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特開2022-158217舶用二重反転プロペラ装置とこれを備えた船舶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158217
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】舶用二重反転プロペラ装置とこれを備えた船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 23/36 20060101AFI20221006BHJP
   B63H 5/10 20060101ALI20221006BHJP
   B63H 23/06 20060101ALI20221006BHJP
   F16C 33/74 20060101ALI20221006BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20221006BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20221006BHJP
   F16N 31/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B63H23/36
B63H5/10
B63H23/06
F16C33/74 Z
F16C17/02 Z
F16J15/16 B
F16N31/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062968
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】502116922
【氏名又は名称】ジャパンマリンユナイテッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】清水 政宏
(72)【発明者】
【氏名】中家 正史
(72)【発明者】
【氏名】西山 才貴
【テーマコード(参考)】
3J011
3J043
3J216
【Fターム(参考)】
3J011AA06
3J011AA12
3J011BA02
3J011JA02
3J011KA02
3J011NA03
3J011RA03
3J043AA16
3J043DA01
3J043DA03
3J043HA04
3J216AA12
3J216AA13
3J216AB15
3J216AB37
3J216AB43
3J216BA06
3J216BA30
3J216CA04
3J216CA06
3J216CC01
3J216CC59
3J216DA14
3J216EA05
(57)【要約】
【課題】シールドレン回収経路を最適位置に停止できる舶用二重反転プロペラ装置とこれを備えた船舶を提供する。
【解決手段】舶用二重反転プロペラ装置100が、外軸12、内軸14、駆動装置30を備える。外軸は、後端部に前プロペラ1が取り付けられ、船尾管軸受16で回転可能に支持される。内軸は、後端部に後プロペラ2が取り付けられ二重反転軸受5,7で回転可能に支持される。船尾側船尾管シール40は、船尾管軸受16の海側に設けられその間をシールする。船尾側二重反転シール50は、船尾側二重反転軸受7の海側に設けられその間をシールする。シールドレン回収装置60は、船尾側船尾管シール又は船尾側二重反転シールにシールエアAを供給しシールエアと共にドレンD1,D2を回収する。さらに、外軸又は内軸の回転位置を検出する回転位置センサ70と、回転位置センサの検出信号により駆動装置を停止させる回転制御装置80と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端部に前プロペラが取り付けられ船尾管軸受で軸心を中心に回転可能に支持された中空状の外軸と、
後端部に後プロペラが取り付けられ船尾側二重反転軸受で前記軸心を中心に回転可能に支持された内軸と、
前記船尾管軸受の海側に設けられその間をシールする船尾側船尾管シールと、
前記船尾側二重反転軸受の海側に設けられその間をシールする船尾側二重反転シールと、
前記船尾側船尾管シール又は前記船尾側二重反転シールにシールエアを供給し該シールエアと共にドレンを回収するシールドレン回収装置と、
前記外軸又は前記内軸の回転位置を検出する回転位置センサと、を備えた、舶用二重反転プロペラ装置。
【請求項2】
前記回転位置センサは、前記外軸又は前記内軸と連結され一体的に回転する部材外面に設けられたマーカと、該マーカを非接触で検出する非接触センサと、を有する、請求項1に記載の舶用二重反転プロペラ装置。
【請求項3】
前記外軸と前記内軸の回転方向を互に逆方向に同期させる二重反転歯車装置と、
前記二重反転歯車装置を駆動する駆動装置と、
前記回転位置センサの検出信号により前記駆動装置を停止させる回転制御装置と、を備える、請求項1に記載の舶用二重反転プロペラ装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、前記二重反転歯車装置の入力軸を回転駆動する内燃機関又は電動モータである、請求項3に記載の舶用二重反転プロペラ装置。
【請求項5】
前記シールドレン回収装置は、前記船尾側船尾管シール又は前記船尾側二重反転シールに前記シールエアを供給する上流側経路と、前記船尾側船尾管シール又は前記船尾側二重反転シールの下端から船内に前記シールエアと共に前記ドレンを回収する下流側経路と、を有する、請求項1に記載の舶用二重反転プロペラ装置。
【請求項6】
前記シールドレン回収装置は、前記船尾側船尾管シールで発生する前部ドレンと、前記船尾側二重反転シールで発生する後部ドレンを別個に回収する、請求項1に記載の舶用二重反転プロペラ装置。
【請求項7】
請求項1に記載の舶用二重反転プロペラ装置を備えた、船舶。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸封装置を有する舶用二重反転プロペラ装置とこれを備えた船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
舶用二重反転プロペラ装置は、前プロペラと後プロペラを同軸に配置し、それぞれを互に逆方向に回転させるプロペラ装置である。この舶用二重反転プロペラ装置には、海水と接する位置に、船尾側船尾管シールと船尾側二重反転シールが設けられている。
船尾側船尾管シールは、外軸と船尾の間に設けられその間をシールする。船尾側二重反転シールは、内軸と外軸の間に設けられその間をシールする。
【0003】
かかる船尾側船尾管シールと船尾側二重反転シールの潤滑油内への海水混入を防止しかつ潤滑油の海水への漏洩を防止するために、圧縮空気(シールエア)を用いたドライシール型の軸封装置(以下、「エアシール装置」)が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6532927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアシール装置は、海水と接する位置(船尾側船尾管シールと船尾側二重反転シール)の海水側シールと潤滑油側シールの間にシールエアを供給する上流側経路と、海水と接する位置から船内にシールエアとドレンを排出する下流側経路とを有する。
この上流側経路と下流側経路を「シールドレン回収経路」と呼ぶ。
【0006】
シールドレン回収経路は、シールエアに同伴されてドレンが円滑に流れるように、シールエアの供給口が高い位置に配置され、排出口が低い位置に配置される。
すなわち、シールドレン回収回路の排出口はシールリングの下端より低い位置に配置される。これにより、シールエアの流れは弱いものの、ドレン回収ユニットまでドレンが流れ落ちることができる。
従って、固定ピッチプロペラ(FPP)や可変ピッチプロペラ(CPP)などの通常軸の場合、シールケーシングは船尾(固定部分)に取り付けられるので、軸の回転・停止にかかわらず位置が変わることがなく、問題なくシールドレン回収経路を形成することができる。
【0007】
一方、二重反転プロペラ装置(CRP)の場合、シールドレン回収経路の一部が内軸又は外軸と共に回転するため、1回転のうちほとんどにおいて経路の大部分が排出口より高い位置に位置する。
【0008】
この場合、運転中(軸が回転している間)は1回転に一度は天地位置が揃い、かつ遠心力も作用するので、問題なくドレン回収ユニットまでドレンが流れて回収できる。
しかし、停船時にはシールドレン回収経路の大部分が排出口よりも高い位置にあり、遠心力も作用しないため、ドレンの自重では排出されず、シールドレン回収経路内にドレンが滞留したままとなる。
その結果、シールの経年劣化や異常の際にドレンが増加し、また、特に停泊期間が長い船の場合には停泊中にシールチャンバ内にドレンが溢れ、海水中への漏洩リスクが高まる。
【0009】
また、二重反転プロペラ装置は、内軸と外軸を逆回転させる二重反転歯車装置を備える。この二重反転歯車装置が例えば遊星歯車式の場合、内軸と外軸が連動しかつその回転速度が異なる。
そのため、内軸と外軸の回転位置が一致するのは数百回転に一回という割合となり、メンテナンス(例えば、軸受の定期観測であるウェアダウン計測の条件出し、この時、両軸ともに頂部に位置を合わせる)の際に、長時間のターニングが必要であった。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、エアシール装置を備え、かつシールドレン回収経路を最適位置に停止させることができる舶用二重反転プロペラ装置とこれを備えた船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、後端部に前プロペラが取り付けられ船尾管軸受で軸心を中心に回転可能に支持された中空状の外軸と、
後端部に後プロペラが取り付けられ船尾側二重反転軸受で前記軸心を中心に回転可能に支持された内軸と、
前記船尾管軸受の海側に設けられその間をシールする船尾側船尾管シールと、
前記船尾側二重反転軸受の海側に設けられその間をシールする船尾側二重反転シールと、
前記船尾側船尾管シール又は前記船尾側二重反転シールにシールエアを供給し該シールエアと共にドレンを回収するシールドレン回収装置と、
前記外軸又は前記内軸の回転位置を検出する回転位置センサと、を備えた、舶用二重反転プロペラ装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の構成によれば、船尾側船尾管シール、船尾側二重反転シール、及びその一方又は両方にシールエアを供給しシールエアと共にドレンを排出するシールドレン回収装置を備えるので、これらによりドライシール型の軸封装置(エアシール装置)を構成することができる。
また、外軸又は内軸の回転位置を検出する回転位置センサを備えるので、その検出信号により外軸及び内軸を停止させて、シールドレン回収経路を最適位置に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の舶用二重反転プロペラ装置の第1実施形態図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4】本発明の舶用二重反転プロペラ装置の第2実施形態図である。
図5図4の部分拡大図である。
図6図5のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0015】
本発明による船舶は、本発明による舶用二重反転プロペラ装置100を備える。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の舶用二重反転プロペラ装置100の第1実施形態図である。
この図において、1は前プロペラ、2は後プロペラ、3は船尾、4は駆動軸、5は船首側二重反転軸受、6はスラスト軸受、7は船尾側二重反転軸受、8は外軸分配装置、10はプロペラキャップである。
外軸分配装置8は、図に破線で示す経路を介して船首側二重反転軸受5、スラスト軸受6、船尾側二重反転シール50(後述する)、船尾側船尾管シール40(後述する)、及び、船尾管軸受16を潤滑する。
【0017】
図1において、舶用二重反転プロペラ装置100は、外軸12、内軸14、二重反転歯車装置20、及び、駆動装置30を備える。
【0018】
外軸12は、中空状であり、後端部に前プロペラ1が取り付けられ、船尾管軸受16で軸心Z-Zを中心に回転可能に支持された外側プロペラ軸である。
内軸14は、後端部に後プロペラ2が取り付けられ二重反転軸受5,7で軸心Z-Zを中心に回転可能に支持された内側プロペラ軸である。
【0019】
二重反転歯車装置20は、外軸12と内軸14の回転方向を互に逆方向に同期させる歯車機構である。
二重反転歯車装置20は、遊星歯車装置、又は、並行ギヤ装置である。並行ギヤ装置は入力軸が1軸と出力軸が2軸の(1入力-2出力)であっても、入力軸が2軸と出力軸が2軸の(2入力-2出力)であってもよい。
【0020】
駆動装置30は、二重反転歯車装置20を駆動する駆動源である。駆動装置30は、二重反転歯車装置20の入力軸を回転駆動する内燃機関又は電動モータである。また、駆動装置30は、内燃機関と共に二重反転歯車装置20の入力軸を回転駆動するターニング装置(図示せず)を備えることが好ましい。
【0021】
図1において、舶用二重反転プロペラ装置100は、さらに、船尾側船尾管シール40、船尾側二重反転シール50、及び、シールドレン回収装置60を備える。
船尾側船尾管シール40は、船尾管軸受16の海側に設けられその間をシールする。
船尾側二重反転シール50は、船尾側二重反転軸受7の海側に設けられその間をシールする。
シールドレン回収装置60は、船尾側船尾管シール40又は船尾側二重反転シール50にシールエアAを供給しシールエアAと共にドレンD1,D2を回収する。
【0022】
図2は、図1の部分拡大図である。
この図において、外軸12と連結され一体的に回転する部材に斜線を付している。
船尾側船尾管シール40は、船尾管軸受16に海水が侵入するのを防止する。
船尾側船尾管シール40は、前部シールケーシング42a、前部シールライナ42b、及び複数の前部シール部材42cを有する。前部シール部材42cは、リップシールであることが好ましい。
【0023】
前部シールケーシング42aは、船尾3に固定された静止部材であり、軸心Z-Zを中心とする円形開口を有する。
前部シールライナ42bは、この例では外軸12の後端部又は前プロペラ1のボスに固定され、前部シールケーシング42aの内側に位置し、外軸12と一体的に回転する。
【0024】
複数(この例では4つ)の前部シール部材42cは、前部シールケーシング42aと前部シールライナ42bとの間に軸方向に間隔を隔てて位置しその間をシールして軸方向に分割された3以上(この例では3つ)の前部環状チャンバ43を形成する。
この例で3つの前部環状チャンバ43を、以下、海水に接する側(図で左側)から、前部第1チャンバ43a、前部第2チャンバ43b、及び、前部第3チャンバ43cと呼ぶ。
【0025】
図1において、シールドレン回収装置60は、上流側経路60Aと下流側経路60Bを有する。上流側経路60Aと下流側経路60Bを実線で示す。
【0026】
上流側経路60Aは、船尾側船尾管シール40又は船尾側二重反転シール50の海水側シールと潤滑油側シールの間にシールエアAを供給する。
図2において、上流側経路60Aは、前部第1チャンバ43aにシールエアAを導入する前部空気流路61を有する。前部空気流路61は、船尾管軸受16と前部シールケーシング42aを通して設けられている。
また、この図において、前部第2チャンバ43bには外軸分配装置8から上述した破線で示す経路で潤滑油が導入されている。
【0027】
図1において、下流側経路60Bは、船尾側船尾管シール40又は船尾側二重反転シール50の下端から船内にシールエアAと共にドレンD1,D2を回収する。
図2において、下流側経路60Bは、前部第1チャンバ43aで発生する前部ドレンD1を船内まで回収する第1ドレン流路65を有する。
【0028】
上述した構成により、前部第1チャンバ43aにシールエアAを供給し、かつ前部第1チャンバ43aの下端から前部ドレンD1を単独に回収することができる。
前部ドレンD1は、前部第1チャンバ43aに侵入した海水と潤滑油の混合液である。
【0029】
前部第1チャンバ43aにおけるシールエアAの圧力は、水深に相当する海水圧力より高く調整されている。従って、海水と接する前部シール部材42cに漏れがある場合でも、海水側にシールエアAが流れ、海水が加圧空気側に流入しないようになっている。
また、前部第2チャンバ43bに供給される潤滑油の圧力は、前部第1チャンバ43aにおけるシールエアAの圧力より高く調整されている。従って、潤滑油と接する前部シール部材42cに漏れがある場合でも、空気側に潤滑油が流れ、シールエアAが潤滑油に流入しないようになっている。
【0030】
従って、上述した構成により、船尾側船尾管シール40において、潤滑油に海水が混入するのを防止するとともに、海水中に潤滑油が流出するのを防止することができる。
【0031】
また、海水と接する前部シール部材42cが損傷するとシールエアAの圧力が低下して海水が前部第1チャンバ43aに流入し、前部ドレンD1に含まれる海水が多くなる。
同様に、潤滑油と接する前部シール部材42cが損傷すると、空気側に潤滑油が流入し、前部ドレンD1に含まれる潤滑油が多くなる。
従って、上述した構成により、前部ドレンD1に含まれる海水と潤滑油の量と比率から、前部第1チャンバ43aを構成するどちらの前部シール部材42cが損傷したかを判別することができる。
【0032】
図2において、船尾側二重反転シール50は、後部シールケーシング54a、後部シールライナ54b、及び複数の後部シール部材54cを有する。
後部シールケーシング54aは、前プロペラ1に固定され軸心Z-Zを中心とする円形開口を有し、外軸12と一体的に回転する。
後部シールライナ54bは、内軸14の後端部又は後プロペラ2のボスに固定され、後部シールケーシング54aの内側に位置し、内軸14と一体的に回転する。
【0033】
複数(この例では3つ)の後部シール部材54cは、後部シールケーシング54aと後部シールライナ54bとの間に軸方向に間隔を隔てて位置しその間をシールして軸方向に分割された2以上(この例では2つ)の後部環状チャンバ55を形成する。
2つの後部環状チャンバ55を、以下、海水に接する側(図で左側)から、後部第1チャンバ55a、後部第2チャンバ55bと呼ぶ。
【0034】
上述した上流側経路60Aは、さらに、後部第1チャンバ55aに、前部第1チャンバ43aからシールエアAを導入する後部空気流路62を有する。後部空気流路62は、図2において、前部シールライナ42b、前プロペラ1、及び、後部シールケーシング54aを通して設けられている。
また、この図において、後部第2チャンバ55bには外軸分配装置8から上述した破線で示す経路で潤滑油が導入されている。
【0035】
図2において、下流側経路60Bは、前部第3チャンバ43cの後部ドレンD2を船内に回収する第2ドレン流路66を有する。
後部ドレンD2は、後部第1チャンバ55aに侵入した海水と潤滑油の混合液である。
前部第3チャンバ43cは、2つの前部シール部材42cにより前部第1チャンバ43aと分離されている。
【0036】
下流側経路60Bは、さらに、後部第1チャンバ55aで発生する後部ドレンD2を前部第3チャンバ43cに排出する第3ドレン流路67を有する。第3ドレン流路67は、後部第1チャンバ55aの下端から前プロペラ1のボスを通って前部第3チャンバ43cに連通する。
【0037】
上述した構成により、図2に示す符号a-bの順で、前部第1チャンバ43aから後部第1チャンバ55aにシールエアAを供給することができる。また、符号b-cの順で、後部第1チャンバ55aの下端から前部第3チャンバ43cを介して後部ドレンD2を前部ドレンD1と分離して船内に回収することができる。
以下、aをエア流入口、cをエアドレン流出口と呼ぶ。
【0038】
図2において、エア流入口aとエアドレン流出口cは、前部シールライナ42bにおいて軸方向に離れており、その間を前部シール部材42cで仕切られている。また、エア流入口aとエアドレン流出口cは、軸心Z-Zに対して対称に位置することが好ましい。
【0039】
図2において、エア流入口aから後部第1チャンバ55a(符号b)までは連続した1本の流路(管路)で構成され、後部第1チャンバ55a(符号b)の下端からエアドレン流出口cまでも連続した1本の流路(管路)で構成されている。従って、シールエアAは船内からa-b-cの順序で流れ、船内に戻るように構成されている。
【0040】
後部第1チャンバ55aにおけるシールエアAの圧力は、水深に相当する海水圧力より高くなるように調整されている。従って、海水と接する後部シール部材54cに漏れがある場合でも、海水側にシールエアAが流れ、海水が加圧空気側に流入しないようになっている。
また、後部第2チャンバ55bに供給される潤滑油の圧力は、後部第1チャンバ55aにおけるシールエアAの圧力より高くなるように調整されている。従って、潤滑油と接する後部シール部材54cに漏れがある場合でも、空気側に潤滑油が流れ、シールエアAが潤滑油に流入しないようになっている。
従って、上述した構成により、船尾側の二重反転シール54において潤滑油に海水が混入するのを防止するとともに、海水中に潤滑油が流出するのを防止することができる。
【0041】
また、海水と接する後部シール部材54cが損傷するとシールエアAの圧力が低下して海水が後部第1チャンバ55aに流入し、後部ドレンD2に含まれる海水が多くなる。
同様に、潤滑油と接する後部シール部材54cが損傷すると、空気側に潤滑油が流入し、後部ドレンD2に含まれる潤滑油が多くなる。
従って、上述した構成により、後部ドレンD2に含まれる海水と潤滑油の量と比率から、後部第1チャンバ55aを構成するどちらの後部シール部材54cが損傷したかを判別することができる。
【0042】
図1において、舶用二重反転プロペラ装置100は、さらに、回転位置センサ70、及び、回転制御装置80を備える。
【0043】
回転位置センサ70は、外軸12の回転位置を検出する。回転位置センサ70は、例えば外軸12と連結され一体的に回転する部材外面に設けられたマーカ72と、これを検出する非接触センサ74と、を有する。
マーカ72は、例えば凸部又は凹部である。また、非接触センサ74は、例えばマーカ72を非接触で検出する光電センサ、磁気センサ、レーザセンサ、などである。
【0044】
回転位置センサ70は、この例では、図2において、前部シールライナ42bに設けられたエアドレン流出口cが、鉛直方向下端に位置するときを検出するように設定するのがよい。なお、この場合のマーカ72の周方向の設置位置は、エアドレン流出口cと同じ周方向位置であることが好ましいが、その他の位置でもよい。
【0045】
回転制御装置80は、回転位置センサ70の検出信号により駆動装置30を停止させる。
駆動装置30が、内燃機関とターニング装置を備えている場合、内燃機関を無負荷にしてターニング装置で外軸12を回転させ、回転位置センサ70の検出信号によりターニング装置を停止させるのがよい。
また、駆動装置30が、電動モータである場合、電動モータを直接停止させてもよい。
また、駆動装置30が、内燃機関のみを備えている場合、内燃機関に設けられたクラッチを切断してもよい。
【0046】
図3は、図2のA-A断面図である。この図において、(A)はエアドレン流出口cが下端近傍にある場合、(B)はエアドレン流出口cが上端近傍にある場合を示している。
【0047】
図3(A)において、前部シールケーシング42aとその内側の前部第1チャンバ43aは静止しており、外軸12と内軸14は互いに逆方向に回転する。また前部シールライナ42bは、外軸12と共に回転する。
シールエアAは、前部シールケーシング42aの頂部から前部第1チャンバ43aに入り、前部シールライナ42bに設けられた単一のエア流入口aから後部空気流路62を通って後部第1チャンバ55aまで供給される。
【0048】
また、後部第1チャンバ55aのシールエアAと後部ドレンD2は、第3ドレン流路67を通り、前部シールライナ42bに設けられた単一のエアドレン流出口cから前部第3チャンバ43c(図2参照)に入り、その底部(下端)から第2ドレン流路66を通って船内に回収される。
従って、停船時に図3(A)の状態である場合、エア流入口aが上端近傍にあり、エアドレン流出口cが下端近傍にあるので、エア流入口aからエアドレン流出口cまでの間の後部ドレンD2を自重とシールエアAの流れにより、a-b-cの順に流すことができる。
【0049】
しかし、停船時に図3(B)の状態である場合、エア流入口aが下端近傍にあり、エアドレン流出口cが上端近傍にあるので、エア流入口aからエアドレン流出口cまでの間の後部ドレンD2が、a-b-cの順に流れず、滞留又は逆流する。
【0050】
上述した第1実施形態によれば、回転制御装置80により、回転位置センサ70の検出信号により、停船時にエアドレン流出口cが最下端又は下端近傍に止まるように駆動装置30を停止させることができる。
従って、停船時にエアドレン流出口cが最下端又は下端近傍に位置することで、後部ドレンD2を自重とシールエアAの流れとにより、a-b-cの順に流して回収することができる。
なお、この例では、前部シールケーシング42aは、船尾3に固定されており、第1ドレン流路65は、前部第1チャンバ43aの下端から前部ドレンD1を回収するので、常に前部ドレンD1を自重で回収することができる。
【0051】
(第2実施形態)
図4は本発明の舶用二重反転プロペラ装置100の第2実施形態図であり、図5図4の部分拡大図である。図4において、外軸12と連結され一体的に回転する部材に斜線を付している。
以下、第1実施形態との相違点を説明する。
【0052】
図4において、内軸14は、駆動装置30の駆動軸4と直結され、同一速度で回転する。
二重反転歯車装置20は、図示しない歯車機構により、外軸12とこれに連結された部材を内軸14の回転方向に対し逆方向に同期して回転する。
この例では、外軸分配装置8の他に、二重反転歯車装置20の船首側に固定された内軸分配装置9を備える。
船尾3の船首側から破線で示す経路で潤滑油が船尾側船尾管シール40に導入されている。
また、外軸分配装置8から破線で示す経路で潤滑油がスラスト軸受6と船尾側二重反転軸受7に導入されている。
さらに、内軸分配装置9から破線で示す経路で潤滑油が船尾側二重反転シール50に導入されている。
【0053】
図5において、上流側経路60Aは、前部空気流路61と後部空気流路63を有し、下流側経路60Bは、第1ドレン流路65と第4ドレン流路68を有する、
船尾3の船首側から実線で示す前部空気流路61を介して船尾側船尾管シール40の前部第1チャンバ43aにシールエアAが導入され、前部第1チャンバ43aの下端から第1ドレン流路65を介して船尾3の船首側にシールエアAと前部ドレンD1が回収される。
また、内軸分配装置9から実線で示す後部空気流路63を介して船尾側二重反転シール50の後部第1チャンバ55aにシールエアAが導入され、後部第1チャンバ55aの下端から第4ドレン流路68を介して内軸分配装置9にシールエアAと後部ドレンD2が回収される。
【0054】
上述した構成により、船尾側船尾管シール40と船尾側二重反転シール50において、潤滑油に海水が混入するのを防止するとともに、海水中に潤滑油が流出するのを防止することができ、かつ前部ドレンD1と後部ドレンD2を別個に回収することができる。
【0055】
この例において、前部シールケーシング42aは、船尾3(静止部分)に固定されており、第1ドレン流路65は、前部第1チャンバ43aの下端から前部ドレンD1を回収するので、常に前部ドレンD1を自重で回収することができる。
【0056】
図4において、回転位置センサ70は、内軸14の回転位置を検出する。
マーカ72は、この例では、例えば内軸14と連結され一体的に回転する部材外面に設けられる。
【0057】
図6図5のB-B断面図である。この図において、(A)はエアドレン流出口cが下端にある場合、(B)はエアドレン流出口cが上端にある場合を示している。
図5図6において、エア流入口aとエアドレン流出口cは、内軸14と内軸分配シールライナ9bにおいて軸方向に離れており、その間をシール部材で仕切られている。また、エア流入口aとエアドレン流出口cは、軸心Z-Zに対して対称に位置することが好ましい。
【0058】
図6(A)において、内軸分配装置9とその内側の内軸分配チャンバ9aは固定されており、その内側で内軸14が回転する。また内軸分配シールライナ9bは、内軸14と共に回転する。
シールエアAは、内軸分配装置9の頂部から内軸分配チャンバ9aに入り、内軸分配シールライナ9bと内軸14に設けられた単一のエア流入口aから後部空気流路63に入り、後部空気流路63を通って後部第1チャンバ55aまで供給される。
【0059】
また、後部第1チャンバ55aのシールエアAと後部ドレンD2は、第4ドレン流路68を通り、内軸分配シールライナ9bと内軸14に設けられた単一のエアドレン流出口cから内軸分配チャンバ9aに入り、内軸分配装置9の底部(下端)から船内に回収される。
従って、停船時に図6(A)の状態の場合、エア流入口aが上端にあり、エアドレン流出口cが下端にあるので、後部ドレンD2を自重とシールエアAの流れとにより、a-b-cの順に流すことができる。
【0060】
逆に、停船時に図6(B)の状態の場合、エア流入口aが下端にあり、エアドレン流出口cが上端にあるので、エア流入口aからエアドレン流出口cまでの間の後部ドレンD2が、a-b-cの順に流れず、滞留又は逆流する。
【0061】
上述した第2実施形態によれば、回転制御装置80により、回転位置センサ70の検出信号により、停船時にエアドレン流出口cが最下端に止まるように駆動装置30を停止させることができる。
従って、停船時にエアドレン流出口cが最下端に位置することで、後部ドレンD2を自重とシールエアAの流れとにより、a-b-cの順に流して回収することができる。
【0062】
上述した回転位置センサ70は、第1実施形態では外軸12の回転位置を検出し、第2実施形態では内軸14の回転位置を検出する。しかし、本発明はこれらに限定されず、外軸12及び内軸14の両方の回転位置を複数の回転位置センサ70で別個に検出してもよい。
外軸12及び内軸14の両方の回転位置を検出する場合、二重反転歯車装置20が例えば遊星歯車式であり、内軸14と外軸12が連動しかつその回転速度が異なる場合でも、内軸14と外軸12の回転位置が一致する時点を検出して停止することができる。これにより、メンテナンス(例えば、軸受の定期観測であるウェアダウン計測の条件出し、この時、両軸ともに頂部に位置を合わせる)の際に、ターニング時間を大幅に短縮できる。
【0063】
上述したように、本発明の構成によれば、船尾側船尾管シール40、船尾側二重反転シール50、及びその一方又は両方にシールエアAを供給しシールエアAと共にドレンD1,D2を排出するシールドレン回収装置60を備える。従ってこれらによりドライシール型の軸封装置(エアシール装置)を構成することができる。
また、外軸12又は内軸14の回転位置を検出する回転位置センサ70を備えるので、その検出信号により外軸12及び内軸14を停止させて、シールドレン回収経路を最適位置に停止させることができる。
【0064】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
A 加圧空気(シールエア)、a エア流入口、c エアドレン流出口、
D1 前部ドレン、D2 後部ドレン、Z-Z 軸心、
1 前プロペラ、2 後プロペラ、3 船尾、4 駆動軸、
5 船首側二重反転軸受、6 スラスト軸受、7 船尾側二重反転軸受、
8 外軸分配装置、9 内軸分配装置、9a 内軸分配チャンバ、
9b 内軸分配シールライナ、10 プロペラキャップ、
12 外軸(外側プロペラ軸)、14 内軸(内側プロペラ軸)、16 船尾管軸受、
20 二重反転歯車装置、30 駆動装置、40 船尾側船尾管シール、
42a 前部シールケーシング、42b 前部シールライナ、
42c 前部シール部材、43 前部環状チャンバ、43a 前部第1チャンバ、
43b 前部第2チャンバ、43c 前部第3チャンバ、53c 前部第3チャンバ、
50 船尾側二重反転シール、54a 後部シールケーシング、
54b 後部シールライナ、54c 後部シール部材、55 後部環状チャンバ、
55a 後部第1チャンバ、55b 後部第2チャンバ、
60 シールドレン回収装置、60A 上流側経路、60B 下流側経路、
61 前部空気流路、62 後部空気流路、63 後部空気流路、
65 第1ドレン流路、66 第2ドレン流路、67 第3ドレン流路、
68 第4ドレン流路、70 回転位置センサ、72 マーカ、
74 非接触センサ、80 回転制御装置、100 舶用二重反転プロペラ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6