(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158214
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】防爆形ケーブルグランド
(51)【国際特許分類】
H02G 15/013 20060101AFI20221006BHJP
H02G 15/02 20060101ALI20221006BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H02G15/013
H02G15/02
H02G3/22
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062959
(22)【出願日】2021-04-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】寺田 篤史
【テーマコード(参考)】
5G363
5G375
【Fターム(参考)】
5G363AA01
5G363AA20
5G363BA01
5G363CA01
5G363CA12
5G363CA15
5G363CB01
5G363CB08
5G375AA02
5G375BA01
5G375BB03
5G375BB29
5G375CB06
(57)【要約】
【課題】部品点数を削減できる防爆形ケーブルグランドを提供する。
【解決手段】防爆形ケーブルグランドは、ケーブルが挿通される挿通孔が形成され、弾性を有するスリーブと、スリーブを保持する円筒形状の保持部を有する本体部と、ケーブルが挿通可能であってスリーブを固定する固定部材と、雄ねじ部が形成され、ケーブルが挿通可能であって固定部材を押圧する押圧部材と、雄ねじ部に噛み合う雌ねじ部が形成され、本体部の一部に外嵌されるカバー部とを備え、スリーブは、少なくとも挿通孔の内周面に対応する面がブラスト処理された金型を用いて形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルが挿通される挿通孔が形成され、弾性を有するスリーブと、
前記スリーブを保持する円筒形状の保持部を有する本体部と、
前記ケーブルが挿通可能であって前記スリーブを固定する固定部材と、
雄ねじ部が形成され、前記ケーブルが挿通可能であって前記固定部材を押圧する押圧部材と、
前記雄ねじ部に噛み合う雌ねじ部が形成され、前記本体部の一部に外嵌されるカバー部と
を備え、
前記スリーブは、
少なくとも前記挿通孔の内周面に対応する面がブラスト処理された金型を用いて形成されている、
防爆形ケーブルグランド。
【請求項2】
前記スリーブの硬度は、60度以上75度以下である、
請求項1に記載の防爆形ケーブルグランド。
【請求項3】
前記スリーブの硬度は、より好ましくは、65度以上75度以下である、
請求項2に記載の防爆形ケーブルグランド。
【請求項4】
前記固定部材は、
前記ケーブルの表面を押圧して前記ケーブルを固定する固定具を具備しない、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の防爆形ケーブルグランド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防爆形ケーブルグランドに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルが強く引っ張られてもケーブルが接続された機器に影響がないように、ケーブルをボックスやパネルに固定して保持するケーブルグランドが使用されている。特許文献1には、キャップとスリーブとの間にスリーブコレットを設け、キャップを締め付ける際に、スリーブの径方向外側への変形を制限してスリーブによるケーブルの保持力を確保できるケーブルグランドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のケーブルグランドは、気密・液密性を確保することができるものの、防爆用途には使用できない。防爆形ケーブルグランドは、所定の試験方法によってケーブルに力を加えた場合に、ケーブルの滑りが所定寸法以下でなければならない。このため、防爆形ケーブルグランドは、スリーブに加えて、スリーブを固定するための固定部材に、ケーブルの外周を締め付けて固定するためのクランプやネジ等の固定具を備える必要があり、部品点数が多くなっていた。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、部品点数を削減できる防爆形ケーブルグランドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、防爆形ケーブルグランドは、ケーブルが挿通される挿通孔が形成され、弾性を有するスリーブと、前記スリーブを保持する円筒形状の保持部を有する本体部と、前記ケーブルが挿通可能であって前記スリーブを固定する固定部材と、雄ねじ部が形成され、前記ケーブルが挿通可能であって前記固定部材を押圧する押圧部材と、前記雄ねじ部に噛み合う雌ねじ部が形成され、前記本体部の一部に外嵌されるカバー部とを備え、前記スリーブは、少なくとも前記挿通孔の内周面に対応する面がブラスト処理された金型を用いて形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、固定部材にクランプやネジ等の固定具を備える必要がないので、部品点数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のケーブルグランドの構成を示す分解斜視図である。
【
図2】本実施形態のケーブルグランドの構成を示す分解断面図である。
【
図3】本実施形態のケーブルグランドの構成を示す断面図である。
【
図4】スリーブを作製するための金型の構造の一例を示す外観図である。
【
図5】IEC60079に基づく試験結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態のケーブルグランド100の構成を示す分解斜視図であり、
図2は本実施形態のケーブルグランド100の構成を示す分解断面図であり、
図3は本実施形態のケーブルグランド100の構成を示す断面図である。ケーブルグランド100は、ロックナット11、本体部20、座金12、13、ゴム製のスリーブ30、固定部材40、押圧部としての接続金具50、カバー部60、及び止めねじ14などを備える。本体部20、固定部材40、接続金具50、及びカバー部60は、例えば、カドミウムレスの黄銅などの金属製である。座金12、13は鋼板、ロックナット11は鉄などの金属製である。ロックナット11、本体部20、ゴム製のスリーブ30、固定部材40、接続金具50及びカバー部60それぞれの寸法(例えば、長さ、径など)は、固定するケーブルのサイズに応じて適宜設定されている。
【0010】
本体部20は、ボックスやパネルに挿通させる円筒状の挿通部22、ロックナット11との間でボックスやパネルを挟み込む、外周が六角形状の締め付け部23、及び内部にスリーブ30を保持する円筒形状の保持部21を有する周壁部24を備える。
【0011】
スリーブ30は、円筒形をなし、内部にケーブルが挿通される挿通孔31が形成され、弾性を有する。スリーブ30は、例えば、クロロプレンゴムを用いて製作することができる。スリーブ30の一端は、座金12を介して保持部21の底面部(不図示)に当接され、保持される。
【0012】
固定部材40は、円筒状をなし、ケーブルが挿通可能な挿通孔41を有する。固定部材40は、座金13を介してスリーブ30の他端に当接され、スリーブ30を保持部21内に保持する。
【0013】
接続金具50は、円筒状をなし、ケーブルが挿通可能な挿通孔52を有する。接続金具50は、一端側に雄ねじ部51が形成され、固定部材40に当接して配置される。
【0014】
カバー部60は、円筒状をなし、一端側に、接続金具50の雄ねじ部51に噛み合う雌ねじ部61が形成されている。開口部62に接続金具50の他端側を通して、雄ねじ部51に雌ねじ部61を噛み合わせてカバー部60を軸回りに回すことにより、雌ねじ部61が雄ねじ部51を締め付け、接続金具50が固定部材40の方に向かって押圧される。
【0015】
固定部材40が本体部20に取り付けられた後、止めねじ14を締め付けることにより、固定部材40を本体部20に固定することができる。
【0016】
図2に示すように、本体部20の外周にはOリング25が設けられ、接続金具50の外周にはOリング55が設けられる。Oリング25、55は、例えば、クロロプレンゴムを用いて製作することができる。これにより、密閉性を高めることができる。
【0017】
図3に示すように、固定部材40を所定のトルクで締め付けると、保持部21に保持されたスリーブ30は符号Sで示すように圧縮され、スリーブ30は、挿通孔31の内周面でケーブルを締め付ける。この場合、挿通孔31の内周面全体でケーブルの外周面全体を押圧するので、ケーブルに損傷を与えることを防止できるとともに、ケーブルを確実に固定することができる。
【0018】
図4はスリーブ30を作製するための金型200の構造の一例を示す外観図である。金型Aには円柱状の凸状部201aが形成され、金型Bには円筒状の凹状部201bが形成されている。金型A、Bを閉じることにより、凸状部201aが凹状部201bに挿入される。溶融したクロロプレンゴムを金型200に注入し、冷却することによりクロロプレンゴムを硬化させることにより、スリーブ30を作製することができる。
【0019】
金型200でスリーブ30を作製する際に発生するガスによって金型200が損傷しないように金型200のキャビティ(凸状部201a及び凹状部201bなど)にはメッキが施されている。本実施の形態の金型200は、キャビティにブラスト処理を行ってメッキ処理をしている。すなわち、スリーブ30は、少なくとも挿通孔31の内周面に対応する面がブラスト処理された金型200を用いて形成されている。ブラスト処理は、例えば、グリッド系の鋭角を持つ研削材、あるいはショット系の丸い玉の研削材を噴射することで金型に衝突させ、キャビティ表面に摩擦面を形成する処理である。これにより、スリーブ30の挿通孔31の内周面に適度の粗さを形成することができ、ケーブルの保持力を高めることができ、ケーブルを固定することができる。
【0020】
具体的には、防爆形のケーブルグランドは、IEC60079に規定されている試験方法で試験した場合に、ケーブルの滑りが規定のズレ量以下でなければならないことが規定されている。本実施の形態のスリーブ30は、当該規定を満足することができる。
【0021】
なお、従来の防爆形のケーブルグランドは、前述の規定を満足するため、固定部材40に相当するケーブル固定具を備えている。そして、当該ケーブル固定具には、ケーブルの外周を押さえるための押さえ金具と、押さえ金具を締め付けるためのネジ等の固定具が必須であった。また、ネジで押さえ金具を締め付けた場合、ケーブルの表面上の局所を金具で押さえるので、強く締め付け過ぎることにより、ケーブルの表面に傷が付き、ケーブルに損傷を与える可能性がある。
【0022】
本実施の形態のケーブルグランド100は、スリーブ30だけでケーブルを固定することができるので、
図1又は
図2に示すように、固定部材40は、ケーブルの表面を押圧してケーブルを固定する固定具を具備する必要がない。また、本実施の形態のケーブルグランド100は、
図1に例示する各部材の他に、ケーブルの表面を押圧してケーブルを固定する固定具を具備する必要もない。これにより、部品点数を削減することができる。
【0023】
図5はIEC60079に基づく試験結果の一例を示す説明図である。サンプル#1は、金型のブラスト処理がなく、スリーブ30の硬度を60度にした場合である。サンプル#1では、滑りが規定のズレ量より大きくなるため不合格である。サンプル#2は、金型のブラスト処理があり、スリーブ30の硬度を60度にした場合である。サンプル#2では、滑りがd1となり合格である。少なくとも挿通孔31の内周面に対応する面がブラスト処理された金型200を用いてスリーブ30を形成することにより、ケーブルの滑りを規格内にすることができる。
【0024】
サンプル#3は、金型のブラスト処理があり、スリーブ30の硬度を70度にした場合である。サンプル#3では、滑りがd2となり合格である。すなわち、d2<d1となった。
図5に示すように、スリーブ30の硬度に応じて滑り値が減少する傾向が得られる。
【0025】
上述のように、スリーブ30の硬度は、60度以上75度以下とすることができる。これにより、IEC60079に基づく試験を行った場合のケーブルの滑りをさらに小さくすることができる。なお、硬度を75度よりも大きくすることは難しい場合があるので、硬度の上限は75度とすることが好ましい。
【0026】
また、スリーブ30の硬度は、より好ましくは、65度以上75度以下である。これにより、IEC60079に基づく試験を行った場合のケーブルの滑りをさらに小さくすることができる。
【0027】
本実施の形態の防爆形ケーブルグランドは、ケーブルが挿通される挿通孔が形成され、弾性を有するスリーブと、前記スリーブを保持する円筒形状の保持部を有する本体部と、前記ケーブルが挿通可能であって前記スリーブを固定する固定部材と、雄ねじ部が形成され、前記ケーブルが挿通可能であって前記固定部材を押圧する押圧部材と、前記雄ねじ部に噛み合う雌ねじ部が形成され、前記本体部の一部に外嵌されるカバー部とを備え、前記スリーブは、少なくとも前記挿通孔の内周面に対応する面がブラスト処理された金型を用いて形成されている。
【0028】
本実施の形態の防爆形ケーブルグランドにおいて、前記スリーブの硬度は、60度以上75度以下である。
【0029】
本実施の形態の防爆形ケーブルグランドにおいて、前記スリーブの硬度は、より好ましくは、65度以上75度以下である。
【0030】
本実施の形態の防爆形ケーブルグランドにおいて、前記固定部材は、前記ケーブルの表面を押圧して前記ケーブルを固定する固定具を具備しない。
【0031】
以上に開示された実施の形態及び実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではない。
【符号の説明】
【0032】
11 ロックナット
12、13 座金
14 止めねじ
20 本体部
21 保持部
22 挿通部
23 締め付け部
24 周壁部
25、55 Oリング
30 スリーブ
31 挿通孔
40 固定部材
41 挿通孔
50 接続金具
51 雄ねじ部
52 挿通孔
60 カバー部
61 雌ねじ部
62 開口部
100 ケーブルグランド
200 金型
201a 凸状部
201b 凹状部