(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158176
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】車両用操作装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20221006BHJP
B60K 37/00 20060101ALI20221006BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20221006BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20221006BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20221006BHJP
G06F 3/0362 20130101ALI20221006BHJP
G06F 3/0354 20130101ALN20221006BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
B60K37/00 Z
B60R11/02 C
B60R16/02 630Z
G01B7/00 101C
G06F3/0362 464
G06F3/0354 453
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062906
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】早田 英彦
(72)【発明者】
【氏名】藤木 修
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 克也
【テーマコード(参考)】
2F063
3D020
3D344
5B087
【Fターム(参考)】
2F063AA22
2F063BC03
2F063HA04
3D020BA04
3D020BB01
3D020BC02
3D020BD05
3D020BE03
3D344AA14
3D344AA16
3D344AA21
3D344AB01
3D344AD01
3D344AD07
5B087AA09
5B087AB02
5B087BC13
5B087BC34
5B087DE06
(57)【要約】
【課題】車両運転時、乗員の空間認知能を向上することができる車両用操作装置を提供する。
【解決手段】インストルメントパネル16上に設置されて車載機器に係る複数の操作アイテムを表示する表示装置4と、乗員が入力操作可能な操作部2と、この操作部2の入力操作に連動して表示装置4に表示された操作アイテムを変更及び/又は選択可能な表示制御部32とを備え、表示装置4は、複数の操作アイテムを上下方向に配置すると共に操作アイテムが前後方向に擬似的に並んでいると乗員が認識するように下側に配置された操作アイテム程強調表示し、操作部2は、前後方向に延びるように形成され且つ乗員のスライド動作により操作アイテムを変更可能なライン状入力部23を有し、複数の操作アイテムの擬似的表示方向D1とライン状入力部23の入力操作方向D2とを略一致させている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネル上に設置されて車載機器に係る複数の操作アイテムを表示可能な表示手段と、乗員が入力操作可能な操作手段と、この操作手段の入力操作に連動して前記表示手段に表示された複数の操作アイテムを変更及び/又は選択可能な表示制御手段とを備えた車両用操作装置において、
前記表示手段は、前記複数の操作アイテムを上下方向に配置すると共に前記複数の操作アイテムが車体前後方向に擬似的に並んでいると乗員が認識するように下側に配置された操作アイテム程強調表示し、
前記操作手段は、車体前後方向に延びるように形成され且つ乗員のスライド動作による入力操作により前記操作アイテムを変更可能なライン状入力部を有し、
前記複数の操作アイテムの擬似的表示方向と前記ライン状入力部の入力操作方向とを略一致させたことを特徴とする車両用操作装置。
【請求項2】
前記表示手段は、平面視にて前記ライン状入力部の延長線上に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用操作装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記強調表示として、前記複数の操作アイテムが車体前後方向に擬似的に並んでいると乗員が認識するように下側に配置された操作アイテム程大きくなるように表示し、又は画面背景と操作アイテムとの明度差が大きくなるように表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用操作装置。
【請求項4】
前記ライン状入力部は、乗員の近接又は接触を静電容量の変化により検出する静電容量センサを有することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の車両用操作装置。
【請求項5】
車幅方向中央部分に上方に突出して車体前後方向に延びるセンタコンソールを備え、
前記操作手段は、前記センタコンソールに配設されると共に前記センタコンソールの上面部から前方且つ上方に突出するように形成され、
前記ライン状入力部は、前記操作手段の上面部において車幅方向中央部分に配設されたことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の車両用操作装置。
【請求項6】
前記ライン状入力部は、隣接部分と素材及び色彩が異なる加飾部を有し、
前記加飾部は、前記操作手段の前端部側部分から前記センタコンソールの上面部に亙って連なるように配設されたことを特徴とする請求項5に記載の車両用操作装置。
【請求項7】
前記ライン状入力部は、前方上り傾斜状に形成されたことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の車両用操作装置。
【請求項8】
前記複数の操作アイテムの擬似的表示方向を示す延長線が、所定基準位置に配置された運転席に着座した所定体形の乗員が前方を視たときの乗員の視界における消失点と略一致することを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の車両用操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機器に係る複数の操作アイテムを表示可能な表示手段と、乗員が入力操作可能な操作手段と、この操作手段の入力操作に連動して複数の操作アイテムを変更及び/又は選択可能な表示制御手段とを備えた車両用操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載される車載機器(エアコン、オーディオ、ナビゲーション装置等)に係る操作アイテムを表示可能なディスプレイが設置されたインストルメントパネルと、左右のフロントシート間から上方に突出して車体前後方向に延びると共にディスプレイに表示される操作アイテムを切替等操作可能なコマンダノブ(以下、単にコマンダと省略する。)や変速操作機構及びパーキングブレーキレバー等が夫々配設されたセンタコンソールとを備えた車室構造は知られている。ここで、操作アイテムとは、ディスプレイに表示される車載機器の種類や所定の機能(動作)画面のタイトルを表すものである。
【0003】
人の移動時、消失点から足元まで延びるオプティカルフローを、空間座標系における仮想軸線として認識することで、自身の存在位置、移動方向、及び移動速度を客観的且つ正確に把握することができる。一方、車両運転時には、前方に存在する消失点から延びるオプティカルフローがボンネットの縁部やフロントウインドガラスの枠部等により途中で切断されているため、乗員の空間認知能が低下し、その結果、乗員が認識する車室外空間座標系と車室内空間座標系との間にずれが生じる虞がある。
【0004】
特許文献1の車両用表示装置及び車室内構造は、インストルメントパネル上に設置されたディスプレイと、ディスプレイに表示された操作アイテムを操作するコマンダと、このコマンダの操作に応じてディスプレイの表示を制御する表示制御部とを備え、コマンダをセンタコンソール上に配置すると共に、乗員の視界における消失点からコマンダに向かって直線状に延びる仮想軸線が通る位置に操作アイテムに相当する操作部画像を表示している。これにより、消失点から延びるオプティカルフローに相当する仮想軸線を乗員に対して積極的に意識させることができ、車室外空間座標系と車室内空間座標系との一致を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の車両用表示装置及び車室内構造は、前方の消失点からコマンダに向かって延びる仮想軸線上にディスプレイに表示される操作アイテムを意図的に配置することによって乗員に仮想軸線を意識付けし、乗員による仮想軸線認識の促進を図っている。
しかし、特許文献1の技術では、消失点からコマンダに向かって前後方向に延びる仮想軸線を乗員が容易に認識することができず、車室外空間座標系と車室内空間座標系との不一致を招く虞がある。
【0007】
オプティカルフローは、消失点から前後方向に延びる直線状の仮想軸線である。これに対して、コマンダは、鉛直方向に延びる回転軸回りを回動可能な回転操作手段である。
消失点とコマンダとを結ぶ仮想軸線は、理論上、車室空間内に想定可能である。
しかし、乗員の周囲において、視覚的に確認可能な前後方向に延びる直線軸状の構造物は基本的に存在しておらず、乗員にオプティカルフローに相当する仮想軸線を積極的に意識させることは難しい。
【0008】
しかも、乗員が把持するコマンダの回転軸は鉛直方向に延びる構造とされ、コマンダを回転操作する場合には、乗員は触覚を介して上下方向の回転軸を意識することになる。
ディスプレイに表示された車載機器の操作アイテムを操作するコマンダと駆動や制動等の車両運転に関連するオプティカルフローとは元々機能的に関連性が低いことに加え、コマンダの回転操作時、触覚的に上下方向を認識している乗員に対して、消失点からコマンダに向かって前後方向に延びる仮想軸線を意識させることは困難と言わざるを得ない。
即ち、車両運転時、乗員の空間認知能を向上させることは容易ではない。
【0009】
本発明の目的は、車両運転時、乗員の空間認知能を向上可能な車両用操作装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の車両用操作装置は、インストルメントパネル上に設置されて車載機器に係る複数の操作アイテムを表示可能な表示手段と、乗員が入力操作可能な操作手段と、この操作手段の入力操作に連動して前記表示手段に表示された複数の操作アイテムを変更及び/又は選択可能な表示制御手段とを備えた車両用操作装置において、前記表示手段は、前記複数の操作アイテムを上下方向に配置すると共に前記複数の操作アイテムが車体前後方向に擬似的に並んでいると乗員が認識するように下側に配置された操作アイテム程強調表示し、前記操作手段は、車体前後方向に延びるように形成され且つ乗員のスライド動作による入力操作により前記操作アイテムを変更可能なライン状入力部を有し、前記複数の操作アイテムの擬似的表示方向と前記ライン状入力部の入力操作方向とを略一致させたことを特徴としている。
【0011】
この車両用操作装置では、前記表示手段は、前記複数の操作アイテムを上下方向に配置すると共に前記複数の操作アイテムが車体前後方向に擬似的に並んでいると乗員が認識するように下側に配置された操作アイテム程強調表示しているため、擬似的表示方向を介して乗員に対して前後方向に指向する仮想軸線を視覚的に意識させることができる。
前記操作手段は、車体前後方向に延びるように形成されているため、操作手段の形状を介して乗員に対して前後方向に指向する仮想軸線を視覚的に意識させることができる。
前記操作手段は、乗員のスライド動作による入力操作により前記操作アイテムを変更可能なライン状入力部を有しているため、ライン状入力部の入力操作方向を介して乗員に対して前後方向に指向する仮想軸線を触覚的に意識させることができる。前記複数の操作アイテムの擬似的表示方向と前記ライン状入力部の入力操作方向とを略一致させたため、視覚及び触覚を用いて前後方向に指向する仮想軸線を乗員に積極的に意識させることができ、乗員の空間認知能の向上を図ることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記表示手段は、平面視にて前記ライン状入力部の延長線上に配置されたことを特徴としている。
この構成によれば、操作アイテムにより設定された仮想軸線と操作手段により設定された仮想軸線とを同一直線上に連続させることができ、一層乗員の空間認知能の向上を図ることができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記表示手段は、前記強調表示として、前記複数の操作アイテムが車体前後方向に擬似的に並んでいると乗員が認識するように下側に配置された操作アイテム程大きくなるように表示し、又は画面背景と操作アイテムとの明度差が大きくなるように表示することを特徴としている。
この構成によれば、複数の操作アイテムの表示によって錯視的に擬似的表示方向を形成することができ、乗員に対して擬似的表示方向を確実に認識させることができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記ライン状入力部は、乗員の近接又は接触を静電容量の変化により検出する静電容量センサを有することを特徴としている。
この構成によれば、乗員のスライド動作による入力操作を簡単且つ確実に検出することができる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1~4の何れか1項の発明において、車幅方向中央部分に上方に突出して車体前後方向に延びるセンタコンソールを備え、前記操作手段は、前記センタコンソールに配設されると共に前記センタコンソールの上面部から前方且つ上方に突出するように形成され、前記ライン状入力部は、前記操作手段の上面部において車幅方向中央部分に配設されたことを特徴としている。
この構成によれば、ライン状入力部を用いて操作手段を強調することができ、乗員による直感的操作が可能になる。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記ライン状入力部は、隣接部分と素材及び色彩が異なる加飾部を有し、前記加飾部は、前記操作手段の前端部側部分から前記センタコンソールの上面部に亙って連なるように配設されたことを特徴としている。
この構成によれば、加飾部によってライン状入力部の入力操作方向を明確に表示することができ、乗員に対して入力操作方向を確実に認識させることができる。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1~6の何れか1項の発明において、前記ライン状入力部は、前方上り傾斜状に形成されたことを特徴としている。
この構成によれば、表示手段と操作手段を接近させることができ、乗員に仮想軸線を一層強く意識させることができる。
【0018】
請求項8の発明は、請求項1~7の何れか1項の発明において、前記複数の操作アイテムの擬似的表示方向の延長線が、所定基準位置に配置された運転席に着座した所定体形の乗員が前方を視たときの乗員の視界における消失点と略一致することを特徴としている。
この構成によれば、仮想軸線を介して消失点から延びるオプティカルフローを乗員に対して積極的に意識させることができ、車室外空間座標系と車室内空間座標系との一致を容易に図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両用操作装置によれば、五感のうち乗員の視覚及び触覚を用いて乗員に仮想軸線を積極的に意識させることにより、車両運転時、乗員の空間認知能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1に係る車両用操作装置の制御系ブロック図である。
【
図6】
図4の縦断面図であって、(a)は、A-A線断面図、(b)は、B-B線断面図、(c)は、C-C線断面図である。
【
図11】オプティカルフローと擬似的表示方向とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を車両用操作装置に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【実施例0022】
以下、本発明の実施例1について
図1~
図11に基づいて説明する。
車両Vは、乗員が認識する車室外空間座標系と車室内空間座標系とを一致させて空間認知能、所謂軸感を高めることにより、自車両Vの存在位置、移動方向、及び移動速度に係る乗員の知覚能力を向上するように構成されている。
この車両Vは、乗員の五感のうち視覚的作用と触感的作用とを用いて軸感を高めている。
【0023】
車両Vには、運転時、乗員が車載機器を操作可能な車両用操作装置1が設けられている。車載機器は、例えば、オーディオ、ナビゲーション装置等である。
図1に示すように、車両用操作装置1は、乗員が手動操作可能な操作部2(操作手段)と、ECU(Electronic Control Unit)3と、各種情報を表示する表示装置4(表示手段)と、前後各々の左右輪に制動力を付与する電動パーキングブレーキ装置5等を主な構成要素としている。
【0024】
まず、車両Vの車室構造や主な内装部材について説明する。
図2に示すように、車室の床面を構成するフロアパネル11上には、フロントシートとして右側の運転席シート12aと左側の助手席シート12bとが配設されている。
これらのシート12a,12bの間には、上方に突出して車体前後方向に延びるトンネル部(図示略)と、このトンネル部の上部に車体前後方向に延びるセンタコンソール13が立設されている。以下、図において、矢印Fを車体前方とし、矢印Lを車体左方とし、矢印Uを車体上方として説明する。
【0025】
シート12a,12bの前方には、フロントウインドガラス14と、インストルメントパネル16と、ステアリングハンドル17等が配設されている。
フロントウインドガラス14は、左右1対のフロントピラー15間に掛け渡されている。
ステアリングハンドル17は、インストルメントパネル16の右側領域と運転席シート12aのシートバックとの間に配置されている。
【0026】
図2に示すように、インストルメントパネル16は、車室前部において車幅方向に延びるように形成され、下側の中央部分は、センタコンソール13の前端部に連結されている。この合成樹脂製のインストルメントパネル16は、例えば、前後方向に延びる上面部と、この上面部の後端部から後方且つ下方に延びる後面部と、この後面部の下端部から前方に延びる下面部等を備えている。
【0027】
インストルメントパネル16の内部には、左右1対のヒンジピラー(図示略)を車幅方向に連結する強度部材としてのインパネメンバ(図示略)が設けられ、インパネメンバを支持する支持ステー(図示略)がインパネメンバとトンネル部との間に張架されている。
また、インストルメントパネル16は、複数のデフロスタ吹出口(図示略)と、左右1対のセンタベント吹出口16aと、左右1対のサイドベント吹出口16bと、メータパネル16cと、表示装置4等を備えている。
【0028】
デフロスタ吹出口は、インストルメントパネル16の上面部においてフロントウインドガラス14の下部に対向する前端側部分に設けられている。
図2に示すように、1対のセンタベント吹出口16aは、後面部の車幅方向中間部分に隣接状に形成され、1対のサイドベント吹出口16bは、後面部の車幅方向両端部に夫々形成されている。吹出口16a,16bは、何れも空調ダクトに連通されている。
インストルメントパネル16の上面部の車幅方向中央部分には、略矩形状の表示画面(ディスプレイパネル)を備えた表示装置4が装備されている。表示装置4の表示画面は、例えば、液晶ディスプレイパネル或いはプラズマディスプレイパネル等である。
【0029】
メータパネル16cは、ステアリングハンドル17に対向するようにステアリングハンドル17の直前方部分に相当するインストルメントパネル16の後面部に設けられている。このメータパネル16cは、例えば、アナログ表示される円状のエンジン回転計と、このエンジン回転計に隣接してアナログ表示される円状の速度計等が配置されている。
これらのメータ計は、デジタル表示であっても良く、アナログ表示とデジタル表示の併用であっても良い。符号18は、アクセルペダルとブレーキペダルである。
【0030】
車両用操作装置1の説明に戻る。
図2に示すように、操作部2は、センタコンソール13の上面部で且つ運転席シート12a(シートクッション)の側部近傍位置から前方且つ上方に突出している。
この操作部2は、車両Vの駆動や制動等運転用擬似レバーと車載機器用擬似コマンダとが一体的に共通化された入力インタフェイスである。操作部2は、乗員が右手でステアリングハンドル17を操作しながら、左手単独で把持可能で且つ車載機器等を操作可能に形成されている。
【0031】
図3~
図5に示すように、操作部2は、前後に細長く形成された棒状(長尺状)の本体部25と、この本体部25の表面及びセンタコンソール13の上面部において本体部25よりも後側部分を部分的に覆う被覆部26とを備えている。
本体部25は、後半部分がセンタコンソール13の上面部に接合部を介して接合され、前半部分が前側程センタコンソール13の上面部から離隔して上方に移行する前方上り傾斜状に形成されている。この操作部2は、平面視にて、軸心の延長線が表示装置4に指向している。
【0032】
被覆部26は、被覆部材、例えば、黒色の合成皮革により本体部25及びセンタコンソール13の上面部分を覆うように構成されている。この被覆部26は、本体部25の外周表面を被覆すると共に本体部25の長手方向途中部から後方において、センタコンソール13の上面部を部分的に被覆している。被覆部26のうちセンタコンソール13の上面を被覆する部分は、後側程その車幅方向寸法が大きくなるように構成され、それらの端部はセンタコンソール13の上面部に縫合されて縫合部26aを形成している。
【0033】
本体部25は、略雫状に形成され上方空間に対面する上面部25aと、この上面部25aの先端側部分に略平行になるように形成されて下方空間に対面する下面部25bと、側面部25cとを有する。
図6(a)~
図6(c)に示すように、側面部25cは、センタコンソール13の表面から前側程徐々に立ち上がり本体部25の湾曲状側面を形成すると共に更に前側では下面部25bに収束するように形成されている。
【0034】
図1に示すように、操作部2は、駆動装置や制動装置を制御するために乗員が運転操作しながら左手で入力操作可能な前方入力部21と、表示装置4に表示された複数の操作アイテムを夫々制御するために乗員が運転操作しながら左手で入力操作可能な後方入力部22等を備えている。操作アイテムとは、表示装置4に表示される車載機器の種類や所定の機能(動作)画面のタイトルを総称するものである。
図3~
図5に示すように、前方入力部21は、平面視にて半円状で且つ側面視にて台形状に形成され、上面部25aの前端側部分に配設されている。この前方入力部21は、例えば、第1閾値を超える圧力を検出可能な圧力センサである。
【0035】
次に、後方入力部22について説明する。
図3~
図5に示すように、後方入力部22は、ライン状入力部23と、エリア状入力部24a~24eとを備えている。ライン状入力部23は、本体部25の車幅方向中央部分で且つ長手方向途中部から本体部25の後端部に亙って前後方向に延びるように装着されている。ライン状入力部23の上部には、線状の加飾部27がライン状入力部23を覆うように設置されている。
【0036】
加飾部27は、本体部25の前端側部分(ライン状入力部23の前端部)からセンタコンソール13の上面部に亙って前後方向に延びるように設けられている。この加飾部27は、被覆部26よりも高い明度、例えば銀色の合成樹脂素材を用いて形成されている。
それ故、表示装置4は、平面視にて、加飾部27を前側に延長した延長線上に配置されている。
【0037】
ライン状入力部23は、例えば、乗員の近接又は接触を静電容量の変化により検出可能な線状の静電容量センサにより構成されている。この静電容量センサは、人体が近接又は接触する検出電極を備え、人体による浮遊容量又は接地との間の静電容量の変化を計測している。具体的には、乗員が手を近づけた際、電界と手の間に擬似的なコンデンサが生成され、このコンデンサに蓄積された静電容量が増加或いは減少したタイミングで人の接近を検出している。静電容量センサは、公知の技術であるため、詳細な説明を省略する。
【0038】
次に、エリア状入力部24a~24eについて説明する。
図3~
図5に示すように、エリア状入力部24cが加飾部27の前端近傍部分に所定領域を持って設定され、エリア状入力部24bが加飾部27の前端右側近傍部分に所定領域を持って設定され、エリア状入力部24dが加飾部27の前端左側近傍部分に所定領域を持って設定されている。エリア状入力部24cは、加飾部27(ライン状入力部23)の前端近傍位置で且つ前方入力部21の後端から所定距離後方に離隔した位置に配設されている。
【0039】
また、エリア状入力部24aが右側面部25cにおいてエリア状入力部24bの下側後方部分に所定領域を持って設定され、エリア状入力部24eが左側面部25cにおいてエリア状入力部24dの下側後方部分に所定領域を持って設定されている。エリア状入力部24a~24eは、各々所定間隔離隔した状態で配置されている。第1,第5指については、移動誤差や体格差によりばらつきが生じることが予想されるため、エリア状入力部24a,24eは、エリア状入力部24b~24dに比べて大きくなるように形成されている。
【0040】
エリア状入力部24a~24eは、例えば、第2閾値を超える圧力を検出可能なエリア状の圧力センサによって構成されている。この圧力センサは、例えば、半導体式圧力センサが用いられている。エリア状入力部24a~24eの第2閾値は前方入力部21の第1閾値よりも小さい値に設定されている。これにより、エリア状入力部24a~24eの操作性を確保しつつ、前方入力部21の誤操作を回避している。尚、圧力センサは、半導体式圧力センサに限られず、歪ゲージ式圧力センサや金属薄膜式圧力センサであっても良い。
【0041】
エリア状入力部24a~24eは、押し下げ操作によって各入力部に予め設定された画面を表示装置4に表示可能な短絡用プッシュボタンである。これらエリア状入力部24a~24eは、乗員の左手の5指各々に対応して設定されている。
エリア状入力部24aは、第1指(母指)の操作により前に表示されていた前画面を表示し、エリア状入力部24bは、第2指(示指)の操作によりナビゲーション機能画面を表示し、エリア状入力部24cは、第3指(中指)の操作によりホーム画面を表示する。
また、エリア状入力部24dは、第4指(環指)の操作によりエンターテインメント機能画面を表示し、エリア状入力部24eは、第5指(小指)の操作により予め登録しているお気に入り画面を表示する。
【0042】
次に、ECU3について説明する。
ECU3は、CPU(Central Processing Unit)と、ROMと、RAMと、イン側インタフェイスと、アウト側インタフェイス等によって構成されている。ROMには、ブレーキ制御や表示制御等種々のプログラムやデータが格納され、RAMには、CPUが一連の処理を行う際に使用される処理領域が設けられている。
このECU3は、電動パーキングブレーキ制御部31と、表示制御部32(表示制御手段)とを備えている。
【0043】
電動パーキングブレーキ制御部31は、前方入力部21が押し下げ操作されたとき、駐車環境(路面状態や勾配等)に適した車輪制動力を設定し、電動パーキングブレーキ装置5に作動指令信号を送信する。作動指令信号を受信した電動パーキングブレーキ装置5は、電動アクチュエータで駆動される電動ブレーキ機構を作動させて車輪に制動力を付与する(何れも図示略)。
【0044】
表示制御部32は、後方入力部22が押し下げ操作又はスライド操作されたとき、表示装置4に作動指令信号を送信する。作動指令信号を受信した表示装置4は、画面に表示される複数の操作アイテムを制御する。この後方入力部22は、前述したライン状入力部23と、5つのエリア状入力部24a~24eにより構成されている。
このECU3は、表示装置4による操作アイテムの表示タイミングに同期して、各操作アイテムに対応した車載機器について夫々の機能を実行するように制御している。
【0045】
次に、表示装置4について説明する。
図7に示すように、表示装置4は、起動時、初期画面であるホーム画面を表示する。
ホーム画面には、複数の操作アイテムと、空調の風量レベルと、各吹出口からの吹出風の温度と、現在時刻等が同一画面内に表示されている。これら複数の操作アイテムは、例えば、「Information」、「Entertainment」、「Communication」、「Navigation」、「Setting」等のアイコンが、上下方向に隣接するように並んで表示される。
【0046】
ここで、「Information」は、燃費、各種メンテナンス情報等の機能画面、「Entertainment」は、インターネットラジオ、オーディオ、TV、CD/DVD等の機能画面、「Communication」は、ハンズフリー通話、ショートメッセージの読み上げ等の機能画面に対応している。また、「Navigation」は、道路地図表示、ルート案内、ルート誘導等の機能画面、「Setting」は、サウンドのセッティング、アクティブ・ドライビング・ディスプレイの明るさや角度調整等の機能画面に対応している。
【0047】
複数の操作アイテムは、擬似的或いは錯視的に前後方向に並んでいると乗員が認識するように、下側に配置された操作アイテム程視覚的に強調されている。具体的には、下側に配置された操作アイテム程文字サイズが大きくなるように表示されている。
これにより、乗員は、表示装置4を視たとき、錯視により、上側の操作アイテムが奥(前方)、下側の操作アイテムが手前(後方)に存在していると認識することになる。
【0048】
本実施形態では、操作アイテムの頭文字を結ぶ線の延長線が進行方向前方にある消失点Pに向かうように、換言すれば、オプティカルフローFに沿うように各操作アイテムの頭文字を配置している(
図11参照)。尚、消失点Pは、所定基準位置に配置された運転席シート12aに着座した所定体形の乗員が前方を視たときの乗員の視界における消失点位置(収束点)である。また、複数の操作アイテムの頭文字を結ぶ線(及びその延長線)が仮想軸線に相当し、上記結ぶ線(及びその延長線)の向かう方向が、複数の操作アイテムの擬似的表示方向D1に相当している。
【0049】
次に、各入力部の操作形態について説明する。
まず、前方入力部21を操作する第1の操作形態について説明する。
図9に示すように、縫合部26aの前端近傍部に対応した本体部25の下側前端部分に左手の第5指を当接させた状態で本体部25を第1指と第2~第5指とによって上下方向に挟持している。この第1の操作形態の際、第1指と向かい合う位置に前方入力部21が設けられている。これにより、乗員は、車両運転時、ステアリングハンドル17を把握していた左手の移動距離を最小限にしつつ、本体部25のストッパ機能により前方入力部21をブラインド操作することができる。
【0050】
次に、ライン状入力部23を操作する第2の操作形態について説明する。
乗員は、加飾部27(ライン状入力部23)を何れかの指で入力操作方向D2方向(正方向、逆方向を含む)に摺動するスライド動作(入力操作)により、このスライド動作に連動して操作アイテムを回転(スクロール)させて選択表示している。
表示装置4の表示画面において、操作アイテムのうち最下方位置に表示された操作アイテムが乗員に選択された操作アイテムに相当する。ここで、スライド動作するライン状入力部23の延長線が仮想軸線に相当し、上記延長線の向かう方向が、ライン状入力部23の入力操作方向D2に相当している(
図9,
図10参照)。尚、本実施形態では、加飾部27の延長線が、操作アイテムの頭文字を結ぶ線の延長線(擬似的表示方向D1を示す延長線)と略一致するように形成されている。
【0051】
乗員は、操作アイテムを選択した後、手(指先)で加飾部27をタップして希望する機能画面を決定する。例えば、エンターテインメント機能の車載機器(CD/DVD等)を操作したい場合、乗員は、加飾部27を前後方向にスライド動作してホーム画面の複数の操作アイテムのなかから「Entertainment」を選択する。次に、「Entertainment」が最下方に表示されている状態で、加飾部27を指先でタップ操作することにより、
図8に示すエンターテインメント機能画面を表示する。これにより、乗員は、エリア状入力部24a~24eの押し下げ操作や操作アイテムのスクロールを視線を向けることなくブラインド操作することができる。
【0052】
次に、エリア状入力部24a~24eを操作する第3の操作形態について説明する。
図10に示すように、加飾部27の前端部分に左手の第3指を軽く載せている。この第3の操作形態の際、本体部25は、第1指がエリア状入力部24aに対向し、第2指がエリア状入力部24bに対向し、伸長させた第3指がエリア状入力部24cに対向し、第4指がエリア状入力部24dに対向し、第5指がエリア状入力部24eに対向するように構成されている。この状態で、所望のエリア状入力部を押し下げ操作する。
【0053】
次に、本実施例の車両用操作装置1における作用、効果について説明する。
この車両用操作装置10によれば、表示装置4は、複数の操作アイテムを上下方向に配置すると共に複数の操作アイテムが前後方向に擬似的に並んでいると乗員が認識するように下側に配置された操作アイテム程強調表示しているため、擬似的表示方向D1を介して乗員に対して前後方向に指向する仮想軸線を視覚的に意識させることができる。
操作部2は、前後方向に延びるように形成されているため、操作部2の形状を介して乗員に対して前後方向に指向する仮想軸線を視覚的に意識させることができる。
操作部2は、乗員のスライド動作による入力操作により操作アイテムを変更可能なライン状入力部23を有しているため、ライン状入力部23の入力操作方向D2を介して乗員に対して前後方向に指向する仮想軸線を触覚的に意識させることができる。複数の操作アイテムの擬似的表示方向D1とライン状入力部23の入力操作方向D2とを略一致させたため、視覚及び触覚を用いて前後方向に指向する仮想軸線を乗員に積極的に意識させることができ、乗員の空間認知能の向上を図ることができる。
【0054】
表示装置4は、平面視にてライン状入力部23の延長線上に配置されたため、操作アイテムにより設定された仮想軸線と操作部2により設定された仮想軸線とを同一直線上に連続させることができ、一層乗員の空間認知能の向上を図ることができる。
【0055】
表示装置4は、強調表示として、複数の操作アイテムが前後方向に擬似的に並んでいると乗員が認識するように下側に配置された操作アイテム程大きくなるように表示するため、複数の操作アイテムの表示によって錯視的に擬似的表示方向D1を形成することができ、乗員に対して擬似的表示方向D1を確実に認識させることができる。
【0056】
ライン状入力部23は、乗員の近接又は接触を静電容量の変化により検出する静電容量センサを有するため、乗員のスライド動作による入力操作を簡単且つ確実に検出することができる。
【0057】
車幅方向中央部分に上方に突出して前後方向に延びるセンタコンソール13を備え、操作部2は、センタコンソール13に配設されると共にセンタコンソール13の上面部から前方且つ上方に突出するように形成され、ライン状入力部23は、操作部2の上面部において車幅方向中央部分に配設されたため、ライン状入力部23を用いて操作部2を強調することができ、乗員による直感的操作が可能になる。
【0058】
ライン状入力部23は、隣接部分と素材及び色彩が異なる加飾部27を有し、加飾部27は、操作部2の前端部側部分からセンタコンソール13の上面部に亙って連なるように配設されたため、加飾部27によってライン状入力部23の入力操作方向D2を明確に表示することができ、乗員に対して入力操作方向D2を確実に認識させることができる。
【0059】
ライン状入力部23は、前方上り傾斜状に形成されたため、表示装置4と操作部2を接近させることができ、乗員に仮想軸線を一層強く意識させることができる。
【0060】
図11に示すように、複数の操作アイテムの擬似的表示方向D1を示す延長線が、所定基準位置に配置された運転席に着座した所定体形の乗員が前方を視たときの乗員の視界における消失点Pと略一致しているため、仮想軸線を介して消失点Pから延びるオプティカルフローFを乗員に対して積極的に意識させることができ、車室外空間座標系と車室内空間座標系との一致を容易に図ることができる。特に、擬似的表示方向D1と入力操作方向D2との延長線が共にオプティカルフローFに連なるようにオプティカルフローF上に配置されているため、乗員に対してオプティカルフローFを一層意識させることができる。
【0061】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、近くに存在すると認識させたい(下側に配置された)操作アイテム程文字サイズが大きくなるように強調表示した例を説明したが、他の強調手法を用いて表示しても良い。
図12に示すように、近くに存在すると認識させたい(下側に配置された)操作アイテム程背景とのコントラスト(明度差)を大きくする。また、下側に配置された操作アイテム程近くに見えるように三次元表示しても良い。尚、乗員によって選択された操作アイテム(最も下側に配置された操作アイテム)は、下線或いは文字の線の太さによって強調している。
【0062】
2〕前記実施形態においては、擬似的表示方向D1を略一定の方向として説明したが、ステアリングハンドル17の操作角度、或いは前輪の舵角に応じて消失点Pを設定し、この消失点Pに基づき擬似的表示方向D1を設定しても良い。
【0063】
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。