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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158234
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ガス警報装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062994
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】藤井 元
(72)【発明者】
【氏名】岡本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】秋岡 尚克
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】松村 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】染澤 俊介
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086BA04
5C086CB12
5C086CB16
5C086DA40
5C086FA06
(57)【要約】
【課題】アルコールチェッカーとして利用することができ、できるだけコストをかけずに飲酒後の入浴を防止することができるガス警報装置を提供する。
【解決手段】内部の検知空間13に設置されるガス検知部5と、監視対象ガスとは異なるアルコールガスを含む雑ガスを吸着するフィルタFを介して外部から検知空間13に空気を流入自在な主流入路15とが備えられ、主流入路15を通じて検知空間13に流入する空気中の監視対象ガスをガス検知部5にて検知して所定の警報を行うガス警報装置1であって、フィルタFをバイパスして外部から検知空間13に空気を流入自在なアルコール検知用バイパス路16が備えられている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の検知空間に設置されるガス検知部と、
監視対象ガスとは異なるアルコールガスを含む雑ガスを吸着するフィルタを介して外部から前記検知空間に空気を流入自在な主流入路とが備えられ、
前記主流入路を通じて前記検知空間に流入する空気中の前記監視対象ガスを前記ガス検知部にて検知して所定の警報を行うガス警報装置であって、
前記フィルタをバイパスして外部から前記検知空間に空気を流入自在なアルコール検知用バイパス路が備えられているガス警報装置。
【請求項2】
複数の制御モードを有する制御部と、
前記制御部の前記制御モードを択一的に設定自在なモード設定部とが備えられ、
複数の前記制御モードには、前記主流入路を通じて前記検知空間に流入する空気中の前記監視対象ガスを前記ガス検知部に検知させるように各部の作動状態を制御する通常監視モードと、前記アルコール検知用バイパス路を通じて前記検知空間に流入する空気中の前記アルコールガスを前記ガス検知部に検知させるように各部の作動状態を制御するアルコール検知モードとが含まれている請求項1記載のガス警報装置。
【請求項3】
前記アルコール検知用バイパス路には、前記主流入路における前記フィルタよりも下流側の部位又は前記検知空間に対して人の呼気を流入自在に接続される呼気パイプが備えられている請求項2記載のガス警報装置。
【請求項4】
前記アルコール検知用バイパス路には、前記主流入路における前記フィルタよりも下流側の部位又は前記検知空間に外部から空気を流入自在に開口する流入口と、前記流入口を開閉自在な開閉部と、前記開閉部を操作自在な開閉操作手段とが備えられ、
前記制御部は、前記通常監視モードでは前記開閉部を閉じ状態とし、前記アルコール検知モードでは前記開閉部を開き状態とするように、前記開閉操作手段を制御する請求項2又は3記載のガス警報装置。
【請求項5】
前記ガス検知部を加熱する加熱部が備えられ、
前記制御部は、前記通常監視モードでは前記ガス検知部が第1温度になるように前記加熱部を制御し、前記アルコール検知モードでは前記ガス検知部が前記第1温度よりも低い第2温度になるように前記加熱部を制御する請求項2~4のいずれか1項に記載のガス警報装置。
【請求項6】
前記アルコール検知モードにおいて前記ガス検知部にて前記アルコールガスを検知した場合に、給湯装置の湯はり機能を制限するアルコールロック部が備えられている請求項2~5のいずれか1項に記載のガス警報装置。
【請求項7】
前記アルコールロック部の作動条件を設定自在な作動条件設定部が備えられている請求項6記載のガス警報装置。
【請求項8】
外部の検知領域に人が存在するか否かを検知する人感検知部が備えられ、
前記モード設定部は、前記人感検知部にて人の存在が検知されていることを条件として、前記制御部の前記制御モードを前記アルコール検知モードに設定可能とされている請求項2~7のいずれか1項に記載のガス警報装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス調理機器を有するキッチン等の室内空間に好適に設置されるガス警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴中の死亡事故は推定19000人と言われ、そのうちの約1割が飲酒後に入浴したという調査結果があることから、飲酒後の入浴を防止することが望まれている。
【0003】
そこで、従来、浴槽に入った入浴者の脳活動に関連する値を基準値と比較して、入浴者が脳貧血による失神を起こす可能性があるか否かを判定する判定部と、その判定部にて入浴者が脳貧血による失神を起こす可能性があると判定した場合に、入浴者に対して身体を動かすようにワーニングするワーニング部とが備えられたものが知られている(特許文献1参照)
この特許文献1に記載の技術では、入浴者の脳活動に関連する値を基準値と比較することで、飲酒状態での入浴等に起因して、入浴者が脳貧血による失神を起こす可能性があるか否かを判定している。そして、ワーニング部にて入浴者に対して身体を動かすようにワーニングすることで、入浴者に身体を動かしてもらい、脳貧血による失神の発生を抑制して、入浴事故の発生を防止している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、入浴者が浴槽に入った入浴中に、入浴者が脳貧血による失神を起こす可能性があるか否かを判定しているので、入浴前に入浴者が飲酒状態であることは検知できない。
【0005】
そこで、例えば、市販されている専用のアルコールチェッカーを購入しておき、入浴前にアルコールチェッカーにて飲酒状態であるか否かを検知することが考えられるが、この場合には、専用のアルコールチェッカーを購入しておく必要があり、それだけコストがかかることになる。この点、ガス調理機器を有するキッチン等の室内空間には、可燃性ガスやガス調理機器の不完全燃焼時に発生するCO(一酸化炭素)等の炭化水素ガスを監視対象ガスとし、ガス漏れやCO濃度異常が発生しているか否か等を監視するガス警報装置(例えば、特許文献2参照)が設置されていることから、このガス警報装置をアルコールチェッカーとして利用することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-117004号公報
【特許文献2】特開2002-304682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この種のガス警報装置は、ガス検知部が監視対象ガス以外のガスを検知して警報を行う誤作動を防止するために、内部の検知空間に設置されるガス検知部と、監視対象ガスとは異なるアルコールガスを含む雑ガスを吸着するフィルタを介して検知空間に空気を流入自在な主流入路とが備えられ、主流入路を通じて検知空間に流入する空気中の監視対象ガスをガス検知部にて検知して所定の警報を行うように構成されている。
そのため、主流入路を通流する空気に含まれるアルコールガスが検知空間の上流側のフィルタにて吸着除去されることになり、検知空間に配置されるガス検知部にアルコールガスを検知させてアルコールチェッカーとして利用することはできない。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、アルコールチェッカーとして利用することができ、できるだけコストをかけずに飲酒後の入浴を防止することができるガス警報装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、内部の検知空間に設置されるガス検知部と、
監視対象ガスとは異なるアルコールガスを含む雑ガスを吸着するフィルタを介して外部から前記検知空間に空気を流入自在な主流入路とが備えられ、
前記主流入路を通じて前記検知空間に流入する空気中の前記監視対象ガスを前記ガス検知部にて検知して所定の警報を行うガス警報装置であって、
前記フィルタをバイパスして外部から前記検知空間に空気を流入自在なアルコール検知用バイパス路が備えられている点にある。
【0010】
本構成によれば、主流入路を通じて検知空間に流入する空気中の監視対象ガスをガス検知部にて検知して所定の警報を行う通常の監視動作は行うことができながら、主流入路とは異なるアルコール検知用バイパス路を通じてフィルタをバイパスさせる状態で利用者の呼気や周囲の空気を検知空間に流入させて、その流入空気中のアルコールガスをガス検知部にて検知させることができる。よって、利用者がアルコールチェッカーとして利用して自身が飲酒状態であるか否かを判断することができ、飲酒状態であると判断した場合には入浴を止めることができる。
したがって、アルコールチェッカーとして利用することができ、できるだけコストをかけずに飲酒後の入浴を防止することができるガス警報装置を提供することができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、複数の制御モードを有する制御部と、
前記制御部の前記制御モードを択一的に設定自在なモード設定部とが備えられ、
複数の前記制御モードには、前記主流入路を通じて前記検知空間に流入する空気中の前記監視対象ガスを前記ガス検知部に検知させるように各部の作動状態を制御する通常監視モードと、前記アルコール検知用バイパス路を通じて前記検知空間に流入する空気中の前記アルコールガスを前記ガス検知部に検知させるように各部の作動状態を制御するアルコール検知モードとが含まれている点にある。
【0012】
本構成によれば、モード設定部にて制御部の制御モードを通常監視モードに設定することで、制御部が各部の作動状態を制御して主流入路から検知空間に流入する空気中の監視対象ガスをガス検知部に検知させることができ、監視対象ガスの監視を適切に行うことができる。
また、モード設定部にて制御部の制御モードをアルコール検知モードに設定することで、制御部が各部の作動状態を制御してアルコール検知用バイパス路を通じて検知空間に流入する空気中のアルコールガスをガス検知部に検知させることができ、利用者のアルコールチェック等を適切に行うことができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、前記アルコール検知用バイパス路には、前記主流入路における前記フィルタよりも下流側の部位又は前記検知空間に対して人の呼気を流入自在に接続される呼気パイプが備えられている点にある。
【0014】
本構成によれば、アルコール検知モードにおいて、検知空間に接続される呼気パイプに利用者が呼気を吹き込むことで、フィルタをバイパスしてフィルタを通さずに検知空間内に利用者の呼気を流入させて、その呼気中のアルコールガスをガス検知部にて検知させることができる。よって、利用者が飲酒状態であるか否かを実際の呼気に基づいて精度良く判断することができる。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、前記アルコール検知用バイパス路には、前記主流入路における前記フィルタよりも下流側の部位又は前記検知空間に外部から空気を流入自在に開口する流入口と、前記流入口を開閉自在な開閉部と、前記開閉部を操作自在な開閉操作手段とが備えられ、
前記制御部は、前記通常監視モードでは前記開閉部を閉じ状態とし、前記アルコール検知モードでは前記開閉部を開き状態とするように、前記開閉操作手段を制御する点にある。
【0016】
本構成によれば、制御部は、通常監視モードでは、開閉部を閉じ状態にして主流入路におけるフィルタよりも下流側の部位又は検知空間に外部から空気を流入自在に開口する流入口を閉じることで、アルコール検知用バイパス路から検知空間へのフィルタを通さない空気の流入を確実に防止しながら、主流入路から検知空間に流入する空気中の監視対象ガスをガス検知部に検知させることができる。
そして、制御部は、アルコール検知モードでは、開閉部を開き状態にして主流入路におけるフィルタよりも下流側の部位又は検知空間に外部から空気を流入自在に開口する流入口を開くことで、その流入口を通じてフィルタをバイパスさせる状態でアルコール検知用バイパス路にて空気を検知空間に流入させて、その流入空気中のアルコールガスをガス検知部にて検知させることができる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、前記ガス検知部を加熱する加熱部が備えられ、
前記制御部は、前記通常監視モードでは前記ガス検知部が第1温度になるように前記加熱部を制御し、前記アルコール検知モードでは前記ガス検知部が前記第1温度よりも低い第2温度になるように前記加熱部を制御する点にある。
【0018】
本構成によれば、通常監視モードでは、加熱部にてガス検知部を高温側の第1温度に加熱することで、炭化水素ガス等の高温側に感度ピークを有する監視対象ガスをガス検知部に精度良く検知させることができる。一方、アルコール検知モードでは、加熱部にてガス検知部を低温側の第2温度に加熱することで、低温側に感度ピークを有するアルコールガスをガス検知部に精度良く検知させることができる。このように、ガス検知部の温度を制御部の制御モードに応じた適切な温度に調整することで、通常監視モードにおける監視対象ガスの検知とアルコール検知モードにおけるアルコールガスの検知の両方を精度良く行うことができる。
【0019】
本発明の第6特徴構成は、前記アルコール検知モードにおいて前記ガス検知部にて前記アルコールガスを検知した場合に、給湯装置の湯はり機能を制限するアルコールロック部が備えられている点にある。
【0020】
本構成によれば、アルコール検知モードにおいてガス検知部にてアルコールガスを検知した場合には、浴槽に所定量のお湯を貯めるための給湯装置の湯はり機能をアルコールロック部にて自動的に制限(例えば、中止や禁止)することができ、利用者が飲酒状態で入浴することを強制的に抑制することができる。
【0021】
本発明の第7特徴構成は、前記アルコールロック部の作動条件を設定自在な作動条件設定部が備えられている点にある。
【0022】
本構成によれば、作動条件設定部にてアルコールロック部の作動を許す時間帯やタイミング等の条件を設定することができるので、例えば、アルコールロック部の作動を許す時間帯やタイミングを、利用者が飲酒状態である可能性の高い時間帯やタイミング、或いは、利用者以外の同居家族が入浴しようとしていない時間帯やタイミング等に制限することができ、アルコールロック部が頻繁に作動して生活利便性が低下するのを抑制することができる。
【0023】
本発明の第8特徴構成は、外部の検知領域に人が存在するか否かを検知する人感検知部が備えられ、
前記モード設定部は、前記人感検知部にて人の存在が検知されていることを条件として、前記制御部の前記制御モードを前記アルコール検知モードに設定可能とされている点にある。
【0024】
本構成によれば、人感検知部の検知領域にアルコールチェックの対象となる利用者が存在せずに利用者のアルコールチェックができない状況下で制御部の制御モードがアルコール検知モードに設定されるのを禁止することができ、通常監視モードでの監視対象ガスの監視が無用に解かれるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ガス警報装置の全体概略構成を示す図
図2】ガス警報装置におけるガス検知部周りの概略構成を示す図
図3】通常監視モードの動作を示すフローチャート
図4】アルコール検知モードの動作を示すフローチャート
図5】別実施形態のガス検知部周りの概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のガス警報装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、このガス警報装置1は、利用者の住居等の施設に設置されるもので、ガス調理機器が設置されるキッチン等において床部2と天井部3との間の室内空間を検知領域4として天井部3や天井部3側の壁部等に配設されている。ガス警報装置1は、ガス調理機器で使用される都市ガスやプロパンガス等の可燃性ガス、ガス調理機器の不完全燃焼時に発生するCO(一酸化炭素)等の炭化水素ガスを監視対象ガスとし、検知領域4にてガス漏れやCO濃度異常が発生しているか否か等を監視している。
【0027】
このガス警報装置1には、ガス検知部5、当該ガス検知部5を加熱するヒータ等の加熱部6、人感検知部7、スピーカ等の音声出力部8、制御部9、記憶部10、通信部11等が備えられている。
【0028】
記憶部10には、ガス警報装置1を作動させるための各種の情報が記憶されており、制御部9が、記憶部10に記憶されている各種の情報を用いて、ガス警報装置1の作動状態を制御している。制御部9は、通信部11を介して有線通信又は無線通信により、給湯装置12やサーバ装置等の外部装置との間で各種の情報を送受信可能に構成されている。給湯装置12には、それの作動状態を制御する制御部12Bや通信部12A、所定の温度で所定量のお湯を浴槽に貯める湯はり機能を行う湯はり機能部12C等が備えられている。
【0029】
ガス検知部5は、半導体式のガスセンサ等からなり、加熱部6により所定の温度に加熱された状態で監視対象ガスを含む各種のガスを検知自在に構成されている。このガス検知部5は、図1及び図2に示すように、ガス警報装置1の内部の検知空間13に配置され、当該検知空間13に流入する空気中の監視対象ガスを含む各種のガスを検知するように構成されている。そして、制御部9は、ガス検知部5の検知情報に基づいてガス漏れやCO濃度異常が発生しているか否か等を監視している。
【0030】
図2に示すように、ガス警報装置1の内部の検知空間13は、周壁部14Aと底壁部14Bとを有して天井側がフィルタFにて閉塞された筒状部材14の内部空間にて構成されており、ガス検知部5は、筒状部材14の内部空間において底壁部14Bに固定されている。フィルタFは、シリカゲル等の吸着材層を有して監視対象ガスとは異なるアルコールガスを含む雑ガスを吸着するように構成されている。
【0031】
ガス警報装置1には、雑ガスを吸着するフィルタFを介して検知空間13に空気A1を流入自在な主流入路15が備えられている。主流入路15は、ガス警報装置1の外装ケーシング1Aの通気孔1a及びフィルタFを通って外部から検知空間13に至る流路であり、通気孔1aを通してガス警報装置1の内部に流入した空気A1をフィルタFを通して検知空間13内に導いている。この主流入路15を通じてフィルタFを通過してアルコールガスを含む雑ガスが除去された状態で検知領域4の空気A1が検知空間13内に流入するようになっている。
【0032】
制御部9は、複数の制御モードとして、主流入路15を通じて外部から検知空間13に流入する空気A1中の監視対象ガスをガス検知部5に検知させるように各部の作動状態を制御する通常監視モードを有している。また、詳細は後述するが、制御部9には、複数の制御モードから一つの制御モードを択一的に設定するモード設定部9Aが備えられている。
【0033】
図3のフローチャートに示すように、モード設定部9Aにて通常監視モードが設定されると、加熱部6によりガス検知部5が第1温度(例えば400℃程度)になるように加熱され、ガス検知部5がメタンガス等の高温側に感度ピークを有する監視対象ガスを検知するのに適した温度状態に調整される(図3のステップ♯1)。
【0034】
そして、室内空間等の検知領域4から主流入路15を通じて検知空間13に流入する空気A1中からガス検知部5にて監視対象ガスが検知され、その検知される監視対象ガスの濃度が設定濃度以上になると、ガス漏れやCO濃度以上であるとして、音声出力部8による音声出力等によりガス漏れ用やCO濃度異常用の警報の出力が行われる(図3のステップ♯2のYes、ステップ♯3)。
【0035】
このように、通常監視モードでは、フィルタFにて雑ガスが除去された状態で検知空間13に流入する空気A1をガス検知部5に接触させることで、監視対象ガス以外の雑ガス(アルコールガス等)を検知して警報を行う誤作動を防止しながら、検知領域4にてガス漏れやCO濃度異常が発生しているか否か等を監視することができる。
【0036】
そして、このガス警報装置1には、上述した監視対象ガスを検知するための主流入路15とは別に、雑ガスを吸着するフィルタFをバイパスして検知空間13に空気A2を流入自在なアルコール検知用バイパス路16が備えられている。
【0037】
例えば、アルコール検知用バイパス路16は、主流入路15におけるフィルタFよりも下流側の部位である検知空間13に対して、空気A2としての人の呼気Amを流入自在に接続される可撓性の呼気パイプ16Aを備えて構成されている。呼気パイプ16Aの一端部16aは、筒状部材14の周壁部14A等を貫通してフィルタFを介さずに検知空間13に配置され、呼気パイプ16Aの他端部16bは、人の存在する検知領域4に人の届く高さ位置等に配置される。
【0038】
この呼気パイプ16Aの他端部16bから人が呼気Amを吹き込むことで、フィルタFをバイパスしてフィルタFを通さずにガス警報装置1の内部の検知空間13内に人の呼気Amを流入させることができる。なお、この呼気パイプ16Aには、検知空間13の空気が外部に漏洩するのを防止する逆流防止弁を設けることができる。
【0039】
ガス警報装置1の制御部9は、通常監視モードとは異なる別の制御モードとして、アルコール検知用バイパス路16を通じて外部から検知空間13に流入する空気A2(Am)中のアルコールガスをガス検知部5に検知させるように各部の作動状態を制御するアルコール検知モードを有している。制御部9は、ガス検知部5の検知情報に基づいて、呼気Amを吹き込んだ人が飲酒状態であるか否か等を判定する。また、制御部9は、図1に示すように、モード設定部9Aに加えて、アルコール検知モードにおいてガス検知部5にてアルコールガスを検知した場合に給湯装置12の湯はり機能を制限(アルコールロック)するアルコールロック部9Bと、アルコールロック部9Bの作動条件を設定自在な作動条件設定部9Cが備えられている。
【0040】
モード設定部9Aは、制御部9の制御モードを複数の制御モードから一つの制御モードを択一的に設定するものであり、本実施形態では、制御部9の制御モードを通常監視モードとアルコール検知モードとの間で切り替えるように構成されている。
例えば、モード設定部9Aは、基本的には通常監視モードに設定しておき、所定のアルコール検知モード設定条件が満たされた場合に設定時間(例えば5秒間)だけ一時的にアルコール検知モードに切り替えるように構成することができる。この場合、アルコール検知モード設定条件としては、例えば、アルコール検知用バイパス路16にて空気A2(Am)の通流が検知手段にて検知されたり、ガス警報装置1と通信自在な操作端末等に対する人の操作等によりアルコール検知モードが選択されたりする第1条件を含む条件等とすることができる。
【0041】
ちなみに、人感検知部7は、赤外線式の人感センサ等からなり、検知領域4に人が存在するか否かを検知可能に構成されている。例えば、人感検知部7は、設定周期(例えば、1秒)で人の存否の検知動作を繰り返し行っており、設定回数(例えば、3回)連続して人の存在を検知した場合に、人の存在であると確定し、設定期間(例えば、1分間)連続して人の存在を検知していない場合に、人が存在しないと確定する。
【0042】
アルコールロック部9Bは、飲酒状態の人が入浴するのを強制的に抑制するために、アルコール検知モードにおいてガス検知部5にてアルコールガスが検知された場合に給湯装置12の湯はり機能を制限するものである。アルコールロック部9Bは、アルコール検知モードにおいてアルコールガスが検知され、その検知されるアルコールガスの濃度が設定濃度以上になった場合に、通信部11を介して給湯装置12にアルコールロック指令を送信して給湯装置12の湯はり機能を制限するように構成されている。アルコールロック指令としては、例えば、作動中(湯はり中)の湯はり機能部12Cの作動停止や、作動前の湯はり機能部12Cの一定時間の作動禁止、湯はり機能部12Cの作動スケジュールの解除等を給湯装置12の制御部12Bが行うための指令とすることができる。
【0043】
作動条件設定部9Cは、給湯装置12の湯はり機能が頻繁に制限されるのを抑制するために、アルコールロック部9Bの作動を許す作動条件を設定するものである。作動条件設定部9Cは、ガス警報装置1と通信自在な操作端末等に対する人の操作により、利用者が飲酒状態である可能性の高い時間帯やタイミング、或いは、利用者以外の同居家族が入浴しようとしていない時間帯やタイミング等を作動条件に設定することができ、例えば、夜間や就寝時間帯などの時間帯、家族が飲酒をした日や同居家族の就寝後などの任意のタイミングを作動条件に設定することができる。
【0044】
図4のフローチャートに示すように、アルコール検知モード設定条件が満たされてモード設定部9Aにてアルコール検知モードが設定されると、加熱部6によりガス検知部5が第1温度よりも低い第2温度(例えば250℃程度)になるように加熱され、ガス検知部5が低温側に感度ピークを有するアルコールガスを検知するのに適した温度状態に調整される(図4のステップ♯11)。
【0045】
そして、アルコール検知用バイパス路16としての呼気パイプ16Aの他端部16bから人が呼気Amを吹き込むことで、フィルタFを通さずにガス警報装置1の検知空間13に外部から空気A2(Am)が流入される。その流入空気A2(Am)中からガス検知部5にてアルコールガスが検知され、その検知されるアルコールガスの濃度が設定濃度以上になると、飲酒状態であるとして、音声出力部8による音声出力等により飲酒用の警報の出力や入浴を抑制するための入浴注意喚起の出力が行われる(図4のステップ♯12のYes、ステップ♯13)。
【0046】
また、時間帯やタイミング等のアルコールロック部の作動条件が満たされている場合には、アルコールロック部9Bにより通信部11を介して給湯装置12に湯はり機能を制限するためのアルコールロック指令が送られ、給湯装置12の湯はり機能が制限される(図4のステップ♯14のYes、ステップ♯15)
【0047】
なお、このアルコール検知モードにおいても、ガス検知部5にて監視対象ガスを検知することができ、ガス検知部5にて監視対象ガスが検知され、その検知される監視対象ガスの濃度が設定濃度以上になると、ガス漏れやCO濃度以上であるとして、音声出力部8による音声出力等によりガス漏れ用やCO濃度異常用の警報の出力が行われる。
【0048】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0049】
(1)前述の実施形態では、図2に示すように、アルコール検知用バイパス路16に、可撓性の呼気パイプ16Aが備えられている場合を例に示したが、アルコール検知用バイパス路16は、フィルタFをバイパスして外部から検知空間13に空気を流入できるものであれば、各種の構成を採用することができる。
【0050】
例えば、呼気パイプ16Aに代えて又は加えて、図5に示すように、主流入路15におけるフィルタFよりも下流側の検知空間13に外部から空気を流入自在に開口する流入口16Dと、流入口16Dを開閉自在な開閉部16Eと、開閉部16Eを自動で操作自在な開閉操作手段16Fとが備えられていてもよい。この場合、制御部9は、通常監視モードでは開閉部16Eを閉じ状態(図5(a)参照)とし、アルコール検知モードでは開閉部16Eを開き状態(図5(b)参照)とするように開閉操作手段16Fを制御する。
【0051】
図5に示す例では、検知空間13を内部に有する筒状部材14の周壁部14Aの一方側に流入口16Dが開口形成され、ガス検知部5を挟んで相対向する周壁部14Aの他方側に流出口16Gが開口形成されている。また、流入口16Dには、開閉部16Eとして検知空間13側に揺動開閉自在な扉体D1が備えられ、流出口16Gには、筒状部材14の外部の隣接空間側に揺動開閉自在な扉体D2が備えられている。そして、図5(a)に示すように、通常監視モードが設定されている場合は、扉体D1、D2は付勢手段により閉じ状態(閉じ姿勢)に付勢されているので、検知空間13へのフィルタFを通さない空気の流入を防止しながら、主流入路15にてフィルタFを通して検知空間13に空気A1を流入させることができる。
【0052】
開閉操作手段16Fは、モード設定部9Aにてアルコール検知モードが設定されると、図4のステップ♯11において付勢手段の付勢力に抗して自動的に扉体D1、D2を開き状態(開き姿勢)に変更するように構成されている。開閉操作手段16Fは、ガス警報装置1の内部において筒状部材14の外部の隣接空間に設置されるファン16fから構成されている。
【0053】
制御部9は、アルコール検知モードが設定されると、ファン16fを作動させてファン16fの吸引作用により扉体D2及び扉体D1を開き姿勢に変更して流出口16G及び流入口16Dを開口させ、流入口16Dから検知空間13の内部に流入して流出口16Gから検知空間13の外部に排出される空気A2の流れを生じさせることができる。このようにファン16fを作動させることで、流入口16Dを通じてフィルタFをバイパスしてフィルタFを通さずにガス警報装置1の内部の検知空間13に空気A2を流入させることができる。
【0054】
なお、前述の実施形態と同じく、モード設定部9Aは、基本的には通常監視モードに設定しておき、所定のアルコール検知モード設定条件が満たされた場合に設定時間(例えば5秒間)だけ一時的にアルコール検知モードに切り替えるように構成することができる。 更に、本実施形態では、アルコール検知モード設定条件として、アルコール検知用バイパス路16にて空気A2の通流が検知手段にて検知されたり、ガス警報装置1と通信自在な操作端末等に対する人の操作等によりアルコール検知モードが選択されたりする第1条件に加えて、人感検知部7(図1参照)にて人の存在が検知されている第2条件を含む条件等としてもよい。
【0055】
ちなみに、人感検知部7は、赤外線式の人感センサ等からなり、検知領域4(図1参照)に人が存在するか否かを検知可能に構成されている。例えば、人感検知部7は、設定周期(例えば、1秒)で人の存否の検知動作を繰り返し行っており、設定回数(例えば、3回)連続して人の存在を検知した場合に、人の存在であると確定し、設定期間(例えば、1分間)連続して人の存在を検知していない場合に、人が存在しないと確定する。
【0056】
(2)前述の実施形態では、アルコール検知用バイパス路16を構成する呼気パイプ16A(図2参照)が、検知空間13に対して接続されている場合を例に示したが、フィルタFが主流入路15の途中部位等に設けられている場合には、主流入路15におけるフィルタFよりも下流側の部位に対して接続されていてもよい。
【0057】
(3)前述の実施形態では、アルコール検知用バイパス路16を構成する流入口16D(図5参照)が、検知空間13に対して開口されている場合を例に示したが、フィルタFが主流入路15の途中部位等に設けられている場合には、主流入路15におけるフィルタFよりも下流側の部位に対して開口されていてもよい。
【0058】
(4)前述の実施形態では、アルコール検知用バイパス路16の流入口16D(図5参照)を開閉自在な開閉部16Eを開閉操作する開閉操作手段16Fが、開閉部16Eとしての扉体D1を吸引作用により開閉操作するファン16fから構成されている場合を例に示したが、例えば、開閉部16Eとしての扉体D1を直接的な回転駆動や移動により開閉操作する駆動手段等から構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 ガス警報装置
4 検知領域
5 ガス検知部
6 加熱部
7 人感検知部
9 制御部
9A モード設定部
9B アルコールロック部
9C 作動条件設定部
12 給湯装置
13 検知空間
15 主流入路
16 アルコール検知用バイパス路
16A 呼気パイプ
16D 流入口
16E 開閉部
16F 開閉操作手段
A1 空気
A2 空気
Am 呼気
F フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5