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  • 特開-真空ポンプ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158145
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
F04D19/04 G
F04D19/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062845
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】安田 智貴
【テーマコード(参考)】
3H131
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131AA07
3H131BA01
3H131CA31
3H131CA35
(57)【要約】
【課題】真空ポンプの高温部にユーザが接触する危険を防止する。
【解決手段】真空ポンプ1は、ロータ円筒部25と、ロータ円筒部25を回転させるモータ28と、ロータ円筒部25とともにネジ溝ポンプを構成するステータ円筒部26と、ロータ円筒部25とステータ円筒部26とを収容するベース4と、筐体3またはステータ円筒部25を加熱するヒータ51と、ベース4に取り付けられた冷却装置8と、ステータ円筒部26の外周側、かつ、ベース4の外周側に配置され、ベース4を空気断熱層S3を介して覆うカバー部材7であって、冷却装置9と接触している、カバー部材7と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ円筒部と、
前記ロータ円筒部を回転させるモータと、
前記ロータ円筒部とともにネジ溝ポンプを構成するステータ円筒部と、
前記ロータ円筒部と前記ステータ円筒部とを収容するベースと、
前記ベースまたは前記ステータ円筒部を加熱するヒータと、
前記ベースに取り付けられた冷却装置と、
前記ステータ円筒部の外周側、かつ、前記ベースの外周側に配置され、前記ベースを空気断熱層を介して覆うカバー部材であって、前記冷却装置と接触している、カバー部材と、
を備える真空ポンプ。
【請求項2】
前記モータに電気を供給する電源装置を、さらに備え、
前記電源装置は、前記冷却装置と接触して配置されており、
前記ベースおよび前記カバー部材は、前記冷却装置の前記電源装置が接触している面と反対の面に接触して配置されている、
請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記冷却装置は、前記ベースの下端面に取り付けられ、
前記冷却装置の外径は前記ベースの下端面の外径よりも大きく、前記冷却装置の上面には前記カバー部材を取り付けるための取付部が設けられており、
前記取付部に前記カバー部材の下端が取り付けられている、請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記モータによって、前記ロータ円筒部とともに回転させられる複数段のロータ翼と、
前記複数段のロータ翼とともにターボ分子ポンプを構成する複数段のステータ翼と、
前記複数段のロータ翼と前記複数段のステータ翼を収容するケーシングと、をさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記カバー部材は、平板を折り曲げた1または複数の板状部材により筒状に構成されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記ベースの外周は筒状であり、前記カバー部材は筒状であり、
前記ベースの外周と前記カバー部材が最も隣接している部分において、前記空気断熱層の厚みは、1mm以上100mm以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
CVD成膜やエッチング等を行う半導体製造装置等においては、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプが用いられている。このような真空ポンプにおいては、真空ポンプの内部に生成物が付着し、ロータの回転に支障をきたしたり、短期間にオーバーホールが必要になるなどの課題が生じている。このような課題に対処するために、ポンプ内部のガスに接する部分の温度を高温にし、反応生成物の付着を防ぐことが行われている(たとえば、特許文献1、2に記載)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-229936号公報
【特許文献2】特開2018-162725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空ポンプの中でも、ネジ溝ポンプのステータ円筒部は特に高温となり、この部分を収容する筐体の外周も高温になる。ユーザがこの高温部に触れる危険を回避する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1観点の真空ポンプは、
ロータ円筒部と、
前記ロータ円筒部を回転させるモータと、
前記ロータ円筒部とともにネジ溝ポンプを構成するステータ円筒部と、
前記ロータ円筒部と前記ステータ円筒部とを収容するベースと、
前記ベース体または前記ステータ円筒部を加熱するヒータと、
前記ベースに取り付けられた冷却装置と、
前記ステータ円筒部の外周側、かつ、前記ベースの外周側に配置され、前記ベースを空気断熱層を介して覆うカバー部材であって、前記冷却装置と接触している、カバー部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の真空ポンプは、ステータ円筒部の外周側、かつ、ベースの外周側に配置され、ベースを空気断熱層を介して覆うカバー部材を備えているので、ユーザが高温部に触れる危険を、簡単な構成で回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の真空ポンプ1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
(1)真空ポンプ1の構成
第1実施形態の真空ポンプ1は、ターボ分子ポンプと、ネジ溝ポンプとを含む。真空ポンプ1は、排気対象空間を含む排気対象装置に接続されている。排気対象空間からのガスは、ターボ分子ポンプで排気された後、ネジ溝ポンプで排気され、真空ポンプ1の外に排気される。
【0009】
真空ポンプ1は、図1に示すように、筐体3と、ロータ2と、モータ28と、複数のステータ翼ユニット23と、ステータ円筒部26と、ヒータ51~53と、冷却装置8と、電源装置9と、カバー部材7と、を備えている。筐体3は、ロータ2と、モータ28と、複数段のステータ翼ユニット23と、ステータ円筒部26とを収容する。冷却装置8は、一方の面8aが筐体3に接触するように配置されている。冷却装置8の他方の面8bは、電源装置9に接触するように配置されている。カバー部材7は、筐体3の外周部に、筐体3を空気断熱層S3を介して覆うように配置されている。
【0010】
筐体3は、ケーシング4と、ベース5とを含む。
【0011】
ケーシング4は、複数段のロータ翼ユニット21と複数段のステータ翼ユニット23とを収容する。ケーシング4は、第1端部12と、第2端部13とを有する。ケーシング4の内部には、第1内部空間S1が形成されている。第1端部12には吸気口14aが形成されている。第1端部12は、排気対象装置に取り付けられる。第1内部空間S1は、吸気口14aに連通している。第2端部13は、ロータ2の軸線方向A1において、第1端部12の反対に位置している。第2端部13は、ベース5に接続される。
【0012】
ベース5は、ロータ円筒部25とステータ円筒部26とを収容する。ベース5は、ベース第1端部15と、ベース第2端部16と、排気管17とを有する。ベース5は、第2内部空間S2を形成している。ベース第1端部15は、ケーシング4の第2端部13に接続される。ベース第2端部16は、冷却装置8の一方の面8aに接触するように配置されている。第2内部空間S2は、ケーシング4の第1内部空間S1と連通している。排気管17は、排気口17aを形成している。排気口17aは、第2内部空間S2と連通している。
【0013】
排気対象空間から真空ポンプ1に流入したガス(気体分子)は、吸気口14aから第1内部空間S1に入る。ガスは、第1内部空間S1からターボ分子ポンプ、ネジ溝ポンプを経て、第2内部空間S2に達する。ガスは、第2内部空間S2から排気口17aを経由して、真空ポンプ1の外に排出される。
【0014】
ロータ2は、シャフト11と、複数段のロータ翼ユニット21と、ロータ円筒部25とを含む。
【0015】
シャフト11は、ロータ2の軸線方向A1に延びている。以下の説明において、軸線方向A1において、ケーシング4からベース5に向かう方向が下方と定義され、その反対の方向が上方と定義される。
【0016】
真空ポンプ1は、さらに、複数の軸受27A~27Dを備えている。複数の軸受27A~27Dは、ベース5に取り付けられている。複数の軸受27A~27Dは、ロータ2を回転可能に支持する。複数の軸受27A~27Dは、例えば磁気軸受を含む。ただし、複数の軸受27A~27Dは、ボールベアリングなどの他の種類の軸受けを含んでもよい。
【0017】
モータ28は、ロータ2を回転駆動する。モータ28は、モータロータ31とモータステータ32とを含む。モータロータ31は、シャフト11に取り付けられている。モータステータ32は、ベース5に取り付けられている。モータステータ32は、モータロータ31と向かい合って配置されている。
【0018】
複数のロータ翼ユニット21は、それぞれシャフト11に接続されている。複数段のロータ翼ユニット21は、軸線方向A1に互いに間隔をおいて配置されている。それぞれのロータ翼ユニット21は、複数のロータ翼22を含む。図示を省略するが、複数のロータ翼22は、それぞれシャフト11を中心として放射状に延びている。なお、図面においては、複数のロータ翼ユニット21の1つ、及び、複数のロータ翼22の1つのみに符号が付されており、他のロータ翼ユニット21及び他のロータ翼22の符号は省略されている。
【0019】
複数段のステータ翼ユニット23は、ケーシング4の内面に接続されている。複数段のステータ翼ユニット23は、軸線方向A1において、互いに間隔をおいて配置されている。複数段のステータ翼ユニット23は、それぞれ複数段のロータ翼ユニット21の間に配置されている。それぞれのステータ翼ユニット23は、複数のステータ翼24を含む。図示を省略するが、複数段のステータ翼24は、それぞれシャフト11を中心として放射状に延びている。
【0020】
複数段のロータ翼ユニット21と複数段のステータ翼ユニット23とは、ターボ分子ポンプを構成する。なお、図面においては、複数のステータ翼ユニット23の1つ、及び、複数のステータ翼24の1つのみに符号が付されており、他のステータ翼ユニット23及び他のステータ翼24の符号は省略されている。
【0021】
ロータ円筒部25は、ロータ翼ユニット21の下方に配置されている。ロータ円筒部25は、軸線方向A1に延びている。
【0022】
ステータ円筒部26は、ロータ円筒部25の径方向外方に配置されている。ステータ円筒部26は、ベース5に接続されている。ステータ円筒部26は、ロータ円筒部25の径方向において、ロータ円筒部25と向かい合って配置されている。ステータ円筒部26の内周面には、らせん状溝が設けられている。ロータ円筒部25とステータ円筒部26とは、ネジ溝ポンプを構成する。
【0023】
電源装置9は、モータ28、磁気軸受27A、27D、または/および、ヒータ51~53を制御する。電源装置9は、外部の電源から供給された電気を適宜変換して、モータ28、磁気軸受27A、27D、または/および、ヒータ51~53に供給する。電源装置9は、電源ケーシングと、電源ケーシングに収容されたプロセッサ、AC-DCコンバータ、DC-DCコンバータ、インバータ、DC電源、または/および、励磁アンプを含む。電源装置9は発熱するため、冷却装置8により冷却される。電源装置9の電源ケーシングは、冷却装置8の下方の面8bに接触して配置されている。
【0024】
冷却装置8は、金属材料で構成されている。金属材料の例としては、アルミ材である。冷却装置8は、液冷媒を流通させるための冷媒通路を備えている。液冷媒とは、たとえば、水である。冷却装置8は、金属パイプを鋳込んで形成してもよい。金属パイプとは、たとえば、銅パイプである。冷却装置8は、ベース5のベース第2端部16に取り付けられている。冷却装置8は、上方の面8aと下方の面8bとを有している。下方の面8bは、電源装置9に接触して配置されている。冷却装置8は、電源装置9を冷却する。上方の面8aは、ベース5およびカバー部材7に接触して配置されている。冷却装置8は、ベース5およびカバー部材7を冷却する。冷却装置8の上方の面8aの外径は前記ベースの下端面の外径よりも大きい。冷却装置8の上方の面8aにはカバー部材7を取り付けるための取付部が設けられている。
【0025】
第1ヒータ51は、ベース5の外周に設置されている。第1ヒータ51は、ベース5の外周、ステータ円筒部26を加熱する。
【0026】
第2ヒータ52は、複数段のステータ翼ユニット23の外周のケーシング4の外周に配置されている。第2ヒータ52は、複数段のステータ翼ユニット23を加熱する。
【0027】
第3ヒータ53は、排気管17の外周に配置されている。第3ヒータ53は、排気管17を加熱する。第3ヒータの加熱温度は、第1ヒータの加熱温度および第2ヒータの加熱温度よりも高い。
【0028】
真空ポンプ1のガスの経路の内で、複数段のステータ翼ユニット23、ステータ円筒部26、ベース5の第2内部空間S2に面する部分、排気管17などは、ガス付着を防止するため、ヒータを使って加熱する場合がある。特に、複数段のステータ翼ユニット23よりも他の部分をより高温に加熱する。また、複数段のステータ翼ユニット23の外周部、言い換えると、ケーシング4の外周部近傍は、温度制御のため、第2ヒータ52と合わせて冷却手段も配置されている。ベース5の外側は、高温になる。ベース5の外側の温度は、約100℃に達する。そこをユーザが手で触れると火傷をする恐れがある。そこで、本実施形態においては、ユーザが高温のベース5外周部に接触する危険を避けるために、カバー部材7を配置している。
【0029】
カバー部材7は、筐体3、詳細には、ベース5の外周側に、かつ、ステータ円筒部26の外周側に配置されている。つまり、カバー部材7は、ベース5およびステータ円筒部26を取り囲むように配置されている。従って、カバー部材7により、ユーザ(操作者)が、高温になったベース5に触れることが防止され得る。カバー部材7は、空気断熱層S3を介して配置されおり、筐体3、詳細には、ベース5とは直接的には接触していない。従って、ステータ円筒部26およびベース6の熱が、直接的あるいは熱放射によりカバー部材7に伝達されカバー部材7が高温になることが良好に防止され得る。カバー部材7の配置されている位置は、ベース第1端部15よりも下方である。カバー部材7は、冷却装置8の上方の面8aと接触して配置されている。カバー部材7は、冷却装置8に固定されている。従って、カバー部材7は冷却装置8によって冷却されることからも、カバー部材7が高温になることがさらに良好に防止され得る。本実施例においては、冷却装置8および電源装置9の外径をベース5の外径よりも大きく形成することにより、冷却装置8の上方の面8aにカバー部材7を取り付けるための取付部を形成するようにしている。つまり、冷却装置8はベース5に対して径方向外側に突出しており、その突出した領域が取付部を構成している。カバー部材7は、取付部に取り付けられる。
【0030】
カバー部材7は、筒状(例えば円筒状)のベース5の外周に、筒状に形成されており、平面視した場合には、多角形(特に限定されないが、例えば、正八角形など)に形成されている。但し、排気管17が配置されている位置においては、カバー部材を形成することができないので、完全な筒状にはなっていない。カバー部材7は、1の板を折り曲げて構成していても、複数の矩形状の板状部材を組み合わせて構成されていてもよい。例えば、カバー部材7は、平板を所定角度で折り曲げて構成した板状部材を2~4個、組み合わせることで形成されていてもよい。したがって、作成は容易であり、コストは安い。カバー部材を構成する板の厚みは、1mm以上10mm以下である。カバー部材の材質は、金属またはプラスチックである。加工の容易さから金属が好ましい。
【0031】
ベース5の外周とカバー部材7の最も隣接している部分において、空気断熱層の厚みは、
1mm以上であることが好ましく、より好ましくは、3mm以上、更に好ましくは、10mm以上がよい。また、空気断熱層の厚みは、ベース5の外周とカバー部材7の最も隣接している部分において、100mm以下であることが好ましく、50mm以下がより好ましい。空気断熱層の厚みが薄すぎると断熱性能が不十分であるし、厚すぎると真空ポンプ1が大きくなってしまう。
【0032】
上記の実施形態に係る真空ポンプ1は、ターボ分子ポンプとネジ溝ポンプとが一体化された複合型ポンプである。しかし、ターボ分子ポンプは省略されてもよい。すなわち、真空ポンプ1は、ネジ溝ポンプのみで構成されてもよい。
<第2実施形態>
(2)第2実施形態の真空ポンプの構成
第2実施形態の真空ポンプ1は、第1実施形態の第2ヒータ52を有さず、代わりにステータ円筒部26を加熱する第4ヒータを有する。その他の真空ポンプ1の構成は第1実施形態と同様である。
【0033】
第2実施形態の真空ポンプ1においても、ベース5の外周は、高温になる。したがって、カバー部材7は、第1実施形態の真空ポンプ1と同様に、ユーザが高温部に接触する危険性を回避することができる。
【0034】
以上、本開示の複数の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(3)態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)一態様に係る真空ポンプは、
ロータ円筒部と、
前記ロータ円筒部を回転させるモータと、
前記ロータ円筒部とともにネジ溝ポンプを構成するステータ円筒部と、
前記ロータ円筒部と前記ステータ円筒部とを収容するベースと、
前記ベースまたは前記ステータ円筒部を加熱するヒータと、
前記ベースに取り付けられた冷却装置と、
前記ステータ円筒部の外周側、かつ、前記ベースの外周側に配置され、前記ベースを空気断熱層を介して覆うカバー部材であって、前記冷却装置と接触している、カバー部材と、
を備える。
【0035】
第1項に記載の真空ポンプは、カバー部材で、ステータ円筒部の外周側のベースの外周側を覆っているので、ユーザが高温部であるベースに触れる危険性を回避できる。カバー部材は、空気断熱層を介してベースを覆っており、直接的にはベースに接続されていないので、カバー部材が高温になることが良好に防止され得る。カバー部材はベースには接続されない構造であるので、ベースの熱がカバー部材に伝達されることを防止するための断熱部品を設ける必要が無く、コスト及び部品点数を削減できる。さらに、カバー部材は冷却装置に取り付けられ、冷却装置によって冷却されることから、カバー部材が高温になることがさらに良好に防止され得る。その結果、ユーザが高温部に触れる危険性をさらに良好に回避できる。
(第2項)第1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記モータに電気を供給する電源装置を、さらに備え、
前記電源装置は、前記冷却装置と接触して配置されており、
前記ベースおよび前記カバー部材は、前記冷却装置の前記電源装置が接触している面と反対の面に接触して配置されている。
【0036】
第2項に記載の真空ポンプは、電源装置を有し、電源装置とカバー部材の冷却を冷却装置で兼用しているので、簡単な構成で、高温の部分にユーザが接触するリスクを低減できる。
(第3項) 第1項または第2項に記載の真空ポンプにおいて、
前記冷却装置は、前記ベースの下端面に取り付けられ、
前記冷却装置の外径は前記ベースの下端面の外径よりも大きく、前記冷却装置の上面には前記カバー部材を取り付けるための取付部が設けられており、
前記取付け部に前記カバー部材の下端が取り付けられている。
【0037】
第3項に記載の真空ポンプによれば、カバー部材を冷却装置の上面に安定的に取り付けることができ、かつ、カバー部材をさらに良好に冷却することができる。
(第4項)第1項~第3項のいずれか1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記モータによって、前記ロータ円筒部とともに回転させられる複数段のロータ翼と、
前記複数段のロータ翼とともにターボ分子ポンプを構成する複数段のステータ翼と、
前記複数段のロータ翼と前記複数段のステータ翼を収容するケーシングと、をさらに備える。
【0038】
第4項に記載の真空ポンプによれば、上流側のケーシングおよび下流側のベースによって真空ポンプの筐体を構成する。その上で、カバー部材は、少なくともベースの外周を覆うように設けられている。冷却装置はベースに接続され、カバー部材は冷却装置に接続された構造を有している。
(第5項)第1項~第4項のいずれか1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記カバー部材は、平板を折り曲げた1または複数の板状部材により筒状に構成されている。
【0039】
第5項に記載の真空ポンプによれば、カバー部材は、平板を折り曲げて構成されているので、カバー部材の作成が容易であり、コストが低い。
(第6項)第1項~第5項のいずれか1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記ベースの外周は円筒状であり、前記カバー部材は筒状であり、
前記ベースの外周と前記カバー部材が最も隣接している部分において、前記空気断熱層の厚みは、1mm以上100mm以下である。
【0040】
第6項に記載の真空ポンプにおいて、空気断熱層の厚みが1mm以上あるので、ベースの外周とカバー部材とが断熱される。空気断熱層の厚みが100mm以下であるので、真空ポンプが大きくなりすぎるのを回避できる。
【符号の説明】
【0041】
1 真空ポンプ
2 ロータ
3 筐体
4 ケーシング
5 ベース
11 シャフト
21 ロータ翼ユニット
22 ロータ翼
23 ステータ翼ユニット
24 ステータ翼
25 ロータ円筒部
26 ステータ円筒部
28 モータ
7 カバー部材
8 冷却装置
9 電源装置
S3 空気断熱層
図1