(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158158
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】オイルパームプランテーションシステム及びオイルパームプランテーションの敷地利用方法
(51)【国際特許分類】
C10J 3/78 20060101AFI20221006BHJP
C10J 3/02 20060101ALI20221006BHJP
C10J 3/14 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C10J3/78
C10J3/02 H
C10J3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062869
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】513302329
【氏名又は名称】野上 和利
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】野上 和利
(57)【要約】
【課題】 バイオ燃料の生産効率の向上を図る。
【解決手段】 オイルパームの伐採や剪定時等に得られる樹幹(OPT),茎葉(OPF)の茎(OPF茎),葉(OPF葉),パームオイル生産施設でパームオイルを生産する際に生じる空果房(EFB),排液(POME),果実繊維残渣(Fiber)を含む副産物を利用して有用物を生産する有用物生産施設を備え、有用物生産施設は、副産物から選択され互いに異なる一種若しくは二種以上の副産物を処理する処理ライン(L1~L6)を備え、亜臨界水及び/または超臨界水を生成する臨界水生成装置1を備え、処理ライン(L1,L3~L6)を、処理する副産物を臨界水生成装置1で生成した亜臨界水及び/または超臨界水により熱分解して分解ガスを生成する熱分解装置10と、熱分解装置10で生成された分解ガスを処理してバイオ燃料を得るガス処理装置20とを備えて構成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルパームが植生する敷地内に、これらのオイルパームから採取した果房(FFB)からパームオイルを生産するパームオイル生産施設と、オイルパームの伐採や剪定時等に得られる樹幹(OPT),該樹幹(OPT)から分離された茎葉(OPF)の茎(OPF茎),該茎(OPF茎)から分離された葉(OPF葉),上記パームオイル生産施設でパームオイルを生産する際に生じる空果房(EFB),排液(POME),果実繊維残渣(Fiber)を含む副産物を利用して有用物を生産する有用物生産施設とを備えたオイルパームプランテーションシステムであって、
上記有用物生産施設は、上記副産物から選択され互いに異なる一種若しくは二種以上の副産物を処理する複数の処理ラインを備えるとともに、亜臨界水及び/または超臨界水を生成する臨界水生成装置を備え、
上記複数の処理ラインの2以上を、処理する副産物を上記臨界水生成装置で生成した亜臨界水及び/または超臨界水により熱分解して分解ガスを生成する熱分解装置と、該熱分解装置で生成された分解ガスを処理してバイオ燃料を得るガス処理装置とを備えて構成したことを特徴とするオイルパームプランテーションシステム。
【請求項2】
上記熱分解装置の全部若しくは一部は、残物として固形燃料を生成することを特徴とする請求項1記載のオイルパームプランテーションシステム。
【請求項3】
上記熱分解装置で生成された分解ガス中の塩素を除去する塩素除去装置を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のオイルパームプランテーションシステム。
【請求項4】
上記熱分解装置は、行列状の多数の貫通孔を有した壁部で上開放の容器状に形成され上記副産物を収納する収納ケースと、該収納ケースを収容するとともに亜臨界水及び/または超臨界水を内部に注入する注入口及び内部で生成される分解ガスを排出する排出口とを備えた密閉型の処理槽とを備えて構成されることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載のオイルパームプランテーションシステム。
【請求項5】
上記熱分解装置は、アルコールを含む分解ガスを生成することを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載のオイルパームプランテーションシステム。
【請求項6】
上記有用物生産施設は、
上記副産物の一部を乾燥する乾燥装置と、上記副産物の2種以上を混合撹拌する混合撹拌装置を備え、
上記樹幹(OPT)を処理する第1処理ラインと、
上記茎(OPF茎)を処理する第2処理ラインと、
上記葉(OPF葉)を処理する第3処理ラインと、
上記空果房(EFB)を処理する第4処理ラインと、
上記果実繊維残渣(Fiber)を処理する第5処理ラインと、
上記排液(POME)及び上記第5処理ラインで処理された残物を処理する第6処理ラインとを備え、
上記第1処理ラインは、上記樹幹(OPT)を上記熱分解装置及びガス処理装置により処理するとともに上記熱分解装置により残物を固形燃料として生成し、
上記第2処理ラインは、上記茎(OPF茎)を上記乾燥装置で乾燥処理して固形燃料として生成し、
上記第3処理ラインは、上記葉(OPF葉)を上記熱分解装置及びガス処理装置により処理するとともに上記熱分解装置により残物を所定量の水分を含む粗飼料として生成し、
上記第4処理ラインは、上記空果房(EFB)を上記熱分解装置及びガス処理装置により処理するとともに上記熱分解装置により残物を固形燃料として生成し、
上記第5処理ラインは、上記果実繊維残渣(Fiber)を上記熱分解装置及びガス処理装置により処理するとともに上記熱分解装置により残物を乾燥繊維として生成し、
上記第6処理ラインは、上記排液(POME)と上記乾燥繊維とを上記混合撹拌装置により混合して飼料原料とし、該飼料原料を上記熱分解装置及びガス処理装置により処理するとともに上記熱分解装置により残物を濃縮した濃厚飼料として生成することを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載のオイルパームプランテーションシステム。
【請求項7】
上記熱分解装置の全部若しくは一部は、残物として固形燃料を生成し、上記臨界水生成装置を、上記有用物生産施設で得られたバイオ燃料及び固形燃料の全部または一部を燃料として亜臨界水及び/または超臨界水を生成する構成とし、上記有用物生産施設で得られたバイオ燃料及び固形燃料の全部または一部を燃料として発電する発電施設を備えたことを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載のオイルパームプランテーションシステム。
【請求項8】
上記有用物生産施設は、上記発電施設及び臨界水生成装置から排出される焼却灰を無害化して資源物質を生成する無害化装置を備えたことを特徴とする請求項7記載のオイルパームプランテーションシステム。
【請求項9】
上記オイルパームが伐採されて形成されるとともに所定年数経過後にオイルパームが植林される所定の広さの土地で畜産を行う牧場とすることを特徴とする請求項1乃至8何れかに記載のオイルパームプランテーションシステム。
【請求項10】
上記牧場で得られる畜産物を加工する畜産物加工施設を有したことを特徴とする請求項9記載のオイルパームプランテーションシステム。
【請求項11】
上記請求項9または10記載のオイルパームプランテーションシステムを備えたオイルパームプランテーションの敷地利用方法において、
上記オイルパームが伐採されて形成され牧場とする土地を、家畜の放牧地,牧草地,トウモロコシ栽培地,トウモロコシ栽培の休耕地の4つの異なる種類の利用地として受け持つことができる4つの区画に区分けし、1年目に各区画毎に夫々異なる利用地を受け持たせ、2年目から1年毎に各区画の利用地の受け持ちを順に変えて一巡させ、その後、上記オイルパームが伐採されて形成された別の土地に牧場を移転するとともに、移転して更地になった土地の全区画に新たなオイルパームを植林することを特徴とするプランテーションの敷地利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルパーム(アブラヤシ)を栽培するオイルパームプランテーションに係り、特に、オイルパームプランテーションから生じる副産物を利用してバイオ燃料等の有用物を生産する施設を有したオイルパームプランテーションシステムに関する。また、このシステムを備えたオイルパームプランテーションの敷地利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、東南アジアとりわけインドネシアやマレーシアにおいては、熱帯雨林地帯にオイルパームプランテーションが大規模に発達しており、オイルパームにおいては、果房(FFB)の採取期間は約25~30年であり、その年数に至ると伐採されることから、樹幹(OPT)及び茎葉(Oil Palm Frond:OPF)を有した古木のオイルパームが大量に生じ、また、収穫時や剪定時においても樹幹(OPT)から分離された茎葉(OPF)が大量に生じる。一方、収穫された果房(FFB)からパームオイルを生産する施設からは、空果房(EFB),排液(POME),果実繊維残渣(Fiber)等の大量の副産物が排出されている。従前は、これらの副産物はプランテーション内に放置され、あるいは、野焼きよる処理がおこなわれていたが、大量のダイオキシンや黒煙等で国際的な問題となり、現在は、一部ではあるがその有効利用が種々おこなわれている。
【0003】
従来、副産物の有効利用として、例えば、副産物からバイオ燃料を生産することが提案されている(例えば、特許第4385186号公報に掲載)。これは、オイルパームの樹幹(OPT)を用い、これを圧搾し、この圧搾粕を、アミラーゼ処理上有効な温度でアミラーゼ処理して、単糖を含む処理液を生成し、それから、処理液を発酵処理して、アルコールとしてエタノールを生成している。エタノールはバイオ燃料等として利用することができる。また、パームオイルを生産する施設から排出される副産物を利用する技術としては、例えば、排液(POME)と果実繊維残渣(Fiber)とを混合し、乾燥させて飼料にする技術が知られている(例えば、特許第5624229号公報掲載)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4385186号公報
【特許文献2】特許第5624229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のバイオ燃料を生産する技術においては、エタノールからなるアルコールをアミラーゼ処理工程及び発酵処理工程を経て生成しているので、長時間を有し、生産効率が悪いという問題があった。また、オイルパームの樹幹(OPT)を用いているので、副産物には種々あることから、汎用性に劣るという問題もある。
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、バイオ燃料の生産効率の向上を図ったオイルパームプランテーションシステム及びこれを備えたオイルパームプランテーションの敷地利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明のオイルパームプランテーションシステムは、オイルパームが植生する敷地内に、これらのオイルパームから採取した果房(FFB)からパームオイルを生産するパームオイル生産施設と、オイルパームの伐採や剪定時等に得られる樹幹(OPT),該樹幹(OPT)から分離された茎葉(OPF)の茎(OPF茎),該茎(OPF茎)から分離された葉(OPF葉),上記パームオイル生産施設でパームオイルを生産する際に生じる空果房(EFB),排液(POME),果実繊維残渣(Fiber)を含む副産物を利用して有用物を生産する有用物生産施設とを備えたオイルパームプランテーションシステムであって、
上記有用物生産施設は、上記副産物から選択され互いに異なる一種若しくは二種以上の副産物を処理する複数の処理ラインを備えるとともに、亜臨界水及び/または超臨界水を生成する臨界水生成装置を備え、
上記処理ラインの2以上を、処理する副産物を上記臨界水生成装置で生成した亜臨界水及び/または超臨界水により熱分解して分解ガスを生成する熱分解装置と、該熱分解装置で生成された分解ガスを処理してバイオ燃料を得るガス処理装置とを備えて構成している。
【0007】
本発明において、伐採したオイルパームにおいては、樹幹(OPT)から茎葉(OPF)を分離し、更に、茎葉(OPF)の茎(OPF茎)と葉(OPF葉)とを分離する。また、オイルパームの剪定の際や果実(FFB)の収穫の際に得られる茎葉(OPF)においても、茎(OPF茎)と葉(OPF葉)とを分離する。従って、本発明の副産物は、少なくとも、樹幹(OPT),茎(OPF茎),葉(OPF葉),空果房(EFB),排液(POME),果実繊維残渣(Fiber)を含む。
【0008】
本発明においては、各ライン毎に、処理する副産物の種類若しくはその組み合わせが互いに異なっている。また、掲げた種類の副産物全部が、熱分解装置及びガス処理装置を有した処理ラインによって処理されても良く、一部の副産物においては、熱分解装置及びガス処理装置を有しない処理ラインで処理されるようにしても良い。いずれにしろ、掲げた種類の副産物は処理されて有用物になる。
【0009】
熱分解装置及びガス処理装置を有した2以上の処理ラインは、互いに異なる一種の副産物を処理する処理ラインであっても良く、複数種の副産物を混合した互いに異なる混合物を処理する処理ラインであっても良く、また、一種の副産物を処理する処理ラインと複数種の副産物を混合して処理する処理ラインとが混在していても良い。また、熱分解装置及びガス処理装置を有した2以上の処理ラインは、夫々、別々の熱分解装置及びガス処理装置を用いて構成しても良く、他のラインで用いる熱分解装置及びガス処理装置を共用するようにしても良い。共用する場合には、時間をおいて対象とする副産物を別々に処理する。
【0010】
これにより、熱分解装置及びガス処理装置を有した2以上の処理ラインにおいて、副産物を処理するときは、副産物を必要に応じ細分化しあるいは複数を混合して熱分解装置に投入し、臨界水生成装置から熱分解装置に亜臨界水及び/または超臨界水を供給し副産物の熱分解を行う。熱分解装置においては分解ガスが生成され、ガス処理装置において生成された分解ガスからバイオ燃料を得る。バイオ燃料は、ガス化した状態で利用に供し、あるいは、冷却して液化して利用に供することができる。この場合、ガス化処理装置に例えば常圧蒸留器を備えて、これにより、例えば、バイオ重油,バイオ軽油,バイオジェット燃料,バイオ灯油,可燃ガス,凝縮水に種別することができる。また、ガス処理装置は、バイオアルコールを種別するように構成することもできる。
【0011】
従来においては、アルコールをアミラーゼ処理工程及び発酵処理工程を経て生成しているので、長時間を有し、生産効率が悪いが、本発明によれば、熱分解装置及びガス処理装置でバイオ燃料を得ることができるので、比較的短時間でバイオ燃料を得ることができ、生産効率を向上させることができる。また、複数の処理ラインにおいては、副産物から選択され互いに異なる副産物を処理するので、利用する副産物の種類が多くなることから、汎用性を向上させることができる。また、熱分解装置及びガス処理装置を有した2以上の処理ラインにおいてバイオ燃料を生成するので、副産物個々の性状等に合わせて処理することができることから、この点でも生産効率を向上させることができる。
【0012】
そして、必要に応じ、上記熱分解装置の全部若しくは一部は、残物として固形燃料を生成する構成としている。これにより、固形燃料を生成する熱分解装置においては、分解ガスからのバイオ燃料のみならず、バイオの固形燃料を生成するので、副産物の燃料としての生産効率を向上させることができる。尚、熱分解装置の一部を固形燃料を生成するように構成した場合、他の熱分解装置は、例えば、飼料や肥料など別の用途のものを生成するように構成することができる。
【0013】
また、必要に応じ、上記熱分解装置で生成された分解ガス中の塩素を除去する塩素除去装置を備えた構成としている。有毒ガスを除去できるので、バイオ燃料の品位を向上させることができる。特に、空果房(EFB)の場合は、高含水(約60重量%)であり、更に、塩素(0.47重量%)を含んでいるので、塩素の発生があるが、本構成によれば、これを除去することができるので、良質で安全なバイオマス燃料とすることができる。
【0014】
更に、必要に応じ、上記熱分解装置は、行列状の多数の貫通孔を有した壁部で上開放の容器状に形成され上記副産物を収納する収納ケースと、該収納ケースを収容するとともに亜臨界水及び/または超臨界水を内部に注入する注入口及び内部で生成される分解ガスを排出する排出口とを備えた密閉型の処理槽とを備えて構成される。収納ケースは、例えば、金属製の網や、パンチングメタルで構成することができる。これにより、副産物を容器に入れて処理するので、副産物の出し入れを容易にすることができるとともに、残物の回収を容易にすることができる。また、収納ケースには行列状の多数の貫通孔が形成されているので、副産物と亜臨界水及び/または超臨界水との接触性が良くなり、副産物の熱分解効率を向上させることができる。
【0015】
また、必要に応じ、上記熱分解装置は、アルコールを含む分解ガスを生成する構成としている。バイオアルコールを生成することができる。樹幹(OPT)や茎葉(OPF)の場合、グルコース,フルクトース,スクロース,アミロース等の糖類の成分量が比較的高いことから、熱分解によって、例えば、メタノール,エタノール,イソプロパノールをはじめ、芳香族アルコール等の種々のアルコールを生成することができる。
【0016】
また、必要に応じ、上記有用物生産施設は、
上記副産物の一部を乾燥する乾燥装置と、上記副産物の2種以上を混合撹拌する混合撹拌装置を備え、
上記樹幹(OPT)を処理する第1処理ラインと、
上記茎(OPF茎)を処理する第2処理ラインと、
上記葉(OPF葉)を処理する第3処理ラインと、
上記空果房(EFB)を処理する第4処理ラインと、
上記果実繊維残渣(Fiber)を処理する第5処理ラインと、
上記排液(POME)及び上記第5処理ラインで処理された残物を処理する第6処理ラインとを備え、
上記第1処理ラインは、上記樹幹(OPT)を上記熱分解装置及びガス処理装置により処理するとともに上記熱分解装置により残物を固形燃料として生成し、
上記第2処理ラインは、上記茎(OPF茎)を上記乾燥装置で乾燥処理して固形燃料として生成し、
上記第3処理ラインは、上記葉(OPF葉)を上記熱分解装置及びガス処理装置により処理するとともに上記熱分解装置により残物を所定量の水分を含む粗飼料として生成し、
上記第4処理ラインは、上記空果房(EFB)を上記熱分解装置及びガス処理装置により処理するとともに上記熱分解装置により残物を固形燃料として生成し、
上記第5処理ラインは、上記果実繊維残渣(Fiber)を上記熱分解装置及びガス処理装置により処理するとともに上記熱分解装置により残物を乾燥繊維として生成し、
上記第6処理ラインは、上記排液(POME)と上記乾燥繊維とを上記混合撹拌装置により混合して飼料原料とし、該飼料原料を上記熱分解装置及びガス処理装置により処理するとともに上記熱分解装置により残物を濃縮した濃厚飼料として生成する構成としている。これにより、副産物個々の性状等に合わせて処理することができることから、確実に生産効率を向上させることができる。
【0017】
そしてまた、必要に応じ、上記熱分解装置の全部若しくは一部は、残物として固形燃料を生成し、上記臨界水生成装置を、上記有用物生産施設で得られたバイオ燃料及び固形燃料の全部または一部を燃料として亜臨界水及び/または超臨界水を生成する構成とし、上記有用物生産施設で得られたバイオ燃料及び固形燃料の全部または一部を燃料として発電する発電施設を備えた構成としている。プランテーション内に電力設備を持って、パームオイル生産施設や有用物生産施設に電力を供給することができるとともに、有用物生産施設で得られたバイオ燃料及び固形燃料を使用するので、二系統の熱源を有しており、外部からの電力配電線を有しなくても自立型電力システムを構築して、電力供給効率を向上させることができる。
【0018】
この場合、上記有用物生産施設は、上記発電施設及び臨界水生成装置から排出される焼却灰を無害化して資源物質を生成する無害化装置を備えたことが有効である。無害化装置は、上記の熱分解装置を用い、焼却灰を熱分解装置に投入し、臨界水生成装置から熱分解装置に亜臨界水及び/または超臨界水を供給して、焼却灰を熱分解することにより無害化する構成とすることができる。発電施設及び臨界水生成装置から排出される焼却灰に含まれる可能性のあるダイオキシンなどを除去することができる。また、例えば、焼却灰に含まれる六価クロムを三価クロムにすることができる。また、資源として、リン酸,マグネシウム,マンガン,ニッケル,パラジウム,ルビジウム等の単体若しくはこれらの酸化物等として生成することができる。
【0019】
また、必要に応じ、上記オイルパームが伐採されて形成されるとともに所定年数経過後にオイルパームが植林される所定の広さの土地を畜産を行う牧場とする構成としている。これにより、オイルパームにおいては、果房(FFB)の採取間は25~30年であることから、その年数に至ると伐採される。そのため、例えば、この伐採地を所定年数牧場とすることができる。牧場においては、家畜を放牧するので家畜の糞尿が生じ、また、上記の無害化装置で無害化した焼却灰ミネラル,塩素処理装置で回収した塩素を中和した塩化ミネラル,熱分解装置から発生する凝縮水汚泥を混合撹拌発酵させることにより肥料を生成することができることから、この肥料を散布することにより、土地を肥沃化することができる。そして、所定年数経過後に、この肥沃化した土地に、オイルパームを植林することができる。このため、オイルパームの連作害を防止し、収量の高いオイルパームを植生させることができる。
【0020】
この場合、上記牧場で得られる畜産物を加工する畜産物加工施設を有したことが有効である。
【0021】
また、上記課題を解決するための本発明のオイルパームプランテーションの敷地利用方法は、上記のオイルパームプランテーションシステムを備えたオイルパームプランテーションの敷地利用方法において、
上記オイルパームが伐採されて形成され牧場とする土地を、家畜の放牧地,牧草地,トウモロコシ栽培地,トウモロコシ栽培の休耕地の4つの異なる種類の利用地として受け持つことができる4つの区画に区分けし、1年目に各区画毎に夫々異なる利用地を受け持たせ、2年目から1年毎に各区画の利用地の受け持ちを順に変えて一巡させ、その後、上記オイルパームが伐採されて形成された別の土地に牧場を移転するとともに、移転して更地になった土地の全区画に新たなオイルパームを植林する構成としている。
【0022】
これにより、上記のバイオ燃料の生産効率の向上を図ることができることに加え、古木を伐採した土地を牧場にするので、牧場においては、家畜を放牧することから、家畜の糞尿等によって土地が肥沃化する。その後、この肥沃化した土地に、オイルパームを植林するので、オイルパームの連作害を防止し、収量の高いオイルパームを植生させることができる。しかも、牧場においては、4つの各区画において、夫々、家畜の放牧地,牧草地,トウモロコシ栽培地,トウモロコシ栽培の休耕地を1年毎に受け持つので、牧草やトウモロコシの連作害も防止しつつ、収穫物を牧場運営に利用することができ、そのため、牧場運営を円滑に行わせることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、熱分解装置及びガス処理装置でバイオ燃料を得ることができるので、比較的短時間でバイオ燃料を得ることができ、生産効率を向上させることができる。また、複数の処理ラインにおいては、夫々、互いに異なる副産物または数種の組み合わせを処理するので、利用する副産物の種類が多くなることから、汎用性を向上させることができる。また、熱分解装置及びガス処理装置を有した2以上の処理ラインにおいてバイオ燃料を生成するので、副産物個々の性状等に合わせて処理することができることから、この点でも生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態に係るオイルパームプランテーションシステムを示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るオイルパームプランテーションシステムにおいて、副産物を処理する各処理ラインを示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るオイルパームプランテーションシステムにおいて、バイオ燃料を生成する処理ラインの構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るオイルパームプランテーションシステムにおいて、臨界水生成装置を乾燥装置とともに示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るオイルパームプランテーションシステムにおいて、バイオ燃料を生成する処理ラインの熱分解装置を示し、(a)は横断面図、(b)は側面断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るオイルパームプランテーションシステムにおいて、ガス処理装置の構成例を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るオイルパームプランテーションの敷地利用方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係るオイルパームプランテーションシステム及びオイルパームプランテーションの敷地利用方法について詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るオイルパームプランテーションシステムSは、オイルパーム(アブラヤシ)が植生する敷地内に、これらのオイルパームから採取した果房(FFB)からパームオイルを生産する周知のパームオイル生産施設Saと、オイルパームの副産物を利用してバイオ燃料及び固形燃料を含む有用物を生産する有用物生産施設Sbとを備えている。
【0026】
プランテーションシステムSでのオイルパームの栽培においては、古木の伐採時には、樹幹(OPT)及びこの樹幹(OPT)から延びる茎葉(OPF)が多量に生じる。茎葉(OPF)は、樹幹(OPT)から分離され、更に、茎葉(OPF)においては、茎(OPF茎)から葉(OPF葉)を分離する。また、オイルパームの剪定時や果房(FFB)の採取時においても、茎葉(OPF)が生じるので、同様に、茎(OPF茎)から葉(OPF葉)を分離する。そしてまた、パームオイル生産施設Saにおいては、パームオイルを生産する際に生じる空果房(EFB),排液(POME),果実繊維残渣(Fiber)が生じる。従って、プランテーションにおいては、少なくとも、樹幹(OPT),茎(OPF茎),葉(OPF葉),空果房(EFB),排液(POME),果実繊維残渣(Fiber)を含む副産物が多量に生じる。
【0027】
実施の形態に係るオイルパームプランテーションシステムSの有用物生産施設Sbにおいては、これらの副産物を利用して有用物を生産する。詳しくは、有用物生産施設Sbは、
図2及び
図3に示すように、副産物から選択され互いに異なる一種若しくは二種以上の副産物を処理する複数の処理ライン(実施の形態では、第1処理ラインL1乃至第6処理ラインL6)を備えるとともに、亜臨界水及び/または超臨界水を生成する臨界水生成装置1を備えている。処理ラインの2以上(実施の形態では、第1処理ラインL1,第3処理ラインL3乃至第6処理ラインL6)は、
図2に示すように、処理する副産物を臨界水生成装置1で生成した亜臨界水及び/または超臨界水により熱分解してアルコールを含む分解ガスを生成する熱分解装置10と、熱分解装置10で生成された分解ガスを処理してバイオ燃料を得るガス処理装置20とを備えて構成されている。
【0028】
更に、有用物生産施設Sbは、熱分解装置10で生成された分解ガス中の塩素を除去する塩素除去装置30を備えている。塩素除去装置30としては、例えば、吸着法や吸収法による周知の装置が用いられる。回収した塩素はアルカリを用いて中和することができる。また、副産物の一部を乾燥する乾燥装置40と、副産物の2種以上を混合撹拌する混合撹拌装置50とを備えている。
【0029】
臨界水生成装置1は、
図4に示すように、後述のバイオ燃料及び/または固形燃料を燃焼する燃焼炉2と、燃焼炉2で生成された燃焼ガスによって水蒸気を生成するボイラ3と、ボイラ3の水蒸気を亜臨界水及び/または超臨界水にする生成機4とを備えて構成されている。生成機4は、後述のバイオ可燃ガス及び固形燃料を燃焼する加熱炉5を備えており、ボイラ3からの排ガスの熱及び加熱炉5で得られる熱を用いて、水蒸気を加熱して、例えば600℃~700℃の亜臨界水及び/または超臨界水を生成する。また、生成機4からの排ガスは、乾燥装置40の乾燥用熱源として用いられる。
図4に示すように、生成機4から乾燥装置40に至る排ガスの経路には、サイクロン6、塩素除去装置7、及び、これにより塩素が除去された排ガスの温度を200℃~250℃に調整して乾燥装置40に吹き込む温度調整送風機8が設けられている。また、乾燥装置40の出口側の排ガスの経路には、サイクロン41、排ガスを吸引,排気するファン42、及び、煙突43が設けられている。尚、乾燥装置40は、例えば、後述の発電施設Scからの排熱を利用するように構成しても良い。また、熱分解装置10を乾燥用に用いることもできる。
【0030】
熱分解装置10は、
図5に示すように、行列状の多数の貫通孔11を有した壁部で上開放の容器状に形成され副産物を収納する収納ケース12と、収納ケース12を複数収容するとともに亜臨界水及び/または超臨界水を内部に注入する注入口13及び内部で生成される分解ガスを排出する排出口14とを備えた密閉型の処理槽15とを備えて構成されている。塩素除去装置30は、熱分解装置10の排出口14に接続された排出管16に介装されている。符号17は、収納ケース12を搬送するコンベアである。副産物は、収納ケース12に入れて処理するので、副産物の出し入れを容易にすることができるとともに、残物の回収を容易にすることができる。また、収納ケース12には行列状の多数の貫通孔11が形成されているので、副産物と亜臨界水及び/または超臨界水との接触性が良くなり、副産物の熱分解効率を向上させることができる。
【0031】
熱分解装置10は、供給する亜臨界水及び/または超臨界水の温度や圧力調整により、分解ガス成分や残物の性状を調整して生成しうる。これにより、熱分解装置10の全部若しくは一部は、残物として固形燃料を生成する構成としている。熱分解装置10の一部を固形燃料を生成するように構成した場合、他の熱分解装置10は、例えば、飼料や肥料など別の用途のものを生成するように構成することができる。実施の形態では、熱分解装置10は、固形燃料を生成するものと、飼料を生成するものとの二種類が用意される。
【0032】
また、熱分解装置10は、アルコールを含む分解ガスを生成することができる。樹幹(OPT)や茎葉(OPF)の場合、グルコース,フルクトース,スクロース,アミロース等の糖類の成分量が比較的高いことから、熱分解によって、例えば、メタノール,エタノール,イソプロパノールをはじめ、芳香族アルコール等の種々のアルコールを生成することができる。
【0033】
また、ガス処理装置20は、例えば、分解ガスを冷却して、液化バイオ燃料,可燃ガス,凝縮水に種別して取り出すことができる。また、
図6に示すように、常圧蒸留器を備えて、これにより、例えば、バイオ重油,バイオ軽油,バイオジェット燃料,バイオ灯油,可燃ガス,凝縮水に種別することができる。必要に応じ、ガス処理装置20は、バイオアルコールを抽出するように構成することもできる。
【0034】
次に、処理ラインについて説明する。実施の形態では、
図2に示すように、樹幹(OPT)を処理する第1処理ラインL1と、茎(OPF茎)を処理する第2処理ラインL2と、葉(OPF葉)を処理する第3処理ラインL3と、空果房(EFB)を処理する第4処理ラインL4と、果実繊維残渣(Fiber)を処理する第5処理ラインL5と、排液(POME)及び第5処理ラインL5で処理された残物を処理する第6処理ラインL6とを備えて構成されている。
【0035】
第1処理ラインL1は、樹幹(OPT)を熱分解装置10及びガス処理装置20により処理するとともに熱分解装置10により残物を固形燃料(炭化物)として生成する。樹幹(OPT)は、破砕装置(図示せず)により、適宜の大きさに細断される。熱分解装置10においては、例えば、450℃~500℃に設定し、樹幹(OPT)を約6時間処理する。
【0036】
第2処理ラインL2は、茎(OPF茎)を排熱型の乾燥装置40で乾燥処理して固形燃料として生成する。
【0037】
第3処理ラインL3は、葉(OPF葉)を熱分解装置10及びガス処理装置20により処理するとともに熱分解装置10により残物を所定水分量(例えば13重量%)の粗飼料として生成する。熱分解装置10においては、例えば、400℃~500℃に設定し、葉(OPF葉)を約2時間処理する。
【0038】
第4処理ラインL4は、空果房(EFB)を熱分解装置10及びガス処理装置20により処理するとともに熱分解装置10により残物を所定水分量(例えば35重量%)の固形燃料として生成する。熱分解装置10においては、例えば、400℃~500℃に設定し、空果房(EFB)を約6時間処理する。
【0039】
第5処理ラインL5は、果実繊維残渣(Fiber)を熱分解装置10により処理し、この熱分解装置10により残物を乾燥繊維として生成する。この熱分解装置10においては、例えば、400℃~450℃に設定し、果実繊維残渣(Fiber)を約3時間処理する。
【0040】
第6処理ラインL6は、排液(POME)と第5処理ラインL5で得られた乾燥繊維(Fiber)とを混合撹拌装置50により混合して所定水分量(例えば84重量%)の飼料原料とする。その後、飼料原料を熱分解装置10及びガス処理装置20により処理するとともに熱分解装置10により残物を濃縮した所定水分量(例えば13重量%)の濃厚飼料として生成する。熱分解装置10においては、例えば、200℃~350℃に設定し、飼料原料を約6時間処理する。
【0041】
また、
図1に示すように、オイルパームが植生する敷地内には、有用物生産施設Sbで得られたバイオ燃料及び固形燃料の全部または一部を燃料として発電する発電施設Scが備えられている。発電施設Scにおいては、蒸気タービン型の発電機、及び、バイオ燃料で発電するディーゼル発電機が備えられている。また、有用物生産施設Sbは、発電施設Sc及び臨界水生成装置1から排出される焼却灰を無害化して資源物質を生成する無害化装置(図示せず)を備えている。無害化装置は、例えば、上記の熱分解装置10を用い、焼却灰を熱分解装置10に投入し、臨界水生成装置1から熱分解装置10に亜臨界水及び/または超臨界水を供給して、焼却灰を熱分解することにより無害化する構成とすることができる。
【0042】
更に、オイルパームが植生する敷地内においては、牧場Fが備えられている。オイルパームプランテーションにおいては、オイルパームの果房(FFB)の採取間は25~30年程度であり、そのため、その年数に至るとオイルパームを伐採し、伐採した土地に、新たなオイルパームを植林する。実施の形態においては、オイルパームの伐採を、敷地を所定の広さに区分けして順に行うようにしている。これにより、オイルパームが伐採されて形成されるとともに所定年数経過後にオイルパームが植林される所定の広さの土地(以下「伐採地E」という)が形成される。牧場Fは、この伐採地Eに設けられる。そして、植林は、伐採後即座に行うのではなく、所定期間牧場Fとして使用し、その後に植林をする。また、敷地内には、牧場Fで得られる畜産物を加工する畜産物加工施設Sdが備えられている。
【0043】
従って、実施の形態に係るオイルパームプランテーションシステムSによれば、オイルパームの伐採時には、伐採されたオイルパームは、樹幹(OPT)と茎葉(OPF)に分離されるとともに、茎葉(OPF)は、茎(OPF茎)と葉(OPF葉)に分離され、副産物となる。また、オイルパームの剪定の際や果実(FFB)の収穫の際に生じた茎葉(OPF)も、茎(OPF茎)と葉(OPF葉)とに分離され、副産物となる。一方、パームオイル生産施設Saからは、空果房(EFB),排液(POME),果実繊維残渣(Fiber)が副産物として生じる。
【0044】
そして、これらの副産物は、種類毎に第1処理ラインL1乃至第6処理ラインL6において処理され、第1処理ラインL1からは、バイオ燃料と固形燃料(炭化物)が生成され、第2処理ラインL2からは、固形燃料(茎)が生成され、第3処理ラインL3からは、バイオ燃料と粗飼料が生成され、第4処理ラインL4からは、バイオ燃料と固形燃料(空果房)が生成され、第5処理ラインL5からは、バイオ燃料と乾燥繊維が生成され、第6処理ラインL6からは、バイオ燃料と濃厚飼料が生成される。これにより、固形燃料を生成する熱分解装置10においては、分解ガスからのバイオ燃料のみならず、バイオの固形燃料を生成するので、副産物の燃料としての生産効率を向上させることができる。ガス化処理装置20においては、例えば常圧蒸留器を備えて、これにより、例えば、バイオ重油,バイオ軽油,バイオジェット燃料,バイオ灯油,バイオアルコール,可燃ガス,凝縮水に種別することができる。
【0045】
また、第1処理ラインL1,第3処理ラインL3乃至第6処理ラインL6においては、塩素除去装置30により、熱分解装置10で生成された分解ガス中の塩素を除去することができるので、バイオ燃料の品位を向上させることができる。特に、空果房(EFB)の場合は、高含水(約60重量%)であり、更に、塩素(0.47重量%)を含んでいるので、塩素の発生があるが、本構成によれば、これを除去することができるので、良質で安全なバイオマス燃料とすることができる。
【0046】
この場合、従来においては、アルコールをアミラーゼ処理工程及び発酵処理工程を経て生成しているので、長時間を有し、生産効率が悪いが、熱分解装置10及びガス処理装置20でバイオ燃料を得ることができるので、比較的短時間でバイオ燃料を得ることができ、生産効率を向上させることができる。また、複数の処理ラインにおいては、副産物から選択され互いに異なる副産物を処理するので、利用する副産物の種類が多くなることから、汎用性を向上させることができる。また、熱分解装置10及びガス処理装置20を有した2以上の処理ラインにおいてバイオ燃料を生成するので、副産物個々の性状等に合わせて処理することができることから、この点でも生産効率を向上させることができる。
【0047】
粗飼料や濃厚飼料は、牧場Fの家畜に供することができる。また、バイオ燃料及び固形燃料の全部若しくは一部は発電施設Sc及び臨界水生成装置1の燃料に供することができる。プランテーション内に電力設備を持って、パームオイル生産施設Saや有用物生産施設Sbに電力を供給することができるとともに、有用物生産施設Sbで得られたバイオ燃料及び固形燃料を使用するので、電力供給効率を向上させることができる。
【0048】
また、有用物生産施設Sbにおいて、無害化装置は、発電施設Sc及び臨界水生成装置1から排出される焼却灰を無害化して資源物質を生成する。無害化装置は、例えば、上記の熱分解装置10を用い、焼却灰を熱分解装置10に投入し、臨界水生成装置1から熱分解装置10に亜臨界水及び/または超臨界水を供給して、焼却灰を熱分解することにより無害化する構成とすることができる。これにより、発電施設Scから排出される焼却灰に含まれる可能性のあるダイオキシンなどを除去することができる。また、例えば、焼却灰に含まれる六価クロムを三価クロムにすることができる。また、資源として、リン酸,マグネシウム,マンガン,ニッケル,パラジウム,ルビジウム等の単体若しくはこれらの酸化物等として生成することができる。
【0049】
次に、実施の形態に係るオイルパームプランテーションの敷地利用方法について説明する。この敷地利用方法は、実施の形態に係るオイルパームプランテーションシステムSを備えたオイルパームプランテーションの敷地利用方法であり、
図1及び
図7に示すように、オイルパームが伐採されて形成され牧場Fとする伐採地Eを、家畜の放牧地,牧草地,トウモロコシ栽培地,トウモロコシ栽培の休耕地の4つの異なる種類の利用地として受け持つことができる4つの区画(第1区画E1,第2区画E2,第3区画E3,第4区画E4)に区分けし、1年目に各区画毎に夫々異なる利用地を受け持たせ、2年目から1年毎に各区画の利用地の受け持ちを順に変えて一巡させ、その後、オイルパームが伐採されて形成された別の伐採地Eに牧場Fを移転するとともに、移転して更地になった土地の全区画(E1~E4)に新たなオイルパームを植林するようにしている。
【0050】
詳しくは、1年目は、
図7(a)に示すように、第1区画E1を家畜の放牧地とし、第2区画E2を牧草地とし、第3区画E3をトウモロコシ栽培地とし、第4区画E4を休耕地としている。2年目は、
図7(b)に示すように、第1区画E1を家畜の休耕地とし、第2区画E2を放牧地とし、第3区画E3を牧草地とし、第4区画E4をトウモロコシ栽培地としている。
図7(c)に示すように、3年目は、第1区画E1をトウモロコシ栽培地とし、第2区画E2を休耕地とし、第3区画E3を放牧地とし、第4区画E4を牧草地としている。
図7(d)に示すように、4年目は、第1区画E1を牧草地とし、第2区画E2をトウモロコシ栽培地とし、第3区画E3を休耕地とし、第4区画E4を放牧地としている。5年目に、全区画に新たなオイルパームを植林する。
【0051】
これにより、古木を伐採した土地を牧場Fにするので、牧場Fにおいては、家畜を放牧することから、家畜の糞尿等によって土地が肥沃化する。その後、この肥沃化した土地に、オイルパームを植林するので、オイルパームの連作害を防止し、収量の高いオイルパームを植生させることができる。しかも、牧場Fにおいては、4つの各区画において、夫々、家畜の放牧地,牧草地,トウモロコシ栽培地,トウモロコシ栽培の休耕地を1年毎に受け持つので、牧草やトウモロコシの連作害も防止しつつ、収穫物を牧場運営に利用することができ、そのため、牧場運営を円滑に行わせることができる。
【0052】
尚、上記の実施の形態においては、副産物を第1処理ラインL1乃至第6処理ラインL6において処理するようにしたが、かならずしもこれに限定されるものではなく、各ラインの処理内容を変更し、あるいは、別のラインを設ける等、適宜変更して差支えない。本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
東南アジアを中心にした熱帯雨林の基幹産業であるプランテーションと、パームオイル生産工場の持続可能な経済活動は重要である。本発明によれば、オイルパーム由来の未利用資源(OPT・OPF・EFB・FIBER)に含まれる塩素を分解反応で除去して、バイオ重油,バイオ軽油,バイオジェット燃料,バイオ灯油,バイオアルコール,炭化OPT(水分5重量%),燃料OPF茎(水分35重量%),燃料EFB(水分35重量%)にして、バイオマス発電燃料やバイオマス資源化燃料にすることができ、例えば、ジェット燃料等の確保により持続可能な航空運輸業にも寄与することができる。また、オイルパーム産業,畜産,食品加工産業との連携を図ることができ、更に、プランテーションの土壌再生と、バイオマス発電による持続可能な地域経済活性化を達成することができる。更にまた、オイルパーム産業からのメタンガス発生抑制による二酸化炭素の排出を削減し、地球温暖化防止に多大に寄与することができる。
【符号の説明】
【0054】
S オイルパームプランテーションシステム
Sa パームオイル生産施設
Sb 有用物生産施設
Sc 発電施設
Sd 畜産物加工施設
F 牧場
E 伐採地
E1 第1区画
E2 第2区画
E3 第3区画
E4 第4区画
FFB 果房
OPT 樹幹
OPF 茎葉
OPF茎 茎
OPF葉 葉
EFB 空果房
POME 排液
Fiber 果実繊維残渣
L1 第1処理ライン
L2 第2処理ライン
L3 第3処理ライン
L4 第4処理ライン
L5 第5処理ライン
L6 第6処理ライン
1 臨界水生成装置
2 燃焼炉
3 ボイラ
4 生成機
5 加熱炉
6 サイクロン
7 塩素除去装置
8 温度調整送風機
10 熱分解装置
11 貫通孔
12 収納ケース
13 注入口
14 排出口
15 処理槽
16 排出管
17 コンベア
20 ガス処理装置
30 塩素除去装置
40 乾燥装置
41 サイクロン
42 ファン
43 煙突
50 混合撹拌装置