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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158203
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】乳化化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20221006BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20221006BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/81
A61K8/37
A61K8/04
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062944
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直弘
(72)【発明者】
【氏名】松藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】三田地 喜樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC391
4C083AC422
4C083AC852
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD352
4C083CC02
4C083DD31
4C083EE12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】保湿効果に優れ、べたつきを感じ難く、後肌のふっくら感に優れ、コンシーラとパウダーファンデーションを肌に重ね付けた場合でもメイクがヨレにくい乳化化粧料組成物を提供する。
【解決手段】乳化化粧料組成物は、成分(A)を0.1~20質量%、成分(B)を0.005~0.5質量%、成分(C)を0.1~10質量%、成分(D)を0.01~1%含有し、成分(A)と成分(C)の質量比率の合計値が1~25質量%である。
(A)式Z-[O(EO)a(PO)b-(BO)c-H]n(I)で表される、アルキレンオキシド付加誘導体からなる群より選択される1種または2種以上
(B)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位、および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体
(C)C8~22の脂肪酸と、4~6価かつC5~10の多価アルコールとのエステル化合物
(D)アクリル酸系増粘剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)を0.1~20質量%、成分(B)を0.005~0.5質量%、成分(C)を0.1~10質量%および成分(D)を0.01~1%含有し、前記成分(A)の含有比率と前記成分(C)の含有比率との合計値が1~25質量%であることを特徴とする、乳化化粧料組成物。

(A) 下記式(I)で表されるアルキレンオキシド付加誘導体

Z-[O(EO)a(PO)b-(BO)c-H]n ・・・(I)

(式(I)において、
Zは、水酸基を3または4個有する化合物からすべての水酸基を除いた残基であり、
nは、水酸基を3または4個有する前記化合物の水酸基数であり、
EO、POおよびBOは、それぞれ、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基を示し、
a、bおよびcは、それぞれ、前記オキシエチレン基EO、前記オキシプロピレン基POおよび前記オキシブチレン基BOの平均付加モル数であり、かつ0≦a≦20、0≦b≦10、0≦c≦5、1≦a+bであり、
aとbが共に0でない場合には、前記オキシエチレン基EOと前記オキシプロピレン基POがランダム付加もしくはブロック付加し、
前記オキシプロピレン基POの前記オキシエチレン基EOに対する含有量比(PO/EO)がモル比で1/5~5/1である。)
(B) 下記式(II)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位、および下記式(III)で表される(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体

【化1】

(式(II)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)

【化2】

(式(III)中、
は水素原子またはメチル基を示し、
は炭素数4~18のアルキル基を示す。)

(C) 炭素数8~22の脂肪酸と、4~6価かつ炭素数5~10の多価アルコールとのエステル化合物

(D) アクリル酸系増粘剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケア市場は近年拡大しており、中でもアンチエイジングを訴求する市場が特に伸びている。その背景として、高齢者人口が増えたことや若年層のエイジングケア意識の広がりが挙げられ、若々しい肌を維持する化粧料への需要はますます高くなっている。若々しい肌を保つためには皮膚に一定の水分保持力が必要不可欠であるが、加齢や紫外線の影響により、水分保持力が低下し乾燥しやすくなる。そのため、肌に水分を与え、乾燥を防ぐためにスキンケア化粧料が用いられる。中でも水分を与えるだけでなく、油分が皮膚上に被膜を形成することで水分蒸散を抑制することもできる乳化化粧料の需要は特に大きい。
【0003】
消費者に好まれる乳化化粧料の使用感として、例えば、べたつかないこと、保湿感に優れることなどが挙げられる。優れた保湿性を持たせるために、様々な保湿剤が用いられ、中でも水分保持力の高い成分として多価アルコール類やヒアルロン酸、その類縁体が知られている。しかし、特定の多価アルコールやヒアルロン酸を高配合した化粧料は、使用時にべたつきを感じるという問題点があった。
【0004】
これまでに、保湿感を高めるために、高分子ヒアルロン酸、低分子ヒアルロン酸、多糖類を含有してなる組成物(特許文献1)が提案されている。この化粧料は保湿感にはすぐれるが、べたつきの抑制には改善の余地があった。特許文献2では40℃で液状の油、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、高級アルコール、N-アシルアミノ酸及び/又はその塩を含有してなる水中油型乳化組成物が提案されている。この化粧料は保湿感やべたつき感を抑制する効果に優れている。
【0005】
また、若々しい肌を維持するためには、肌をふっくらとさせることが重要であり、使用後のふっくら感に優れる化粧料が求められている。特許文献3では親水性界面活性剤、親油性界面活性剤、特定の抱水性油分、エチレンオキシド誘導体および水を含有してなる半透明化粧水基剤が提案されている。本技術によればふっくら感について一定の改善がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2011-513481号公報
【特許文献2】特開2013-139395号公報
【特許文献3】特開2013-189408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、アンチエイジングを気に掛ける世代は、メイクアップにコンシーラとパウダーファンデーションやフェイスパウダー等のパウダーを併用する事が多い。その場合、密着力が足りず、メイクがヨレて目立ってしまうことがあり、空調の効いたオフィスなどでは時間の経過とともによりメイクがヨレやすい環境にある。このような条件においてコンシーラとパウダーファンデーションを重ね付けした際のメイクのヨレの抑制については改善の余地があり、特許文献2、3の化粧料でも不十分であることが判明してきた。
【0008】
そこで、本発明の課題は、保湿効果に優れ、べたつきを感じ難く、後肌のふっくら感に優れ、コンシーラとパウダーファンデーションを肌に重ね付けた場合でもメイクがヨレにくい乳化化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねたところ、特定のアルキレンオキシド付加誘導体、特定の共重合体、脂肪酸と4~6価の多価アルコールとのエステル油、高分子乳化剤を組み合わせて乳化化粧料組成物に含有させることにより、保湿効果に優れ、べたつきを感じ難く、後肌のふっくら感に優れ、コンシーラとパウダーを肌に重ね付けた場合でもヨレにくいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のものである。
以下の成分(A)を0.1~20質量%、成分(B)を0.005~0.5質量%、成分(C)を0.1~10質量%および成分(D)を0.01~1%含有し、成分(A)の含有比率と成分(C)の含有比率との合計値が1~25質量%であることを特徴とする、乳化化粧料組成物。

(A) 下記式(I)で表されるアルキレンオキシド付加誘導体

Z-[O(EO)a(PO)b-(BO)c-H]n ・・・(I)

(式(1)において、
Zは、水酸基を3または4個有する化合物からすべての水酸基を除いた残基であり、
nは、水酸基を3または4個有する前記化合物の水酸基数であり、
EO、POおよびBOは、それぞれ、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基を示し、
a、bおよびcは、それぞれ、前記オキシエチレン基EO、前記オキシプロピレン基POおよび前記オキシブチレン基BOの平均付加モル数であり、かつ0≦a≦20、0≦b≦10、0≦c≦5、1≦a+bであり、
aとbが共に0でない場合には、前記オキシエチレン基EOと前記オキシプロピレン基POがランダム付加もしくはブロック付加し、
前記オキシプロピレン基POの前記オキシエチレン基EOに対する含有量比(PO/EO)がモル比で1/5~5/1である。)
(B) 下記式(II)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位、および下記式(III)で表される(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体

【化1】

(式(II)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)

【化2】

(式(III)中、
は水素原子またはメチル基を示し、
は炭素数4~18のアルキル基を示す。)

(C) 炭素数8~22の脂肪酸と、4~6価かつ炭素数5~10の多価アルコールとのエステル化合物

(D) アクリル酸系増粘剤
【発明の効果】
【0011】
本発明の乳化化粧料組成物は、保湿効果に優れ、べたつきを感じにくく、後肌のふっくら感に優れ、コンシーラとパウダーを肌に重ね付けた場合でもヨレにくいという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の乳化化粧料組成物は、下記の成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を少なくとも含有する。以下、各成分について説明する。
【0013】
(A)式(I)で表されるアルキレンオキシド付加誘導体
Z-[O(EO)a(PO)b-(BO)c-H]n ・・・(I)
式(I)中、Zは水酸基を3または4個有する化合物Z(OH)nからすべての水酸基を除いた残基であり、nはZで示される残基を有する化合物の水酸基数であり、EO、POおよびBOはそれぞれオキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基を示す。
式(I)においてnが3よりも小さい場合にはふっくら感が十分に発揮されない場合があり、nが4よりも大きい場合にはべたつきを生じる場合があり、好ましくはn=4である。
【0014】
POで示されるオキシプロピレン基としては、直鎖または分岐鎖状のいずれでもよいが、プロピレンオキシド(1,2-エポキシプロパン)に由来するオキシプロピレン基が好ましい。
BOで示されるオキシブチレン基としては、直鎖または分岐鎖状のいずれでもよいが、1,2-ブチレンオキシドに由来するオキシブチレン基が好ましい。
【0015】
a、bおよびcは、それぞれ、EO、POおよびBOの平均付加モル数であり、0≦a≦20、0≦b≦10、0≦c≦5、1≦a+bである。好ましくは、1≦a≦10であり、更に好ましくは、2≦a≦5であり、特に好ましくは2≦a≦4である。また、好ましくは、0≦b≦5であり、更に好ましくは、b=0である。また、好ましくは、0≦c≦1であり、更に好ましくは、c=0である。
【0016】
式(I)で表されるアルキレンオキシド付加誘導体において、aとbが共に0でない場合、1≦a≦20、1≦b≦10、0≦c≦5であり、1≦a≦10、1≦b≦5、0≦c≦2が好ましく、2≦a≦5、1≦b≦3、1≦c≦2がより好ましい。オキシエチレン基およびオキシプロピレン基は、ランダム状、ブロック状のいずれの形態で水酸基に付加されていても良いが、ふっくら感を得るには、ランダム状に付加されていることが好ましく、POとEOの含有量比(PO/EO)がモル比で1/5~5/1であり、1/2~3/1が好ましく、1/1~2/1がより好ましい。オキシブチレン基は、アルキレンオキシド鎖の末端に、ブロック状に付加される。
【0017】
式(I)で表されるアルキレンオキシド付加誘導体は、公知のアルキレンオキシド付加反応により適宜合成して製造することができる。また、日油株式会社より提供されている「WILBRIDE(登録商標)S-753」(式[I]中、a+b=4.3、c=1、n=3であり、POとEOとの含有量比(PO/EO)=5/8(モル比)である。)、「マクビオブライドMG-10E」(式[II]中、a=2.5、b=0、c=0、n=4)等の市販の製品を成分(A)として用いることもできる。成分(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明の乳化化粧料組成物の合計量を100質量%としたとき、成分(A)の含有比率は、0.1~20質量%である。成分(A)の含有量が少なすぎると、ふっくら感やヨレ抑制効果が十分に発揮されない場合があり好ましくないので、0.1質量%以上とするが、0.2質量%以上が好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、成分(A)の含有比率が20質量%を超えると、後肌感が重くなるなど保湿剤独特の使用感になるため好ましくないので、20質量%以下とするが、10質量%以下が好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
【0019】
(B) 式(II)および式(III)で表される構成単位を含む共重合体
本発明に用いられる成分(B)は、式(II)および式(III)で表される構成単位を含む共重合体である。
なお、式中の「*」は各構成単位の重合反応結合点を示す。
【化1】

(式(II)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】

(式(III)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数4~18のアルキル基を示す。)
【0020】
上記式(II)で示される構成単位は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位である。ここで、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を意味する。
また、上記式(III)で示される構成単位は、(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位である。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸またはメタクリル酸」を意味する。(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基は、炭素数4~18の直鎖または分岐のアルキル基であり、好ましくは直鎖アルキル基である。こうしたアルキル基としては、ブチル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル基等が例示される。なかでも、ブチルまたはオクタデシル基が好ましく、オクタデシル基(別名ステアリル基)がより好ましい。
【0021】
式(II)で示される構成単位の量をn1、および、式(III)で示される構成単位の量をn2としたときに、上記式(II)で示される構成単位と、上記式(III)で示される構成単位の共重合体中におけるそれぞれの含有量の比(n1:n2)は、モル比にて10:1~1:5が好ましく、7:1~1:4が更に好ましく、5:1~1:3が特に好ましい。
【0022】
成分(B)である共重合体の重量平均分子量は、通常10,000~1,000,000であり、好ましくは30,000~900,000であり、さらに好ましくは50,000~800,000である。共重合体の重量平均分子量が10,000未満である場合には、保湿性、ヨレ抑制を損なう可能性があり、一方、共重合体の重量平均分子量が1,000,000を超える場合には、取り扱いが困難となるおそれがある。なお、共重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定され、ポリエチレングリコール換算の分子量で示される。
【0023】
共重合体の重合形態は特に限定されず、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
本共重合体は、上記式(II)および式(III)で示される構成単位以外の構成単位を含んでいなくともよい。本共重合体が上記式(II)および式(III)で示される構成単位以外の構成単位を含む場合には、共重合体中における他の構成単位の含有量は40モル%以下であり、好ましくは20モル%以下である。
【0024】
本共重合体は、公知の製造方法により製造することができる。例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよび(メタ)アクリル酸アルキル、ならびに必要に応じて上記他の構成単位に相当する単量体を含む単量体混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、窒素等の不活性ガス雰囲気下において、溶液重合等の公知の方法により重合させて製造することができる。
その際の各単量体の仕込み量比は、成分(B)である共重合体中における各構成単位の含有量比に相当する比とすればよい。本発明の皮膚外用剤には、成分(B)である共重合体を1種のみ単独で、または2種以上を組み合わせて含有させることができる。
【0025】
本共重合体は、上記した重合方法により製造して用いることもできるが、「リピジュア(登録商標)-PMB」「リピジュア(登録商標)-S」、「リピジュア(登録商標)-NA」、「リピジュア(登録商標)-NR」(日油株式会社製)等の市販の製品を用いることもできる。
【0026】
本発明において、成分(B)の含有量は、乳化化粧料組成物の合計量を100質量%としたとき、0.005~0.5質量%とする。成分(B)の含有比率が0.005質量%未満であると、保湿性やヨレ抑制効果が十分に発揮されない場合があるので、0.005質量%以上とするが、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。また、成分(B)の含有比率が 0.5質量%を超えると、べたつきを生じたり、ふっくら感を感じにくくなる場合があるので、0.5質量%以下とするが、0.4質量%以下が好ましく、0.25質量%以下が更に好ましい。
【0027】
(C) 炭素数8~22の脂肪酸と、4~6価かつ炭素数5~10の多価アルコールとのエステル化合物
本発明に用いられる成分(C)は、炭素数8~22の脂肪酸と、4~6価かつ炭素数5~10の多価アルコールとのエステル化合物である。
炭素数8~22の脂肪酸は分岐であっても直鎖であってもよく、また一価脂肪酸であることが好ましい。また、炭素数8~22の脂肪酸は、飽和脂肪酸であってよく、不飽和脂肪酸であってよいが、飽和脂肪酸が好ましい。また、炭素数8~22の脂肪酸は、ヒドロキシル基を有していても良く、縮合したものでも良い。さらに、ロジン酸を含んでいても良い。また、炭素数8~22の脂肪酸の炭素数は、12以上であることがより好ましく、16以上であることが更に好ましく、また18以下であることが更に好ましい。炭素数8~22の脂肪酸としては、例えば、エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、マカデミアナッツ脂肪酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸などが挙げられる。
これらの中でも、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸縮合物、ロジン酸が好ましい。
【0028】
4~6価かつ炭素数5~10の多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。4~6価とは、1分子中に4~6個の水酸基を有することを意味する。
【0029】
成分(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、具体的な脂肪酸と多価のアルコールとのエステル油として、例えば、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、テトラミリスチン酸ペンタエリスリチル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、テトラ(カプリル/カプリン酸)ペンタエリスリチル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサイソノナン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチルなどが挙げられる。なかでもテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルが好ましく、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルがより好ましい。
【0030】
本発明の乳化化粧料組成物の合計量を100質量%としたとき、成分(C)の含有比率は、0.1~10質量%とする。成分(C)の含有比率が0.1質量%より低いと、保湿性やふっくら感が十分に発揮されない場合があるので、0.1質量%以上とするが、0.2質量%以上が好ましく、0.4質量%以上が更に好ましい。また、成分(C)の含有比率が10質量%を超えると、べたつきを生じたり、ヨレ抑制効果が十分に発揮されない場合があるので、10質量%以下とするが、7質量%以下が好ましく、5質量%以下が更に好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
【0031】
本発明において、成分(A)の含有比率と成分(C)の含有比率との合計値((A)+(C))は、保湿感を向上させ、べたつきを抑制し、後肌のふっくら感を向上させ、ヨレの抑制効果を低減させる観点から、1~25質量%が好ましく、2~15質量%がより好ましく、2~11質量%が更に好ましく、3~10質量%が特に好ましい。
【0032】
(D)アクリル酸系増粘剤
本発明に用いられる成分(D)は、アクリル酸系増粘剤である。成分(D)は乳化剤として、乳化剤型を形成する機能を有しているものが好ましい。成分(D)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記成分(D)として、例えば、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸アミド化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸―(メタ)アクリル酸アルキル共重合体は、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルとの共重合体であり、アルキル基の炭素数は1~30であるが、8~30が好ましい。このうち、アクリル酸・メタクリル酸アルキルの共重合体が好ましく、アクリル酸・メタクリル酸C10-30アルキル共重合体がさらに好ましく、アリル化合物で架橋した架橋型ポリアクリル酸であるアルキル変性カルボキシビニルポリマーが最も好ましい。具体的には、カーボポールETD2020、カーボポール1382、ペムレンTR-1(以上、Lubrizol Advanced Materials社製)、AQUPEC HV-501ER(住友精化株式会社製)などの市販品を使用することができる。
【0034】
また、ポリアクリル酸アミド化合物としては、ポリアクリル酸アミド、アクリル酸アミドとアクリル酸(塩)との共重合体、アクリル酸(塩)とアクリロイルジメチルタウリン(塩)との共重合体、アクリル酸ヒドロキシアルキルとアクリロイルジメチルタウリン(塩)との共重合体などが挙げられる。このうち、ポリアクリル酸アミドが好ましい。
【0035】
具体的には、ポリアクリル酸アミドを含有するものとして、SEPIGEL 305、アクリル酸ヒドロキシアルキルとアクリロイルジメチルタウリン(塩)との共重合体であるアクリル酸ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体を含有するものとして、SIMULGEL NS、アクリル酸(塩)とアクリロイルジメチルタウリン(塩)との共重合体であるアクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体を含有するものとして、SIMULGEL EGやSIMULGEL EPG(以上SEPPIC社製)などの市販品を使用することができる。
【0036】
これらアクリル酸系増粘剤は塩であっても良い。アクリル酸系増粘剤の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン由来のアンモニウム;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸を塩基とする塩が挙げられる。なお、これらの塩は前記のポリマーと前記の塩との中和により得られる。
【0037】
本発明の乳化化粧料組成物の合計量を100質量%としたとき、成分(D)の含有比率は、乳化安定性の観点から0.01~1質量%とする。成分(D)の含有比率は、0.04質量%以上が好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が特に好ましい。また、成分(D)の含有比率は、0.8質量%以下が好ましく、0.6質量%以下が更に好ましい。
【0038】
本発明の乳化化粧料組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記成分(A)~(D)の他に、一般的に化粧料に配合され得る添加剤成分を目的に応じて適宜含有させてもよい。
かかる添加剤成分としては、保湿剤、植物抽出物、抗炎症・肌荒れ防止剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、香料などを配合することも可能である。これらの添加剤成分は、目的に応じて、1種または2種以上を含有させることができる。
また、本発明の乳化化粧料組成物に対して成分(A)~(D)以外の前記添加剤成分が含有されている場合には、乳化化粧料組成物の合計量を100質量%以下としたとき、前記添加剤成分の合計量は、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下とすることが更に好ましい。
【0039】
本発明の乳化化粧料組成物は、成分(A)~(D)、および前記添加剤成分に加えて、典型的には、残部として水を含有する。
【実施例0040】
<評価基準>
40~60代の20名の女性をパネラーとし、下記のとおり、「保湿感」、「後肌のべたつきのなさ」、「後肌のふっくら感」、「重ね塗りした際のヨレの抑制効果」の4項目の官能評価を行った。
【0041】
(1)保湿感
洗顔後、実施例および比較例の各乳化化粧料組成物1gを全顔に塗布し、1時間後の保湿感について、下記の評価基準により点数化した。パネラー20名の評価点の合計点を求めて、下記の判定基準で評価し、合計点が30点以上かつ評価点が0点のパネラーが0人である場合、保湿感に優れる乳化化粧料組成物と判断した。

<評価基準>
2点:手が肌に吸い付くようなしっとり感が感じられる。
1点:手が肌に吸い付くようなしっとり感がやや感じられる。
0点:手が肌に吸い付くようなしっとり感が感じられない。
<判定基準>
◎:合計点が35点以上
○:合計点が30点以上~34点以下
△:合計点が29点以下
【0042】
(2)後肌のべたつきのなさ
洗顔後、実施例および比較例の各乳化化粧料組成物1gを全顔に塗布し、化粧料がなじみ切ったあとのべたつきのなさについて、下記の評価基準により点数化した。パネラー20名の評価点の合計点を求めて、下記の判定基準で評価し、合計点が30点以上かつ評価点が0点のパネラーが0人である場合、べたつきのなさに優れる乳化化粧料組成物と判断した。

<評価基準>
2点:べたつきが感じられない。
1点:べたつきがほとんど感じられない。
0点:べたつきが僅かに感じられる。
<判定基準>
◎:合計点が35点以上
○:合計点が30点以上~34点以下
△:合計点が29点以下
【0043】
(3)後肌のふっくら感
洗顔後、実施例および比較例の各乳化化粧料組成物1gを全顔に塗布し、化粧料がなじみ切ったあとの頬のふっくら感について、下記の評価基準により点数化した。パネラー20名の評価点の合計点を求めて、下記の判定基準で評価し、合計点が30点以上かつ評価点が0点のパネラーが0人である場合、ふっくら感に優れる乳化化粧料組成物と判断した。

<評価基準>
2点:ふっくら感が感じられる。
1点:ふっくら感が少し感じられる。
0点:ふっくら感が感じられない。
<判定基準>
◎:合計点が35点以上
○:合計点が30点以上~34点以下
△:合計点が29点以下
【0044】
(4)重ね塗りした際のヨレ抑制効果
実施例および比較例の各乳化化粧料組成物1gを全顔に塗布し、乳化化粧料が肌になじんだところで、コンシーラ(BKTリキッドコンシーラーA)約5mgを目元に塗布した。さらにパウダーファンデーション(エルファー プロフェッショナルファンデーション ライトオークル)約60mgを全顔に塗布した。この状態で、室温20℃、湿度30%に調整した部屋にて4時間滞在した際の重ね塗りをした箇所のメイクのヨレについて下記の評価基準により点数化した。パネラー20名の評価点の合計点を求めて、下記の判定基準で評価し、合計点が30点以上かつ評価点が0点のパネラーが0人である場合、重ね塗りした際のヨレ抑制効果に優れる乳化化粧料組成物と判断した。

<評価基準>
2点:ヨレがみられない。
1点:ヨレがわずかにみられる。
0点:ヨレが顕著にみられる。
<判定基準>
◎:合計点が35点以上
○:合計点が30点以上~34点以下
△:合計点が29点以下
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
* 水酸化カリウムは各化粧料組成物がpH6.5付近になるように適宜調節する量である。
※1 ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル:日清オイリオグループ株式会社製、コスモール 168ARV
※2 トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル:日清オイリオグループ株式会社製、サラコスWO-6
※3 (アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー:日本ルーブリゾール株式会社製、Carbopol Ultrez 21
※4 ポリアクリル酸アミド:SEPPIC社製、SEPIGEL 305の固形分(固形分40質量%)
表中のポリアクリル酸アミドの含量はSEPIGEL 305の固形分量を記載した。
※5 メチルポリシロキサン:ダウ・東レ株式会社製、DOWSIL SH 200 C Fluid 100cs
※6 トリエチルヘキサノイン:日油株式会社製、パナセート800B
【0048】
【表3】
【0049】
* 水酸化カリウムは各化粧料組成物がpH6.5付近になるように適宜調節する量である。
※1 ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル:日清オイリオグループ株式会社製、コスモール 168ARV
※2 トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル:日清オイリオグループ株式会社製、サラコスWO-6
※3 (アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー:日本ルーブリゾール株式会社製、Carbopol Ultrez 21
※4 ポリアクリル酸アミド:SEPPIC社製、SEPIGEL 305の固形分(固形分40質量%)
表中のポリアクリル酸アミドの含量はSEPIGEL 305の固形分量を記載した。
※5 メチルポリシロキサン:ダウ・東レ株式会社製、DOWSIL SH 200 C Fluid 100cs
※6 トリエチルヘキサノイン:日油株式会社製、パナセート800B
【0050】
表1、表2から明らかなように、本発明の成分を用いた実施例の乳化化粧料組成物はいずれも優れた性能を有していた。
【0051】
一方、表3から明らかなように、必須要件のいずれかを満たさない比較例では、保湿感、べたつきのなさ、ふっくら感、ヨレの抑制のいずれかの面で劣っており、本発明の目的を達成できなかった。
すなわち、比較例1では、成分(A)の含有比率と成分(B)の含有比率との合計量(A+C)が低いので、後肌のふっくら感が低く、重ね塗りした時のヨレの抑制効果も低かった。
比較例2では、成分(A)が含有されていないので、後肌のべたつきのなさとふっくら感が低く、重ね塗りした時のヨレの抑制効果も低かった。
比較例3では、成分(B)が含有されていないので、重ね塗りした時のヨレの抑制効果が低かった。
【0052】
比較例4では、成分(C)が含有されていないので、後肌のふっくら感が低く、重ね塗りした時のヨレの抑制効果も低かった。
比較例5では、成分(C)が含有されておらず、代りにグリセリンエステルである成分(C’)が含有されているので、後肌のふっくら感が低く、重ね塗りした時のヨレの抑制効果も低かった。
比較例6では、成分(A)が含有されておらず、代りに成分(A’)が含有されているので、後肌のふっくら感が低く、重ね塗りした時のヨレの抑制効果も低かった。
【0053】
以下、本発明乳化化粧料組成物のその他の処方例を実施例12~13として挙げる。なお、これらの実施例の乳化化粧料組成物についても、上記の保湿感、べたつきのなさ、ふっくら感、ヨレの抑制効果について各項目を検討したところ、いずれの実施例においても優れた特性を有しており良好な結果を得た。
【0054】
(実施例12 クリームの調製)
(化粧料12)
化粧料12は表4に記載された成分を表4に記載された量で80℃まで加熱分散した後、室温まで冷却することで調製した。
尚、表4中の数字は質量%を表す。
【0055】
【表4】
【0056】
(実施例13 美容液の調製)
(化粧料13)
化粧料13は、表5に記載された成分を表5に記載された量で80℃まで加熱分散した後、室温まで冷却することで調製した。
尚、表5中の数字は質量%を表す。
【0057】
(表5)

ポリオキシエチレンメチルグルコシド(10E.O.) 1
ポリオキシエチレンメチルグルコシド(10P.O.) 0.5
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体 0.05
トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル 1
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 1
ポリアクリルアミド 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.2
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
0.2
オリーブ油果実油 3
シア脂 0.5
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.5
メチルポリシロキサン(100cs) 2
1,3-ブチレングリコール 2
グリセリン 5
キサンタンガム 0.1
水酸化カリウム 適量
ニコチン酸アミド 6
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(24E.O.)(24P.O.) 0.5
フェノキシエタノール 0.5
水溶性コラーゲン 0.001
加水分解コラーゲン 0.001
アルニカ花エキス 0.001
クズ根エキス 0.001
マグワ根皮エキス 0.01
シャクヤク根エキス 0.001
ユズ果実エキス 0.001
ハトムギ種子エキス 0.001
ヨモギ葉エキス 0.001
レモン果汁エキス 0.001
ツバキ種子エキス 0.001
センチフォリアバラ花エキス 0.001
水 残部
合計 100