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  • 特開-エレベータの放送調整装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158175
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】エレベータの放送調整装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20221006BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B66B3/00 F
B66B11/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062905
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】濱口 萌子
【テーマコード(参考)】
3F303
3F306
【Fターム(参考)】
3F303DB01
3F303DB21
3F303DB26
3F303DC23
3F306CB05
3F306CB35
3F306CB55
(57)【要約】
【課題】かご内で流れる音声案内や音楽を適切に調整できるエレベータの放送調整装置を提供する。
【解決手段】本発明は、かごの昇降距離及びかごの速度の少なくとも一方に応じて、かご内における放送音を変化させる音調整部を備える。例えば、音調整部は、前記かごの昇降距離及びかごの速度の少なくとも一方に応じて、前記かご内における放送音の大きさ、放送音の周波数、音声案内の速度、及び、放送内容の少なくとも一つを変化させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごの昇降距離及びかごの速度の少なくとも一方に応じて、かご内における放送音を変化させる音調整部を備える、エレベータの放送調整装置。
【請求項2】
前記音調整部は、前記かごの昇降距離及びかごの速度の少なくとも一方に応じて、前記かご内における放送音の大きさ、放送音の周波数、音声案内の速度、音声案内の放送回数、及び、放送内容の少なくとも一つを変化させる、請求項1に記載のエレベータの放送調整装置。
【請求項3】
前記音調整部は、前記かごの昇降距離及びかごの速度の少なくとも一方が所定値以上である場合、前記かご内の放送の少なくとも一部を停止する所定期間を設定する、請求項1又は請求項2に記載のエレベータの放送調整装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のエレベータの放送調整装置と、
前記かご内の気圧を調整可能な気圧調整装置と、を備え、
前記音調整部は、前記気圧調整装置と連動して、前記かご内の放送音を変化させる、エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのかご内で流れる音声案内や音楽の音量等を制御する放送調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータのかご内で流れるBGM(背景音楽)の音量を調整する音量調整装置が知られている(特許文献1)。この音量調整装置は、かご内における音の聴こえ方に影響する情報(かごの定員数、かごの床面積や天井までの高さ、かご内のスピーカーの位置、及び、かごドアの開閉状態等)に応じて、かご内のBGMの音量を調整する構成となっている。該装置によれば、かご内のBGMの音量が、利用者にとって快適な大きさとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-222127公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物の高層化に伴い、かごが走行している際に気圧が大きく変化し、かご内の利用者に耳詰まりが生じる場合がある。利用者は、耳詰まりが生じると音が聞こえづらくなるため、かご内の音声案内が利用者に適切に伝わらないという問題が生じる。
【0005】
本発明は、かご内で流れる音声案内や音楽を適切に調整できるエレベータの放送調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエレベータの放送調整装置は、かごの昇降距離及びかごの速度の少なくとも一方に応じて、かご内における放送音を変化させる音調整部を備える。
【0007】
かかる構成によれば、かごの昇降距離やかごの速度等のかごの走行状態に応じてかご内で流れる音声案内や音楽といった放送音が変化するため、利用者に耳詰まりが生じたとしても、音声案内や音楽を利用者に適切に伝えることができる。
【0008】
前記放送調整装置では、前記音調整部は、前記かごの昇降距離及びかごの速度の少なくとも一方に応じて、前記かご内における放送音の大きさ、放送音の周波数、音声案内の速度、及び、音声案内の放送回数、放送内容の少なくとも一つを変化させてもよい。
【0009】
かかる構成によれば、かごの走行状態に応じてかご内の音声案内や音楽の音量、放送音の周波数、音声案内の速度、音声案内の放送回数、放送内容(音声案内や音楽の内容自体)を利用者にとって適切なものとできる。
【0010】
前記放送調整装置では、前記音調整部は、前記かごの昇降距離及びかごの速度の少なくとも一方が所定値以上である場合、前記かご内の放送の少なくとも一部を停止する所定期間を設定してもよい。
【0011】
かかる構成によれば、利用者に耳詰まりが生じやすい場合に、音声案内や音楽の放送を停止して、利用者に放送が正確に聞き取れないことによるストレスを与えることを防ぐことができる。
【0012】
本発明のエレベータは、前記放送調整装置と、前記かご内の気圧を調整可能な気圧調整装置と、を備え、前記音調整部は、前記気圧調整装置と連動して、前記かご内の放送音を変化させる。
【0013】
かかる構成によれば、かごの走行状態に加えて、かご内の気圧に応じてかご内で流れる音声案内や音楽といった放送音が変化するため、利用者に耳詰まりが生じたとしても、音声案内や音楽を利用者に適切に伝えることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上より、本発明によれば、かご内で流れる音声案内や音楽を適切に調整できるエレベータの放送調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態に係る放送調整装置が設けられたエレベータの構成を示すブロック図である。
図2図2は、前記放送調整装置の処理を説明するためのフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図1及び図2を参照しつつ説明する。本実施形態に係る放送調整装置は、かご内の放送音声を調整する装置である。放送調整装置を備えるエレベータは、例えば、図1に示すように、かご1と、かご1の運転を制御する制御盤2と、を備える。かご1は、建物内を複数の階床に跨って上下方向に延びる昇降路を昇降するかごである。
【0017】
制御盤2は、乗場呼び(例えば、利用者が建物のいずれかの階床の乗場で乗場呼びボタンを押すこと)やかご呼び(例えば、かご1に乗り込んだ利用者がかご内に設けられた行先階ボタンを押して行先階を登録すること)に応じて、かご1の走行や停止を制御する。本実施形態では、制御盤2は、乗場呼びやかご呼びに関する情報を記憶する呼び情報記憶部20と、エレベータの異常発生時等に行う発報に関する情報を記憶する発報情報記憶部21と、を備える。また、制御盤2は、発報の必要が生じたときに、発報指令を放送調整装置5(具体的には、後述するアナウンス制御部70)に出力する。発報指令は、発報の種類(例えば、地震や火災等)に関する情報を含む。
【0018】
呼び情報記憶部20は、乗場呼びが入ると、乗場呼び階床情報(乗場呼びが入った階床に関する情報)を記憶する。また、呼び情報記憶部20は、かご呼びが入ると、行先階情報(かご呼びで登録された行先階に関する情報)を記憶する。
【0019】
発報情報記憶部21は、発報の必要が生じたときに、発報に関する情報である発報情報を記憶する。発報情報記憶部21は、例えば、エレベータを監視する監視センターから地震が発生した旨の発報を受けてから解除の発報を受けるまで、発報情報として「地震発生情報」を記憶する。
【0020】
かご1は、利用者が乗り込むかご本体に加えて、かご1内に音声アナウンスを行うアナウンス装置3、及び、かご1内に音声アナウンスを放送するスピーカー6等、を備える。
【0021】
アナウンス装置3は、音声アナウンスのデータである音声データを記憶する音声データ記憶部4と、音声アナウンスの内容や音量等の制御を行う放送調整装置5と、を備える。なお、アナウンス装置3は、例えば、CPU、このCPUによって実行される種々のプログラムやその実行に必要なデータ等を予め記憶するROMやEEPROM等の不揮発性記憶素子、このCPUのいわゆるワーキングメモリとなるRAM等の揮発性記憶素子およびその周辺回路等を備えた基盤やマイクロコンピュータ等によって構成されている。
【0022】
音声データ記憶部4は、音声データとして、発報に関する音声アナウンス(例えば、「地震が発生しました」といった音声アナウンス)や、かご1の到着階を報知する音声アナウンス、かごドアの開閉を報知する音声アナウンス等を記憶している。
【0023】
放送調整装置5は、かご1の昇降距離やかご1の速度に応じて、かご1内における放送音を自動調整する装置である。また、放送調整装置5は、かご1の昇降距離及びかご1の速度の少なくとも一方に応じて、かご1内における放送音を変化させる音調整部7を備える。さらに、放送調整装置5は、音声アナウンスのかご1内の放送音量に関する情報を決定する音量データ決定部8を備える。なお、かご1の昇降距離とは、かご1の走行一回あたり(例えば、かごドアが戸開してから、かご1が上昇又は下降した後、かごドアが戸開するまで)の昇降距離である。
【0024】
音量データ決定部8は、かご1内の放送音量に関する情報を作成する音量決定部80と、かご1の昇降距離を決定する昇降距離決定部81と、かご1の昇降距離に対応するかご1の速度を記憶している定格速度記憶部82と、かご1の速度を決定する速度記憶部83と、を備える。
【0025】
昇降距離決定部81は、例えば、放送調整装置5が設置されるかご1が所定の階床間を走行する際の昇降距離を複数記憶している。具体的に、昇降距離決定部81は、異なる階床間毎に、これに対応するかご1の昇降距離を記憶している。より具体的に、昇降距離決定部81は、一階と二十階との間のかご1の昇降距離が80mであり、一階と三十階との間のかご1の昇降距離が120mである等の情報を記憶している。なお、かご1の昇降距離が、約40m~50m以上である場合、かご1の昇降に伴い5hPa以上の気圧変化が生じることにより、耳詰まりが生じるおそれがある。
【0026】
定格速度記憶部82は、例えば、エレベータ毎に定まった値を記憶している。具体的には、定格速度記憶部82は、定格速度毎分300mを記憶している。
【0027】
速度記憶部83は、例えば、昇降距離毎のかご1の速度(具体的には、かご1の最大速度)を複数記憶している。具体的には、速度記憶部83は、かご1の昇降距離20mに対して、かご1の最大速度毎分100mを記憶している。
【0028】
音量決定部80は、かご1の昇降距離及びかご1の速度の少なくとも一方に応じて、音量データ情報を決定する。また、音量決定部80は、かご1の昇降距離が大きいほど、また、かご1の速度が大きいほど、かご1内における放送音の音量を大きくするよう音量データ情報を決定する。具体的に、音量決定部80は、かご1の昇降距離及びかご1の速度の少なくとも一方が所定値以上である場合、かご1内における放送音の音量を大きくするよう音量データ情報を決定する。
【0029】
本実施形態では、音量決定部80は、かご1の昇降距離及びかご1の速度の両方に応じて、音量データ情報を決定する。なお、音量決定部80は、かご1の昇降距離のみに応じて音量データ情報を決定してもよく、また、かご1の速度のみに応じて音量データ情報を決定してもよい。
【0030】
本実施形態では、音量決定部80は、かご1の昇降距離やかご1の速度が同じであれば、かご1が上昇しているときでも下降しているときでも、かご1内における放送音の音量を同じとする。なお、音量決定部80は、かご1の昇降距離やかご1の速度が同じ場合に、かご1が下降しているときに、かご1が上昇しているときよりも、かご1内における放送音の音量を大きくしてもよい。これにより、利用者に耳詰まりが生じやすいかご1の下降時に、かご1内における放送音の音量を適切なものとできる。
【0031】
音量決定部80は、かご1の昇降距離及びかご1の速度に対応した音量データ情報を複数記憶している。具体的に、音量決定部80は、放送音の音量の調整が必要なときの音量データ情報を記憶している。より具体的に、音量決定部80は、音量データ情報を通常の音量を100%としたときの比率(例えば、150%等)で記憶している。
【0032】
例えば、音量データ決定部8は、昇降距離決定部81が決定した昇降距離、定格速度記憶部82が記憶している定格速度、及び、速度記憶部83が記憶しているかご1の速度に応じて、対応する音量データ情報を決定する。具体的に、音量決定部80は、定格速度記憶部82が記憶している定格速度が毎分300mである場合、昇降距離決定部81が決定した昇降距離が50m以上を満たすとき、音量データ情報として150%を決定する。さらに、音量決定部80は、速度記憶部83が記憶しているかご1の速度のうち昇降距離決定部81が決定した昇降距離に対応するかご1の速度が所定値以上を満たすとき、音量データ情報として150%を決定する。
【0033】
なお、音量データ決定部8が、かご1の速度に応じて音量データ情報を決定する場合、速度記憶部83が記憶しているかご1の速度の代わりに、かご1の運転条件に基づいて算出したかご1の速度に応じて、音量データ情報を決定してもよい。かご1の運転条件とは、例えば、かご1の昇降距離、かご1が上昇するか下降するか、かご1の利用者や荷物による荷重等である。この場合、音量データ決定部8が速度記憶部83を備える必要はない。
【0034】
音調整部7は、かご1の昇降距離、及び、かご1の速度の両方に応じて、かご1内の音を変化させる。また、音調整部7は、かご1の昇降距離や速度に応じて、かご1内における放送音の音量を変化させる。具体的に、音調整部7は、アナウンス制御部70と、スピーカー6からの音声アナウンスの音量を調整する音量調整部71と、を備える。
【0035】
アナウンス制御部70は、利用者への音声アナウンスの要否を判断する。例えば、アナウンス制御部70は、発報情報記憶部21に記憶されている発報情報の有無に応じて、音声アナウンスの要否を判断し、具体的には、発報情報記憶部21に発報情報が記憶されているとき、音声アナウンスが必要であると判断する。なお、発報情報記憶部21に発報情報が記憶されている場合であっても、記憶されていない場合であっても、アナウンス制御部70は、発報に関係しない通常の音声アナウンス(例えば、ドア開閉時のアナウンス等)を実施する。
【0036】
また、アナウンス制御部70は、音声アナウンスの音量の調整の要否を判断する。例えば、アナウンス制御部70は、かご1の昇降距離及びかご1の速度の少なくとも一方に応じて、音声アナウンスの音量の調整の要否を判断する。具体的に、アナウンス制御部70は、かご1の昇降距離やかご1の速度に対して、音声アナウンスの音量の調整が必要となる閾値として所定値を記憶しており、かご1の昇降距離やかご1の速度が閾値(所定値)を越えたときに、音量の調整が必要であると判断する。
【0037】
さらに、アナウンス制御部70は、かご1の昇降距離が短い場合やかご1の速度が低い場合(例えば、かご1の昇降距離やかご1の速度が所定値未満である場合)、かご1の利用者に耳詰まりが生じにくいため、音量の調整は不要であると判断する。なお、アナウンス制御部70は、常時、かご1の昇降距離及びかご1の速度の少なくとも一方に応じて、音声アナウンスの音量を調整してもよい。
【0038】
本実施形態の放送調整装置5では、アナウンス制御部70は、かご1の昇降距離及びかご1の速度の少なくとも一方が所定値を越えたときに、音量の調整が必要であると判断する。即ち、アナウンス制御部70は、かご1の昇降距離のみが所定値(例えば、50m)を越え且つかご1の速度が所定値(例えば、毎分100m以下のいずれかの値)未満であるときであっても、音量の調整が必要であると判断する。同様に、アナウンス制御部70は、かご1の昇降距離が所定値(例えば、50m)未満であり且つかご1の速度が所定値(例えば、毎分100m以上のいずれかの値)を越えたときであっても、音量の調整が必要であると判断する。
【0039】
アナウンス制御部70は、かご1内の音声アナウンスを実行する際に、音声データ記憶部4から音声データ情報を取得する。例えば、アナウンス制御部70は、発報指令を受信した際には、音声データ記憶部4から、受信した発報指令に対応する音声データ情報を取得する。
【0040】
また、アナウンス制御部70は、かご1内の音声アナウンスを実行する際に、音量の調整が不要なときには、音声データ記憶部4から取得した音声データ情報を音量調整部71に出力して、スピーカー6から通常の音量で音声アナウンスを出力させる。一方、アナウンス制御部70は、かご1内の音声アナウンスを実行する際に、音量の調整が必要なときには、音声データ情報に加えて、音量決定部80が決定した音量データを音量調整部71に出力して、音量データ情報に基づいた音量でスピーカー6から音声アナウンスを出力させる。
【0041】
音量調整部71は、アナウンス制御部70からの音声データ情報に基づいて、音声アナウンスを生成して、スピーカー6に出力する。また、音量調整部71は、アナウンス制御部70から音量データ情報が出力されたときには、スピーカー6からの音声アナウンスの音量を調整し、アナウンス制御部70から音量データ情報が出力されなかったときには、スピーカー6の音量を通常の音量のままとする(音量の調整を行わない)。
【0042】
以上の放送調整装置5によるかご1内における放送音の調整に関する処理について、図2を用いて具体的に説明する。なお、以下では、かご1内のおける発報に関する音声アナウンスの音量の調整に関する処理を説明しているが、他の音声アナウンス(かご1の到着階を報知する音声アナウンス等)の音量を調整してもよい。
【0043】
かご1が乗場に到着し、かごドアが戸開した後に戸閉が完了すると、昇降距離決定部81は、制御盤2の呼び情報記憶部20の情報から、かご1の昇降距離を決定する(ステップS01)。具体的に、昇降距離決定部81は、呼び情報記憶部20に記憶された乗場呼び階床情報及び行先階情報に対応するかご1の昇降距離を決定する。より具体的に、昇降距離決定部81は、予め記憶された所定の階床間の昇降距離から、呼び情報記憶部20に記憶された乗場呼び階床情報や行先階情報に対応する昇降距離を抽出することで、かご1の昇降距離を決定する。例えば、昇降距離決定部81は、一階に停止したかご内において二十階のかご呼びが登録されたとき、この行先階情報に対応する昇降距離「80m」を抽出して、かご1の昇降距離として「80m」を決定する。
【0044】
次に、アナウンス制御部70は、かご1内の利用者への音声アナウンスの要否を判断する(ステップS02)。具体的に、アナウンス制御部70は、発報情報記憶部21に発報情報が記憶されているときに音声アナウンスが必要と判断し、発報情報記憶部21に発報情報が記憶されていないときに音声アナウンスが不要と判断する。
【0045】
アナウンス制御部70は、利用者に音声アナウンスが必要であると判断した場合には(ステップS02:Yes)、音声アナウンスの音量の調整の要否を判断する(ステップS03)。具体的に、アナウンス制御部70は、かご1の昇降距離及びかご1の速度の少なくとも一方が所定値を越えているか否かに基づいて、音声アナウンスの音量の調整の要否を判断する。より具体的に、アナウンス制御部70は、昇降距離決定部81が決定した昇降距離が所定値(例えば、50m)以上の場合には、音声アナウンスの音量の調整が必要と判断する。また、アナウンス制御部70は、速度記憶部83が記憶しているかご1の速度のうち、昇降距離決定部81が決定した昇降距離に対応する速度が所定値(例えば、毎分100m以上のいずれかの値)以上である場合にも、音声アナウンスの音量の調整が必要と判断する。
【0046】
さらに、アナウンス制御部70が、音声アナウンスの音量の調整が必要であると判断した場合には(ステップS03:Yes)、制御盤2から発報指令を受信し(ステップS04)、音量データ決定部8に音量設定指令を送信する(ステップS05)。
【0047】
音量データ決定部8は、音量設定指令を受信すると、音量データ情報を決定する(ステップS06)。具体的に、音量データ決定部8は、かご1の昇降距離及びかご1の速度の両方に応じて、音量データ情報を決定する。より具体的に、音量決定部80は、昇降距離決定部81が決定した昇降距離、及び、速度記憶部83が記憶しているかご1の速度のうち、昇降距離決定部81が決定した昇降距離に対応する速度に応じて、音量データ情報を決定する。例えば、音量決定部80は、定格速度記憶部82が記憶している定格速度が毎分300mである場合、昇降距離決定部81が決定した昇降距離が50m以上であるとき、音量データ情報として「150%」を決定する。
【0048】
アナウンス制御部70は、音量データ決定部8から音量データ情報を受信し(ステップS07)、音声データ記憶部4から音声データ情報を取得すると(ステップS08)、音声データ情報及び音量データ情報を音量調整部71に送信する(ステップS09)。さらに、音量調整部71は、音声データ情報から音声アナウンスを生成し、音量データ情報に基づいた音量でスピーカー6から音声アナウンスを出力させ(ステップS10)、処理は終了する。
【0049】
なお、アナウンス制御部70が、利用者に音声アナウンスが不要であると判断した場合には(ステップS02:No)、ステップS01の「昇降距離の決定」処理に戻る。また、アナウンス制御部70が、音声アナウンスの音量の調整が不要であると判断した場合には(ステップS03:No)、ステップS08の「音量データ情報の受信」処理に進み、通常の音量での音声アナウンスを行い(ステップS09、S10)、処理は終了する。
【0050】
以上の放送調整装置5によれば、音調整部7により、かご1の走行状態(かごの昇降距離及びかごの速度の少なくとも一方)に応じてかご内で流れる音声案内や音楽が変化するため、利用者に耳詰まりが生じたとしても、音声案内や音楽を利用者に適切に伝えることができる。
【0051】
また、上記実施形態の放送調整装置5によれば、音調整部7により、かご1の走行状態に応じてかご内の音声案内の音量を利用者にとって適切なものに調整できる。
【0052】
なお、本発明の放送調整装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0053】
前記実施形態において、音調整部7は、かご1の昇降距離及びかご1の速度の両方に応じて、かご1内における放送音を調整していたが、かご1の昇降距離のみに応じて、かご1内における放送音を調整してもよいし、かご1の速度のみに応じて、かご1内における放送音を調整してもよい。なお、音調整部7は、放送音として、音声アナウンス以外の放送音、例えば、かご1内で流れるBGMや戸開閉時等にかご1内で流れる効果音を調整してもよい。
【0054】
また、前記実施形態において、音調整部7は、かご1内における放送音の大きさを調整していたが、放送音の大きさに加えて、又は、放送音の大きさの調整の代わりに、かご1内の放送音の周波数、音声案内の速度、音声案内の放送回数、及び、放送内容の少なくとも一つを変化させてもよい。
【0055】
音調整部7が、かご1内の放送音の周波数を調整する場合、例えば、かご1の昇降距離やかご1の速度が大きいときに、かご1内の放送音の周波数を、耳詰まりが生じた利用者にとって聞き取りやすい周波数に調整してもよい。具体的には、音調整部7は、かご1の昇降距離やかご1の速度が大きいときに、男性による音声アナウンスと女性による音声アナウンスとを使い分けてもよい。また、音調整部7が、音声案内の速度を調整する場合、例えば、かご1の昇降距離やかご1の速度が大きいときに、音声案内の放送音の速度を遅くしてもよい。音調整部7が、音声案内の放送回数を調整する場合、例えば、かご1の昇降距離やかご1の速度が大きいときに、音声案内の放送回数を増やしてもよい。さらに、音調整部7が、かご1内の放送内容を変化させる場合、例えば、耳詰まりが生じた利用者に注意喚起するために、通常の音声アナウンスと異なる音声アナウンス(例えば、強い口調の音声アナウンス)や、通常と異なるBGMを放送してもよい。このような構成によれば、かご1の走行状態に応じてかご1内の音声案内や音楽の音量、放送音の周波数、音声案内の速度、音声案内の放送回数、放送内容(音声案内や音楽の内容自体)を利用者にとって適切なものとでき、利用者に情報が伝わりやすくなる。
【0056】
さらに、音調整部7は、かご1内における放送音(例えば、音声アナウンスやBGM)の放送期間が一定時間よりも長い場合、この放送音の途中で、かご1の走行状態に応じて放送音(例えば、音量)を変化させてもよい。例えば、かご1の一回の昇降距離が長い場合、走行開始時点では放送音の音量を通常の音量とし、走行途中や走行終了時に放送音の音量を大きくすることが考えられる。この場合も、かご1の走行状態に応じてかご1内の音声案内や音楽を利用者にとって適切なものとできる。
【0057】
さらに、音調整部7は、かご1の昇降距離及びかご1の速度の少なくとも一方が所定値以上である場合、かご1内の放送の少なくとも一部(かご1内の放送の全部又は一部)を停止する所定期間を設定してもよい。この所定時間は、例えば、かご1の昇降距離及びかご1の速度の少なくとも一方が所定値以上となった時点から、かご1の停止まで(具体的には、かご1の停止前に流れるかご1の停止を報知する音声アナウンスの開始まで)の期間である。かご1内の放送の一部を停止する場合、かご1内の放送のうち、急を要する放送(例えば、地震や火災などに関する放送)については放送する一方で、急を要しない放送(例えば、BGM等)を停止してもよい。かかる構成によれば、利用者に耳詰まりが生じやすい場合に、音声案内や音楽の放送を停止して、利用者に放送が正確に聞き取れないことに起因するストレスを与えることを防ぐことができる。なお、この場合、かご1内に設けられたディスプレイ等により、本来放送するはずであった音声アナウンスの内容を報知してもよい。
【0058】
前記実施形態において、音調整部7(アナウンス制御部70)が、音声アナウンスの音量の調整が必要であるか否かの判断(ステップS03)を行っていたが、この判断を行わなくてもよい。具体的に、利用者へのアナウンスが必要なときには(ステップS02:Yes)、音声アナウンスの音量の調整が必要であるかの否かの判断を行わず、ステップS04以降の処理を行えばよい。この場合、音量決定部80は、放送音の音量の調整が必要なときの音量データ情報に加えて、放送音の音量の調整が必要ないときの音量データ情報(通常時の音量データ情報)を記憶することが考えられる。また、音量データ決定部8は、通常時の音量データ情報として100%を記憶し、昇降距離決定部81が決定した昇降距離が所定値(例えば、50m)未満であり、且つ、定格速度記憶部83が記憶しているかご1の速度が所定値(例えば、毎分100m以上のいずれかの値)未満であるとき、音量データ情報として100%(即ち、音量の調整を行わないこと)を決定すればよい。
【0059】
放送調整装置5を備えるエレベータは、かご1内の気圧を調整可能な気圧調整装置を備えてもよい。この場合、音調整部7は、気圧調整装置と連動して、かご1内における放送音を変化させることが考えられる。この場合、音調整部7は、かご1の走行状態に加えて、かご1の気圧に応じてかご1内における放送音を変化させることとなる。
【0060】
具体的に、気圧調整装置が、制御盤2から出力される気圧指令値に基づいてかご1内の気圧を調整する場合、制御盤2が音調整部7にも気圧指令値を出力し、音調整部7は、気圧指令値に基づいて放送音を変化させてもよい。より具体的に、音量データ決定部8は、気圧指令値に応じて音量データを決定してもよい。かかる構成によれば、かご1内の気圧に応じてかご1内で流れる音声案内や音楽が変化するため、利用者に耳詰まりが生じても音声案内や音楽が聴きとりやすいものとなる。
【0061】
また、音調整部7は、かご1の走行状態に加えて、かご1の周囲やかご1内での騒音に応じて、かご1内における放送音を変化させてもよい。この場合、かご1に騒音検知装置が設けられることが考えられる。かかる構成によれば、かご1の周囲やかご1内での騒音応じてかご1内で流れる音声案内や音楽が変化するため、利用者に耳詰まりが生じても音声案内や音楽が聴きとりやすいものとなる。
【0062】
なお、音調整部7は、かご1内が有人の場合のみ、かご1の走行状態にあわせてかご1内の放送音を調整してもよい。この場合、音調整部7は、例えば、かご1に設けられた人感センサ、かご1内の行先階ボタンや開閉ボタンの操作、かご1の荷重によるかご1内の利用者の有無に基づいて、かご1の走行状態にあわせてかご1内の放送音の調整の要否を判断してもよい。
【0063】
また、音調整部7は、かご1の走行状態に加えて、かご1内の利用者が多いときに、かご1内の放送音が聞こえやすくなるように、この放送音を調整してもよい。
【0064】
さらに、音調整部7は、かご1の走行状態に加えて、かご1内の気温や湿度等の環境パラメータに応じて、かご1内の放送音を調整してもよい。
【0065】
また、音調整部7は、地震等でかご1の運転が一時的に停止した場合、停止時間に応じて音声案内の音量を調整してもよい。かかる構成によれば、停止時間の経過により耳詰まりが徐々に解消された場合に、耳詰まりが解消された時点以降の放送音を通常の放送音に調整することにより、利用者にとって聴きとりやすいものとなる。
【符号の説明】
【0066】
1…エレベータ、2…制御盤、3…アナウンス装置、4…音声データ記憶部、5…放送調整装置、6…スピーカー、7…音調整部、8…音量データ決定部、20…呼び情報記憶部、21…発報情報記憶部、70…アナウンス制御部、71…音量調整部、80…音量決定部、81…昇降距離決定部、82…定格速度記憶部、83…速度記憶部
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごの速度に応じて、かご内における放送音を変化させる音調整部を備える、エレベータの放送調整装置。
【請求項2】
前記音調整部は、前記かごの速度に応じて、前記かご内における放送音の大きさ、放送音の周波数、音声案内の速度、音声案内の放送回数、及び、放送内容の少なくとも一つを変化させる、請求項1に記載のエレベータの放送調整装置。
【請求項3】
かごの昇降距離及びかごの速度の少なくとも一方に応じて、かご内における放送音を変化させる音調整部を備え、
前記音調整部は、前記かごの昇降距離及びかごの速度の少なくとも一方が所定値以上である場合、前記かご内の放送の少なくとも一部を停止する所定期間を設定する、エレベータの放送調整装置。
【請求項4】
かごの昇降距離及びかごの速度の少なくとも一方に応じて、かご内における放送音を変化させる音調整部を備えるエレベータの放送調整装置と、
前記かご内の気圧を調整可能な気圧調整装置と、を備え、
前記音調整部は、前記気圧調整装置と連動して、前記かご内の放送音を変化させる、エレベータ。