(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158066
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】送電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20221006BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20221006BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/80
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062697
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 智貴
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA01
5G503EA09
5G503FA17
5G503GB06
5G503GD03
(57)【要約】
【課題】給電中の負荷の急峻な変動に対応すること。
【解決手段】受電装置7に非接触で電力を伝送する送電装置5は、インバータ513と、送電コイル531と、制御部519と、を備える。インバータ513は、直流電力を交流電力に変換する。送電コイル531は、前記インバータ513で変換された前記交流電力を前記受電装置7へ伝送する。制御部519は、前記インバータ513から出力されるインバータ出力電流に基づいて、前記インバータ513の停止を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置に非接触で電力を伝送する送電装置であって、
直流電力を交流電力に変換するインバータと、
前記インバータで変換された前記交流電力を前記受電装置へ伝送する送電コイルと、
前記インバータから出力されるインバータ出力電流に基づいて、前記インバータの停止を制御する制御部と、
を備える送電装置。
【請求項2】
前記制御部は、規定時間における前記インバータ出力電流の時間変化が閾値を超えたとき、前記インバータを停止する、
請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記制御部は、第1の規定時間に含まれる複数の第2の規定時間について取得された前記インバータ出力電流の時間変化の平均が閾値を超えたとき、前記インバータを停止する、
請求項1に記載の送電装置。
【請求項4】
前記制御部は、第3の規定時間における前記インバータ出力電流の時間変化が所定の回数に亘って連続して閾値を超えたとき、前記インバータを停止する、
請求項1に記載の送電装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記交流電力の伝送開始時刻から所定時間経過まで、前記インバータを停止する制御を行わない、
請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場、倉庫内などで自動走行し荷物の搬送を行う無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)が知られている。このAGVに非接触で給電を行うワイヤレス給電システムが開発されている。AGVは、例えば、予め設定された循環経路を走行し、予め設定された位置で停止し、荷物の積み下ろしなどを行う。ワイヤレス給電システムは、荷物の積み下ろしなどの停止中のAGVに対して、充電を行う。ワイヤレス給電システムは、電力を非接触で伝送する送電コイルを有する送電装置と、送電装置からの電力を受け取る受電コイルを有する受電装置からなる。
【0003】
給電中にAGVが発進した場合、装置内部の多くの箇所で過渡的な電圧・電流上昇が発生する。このような過渡的な電圧・電流上昇としては、例えば、送受電コイル電流上昇、送受電共振キャパシタ電圧上昇、充電電流上昇、充電電圧上昇などが挙げられる。例えば、特許文献1では、充電電力と送電電圧との増減を監視し、負荷の増減に応じて充電電力が乱高下しないように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載の受電装置では、給電中の負荷の急峻な変動に対応できないという問題がある。例えば、AGV向けのワイヤレス給電システムでは、容易な共振回路設計で大電力・高効率な給電が可能であることから、共振キャパシタを送電側、受電側共に直列接続したS-S(Series-Series)方式が多く使用されている。S-S方式によるAGVへの給電中に当該AGVが発進した場合、送受電コイルの電流、送受電共振キャパシタ電圧、バッテリ電圧などが急上昇し、素子の定格電圧を超えることで故障することが懸念される。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、給電中の負荷の急峻な変動に対応することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る送電装置は、受電装置に非接触で電力を伝送する送電装置であって、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータで変換された前記交流電力を前記受電装置へ伝送する送電コイルと、前記インバータから出力されるインバータ出力電流に基づいて前記インバータの停止を制御する制御部と、を備える。
【0008】
本実施形態にあっては、給電中のAGVが停止位置から発進したとき、送電コイルと受電装置における受電コイルとの相互インダクタンスの低下に相当する負荷の急峻な変動により発生するインバータ出力電流に基づいて、インバータの停止を制御する。
【0009】
以上の結果、給電中のAGVの発進に伴う負荷の急峻な変動に対応でき、送電装置および受電装置における回路内での過電圧の発生を抑制または未然に防止することができる。これにより、過電圧による送電装置および受電装置の故障を抑制または未然に防止することができる。
【0010】
本実施形態に係る送電装置にあっては、制御部は、規定時間におけるインバータ出力電流の時間変化が閾値を超えたとき、インバータを停止する。
【0011】
本実施形態にあっては、マイクロコンピュータの最短の時間分解能、例えばミリ秒単位を規定時間として、当該規定時間におけるインバータ出力電流の時間変化(上昇幅)を取得して当該上昇幅を閾値と比較する。これにより、本実施形態の送電装置は、ミリ秒単位で、閾値を超える過電流の検出に応答して、迅速にインバータを停止することができる。
【0012】
以上の結果、給電中のAGVの発進に伴う負荷の急峻な変動に対応でき、送電装置および受電装置における回路内での過電圧の発生を抑制または未然に防止することができる。これにより、過電圧による送電装置および受電装置の故障を抑制または未然に防止することができる。
【0013】
本実施形態に係る送電装置にあっては、制御部は、第1の規定時間に含まれる複数の第2の規定時間について取得されたインバータ出力電流の時間変化の平均が閾値を超えたとき、インバータを停止する。
【0014】
本実施形態にあっては、第1の規定時間においてインバータ出力電流の上昇幅の平均値を計算する。このため、インバータ出力電流が検出誤差を有していても、インバータの不要な停止を回避しつつ、給電中の負荷の急峻な変動によるインバータ出力電流の急峻な上昇時においてインバータを停止することができる。
【0015】
以上の結果、給電中のAGVの発進に伴う負荷の急峻な変動に対応でき、送電装置および受電装置における回路内での過電圧の発生を抑制または未然に防止することができる。これにより、過電圧による送電装置および受電装置の故障を抑制または未然に防止することができる。
【0016】
本実施形態に係る送電装置にあっては、第3の規定時間におけるインバータ出力電流の時間変化が所定の回数に亘って連続して閾値を超えたとき、インバータを停止する。
【0017】
本実施形態にあっては、第3の規定時間におけるインバータ出力電流の時間変化が所定の回数に亘って連続して閾値を超えたことを契機として、インバータが停止されるため、検出されたインバータ出力電流が検出誤差を有していても、インバータの不要な停止を回避しつつ、インバータ出力電流の急峻な上昇時においてインバータを停止することができる。
【0018】
以上の結果、給電中のAGVの発進に伴う負荷の急峻な変動に対応でき、送電装置および受電装置における回路内での過電圧の発生を抑制または未然に防止することができる。これにより、過電圧による送電装置および受電装置の故障を抑制または未然に防止することができる。
【0019】
本実施形態に係る送電装置にあっては、制御部は、交流電力の伝送開始時刻から所定時間経過まで、前記インバータを停止する制御を行わない。
【0020】
本実施形態にあっては、充電開始直後からOCP無効期間が経過するまでは、所望の充電条件を満たすためにインバータ出力電流が上昇したとしても、送電停止制御により過電流保護機能を無効にすることができる。
【0021】
以上の結果、給電開始直後のインバータの不要な停止を抑制または未然に防止しつつ、インバータ出力電流の急峻な上昇時においてインバータを停止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の上記の態様によれば、給電中の負荷の急峻な変動に対応することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態に係る非接触給電システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る非接触給電システムの回路構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る送電停止制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る送電装置を有する非接触(ワイヤレス)給電システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本願発明が限定されるものではない。また、非接触給電システムとして、工場、倉庫内で荷物などを搬送するAGVに関するAGVシステムに適用された場合を例に説明する。なお、非接触給電システムは、AGVの代わりにドローンなど、各種産業用のAGVに適用されてもよい。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0025】
(実施形態)
図1は、非接触給電システム1の一例を示す図である。
図2は、非接触給電システム1の回路構成の一例を示す図である。非接触給電システム1は、停止中のAGVに搭載されたバッテリ3に対して充電を実行する。非接触給電システム1は、送電装置5と、受電装置7と、を備える。送電装置5は、磁界共鳴方式により、受電装置7に非接触で電力を伝送する。受電装置7は、伝送された交流電力を受けて、バッテリ3へ当該交流電力を充電する。
【0026】
送電装置5は、送電ユニット51と送電コイルユニット53とを有する。送電ユニット51は、例えば、AGVが荷物の積み下ろしなどの作業のために停止する位置(停止位置)の近傍の床面に設置される。送電コイルユニット53は、送電ユニット51と電気的に接続する。送電コイルユニット53は、停止位置を基準として、所定の位置に設置される。受電装置7は、AGVに搭載される。
【0027】
受電装置7は、受電コイルユニット71と受電ユニット73とを有する。受電コイルユニット71は、停止位置にAGVが停止した場合、送電コイルユニット53に対向する。受電コイルユニット71は、送電コイルユニット53から交流電力を受け取る。受電ユニット73は、受け取った交流電力に基づいて、バッテリ3を充電する。
【0028】
送電ユニット51は、第1直流生成部511と、インバータ513と、第1電流センサ515と、駆動回路517と、制御部519と、表示器521とを備える。第1直流生成部511は、例えば、3相200Vの商用電源(交流電源)9から供給された交流電力を直流電力に変換して、インバータ513に出力する。
図2に示すように、第1直流生成部511は、例えば、交流電源9から供給される三相の交流電力を整流する整流回路DR1及び出力を滑らかにする平滑キャパシタC1を備える。なお、第1直流生成部511は、商用電源9の交流電力を整流して直流電力に変換しているが、それに限定されず、例えば、電池等で構成されて直流電力を出力するものであってもよい。
【0029】
インバータ513は、直流電力を交流電力に変換する。インバータ513は、送電コイルユニット53に対して交流電圧源として機能する。インバータ513から出力される交流電力は、商用電源9における交流の周波数より高い周波数を有する。インバータ513から出力される出力電流(インバータ出力電流)は、例えば、制御部519におけるフェーズシフト制御により制御される。フェーズシフト制御の制御対象は、例えば、インバータ出力電流の振幅(電流の大きさ)である。なお、インバータ513における出力電力の制御は、フェーズシフト制御に限定されず、例えば、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)方式、パルス振幅変調(PAM:Pulse Amplitude Modulation)方式などの他の制御方式により、実現されてもよい。
【0030】
図2に示すように、インバータ513は、例えば、第1アーム(先行アーム回路)LACと、第2アーム(追従アーム回路)FACと、を備える。先行アーム回路LACと追従アーム回路FACとは、第1直流生成部511に対して並列に接続される。先行アーム回路LACは、例えば、スイッチング素子TR1とスイッチング素子TR2とが直列に接続されて構成される。追従アーム回路FACは、スイッチング素子TR3とスイッチング素子TR4が直列に接続されて構成される。スイッチング素子TR1乃至TR4は、例えば、SiC-MOSFET、Si-MOSFETなどのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)として説明するが、スイッチング素子はこれに限定されない。例えば、スイッチング素子TR1乃至TR4は、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他のスイッチング素子により実現されてもよい。また、インバータ513は、
図2に示すようなフルブリッジ型のインバータ回路に限定されず、例えば、ハーフブリッジ型のインバータ回路により実現されてもよい。また、
図2に示すスイッチング素子TR1乃至TR4は、Nチャンネルであるが、Pチャンネルのスイッチング素子により実現されてもよい。
【0031】
図2に示すように、スイッチング素子TR1のソース端子とスイッチング素子TR2のドレイン端子とが電気的に接続する。スイッチング素子TR1のドレイン端子は第1直流生成部511の正極側に電気的に接続し、スイッチング素子TR2のソース端子は第1直流生成部511の負極側に電気的に接続する。同様に、スイッチング素子TR3のソース端子とスイッチング素子TR4のドレイン端子とが電気的に接続する。スイッチング素子TR3のドレイン端子は第1直流生成部511の正極側に電気的に接続し、スイッチング素子TR4のソース端子は第1直流生成部511の負極側に電気的に接続する。
【0032】
図2に示すように、先行アーム回路LACにおけるスイッチング素子TR1とスイッチング素子TR2との接続点CP1と、追従アーム回路FACにおけるスイッチング素子TR3とスイッチング素子TR4との接続点CP2とが、インバータ513の出力端子(出力ノード)になる。出力端子には、送電コイルユニット53が接続される。各スイッチング素子TR1乃至TR4のゲート端子には、駆動回路517から出力される駆動信号(ゲート信号)が入力される。駆動回路517の制御のもとで、スイッチング素子TR1およびスイッチング素子TR4と、スイッチング素子TR2およびスイッチング素子TR3と、が交互にオン/オフする。すなわち、スイッチング素子TR1およびスイッチング素子TR2は排他的にオン/オフし、同様にスイッチング素子TR3およびスイッチング素子TR4も排他的にオン/オフする。これらにより、インバータ513は、例えば、キロヘルツ(kHz)オーダーの高周波のインバータ出力電流を発生する。
【0033】
図2に示すように、第1電流センサ515は、例えば、送電コイル531と出力端子CP2との間に設けられる。第1電流センサ515は、インバータ出力電流を検出する。第1電流センサ515は、例えば、CT(Current Transformer:変流器)式の電流センサである。なお、第1電流センサ515は、CT式の電流センサに限定されず、任意の電流計が用いられてもよい。第1電流センサ515は、インバータ出力電流の電流値を、制御部519における第1比較器525へ出力する。
【0034】
駆動回路517は、制御部519におけるフェーズ調整器523において調整された位相信号を、スイッチング素子TR1乃至スイッチング素子TR4各々のゲートを駆動できる電圧に増幅する。位相信号は、スイッチング素子TR1乃至スイッチング素子TR4各々のゲートに入力されるパルス信号(スイッチングのオンまたはオフを示す信号)に相当する。駆動回路517は、増幅された位相信号を駆動信号として、スイッチング素子TR1乃至スイッチング素子TR4各々のゲート端子に出力する。
【0035】
制御部519は、インバータ513から出力されるインバータ出力電流に基づいて、インバータ513の停止を制御するOCP(Over Current Protection:過電流保護)機能を実行する。制御部519は、例えば、ROM、RAM、CPUなどを備えるマイクロコンピュータ、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などで構成される。制御部519は、フェーズ調整器523と第1比較器525とを備える。
【0036】
フェーズ調整器523は、送電コイルユニット53における第1無線通信部533からの出力に基づいて、位相信号の位相を調整する。これにより、フェーズ調整器523は、インバータ出力電流を制御する。制御部519は、送電装置5から受電装置7への交流電力の伝送開始時刻から所定時間経過まで、インバータ513を停止する制御を行わない。所定時間とは、バッテリ3への充電開始直後において所望の充電条件(例えば、バッテリ3へ充電される規定の電流(規定電流)、非接触給電システム1の仕様)を満たすためのインバータ出力電流の上昇期間であって、例えば、数秒間である。所定時間は、OCP機能が無効となる期間(OCP無効期間)である。OCP無効期間は、例えば充電条件などにより予め設定されて、ROMなどに記憶される。第1比較器525は、当該伝送開始時刻からOCP無効期間が経過するまで、インバータ513を停止する制御を行わない。
【0037】
フェーズ調整器523は、先行アーム回路LACと追従アーム回路FACとの間のスイッチングタイミングの位相差を調整する。例えば、位相差が0の場合、スイッチング素子TR1およびスイッチング素子TR3のスイッチングタイミングは、同位相となり、同様にスイッチング素子TR2およびスイッチング素子TR4のスイッチングタイミングも同位相となる。このとき、スイッチング素子TR1のオン時間とスイッチング素子TR4のオン時間とは、重複せず、同様にスイッチング素子TR2のオン時間とスイッチング素子TR3のオン時間とは重複しない。このため、インバータ出力電流は、0Aとなる。
【0038】
第1無線通信部533からの出力が位相差を大きくする信号(位相増大信号)である場合、フェーズ調整器523は、位相差が大きくなるように、位相信号を調整する。このとき、スイッチング素子TR1とスイッチング素子TR4とにおけるオン時間の重複の時間は長くなり、かつスイッチング素子TR2とスイッチング素子TR3とにおけるオン時間の重複の時間も長くなるため、インバータ出力電流は大きくなる。一方、第1無線通信部533からの出力が位相差を小さくする信号(位相低減信号)である場合、フェーズ調整器523は、位相差が小さくなるように、位相信号を調整する。このとき、スイッチング素子TR1とスイッチング素子TR4とにおけるオン時間の重複の時間は短くなり、かつスイッチング素子TR2とスイッチング素子TR3とにおけるオン時間の重複の時間も短くなるため、インバータ出力電流は小さくなる。
【0039】
また、フェーズ調整器523は、第1比較器525の出力に応答して、第1無線通信部533からの入力に関わらず、駆動回路517への位相信号の出力を停止する。すなわち、フェーズ調整器523は、第1無線通信部533からの入力より優先的に、例えばソフト的な割り込み処理により、第1比較器525の出力に応答して、駆動回路517への位相信号の出力を停止する。これにより、駆動回路517からスイッチング素子TR1乃至スイッチング素子TR4への駆動信号の出力は0Vとなり、ゲートは駆動しない。結果として、インバータ513は停止する。なお、フェーズ調整器523は、第1比較器525の出力に応答して、位相差を0に調整してもよい。このとき、スイッチング素子TR1およびスイッチング素子TR3のスイッチングタイミングは、同位相となり、同様にスイッチング素子TR2およびスイッチング素子TR4のスイッチングタイミングも同位相となる。これにより、インバータ出力電流は、0Aとなる。
【0040】
第1比較器525は、インバータ出力電流を、規定時間で読み込む。規定時間は、バッテリ3への電力の充電条件に応じて予め設定される。具体的には、規定時間は、制御部519を構成するマイクロコンピュータにおける最短の分解能であって、例えば、ミリ秒のオーダーなどの1秒未満の十分に短い時間である。以下、説明を具体的にするために、規定時間は20msecであるものとする。なお、規定時間は、当該最短の分解能の倍数(例えば、20msec、40msec、60msecなど)であってもよい。
【0041】
第1比較器525は、充電条件に応じて予め設定された閾値と、規定時間におけるインバータ出力電流の時間変化とを比較する。具体的には、第1比較器525は、当該伝送開始時刻からOCP無効期間が経過した後、インバータ出力電流の監視を開始し、当該比較を実行する。規定時間におけるインバータ出力電流の時間変化は、例えば、現時点で読み込まれたインバータ出力電流と、現時点から規定時間前に読み込まれたインバータ出力電流との差分の絶対値(以下においては適宜、差分値と称する)である。差分値は、規定時間当たりのインバータ出力電流の上昇幅に相当する。第1比較器525は、差分値を計算し、計算された差分値が閾値を超えた場合、フェーズ調整器523から駆動回路517への位相信号の出力を停止させる停止信号を、フェーズ調整器523に出力する。これにより、フェーズ調整器523から駆動回路517への出力を0とすることにより、インバータ513は停止する。このとき、インバータ出力電流は0Aとなる。また、第1比較器525は、OCP機能の実行を示すOCPエラーに相当する停止信号を、表示器521に出力する。
【0042】
なお、規定時間におけるインバータ出力電流の時間変化は、上記差分値に限定されず、例えば、規定時間におけるインバータ出力電流の変化の推移であってもよい。このとき、第1比較器525は、規定時間におけるインバータ出力電流の変化の推移を計算する。インバータ出力電流の変化の推移は、例えば、時間に対するインバータ出力電流の値の分布を近似した近似曲線の傾きに相当する。このとき、第1比較器525は、当該変化の推移と閾値とを比較する。第1比較器525は、当該変化の推移が閾値を超えた場合、停止信号を、フェーズ調整器523に出力する。
【0043】
表示器521は、OCPエラーに関する情報を表示する。表示器521は、例えば、警告灯である。このとき、表示器521は、停止信号の入力に応答して、OCPエラーを点灯する。なお、表示器521は、OCPエラーに関する点灯に限定されず、OCPエラーに関するメッセージなどを表示してもよい。また、表示器521は、OCPエラーに関する点灯後、予め設定された秒数(所定秒数)、例えば、2秒ほどで消灯する。このとき、送電装置5は、インバータ513を含む電源の再起動をすることなく、OCPエラーをクリアし、停止位置にAGVが停止するまで待機状態となる。具体的には、停止信号の入力後から所定秒数の経過後、フェーズ調整器523は、第1無線通信部533からの入力を待機する待機状態となる。
【0044】
送電コイルユニット53は、インバータ出力電流により、停止位置に停止したAGVに搭載された受電コイル711に、非接触で電力を伝送する。
図2に示すように、送電コイルユニット53は、インバータ513と電気的に接続された送電コイル531および共振キャパシタC2と、第1無線通信部533とを備える。
図2に示すように共振キャパシタC2は、送電コイル531に直列接続される。これにより、送電コイル531と共振キャパシタC2とは、直列共振回路を構成する。なお、共振キャパシタC2は、送電コイル531に対して並列接続されてもよい。このとき、送電コイル531および共振キャパシタC2は、並列共振回路を構成する。送電コイル531は、磁界共鳴方式により、インバータ513で変換された交流電力を受電装置7へ伝送する。具体的には、送電コイル531は、インバータ出力電流により、停止位置に停止したAGVの受電コイルユニット71に、当該交流電力を非接触で伝送する。
【0045】
第1無線通信部533は、停止位置に停止したAGVの第2無線通信部713との間で、例えば赤外線により無線通信を行う。第1無線通信部533は、第2無線通信部713のとの間で無線通信が成立すると、第2無線通信部713から送信された信号(位相増大信号または位相低減信号)を制御部519に出力する。無線通信の成立は、バッテリ3への充電が可能な停止位置にAGVが停止したことの検知に対応する。
【0046】
受電装置7は、受電コイルユニット71と受電ユニット73とを備え、AGVに搭載される。受電コイルユニット71は、
図2に示すように、受電コイル711と、共振キャパシタC3と、第2無線通信部713とを備える。AGVが停止位置に停止すると、受電コイル711は、送電コイル531と磁界結合して、送電コイル531から非接触で伝送された交流電力を受け取る。
図2に示すように、共振キャパシタC3は、受電コイル711に直列接続される。これにより、受電コイル711と共振キャパシタC3とは、直列共振回路を構成する。
【0047】
図2に示すように、送電コイルユニット53と受電コイルユニット71とにおける回路構成は、磁界共鳴方式の一例として、S-S(Series-Series)方式である。なお、共振キャパシタC3は、受電コイル711に対して並列接続されてもよい。このとき、受電コイル711および共振キャパシタC3は、並列共振回路を構成する。また、送電コイルユニット53と受電コイルユニット71とにおける回路構成は、磁界共鳴方式の実現手段として上記S-S方式に限定されず、例えば、S-P(Series-Parallel)方式、P-S(Parallel-Series)方式、P-P方式(Parallel-Parallel)などで実現されてもよい。
【0048】
第2無線通信部713は、停止位置にAGVが停止した場合、第1無線通信部533との間で、例えば赤外線により無線通信を行う。第2無線通信部713は、第1無線通信部533との間で無線通信が成立すると、第2比較器735から受信した信号(位相増大信号または位相低減信号)を、第1無線通信部533に送信する。
【0049】
受電ユニット73は、第2直流生成部731と、第2電流センサ733と、第2比較器735とを有する。第2直流生成部731は、
図2に示すように、受電コイル711の一端と共振キャパシタC3の一端とに電気的に接続される。第2直流生成部731は、受電コイルユニット71から供給される交流電力を直流電力に変換する直流変換回路である。
図2に示すように、第2直流生成部731は、例えば、受電コイル711により発生した交流電力を整流する整流回路DR2及び出力を滑らかにする平滑キャパシタC4を備える。第2直流生成部731の出力端子は、バッテリ3に電気的に接続される。
【0050】
第2電流センサ733は、第2直流生成部731とバッテリ3との間に設けられる。第2電流センサ733は、第2直流生成部731から出力された電流を検出する。第2直流生成部731から出力された電流は、バッテリ3へ充電される電流(以下、充電電流と呼ぶ)である。第2電流センサ733の構成は、第1電流センサ515と同様なため説明は省略する。第2電流センサ733は、充電電流の電流値を、第2比較器735へ出力する。
【0051】
第2比較器735は、充電電流と規定電流とを比較する。規定電流は、充電条件により予め設定される。充電電流が規定電流を超えた場合、第2比較器735は、位相低減信号を第2無線通信部713へ出力する。充電電流が規定電流を下回った場合、第2比較器735は、位相増大信号を第2無線通信部713へ出力する。なお、第2比較器735は、送電ユニット51(例えば制御部519)に搭載されてもよい。このとき、第2無線通信部713は充電電流の値を第1無線通信部533へ送信する。次いで、第2比較器735は、充電電流の値と規定電流との比較を実行し、位相増大信号または位相低減信号をフェーズ調整器523へ出力する。
【0052】
以下、本実施形態により実行される送電停止制御について説明する。
図3は、送電停止制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0053】
(送電停止制御)
(ステップS301)
第1無線通信部533と第2無線通信部713のとの間で無線通信が成立すると、第1無線通信部533は、停止位置にAGVが停止したことを検知する。
【0054】
(ステップS302)
ステップS301においてAGVが検知された場合、充電電流は規定電流未満であるため、第2無線通信部713は、位相増大信号を第1無線通信部533に送信する。第1無線通信部533は、位相増大信号をフェーズ調整器523に出力する。フェーズ調整器523は、位相増大信号により位相差を大きくした位相信号を、駆動回路517に出力する。駆動回路517は、当該位相信号の電圧を増幅して、増幅した駆動信号を、スイッチング素子TR1乃至スイッチング素子TR4に出力する。次いで、第2比較器735からの出力に基づく位相差のフィードバック制御のもとで、インバータ513は、インバータ出力電流を送電コイル531に供給する。送電コイル531は、受電コイル711に電力を伝送する。なお、本ステップにおいて、バッテリ3が満充電になれば、ステップS305の処理が実行される。制御部519は、交流電力の伝送開始時刻からOCP無効期間が経過するまで、インバータ513を停止する制御を行わない。
【0055】
(ステップS303)
交流電力の伝送開始時刻からOCP無効期間が経過すると、第1比較器525は、インバータ出力電流の時間変化と閾値との比較を、規定時間ごとに実行する(ステップS303)。このとき、バッテリ3が満充電になれば、ステップS305の処理が実行される。
【0056】
(ステップS304)
ステップS303の処理の後、インバータ出力電流の時間変化が閾値を超えなければ(ステップS304のNo)、ステップS303の処理が実行される。一方、インバータ出力電流の時間変化が閾値を超えれば(ステップS304のYes)、ステップS305の処理が実行される。
【0057】
(ステップS305)
制御部519は、OCP機能を実行する。インバータ513は、OCP機能により停止する。このとき、送電コイル531へのインバータ出力電流の供給は、停止する。加えて、表示器521は、所定秒数に亘ってOCPエラーに関する点灯を表示する。
【0058】
以上のことから本実施形態に係る送電装置5によれば、第1電流センサ515により検出されたインバータ出力電流に基づいて、インバータ513を停止する。磁界共鳴方式を採用している送電装置5では、給電中のAGVが停止位置から発進したとき、送電コイル531と受電コイル711との相互インダクタンスの低下によりインバータ出力電流が上昇する。相互インダクタンスの低下(負荷の急峻な変動)に対して応答性が高いンバータ出力電流の上昇に着目し、本実施形態の送電装置5は、過電流に相当するインバータ出力電流に基づいてインバータ513の停止を制御する。これにより、本実施形態の送電装置5は、給電中の負荷の急峻な変動に対応することできるため、送電装置5および受電装置7における回路内での過電圧の発生を抑制または未然に防止することができる。このため、本送電装置5では、過電圧による送電装置5および受電装置7の故障を抑制または未然に防止できる。
【0059】
また、本実施形態の送電装置5は、マイクロコンピュータの最短の時間分解能、すなわちミリ秒単位などの十分に短い規定時間で、インバータ出力電流の時間変化(上昇幅)を取得して当該上昇幅を閾値と比較する。これにより、本実施形態の送電装置5は、ミリ秒単位で、閾値を超える過電流の検出に応答してインバータ513を停止することができる。このため、本実施形態の送電装置5は、給電中のAGVの発進に伴う負荷の急峻な変動に対応でき、給電中に発生する装置の故障を抑制または未然に防止することができる。
【0060】
これらのことから、本送電装置5によれば、磁界共鳴方式において、インバータ出力電流を監視することで、給電中のAGVの発進時のインバータ出力電流の過渡的な変化、すなわち過電流の発生を正確に掴むことができる。これにより、本送電装置5によれば、負荷の急峻な変動に対応でき、上昇したインバータ出力電流に伴って送電装置5および受電装置7における回路内(例えば、共振キャパシタC2,C3)における高電圧(過電圧)の発生を抑制または未然に防止し、送電装置5及び受電装置7における磁界共鳴方式特有の故障を未然に防ぐことができる。加えて、本実施形態における送電停止制御は、電力の送電側で完結する保護機能であるため、通信を用いることなく、磁界共鳴方式特有の短時間の電流・電圧上昇に対応して、インバータ513を迅速に停止し、インバータ出力電流の送電コイル531への供給を停止することができる。
【0061】
加えて、本実施形態に係る送電装置5によれば、交流電力の伝送開始時刻から所定時間経過まで、前記インバータを停止する制御を行わない。このため、充電開始直後からOCP無効期間が経過するまでは、所望の充電条件を満たすためにインバータ出力電流が上昇したとしても、送電停止制御によりOCP機能を無効にすることができる。これにより、給電開始直後のインバータ513の不要な停止を抑制または未然に防止しつつ、インバータ出力電流の急峻な上昇時においてインバータ513を停止することができる。
【0062】
(第1変形例)
本変形例では、第1比較器525が、第1の規定時間に含まれる複数の第2の規定時間について取得されたインバータ出力電流の時間変化の平均と閾値とを比較することにある。第1の規定時間は、例えば、最短の分解能に対応する第2の規定時間の倍数であって規定時間と同様に十分に短い時間である。換言すれば、第2の規定時間は、第1の規定時間を等分割した時間に相当する。第1の規定時間は、インバータ出力電流の上昇幅の移動平均が計算される期間(移動平均期間)に相当する。例えば、第1の規定時間が80msecであって、第2の規定時間が20msecである場合、第1比較器525は、現時点のインバータ出力電流の上昇幅と、現時点から20msec前、40msec前、および60msec前における3つのインバータ出力電流の上昇幅との和を4で除した平均値を計算し、計算された平均値を閾値と比較する。第1比較器525は、インバータ出力電流の読み込みごと、すなわち第2の規定時間ごとに、平均値を計算する。
【0063】
本変形例によれば、予め設定された移動平均期間においてインバータ出力電流の上昇幅の平均値が計算されるため、検出されたインバータ出力電流が検出誤差を有していても、インバータ513の不要な停止を回避しつつ、給電中の負荷の急峻な変動によるインバータ出力電流の急峻な上昇時においてインバータ513を停止することができる。これにより、本送電装置5によれば、給電中の負荷の急峻な変動に対応できるため、送電装置5および受電装置7における回路内での過電圧の発生を抑制または未然に防止することができる。このため、本送電装置5では、給電中に発生する装置の故障を抑制することができる。
【0064】
(第2変形例)
本変形例は、第3の規定時間におけるインバータ出力電流の時間変化が所定の回数に亘って連続して閾値を超えたとき、インバータ513を停止することにある。第3の規定時間は、例えば、第1変形例における第1に規定時間であってもよいし、第2の規定時間であってもよい。所定の回数は、例えば、2以上の自然数であって、予め設定されてROMなどに記憶される。フェーズ調整器523は、第1比較器525から出力された停止信号の回数をカウントする。停止信号のカウント数が所定の回数に到達した場合、フェーズ調整器523は、駆動回路517への出力を停止する。
【0065】
本変形例によれば、停止信号の回数が所定の回数に連続して到達することを契機として、インバータ513が停止されるため、検出されたインバータ出力電流が検出誤差を有していても、インバータ513の不要な停止を回避しつつ、インバータ出力電流の急峻な上昇時においてインバータ513を停止することができる。これにより、本送電装置5によれば、給電中の負荷の急峻な変動に対応できるため、送電装置5および受電装置7における回路内での過電圧の発生を抑制または未然に防止することができる。このため、本送電装置5では、給電中に発生する装置の故障を抑制することができる。
【0066】
(第3変形例)
本変形例は、複数のAGVに応じて充電条件が設定されていた場合、充電条件に応じて、送電停止制御を実行することにある。制御部519は、ROMなどにおいて、例えば、AGVに搭載された受電装置7の識別情報(例えば、受電装置7を識別するID(IDentifier))に対する規定時間と閾値との対応表(LUT:Look Up Table)を記憶する。また、受電装置7は、不図示のメモリにおいて、自身のIDを記憶する。複数のAGVにそれぞれ搭載された複数の受電装置各々に関する閾値および規定時間は、ユーザにより設定された充電条件に基づいて決定され、受電装置7の識別情報と関連付けられてLUTに格納される。
【0067】
第2無線通信部713は、第1無線通信部533のとの間で無線通信が成立すると、受電装置7の識別情報を第1無線通信部533に送信する。第1無線通信部533は、受信した識別情報を、制御部519に出力する。制御部519は、識別情報をLUTと照合することで、受電装置7に関する閾値および規定時間を特定する。制御部519は、特定された閾値および規定時間を用いて
図3に記載の送電停止制御を実行する。
【0068】
本変形例に係る送電装置5によれば、複数の受電装置各々における受電条件に応じて、送電停止制御を実行することができる。これにより、本送電装置5によれば、複数の受電装置に関して、充電条件に応じて閾値と規定時間とを設定・調整することができ、ユーザが所望する充電条件に応じて、インバータ出力電流の急峻な上昇時においてインバータ513を停止することができる。
【0069】
以上のことから、本実施形態および変形例に係る送電装置5によれば、給電中の負荷の急峻な変動に対応することができ、給電中に発生する装置の故障を抑制または未然に防止することができる。
【0070】
なお、上述の実施形態および変形例は、適宜組み合わせ可能であり、また例示であって発明の範囲を限定するものではない。また、上述の実施形態および変形例は、発明の範囲、要旨に含まれ、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1…非接触給電システム、3…バッテリ、5…送電装置、7…受電装置、9…交流電源、51…送電ユニット、53…送電コイルユニット、71…受電コイルユニット、73…受電ユニット、511…第1直流生成部、513…インバータ、515…第1電流センサ、517…駆動回路、519…制御部、521…表示器、523…フェーズ調整器、525…第1比較器、531…送電コイル、533…第1無線通信部、711…受電コイル、713…第2無線通信部、731…第2直流生成部、733…第2電流センサ、735…第2比較器