IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人京都工芸繊維大学の特許一覧

特開2022-158276導波モード共鳴フィルタ、導波モード共鳴フィルタを備えた網膜投影装置及び合波器
<>
  • 特開-導波モード共鳴フィルタ、導波モード共鳴フィルタを備えた網膜投影装置及び合波器 図1
  • 特開-導波モード共鳴フィルタ、導波モード共鳴フィルタを備えた網膜投影装置及び合波器 図2
  • 特開-導波モード共鳴フィルタ、導波モード共鳴フィルタを備えた網膜投影装置及び合波器 図3
  • 特開-導波モード共鳴フィルタ、導波モード共鳴フィルタを備えた網膜投影装置及び合波器 図4
  • 特開-導波モード共鳴フィルタ、導波モード共鳴フィルタを備えた網膜投影装置及び合波器 図5
  • 特開-導波モード共鳴フィルタ、導波モード共鳴フィルタを備えた網膜投影装置及び合波器 図6
  • 特開-導波モード共鳴フィルタ、導波モード共鳴フィルタを備えた網膜投影装置及び合波器 図7
  • 特開-導波モード共鳴フィルタ、導波モード共鳴フィルタを備えた網膜投影装置及び合波器 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158276
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】導波モード共鳴フィルタ、導波モード共鳴フィルタを備えた網膜投影装置及び合波器
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20221006BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20221006BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B27/02 Z
G02B6/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063044
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】裏 升吾
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 純一
【テーマコード(参考)】
2H038
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H038AA41
2H038BA06
2H199CA04
2H199CA06
2H199CA29
2H199CA42
2H199CA53
2H199CA66
2H199CA67
2H249AA07
2H249AA18
2H249AA62
(57)【要約】
【課題】導波モード共鳴フィルタを楕円体面状に形成することで、ある1点から照射される光を高効率で反射して目的とする集光点に集めることができ、例えば優れたAR用のアイウェア等を提供することを目的とする。また、楕円体面を有する新規な導波モード共鳴フィルタを用いて効率が良くコンパクトに構成可能な合波器を提供することも目的とする。
【解決手段】透明基板1と、前記透明基板1上に形成された薄膜導波路2と、前記透明基板1又は前記薄膜導波路2に形成されたグレーティング構造3と、を備え、前記グレーティング構造3を楕円体面上に形成した。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板上に形成された薄膜導波路と、
前記透明基板又は前記薄膜導波路に形成されたグレーティング構造と、を備え、
前記グレーティング構造が楕円体面上に形成されていることを特徴とする導波モード共鳴フィルタ。
【請求項2】
前記透明基板が楕円体面を有するとともに、前記薄膜導波路が前記透明基板の楕円体面に沿って形成されており、
前記グレーティング構造が、前記透明基板の楕円体面上又は前記薄膜導波路上に形成されている請求項1記載の導波モード共鳴フィルタ。
【請求項3】
前記楕円体面の第1焦点に入射光の発散点が配置され、前記楕円体面の第2焦点に照射対象が配置される請求項1又は2記載の導波モード共鳴フィルタ。
【請求項4】
前記グレーティング構造を構成する複数のグレーティングラインがZ軸に対して回転対称である場合にグレーティングラインの(x,z)座標が以下の連立方程式の解として与えられる請求項1乃至3いずれか一項に記載の導波モード共鳴フィルタ。
【数8】
ここでk0=2π/λ、a:楕円体のX軸方向半径、b:楕円体のZ軸方向半径、f:楕円体における原点から焦点までの距離、λ:レーザの波長、N:導波モードの実効屈折率である。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の導波モード共鳴フィルタと、
前記導波モード共鳴フィルタにおける楕円体面の第1焦点をレーザ光の出射点とする半導体レーザと、を備え、
前記楕円体面の第2焦点に瞳孔が配置されるように構成された網膜投影装置。
【請求項6】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の導波モード共鳴フィルタと、
前記導波モード共鳴フィルタにおける楕円体面の第1焦点に設けられ、レーザ光を反射して前記導波モード共鳴フィルタ上に走査する偏向素子と、を備え、
前記楕円体面の第2焦点に瞳孔が配置されるように構成された網膜投影装置。
【請求項7】
共鳴波長の異なる複数の前記導波モード共鳴フィルタが厚み方向に並べて設けられた請求項5又は6いずれか一項に記載の網膜投影装置。
【請求項8】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の複数の導波モード共鳴フィルタと、
複数の前記導波モード共鳴フィルタにおける各楕円体面の第1焦点上にそれぞれ設けられ、波長の異なるレーザ光をそれぞれ射出する複数の半導体レーザと、を備え、
複数の前記導波モード共鳴フィルタが、前記複数の半導体レーザの射出するレーザ光の波長に対応した共鳴波長を有するように構成されており、
複数の前記導波モード共鳴フィルタにおける各楕円体面の第2焦点がほぼ一致するように構成された合波器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波モード共鳴フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
拡張現実(AR: Augmented Reality)は、人工の仮想像を実世界の像に重畳させる技術であって、メガネタイプのアイウェアやヘッドマウントディスプレイ等として様々なものが開発されている。
【0003】
例えばAR用のアイウェアは、テンプル(つる)に設けられたレーザ光の出射口と、ハーフミラーで形成されたレンズと、を備え、実世界からの光はレンズを透過させて瞳孔内に入射するようにしつつ、レンズで反射されたレーザ光を瞳孔内に入射させて仮想像を形成している。
【0004】
しかしながら、仮想像と実世界の像を合成するためにハーフミラーを利用しているため、仮想像及び実世界の像が暗くなってしまうという問題がある。このような問題を解決するには、レンズをレーザ波長のみを高効率で反射して、その他の波長についてはそのまま透過するように構成することが考えられる。
【0005】
上記のような反射特性と透過特性を有したものとして、導波モード共鳴フィルタが知られている。図7に示すように基本的な導波モード共鳴フィルタ100Aは、平板状をなす透明基板1Aと、透明基板1A上に形成された高屈折率の薄膜導波路2Aと、薄膜導波路2A上に形成されたサブ波長グレーティング3Aとを備えている。導波モード共鳴フィルタ100Aへの入射光のうち下記の式(1)で定義される共鳴条件式を満たすものは図8のグラフに示すように高効率で反射され、それ以外の波長の光は高効率で透過する。
【0006】
【数1】
ここで、λres:共鳴波長、Λ:グレーティング周期、neff:導波モード屈折率、θ:入射光のグレーティングへの入射角である。
【0007】
ところで、平板状をなす導波モード共鳴フィルタ100AをAR用のアイウェアに適用して、フィルタ100Aで反射されるレーザ光を瞳孔に集光するには、別途集光レンズを必要として装置が大型となる。
【0008】
このような問題を解決するために特許文献1では、導波モード共鳴フィルタが円筒面状をなす、あるいは、放物面状をなすものにすることが提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の円筒面状又は放物面状の導波モード共鳴フィルタでは、上述したアイウェアのような用途に適用することはレーザ光源と瞳孔との位置関係の制約によって難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013―47763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、導波モード共鳴フィルタを楕円体面状に形成することで、ある1点から照射される光を高効率で反射して目的とする集光点に集めることができ、例えば優れたAR用のアイウェア等を提供することを目的とする。また、楕円体面を有する新規な導波モード共鳴フィルタを用いて効率が良くコンパクトに構成可能な合波器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明に係る導波モード共鳴フィルタは、透明基板と、前記透明基板上に形成された薄膜導波路と、前記透明基板又は前記薄膜導波路に形成されたグレーティング構造と、を備え、前記グレーティング構造が楕円体面上に形成されていることを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、前記楕円体面の第1焦点を発散点として前記グレーティング構造に対して照射される光は前記楕円体面の第2焦点に集光することができる。このため、前記第1焦点をレーザ光走査位置として、前記第2焦点に瞳孔を配置すれば前記グレーティング構造像で反射されて形成される仮想像の光を全て瞳孔内に導くことができる。また、前記導波モード共鳴フィルタにより反射される共鳴波長をレーザ波長に合わせることでレーザ光を高効率で反射しつつ、実世界からの光は高効率で透過させることができる。このため、本発明に係る導波モード共鳴フィルタをAR用のデバイス等に適用すれば、ユーザが視認できる仮想像と実世界の像の合成像を従来よりも明るくできる。
【0014】
さらに、楕円体面を有する本発明に係る導波モード共鳴フィルタはAR用のデバイスに限られず、例えば複数の半導体レーザを用いて白色レーザ光を高効率で合波する合波器としても好適に利用できる。
【0015】
前記薄膜導波路及び前記グレーティング構造が楕円体面をなすように製造するのを簡単にするには、前記透明基板が楕円体面を有するとともに、前記薄膜導波路が前記透明基板の楕円体面に沿って形成されており、前記グレーティング構造が、前記透明基板の楕円体面上又は前記薄膜導波路上に形成されているものであればよい。
【0016】
例えばAR用等の網膜投影装置や合波器等に適したものとしては、前記楕円体面の第1焦点にレーザの発散点が配置され、前記楕円体面の第2焦点に照射対象が配置されるものが挙げられる。
【0017】
例えばレーザ光を楕円体面上において反射させる場合に入射角によらず高効率で反射されるようにするための具体的なグレーティング構造の構成例としては、前記グレーティング構造を構成する複数のグレーティングラインがZ軸に対して回転対称である場合にグレーティングラインの(x,z)座標が以下の連立方程式の解として与えられるものが挙げられる。
【0018】
【数2】
ここでk0=2π/λ、a:楕円体のX軸方向半径、b:楕円体のZ軸方向半径、f:楕円体における原点から焦点までの距離、λ:レーザの波長、N:導波モードの実効屈折率である。
【0019】
本発明に係る導波モード共鳴フィルタの好適な適用例としては、本発明に係る導波モード共鳴フィルタと、前記導波モード共鳴フィルタにおける楕円体面の第1焦点をレーザ光の出射点とする半導体レーザと、を備え、前記楕円体面の第2焦点に瞳孔が配置されるように構成された網膜投影装置が挙げられる。このようなものであれば、レーザ光を高効率で反射し、非常に明るい仮想像を網膜上に投影しながら、実世界からの光についても高効率で透過させることができる。このため、仮想像と実世界の像の合成像は従来よりも明るい像でき、AR用のデバイスとして好適である。
【0020】
本発明に係る導波モード共鳴フィルタを用いた網膜投影デバイスの別の構成例としては、前記導波モード共鳴フィルタと、前記導波モード共鳴フィルタにおける楕円体面の第1焦点に設けられ、レーザ光を反射して前記導波モード共鳴フィルタ上に走査する偏向素子と、を備え、前記楕円体面の第2焦点に瞳孔が配置されるように構成されたものが挙げられる。
【0021】
網膜上に投影される仮想像を単色ではなく、カラーにするには、共鳴波長の異なる複数の前記導波モード共鳴フィルタが厚み方向に並べて設けられたものであればよい。
【0022】
本発明に係る複数の導波モード共鳴フィルタと、複数の前記導波モード共鳴フィルタにおける各楕円体面の第1焦点上にそれぞれ設けられ、波長の異なるレーザ光をそれぞれ射出する複数の半導体レーザと、を備え、複数の前記導波モード共鳴フィルタが、前記複数の半導体レーザの射出するレーザ光の波長に対応した共鳴波長を有するように構成されており、複数の前記導波モード共鳴フィルタにおける各楕円体面の第2焦点がほぼ一致するように構成された合波器であれば、例えば三原色のレーザ光を高効率でそれぞれ反射して合波し、従来よりも性能の良い白色光の合波器を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
このように本発明に係る導波モード共鳴フィルタによれば、楕円体面上に前記グレーティング構造が形成されているので、楕円体面の第1焦点を発散点とする特定の波長を有する光だけを高効率で反射して第2焦点に集光することができる。また、特定の波長以外の光については高効率で透過させることができる。このため、第1焦点にレーザ光の走査点を配置し、第2焦点に瞳孔を配置することで視認される仮想像と実世界の像の双方を非常に明るくできる。したがって、本発明に係る導波モード共鳴フィルタは、AR用デバイス等の用途に適したものであると言える。また、楕円体面という新規な構成を有している本発明に係る導波モード共鳴フィルタは、AR用デバイスに限られず、例えば複数波長のレーザ光を高効率で合波する合波器としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の導波モード共鳴フィルタを用いた第1実施形態における拡張現実用レーザアイウェアを示す模式図。
図2】第1実施形態における導波モード共鳴フィルタが楕円体面をなす点について示す模式図。
図3】第1実施形態における導波モード共鳴フィルタの模式的断面図。
図4】第1実施形態における拡張現実用レーザアイウェアの光源、瞳孔、導波モード共鳴フィルタの位置関係について示す模式図。
図5】第2実施形態における拡張現実用レーザアイウェアを示す模式図。
図6】第3実施形態における合波器を示す模式図。
図7】従来の平板状をなす導波モード共鳴フィルタを示す模式図。
図8】導波モード共鳴フィルタの反射特性と透過特性の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の導波モード共鳴フィルタ100を用いた第1実施形態の網膜投影装置について図1乃至図4を参照しながら説明する。
【0026】
図1に示すように第1実施形態の網膜投影装置は拡張現実用レーザアイウェア200であって、テンプルT(つる)のレンズL側に設けられた半導体レーザSLの出射口からレンズLの内側に向かってレーザ光を照射し、反射されたレーザを瞳孔内に導くことで網膜上に仮想像を投影するものである。また、レンズLの外側からの光はほぼそのまま透過させて瞳孔内に入射するように構成されている。
【0027】
より具体的には、レンズLの少なくとも一部には図2乃至図4に示すように楕円体面をなす導波モード共鳴フィルタ100が形成されている。導波モード共鳴フィルタ100は、図3に示すようにレンズLの一部をなす楕円体状の透明基板1と、透明基板1においてレンズLの内側面上に積層された薄膜導波路2と、薄膜導波路2上に形成された多数のグレーティングラインを具備するグレーティング構造3と、を備えている。ここで、右手系の座標系として頭部の前後方向をX軸、頭部の上下方向をY軸、頭部の横幅方向をZ軸に設定し、楕円体の原点を楕円体の中心に設定した場合、図4に示すように導波モード共鳴フィルタ100の楕円体面の第1焦点はレーザ光の出射口が配置される。また、楕円体面の第2焦点には瞳孔が配置されるようにその曲率が規定されている。すなわち、第1焦点はレーザ光の発散点となっており、全てのレーザ光が第2焦点に集光されるようにしてある。
【0028】
また、レーザ光は導波モード共鳴フィルタ100上の異なる位置には異なる入射角度で入射するが、それぞれの入射角度に対して高効率で反射されるようにグレーティング構造3のグレーティング周期は設定されている。以下にグレーティング構造3がZ軸に関して回転対称とした場合の詳細について図4を参照しながら説明する。
【0029】
まず、図4のように座標系を設定した場合に楕円周は数3における式(A)のように表すことができる。
【0030】
【数3】
ここで、a:楕円体のX軸方向半径、b:楕円体のZ軸方向半径
【0031】
導波モード共鳴フィルタ100への入射するレーザ光の位相ΦINは数4のように記述できる。
【0032】
【数4】
ここで、f:楕円体における原点から焦点までの距離、λ:レーザの波長
【0033】
また、楕円周長は数5のように表すことができる。
【0034】
【数5】
さらに楕円周上において薄膜導波路2を伝搬する導波光の位相ΦGMは、導波モードの実効屈折率をNとすると数6のように表すことができる。
【0035】
【数6】
グレーティングの位相シフトによって入射光を導波光に結合するための条件は数7の式(B)のように表すことができる。
【0036】
【数7】
グレーティング構造3を構成するグレーティングライン(凸凹)の位置座標は、式(A)及び式(B)の連立方程式の解として与えられる。
【0037】
このように構成された第1実施形態の導波モード共鳴フィルタ100を用いた拡張現実用レーザアイウェア200であれば、仮想像を形成するためのレーザ光はレンズLの内側において高効率で反射し、かつ、レンズLの外側から入射する実世界からの光はほぼ減衰させないようにできる。また、導波モード共鳴フィルタ100が楕円体状に形成されているので、第1焦点に半導体レーザSLの出射口を配置することでレーザ光が導波モード共鳴フィルタ100のどの位置に照射されても、反射されたレーザ光を第2焦点上にある瞳孔内へと入射させて網膜上に明瞭な像として投影することができる。これらの結果、仮想像と実世界の像を網膜上で合成させても従来と比較して明るい状態にできる。
【0038】
次に第2実施形態の拡張現実用レーザアイウェア200について図5を参照しながら説明する。なお、第1実施形態での説明において対応する部分については同じ符号を付すこととする。
【0039】
第1実施形態では1つの導波モード共鳴フィルタ100でレーザ光を反射するように構成されるので、仮想像は単色で形成されるものであった。これに対して第2実施形態では複数波長のレーザを反射してカラーの仮想像を網膜上に投影できるように構成されている。
【0040】
具体的には図5に示すように第2実施形態の拡張現実用レーザアイウェア200は、複数の共鳴波長の異なる楕円体面状をなす導波モード共鳴フィルタ100R、100G、100Bを備えているとともに、複数種類の波長のレーザ光を偏向素子MMで反射し各導波モード共鳴フィルタ100R、100G、100Bに対して走査するように構成されている。ここで、レーザは三原色であるRGBの波長を含むRGBレーザであって、各導波モード共鳴フィルタ100R、100G、100Bの第1焦点は一致させてあり、その第1焦点上には偏向素子MMとして例えばMEMSミラーが設けられている。また、複数の導波モード共鳴フィルタ100はRに相当する波長のレーザを反射するR用導波モード共鳴フィルタ100Rと、Gに相当する波長のレーザを反射するG用導波モード共鳴フィルタ100Gと、Bに相当する波長のレーザを反射するB用導波モード共鳴フィルタ100Bを含む。各導波モード共鳴フィルタ100は厚み方向に対してレンズLの外側からR、G、Bの順番に並べてある。また、R用導波モード共鳴フィルタ100Rは1つの第1透明基板11上の内側面に薄膜導波路2及びグレーティング構造3を設けることで形成されている。このR用導波モード共鳴フィルタ100Rの設けられている第1透明基板11の外側面には無反射コートARCが形成されている。一方、G用導波モード共鳴フィルタ100Gと,B用導波モード共鳴フィルタ100Bは第2透明基板12の外側面と内側面のそれぞれに薄膜導波路2とグレーティング構造3を設けることで形成されている。図5から明らかないように各導波モード共鳴フィルタ100R、100G、100Bの第1焦点及び第2焦点は一致するようにその楕円体面の形状やグレーティング構造3が調整されている。
【0041】
このように構成された第2実施形態の拡張現実用レーザアイウェア200であれば、RGBの3波長のレーザをそれぞれ高効率で反射して、瞳孔内に入射させ網膜内に投影できる。したがって、網膜上にはカラーの仮想像を形成することができ、さらに高度なAR体験を実現できるようになる。
【0042】
次に本発明の導波モード共鳴フィルタ100を用いた第3実施形態の合波器300について説明する。
【0043】
第3実施形態の合波器300は、RGBの3波長のレーザ光を合波して白色のレーザを得るためのものである。図6に示すように断面が概略U字状をなし、3つの楕円体面を具備する透明基板1Uに対して各楕円体面に薄膜導波路2及びグレーティング構造3を設けて外側からR用導波モード共鳴フィルタ100R、G用導波モード共鳴フィルタ100G、B用導波モード共鳴フィルタ100Bをこの順番で形成している。第3実施形態では各導波モード共鳴フィルタ100R、100G、100Bの第1焦点はそれぞれ異なる場所に設定されており、各第1焦点には各導波モード共鳴フィルタ100に対応させてR用半導体レーザSLR、B用半導体レーザSLB、G用半導体レーザSLBが設けてある。一方、第2焦点についてはそれぞれ一致させてあり、当該第2焦点上に照射対象である光ファイバガイドLGの端面が配置してある。なお、この場合、利用する透過光がないため、R用導波モード共鳴フィルタ100Rに代えて波長選択性のない通常の楕円体ミラーを用いてもよい。
【0044】
このように構成された第3実施形態の合波器300であれば、各半導体レーザSLR、SLG、SLBから発散して出射される波長の異なるレーザ光を高効率で反射して光ファイバガイドLGの端面に集光して、白色レーザ光に合波することができる。また、このように構成された合波器300で高効率でありながら非常にコンパクトな構成にすることが可能となる。
【0045】
その他の実施形態について説明する。
【0046】
本発明に係る導波モード共鳴フィルタは、薄膜導波路上にグレーティング構造が形成されているものに限られず、透明基板上にグレーティング構造を形成し、グレーティング構造の上に薄膜導波路を形成したものであってもよい。要するにグレーティング構造が楕円体面上に形成されているものであればよい。また、楕円体面とは2つの異なる焦点が定義できる3次元曲面を含む概念であり、1つの焦点しか定義できない放物面はこの概念に含まれない。
【0047】
網膜投影装置の一例として拡張現実用レーザアイウェアを説明したが、実世界からの光を透過させて瞳孔内に入射させない拡張現実(AR)用又は仮想現実(VR)用のヘッドマウントディスプレイとして本発明の導波モード共鳴フィルタを用いても構わない。また、アイウェアに半導体レーザを設けずに別の場所で発生させたレーザを光ファイバガイド等で導光して、導波モード共鳴フィルタの近傍で出射するようにしてもよい。また、導波モード共鳴フィルタと使用するレーザ光の波長をそれぞれ4つ以上にしてさらに高精細なカラーの仮想像を形成するようにしてもよい。逆に導波モード共鳴フィルタとレーザ光の波長を2つにしてもよい。
【0048】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や、実施形態の一部同士の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0049】
100・・・導波モード共鳴フィルタ
1 ・・・透明基板
2 ・・・薄膜導波路
3 ・・・グレーティング構造
SL ・・・半導体レーザ
200・・・アイウェア(網膜投影装置)
300・・・合波器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8