(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158155
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ロッドレンズアレイの製造方法、及び、レンズ固定用部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20221006BHJP
B24B 13/00 20060101ALI20221006BHJP
B24B 13/005 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02B3/00 A
B24B13/00 E
B24B13/005 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062858
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽三
(72)【発明者】
【氏名】高橋 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】保科 和也
(72)【発明者】
【氏名】越 浩志
【テーマコード(参考)】
3C049
【Fターム(参考)】
3C049AA04
3C049AA09
3C049AB05
3C049CA01
3C049CB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レンズブロックの基材面同士が接着されて束ねられた状態でロッドレンズの露出レンズ面が研磨されるときのばらけを抑制できるロッドレンズアレイの製造方法などを提供する。
【解決手段】樹脂を含有するシート状の基材と、基材の一方の面に重なった接着層とを有するレンズ固定用部材を作製する第1工程と、2つのレンズ固定用部材の各接着層で棒状の複数のロッドレンズを挟み込んだレンズボードを作製し、さらに、作製したレンズボードを分割することによってレンズブロックを複数作製する第2工程と、作製されたレンズブロックが有するロッドレンズに研磨処理を施すことによってロッドレンズアレイを得る第3工程と、を備えるロッドレンズアレイの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含有するシート状の基材と、該基材の一方の面に重なった接着層とを有するレンズ固定用部材を作製する第1工程と、
2つの前記レンズ固定用部材の各接着層で棒状の複数のロッドレンズを挟み込んだレンズボードを作製し、さらに、作製した前記レンズボードを分割することによってレンズブロックを複数作製する第2工程と、
作製された前記レンズブロックが有するロッドレンズに研磨処理を施すことによってロッドレンズアレイを得る第3工程と、を備え、
前記第2工程では、前記複数のロッドレンズの長手方向を揃えて並べた前記レンズボードを作製し、前記複数のロッドレンズの長手方向に垂直な方向で前記レンズボードを厚さ方向に切断することによって前記レンズボードを分割して複数のレンズブロックを作製し、且つ前記レンズブロックに露出レンズ面を形成させ、
前記第3工程では、前記ロッドレンズの前記露出レンズ面が揃うように複数の前記レンズブロックを束ね、隣り合う前記レンズブロックの基材面同士を接着剤によって互いに接着した状態で、前記露出レンズ面に対して研磨処理を施すことによってロッドレンズアレイを得て、
前記第1工程は、
前記接着される前記基材の表面に付着したフェノール系酸化防止剤を減らして前記接着剤の接着力を向上させるべく、前記基材の表面を浄化する浄化工程を有し、
前記浄化工程では、前記フェノール系酸化防止剤が付着した基材表面であって前記接着剤によって接着される基材表面に、波長300nm以下の紫外線を含む光を照射することによって前記フェノール系酸化防止剤を減らす、
ロッドレンズアレイの製造方法。
【請求項2】
前記基材は、エポキシガラス積層板である、請求項1に記載のロッドレンズアレイの製造方法。
【請求項3】
光軸が揃うように並んだ複数のロッドレンズと、前記複数のロッドレンズを間に挟み込んで固定する2つのレンズ固定用部材とを有するロッドレンズアレイを作るために、前記レンズ固定用部材を製造するレンズ固定用部材の製造方法であって、
前記レンズ固定用部材は、樹脂を含有するシート状の基材と、該基材の一方の面に重なった接着層とを有し、
前記ロッドレンズアレイを作る過程で前記基材面同士が接着剤によって接着されたときの接着力を向上させるべく、前記基材の表面に付着したフェノール系酸化防止剤を減らすことによって前記基材の表面を浄化する浄化工程を備え、
前記浄化工程では、前記フェノール系酸化防止剤が付着した基材表面であって前記接着剤によって接着される基材表面に、波長300nm以下の紫外線を含む光を照射することによって前記フェノール系酸化防止剤を減らす、レンズ固定用部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、2つの基材の間に複数のロッド状レンズが配置された構成を有するロッドレンズアレイの製造方法に関する。
また、本発明は、例えば、上記の複数のロッド状レンズを間に挟み込んで固定するためのレンズ固定用部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機又はプリンタなどにおける光学部品として使用されるロッドレンズアレイが知られている。この種のロッドレンズアレイは、例えば、棒状(ロッド状)の多数のレンズが2つの基材の間に挟み込まれたレンズボードを切断して分割してなるレンズブロックの形状を有する。基材は、例えば、ガラス繊維強化プラスチック板といった樹脂含有板であり、レンズは、例えばガラス製又はプラスチック製のロッドレンズである(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
この種のロッドレンズアレイの製造方法としては、一方の基板上に多数本のファイバ状のレンズ素材を整列させ、その上に他方の基板を配置した状態で固定する組立工程と、組み立てたレンズ素材配列体の間隙部に樹脂を充填させ硬化させる充填硬化工程と、硬化した樹脂により結合一体化されたレンズブロックを所定のレンズ長に切断する切断工程と、切断した両端面を研磨する研磨工程と、を備える製造方法が知られている(例えば、特許文献3)。
【0004】
特許文献1に記載の製造方法では、充填硬化工程でレンズ素材配列体の間隙部に吸引充填させる樹脂として、単分散処理した平均粒径0.1~25μmの真球状の有機フィラーを充填材として0.1~20質量%含有する粘度500~1500mPa・sの付加反応型シリコーン樹脂を用いる。
特許文献1に記載の製造方法によれば、配列性及び光学特性が良好であり、高強度を有するロッドレンズアレイを安定的に製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09-090105号公報
【特許文献2】特許第4319301号公報
【特許文献3】特開2006-309078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ロッドレンズアレイの製造方法において、プレス成型処理によって基材を作製する場合がある。斯かる基材の作製では、基材用素材を樹脂製のセパレータで挟み、この状態でプレス成型処理する。また、ロッドレンズを有するレンズボードを所定長さに切断して小片化されたレンズブロックを作製し、レンズブロックが有するロッドレンズの切断された端に露出レンズ面を形成する場合がある。具体的には、複数のロッドレンズを2つの基材で挟み込んでなるレンズボードを厚さ方向に切断してレンズブロックを作製し、ロッドレンズに露出レンズ面を形成する場合がある。このような場合、形成された露出レンズ面を研磨すべく、露出レンズ面が面一となるように複数のレンズブロックを束ね、束ねた状態でレンズブロックの基材面同士を接着剤で貼り合わる。そして、束ねた状態で複数のレンズブロックの各露出レンズ面を研磨する。
【0007】
しかし、プレス成型処理で用いる樹脂製のセパレータには、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)などのフェノール系酸化防止剤等が含まれていることから、セパレータに含まれているフェノール系酸化防止剤が、プレス成型処理によって基材表面に付着する。表面にフェノール系酸化防止剤が付着した基材を用いて、上記のごとくレンズブロックの基材面同士を接着剤で貼り合わせると、フェノール系酸化防止剤によって接着剤が備える本来の接着力を発揮できず、結果的に接着剤の接着力が弱められ、束ねたレンズブロックが研磨中にばらけやすいという問題が生じる。
【0008】
上記の問題点等に鑑み、本発明は、レンズブロックの基材面同士が接着されて束ねられた状態でロッドレンズの露出レンズ面が研磨されるときのばらけを抑制できる、ロッドレンズアレイの製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、複数のロッドレンズを両側から挟み込んでレンズボードを作製するためのレンズ固定用部材であって上記のばらけを抑制できるレンズ固定用部材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るロッドレンズアレイの製造方法は、
樹脂を含有するシート状の基材と、該基材の一方の面に重なった接着層とを有するレンズ固定用部材を作製する第1工程と、
2つの前記レンズ固定用部材の各接着層で棒状の複数のロッドレンズを挟み込んだレンズボードを作製し、さらに、作製した前記レンズボードを分割することによってレンズブロックを複数作製する第2工程と、
作製された前記レンズブロックが有するロッドレンズに研磨処理を施すことによってロッドレンズアレイを得る第3工程と、を備え、
前記第2工程では、前記複数のロッドレンズの長手方向を揃えて並べた前記レンズボードを作製し、前記複数のロッドレンズの長手方向に垂直な方向で前記レンズボードを厚さ方向に切断することによって前記レンズボードを分割して複数のレンズブロックを作製し、且つ前記レンズブロックに露出レンズ面を形成させ、
前記第3工程では、前記ロッドレンズの前記露出レンズ面が揃うように複数の前記レンズブロックを束ね、隣り合う前記レンズブロックの基材面同士を接着剤によって互いに接着した状態で、前記露出レンズ面に対して研磨処理を施すことによってロッドレンズアレイを得て、
前記第1工程は、
前記接着される前記基材の表面に付着したフェノール系酸化防止剤を減らして前記接着剤の接着力を向上させるべく、前記基材の表面を浄化する浄化工程を有し、
前記浄化工程では、前記フェノール系酸化防止剤が付着した基材表面であって前記接着剤によって接着される基材表面に、波長300nm以下の紫外線を含む光を照射することによって前記フェノール系酸化防止剤を減らす。
上記の製造方法によれば、レンズブロックの基材面同士が接着されて束ねられた状態でロッドレンズの露出レンズ面が研磨されるときのばらけを抑制できる。
【0010】
上記の製造方法では、基材は、エポキシガラス積層板であってもよい。
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明に係るレンズ固定用部材の製造方法は、
光軸が揃うように並んだ複数のロッドレンズと、前記複数のロッドレンズを間に挟み込んで固定する2つのレンズ固定用部材とを有するロッドレンズアレイを作るために、前記レンズ固定用部材を製造するレンズ固定用部材の製造方法であって、
前記レンズ固定用部材は、樹脂を含有するシート状の基材と、該基材の一方の面に重なった接着層とを有し、
前記ロッドレンズアレイを作る過程で前記基材面同士が接着剤によって接着されたときの接着力を向上させるべく、前記基材の表面に付着したフェノール系酸化防止剤を減らすことによって前記基材の表面を浄化する浄化工程を備え、
前記浄化工程では、前記フェノール系酸化防止剤が付着した基材表面であって前記接着剤によって接着される基材表面に、波長300nm以下の紫外線を含む光を照射することによって前記フェノール系酸化防止剤を減らすことを特徴とする。
上記の浄化方法を採用することによって、上記のごとく表面が浄化された基材を用いてレンズブロックを作製し、レンズブロックの基材面同士が接着されて束ねられた状態でロッドレンズの露出レンズ面を研磨した場合に、束ねられたレンズブロックのばらけを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るロッドレンズアレイの製造方法によれば、レンズブロックの基材面同士が接着されて束ねられた状態でロッドレンズの露出レンズ面が研磨されるときのばらけを抑制できる。
また、本発明に係るレンズ固定用部材の製造方法によれば、上記のばらけを抑制できるレンズ固定用部材を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態の製造方法によって得られたロッドレンズアレイの一例を模式的に表す模式図である。
【
図2】
図2は、基材が作製される様子を模式的に表した断面図である。
【
図3A】
図3Aは、基材表面を浄化する様子を模式的に表した模式図である。
【
図3B】
図3Bは、基材に接着層が積層された様子を模式的に表した模式図である。
【
図4A】
図4Aは、レンズボードが作製される様子を模式的に表した模式図である。
【
図4B】
図4Bは、レンズボードが作製される様子を模式的に表した模式図である。
【
図5A】
図5Aは、レンズボードを切断してレンズブロックが作製される様子を模式的に表した模式図である。
【
図5B】
図5Bは、レンズボードを切断してレンズブロックが作製される様子を模式的に表した模式図である。
【
図6A】
図6Aは、束ねられた複数のレンズブロックにおける露出レンズ面が研磨される様子を模式的に表した模式図である。
【
図6B】
図6Bは、いったん束ねられた複数のレンズブロックがばらけた様子を表した模式図である。
【
図7】
図7は、TOF-SIMS分析結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るロッドレンズアレイの製造方法の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
本実施形態の製造方法で製造されたロッドレンズアレイ10は、
図1に示すように、研磨された露出レンズ面を有する複数のロッドレンズ12を有する。ロッドレンズアレイ10は、複数が組み合わされて使用され、例えばロッドレンズ12の光軸方向が揃うように配置されて使用される。
【0016】
本実施形態のロッドレンズアレイの製造方法(以下、単に製造方法ともいう)は、
樹脂を含有するシート状の基材11と、該基材11の一方の面に重なった接着層13とを有するレンズ固定用部材15を作製する第1工程と、
2つのレンズ固定用部材15の各接着層13で棒状の複数のロッドレンズ12を挟み込んだレンズボード10”を作製し、さらに、作製したレンズボード10”を分割することによってレンズブロック10’を複数作製する第2工程と、
作製されたレンズブロック10’が有するロッドレンズ12に研磨処理を施すことによってロッドレンズアレイ10を得る第3工程と、を備え、
第2工程では、複数のロッドレンズ12の長手方向を揃えて並べたレンズボード10”を作製し、複数のロッドレンズ12,12の長手方向に垂直な方向でレンズボード10”を厚さ方向に切断することによってレンズボード10”を分割して複数のレンズブロック10’を作製し、且つレンズブロック10’に露出レンズ面を形成させ、
第3工程では、ロッドレンズ12,12の露出レンズ面が揃うように複数のレンズブロック10’を束ね、隣り合うレンズブロック10’の基材面同士を接着剤によって互いに接着した状態で、露出レンズ面に対して研磨処理を施すことによってロッドレンズアレイ10を得て、
第1工程は、
接着される基材11の表面に付着したフェノール系酸化防止剤を減らして接着剤の接着力を向上させるべく、基材11の表面を浄化する浄化工程を有し、
浄化工程では、フェノール系酸化防止剤が付着した基材表面であって接着剤によって接着される基材表面に、波長300nm以下の紫外線を含む光を照射することによってフェノール系酸化防止剤を減らし、基材11の表面を浄化する。ここで「接着力を向上させる」とは、フェノール系酸化防止剤によって阻害される接着剤の接着力を接着剤本来の接着力で発揮させること、及び、基材表面を浄化してフェノール系酸化防止剤を低減した場合の接着力を低減前よりも大きくすること、のうち少なくとも一方を含む。
【0017】
第1工程では、ロッドレンズ12を間に挟み込むためのシート状の基材11を用意する。シート状の基材11は、少なくとも樹脂を含む。シート状の基材11は、樹脂を20質量%以上40質量%以下含んでもよい。作製されたシート状の基材11の厚さは、例えば0.1mm以上3.0mm以下であってもよい。
【0018】
第1工程において用いる基材11は、例えば、基材用素材に対してプレス成型処理を施すことによってシート状に成形されたものである。プレス成型処理においては、シート状の基材11を互いに隔てるためのセパレータSを使用する。
【0019】
シート状の基材11を作製するための基材用素材は、例えば、プレス成型処理によって変形可能な樹脂組成物と、該樹脂組成物に包埋された繊維とを含む。斯かる基材用素材に対してプレス成型処理を施すことによって、繊維強化プラスチック板たる基材11が作製される。基材11は、シート状の複数の基材用素材が積層された状態でプレス成型処理されることによって作製されてもよい。繊維強化プラスチック板は、エポキシガラス積層板であってもよい。
【0020】
基材11がエポキシガラス積層板である場合、基材用素材は、例えば、硬化前のシート状のエポキシ樹脂組成物と、ガラス繊維布(ガラスクロス)とを含む。具体的には、基材用素材は、エポキシ樹脂を含む溶液をガラス繊維布に含侵させ、その後乾燥処理したプリプレグなどであってもよい。斯かる基材用素材(プリプレグ)を複数枚積み重ねた状態でプレス成型処理によって加熱加圧成形することによって、硬化したエポキシ樹脂とガラス繊維布とを含むエポキシガラス積層板が作製される。必要に応じて、さらに乾燥処理を施してもよい。
【0021】
セパレータSは、例えば樹脂製フィルムである。セパレータSの材質は、特に限定されず、例えばポリエチレン又はポリプロピレンといったポリオレフィンが採用される。ポリプロピレンとしては、例えば二軸延伸ポリプロピレンが採用されてもよい。
【0022】
セパレータSは、フェノール系酸化防止剤を含む。フェノール系酸化防止剤は、分子中にフェノール構造を有する酸化防止剤である。フェノール系酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)などが挙げられる。
【0023】
プレス成型処理において、複数のセパレータSは、複数のシート状基材用素材のそれぞれを互いに隔てるように配置される。例えば
図2に示すように、複数のセパレータSは、隣り合う基材用素材(基材11)を隔てるように、隣り合う基材用素材(基材11)の間にそれぞれ配置される。セパレータSは、プレス成型処理によって圧力を受けて基材用素材(基材11)と密着するものの、プレス成型処理後に基材用素材(基材11)から容易に剥離できる離型性を有する。
【0024】
プレス成型処理において、圧力条件は、例えば1MPa以上30MPa以下である。温度条件は、例えば140℃以上210℃以下である。
【0025】
プレス成型処理によって、基材11は、フェノール系酸化防止剤を含むセパレータSと直接接触して圧力を受けることとなる。そのため、基材11の表面には、比較的少量であるもののフェノール系酸化防止剤が付着する。
基材11の表面に付着したフェノール系酸化防止剤は、該基材同士を接着剤によって互いに接着させようとしたときに、接着力を弱める原因となり得る。
【0026】
基材11は、プレス成型処理において設定された温度条件よりも高い温度条件で加熱処理をさらに受けたものであってもよい。基材11がエポキシガラス積層板などの繊維強化プラスチック板である場合、加熱処理(高温キュア)を実施することによって、繊維強化プラスチック板に含まれる繊維とプラスチックとの密着性をより高めることができる。
なお、基材11としては、上記のごとくプレス成型処理によって作製された市販品を用いることができる。
【0027】
本実施形態の製造方法において、第1工程は、例えば、上記のごとく基材11の表面に付着したフェノール系酸化防止剤を減らして、後の接着工程で接着される基材表面における接着剤の接着力を向上させるべく、基材11の表面を浄化する浄化工程を有する。さらに、第1工程は、樹脂を含有するシート状の基材11と、該基材11の一方の面に重なった接着層13とを有するレンズ固定用部材15を作製するレンズ固定用部材作製工程を有する。
【0028】
第1工程の浄化工程では、後に接着剤で接着される基材11の表面を浄化すべく、接着される基材面に波長300nm以下の紫外線を含む光を照射する。これにより、上述したプレス成型処理によって基材11の表面に付着したフェノール系酸化防止剤を減らす。従って、後に詳述する接着工程における接着剤の接着力を向上させることができ、隣り合う基材面同士を強固に接着することができる。
【0029】
詳しくは、浄化工程において、フェノール系酸化防止剤が付着した基材表面に波長300nm以下の紫外線を含む光を照射することによって、フェノール系酸化防止剤が分解する。これにより、後に接着される基材表面が浄化されることから、接着剤による接着力が十分に発揮される。よって、後に詳述する研磨工程において、束ねられたレンズブロック10’のばらけを抑制できる。
一方、基材表面にフェノール系酸化防止剤が比較的大量に存在する場合、例えば、基材表面に対する接着剤の濡れ性が悪化したり、フェノール系酸化防止剤によって硬化型の接着剤の硬化反応が阻害されたりする。そのため、接着剤が本来備える接着力が十分に発揮されないおそれがある。よって、後に詳述する研磨工程において、束ねられたレンズブロック10’のばらけが発生しやすくなる。
【0030】
基材表面におけるフェノール系酸化防止剤が分解される原理は、以下のように考えられる。特定波長の紫外線が照射されることによって、強力な酸化力を有するオゾンが、基材11の表面付近に発生する。発生したオゾンは、酸化力によって基材11の表面付近の物質を分解する。このときBHTなどのフェノール系酸化防止剤が分解される。酸化反応に寄与したオゾンは、いったん分解されるものの、特定波長の紫外線によって新たにオゾンが発生し得る。このようにして発生したオゾンによって、基材11の表面付近の物質が酸化されて分解されると考えられる。よって、基材11の表面に付着したフェノール系酸化防止剤も分解されると考えられる。
【0031】
浄化工程において照射する光(以下、照射光ともいう)は、波長300nm以下の紫外線を含んでいればよい。照射光は、260nm以下の波長の紫外線を含むことが好ましく、190nm以下の波長の紫外線を少なくとも含むことがより好ましい。
【0032】
照射光は、波長の異なる2種類の紫外線を含んでもよい。例えば、照射光は、180nm以上190nm以下の紫外線と、245nm以上265nm以下の紫外線とを含んでもよい。
基材11の表面に照射する照射光の照射エネルギー(全分光エネルギー)のうち、185nmの波長の紫外線のエネルギーが占める割合は、5%以上であってもよい。なお、斯かる割合は、50%以下であってもよい。
また、245nm以上265nm以下の紫外線のエネルギーを100%としたときに、180nm以上190nm以下の紫外線の相対エネルギーが5%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。180nm以上190nm以下の紫外線の上記相対エネルギーは、40%以下であってもよく、35%以下であってもよい。
【0033】
浄化工程において基材11に照射される照射光は、基材表面の単位面積あたり450[mJ/cm2]以上550[mJ/cm2]以下のエネルギー量(積算光量)となるように照射されることが好ましい。1回の連続照射によるエネルギー量が上記範囲になってもよく、複数回の照射の総エネルギー量が上記範囲になってもよい。
【0034】
浄化工程において、基材11の表面での照射光による照度は、20[mW/cm2]以上150[mW/cm2]以下であってもよい。また、照射光源から基材表面までの距離は、5mm以上80mm以下であってもよい。
浄化工程において、照射光源から基材表面までの距離を10mm以上40mm以下に設定したうえで、照度が50[mW/cm2]以上100[mW/cm2]以下となるように照射光を照射することが好ましい。これにより、より確実にフェノール系酸化防止剤を分解できる。
【0035】
浄化工程においては、上述したように、照射光が照射された基材11の表面付近でオゾンガスが発生する。オゾンガスは、フェノール系酸化防止剤の分解に寄与することから、発生したオゾンガスの濃度を制御することが好ましい。
浄化工程において、基材11に照射光が照射された空間のオゾンガス濃度を90ppm以上に制御することが好ましい。照射は、空間内に配置された基材11に対して実施されるところ、該空間内の気体を排気しつつ、該空間内にオゾンガスを含まない気体を新たに導入することによって、オゾンガスの濃度を下げることができる。一方、新たに導入する気体の量を減らすことによって、オゾンガスの濃度を上げることができる。
より好ましくは、照射光による照度と、照射光源から基材表面までの距離とを上記のごとく設定したうえで、オゾンガス濃度を90ppm以上に制御する。上記のオゾンガスの濃度は、400ppm以下に制御されてもよい。
なお、基材11から10mm以上50mm以下離れたところで上記のオゾンガス濃度を測定してもよい。
【0036】
浄化工程において、基材面に照射光を照射する時間は、2秒以上15秒以下であってもよい。基材面に照射光を照射する回数は、1回でもよく複数回でもよい。1回あたり照射する時間が上記範囲であってもよく、照射する時間の合計(総時間)が上記範囲であってもよい。
【0037】
浄化工程は、後に詳述するレンズブロック10’の基材面同士を接着剤によって接着する前に実施すればよい。換言すると、上記のレンズ固定用部材作製工程、及び、浄化工程の順序は、特に限定されない。換言すると、レンズ固定用部材作製工程を実施した後に、浄化工程を実施してもよく、レンズ固定用部材作製工程を実施する前に、浄化工程を実施してもよい。また、レンズ固定用部材作製工程の前及び後の両方で浄化工程を実施してもよい。
上記のごとき紫外線の照射による接着層13の劣化を抑制するという点では、レンズ固定用部材作製工程を実施する前に、浄化工程を実施することが好ましい。
【0038】
第1工程のレンズ固定用部材作製工程では、シート状の基材11の一方の面に接着層13を重ねることによって、レンズ固定用部材15を作製する。
【0039】
例えば
図3Aに示すように、厚さ方向が上下方向となるように基材11を配置した状態で、基材11の下面に下方から上記紫外線を照射した後、
図3Bに示すように、基材11の上面に接着層13を重ねる。
【0040】
接着層13は、2つの基材11,11の間で複数のロッドレンズ12,12を固着させるための固着用樹脂組成物で形成されている。斯かる固着用樹脂組成物がシート状に成形されて接着層13となっていてもよい。
【0041】
接着層13を形成する上記の固着用樹脂組成物は、加熱処理によって硬化する硬化性樹脂(反応性化合物)を含むことが好ましい。反応性化合物としては、例えば、エポキシ樹脂及びその変性体、ウレタン樹脂及びその変性体などが挙げられる。
【0042】
固着用樹脂組成物は、上述した硬化性樹脂以外に、シリコーン樹脂及びその変性体、ポリエステル樹脂及びその変性体、アクリル樹脂及びその変性体、ポリアミド樹脂及びその変性体等をさらに含んでもよい。
【0043】
本実施形態の製造方法において、第2工程は、2つのレンズ固定用部材15を用いて各接着層13で複数のロッドレンズ12を挟み込んだレンズボード10”を作製するレンズボード作製工程と、作製したレンズボード10”を切断によって分割してなる複数のレンズブロック10’を作製するレンズブロック作製工程と、を有する。
【0044】
第2工程のレンズボード作製工程では、複数の棒状のロッドレンズ12を用意する。
図4Aに示すように、上記のごとく作製された2つのレンズ固定用部材15,15の間に、複数のロッドレンズ12を配置して、複数のロッドレンズ12を2つの接着層13で挟み込むことによって、レンズボード10”を作製する。
換言すると、長手方向が揃うように並べられた複数のロッドレンズ12をレンズ固定用部材15の接着層13で挟み込むように、2つの基材11を重ね合わせる。そして、
図4Bに示すようなレンズボード10”を作製する。
なお、レンズボード作製工程では、加熱しつつ上記のごとく複数のロッドレンズ12を挟み込むことによって、接着層13を形成する固着用樹脂組成物に流動性を与え、隣り合うロッドレンズ12の間に固着用樹脂組成物が入り込みやすくしてもよい。
【0045】
上記のロッドレンズ12は、プラスチック製であってもよく、ガラス製であってもよい。上記のロッドレンズ12の直径は、例えば0.05mm以上2.00mm以下であってもよい。
【0046】
レンズボード作製工程では、複数のロッドレンズ12は、長手方向が揃うように並べられる。また、基材11の片面側(内側に配置される面側)に接着層13が重なったレンズ固定用部材15を2つ用いて、2つの基材11の間に配置された複数のロッドレンズ12を接着層13によって固定する。
基材11の内側に接着層13が配置されるように2つのレンズ固定用部材15を配置して、複数のロッドレンズ12を2つのレンズ固定用部材15で挟み込むことによって、複数のロッドレンズ12の周囲を接着層13の固着用樹脂組成物が取り囲む。これにより、2つの基材11の間において、複数のロッドレンズ12のそれぞれが所定の位置に固定されることとなる。
【0047】
第2工程のレンズブロック作製工程では、レンズボード10”の内部にあるロッドレンズ12,12を長手方向に分割するようにレンズボード10”を切断することによって、切断されたロッドレンズ12の少なくとも一方の端を露出させて露出レンズ面を形成する。換言すると、ロッドレンズ12に露出レンズ面を形成させるべく、ロッドレンズ12を長手方向に分割するようにレンズボード10”を厚さ方向に切断する。
【0048】
レンズブロック作製工程では、例えば
図5A及び
図5Bに示すように、ロッドレンズ12が長手方向に分かれて複数個となるようにレンズボード10”を厚さ方向に切断する。これにより、ロッドレンズ12の個数が増え、切断されたロッドレンズ12の端にレンズ面が露出する。よって、露出レンズ面が形成される。レンズボード10”は、切断処理を複数回受け、これにより、1つのレンズボード10”から複数のレンズブロック10’が作製される。レンズボード10”が切断された切断面において、露出レンズ面と、基材11の端面とが、面一となっている。
【0049】
本実施形態の製造方法において、第3工程は、隣り合うレンズブロック10’の基材面同士が対向するように複数のレンズブロック10’を並べて束ね、基材面同士を接着剤によって接着する接着工程と、隣り合うレンズブロック10’同士が接着されて束ねられた状態で複数の露出レンズ面を研磨してロッドレンズアレイ10を得る研磨工程と、を有する。
【0050】
第3工程の接着工程では、まず、レンズブロック作製工程で作製された複数のレンズブロック10’の各基材面に、接着剤を塗布する。接着剤が塗布される基材面は、ロッドレンズ12と対向する面の反対側の面である。換言すると、接着剤が塗布される基材面は、外方を向く基材面である。
次に、基材面に接着剤が塗布された複数のレンズブロック10’を束ねる。このとき、複数のレンズブロック10’の切断面が面一となるように複数のレンズブロック10’を束ねる。換言すると、レンズブロック10’の露出レンズ面が同じ面に沿って揃うように複数のレンズブロック10’を束ねる。このとき、接着剤が塗布された基材面同士が隣り合って互いに対向するように複数のレンズブロック10’を並べる。
【0051】
接着工程で使用する接着剤としては、例えば、シリコーン接着剤、水分硬化型変性シリコーン接着剤、シリル基含有ポリマー接着剤、シアノアクリレート含有接着剤などが挙げられる。これら接着剤としては、市販されている製品を用いることができる。
接着工程で使用する接着剤としては、空気中の水分によって重合反応が開始されることにより硬化する水分硬化型接着剤が好ましく、シアノアクリレート含有接着剤又はシリル基含有ポリマー接着剤が好ましい。
水分硬化型接着剤は、ジブチルヒドロキシトルエンなどのフェノール系酸化防止剤が比較的多く存在する条件下では、重合反応が阻害されるため硬化されにくく、よって十分な接着力が発揮されないおそれがある。本実施形態においては、接着される基材面に付着していたフェノール系酸化防止剤が、浄化工程における光照射によって分解されているため、接着剤が十分な接着力を発揮できる。これにより、後に詳述するように研磨工程においてレンズブロック10’の束がばらけることを抑制できる。
【0052】
第3工程の研磨工程では、束ねられた複数のレンズブロック10’の露出レンズ面に研磨処理を施すことによって複数の露出レンズ面を研磨し、ロッドレンズアレイ10を得る。
研磨処理は、例えば
図6Aに示すような、円形の回転する研磨盤Gを有する研磨装置によって、例えば室温で実施する。研磨盤Gは、適切な研磨剤を含む樹脂で形成されたポリッシングパッドを有し、このポリッシングパッドがレンズブロック10’と接する面に設けられていてもよい。研磨装置は、レンズブロック10’の露出レンズ面を研磨盤Gに押し当てつつ研磨盤Gに沿って動かすことによって、露出レンズ面を研磨するように構成されている。
図6Aでは、一例として、4個のレンズブロック10’が束ねられて一体化されたワーク(加工対象物)が示されているが、このような態様に限定されない。例えば、より多くまたは少ない数のレンズブロック10’が束ねられて一体化されたワークであってもよい。
【0053】
研磨工程において、束ねられたレンズブロック10’は、上記のごとき研磨処理を受けるときに、露出レンズ面が研磨盤Gに押さえつけられながら露出レンズ面と研磨盤Gの面とがすり合わせられるため、接着された複数のレンズブロック10’がばらけるような力を受ける。そのため、接着剤によって接着された基材面における接着力が弱い場合、例えば
図6Bに示すようにばらけるおそれがある。
本実施形態においては、上述した浄化工程の光照射によって基材表面に付着したフェノール系酸化防止剤が分解されているため、接着剤による接着力が十分に発揮される。よって、基材面における接着力の低下が抑制されることから、上記のごときばらけを抑制できる。
【0054】
研磨工程の後、いったん束ねられたレンズブロック10’に対して、例えば溶剤浸漬処理、又は、力学的剥離処理などを施すことによって、レンズブロック10’が束ねられた状態を解除できる。これにより、研磨処理によって研磨された露出レンズ面を有する複数のロッドレンズアレイ10を得ることができる。
【0055】
上記のごとく製造されたロッドレンズアレイ10は、例えば、プリンタ、コピー機、電子黒板などに内蔵されている光学部品の用途で使用される。
【0056】
続いて、本発明に係るレンズ固定用部材の製造方法の一実施形態について説明する。
【0057】
本実施形態のレンズ固定用部材の製造方法は、上述した第1工程に相当する方法である。
詳しくは、本実施形態のレンズ固定用部材の製造方法は、
光軸が揃うように並んだ複数のロッドレンズ12と、複数のロッドレンズ12を間に挟み込んで固定する2つのレンズ固定用部材15とを有するロッドレンズアレイ10を作るために、レンズ固定用部材15を製造するレンズ固定用部材の製造方法であって、
レンズ固定用部材15は、樹脂を含有するシート状の基材11と、該基材11の一方の面に重なった接着層とを有し、
ロッドレンズアレイ10を作る過程で基材面同士が接着剤によって接着されたときの接着力を向上させるべく、基材11の表面に付着したフェノール系酸化防止剤を減らすことによって基材11の表面を浄化する浄化工程を備え、
浄化工程では、フェノール系酸化防止剤が付着した基材表面であって接着剤によって接着される基材表面に、波長300nm以下の紫外線を含む光を照射することによって、フェノール系酸化防止剤を減らして基材11の表面を浄化する。
【0058】
本実施形態のロッドレンズアレイの製造方法、及び、レンズ固定用部材の製造方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の製造方法に限定されるものではない。
即ち、一般的なロッドレンズアレイの製造方法において採用され得る種々の形態が、本発明の効果を損ねない範囲において、採用され得る。
【実施例0059】
次に実験例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
以下のようにしてロッドレンズアレイの製造方法を実施して、各実施例のロッドレンズアレイをそれぞれ製造した。
【0061】
<ロッドレンズアレイの部材、原料>
・ロッドレンズ
直径0.5mmのロッドレンズ(市販品)
・基材
繊維強化プラスチック板(FRP エポキシガラス積層板 市販品)
ただし、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含むセパレータを用いて上記のごとくプレス成型処理によって作製されたため、表面にBHTが付着している。
・基材に重ねられる接着層
上述した硬化性樹脂(反応性化合物)によって形成された接着層
・接着剤
スリーボンド社製 シリル基含有特殊ポリマー:製品名「TB1530」、
<第1工程(レンズ固定用部材の製造方法)の浄化工程>
後の接着工程で接着される基材面に紫外線を含む光を照射した。各実施例によって光を照射する条件を異ならせた。具体的には、表1に示す照射条件で照射を行った。ただし、明示されていない限り、以下の照射条件を採用した。
照度:50~100[mW/cm2]
照射時間:4~11秒
オゾン暴露時間:10~30秒間
光照射装置としては、岩崎電気社製のUVランプ「QGL400U-3B」、照度計「UVPF-A2」、受光ヘッド「PD-254A2」を構成部品として備えた装置を使用した。照射光における紫外線の波長、エネルギー比は、表1に示す通りである。基材表面の単位面積あたりの総エネルギー量(積算光量)は、500±50mJ/cm2であった。オゾン濃度計として荏原実業社製「EG-700EIV」を使用して、UV照射条件毎のオゾン濃度を測定した。
表1に記載された各条件の詳細は、以下の通りである。
・光源との距離:UVランプと、UV照射される基材面との距離
・排気ブロワ周波数:オゾンガスを排気するブロアを動かすモーターの回転数
・排気量:排気ブロアによって排気される気体(空気)単位時間当たりの量
・オゾン濃度:装置内で基材にUVが照射される空間におけるオゾン濃度
浄化工程の照射を行った直後に、浄化工程を経た基材を用いて次のレンズ固定用部材作製工程を実施した。
<第1工程(レンズ固定用部材の製造方法)のレンズ固定用部材作製工程>
100~160℃に加熱しつつ基材に接着層を重ね(ラミネートし)、レンズ固定用部材を作製した。
<第2工程のレンズボード作製工程>
長手方向が同じ向きとなるように一列に並べた複数のロッドレンズを、2枚のレンズ固定用部材の接着層で挟み込むように、2枚のレンズ固定用部材を重ね合わせた。これにより、レンズボードを作製した。
<第2工程のレンズブロック作製工程>
レンズボードを厚さ方向に切断することによって、2mm(H)×2~20mm(W)×100~400mm(L)サイズに小片化されたレンズブロックを複数作製した。
<第3工程の接着工程>
上記の接着剤によってレンズブロック同士を接着した。複数個(3~300個)のレンズブロックが束ねられたレンズブロック集合体を作製した。
<第3工程の研磨工程>
レンズブロック集合体にある複数の露出レンズ面を、ポリッシングパッドを備えた研磨盤に押し当てて、レンズブロック集合体を回転させることによって、複数の露出レンズ面を研磨した。
【0062】
(実施例1~22、比較例1)
基本的には、上記の方法によってロッドレンズアレイを製造した。各実施例、比較例の製造方法において製造条件が異なる点を表1に示す。
【0063】
<紫外線照射によるジブチルヒドロキシトルエン(BHT)の分解を確認する試験(TOF-SIMS試験)>
別途、実施例2と同様の条件で浄化工程を実施した後の基材(FRP)を用意した。一方、浄化工程を実施しなかった基材(FRP)も準備した。そして、それぞれの基材表面(FRP表面)に対して、飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)を行った。
分析方法は、一般的なTOF-SIMS試験方法に準じた。BHT由来の二次イオンである、C
15H
23
+、及び、C
16H
23
-の相対強度を測定した。結果を
図7に示す。
図7から把握されるように、浄化工程において特定波長の紫外線を含む光を照射することによって、基材表面に付着したBHTが分解したといえる。
【0064】
<束ねたレンズブロックのばらけに関わる評価試験>
上述した研磨工程を実施したときに、ばらけが発生した回数をカウントした。評価結果を表1に示す。また、評価試験の結果(ばらけの有無)に与える「オゾン濃度」及び「光源との距離」の影響をまとめたものを表2に示す。
【0065】
【0066】
【0067】
表1から把握されるように、実施例の製造方法によれば、比較例の製造方法に比べて、レンズブロックの基材面同士が接着されて束ねられた状態でロッドレンズの露出レンズ面が研磨されるときに、束ねたレンズブロックがばらけることを抑制できた。
表2から把握されるように、浄化工程において、オゾン濃度が高まるほど、また、光源との距離が近くなるほど、ばらけの発生を抑えることができた。
本発明のロッドレンズアレイの製造方法は、例えば、プリンタ、コピー機、電子黒板といった光学機器に内蔵されるロッドレンズアレイを製造するために、好適に使用される。
製造されたロッドレンズアレイは、上記のごとき光学機器を構成する部材として好適に使用される。