、前回作業日と、異常検知と、作業優先度と、作業予定の作業項目と、基準合計作業時間と、が対応付けられている。
【0033】
拠点位置は、車両に対して登録された車両拠点(ステーション)の位置を示す情報である。本実施形態においては、拠点位置として、車両が停車されている車両拠点を示す施設IDが示される。なお、前述の通り、地図情報において、施設として車両拠点が登録されているものとする。
【0034】
前回作業日は、車両に対する直前の作業日を示す情報である。作業者は、当該車両システム20が搭載された車両に対する作業が完了すると、車両システム20のユーザI/F部27を介して作業完了通知を入力する。作業完了通知は、通信部21を介して車両管理システム10に送信される。作業完了通知には、車両IDと、作業日が含まれる。制御部12は、作業完了通知を受信すると、作業完了通知に示される車両IDに対応付けて、作業完了通知に示される作業日を前回作業日として記録する。なお、既に前回作業日が記録されている場合には、制御部12は、新たに受信した作業完了通知に従い、前回作業日を更新する。
【0035】
他の例としては、管理者端末30において、管理者の入力操作に応じて、作業が完了した車両IDと、作業日を含む完了情報が生成され、車両システム20に送信されてもよい。この場合、制御部12は、完了情報に基づいて、前回作業日を記録する。
【0036】
異常検知は、車両において検知された異常を示す情報である。本実施形態においては、バッテリー上がり、パンク及びボディの損傷が検知された場合に、これらが異常検知として記録される。異常検知は、検知された車両の状態の変化を示す情報である。前述の通り、車両システム20においてバッテリー上がりが検知されると、バッテリー上がり検知情報が車両管理システム10に送信される。制御部12は、バッテリー上がり検知情報を受信した場合に、バッテリー上がり検知情報に示される車両IDに対応付けて、バッテリー上がりを異常検知として車両情報135に記録する。同様に、車両システム20においてパンクが検知されパンク検知情報が車両管理システム10に送信されると、制御部12は、パンク検知情報に示される車両IDに対応付けてパンクを異常検知として車両情報135に記録する。また、車両システム20において損傷が検知され損傷検知情報が車両管理システム10に送信されると、制御部12は、損傷検知情報に示される車両IDに対応付けて、損傷の種別(キズ又はへこみ)を異常検知として車両情報135に記録する。このように、異常検知は、異常が発生したタイミングで記録される。なお、臭気センサ25による計測結果は、制御部12による要求に応じて車両管理システム10に送信されるものであり、異常検知には記録されない。
【0037】
作業優先度は、制御部12により記録される。実行予定の作業項目は、制御部12により、車両に対して実行予定と決定された作業項目である。基準合計作業時間は、実行予定のすべての作業項目の作業に要する時間である。基準合計作業時間は、作業者によらない値であり、作業項目テーブル133に記録される作業時間に基づいて算出される。作業優先度、実行予定の作業項目及び基準合計作業時間は、制御部12が巡回作業計画を生成する場合に記録される。なお、作業優先度、実行予定の作業項目及び基準合計作業時間を記録する処理については後に詳述する。
【0038】
作業者情報136は、巡回作業を行う作業者として車両管理システム10に登録された複数の作業者それぞれに関する情報である。作業者情報136は、管理者端末30における入力操作に応じて登録され、また適宜編集される。図3A及び図3Bは、作業者情報136のデータ構成例を示す図である。図3Aは、作業者「AAA」の作業者情報136aを示す図であり、図3Bは、作業者「BBB」の作業者情報136bを示す図である。
【0039】
作業者情報136には、作業者の氏名、勤続年数、階級、最大台数及び作業実績が含まれる。階級は、作業に係る階級であり、作業の経験年数、熟練度等により決定される。最大台数は、1日に作業可能な車両の台数の最大値である。作業実績としては、作業項目毎に作業の経験の有無と、作業に要する時間(作業時間)とが記録されている。ここで、作業時間は、作業者に依存した値であり、同一の作業項目に対する作業時間であっても、作業者毎に異なり得る。すなわち、作業者情報136の作業時間は、作業項目テーブル133に記録される作業時間(平均値)とは異なる情報である。なお、作業者の作業時間は、一般的に経験が多いほど短くなっていく傾向にある。
【0040】
図1に示すように、車両管理システム10の制御部12が実行する車両管理プログラム120は、通信処理部121と、取得部122と、生成部123と、を備えている。通信処理部121は、通信部11を介した情報の送受信を制御する機能を制御部12に実現させるプログラムモジュールである。
【0041】
取得部122は、車両管理に必要な情報を取得する機能を制御部12に実現させるプログラムモジュールである。制御部12は、取得部122の機能により、カーシェアリングの利用者が所持する携帯端末(不図示)における入力操作に応じて入力され、車両管理システム10に送信された予約情報132を、通信部11、通信処理部121を介して取得し、記録媒体13に記録する。
【0042】
生成部123は、巡回作業計画を生成する機能を制御部12に実現させるプログラムモジュールである。制御部12は、生成部123の機能により以下の処理を行う。すなわち、制御部12は、予約情報132、車両情報135及び作業者情報136等に基づいて、管理対象の複数の車両の中から、巡回作業の対象の複数の車両を選択し、選択した複数の車両それぞれの車両拠点の巡回順を含む巡回作業計画を生成する。
【0043】
巡回作業計画を生成する処理においては、制御部12は、下記に示す順に処理を行う。
(1-1)管理対象のすべての車両の作業優先度、実行予定の作業項目及び基準合計作業時間を決定:
(1-2)巡回作業の対象車両を選択:
(1-3)巡回作業の対象車両それぞれの担当作業者を決定:
(1-4)巡回順を決定:
(1-5)巡回作業計画を生成:
以下、上記処理について順に説明する。
【0044】
(1-1)管理対象のすべての車両の作業優先度、実行予定の作業項目及び基準合計作業時間を決定:
制御部12は、まず管理対象の複数の車両のうち1台の車両を処理対象として選択し、選択中の車両の作業優先度、実行予定の作業項目及び基準合計作業時間を決定し、これらの情報を車両情報135に記録する。制御部12は、このように、管理対象のすべての車両を1台ずつ順に処理対象として選択することで、管理対象のすべての車両に対し、作業優先度、作業予定の作業項目及び基準合計作業時間を決定し、記録する。
【0045】
前述の通り、作業優先度は、必要度に基づいて決定され、必要度は、車両の汚れ度及び緊急度に基づいて決定される。制御部12は、車両の汚れ度及び緊急度を決定し、次いでこれらの情報に基づいて必要度を決定し、必要度に基づいて作業優先度を決定する。
【0046】
まず、車両の汚れ度を決定する処理について説明する。制御部12は、ボディ及び内装の汚れの程度に応じて、車両の汚れ度を決定する。具体的には、制御部12は、車両情報135において、処理対象として選択中の車両の車両IDに対応付けられた前回作業日を特定する。そして、制御部12は、選択中の車両の前回作業日以降に雨が降った回数に基づいて、ボディの汚れ度を決定する。なお、制御部12は、通信部11を介して、外部サーバ(不図示)から毎日の天気予報を取得、蓄積しているものとし、過去の天気予報に基づいて、雨が降った回数を特定する。制御部12は、雨が降った回数が第1降雨回数閾値未満の場合に、ボディの汚れ度を「低」に決定する。また、制御部12は、第1降雨回数閾値以上第2降雨回数閾値未満の場合にボディの汚れ度を「中」、第2降雨回数閾値以上の場合にボディの汚れ度を「高」に決定する。ここで、第2降雨回数閾値は、第1降雨回数閾値よりも大きい値である。なお、制御部12は、天気予報に替えて、実際の天気(観測結果)を示す情報を取得し、過去の観測結果に基づいて、雨が降った回数を特定してもよい。
【0047】
なお、他の例としては、制御部12は、さらに降雨量や降雨の継続時間に基づいて、ボディの汚れ度を決定してもよい。このように、制御部12は、天気予報に基づいてボディの汚れ度を決定すればよく、具体的な処理は実施形態に限定されるものではない。
【0048】
また、制御部12は、選択中の車両の前回作業日以降における利用回数に基づいて、内装の汚れ度を決定する。制御部12は、予約情報132を参照し、前回作業日から処理時点までに処理対象の車両に対して登録されている、前回作業日から処理時点までの期間における予約の数を、利用回数として特定する。なお、予約開始から予約終了までの1つの利用予約期間を1回の利用としてカウントするものとする。制御部12は、利用回数が第1利用回数閾値未満の場合に内装の汚れ度を「低」と決定する。制御部12は、第1利用回数以上第2利用回数閾値未満の場合に内装の汚れ度を「中」、第2利用回数閾値以上の場合に内装の汚れ度を「高」に決定する。ここで、第2利用回数閾値は、第1利用回数閾値よりも大きい値である。なお、他の例としては、制御部12は、前回作業日からの利用予約期間の合計時間に応じて内装の汚れ度を決定してもよい。このように、制御部12は、予約情報に基づいて内装の汚れ度を決定すればよく、具体的な処理は実施形態に限定されるものではない。
【0049】
そして、制御部12は、ボディの汚れ度と内装の汚れ度のうち、より高い値を、選択中の車両の汚れ度として決定する。例えば、ボディの汚れ度が「高」かつ内装の汚れ度が「中」の場合には、車両の汚れ度は「高」に決定される。
【0050】
次に、緊急度を決定する処理について説明する。制御部12は、巡回作業計画を生成する場合、選択中の車両の臭気の計測値の送信要求を通信処理部121及び通信部11を介して車両システム20に送信する。そして、制御部12は、応答として、選択中の車両の臭気の計測値を通信部11及び通信処理部121を介して、車両システム20から取得する。計測値の取得元の車両システム20は、選択中の車両に搭載された車両システム20とする。そして、制御部12は、計測値が第1計測閾値未満の場合に緊急度候補を「低」と決定する。制御部12は、第1計測閾値以上第2計測閾値未満の場合に緊急度候補を「中」、第2計測閾値以上の場合に緊急度候補を「高」と決定する。ここで、第2計測閾値は、第1計測閾値よりも大きい値である。
【0051】
制御部12はさらに、車両情報135を参照し、選択中の車両の車両IDに対応付けて異常検知が記録されているか否かを確認する。制御部12は、異常検知が記録されている場合に、異常検知の種類に応じて、緊急度候補を決定する。本実施形態においては、異常検知の種類と緊急度候補とが予め対応付けられており、制御部12は、この対応関係に基づいて、記録された異常検知に応じた緊急度候補を決定する。具体的には、制御部12は、バッテリー上がり、パンク及びボディのへこみの少なくとも1つが異常検知として記録されている場合には、緊急度候補を「高」に決定する。制御部12はまた、ボディのキズが記録されている場合には、緊急度候補を「低」に決定する。
【0052】
そして、制御部12は、臭気の計測値に基づいて得られた緊急度候補と、異常検知に基づいて得られた1又は2以上の緊急度候補のうち最も高い値を、選択中の車両の緊急度として決定する。なお、異常検知が記録されていない場合には、制御部12は、臭気の計測値に基づいて得られた緊急度候補を緊急度として決定する。
【0053】
次に、制御部12は、選択中の車両の状態から決定した、車両の汚れ度及び緊急度の組み合わせに基づいて、必要度テーブル134を参照し、必要度を決定する。制御部12は、さらに、必要度と、前回作業日からの経過日数に基づいて、(式1)により作業優先度を決定する。ここで、前回作業日からの経過日数は、車両情報135に示される前回作業日と、処理時点の日にちとに基づいて特定される。なお、制御部は、日付をカウントするカウント部を備えるものとする。

(作業優先度)=(必要度)×(前回作業日からの経過日数) …(式1)

そして、制御部12は、決定した作業優先度を、選択中の車両の車両IDに対応付けて車両情報135に記録する。このように、作業優先度は、必要度と、前回作業日からの経過日数とに基づいて定まり、必要度は、車両の状態に基づいて定まる。すなわち、作業優先度は、車両の状態に基づいて決定される値である。
【0054】
次に、実行予定の作業項目及び基準合計作業時間を決定する処理について説明する。制御部12は、選択中の車両の状態に基づいて、実行予定の作業項目を決定する。例えば、選択中の車両に対して決定されたボディの汚れ度が「中」以上の場合に、実行予定の作業項目としてボディ清掃が決定される。また、選択中の車両に対して決定された内装の汚れ度が「中」以上の場合に、内装清掃が決定される。また、選択中の車両に対する、臭気センサ25の計測値が第1計測閾値以上の場合に、臭気除去が決定される。制御部12は、車両情報135において、選択中の車両に対応付けて、異常検知にバッテリー上がりがパンク、車体の損傷が記録されている場合には、それぞれバッテリー修理、パンク修理及び損傷修理が決定される。なお、1台の車両に対し複数の作業項目が決定される場合もある。
【0055】
また、他の例としては、制御部12は、作業項目とこれに対応する条件とを定めた対応テーブルに基づいて、作業項目を決定してもよい。例えば、バッテリー上がり検知情報、パンク検知情報及び損傷検知情報には、それぞれバッテリー修理、パンク修理及び損傷修理が対応付けられている。また、車内の臭気については、臭気計測値が閾値を超えた場合に、臭気除去を実行することが定められているものとする。また、前回作業日からの経過日数や、利用人数、利用回数等が閾値を超えた場合に内装清掃を行うことが定められているものとする。また、前回作業日以降の降雨回数などが閾値を超えた場合にボディ清掃を行うことが定められているものとする。以上のように、車両に設けられたセンサーの検出結果が条件を満たす場合に、当該検出結果が条件を満たさなくなるようにするための作業項目が実行対象として決定される構成を採用可能である。また、清掃の要否を判断するための要素(前回作業日からの経過日数や、利用人数、利用回数等)が条件を満たす場合に、各要素に応じた清掃が実行対象の作業項目として決定される構成を採用可能である。なお、条件を満たしているか否かの判断対象となる車両の状態の数と、作業項目の数は1対1の場合もあれば、少なくとも一方が複数となる場合もある。
【0056】
そして、制御部12は、選択中の車両に対して決定された、実行予定の作業項目に基づいて、基準合計作業時間を決定する。例えば、図2Cの車両Bが処理対象として選択され、実行予定の作業項目としてボディ清掃と内装清掃が決定されたとする。この場合、制御部12は、作業項目テーブル133において、ボディ清掃の作業時間(10分)と内装清掃の作業時間(8分)を特定し、これらの合計(18分)を基準合計作業時間として決定する。そして、制御部12は、実行予定の作業項目と基準合計作業時間を、選択中の車両の車両IDに対応付けて車両情報135に記録する。
【0057】
(1-2)巡回作業の対象車両を選択:
次に、制御部12は、通信部11及び通信処理部121を介して管理者端末30から巡回作業の実行予定日を取得する。そして、制御部12は、予約情報132を参照し、実行予定日にカーシェアリングの利用予定が入っていない車両を巡回作業候補として選択する。制御部12は、さらに車両情報135を参照し、巡回作業候補の車両の中から、作業優先度が高い順に所定台数の車両を巡回作業の対象車両として選択する。以下、巡回作業の対象車両を作業対象車両と称する。
【0058】
(1-3)巡回作業の対象車両それぞれの担当作業者を決定:
次に、制御部12は、作業対象車両を作業優先度の高い順に1台ずつ処理対象として選択する。そして、制御部12は、選択中の作業対象車両に対して実行予定の作業項目と、複数の作業者それぞれの作業実績に基づいて、選択中の作業対象車両の担当作業者を決定する。ここで、担当作業者とは、選択中の作用対象車両に実行予定の作業項目を実行予定の作業者である。制御部12は、すべての作業対象車両を順に処理対象として選択し、すべての作業対象車両の担当作業者を決定する。
【0059】
制御部12は、まず作業者を決定する処理の準備として、各作業者の担当台数にゼロを設定しておく。そして、制御部12は、作業者情報136の作業実績を参照し、選択中の作業対象車両の実行予定のすべての作業項目について作業経験があり、かつ実行予定の作業項目に対する作業者合計作業時間が最短となる作業者を担当作業者として決定する。ここで、作業者合計作業時間は、作業者に依存する値である。例えば、選択中の作業対象車両に実行予定の作業項目がボディ清掃と内装清掃であったとする。この場合、作業者情報136に記録される、ボディ清掃の作業時間と内装清掃の作業時間の合計が作業者合計作業時間として算出される。
【0060】
また、担当作業者として選択することのできる作業者は、担当台数が作業者情報136に記録された、当該作業者の最大台数よりも少ない作業者に制限されるものとする。これにより、制御部12は、各作業者に作業者情報136に登録された最大台数を超えない範囲で、作業を担当すべき車両を割り当てることができる。
【0061】
(1-4)巡回順を生成:
次に、制御部12は、作業が割り当てられた作業者毎の巡回作業計画を生成する。1つの巡回作業計画は、1人の作業者が巡回して作業を行う計画である。以下、作業が割り当てられた作業者を予定作業者と称する。制御部12は、予定作業者を順に1人ずつ処理対象として選択し、選択された予定作業者の巡回順を決定する。制御部12は、すべての予定作業者を1人ずつ順に処理対象として選択し、すべての予定作業者の巡回順を決定する。
【0062】
制御部12は、地図情報131を参照し、出発地から、選択中の予定作業者の担当車両の各車両拠点までの経路探索を行う。ここで、出発地は、選択中の作業者が所属する事業所であり、事業所の位置情報は記録媒体13に予め設定されているものとする。なお、位置情報は、事業所の施設IDでもよく、緯度及び経度を示す情報でもよい。また、担当車両の車両拠点の位置として、車両情報135の拠点位置が参照される。制御部12は、経路探索により得られた各経路の所要時間を求める。本実施形態においては、地図情報131において、高速道路、国道、県道といった道路種別毎の平均車速が記録されているものとする。そして、制御部12は、各経路に含まれるリンクの道路種別毎の所要距離を、道路種別毎の平均車速で除することで得られた時間の合計を経路の所要時間として求める。
【0063】
制御部12は、所要時間が最小となる車両拠点を1番目の巡回順に決定する。続いて制御部12は、1番目の巡回順に決定された車両拠点を出発地とし、残りの担当車両の車両拠点までの経路探索を行い、所要時間が最小となる車両拠点を2番目の巡回順に決定する。制御部12は、同様の処理を繰り返すことで、すべての担当車両の車両拠点の巡回順を決定する。
【0064】
(1-5)巡回作業計画を生成:
次に、制御部12は、巡回順に従い、巡回作業計画を生成する。制御部12は、予定作業者のうち1人の作業者を処理対象として選択し、選択中の予定作業者の巡回作業計画を生成する。制御部12は、すべての予定作業者を順に処理対象として選択し、すべての予定作業者の巡回作業計画を生成する。すなわち、制御部12は、作業を担当することが決定された作業者それぞれの巡回作業計画を生成する。制御部12は、巡回順が最後の車両拠点から事業所までの経路と所要時間を求める。そして、制御部12は、巡回順を決定する際に探索により得られた、巡回順に沿って事業所から各車両拠点を回る経路と、最後の車両拠点から事業所へ戻る経路とをつなぎ、巡回経路として設定する。制御部12はさらに、出発地(事業所)から選択中の予定作業者に対して決定された巡回順の1番目の車両拠点までの経路の所要時間を巡回作業計画の出発時刻に加算した時刻を1番目の車両拠点への到着時刻として推定する。なお、出発時刻は予め設定されているものとする。また、他の例としては、出発時刻は、管理者が管理者端末30における入力操作により指定してもよい。
【0065】
さらに、制御部12は、1番目の車両拠点の到着時刻を1番目の車両拠点における作業開始時刻と推定する。制御部12は、車両情報135に記録された、1番目の車両拠点の車両の基準合計作業時間を、作業開始時刻に加算した値を作業終了時刻と推定する。なお、他の例としては、1番目の車両拠点の車両の合計作業時間として、作業者情報136に記録された、選択中の予定作業者の各作業項目に対する作業時間から計算された作業者合計作業時間を用いてもよい。
【0066】
制御部12は、出発のための準備時間を考慮し、作業終了時刻の5分後の時刻を、1番目の車両拠点の出発時刻として推定する。続いて、制御部12は、1番目の車両拠点を出発地、2番目の車両拠点を到着地とする経路の所要時間を、1番目の車両拠点の出発時刻に加算した時刻を、2番目の車両拠点の到着時刻として推定する。以上の処理を繰り返すことで、巡回順の最後の車両拠点までの到着時刻、出発時刻、作業開始時刻及び作業終了時刻を推定する。
【0067】
制御部12は、最後の車両拠点から事業所までの経路の所要時間を、最後の車両拠点の出発時刻に加算した値を事業所への到着時刻として推定する。制御部12は、以上の処理により得られた、事業所から巡回順に車両拠点を経由して事業所へ戻る経路と、各車両拠点への到着時刻、出発時刻、作業開始時刻及び作業終了時刻と、各車両拠点における作業項目と、を含む巡回作業計画を生成する。
【0068】
図4は、1人の作業者の巡回作業計画の一例を示す図である。このように、巡回作業計画には、事業所を出発し各拠点を経由して事業所へ戻る経路と、経路に沿った各拠点の到着時刻、出発時刻、作業開始時刻、作業終了時刻などが含まれる。さらに、異なる事業所により管理される車両拠点に駐車された車両が管理対象とされているので、1つの巡回作業計画には、異なる事業所により管理される車両拠点が含まれ得る。図4の例においては、作業者が所属する事業所である事業所Xを出発地とする巡回作業計画に含まれる車両拠点1及び車両拠点2は事業所Xに管理される車両拠点であり、車両拠点3は事業所Yに管理される車両拠点である。
【0069】
制御部12は、巡回作業計画を通信処理部121及び通信部11を介して管理者端末30に送信する。管理者端末30は、巡回作業計画を受信すると、巡回作業計画をディスプレイに表示する。図5は、巡回作業計画の表示例を示す図である。図5の例においては、複数の作業者(作業者Q,R、S)の巡回経路及び作業時間帯が表示されている。これにより、管理者は、巡回作業計画を確認することができる。なお、巡回作業計画の表示形式は実施形態に限定されるものではなく、図4に示すような、作業者毎の巡回作業計画が表示されてもよい。制御部12は、巡回作業計画を出力すればよく、出力先は実施形態に限定されるものではない。他の例としては、作業者の所持する携帯端末や、作業者が乗車する車両に搭載されたナビシステムなどに送信されてもよい。また、他の例としては、制御部12は、巡回作業計画をディスプレイ装置に出力してもよい。
【0070】
制御部12はさらに、車両に対して実際に作業が行われ、作業完了通知に応じて車両情報135の前回作業日を更新した場合には、対応する車両の異常検知をクリアする。制御部12はまた、巡回作業計画の生成が完了すると、車両情報135におけるすべての車両の作業優先度、作業項目及び基準合計作業時間をクリアする。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る車両管理システム10は、異なるの車両拠点に存在する車両を巡回しながら作業を行う巡回作業計画を生成する。作業者は、巡回作業計画に従うことで、複数の車両を巡回しながら作業を行うことができる。これにより、1人の作業者が複数の拠点の作業を担当することができるので、作業者を拠点毎、あるいは拠点を管理する事業所毎に配置しておく必要がなくなり、コスト(人件費、作業車人数、管理コスト等)を低減する可能性を高めることができる。
【0072】
さらに、巡回作業計画の対象には、1つの事業所に管理される車両拠点に駐車された車両だけでなく、複数の事業所それぞれに管理される車両拠点に駐車された車両も含まれる。したがって、作業者は、事業体の管理地域の制限なく、広く車両拠点を巡回する。したがって、各事業体に配置する作業者の数を低減させる可能性を高めることができる。
【0073】
また、巡回作業計画の対象は、作業優先度が高い順に選択される。したがって、作業優先度の高い車両の作業を作業優先度に低い車両の作業に優先して実行することができる。また、巡回作業計画においては、巡回経路が短くなるように作業順が決定されるので、より短時間で複数の作業を完了できる可能性を高めることができる。また、車両管理システム10は、作業優先度が高い車両から順に担当作業者を決定する。これにより、作業優先度が高い車両に対して、優先的に、実行予定の作業項目に対して適切な作業実績を持つ担当作業者を割り当てることができ、効率的な巡回作業計画を生成することができる。
【0074】
(2)車両管理処理:
次に、車両管理プログラム120の機能により実行される車両管理処理を説明する。図6は、車両管理処理を示すフローチャートである。車両管理処理は、管理者端末30から巡回作業の実行予定日と共に計画生成指示が入力された場合に実行される。車両管理処理は、制御部12の生成部123の機能により実行される。
【0075】
制御部12はまず、車両情報生成処理を行う(ステップS100)。制御部12は、車両情報生成処理において、作業優先度、作業予定の作業項目及び基準合計作業時間を求め、これらを車両情報135に記録する。次に、制御部12は、作業対象車両及び担当作業者決定処理を行う(ステップS102)。制御部12は、担当車両決定処理において、作業対象車両を選択し、すべての作業対象車両の担当作業者を決定する。次に、制御部12は、巡回作業計画生成処理を行う(ステップS104)。制御部12は、巡回作業計画生成処理において、各担当作業者の巡回作業計画を生成する。以上で、車両管理処理が完了する。
【0076】
以下、各処理について詳述する。図7は、車両情報生成処理(ステップS100)における詳細な処理を示すフローチャートである。制御部12は、まず、管理対象の複数の車両のうち1台の車両を処理対象として選択する(ステップS200)。次に、制御部12は、選択中の車両の車両汚れ度を決定する(ステップS202)。次に、制御部12は、選択中の車両の緊急度を決定する(ステップS204)。次に、制御部12は、必要度テーブル134を参照し、車両汚れ度及び緊急度に基づいて、必要度を決定する(ステップS206)。次に、制御部12は、必要度と、選択中の車両の前回点検日からの経過日数と、に基づいて、作業優先度を決定し、これを選択中の車両の車両IDに対応付けて車両情報135に記録する(ステップS208)。次に、制御部12は、選択中の車両に対して実行予定の作業項目を決定し、これを選択中の車両の車両IDに対応付けて車両情報135に記録する(ステップS210)。次に、制御部12は、作業項目テーブル133を参照し、選択中の車両に対して実行予定のすべての作業項目の作業時間の合計、すなわち基準合計作業時間を決定し、これを選択中の車両の車両IDに対応付けて車両情報135に記録する(ステップS212)。
【0077】
次に、制御部12は、管理対象のすべての車両に対して、ステップS202~ステップS212の処理を完了したか否かを確認する(ステップS214)。未処理の車両が残っている場合には(ステップS214でN)、制御部12は、処理をステップS200へ進め、未処理の車両のうちの1台を処理対象として選択し、以降の処理を継続する。管理対象のすべての車両に対して処理が完了している場合には(ステップS214でY)、車両情報生成処理を完了する。
【0078】
図8は、作業対象車両及び担当作業者決定処理(ステップS102)における詳細な処理を示すフローチャートである。担当作業者決定処理を行う場合には、制御部12は、処理の準備として、作業者情報136に登録されているすべての作業者の担当台数にゼロを設定しておく。
【0079】
制御部12は、まず作業対象車両を決定する(ステップS300)。具体的には、制御部12は、予約情報132を参照し、巡回作業の実行予定日にカーシェアリングの予定が入っていない車両を巡回作業候補として選択する。制御部12は、さらに、巡回作業候補の中から作業優先度が高い順に所定台数の車両を選択し、これらの車両を作業対象車両として決定する。
【0080】
次に、制御部12は、ステップS300において決定された複数台の作業対象車両のうち、作業優先度が最も高い1台の作業対象車両を処理対象として選択する(ステップS302)。次に、制御部12は、選択中の作業対象車両の実行予定の作業項目を車両情報135から取得する(ステップS304)。次に、制御部12は、選択中の作業対象車両の基準合計作業時間(Tv)を車両情報135から取得する(ステップS306)。
【0081】
次に、制御部12は、1人の担当候補作業者を処理対象として選択する(ステップS308)。ここで、担当候補作業者は、作業者情報136に登録されている作業者のうち、担当台数が、作業者情報136に記録されている、当該作業者の最大台数に達していない作業者である。初期状態においては、作業者情報に登録されるすべての作業者が担当候補作業者となる。
【0082】
次に、制御部12は、処理対象の担当候補作業者の作業実績を作業者情報136から取得する(ステップS310)。そして、制御部12は、選択中の担当候補作業者が、選択中の作業対象車両の実行予定のすべての作業項目について作業経験があるか否かを確認する(ステップS312)。少なくとも1個の作業項目について作業経験がない場合には(ステップS312でN)、制御部12は、処理をステップS326へ進める。作業経験がある場合には(ステップS312でY)、制御部12は、選択中の作業対象車両に対して実行予定のすべての作業項目を、選択中の担当候補作業者が実行した場合の、作業者合計作業時間(Tw)を算出する(ステップS314)。制御部12は、具体的には、作業者情報136を参照し、選択中の担当候補作業者に対応付けられた作業時間のうち、選択中の作業対象車両に対して実行予定のすべての作業項目それぞれに対応付けられた作業時間を抽出する。そして、制御部12は、これらを加算することで、作業者合計作業時間(Tw)を得る。
【0083】
次に、制御部12は、車両情報135に記録された作業者合計作業時間(Tw)と基準合計作業時間Tvとを比較する(ステップS316)。作業者合計作業時間(Tw)が基準合計作業時間(Tv)以上の場合には(ステップS316でN)、制御部12は、処理をステップS326へ進める。作業者合計作業時間(Tw)が基準合計作業時間(Tv)よりも小さい場合には(ステップS316でY)、制御部12は、最小作業時間(Tm)を取得する(ステップS318)。最小作業時間には、初期値としてTvが設定されているものとする。
【0084】
次に、制御部12は、作業者合計作業時間(Tw)と最小作業時間(Tm)とを比較する。作業者合計作業時間(Tw)が最小作業時間(Tm)以上の場合には(ステップS320でN)、制御部12は、処理をステップS326へ進める。作業者合計作業時間(Tw)が最小作業時間(Tm)よりも小さい場合には(ステップS320でY)、制御部12は、選択中の担当候補作業者を、選択中の作業対象車両の担当作業者として仮登録する(ステップS322)。なお、ステップS310~ステップS326の処理は、選択中の1台の作業対象車両に対し、担当候補作業者を変更して繰り返される繰り返し処理であり、前回のステップS322の処理において、選択中の作業対象車両に対して、既に担当作業者が仮登録されている場合がある。この場合、制御部12は、既に仮登録されていた担当作業者の仮登録を解除し、今回のステップS322の処理時点において選択中の担当候補作業者を新たに担当作業者として仮登録する。次に、制御部12は、最小作業時間(Tm)を、選択中の担当候補作業者に対して算出された作業者合計作業時間(Tw)に更新する(ステップS324)。
【0085】
次に、制御部12は、すべての担当候補作業者に対し、ステップS310~ステップS324の処理が完了したか否かを確認する(ステップS326)。未処理の担当候補作業者が残っている場合には(ステップS326でN)、制御部12は、処理をステップS308へ進め、未処理の1人の担当候補作業者を処理対象として選択し、以降の処理を継続する。すべての担当候補作業者に対して処理が完了している場合には(ステップS326でY)、制御部12は、最終的に担当作業者として仮登録されている担当候補作業者を、選択中の作業対象車両の担当作業者として本登録し、選択中の作業対象車両の担当作業者の担当台数を1台加算する(ステップS328)。これにより、選択中の作業対象車両の担当作業者の担当可能な台数は1台減ることになる。
【0086】
次に、制御部12は、選択中の作業対象車両の担当作業者の担当台数が、作業者情報136において、当該作業者に対応付けられている最大台数に達したか否かを確認する(ステップS330)。最大台数に達していない場合には(ステップS330でN)、制御部12は、処理をステップS334へ進める。最大台数に達した場合には(ステップS330でY)、制御部12は、担当作業者を、以降の処理の対象となる、作業対象車両の担当候補作業者から除外する(ステップS332)。ステップS304~ステップS332の処理は、すべての作業対象車両を処理対象として繰り返される繰り返し処理であるが、ステップS332において除外された作業者は、以降の処理においては、ステップS308において担当候補作業者として選択されることはない。
【0087】
次に、制御部12は、ステップS300において決定されたすべての作業対象車両に対し、担当作業者を決定したか否かを確認する(ステップS334)。担当作業者が決まっていない作業対象車両が残っている場合には(ステップS334でN)、制御部12は、処理をステップS302へ進め、担当作業者が決まっていない作業対象車両のうち、作業優先度が最も高い1台の作業対象車両を処理対象として選択し、以降の処理を継続する。すべての作業対象車両に対して処理が完了している場合には(ステップS334でY)、制御部12は、作業対象車両及び担当作業者決定処理を完了する。
【0088】
図9は、巡回作業計画生成処理(ステップS104)における詳細な処理を示すフローチャートである。制御部12は、まず少なくとも1つの作業の担当作業者として本登録された作業者を予定作業者として決定する(ステップS400)。次に、制御部12は、予定作業者それぞれの巡回順を決定する。すなわち、制御部12は、まず1人の予定作業者を処理対象として選択する(ステップS402)。次に、制御部12は、車両情報135から、選択中の予定作業者が担当する車両に関する情報を取得する(ステップS404)。以下、予定作業者が担当する車両を担当車両と称する。
【0089】
次に、制御部12は、出発地を設定する(ステップS406)。本実施形態においては、作業者が所属する事業所が出発地として設定される。次に、制御部12は、複数の担当車両それぞれの車両拠点を目的地とし、地図情報131を参照して、出発地から各目的地までの経路探索を行い、各経路の所要時間を算出する(ステップS408)。なお、ステップS408において目的地とされる車両拠点は巡回順が決定されていない車両拠点である。次に、制御部12は、所要時間が最小となる車両拠点を、次の巡回順に決定する(ステップS410)。ステップS408~ステップS414の処理は、担当車両の数だけ繰り返される繰り返し処理であり、1回目のステップS410の処理においては、1番目の巡回順が決定される。
【0090】
次に、制御部12は、すべての担当車両の巡回順が決定されたか否かを確認する(ステップS412)。巡回順が決定されていない担当車両が残っている場合には(ステップS412でN)、制御部12は、出発地を、ステップS410において新たに巡回順が決定された車両拠点に更新する(ステップS414)。そして、制御部12は、処理をステップS408へ進め、巡回順が設定されていない各車両拠点を目的地とし、新たに設定された出発地から各目的地への経路探索を行い、以降の処理を継続する。これにより、2番目以降の巡回順の車両拠点が順に決定される。
【0091】
すべての担当車両の巡回順が決定された場合には(ステップS412でY)、制御部12は、選択中の予定作業者の巡回順をRAM等の記録部に記録する(ステップS416)。次に、制御部12は、ステップS400で決定されたすべての予定作業者の巡回順を記録したか否かを確認する(ステップS418)。未記録の予定作業者が残っている場合には(ステップS418でN)、制御部12は、処理をステップS402へ進め、未記録の1人の予定作業者を処理対象として選択し、以降の処理を継続する。すべての予定作業者の巡回順が記録された場合には(ステップS418でY)、制御部12は、巡回順に基づいて、各作業者の巡回作業計画を生成する。すなわち、制御部12は、まず、1人の予定作業者を処理対象として選択する(ステップS420)。次に、制御部12は、出発時刻を取得する(ステップS422)。なお、出発時刻は予め記録媒体13などの記録部に設定されているものとする。
【0092】
次に、制御部12は、選択中の予定作業者の巡回経路を取得する(ステップS424)。次に、制御部12は、出発時刻と、巡回順と、に基づいて、選択中の予定作業者の巡回作業計画を生成する(ステップS426)。具体的には、制御部12は、巡回順を決定する際に探索により得られた、巡回順に沿って事業所から各車両拠点を経由して事業所へ戻る経路を巡回経路として設定する。制御部12はさらに、まず地図情報131を参照し、出発地(事業所)から選択中の予定作業者に対して決定された巡回順の1番目の車両拠点までの経路の所要時間を、巡回作業計画の出発時刻に加算した時刻を1番目の車両拠点への到着時刻及び作業開始時刻として推定する。さらに、1番目の車両拠点における基準合計作業時間に基づいて、作業終了時刻を推定し、作業終了時刻の5分後を出発時刻と推定する。同様に、2番目以降の車両拠点についても各時刻を求める。そして、事業所から巡回順に車両拠点を経由して事業所へ戻る経路と、各車両拠点への到着時刻、出発時刻、作業開始時刻及び作業終了時刻と、各車両拠点における作業項目とを含む作業計画を生成する。
【0093】
次に、制御部12は、ステップS400で設定されたすべての予定作業者の巡回作業計画を生成したか否かを確認する(ステップS428)。巡回作業計画が生成されてない予定作業者が残っている場合には(ステップS428でN)、制御部12は、処理をステップS420へ進め、巡回作業計画が生成されていない予定作業者を処理対象として選択し、以降の処理を継続する。すべての予定作業者の巡回作業計画が生成された場合には(ステップS428でY)、制御部12は、生成されたすべての作業者の巡回作業計画を示す情報を管理者端末30に送信する(ステップS430)。以上で、巡回作業計画生成処理が完了する。
【0094】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、車両管理システム10は、複数の装置(例えば、クライアントとサーバや、ナビゲーション装置内の制御部とユーザI/F部内の制御部等)によって実現されるシステムであってもよい。車両管理システム10を構成する通信処理部121、取得部122及び生成部123の少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在してもよい。むろん、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。例えば、車両情報の生成は、各車両に搭載された車両システム20により実行されてもよい。
【0095】
また、本実施形態においては、車両管理処理は、管理者端末30から計画生成指示が入力された場合に実行されるものとしたが、車両管理処理の開始の条件は実施形態に限定されるものではない。他の例としては、制御部12は、定刻、例えば毎日9:30開始の巡回作業計画を生成するものとしてもよく、この場合には、車両管理処理は、例えば毎朝8:00など、予め定められたタイミングで実行されてもよい。
【0096】
車両管理システム10の管理対象の車両は、複数の拠点に停車され、作業が必要な車両であればよく、カーシェアリングに利用される車両に限定されるものではない。他の例としては、システムは、複数の事業所それぞれが管理するレンタカーを管理対象の車両としてもよい。
【0097】
拠点位置は、拠点を経由する巡回経路を特定するために利用可能な情報であればよく、施設IDに対応付けられた施設の位置に限定されるものではない。他の例としては、拠点となる駐車場の経度及び緯度であってもよい。また、他の例としては、駐車場に隣接するリンクを識別するリンクIDであってもよい。
【0098】
巡回作業を行う対象として車両管理システム10に登録される複数の作業者は、同一事業所に所属する者に限定されるものではなく、異なる事業所に所属する者を含んでもよい。この場合、作業者情報には、作業者が所属する事業所の位置情報がさらに記録され、巡回作業計画においては、担当作業者の所属する事業所が巡回経路の出発地及び到着地として設定されるものとする。
【0099】
本実施形態においては、複数の作業者それぞれの巡回作業計画を生成したが、他の例としては、制御部12は、1人の作業者のみの巡回作業計画を生成してもよい。さらに、この場合には、制御部12は、予約情報のみに基づいて、作業者の担当車両、すなわち作業対象車両を決定してもよい。この場合、制御部12は、作業者の作業実績によらずに、作業優先度に基づいて決定してもよい。
【0100】
制御部12が、作業対象車両を決定する処理は実施形態に限定されるものではない。制御部12は、第1の作業優先度よりも高い第2の作業優先度が割り当てられた車両が、第1の作業優先度が割り当てられた車両よりも優先して作業対象車両として選択されるような処理により、作業対象車両を決定すればよい。他の例としては、第1の作業優先度と第2の作業優先度の間の値を閾値とし、作業優先度が閾値以上のすべての車両を作業対象車両として決定してもよい。このように、作業優先度の高い車両を優先的に選択することで、作業の緊急性や必要性の高い車両の作業を、作業の緊急性や必要性の低い車両の作業に優先して実行することができる。
【0101】
さらには、制御部12としては、車両拠点の位置と予約情報とに基づいて巡回作業計画を生成すればよく、作業優先度や作業実績に基づいた作業対象車両の選択が行われない構成が実現されてもよい。例えば、制御部12は、ランダムに作業対象車両を決定してもよい。また、制御部12はは、作業者の作業実績については考慮せず、作業優先度が高い順に作業者に対して車両を割り当ててもよい。また、他の例としては、制御部12は、1人の作業者の巡回経路が短くなるように、作業対象車両同士の距離が比較的近い複数の作業対象車両を1人の作業者の担当車両として決定してもよい。また、制御部12は、作業優先度が高い順に車両拠点の巡回順を決定してもよい。さらに、制御部12は、作業優先度が第1の値よりも大きい第2の値の車両に対し、作業優先度が第1の値の車両よりも優先的に、作業実績のある作業者(熟練者)や、より早く作業を終えられる作業者を割り当ててもよい。これにより、作業優先度が高い車両がより短時間で完了する巡回作業の計画(巡回作業計画)を生成することができる。
【0102】
また、巡回作業の期間は、1日単位に限定されるものではない。他の例としては、ある日の午前中や午後であってもよい。制御部12は、指定された巡回作業の期間にカーシェアリングの予定が入っていない車両を巡回作業候補として選択すればよい。
【0103】
車両の汚れ度は、ボディの汚れ度と内装の汚れ度の少なくとも一方に基づいて決定される値であればよい。また、車両の汚れ度の具体的な決定方法は、実施形態の限定されるものではない。他の例としては、制御部12は、降雨回数と利用回数を変数として車両の汚れ度を決定するような関数を用いて車両の汚れ度を決定してもよい。
【0104】
また、作業優先度は、車両の状態(汚れ度及び緊急度)及び前回作業日からの経過日数の少なくとも一方に基づいて決定されればよい。制御部12は、例えば、前回作業日からの経過日数に関わらず、車両の状態のみ、すなわち必要度のみに基づいて作業優先度を決定してもよい。また、制御部12は、車両の状態に基づいて作業優先度を決定すればよく、車両の状態は、車内の汚れ、車外の汚れ、車内の臭気、パンクの有無、バッテリー上がりの有無、損傷の有無の少なくとも1つの要素であればよく、またこれ以外の要素であってもよい。これ以外の要素としては、エンジン異常や、ブレーキ異常などが挙げられる。なお、制御部12が参照すべき車両の状態の種類は、予め設定されているものとする。車両の状態に基づいて作業優先度を決定する手法は、種々の手法を採用可能である。例えば、制御部12は、車内の汚れの程度、車外の汚れの程度、車内の臭気の程度が高い車両であるほど、より高い作業優先度としてもよい。さらに、制御部12は、異常が検出された車両の作業優先度を、異常が検出されていない車両より高くしても良い。さらに、制御部12は、車両の状態における緊急度が高い車両であるほど、より高い作業優先度としても良い。さらに、制御部12は、走行不可能な車両の作業優先度を、走行可能な車両の作業優先度より高くしても良い。また、制御部12は、車両の状態を示す各評価値が第1の値よりも高い第2の値の場合に、評価値が第1の値の場合よりも高い作業優先度を決定してもよい。
【0105】
また、他の例としては、定期点検の巡回作業計画を生成するような場合には、制御部12は、前回作業日からの経過日数のみに基づいて作業優先度を決定してもよい。例えば、制御部12は、経過日数が第1の値よりも長い第2の値の場合に、経過日数が第1の値の場合よりも高い作業優先度を決定してもい。
【0106】
また、制御部12は、車両において、異常が発生している場合には、異常発生時点からの経過日数をさらに考慮して、作業優先度を決定してもよい。
【0107】
また、本実施形態においては、汚れ度、緊急度、必要度及び作業優先度は、いずれも3段階の評価値としたが、各評価値は、2段階の値でもよく、4段階以上の値でもよい。
【0108】
なお、車両管理システム10が、臭気計測値、バッテリー上がり検知情報、パンク検知情報及び損傷検知情報を受信するタイミングは、前回作業日から巡回作業計画生成前の期間であればよく、実施形態に限定されるものではない。他の例としては、車両管理システム10は、バッテリー上がり検知情報、パンク検知情報及び損傷検知情報を、巡回作業計画を生成する場合に受信することとしてもよい。
【0109】
また、車両管理システム10は、臭気計測値については、緊急度の値が中を超えたタイミングで車両システム20から通知を受けることとしてもよい。この場合、車両システム20の制御部22は、臭気センサ25、臭気計測値を定期的に取得し、第1計測閾値及び第2計測閾値と、臭気計測値との比較を行う。そして、制御部22は、第1計測閾値以上第2計測閾値未満の値が計測された場合及び第2計測閾値以上の値が計測された場合に、それぞれ第1レベル検知信号及び第2レベル検知信号を送信することとする。車両管理システム10は、これらの情報を異常検知として車両情報135に記録する。
【0110】
さらに、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置で共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0111】
10…車両システム、12…制御部、121…通信処理部、122…取得部、123…生成部、30…管理者端末、131…地図情報、132…予約情報、133…作業項目テーブル、134…必要度テーブル、135…車両情報、136…作業者情報
図1
図2
図3
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図9