(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158219
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ケーブル引き裂き工具
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20221006BHJP
G02B 6/245 20060101ALI20221006BHJP
B26B 27/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H02G1/12 017
G02B6/245
B26B27/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062973
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】竹山 吉洸
【テーマコード(参考)】
2H038
3C061
5G353
【Fターム(参考)】
2H038CA03
3C061AA02
3C061BA07
3C061EE22
5G353AA06
5G353AC02
5G353CA01
5G353CA04
5G353CA07
5G353DA02
(57)【要約】
【課題】ケーブルの拡径した部分を効率よく引き裂くことができるケーブル引き裂き工具を提供する。
【解決手段】一実施形態に係るケーブル引き裂き工具は、ケーブルのシースを引き裂くケーブル引き裂き工具であって、ケーブルが挿入される孔の内面から突出する刃を備え、孔に挿入されたケーブルのシースは、ケーブルの延在方向に沿って孔から引き抜かれるときに刃によって切断され、延在方向に直交する面内における孔の断面形状が非円形状を呈し、孔は、孔に挿入されたケーブルの変形した部分が入り込む空間部を有する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルのシースを引き裂くケーブル引き裂き工具であって、
前記ケーブルが挿入される孔の内面から突出する刃を備え、
前記孔に挿入された前記ケーブルのシースは、前記ケーブルの延在方向に沿って前記孔から引き抜かれるときに前記刃によって切断され、
前記延在方向に直交する面内における前記孔の断面形状が非円形状を呈し、
前記孔は、前記孔に挿入された前記ケーブルの変形した部分が入り込む空間部を有する、
ケーブル引き裂き工具。
【請求項2】
前記孔の前記延在方向の端部には、前記孔に向かうに従って徐々に縮径する傾斜面が形成されている、
請求項1に記載のケーブル引き裂き工具。
【請求項3】
前記延在方向に直交する面内における前記孔の断面形状は、楕円形状である、
請求項1又は請求項2に記載のケーブル引き裂き工具。
【請求項4】
前記刃は、前記孔の断面形状における孔中心からの距離が最小となる孔内面部分から前記孔の内部に突出している、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のケーブル引き裂き工具。
【請求項5】
前記ケーブルの一端にはブーツを介してコネクタが取り付けられており、
前記ケーブルから前記コネクタを外すコネクタ解体部と、前記ブーツを解体するブーツ解体部と、を更に備える、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のケーブル引き裂き工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーブル引き裂き工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケーブルストリッパが記載されている。ケーブルストリッパは軸方向孔部が形成された握り筒部を備え、握り筒部の下方に略コの字形の切欠部が形成されている。切欠部には、輪切り部と軸方向アーム部から成るローラー保持部が形成されており、輪切り部の内周面にはローラーが回転自在に取り付けられている。握り筒部の内部にはカッター取付部材が配置されており、カッター取付部材の先端部にはカッターが取り付けられている。ケーブルをローラーとカッターとの間に差し込んで握り筒部をケーブルの長手方向に引っ張ることによりケーブルの外被覆層が当該長手方向に沿って切断される。
【0003】
特許文献2には、被覆線の皮剥用工具及びチューブ材の切断工具が記載されている。皮剥用工具は、被覆線を保持する固定ホルダと、カッタを備えた回転ホルダとから構成されている。固定ホルダは、蝶番によって開閉自在に設けられた一対のクランプ部材から構成されている。クランプ部材は互いに対向する一対の対向面を有し、対向面には半真円断面の被覆線収容溝が形成される。一対のクランプ部材が閉じられると、被覆線収容溝により真円形状の被覆線保持部が形成される。回転ホルダには一対のカッタが取り付けられるカッタ収容部が設けられており、カッタ収容部内にはカッタと共にガイドが収容されている。回転ホルダには被覆線が装着され、被覆線はカッタの直近にてガイドによって規制されて真円形状に変形する。
【0004】
特許文献3には、ドロップケーブル用引き裂き工具が記載されている。ドロップケーブル用引き裂き工具は、右ハンドルを有する右セパレータ本体と、左ハンドルを有する左セパレータ本体とを備える。右セパレータ本体と左セパレータ本体とは、枢支軸を介して互いに揺動可能に連結されている。左セパレータ本体には左固定刃及び左可動刃が支持されており、右セパレータ本体には右固定刃及び右可動刃が支持されている。左固定刃及び右固定刃にドロップケーブルが配置された状態で左セパレータ本体及び右セパレータ本体が揺動することによってドロップケーブルの保護層が引き裂かれる。
【0005】
特許文献4には、非円形断面形状を有する絶縁層又はケーブルの絶縁装置を除去するための方法及び装置が記載されている。装置は、ケーシングと、ケーシングの内部に通された挿入用パイプとを備える。挿入用パイプの内部には横切り刃物と縦切り刃物とが配置されている。横切り刃物及び縦切り刃物のそれぞれは、挿入用パイプに挿入されたケーブルの絶縁層を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4-118708号公報
【特許文献2】特開2001-352634号公報
【特許文献3】特開2005-181704号公報
【特許文献4】特表平10-504173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、孔を画成する内面から刃が突出しており、この刃が孔に通されたケーブルのシースを引き裂くケーブル引き裂き工具では、孔にケーブルを通すことが難しくなる場合がある。ケーブルは、例えばシールが巻き付けられていることによって、一部が拡径していることがある。ケーブル引き裂き工具の孔にケーブルの拡径した部分が引っ掛かることがある。この場合、ケーブルの拡径した部分を孔にスムーズに通すことができないため、ケーブルの拡径した部分を効率よく引き裂けないということが起こりうる。
【0008】
本開示は、ケーブルの拡径した部分を効率よく引き裂くことができるケーブル引き裂き工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るケーブル引き裂き工具は、ケーブルのシースを引き裂くケーブル引き裂き工具であって、ケーブルが挿入される孔の内面から突出する刃を備え、孔に挿入されたケーブルのシースは、ケーブルの延在方向に沿って孔から引き抜かれるときに刃によって切断され、延在方向に直交する面内における孔の断面形状が非円形状を呈し、孔は、孔に挿入されたケーブルの変形した部分が入り込む空間部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ケーブルの拡径した部分を効率よく引き裂くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るケーブル引き裂き工具を示す斜視図である。
【
図2】ケーブルを引き裂く工程の例を示す図である。
【
図3】
図1のケーブル引き裂き工具のケーブル引き裂き部及びコネクタ解体部を示す側面図である。
【
図4】
図1のケーブル引き裂き工具の刃、及び刃を保持する保持部を示す断面図である。
【
図5】
図3のコネクタ解体部が開かれた状態を示す斜視図である。
【
図6】
図1のケーブル引き裂き工具のブーツ解体部を示す斜視図である。
【
図7】
図3のケーブル引き裂き部の孔にケーブルが通された状態を示す斜視図である。
【
図8】
図7の孔に通されたケーブル、孔及び刃を示す断面図である。
【
図9】
図3のケーブル引き裂き部の孔にケーブルの拡径した部分が通された状態を示す斜視図である。
【
図10】
図9の孔に通されたケーブル、孔及び刃を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。本開示の一実施形態に係るケーブル引き裂き工具は、ケーブルのシースを引き裂くケーブル引き裂き工具であって、ケーブルが挿入される孔の内面から突出する刃を備え、孔に挿入されたケーブルのシースは、ケーブルの延在方向に沿って孔から引き抜かれるときに刃によって切断され、延在方向に直交する面内における孔の断面形状が非円形状を呈し、孔は、孔に挿入されたケーブルの変形した部分が入り込む空間部を有する。
【0013】
このケーブル引き裂き工具では、ケーブルが挿入される孔の内面から刃が突出している。孔に挿入されたケーブルがケーブルの延在方向に沿って当該孔から引き抜かれるときに、孔の内面から突出する刃がケーブルのシースを当該延在方向に沿って切断する。従って、ケーブルの延在方向に沿ってケーブルのシースを切断することができる。ケーブルの延在方向に直交する面内における当該孔の断面形状は非円形状を呈する。非円形状を呈する当該孔は、ケーブルの変形した部分が入り込む空間部を有する。従って、孔にケーブルの拡径した部分が通されて孔の内面でケーブルが圧迫されたときに、ケーブルの変形した部分を孔の空間部に入り込ませることができる。よって、ケーブルの拡径した部分が孔に通されて当該部分が圧迫されたときに、当該圧迫に伴って変形した部分を空間部に逃がすことができるので、ケーブルの拡径した部分の孔への引っ掛かりを抑制して拡径した部分を孔にスムーズに通すことができる。その結果、ケーブルの拡径した部分を効率よく引き裂くことができる。
【0014】
孔の延在方向の端部には、孔に向かうに従って徐々に縮径する傾斜面が形成されていてもよい。この場合、孔の延在方向の端部に孔に向かうに従って徐々に縮径する傾斜面が形成されている。従って、孔よりも拡径された傾斜面を介してケーブルの拡径した部分をスムーズに孔に挿入することができるので、ケーブルの拡径した部分を刃で効率よく引き裂くことができる。
【0015】
延在方向に直交する面内における孔の断面形状は、楕円形状であってもよい。この場合、ケーブルの拡径した部分が通される孔の断面形状をより簡易な形状とすることができる。
【0016】
刃は、孔の断面形状における孔中心からの距離が最小となる孔内面部分から孔の内部に突出していてもよい。この場合、ケーブルの拡径した部分を圧迫する孔内面部分から刃が突出しているので、ケーブルの圧迫された部分に容易に刃を食い込ませることができる。従って、より効率よく刃でシースを引き裂くことができる。
【0017】
ケーブルの一端にはブーツを介してコネクタが取り付けられていてもよい。ケーブル引き裂き工具は、ケーブルからコネクタを外すコネクタ解体部と、ブーツを解体するブーツ解体部と、を更に備えてもよい。この場合、1つのケーブル引き裂き工具によって、シースを引き裂くと共に、コネクタを解体し、更にブーツを解体することができる。従って、シースの引き裂き、コネクタ及びブーツの取り外しを1つの工具で行うことができるので、ケーブルの解体作業を効率よく行うことができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
以下では、図面を参照しながら本開示に係るケーブル引き裂き工具の具体例について説明する。なお、本開示は、以下の具体例に限定されない。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
図1は、実施形態に係るケーブル引き裂き工具1を示す斜視図である。
図1に示されるように、ケーブル引き裂き工具1は、例えば、第1延在部2と、第2延在部3と、第1延在部2及び第2延在部3を揺動自在に連結するヒンジ部4とを備える。例えば、ケーブル引き裂き工具1は金属の切削加工によって形成されている。一例として、ケーブル引き裂き工具1はアルミニウム合金によって構成されている。この場合、ケーブル引き裂き工具1のコストを抑えると共にケーブル引き裂き工具1を軽量化させることができる。例えば、第1延在部2及び第2延在部3のそれぞれは、ヒンジ部4から直線状に延在する。ケーブル引き裂き工具1は、第1延在部2と第2延在部3の間に、ケーブル引き裂き部10と、コネクタ解体部20と、ブーツ解体部30とを有する。
【0020】
第1延在部2は、第2延在部3に対向する第1対向面2bと、第1対向面2bの反対側を向く第1把持面2cとを有する。第2延在部3は、第1延在部2に対向する第2対向面3bと、第2対向面3bの反対側を向く第2把持面3cとを有する。例えば、第1把持面2c及び第2把持面3cを手で持って第1延在部2及び第2延在部3を握ることによって、第1対向面2bと第2対向面3bとの間の距離を狭めることができる。
【0021】
ケーブル引き裂き部10、コネクタ解体部20及びブーツ解体部30は、第1対向面2bと第2対向面3bに設けられている。これにより、ケーブルCの引き裂き、コネクタの解体、及びブーツの解体が第1把持面2c及び第2把持面3cを握ることによって行われる。ケーブル引き裂き部10、コネクタ解体部20及びブーツ解体部30は、この順で並ぶように配置されている。一例として、ブーツ解体部30はヒンジ部4の隣接位置に配置されており、ブーツ解体部30とケーブル引き裂き部10との間にコネクタ解体部20が配置されている。ケーブル引き裂き部10は、コネクタ解体部20から見てヒンジ部4とは反対側に配置されている。
【0022】
図2は、ケーブル引き裂き工具1が用いられるケーブルCを模式的に示している。例えば、ケーブルCの端部にはコネクタKが取り付けられている。コネクタKは、一例として、MPOコネクタである。コネクタKは、例えば、ハウジングK1と、ハウジングK1に連結されたブーツK2とを備える。ブーツK2とケーブルCはハウジングK1に連結されている。本実施形態に係るケーブル引き裂き工具1は、ケーブルCからコネクタKを解体することが可能である。具体例として、ケーブルCに連結されていたコネクタKをケーブルCから解体し、ケーブルCのシースC2をケーブルCの延在方向である方向D1に沿って剥ぐと共に、シースC2の内部に位置する心線C1が束ねられた部分(リボナイズ部分)を残す。一例として、ケーブルCは、外径(直径)が3mmのコードである。
【0023】
図3は、ケーブル引き裂き工具1のケーブル引き裂き部10及びコネクタ解体部20を示すケーブル引き裂き工具1の側面図である。
図1~
図3に示されるように、ケーブル引き裂き部10及びコネクタ解体部20は、第1延在部2及び第2延在部3の延在方向である方向D2に沿って並んでいる。ケーブル引き裂き部10は、ケーブルCのシースC2を方向D1に沿って剥ぐ部分である。コネクタ解体部20は、ケーブルCからコネクタKのハウジングK1を外す部分である。ケーブル引き裂き部10は、ケーブルCが挿入される挿入部に形成された傾斜面11と、傾斜面11からケーブル引き裂き工具1の内部に延びる孔12とを有する。孔12に対して、ケーブルCは孔12の延在方向である方向D3に沿うように挿入される。
【0024】
図4は、方向D2に直交する平面でケーブル引き裂き部10を切断したケーブル引き裂き部10の断面図である。
図1及び
図4に示されるように、傾斜面11は、孔12の方向D3の一端に位置する。傾斜面11は、孔12に向かうに従って徐々に縮径している。一例として、傾斜面11は、C面取りによって形成されている。例えば、傾斜面11は断面内において平坦状を呈する。孔12は、例えば、楕円筒孔形状を呈する。すなわち、孔12を画成する内面12bの形状は楕円筒状とされている。
【0025】
ケーブル引き裂き部10は、孔12の内側に突出する刃13と、刃13を保持する保持部14とを備える。刃13は、例えば、ケーブルCのシースC2を切断する切断部13bと、保持部14に保持される被保持部13cとを有する。切断部13bは、孔12の内面12bから突出している。切断部13bは、方向D3に対して傾斜する傾斜部13dと、傾斜部13dの被保持部13cとは反対側に位置する先端13fと、先端13fから孔12の外側に延びる延在部13gとを含む。刃13では、孔12に挿入されたケーブルCが傾斜部13dに入り込むことにより、ケーブルCのシースC2を方向D3に沿って切断する。
【0026】
保持部14は、例えば、凹状を呈する。保持部14には刃13が嵌め込み可能とされており、保持部14は嵌め込まれた刃13を保持する。保持部14は、傾斜部13dに沿って孔12の内面12bから延びる傾斜部14bと、傾斜部14bの内面12bとは反対側の端部から方向D3に交差する方向に延びる第1延在部14cとを有する。更に、保持部14は、第1延在部14cの傾斜部14bとは反対側の端部から方向D3に沿って延びる第2延在部14dと、延在部13gから第2延在部14dまで延びる第3延在部14fとを有する。刃13は、一例として、平行四辺形状を呈する。保持部14により、刃13は、切断部13bが孔12から突出するように保持される。一例として、ケーブル引き裂き部10は、一対の刃13を備える。一対の刃13の間に孔12が形成されている。これにより、孔12に挿入されたケーブルCのシースC2を一対の刃13で切断することが可能となり、方向D3に沿ってシースC2の縦剥ぎを行うことができる。
【0027】
図5は、コネクタ解体部20を示す斜視図である。
図3及び
図5に示されるように、コネクタ解体部20は、第1対向面2b及び第2対向面3bのそれぞれから窪む凹部21と、凹部21に形成された凸部22とを有する。凹部21は、方向D2に沿って並ぶ一対の側面21bと、一対の側面21bの間において方向D2に延在する底面21cとによって画成されている。凸部22は、例えば、底面21cに対して突出している。凸部22はコネクタKのハウジングK1に入り込む部位であり、凸部22がハウジングK1に入り込むことによってケーブルCからハウジングK1を外すことができる。すなわち、凸部22は、コネクタKのハウジングK1に入り込んでハウジングK1をケーブルCから外す部位に相当する。
【0028】
図6は、ブーツ解体部30を示す斜視図である。ブーツ解体部30は、第2延在部3の第2対向面3bに対して窪む凹部31と、第2対向面3bから突出する凸部32とを備える。凹部31は、方向D2に沿って並ぶ一対の側面31bと、一対の側面31bの間に位置する底面31cとによって画成されている。底面31cは、凸部32とは反対側の端部に位置する底部31dと、底部31dから凸部32まで延びる傾斜部31fとを含む。
【0029】
凸部32は、傾斜部31fの底部31dとは反対側の端部から突出している。一例として、凸部32は、矩形状を呈する。凸部32は、第1把持面2c及び第2把持面3cの間に挟み込まれたブーツK2を潰す部位に相当する。すなわち、第1延在部2と第2延在部3の間に挟まれたブーツK2に凸部32が食い込むことによってブーツK2が潰されてブーツK2が解体される。
【0030】
図7は、ケーブル引き裂き部10と、ケーブル引き裂き部10の孔12に挿入されるケーブルCを示す斜視図である。
図8は、ケーブルCの延在方向(方向D1)に直交する面で切断した孔12及びケーブルCの断面図である。
図7及び
図8に示されるように、例えば、方向D1に直交する面で切断したケーブルCの断面(以下では単に「ケーブルCの断面」とすることがある)の形状はほぼ真円である。
【0031】
方向D1に直交する面で切断した孔12の断面(以下では単に「孔12の断面」とすることがある)の形状は、非円形状である。例えば、孔12の断面の形状は楕円形状である。孔12の断面の短軸L1の長さは、例えば、ケーブルCの直径Eと略同一である。孔12の断面の長軸L2の長さは、ケーブルCの直径Eよりも長い。孔12の断面において、一対の刃13は、楕円の短軸L1に沿って孔12の内部に突出している。刃13は、楕円の短軸L1の端部から孔12の内側に突出している。すなわち、孔12の断面形状における孔中心からの距離が最小となる孔内面部分から孔内部(孔中心)に向かって刃13が突出している。
【0032】
ところで、ケーブルCには、例えばバーコード付きのシールが巻き付けられた部分等、拡径した部分C3が存在する場合がある。よって、仮に孔の断面形状が真円である場合、ケーブルCの拡径した部分C3が孔に通らないということが起こりうる。本実施形態に係るケーブル引き裂き工具1では、孔12の断面の形状が非円形状とされていることによってケーブルCの拡径した部分C3を孔12に通すことが可能である。
【0033】
図9は、ケーブル引き裂き部10と、孔12にケーブルCの拡径した部分C3が挿入された状態を示す斜視図である。
図10は、ケーブルCの延在方向(方向D1)に直交する面で切断した孔12及びケーブルCの拡径した部分C3の断面図である。
図9及び
図10に示されるように、ケーブルCの拡径した部分C3の直径は、孔12の断面の短軸L1の長さよりも長い。しかしながら、ケーブルCの拡径した部分C3は、傾斜面11において圧迫されながら孔12に挿入されるので、孔12の断面の短軸方向(
図10の上下方向)に圧迫された状態となる。この状態でケーブルCの拡径した部分C3は孔12の断面の長軸方向に孔中心から外側に向かうように変形する。孔12は、孔12の断面の長軸方向(
図10では左右方向)のそれぞれにケーブルCの変形した部分が入り込む空間部12cを有する。孔12の断面の短軸方向に圧迫されて当該断面の長軸方向に変形した部分を空間部12cに入り込ませることにより、拡径した部分C3を孔12にスムーズに挿入することができる。従って、孔12の内部に突出する刃13によってケーブルCの拡径した部分C3をシースC2と共にスムーズに切断することできるので、ケーブルCの縦剥ぎを効率よく行うことができる。
【0034】
次に、本実施形態に係るケーブル引き裂き工具1から得られる作用効果について詳細に説明する。ケーブル引き裂き工具1では、ケーブルCが挿入される孔12の内面12bからケーブルCのシースC2を引き裂く刃13が突出している。孔12に挿入されたケーブルCがケーブルCの延在方向(方向D1)に沿って孔12から引き抜かれるときに、孔12の内面12bから突出する刃13がケーブルCのシースC2を当該延在方向に沿って切断する。従って、ケーブルCの延在方向に沿ってケーブルCのシースC2を切断することができる。
【0035】
ケーブルCの延在方向に直交する面で孔12を切断したときの孔12の断面形状は非円形状を呈する。非円形状を呈する孔12は、孔12に挿入されたケーブルCの変形した部分が入り込む空間部12cを有する。従って、孔12にケーブルCの拡径した部分C3が通されて孔12の内面12bでケーブルCが圧迫されたときに、ケーブルCの変形した部分を空間部12cに入り込ませることができる。よって、ケーブルCの拡径した部分C3が孔12に通されて圧迫されても、圧迫に伴って変形した部分C3を空間部12cに逃がすことができるので、ケーブルCの拡径した部分C3の引っ掛かりを抑制して当該部分C3を孔12にスムーズに通すことができる。その結果、ケーブルCの拡径した部分C3をシースC2と共に効率よく引き裂くことができる。
【0036】
孔12の延在方向の端部には、孔12に向かうに従って徐々に縮径するように傾斜する傾斜面11が形成されていてもよい。この場合、孔12の一端に傾斜面11が形成されている。従って、傾斜面11を介してケーブルCの拡径した部分C3をスムーズに孔12に挿入することができるので、ケーブルCの拡径した部分C3を刃13で効率よく引き裂くことができる。
【0037】
ケーブルCの延在方向に直交する面で切断した孔12の断面形状は、楕円形状であってもよい。この場合、ケーブルCの拡径した部分C3が通される孔12の断面形状をより簡易な形状とすることができる。
【0038】
刃13は、孔12の断面形状における孔中心からの距離が最小となる孔内面部分から孔の内部に突出していてもよい。この場合、ケーブルCの拡径した部分C3を圧迫する孔内面部分から刃13が突出しているので、ケーブルCの圧迫された部分に容易に刃13を食い込ませることができる。従って、より効率よく刃13でシースC2を引き裂くことができる。
【0039】
ケーブルCの一端にはブーツK2を介してコネクタKが取り付けられていてもよく、ケーブル引き裂き工具1は、ケーブルCからコネクタKを外すコネクタ解体部20と、ブーツK2を解体するブーツ解体部30と、を更に備えてもよい。この場合、1つのケーブル引き裂き工具1によって、シースC2を引き裂くと共に、コネクタKを解体し、更にブーツK2を解体することができる。従って、シースC2の引き裂き、コネクタK及びブーツK2の取り外しを1つの工具で行うことができるので、ケーブルCの解体作業を効率よく行うことができる。
【0040】
以上、本開示に係るケーブル引き裂き工具の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態に限定されない。すなわち、本発明が特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において種々の変形及び変更が可能であることは当業者によって容易に理解される。例えば、ケーブル引き裂き工具の各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0041】
例えば、前述の実施形態では、金属製であるケーブル引き裂き工具1について説明した。しかしながら、ケーブル引き裂き工具は樹脂製であってもよく、ケーブル引き裂き工具の材料は特に限定されない。前述の実施形態では、孔12の端部に傾斜面11が形成されている例について説明した。しかしながら、傾斜面は形成されていなくてもよい。この場合、指等でケーブルCの拡径した部分C3を圧迫して孔12に挿入することにより、ケーブルCの拡径した部分C3を孔12に挿入することができる。
【0042】
前述の実施形態では、平行四辺形状の刃13及び保持部14について例示した。しかしながら、刃及び保持部の形状は適宜変更可能である。前述の実施形態では、ケーブル引き裂き部10、コネクタ解体部20及びブーツ解体部30を備えるケーブル引き裂き工具1について説明した。しかしながら、コネクタ解体部20及びブーツ解体部30のいずれかを有しないケーブル引き裂き工具であってもよい。前述の実施形態では、孔12の断面の形状が楕円形状である例について説明した。しかしながら、ケーブルCが挿入される孔の断面の形状は、例えば、長円形状又は長方形状等、楕円形状以外の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…ケーブル引き裂き工具
2…第1延在部
2b…第1対向面
2c…第1把持面
3…第2延在部
3b…第2対向面
3c…第2把持面
4…ヒンジ部
10…ケーブル引き裂き部
11…傾斜面
12…孔
12b…内面
12c…空間部
13…刃
13b…切断部
13c…被保持部
13d…傾斜部
13f…先端
13g…延在部
14…保持部
14b…傾斜部
14c…第1延在部
14d…第2延在部
14f…第3延在部
20…コネクタ解体部
21…凹部
21b…側面
21c…底面
22…凸部
30…ブーツ解体部
31…凹部
31b…側面
31c…底面
31d…底部
31f…傾斜部
32…凸部
C…ケーブル
C1…心線
C2…シース
C3…拡径した部分
D1,D2,D3…方向
E…直径
K…コネクタ
K1…ハウジング
K2…ブーツ
L1…短軸
L2…長軸