IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特開-農作業機 図1
  • 特開-農作業機 図2
  • 特開-農作業機 図3
  • 特開-農作業機 図4
  • 特開-農作業機 図5
  • 特開-農作業機 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158131
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
A01C11/02 311V
A01C11/02 313Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062829
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮西 吉秀
(72)【発明者】
【氏名】山内 一喜
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】原野 朱莉
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 喬士
【テーマコード(参考)】
2B062
【Fターム(参考)】
2B062AA20
2B062AB01
2B062AB07
2B062BA07
2B062BA80
(57)【要約】
【課題】より簡単、かつ、効率的な構成で洗浄作業を行うことを目的とする。
【解決手段】駆動源2に駆動される走行装置と、駆動源2から走行装置に動力を伝達する走行用伝達機構と、機体を洗浄する洗浄装置と、洗浄装置に供給する洗浄物を貯留するタンクと、タンクに貯留された洗浄物を洗浄装置に供給する洗車ポンプ32と、駆動源2から洗車ポンプ32に動力を伝達するベルト式のポンプ用伝達機構37とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源に駆動される走行装置と、
前記駆動源から前記走行装置に動力を伝達する走行用伝達機構と、
機体を洗浄する洗浄装置と、
前記洗浄装置に供給する洗浄物を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された前記洗浄物を前記洗浄装置に供給する洗車ポンプと、
前記駆動源から前記洗車ポンプに動力を伝達するベルト式のポンプ用伝達機構とを備える農作業機。
【請求項2】
前記駆動源の動力を変速して前記走行装置に伝達する静油圧式無段変速装置を備え、
前記ポンプ用伝達機構は、前記駆動源から前記走行装置に動力を伝達する経路における前記静油圧式無段変速装置よりも上流に設けられる請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
前記ポンプ用伝達機構は、前記走行用伝達機構とは独立して構成される請求項1に記載の農作業機。
【請求項4】
前記ポンプ用伝達機構と前記走行用伝達機構とは、前記駆動源の駆動軸の、互いに逆側の位置で前記駆動軸と接続される請求項3に記載の農作業機。
【請求項5】
前記タンクと前記洗車ポンプとは、前記機体の進行方向に向かって前記機体の左右に振り分けて配置される請求項1から4のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項6】
前記機体を操縦する運転者が搭乗する運転座席を備え、
前記運転座席がタンク状に形成され、前記タンクは前記運転座席である請求項1から4のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項7】
前記洗車ポンプが水源の取水部から取水可能な構成であり、
前記洗車ポンプは、前記取水部から水を前記洗浄装置に供給することができる請求項1から6のいずれか一項に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を作業走行する農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
農作業機は、車輪を備え、圃場内を作業走行する。圃場は、水を含んだ泥からなるものが多く、農作業機は圃場を作業走行するのに伴い、車輪に泥が付着する。車輪に泥が付着した状態で農作業機が圃場間等を移動すると道路に泥が落下する。そのため、農作業機は、作業走行後に車輪等の洗浄が行われる。
【0003】
例えば、1つの圃場を作業走行した後に別の圃場を作業する際に、圃場間の移動の前に農作業機を洗浄する必要がある。また、このような作業走行後の洗浄作業は工数がかかるため、圃場間を移動するのに時間を要し、複数の圃場を作業する際の作業効率が悪くなる。
【0004】
作業走行後の洗浄作業を削減するために、特許文献1に示す田植機では、泥の付着しやすい苗支持部材の近傍にシャワーノズルを設け、シャワーノズルから水を噴出して、洗浄作業の効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-112878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、より簡単、かつ、効率的な構成で洗浄作業を行うことが要望されている。
【0007】
本発明は、より簡単、かつ、効率的な構成で洗浄作業を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る農作業機は、駆動源に駆動される走行装置と、前記駆動源から前記走行装置に動力を伝達する走行用伝達機構と、機体を洗浄する洗浄装置と、前記洗浄装置に供給する洗浄物を貯留するタンクと、前記タンクに貯留された前記洗浄物を前記洗浄装置に供給する洗車ポンプと、前記駆動源から前記洗車ポンプに動力を伝達するベルト式のポンプ用伝達機構とを備える。
【0009】
このような構成により、タンクに貯留される洗浄液等の洗浄物を洗車ポンプにより洗浄装置に供給し、洗浄装置から洗浄物を噴射して機体の洗浄を行うことができるため、簡単、かつ、効率的に洗浄作業を行うことができる。
【0010】
また、ベルトを用いて駆動源から洗車ポンプに動力を伝達するため、簡単な構成で洗車ポンプに動力を伝達することができる。
【0011】
また、前記駆動源の動力を変速して前記走行装置に伝達する静油圧式無段変速装置を備え、前記ポンプ用伝達機構は、前記駆動源から前記走行装置に動力を伝達する経路における前記静油圧式無段変速装置よりも上流に設けられても良い。
【0012】
このような構成により、走行装置に対する変速機構に影響を与えることなく、洗車ポンプに動力を伝達することができ、効率的に洗車ポンプに動力を伝達することができる。
【0013】
また、前記ポンプ用伝達機構は、前記走行用伝達機構とは独立して構成されても良い。
【0014】
このような構成により、走行装置に対する動力の駆動に影響を与えることなく、洗車ポンプに動力を伝達することができ、効率的に洗車ポンプに動力を伝達することができる。
【0015】
また、前記ポンプ用伝達機構と前記走行用伝達機構とは、前記駆動源の駆動軸の、互いに逆側の位置で前記駆動軸と接続されても良い。
【0016】
このような構成により、ポンプ用伝達機構を走行用伝達機構の配置構成に制限されずに配置することができ、簡単な構成で洗浄機構を設けることができる。
【0017】
また、前記タンクと前記洗車ポンプとは、前記機体の進行方向に向かって前記機体の左右に振り分けて配置されても良い。
【0018】
このような構成により、タンクと洗車ポンプとを効率的に配置できると共に、機体の重量バランスを良好な状態に保つことが容易となる。
【0019】
また、前記機体を操縦する運転者が搭乗する運転座席を備え、前記運転座席がタンク状に形成され、前記タンクは前記運転座席であっても良い。
【0020】
このような構成により、別途タンクを設けることを要さず、効率的に洗浄機構を設けることができる。
【0021】
また、前記洗車ポンプが水源の取水部から取水可能な構成であり、前記洗車ポンプは、前記取水部から水を前記洗浄装置に供給しても良い。
【0022】
このような構成により、タンクの容量を気にすることなく、十分な洗浄を行うことが容易となる。また、タンクを設けない構成とすることもでき、効率的に洗浄機構を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】自動走行可能な田植機の左側面図である。
図2】自動走行可能な田植機の平面図である。
図3】自動走行可能な田植機の概略右側面図である。
図4】ポンプ用伝達機構の構成例を説明する概略図である。
図5】前輪用ノズルの配置例を示す概略背面図である。
図6】後輪用ノズルの配置例を示す概略背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の農作業機として、圃場を作業走行する田植機を例に説明する。
【0025】
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、「前」(図1に示す矢印Fの方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(図1に示す矢印Bの方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味するものとする。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)、すなわち、「左」(図2に示す矢印Lの方向)および「右」(図2に示す矢印Rの方向)は、それぞれ、機体の左方向および右方向を意味するものとする。
【0026】
〔全体構造〕
図1図3に示すように、田植機は、乗用型で四輪駆動形式の機体1を備える。機体1は、機体1の後部に昇降揺動可能に連結された平行四連リンク形式のリンク機構13、リンク機構13を揺動駆動する油圧式の昇降リンク13a、リンク機構13の後端部領域にローリング可能に連結される苗植付装置3、および、機体1の後端部領域から苗植付装置3にわたって架設されている施肥装置4等を備える。
【0027】
機体1は、走行のための機構として車輪12(「走行装置」に相当)、エンジン2(「駆動源」に相当)、および主変速装置である油圧式の無段変速装置9を備える。無段変速装置9は、例えばHST(Hydro-Static Transmission:静油圧式無段変速装置)であり、モータ斜板およびポンプ斜板の角度を調節することにより、エンジン2から出力される動力(回転数)を変速する。車輪12は、操舵可能な左右の前輪12Aと、操舵不能な左右の後輪12Bとを有する。エンジン2および無段変速装置9は、機体1の前部に搭載される。
【0028】
エンジン2から出力される動力は、走行用伝達機構を介して無段変速装置9に伝えられ、無段変速装置9から前輪12A、後輪12B、作業装置等にも伝達される。走行用伝達機構は、プーリ2A、プーリ9A、およびベルト2Bを備える。プーリ2Aはエンジン2の駆動軸である出力軸2D(図4参照)に設けられ、プーリ9Aは無段変速装置9の入力軸9B(図4参照)に設けられる。ベルト2Bは、プーリ2Aおよびプーリ9Aに巻回され、ベルト2Bによりエンジン2から出力された動力が無段変速装置9に伝達される。
【0029】
田植機は、泥状の圃場を作業走行するため、前輪12Aおよび後輪12Bの接地面であるトレッド面12Cには深い溝が設けられる。また、少なくとも後輪12Bはラグ12Dを備える。ラグ12Dは、後輪12Bの左右横外側に突出する態様で設けられ、ラグ12Dが圃場の表層部分をかいで推進力を向上させることができる。なお、ラグ12Dは、車輪12(後輪12B)の中心から半径方向に向かう仮想線に対して、側面視で傾斜する。例えば、ラグ12Dは、機体1の後方に向かって傾斜する。また、前輪12Aおよび後輪12Bの両方にラグ12Dが設けられる場合、後輪12Bに設けられるラグ12Dは、前輪12Aに設けられるラグ12Dより大きい。
【0030】
苗植付装置3は、一例として8条植え形式に構成される。苗植付装置3は、苗載せ台21、8条分の植付機構22等を備える。なお、この苗植付装置3は、図示されていない各条クラッチの制御により、2条植え、4条植え、6条植え等の形式に変更可能である。
【0031】
苗載せ台21は、8条分のマット状苗を載置する台座である。苗載せ台21は、マット状苗の左右幅に対応する一定ストロークで左右方向に往復移動し、苗載せ台21が左右のストローク端に達するごとに、苗載せ台21上の各マット状苗を苗載せ台21の下端に向けて所定ピッチで縦送りする。8個の植付機構22は、ロータリ式で、植え付け条間に対応する一定間隔で左右方向に配置される。そして、各植付機構22は、植付クラッチ(図示せず)が伝動状態に移行されることによりエンジン2から動力が伝達され、苗載せ台21に載置された各マット状苗の下端から一株分の苗(植付苗とも称す)を切り取って、整地後の泥土部に植え付ける。これにより、苗植付装置3の作動状態では、苗載せ台21に載置されたマット状苗から苗を取り出して水田の泥土部に植え付けることができる。
【0032】
図1図3に示すように、施肥装置4(供給装置)は、粒状または粉状の肥料(薬剤やその他の農用資材)を貯留するホッパ25(貯留部)と、ホッパ25から肥料を繰り出す繰出機構26と、繰出機構26によって繰出された肥料を搬送すると共に肥料を圃場に排出する施肥ホース28(ホース)とを有する。ホッパ25に貯留された肥料が、繰出機構26によって所定量ずつ繰り出されて施肥ホース28へ送られて、ブロワ27の搬送風によって施肥ホース28内を搬送され、作溝器29から圃場へ排出される。このように、施肥装置4は圃場に肥料を供給する。
【0033】
作溝器29は、整地フロート15に配備される。そして、各作溝器29は、各整地フロート15と共に昇降し、各整地フロート15が接地する作業走行時に、水田の泥土部に施肥溝を形成して肥料を施肥溝内に案内する。
【0034】
図1図3に示すように、機体1は、その後部側領域に運転部14を備える。運転部14は、前輪操舵用のステアリングホイール10、無段変速装置9の変速操作を行うことで車速を調節する主変速レバー7A、副変速装置の変速操作を可能にする副変速レバー7B、苗植付装置3の昇降操作と作動状態の切り換え等を可能にする作業操作レバー11、各種の情報を表示(報知)してオペレータに報知(出力)すると共に、各種の情報の入力を受け付けるタッチパネルを有する情報端末5、および、オペレータ(運転者・作業者)用の運転座席16等を備える。副変速レバー7Bは、走行車速を、作業中の作業速と移動中の移動速とに切り替える操作に用いられる。例えば、圃場間の移動は移動速で行われ、植付作業等は作業速で行われる。さらに、運転部14の前方に、予備苗を収容する予備苗収納装置17Aが予備苗支持フレーム17に支持される。なお、図3においては、予備苗収納装置17Aと予備苗支持フレーム17の一部とが省略されている。
【0035】
ステアリングホイール10は、非図示の操舵機構を介して前輪12Aと連結され、ステアリングホイール10の回転操作を通じて、前輪12Aの操舵角が調節される。運転部14において、エンジン2を覆うボンネット6の後方箇所に、施肥装置4よりも左右幅の狭い搭乗ステップ14Aが設けられる。また、ボンネット6の左右の横外側には、機体1の前端部からの乗降を可能にする乗降ステップ14Bが、搭乗ステップ14Aと同じ高さで搭乗ステップ14Aに連なる状態で設けられる。
【0036】
〔洗浄機構〕
田植機は、圃場中の泥の中を作業走行するため、車輪12や植付機構22、機体1の下部に泥が付着する。そのため、田植機は、機体1の所定の箇所を洗浄する洗浄機構を備える。以下、図1図4を用いて、洗浄機構について説明する。
【0037】
洗浄機構は、洗浄装置30と、タンク31と、洗車ポンプ32とを備える。洗浄装置30は、機体1の任意の位置に設けられ、洗浄対象箇所に水等の洗浄液を噴射して洗浄する。洗浄装置30と洗車ポンプ32とはホース33で接続され、洗車ポンプ32とタンク31とはホース34で接続される。タンク31は、洗浄装置30から噴射される洗浄液を貯留する。洗車ポンプ32は、ホース34を介してタンク31に貯留された洗浄液を吸引し、ホース33を介して洗浄装置30に供給する。
【0038】
田植機は、泥が付着しやすい洗浄対象箇所に洗浄液を噴射する洗浄装置30が配置された洗浄機構を備えることにより、効率的に機体1の洗浄を行うことができる。また、タンク31に貯留された洗浄液を洗車ポンプ32で吸引して使用するため、水道等の施設がない場所でも、手軽に機体1の洗浄を行うことができる。また、洗車ポンプ32から洗浄装置30に高圧の洗浄液を供給することができるため、効率的に機体1の洗浄を行うことができる。
【0039】
〔タンクおよび洗車ポンプ〕
タンク31は、ボンネット6の左側の乗降ステップ14B上に設置される。洗車ポンプ32は、ボンネット6の右側の乗降ステップ14B上に設置される。ホース34は、ボンネット6の前方を迂回してタンク31と洗車ポンプ32とを接続するように配置される。
【0040】
タンク31は、上部に開閉式の蓋31aを備え、蓋31aを開いた状態で、タンク31に水等の洗浄液が供給される。ホース34はタンク31の底部に接続され、洗車ポンプ32が駆動されることにより、タンク31内の洗浄液が洗車ポンプ32に吸引される。
【0041】
図4に示すように、洗車ポンプ32は、エンジン2の動力により駆動される。エンジン2から洗車ポンプ32への動力の伝達はポンプ用伝達機構37によって行われる。ポンプ用伝達機構37は、プーリ2C、プーリ32A、およびゴムベルト32Bを備える。プーリ2Cはエンジン2の出力軸2Dに設けられ、プーリ32Aは洗車ポンプ32の入力軸32Dに設けられる。エンジン2の出力軸2Dは、機体1の左右方向に設けられ、左側の端部に走行用伝達機構のプーリ2Aが接続され、右側の端部にプーリ2Cが接続される。つまり、走行用伝達機構とポンプ用伝達機構37は、エンジン2を挟んで左右に振り分けて設けられる。ゴムベルト32Bは、プーリ2Cおよびプーリ32Aに巻回され、ゴムベルト32Bによりエンジン2から出力された動力が洗車ポンプ32に伝達される。
【0042】
さらに、図2に示すように、ゴムベルト32Bのテンションを切り替えるレバー32Cが設けられる。レバー32Cは、一端が機体フレーム1Eに支持され、支持部を軸芯として他端が揺動する。レバー32Cが揺動してゴムベルト32Bを押圧すると、ゴムベルト32Bのテンションが高まり、プーリ2Cからプーリ32Aに動力が伝達され、洗車ポンプ32が駆動される。レバー32Cが揺動してゴムベルト32Bから離間すると、ゴムベルト32Bのテンションが低下し、プーリ2Cからプーリ32Aに動力が伝達されず、洗車ポンプ32の動作が停止される。
【0043】
レバー32Cの揺動を操作する操作具(図示せず)は、運転部14や洗車ポンプ32の近傍等の任意の位置に配置される。洗浄作業を行わない際には、レバー32Cが操作されて、ゴムベルト32Bのテンションが低下され、洗車ポンプ32の動作が停止される。洗浄作業を行う際には、レバー32Cが操作されて、ゴムベルト32Bのテンションが高められる。その結果、エンジン2から出力される動力がプーリ2Cからプーリ32Aに伝達され、洗車ポンプ32が駆動されて、洗浄装置30から洗浄液が噴射される。洗浄装置30から洗浄液が噴射されることにより、機体1の洗浄対象箇所が洗浄される。
【0044】
このように、タンク31と洗車ポンプ32とを、乗降ステップ14B上のボンネット6を挟んで左右両側に振り分けて配置することにより、タンク31と洗車ポンプ32との配置箇所を新たに設けることなく、また、配置効率良く、タンク31と洗車ポンプ32とを配置することができる。
【0045】
また、ポンプ用伝達機構37を走行用伝達機構から独立して設けることにより、機体1が停車している状態でも容易に機体1の洗浄を行うことができる。また、エンジン2の出力軸2Dの走行用伝達機構が配置された側と逆側にポンプ用伝達機構37を設けることにより、走行用伝達機構の配置効率を阻害せずに、ポンプ用伝達機構37を配置し、エンジン2から出力される動力を洗車ポンプ32に伝達することができる。
【0046】
〔洗浄装置〕
次に、図1図3を参上しながら、図5図6を用いて、洗浄装置30について説明する。
【0047】
図5に示すように、前輪12Aを洗浄するために、洗浄装置30として3つの噴射ノズルが設けられる。噴射ノズルである前輪用ノズル39a,39b,39cは、洗車ポンプ32が駆動されることにより、タンク31に貯留された洗浄水を噴射する。
【0048】
前輪用ノズル39a,39b,39cは、機体フレーム1Eに支持されるブラケット41に支持される。ブラケット41は、機体1の左右方向に設けられ、前輪12Aの上方に設けられる。前輪用ノズル39aは、平面視でブラケット41の前輪12Aより外側に配置され、前輪12Aの横外方かつ上方から、斜めに、前輪12Aのトレッド面12Cまたは前輪12Aの横外側の側面に洗浄液を噴射する。つまり、前輪用ノズル39a,39b,39cは、前輪12Aに対して3方向に設けられる。
【0049】
前輪用ノズル39bは、平面視でブラケット41の前輪12Aと重なる位置、つまり、前輪12Aの直上に配置され、前輪12Aの上方から、前輪12Aのトレッド面12Cに洗浄液を噴射する。
【0050】
前輪用ノズル39cは、平面視でブラケット41の前輪12Aより内側に配置され、前輪12Aの横内方かつ上方から、斜めに、前輪12Aのトレッド面12Cまたは前輪12Aの横内側の側面に洗浄液を噴射する。
【0051】
このように、前輪12Aに対して、三方から洗浄液を噴射することにより、前輪12Aに付着した泥が除去されやすくなる。また、前輪12Aのトレッド面12Cに設けられた深い溝に入り込んだ泥が除去されやすくなる。また、前輪12Aの左右方向の3か所に洗浄液が噴射されるため、前輪12Aの全体にまんべんなく洗浄液を噴射することができ、より効率的に前輪12Aの洗浄を行うことができる。
【0052】
ここで、前輪用ノズル39bは放射状に洗浄液を噴射し、前輪用ノズル39a,39cより、広範囲に洗浄液を噴射する。また、前輪用ノズル39a,39cは、前輪用ノズル39bより高圧で洗浄液を噴射する。このような構成により、前輪用ノズル39bから噴射される洗浄液により、前輪12Aのトレッド面12Cを広範囲に洗浄しながら、前輪用ノズル39a,39cから噴射される洗浄液により、溝や前輪12Aの側面に強固に付着した泥を除去しやすくなり、より効率的に前輪12Aの洗浄を行うことができる。
【0053】
図6に示すように、後輪12Bを洗浄するために、洗浄装置30として5つの噴射ノズルが設けられる。噴射ノズルである後輪用ノズル43a,43b,43c,43d,43eは、洗車ポンプ32が駆動されることにより、タンク31に貯留された洗浄水を噴射する。
【0054】
後輪用ノズル43a,43b,43c,43d,43eは、機体フレーム1Eに支持されるブラケット44に支持される。ブラケット44は、機体1の左右方向に設けられ、後輪12Bの上方に設けられる。
【0055】
後輪用ノズル43a,43bは、平面視でブラケット41の後輪12Bより外側に配置され、後輪12Bの横外方かつ上方から、斜めに、後輪12Bのラグ12Dに洗浄液を噴射する。後輪用ノズル43aは後輪用ノズル43bより外側に支持され、ラグ12Dの外側よりの部分に洗浄液を噴射する。
【0056】
後輪用ノズル43cは、平面視でブラケット44の後輪12Bと重なる位置、つまり、後輪12Bの直上に配置され、後輪12Bの上方から、後輪12Bのトレッド面12Cに洗浄液を噴射する。
【0057】
後輪用ノズル43d,43eは、平面視でブラケット44の後輪12Bより内側に配置され、後輪12Bの横内方かつ上方から、斜めに、後輪12Bのラグ12Dに洗浄液を噴射する。後輪用ノズル43eは後輪用ノズル43dより内側に支持され、ラグ12Dの内側よりの部分に洗浄液を噴射する。
【0058】
後輪12Bはラグ12Dを備える。また、ラグ12Dは、後輪12Bのトレッド面12Cから機体1の左右方向に大きくはみ出して形成される。そのため、前輪12Aより多くの噴射ノズルを用いて洗浄が行われる。つまり、後輪用ノズル43a,43b,43c,43d,43eは、後輪12Bに対して5方向に設けられる。
【0059】
上述のように、後輪12Bの上方および、外側の2方向、内側の2方向から洗浄液を噴射することにより、後輪12Bに付着した泥を効率的に除去することができる。また、大きく張り出したラグ12Dに対して、左右の4方向から洗浄液を噴射することにより、ラグ12Dの表面に付着した泥を精度良く除去することができる。その結果、効率的に後輪12Bの洗浄を行うことができる。
【0060】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、エンジン2の動力を洗車ポンプ32に伝達するポンプ用伝達機構37は任意の構成とすることができる。例えば、エンジン2の出力軸2Dにおける走行用伝達機構が配置される位置とは逆側の位置にポンプ用伝達機構37を配置する構成に限らず、出力軸2Dの同じ側にポンプ用伝達機構37を配置しても良い。この際、ポンプ用伝達機構37を走行用伝達機構よりも機体1の横外側に配置すると、洗車ポンプ32の配置の自由度が高まり、好ましい。
【0061】
また、ポンプ用伝達機構37は、走行用伝達機構から独立して構成されても良いが、走行用伝達機構から分岐される構成であっても良い。このような構成とすることにより、ポンプ用伝達機構37の構成を簡略化することができ、ポンプ用伝達機構37と走行用伝達機構とを合わせた構成を効率的に構築することができる。
【0062】
ポンプ用伝達機構37を走行用伝達機構から分岐して構成する場合、ポンプ用伝達機構37は、無段変速装置9より上流に設けられることが好ましい。これにより、ポンプ用伝達機構37を走行用伝達機構から独立して構成することなく、機体1の走行や作業から独立して洗車ポンプ32の駆動を制御でき、効率的に機体1を洗浄することができる。
【0063】
また、ポンプ用伝達機構37は、プーリ2C、プーリ32A、ゴムベルト32Bからなる構成に限らず、任意の構成でエンジン2から出力される動力を洗車ポンプ32に伝達する構成としても良い。これにより、洗浄機構の構成や、エンジン2の配置構成等に左右されず、最適な構成でポンプ用伝達機構37を構成することができる。
【0064】
また、洗車ポンプ32は、エンジン2から出力される動力が伝達されることにより駆動される構成とし、レバー32Cでゴムベルト32Bのテンションを調整することにより、エンジン2から出力される動力の伝達を制御して洗車ポンプ32の駆動を制御しても良いが、レバー32Cを用いず、任意の構成でエンジン2から出力される動力の伝達を制御しても良い。また、洗車ポンプ32に起動スイッチ等を設け、エンジン2から出力される動力が常に伝達される構成とし、起動スイッチにより、洗車ポンプ32の駆動を制御しても良い。これにより、洗車ポンプ32の構成の自由度が高まる。
【0065】
(2)上記各実施形態において、洗車ポンプ32とタンク31とを、乗降ステップ14B上で、ボンネット6に対して左右に振り分けて配置する構成に限らず、洗車ポンプ32は、機体1の前方の領域または機体1の後方の領域等、任意の位置に配置することができる。また、洗車ポンプ32とタンク31は前後の機体バランスを考慮して、前後方向に振り分けて配置されても良い。また、洗車ポンプ32とタンク31は上下方向に重ねて配置されても良く、この場合、平面視で少なくとも一部が重複するように配置される。
【0066】
この際、洗車ポンプ32は、動力の伝達が容易となるように、エンジン2の近傍に配置されるのが好ましい。また、洗車ポンプ32は、平面視で乗降ステップ14Bの外側端部より内側で、かつ、ポンプ用伝達機構37よりも外側に配置されるのが好ましい。また、洗車ポンプ32は、側面視でエンジン2と少なくとも一部が重複する位置に配置されるのが好ましい。
【0067】
さらに、洗車ポンプ32の配置位置は、洗浄装置30(噴射ノズル)への洗浄液の供給効率を向上させるために、洗浄装置30との位置関係を考慮して決めても良い。例えば、洗車ポンプ32は、前輪用ノズル39a,39b,39cおよび後輪用ノズル43a,43b,43c,43d,43eのうちのいずれかの近傍、または、これらから略均等な位置等に配置されても良い。
【0068】
(3)上記各実施形態において、タンク31の配置位置も任意であり、洗車ポンプ32への洗浄液の供給の容易性や、洗浄液の補充の容易性等を考慮して決定することができる。
【0069】
また、タンク31は着脱可能な態様で機体1に設けられても良い。これにより、タンク31を作業走行の邪魔にならない機体1の任意の位置に配置しながら、洗浄作業を行う際には、タンク31を洗車ポンプ32の近傍等の、洗浄作業を効率的に行うことができる位置に移動させて、効率的に洗浄作業を行うことができる。
【0070】
また、運転座席16が洗浄液を貯留できる構成とされ、運転座席16がタンク31とされて用いても良い。これにより、別途タンク31を設ける必要がなくなり、機体1のスペースの使用が効率的となる。
【0071】
さらに、タンク31、または洗浄液を貯留できる運転座席16は、洗浄液の残量が分かる構成としても良い。例えば、タンク31等に、洗浄液の残量がわかる目盛り等が設けられても良い。これにより、洗浄作業中に洗浄液がなくなることが抑制でき、適切に洗浄液の補充を行うことができる。
【0072】
(4)上記各実施形態において、洗車ポンプ32は、エンジン2で駆動される構成に限らず、エンジン2以外の駆動源、または、別途設けられるモータで駆動されても良い。これにより、エンジン2が停止している間にも洗浄作業を行うことができる。
【0073】
(5)ブラケット41およびブラケット44の少なくとも一方は、機体フレーム1Eに限らず、機体1の任意の位置に支持されても良い。これにより、噴射ノズルを自由な位置に配置することが容易となり、車輪12に対して様々な方向から洗浄液を噴射することが容易となる。
【0074】
また、ブラケット41は、前輪12Aの上方に限らず、前輪12Aの前方または後方に設けられ、前輪用ノズル39a,39b、39cは、前輪12Aの上方に限らず、前方または後方にずれた方向から洗浄液を噴射する構成であっても良い。同様に、ブラケット44は、後輪12Bの上方に限らず、後輪12Bの前方または後方に設けられ、後輪用ノズル43a,43b,43c,43d,43eは、後輪12Bの上方に限らず、前方または後方にずれた方向から洗浄液を噴射する構成であっても良い。これにより、噴射ノズルの配置構成の自由度が向上すると共に、車輪12の構成に応じて、適切な方向から洗浄液を噴射することができ、洗浄効率を向上させることができる。
【0075】
また、噴射ノズルから噴射される洗浄液の噴射方向が、車輪12の接線方向に沿う方向とされても良い。これにより、車輪12の表面の洗浄効率を向上させることができる。
【0076】
(6)上記各実施形態において、前輪用ノズルおよび後輪用ノズルの数は、前輪用ノズルを3つ、後輪用ノズルを5つとする構成に限らず、車輪12の形状等に応じて任意に設定することができる。例えば、前輪用ノズルが2つ、後輪用ノズルが2つとされても良く、前輪用ノズルが2つ、後輪用ノズルが3つとされても良い。
【0077】
(7)上記各実施形態において、噴射ノズルは、左右の前輪12Aおよび左右の後輪12Bのうちの少なくとも1つのみに選択的に洗浄液を噴射する構成とされても良い。また、噴射ノズルは複数の前輪用ノズルのうちの少なくとも1つのみに選択的に洗浄液を噴射する構成とされても良い。また、噴射ノズルは複数の後輪用ノズルのうちの少なくとも1つのみに選択的に洗浄液を噴射する構成とされても良い。以上のような構成とすることにより、必要な個所にのみ洗浄液を噴射することができ、洗浄液の無駄を省きながら、効率的に洗浄を行うことができる。
【0078】
(8)上記各実施形態において、噴射ノズルは、車輪12に対して設ける構成に限らず、機体1の任意の洗浄対象箇所に対して設けることができる。これにより、機体1の任意の箇所に洗浄液を噴射して、洗浄を行うことができる。例えば、噴射ノズルを適切な位置に配置し、噴射ノズルは、機体1の下側、搭乗ステップ14Aや乗降ステップ14B、苗植付装置3、苗載せ台21等を洗浄する構成とすることもできる。
【0079】
(9)上記各実施形態において、洗浄装置30は噴射ノズルに限らず、洗浄液により洗浄対象箇所を洗浄できれば任意の構成とすることができる。例えば、洗浄装置30自体を設けず、ホース33の洗車ポンプ32と接続される端部に対する他の端部を自由に持ち運べる構成とし、洗車ポンプ32によりホース33から洗浄液を機体1の任意の位置に排出して、機体1を洗浄する構成とすることもできる。これにより、機体1のあらゆる箇所を洗浄することができる。
【0080】
(10)上記各実施形態において、洗車ポンプ32は、タンク31から洗浄液を吸引する構成に限らず、水道等の水源から水を取水することができる構成とし、水道等の取水部から取水した水を洗浄装置30に供給する構成とすることもできる。この場合、タンク31が設けられない構成としても良い。
【0081】
水源から水を取水して洗浄を行うことにより、タンク31の容量を気にすることなく、十分な洗浄を行うことができる。
【0082】
(11)上記各実施形態において、洗浄水は、水または汚れを洗浄できる液体であれば良い。さらに、洗浄水に代わり、気体が用いられても良く、砂、その他の粒状物等の個体であっても良い。洗浄水を含め、気体や個体等の、洗浄装置30から噴射されて対象箇所を洗浄するものは、洗浄物と称される。つまり、洗浄物は、液体、または気体でも良く、洗浄物を圧送することで機体1に付着した泥等の汚れが洗浄される。
【0083】
(12)上記各実施形態において、駆動源はエンジン2に限らず、電動モータ等であっても良い。
【0084】
(13)上記各実施形態において、洗浄機構は、田植機に限らず、コンバインや乗用管理機等の圃場で作業走行を行う種々の農作業機に搭載することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、田植機を始め、種々の農作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
2 エンジン(駆動源)
2D 出力軸(駆動軸)
9 無段変速装置(静油圧式無段変速装置)
12 車輪(走行装置)
16 運転座席
30 洗浄装置
31 タンク
32 洗車ポンプ
37 ポンプ用伝達機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6