(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158110
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】網戸
(51)【国際特許分類】
E06B 9/52 20060101AFI20221006BHJP
E05C 7/02 20060101ALI20221006BHJP
E05B 65/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E06B9/52 M
E05C7/02 A
E05B65/08 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062796
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 真実
(72)【発明者】
【氏名】高山 幸久
(57)【要約】
【課題】製造性・施工性に優れコストを抑えつつも自走を防止することが可能な網戸を提供する。
【解決手段】開口の室外側にてスライド移動可能に設けられる網戸であって、前記網戸が当該開口を覆う状態において、前記開口を形成する枠との召し合わせ部に位置する前記網戸の縦框は、前記召し合わせ部よりも前記開口側に張り出す張出部を有し、前記張出部に設けられ、室内側に突出し、前記枠と係合して前記網戸のスライド移動を規制する規制部材を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口の室外側にてスライド移動可能に設けられる網戸であって、
前記網戸が当該開口を覆う状態において、前記開口を形成する枠との召し合わせ部に位置する前記網戸の縦框は、前記召し合わせ部よりも前記開口側に張り出す張出部を有し、
前記張出部に設けられ、室内側に突出し、前記枠と係合して前記網戸のスライド移動を規制する規制部材を有することを特徴とする網戸。
【請求項2】
請求項1に記載の網戸であって、
前記規制部材は、前記張出部に取り付けられるベース部材と、
前記ベース部材に揺動自在に支持される揺動部材と、を有し、
前記揺動部材は、見込方向に押し込み可能な操作部と、前記操作部が押し込まれて揺動することにより見込み方向に突出する突出部と、を有し、
前記突出部は前記操作部の上または下に位置していることを特徴とする網戸。
【請求項3】
請求項2に記載の網戸であって、
前記ベース部材は、前記突出部が突出しない状態で前記揺動部材を収容する収容部と、
押し込まれた前記操作部が当接して前記揺動部材の揺動を規制する揺動規制部と、
前記揺動部材と係合して、当該揺動部材を、前記収容部に収容された状態、及び、前記突出部が突出する状態に保持する保持部と、を有していることを特徴とする網戸。
【請求項4】
請求項3に記載の網戸であって、
前記収容部は、水平方向に間隔を空けて対向する見込面を有し、
前記揺動部材は、前記対向する見込面の間に配置され、当該揺動部材において前記見込面と対向する対向部は、前記見込面とは反対側に窪む凹部を有していることを特徴とする網戸。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の網戸であって、
前記揺動部材は、前記ベース部材に収容された状態で室内に臨む面が、前記ベース部材の室内側の縁よりも室外側に位置していることを特徴とする網戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網戸に関する。
【背景技術】
【0002】
スライド移動可能に設けられている網戸は、強風などにより不意にスライド移動してしまう虞がある。このような網戸の不意のスライド移動(自走)を防止するために、建具に備えられる自走防止装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この自走防止装置は、施錠具と受具とを備えており、施錠具は、網戸を構成する一対の縦框のうち外障子の戸先框と同じ側に位置する縦框の内側に設けられ、受具は、外障子を構成する戸先框の屋外側部分に固定されている。そして、外障子が開かれた状態で網戸を閉止位置に配置し、施錠具に設けられている回動施錠片を網戸の縦框よりも屋内側に突出させた後に、外障子を閉めることにより、外障子の戸先框に露出した状態で固定されている受具を施錠片と係合させることにより、網戸の自走を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の建具は、網戸に取り付けられる施錠具と、外障子に取り付けられる受具とを有しているので、部材が多く、取り付け工数も多いため費用が嵩みコストが上昇する。また、網戸の縦框に収容され回動されて突出する施錠具の施錠片、及び、外障子の戸先框に露出した状態で固定されている受具は、いずれも、建具の上下方向における所定の位置に配置される小さな部材であり、それらを外障子の移動により係合させるためには、施錠具および受具を精度よく取り付ける必要があり、また、位置調整が必要となる場合があるなど、取り付け作業が繁雑であるという課題があった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造性・施工性に優れコストを抑えつつも自走を防止することが可能な網戸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の網戸は、開口の室外側にてスライド移動可能に設けられる網戸であって、前記網戸が当該開口を覆う状態において、前記開口を形成する枠との召し合わせ部に位置する前記網戸の縦框は、前記召し合わせ部よりも前記開口側に張り出す張出部を有し、前記張出部に設けられ、室内側に突出し、前記枠と係合して前記網戸のスライド移動を規制する規制部材を有することを特徴とする。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造性に優れコストを抑えつつも自走を防止することが可能な網戸を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る網戸が設けられている建具を室内側から見た図である。
【
図2】本実施形態に係る網戸が設けられている建具の縦断面図である。
【
図3】本実施形態に係る網戸が設けられている建具の横断面図である。
【
図4】本実施形態に係る網戸を室内側から見た図である。
【
図5】規制部材の突出部が突出している状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、突出部が突出している状態を示す縦断面図であり、
図7(b)は、揺動部材がベース部材に収容されている状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る網戸について図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態においては、
図1~
図3に示すように、内障子11及び外障子12と、内障子11及び外障子12を左右方向にスライド移動可能に支持する建具枠13と、を有する建具10に設けられている網戸1を例に挙げて説明する。
【0011】
以下の説明においては、建物等に設けられている建具10及び網戸1を室内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。建具10及び網戸1の各部位であっても、また、建具10及び網戸1を構成する各部材については単体の状態であっても、建具10及び網戸1が建物に設けられている状態にて上下方向、左右方向、見込み方向となる方向にて方向を特定して説明する。
【0012】
網戸1は、内障子11の戸先框11aが建具枠13の右側の縦枠13aと係合し、外障子12の戸先框12aが建具枠13の左側の縦枠13bと係合する閉じられた状態から、内障子11を開放したときに建具枠13と外障子12の召し合わせ框12bとにより形成され室内外が連通される開口10a(
図3)を覆うこと、また、外障子12を開放して建具枠13と外障子12の戸先框12aとにより形成され室内外が連通される開口(不図示)を覆うことが可能である。ここで、建具枠12のうちの、右側の縦枠13a及び上下の横枠13cと外障子12の召し合わせ框12bが、開口10aを形成する枠に相当する。
【0013】
網戸1は、内障子11を開放して建具枠13と外障子12の召し合わせ框12bとにより形成される開口10aを覆う状態において、網戸1の左方向へのスライド移動を規制する規制部材2を有している。
【0014】
網戸1は、
図4に示すように、左右の縦框30、31と、左右の縦框30、31の上端及び下端を連結する横框32とが矩形状の枠組みされた框体3、及び、框体3の内側に張設される網材1aを有している。左右の縦框30、31及び横框32はいずれも、
図2、
図3に示すように、長手方向に貫通する中空部30a、31a、32aを有し、押し出し成形された部材である。
【0015】
本実施形態の網戸1は、建具枠13と外障子12の召し合わせ框12bとにより形成される開口10aを覆う状態において、外障子12の召し合わせ框12bと、見込方向に対向する召し合わせ部に位置する左側の縦框(以下、左縦框という)30に、規制部材2が設けられている。左縦框30は、網戸1が開口10aを覆う状態において、外障子12の召し合わせ框12bよりも開口10a側となる右側に張り出す張出部30bを有している。
【0016】
規制部材2は、左縦框30の張出部30bであって、左縦框30の中空部30aを形成している室内側の壁部30cに、左縦框30の中央よりも上側と下側とにそれぞれ設けられている。上下に設けられている2つの規制部材2は、同一の部材であり、規制部材2の上下の向きを互いに反転した状態で各々取り付けられている。以下の説明においては、上側に設けられている規制部材2を例に挙げて説明する。このため、下側の規制部材2については、以下の説明とは上下の方向が相違する。
【0017】
規制部材2は、左縦框30の室内側の壁部30cに設けられた開孔(不図示)に挿入されて壁部30cに係止されて取り付けられるベース部材20と、ベース部材20に揺動可能に支持される揺動部材25と、を有している。
【0018】
ベース部材20は、縦長の長方形の板状をなし壁部30cと対向して配置されるベース板部21と、ベース板部21の中央に設けられた縦長の長方形状をなすベース開孔21aと繋がって揺動部材25の収容部22aを形成する収容ケース部22と、を有している。
【0019】
ベース板部21は、左右方向において、ベース開孔21aが設けられている中央側が、左右の両端部側よりも僅かに室内側に位置するような傾斜、又は、曲面を有している。また、ベース板部21の厚みは、網戸1と外障子12の召し合わせ框12bとの間に設けられるエアタイト材(不図示)の突出量よりも薄く形成されている。
【0020】
収容ケース部22は、ベース開孔21aの縁から室外側に延出されて見込面を形成し上下方向に対向する上下対向壁部22bと、ベース開孔21aの縁から室外側に延出されて見込面を形成し左右方向に対向する左右対向壁部22cと、上下対向壁部22bと左右対向壁部22cの室外側の縁を繋ぐ底部22d、22eと、を有している。ベース部材20には、上下対向壁部22b、左右対向壁部22cおよび底部22d、22eの内側に、後述する突出部25mが突出しない状態で揺動部材25を収容可能な収容部22aが設けられている。
【0021】
収容部22aは、上側部分の方が下側部分よりも見込方向の奥行き(以下、深さという)が大きく(深く)形成されて、上側の底部22dと下側の底部22eとの間に段差が設けられている。
【0022】
下側の底部22eの上端側には、左右方向における中央に底部開孔22fが設けられており、底部開孔22fの下縁から、上方及び室内側に突出させた腕部22gと、腕部22gの先端に設けられ円弧状に形成されて揺動部材25と係合する係合部22hと、が設けられている。係合部22hは、ベース開孔21a側から押圧されると腕部22gの弾性変形により変位可能である。
【0023】
対向する上下対向壁部22bには各々、収容部22aとは反対側に突出し、ベース板部21との間に壁部30cを挟持する壁部挟持部22iが設けられている。対向する左右対向壁部22cには、収容部22aにおいて深さが浅い下側であって、互いに対向する位置に、揺動部材25を揺動可能に支持する支持孔22jが各々設けられている。
【0024】
揺動部材25は、ベース部材20の収容部22aに収容可能な縦長のブロック状の部材であり、左右方向の幅は、ベース部材20の左右対向壁部22cの間隔よりも僅かに狭い幅を有している。揺動部材25の左右の側面25aからは、中央よりも下側に配置され、各々突出させて軸部25bが設けられている。揺動部材25は、軸部25bがベース部材20の支持孔22jに挿入されて揺動自在に支持される。
【0025】
ベース部材20に支持された揺動部材25は、下端側が見込方向において室外側に押し込まれることにより、
図7(a)に示すように、上端側が室内側に突出する突出状態となり、突出した上端側を室外側に押し込むと、
図7(b)に示すように、下端側が室内側に戻り揺動部材25が収容部22aに収容された収容状態となるように揺動する。
【0026】
軸部25bは、揺動部材25をベース開孔21aから挿入しやすいように、室外側の突出量の方が、室内側の突出量よりも小さく形成され、突出した先端の面が傾斜をなしている。
【0027】
揺動部材25は、ベース部材20の収容部22aに収容された収容状態のときに、室内に臨む表面25cがほぼ平坦に形成されており、表面25cの軸部25bよりも下側に位置させて、当該揺動部材25を操作する位置を示す操作凹部25dが設けられている。また、収容状態における揺動部材25の表面25cは、ベース部材20の室内側の縁、より具体的にはベース板部の21の室内側の表面21bよりも室外側に位置している。すなわち、収容状態における揺動部材25の表面25cは、ベース板部の21の室内側の表面21bよりも奥まっている。
【0028】
揺動部材25は、上側に設けられ見込方向の幅が最も広い拡幅部25eと、下側に設けられ見込方向の幅が拡幅部25eより狭い狭幅部25fと、拡幅部25eと狭幅部25fとの間に設けられ見込方向の幅が狭幅部25fより狭い中央部25gと、を有している。すなわち、拡幅部25eと狭幅部25fとの間は、狭幅部25fよりも室内側に窪む中央凹部25hが設けられている。中央凹部25hの下端には、揺動部材25が収容部22aに収容されたときに、ベース部材20に設けられている係合部22hと係合して揺動部材が収容された状態が保持される収容時係合凹部25iが設けられており、収容時係合凹部25iの室外側には、揺動部材25の上端側が突出した状態が保持される突出時係合凹部25jが設けられている。
【0029】
揺動部材25の軸部25bよりも下側の部位は、見込方向の幅が、軸部25b側となる上側よりも下端側の方が狭くなるように、室外側の面25kが傾斜している。このため、揺動部材25が収容部22aに収容されると、揺動部材25の軸部25bよりも下側の部位は、室外側の面25kと下側の底部22eとの間隔が下側ほど広く空いている。
【0030】
揺動部材25の軸部25bよりも下側の部位を見込方向室外側に押し込むと、室外側の面25kが下側の底部22eに当接、または、対向して近接する位置まで軸部25bを中心に揺動し、上端側が室内側に突出する。ここで、見込方向に室外側に押し込まれる軸部25bよりも下側の部位が操作部25lに相当し、ベース部材20より突出する部位が突出部25mに相当する。すなわち突出部25mは、拡幅部25eのうちの突出する部位となる。突出部25mとなる揺動部材25の両側面25aには、左右方向に窪む側面凹部25nが設けられている。ここで、突出部25mの両側面25aが、揺動部材25においてベース部材20が有する見込面と対向する対向部に相当する。
【0031】
この側面凹部25nは、揺動部材25と、ベース部材20の左右対向壁部22cとの間に砂などが進入して揺動部材25が揺動しにくくなることを防止するために設けられている。このため、側面凹部25nの窪み量は、例えば砂粒の大きさよりも十分に大きい程度で構わない。
【0032】
揺動部材25の拡幅部25eは、揺動部材25の縦方向における全長の約半分をなし、軸部25bは、揺動部材25の拡幅部25eを除く下側部分における上下方向のほぼ中央に位置している。すなわち、揺動部材25は、軸部25bより下側の部位よりも軸部25bより上側の部位の方が長く形成されている。このため、揺動部材25は操作部25lの押し込み量よりも、突出部25mの突出量の方が大きい。
【0033】
本実施形態の網戸1は、網戸1の右側の縦框31が右側の縦枠13aと係合して、建具枠13と外障子12の召し合わせ框12bとにより形成される開口10aを覆う状態で、規制部材2により左右方向のスライド移動を規制することが可能である。
【0034】
網戸1を規制する場合には、外障子12の室外側にスライド移動可能に設けられ、外障子12の戸先框12aが左側の縦枠13bと係合し、内障子11が開かれた状態で、まず網戸1を覆う状態の位置に移動する。このとき、網戸1の左側の縦框30は、外障子12の召し合わせ框12bより右側、すなわち開口10a側に張り出している。
【0035】
次に、網戸1の張出部30bに設けられている規制部材2が有する揺動部材25の、軸部25bより下側の部位でなる操作部25lを見込方向における室外側に押し込む。このとき、揺動部材25は軸部25bを中心に、操作部25lの室外側の面25kが下側の底部22eに当接又は近接するまで揺動し、突出部25mがベース板部21よりも室内側に突出する。すなわち、
図7(b)に示す、収容状態から
図7(a)に示す突出状態となる。また、このとき、収容時係合凹部25iに係合していたベース部材20の係合部22hは、腕部22gが弾性変形し収容時係合凹部25iとの係合が外れ突出時係合凹部25jと係合して、突出部25mが突出した状態で揺動部材25が保持される。ここで、下側の底部22eが、揺動部材の揺動を規制する揺動規制部に相当する。
【0036】
突出した突出部25mは、外障子12の召し合わせ框12bの室外に臨む面よりも室内側に至るように突出しているので、網戸1が、左方向にスライド移動すると突出部25mが外障子12の召し合わせ框12bと接触して、網戸1の左方向のスライド移動が規制される。
【0037】
網戸1の規制を解除する場合には、突出している突出部25mを見込方向のおける室外側に押し込む。このとき、揺動部材25は軸部25bを中心に揺動し、拡幅部25eがベース部材20の上側の底部22dに当接又は近接するまで揺動し、操作部25lの下端が室内側に移動して揺動部材25が収容部22aに収容される。すなわち、
図7(a)に示す突出状態から
図7(b)に示す収容状態となる。また、このとき、突出時係合凹部25jに係合していたベース部材20の係合部22hは、腕部22gが弾性変形し突出時係合凹部25jとの係合が外れ収容時係合凹部25iと係合して、揺動部材25が収容部22aに収容された状態で保持される。ここで、係合部22hが、揺動部材25と係合して、当該揺動部材25を、収容部22aに収容された状態、及び、突出部25mが突出する状態に保持する保持部に相当する。
【0038】
本実施形態の網戸1によれば、規制部材2は、網戸1の左側の縦框30において外障子12の召し合わせ框12bよりも開口10a側に張り出す張出部30bに設けられて、見込方向に突出した突出部25mが外障子12の召し合わせ框12bと係合して網戸1のスライド移動を規制するので、網戸1のスライド移動を規制するために、網戸1の規制部材2と係合する部材を別途も受ける必要がない。このため、構成する部材の数が少ないので、製造コスト、及び、施工コストを低減することが可能である。
【0039】
また、突出する突出部25mは、縦方向におけるほぼ全長に亘って設けられている外障子12の召し合わせ框12bに係合するので、規制部材2の上下方向の配置は精度が要求されない。このため、取り付けが容易であり、調整も必要ないので、製造性及び施工性に優れている。このように、製造性、施工性に優れコストを抑えつつも自走を防止することが可能な網戸1を提供することが可能である。
【0040】
また、規制部材2は、縦框30に設けるので、上下方向の位置を任意に設定可能である。このため、上下の横框32に設ける場合よりも、操作しやすい位置に配置できるので操作性に優れている。
【0041】
また、操作部25lと突出部25mとが上下に配置されているので、操作部25lと突出部25mとが水平方向に配置されている場合よりも、規制部材2の左右方向の幅を狭くすることができる。このため、規制部材2が設けられる張出部30bの幅も狭くすることができるので、張出部30bにより遮られる視界が小さく、意匠性に優れた網戸1を提供することが可能である。
【0042】
また、外障子12の室内側に設けられている内障子11を開いたときに、内障子11の戸先框が外障子12の召し合わせ框12bよりも開口10a側に位置するような建具の場合には、例え網戸1の左側の縦框30が開口10a側に張り出していても、張出部30bは内障子11の戸先框により隠されて視認されないので、より意匠性が損なわれることはない。
【0043】
また、ベース部材20が下側の底部22eを備えているので、操作部25lを押し込む量が明確であり、確実に突出部25mを適切に突出させることが可能である。
【0044】
また、ベース部材20には、揺動部材25と係合して、揺動部材25を、収容部22aに収容された状態、及び、突出部25mが突出する状態に保持する22hを有しているので、収容された揺動部材25が不意に突出して網戸1のスライド移動が妨げられてしまうこと、及び、突出している突出部25mが不意に収容されて網戸1がスライド移動してしまうことを防止することが可能である。
【0045】
また、ベース部材20に収容された揺動部材25において、ベース部材20の見込面をなす左右対向壁部22cと対向する揺動部材25の側面25aは、左右対向壁部22cとは反対側に窪む側面凹部25nを有しているので、たとえ、揺動部材25と左右対向壁部22cとの間に砂などが進入したとしても側面凹部25nに入り込むので、揺動部材25と左右対向壁部22cとの間に砂などが挟持されて揺動部材25が揺動しにくくなることを防止することが可能である。
【0046】
また、ベース部材20に収容された揺動部材25は、室内に臨む表面25cが、ベース部材20の室内側の縁となるベース板部21の表面21bよりも室外側に位置している。すなわち、ベース部材20に収容された揺動部材25はベース板部21の表面21bより奥まっているので、揺動部材25がベース部材20に収容された状態で、網戸1の移動が妨げられることをより確実に防止することが可能である。
【0047】
上記実施形態においては、網戸1が覆う開口10aが、建具枠13と外障子12の召し合わせ框12bとにより形成されている例について説明したが、これに限るものではない。例えば、片引き障子を備える建具の建具枠を構成する上枠及と下枠とを上下に繋ぐ方立などの縦骨と、上枠、下枠、及び、縦骨と左右方向に間隔を隔てて設けられている縦枠とにより形成される開口であっても構わない。
【0048】
このため、上記実施形態においては、建具枠12のうちの、右側の縦枠13a及び上下の横枠13cと外障子12の召し合わせ框12bが、開口10aを形成する枠とした例について説明したが、これに限るものではない。たええば、開口を形成する枠は、建具枠のうちの、一方の縦枠及び上下の横枠と縦骨であっても構わない。また、スライド移動可能な外障子と、障子が移動不能に設けられたFIX障子とが左右方向に並べて設けられており、外障子がFIX障子の室外側に重なる位置までスライド移動可能に設けられている建具の場合には、建具枠のうちの、一方の縦枠及び上下の横枠とFIX障子の召し合わせ框が、開口10aを形成する枠に相当する。
【0049】
また、上記実施形態においては、網戸1に2つの規制部材2が設けられている例について説明したが、これに限らず、網戸1に設ける規制部材1の数は、1つであっても、また、3つ以上であっても構わない。
【0050】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
【0051】
開口の室外側にてスライド移動可能に設けられる網戸であって、前記網戸が当該開口を覆う状態において、前記開口を形成する枠との召し合わせ部に位置する前記網戸の縦框は、前記召し合わせ部よりも前記開口側に張り出す張出部を有し、前記張出部に設けられ、室内側に突出し、前記枠と係合して前記網戸のスライド移動を規制する規制部材を有することを特徴とする網戸である。
【0052】
このような網戸によれば、規制部材は、網戸の縦框において枠との召し合わせ部よりも開口側に張り出す張出部に設けられて、見込方向に突出した突出部が枠と係合して網戸のスライド移動を規制するので、網戸のスライド移動を規制するために、網戸の規制部材と係合する部材を別途設ける必要がない。このため、構成する部材の数が少ないので、製造コスト、及び、施工コストを低減することが可能である。
【0053】
また、突出する突出部は、縦方向におけるほぼ全長に亘って設けられている枠と係合するので、規制部材の上下方向の配置は精度が要求されない。このため、取り付けが容易であり、調整も必要ないので、製造性及び施工性に優れている。このように、製造性、施工性に優れコストを抑えつつも自走を防止することが可能な網戸を提供することが可能である。
【0054】
かかる網戸であって、前記規制部材は、前記張出部に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材に揺動自在に支持される揺動部材と、を有し、前記揺動部材は、見込方向に押し込み可能な操作部と、前記操作部が押し込まれて揺動することにより見込み方向に突出する突出部と、を有し、前記突出部は前記操作部の上または下に位置していることを特徴とする。
【0055】
このような網戸によれば、操作部と突出部とが上下に配置されているので、操作部と突出部とが水平方向に配置されている場合よりも、規制部材の左右方向の幅を狭くすることができる。このため、規制部材が設けられる張出部の幅も狭くすることができるので、張出部により遮られる視界が小さく、意匠性に優れた網戸を提供することが可能である。
【0056】
かかる網戸であって、前記ベース部材は、前記突出部が突出しない状態で前記揺動部材を収容する収容部と、押し込まれた前記操作部が当接して前記揺動部材の揺動を規制する揺動規制部と、前記揺動部材と係合して、当該揺動部材を、前記収容部に収容された状態、及び、前記突出部が突出する状態に保持する保持部と、を有していることを特徴とする。
このような網戸によれば、ベース部材が揺動規制部を備えているので、操作部を押し込む量が明確であり、確実に突出部を適切に突出させることが可能である。
【0057】
また、ベース部材には、揺動部材と係合して、揺動部材を収容部に収容された状態、及び、突出部が突出する状態に保持する保持部を有しているので、収容された揺動部材が不意に突出して網戸のスライド移動が妨げられてしまうこと、及び、突出している突出部が不意に収容されて網戸がスライド移動してしまうことを防止することが可能である。
【0058】
かかる網戸であって、前記収容部は、水平方向に間隔を空けて対向する見込面を有し、前記揺動部材は、前記対向する見込面の間に配置され、当該揺動部材において前記見込面と対向する対向部は、前記見込面とは反対側に窪む凹部を有していることを特徴とする。
【0059】
このような網戸によれば、ベース部材に収容された揺動部材において、ベース部の見込面と対向する対向部は、見込面とは反対側に窪む凹部を有しているので、たとえ、揺動部材と見込面との間に砂などが進入したとしても、進入した砂などは凹部に入り込むので、対向部と見込面との間に砂などが挟持されて揺動部材が揺動しにくくなることを防止することが可能である。
【0060】
かかる網戸であって、前記揺動部材は、前記ベース部材に収容された状態で室内に臨む面が、前記ベース部材の室内側の縁よりも室外側に位置していることを特徴とする。
【0061】
このような網戸によれば、ベース部材に収容された揺動部材は、室内に臨む面が、ベース部材の室内側の縁よりも室外側に位置している。すなわち、ベース部材に収容された揺動部材はベース部材の室内側の縁より奥まっているので、網戸の移動が妨げられることをより確実に防止することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 網戸
2 規制部材
12b 召し合わせ框
20 ベース部材
21b ベース板部の表面
22a 収容部
22c 左右対向壁部
22e 下側の底部
22h 係合部
25 揺動部材
25a 側面
25c 揺動部材の表面
25l 操作部
25m 突出部
25n 側面凹部
30 左縦框
30b 張出部