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特開2022-158300車両用荷箱におけるシート開閉駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158300
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】車両用荷箱におけるシート開閉駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 7/04 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B60P7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063080
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾原 歩希
(57)【要約】
【課題】シート開閉用モータと、モータとバッテリ間の通電回路に設けられて、モータを正転方向・逆転方向の何れにも回転させ得るようにバッテリからモータへの通電態様を切換可能な通電態様切換手段と、モータへの通電を停止させ得る停止スイッチとを備えるシート開閉駆動装置において、モータへの通電停止後は、シート停止検知手段がシート停止を検知するまでの間の短時間に限って、モータのショート回路を形成する特定切換状態に通電態様切換手段を保持可能として、ショート回路形成のための電力を節減する。
【解決手段】シートSを開閉駆動するモータML,MRへの通電停止に関係してシートが停止したことを検知可能なシート停止検知手段21と、モータへの通電停止後、シート停止検知手段21がシートSの停止を検知するまでの間だけ、モータのショート回路が形成されるよう通電態様切換手段DL,DRを特定切換状態に保持する自己保持手段Hとを備える。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部(O)を有して車体フレーム(1)上に搭載される荷箱(2)と、その荷箱(2)に軸支されて前記開口部(O)に対し所定の開き位置(So)と閉じ位置(Sc)との間で開閉揺動可能なシート(S)と、このシート(S)を開閉駆動する電動式のモータ(ML,MR)と、このモータ(ML,MR)に通電可能に接続されるバッテリ(B)と、前記モータ(ML,MR)と前記バッテリ(B)間の通電回路(10)に設けられて、該モータ(ML,MR)を正転方向・逆転方向の何れにも回転させ得るように前記バッテリ(B)から前記モータ(ML,MR)への通電態様を切換可能な通電態様切換手段(DL,DR)と、前記バッテリ(B)から前記モータ(ML,MR)への通電を停止可能な停止スイッチ(SWm,SWm′)とを少なくとも備えた、車両用荷箱におけるシート開閉駆動装置において、
前記停止スイッチ(SWm,SWm′)による前記通電の停止に関係して前記シート(S)が停止したことを検知可能なシート停止検知手段(21)と、
前記モータ(ML,MR)への通電停止後、前記シート停止検知手段(21)が前記シート(S)の停止を検知するまでの間だけ、前記モータ(ML,MR)のショート回路が形成されるよう前記通電態様切換手段(DL,DR)を特定切換状態に保持する自己保持手段(H)とを備えたことを特徴とする、車両用荷箱におけるシート開閉駆動装置。
【請求項2】
前記自己保持手段(H)は、前記通電回路(10)の、前記バッテリ(B)とモータ(ML,MR)間を直列に接続する接続路(10Lp,10Rp)を開閉可能な常開型の自己保持用開閉手段(RyL,RyR)を含み、
前記自己保持用開閉手段(RyL,RyR)は、前記通電停止後においては、前記シート停止検知手段(21)が前記シート(S)の停止を検知するまでは閉じられ、その停止検知後は開かれることを特徴とする、請求項1に記載の車両用荷箱におけるシート開閉駆動装置。
【請求項3】
前記シート停止検知手段(21)は、前記停止スイッチ(Swm,SWm′)による前記通電の停止から所定時間経過したことに基づいて前記シート(S)の停止を検知することを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両用荷箱におけるシート開閉駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用荷箱におけるシート開閉駆動装置、特に開口部を有して車体フレーム上に搭載される荷箱と、荷箱に軸支されてその開口部に対し所定の開き位置と閉じ位置との間で開閉揺動可能なシートと、このシートを開閉駆動する電動式のモータと、このモータに通電可能に接続されるバッテリと、モータとバッテリ間の通電回路に設けられて、モータを正転方向・逆転方向の何れにも回転させ得るようにバッテリからモータへの通電態様を切換可能な通電態様切換手段と、バッテリからモータへの通電を停止可能な停止スイッチとを少なくとも備えた、車両用荷箱におけるシート開閉駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記シート開閉駆動装置は、例えば特許文献1に示されるように従来公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-127205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1のシート開閉駆動装置は、モータへの通電停止後にシートが慣性や自重で作動し続けることを阻止するためにモータのショート回路を形成して、このショート回路でブレーキ効果が発揮されるようにしているが、そのショート回路を形成するために、モータへの通電停止後もバッテリからマイコン23を介してリレー242 に通電しておく必要がある。このため、モータへの通電停止後もリレー242 に電流が流れ続けて、電力を無駄に消費する問題がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、簡単な構造で上記問題を解決可能とした、車両用荷箱におけるシート開閉駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、開口部を有して車体フレーム上に搭載される荷箱と、その荷箱に軸支されて前記開口部に対し所定の開き位置と閉じ位置との間で開閉揺動可能なシートと、このシートを開閉駆動する電動式のモータと、このモータに通電可能に接続されるバッテリと、前記モータと前記バッテリ間の通電回路に設けられて、該モータを正転方向・逆転方向の何れにも回転させ得るように前記バッテリから前記モータへの通電態様を切換可能な通電態様切換手段と、前記バッテリから前記モータへの通電を停止可能な停止スイッチとを少なくとも備えた、車両用荷箱におけるシート開閉駆動装置において、前記停止スイッチによる前記通電の停止に関係して前記シートが停止したことを検知可能なシート停止検知手段と、前記モータへの通電停止後、前記シート停止検知手段が前記シートの停止を検知するまでの間だけ、前記モータのショート回路が形成されるよう前記通電態様切換手段を特定切換状態に保持する自己保持手段とを備えたことを第1の特徴とする。
【0007】
また、本発明は、第1の特徴に加えて、前記自己保持手段は、前記通電回路の、前記バッテリとモータ間を直列に接続する接続路を開閉可能な常開型の自己保持用開閉手段を含み、前記自己保持用開閉手段は、前記通電停止後においては、前記シート停止検知手段が前記シートの停止を検知するまでは閉じられ、その停止検知後は開かれることをことを第2の特徴とする。
【0008】
また、本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記シート停止検知手段は、前記停止スイッチによる前記通電の停止から所定時間経過したことに基づいて前記シートの停止を検知することを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、シートを開閉駆動するモータと、これに通電可能に接続されるバッテリと、モータとバッテリ間の通電回路に設けられて、モータを正転方向・逆転方向の何れにも回転させ得るようにバッテリからモータへの通電態様を切換可能な通電態様切換手段と、バッテリからモータへの通電を停止可能な停止スイッチとを備えるシート開閉駆動装置において、停止スイッチによる通電の停止に関係してシートが停止したことを検知可能なシート停止検知手段と、モータへの通電停止後、シート停止検知手段がシートの停止を検知するまでの間だけ、モータのショート回路が形成されるよう通電態様切換手段を特定切換状態に保持する自己保持手段とを備える。これにより、モータへの通電停止後は、シート停止検知手段がシートの停止を検知するまでの間の短時間に限って、通電態様切換手段が、ショート回路を形成する特定切換状態に保持されて、ブレーキ効果が発揮されるため、モータへの通電停止後にショート回路を形成するための電力消費を抑えることができ、節電効果が高められる。
【0010】
また第2の特徴によれば、自己保持手段は、通電回路の、バッテリとモータ間を直列に接続する接続路を開閉可能な常開型の自己保持用開閉手段を含み、この自己保持用開閉手段は、前記通電停止後においては、シート停止検知手段がシートの停止を検知するまでは閉じられ、その停止検知後は開かれる。これにより、シートの停止検知後には、自己保持用開閉手段によりモータへの通電が確実に遮断されるため、モータの保護効果が高められる。しかもショート回路の形成終了のための自己保持用開閉手段が、モータの保護手段を兼ねるため、回路構成の簡素化に寄与することができる。
【0011】
また第3の特徴によれば、シート停止検知手段は、停止スイッチによる通電の停止から所定時間経過したことに基づいてシートの停止を検知するので、シートの停止をセンサで検知する場合よりも検知構成が頗る簡素化され、コスト節減に大いに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用したダンプカーの一実施形態を示す側面図
図2】上記ダンプカーの後面図(図1の2矢視図)
図3】シート開閉駆動装置のコントローラの一例を示す正面図
図4】シート開閉駆動装置の制御回路図及び動作態様を時系列的に示すものであって、(A)は初期状態を示し、(B)は、図4(A)の状態から正逆転スイッチが正転位置に選択された状態を示す
図5】前記制御回路図及び動作態様を、図4と関連して時系列的に示すものであって、(C)は、図4(B)の状態から右作動スイッチがオンされた状態を示し、(D)は、図5(C)の状態から正逆転スイッチが中立(通電停止)位置に選択された直後、即ち所定時間経過(シート停止)前の状態を示す
図6】通電態様切換手段としてのモータドライバの主要部品である開閉手段の切換態様を示す簡略回路図であって、(a)は初期状態を示し、(b)はモータを正転させる切換態様を示し、(c)はモータを逆転させる切換態様を示し、(d)はモータのショート回路を形成する切換態様を示す
図7】前記コントローラの変形例を示す正面図(図3対応図)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0014】
図1,2において、車両としてのダンプカーVの車体フレーム1には、上面に開口部Oを有する荷箱2が後方へ傾動可能に軸支されており、この荷箱2と車体フレーム1との間には、荷箱2を後方へ強制的に傾動させる周知の駆動機構(図示せず)が介装される。また荷箱2の左,右側板3,3の各上縁部には、荷箱2の開口部Oの少なくとも一部(実施形態では開口部Oの左右両外側部)を開閉し得る左右一対のシートSがそれぞれ取付けられる。
【0015】
この左右のシートSは、布等のシート素材4と、このシート素材4を所定の長方形状に保形する方形枠状のシート枠5とより構成され、そのシート枠5の、前後方向に延びる基端軸部5aは、左,右側板3,3の各上縁部に間隔をおいて設けた複数の軸受部6に回動自在に支承される。
【0016】
左右の基端軸部5aには、荷箱2の前端部に取付けた左右の電動式モータML,MRの出力軸がそれぞれ減速機構7を介して連動連結される。従って、その左右少なくとも一方のモータML,MRを一方向へ回転駆動すると、同側のシートSを、前記軸受部6より垂下して側板3の外面に沿って延びる開き位置Soから、前記軸受部6より水平外向きに延びる中間水平位置Shと、前記軸受部6より鉛直に起立する中間起立位置Svを経て、前記軸受部6より水平内向きに延びる閉じ位置Scまで強制的に閉成揺動させることができ、また左右少なくとも一方のモータML,MRを他方向へ回転駆動すると、上記の逆の経路で同側のシートSを強制的に開放揺動させることができる。
【0017】
図6で明らかなように、左右のモータML,MRは、これの正転時(シートSの開き回動時)に入力端子となる第1受電部Moと、逆転時(シートSの閉じ回動時)に入力端子となる第2受電部Msとを有する、正逆転可能な直流モータより構成される。
【0018】
そして、図4図6には、左右のモータML,MRを互いに独立して駆動制御して左右のシートSを開閉駆動可能とするシート開閉駆動装置の一例が示され、その詳細については、後述する。
【0019】
またダンプカーVの運転席、例えばインストルメントパネルには、操作者がシートSを任意で開閉操作するためのコントローラ8が設けられる(図3参照)。このコントローラ8の操作部には、左右のモータML,MRの正転・逆転を選択可能で且つ電源スイッチを兼ねる正逆転スイッチSWm、並びに左右のモータML,MRの回転駆動開始用の左作動スイッチSWa及び右作動スイッチSWbの各操作ノブが配設される。
【0020】
正逆転スイッチSWmは、3位置に切替え保持可能なトグルスイッチより構成される。即ち、正逆転スイッチSWmは、これの操作ノブが中立位置と、中立位置を挟んで一方側の正転選択位置と、他方側の逆転選択位置との何れかを選択的に保持可能に構成され、特に中立位置にあるときは後述する制御装置20のマイコン21のためのシステム電源22がオフとなり、また正転選択位置又は逆転選択位置にあるときは同システム電源22がオンとなる。そして、正逆転スイッチSWmは、バッテリBからモータML,MRへの通電を停止させ得る本発明の停止スイッチとしても機能する。
【0021】
また、左右の各作動スイッチSWa,SWbは、左右のモータML,MRの回転駆動を個別に開始させるスタートボタンとして機能するモーメンタリスイッチであって、上記システム電源22のオン状態で、操作ノブを1回押すとオン状態となり、その後、手を離して操作ノブが元位置に戻ってもオン状態が続く。尚、各作動スイッチSWa,SWbの上記オン状態は、その後に正逆転スイッチSWmを中立位置に切換えたときに、オフ状態に切換わる(図6(D)を参照)。
【0022】
次にシート開閉駆動装置の具体例について説明する。シート開閉駆動装置は、前記した左右のモータML,MRと、各モータML,MRへの通電を可能としてバッテリB及び各モータML,MR間に設けられた通電回路10と、前記したスイッチ群(即ち正逆転スイッチSWm及び左・右作動スイッチSWa,SWb)と、そのスイッチ群の操作入力に基づいて左右のモータML,MRを作動制御する制御装置20とを備える。
【0023】
制御装置20の電子制御系は、マイコン21を主要部品としており、これの電源となるシステム電源22(例えば5V)や、マイコン21により作動制御されるモータドライバDL,DR及び自己保持用リレーRyL,RyR等を含むものであり、前記したコントローラ8に内蔵されるか又はその近傍に設置される。
【0024】
システム電源22は、バッテリBから正逆転スイッチSWmを経てシステム電源22に向かう第1電路31と、前記通電回路10の後述する接続路10Rpより(特に自己保持用リレーRyRの下流側で)分岐してシステム電源22に向かう第2電路32とに並列に接続される。
【0025】
またマイコン21の入力側には、前記したスイッチ群SWm,SWa,SWbがスイッチ信号を入力可能として接続される。この場合、正逆転スイッチSWmからの出力信号は、前記第1電路31から分岐し且つ途中に抵抗を有した正逆転選択用信号線33を経てマイコン21の入力側に接続される。
【0026】
而して、マイコン21は、システム電源22がこれへの通電によりオンになるのに応じて起動し、また同電源22がオフになるのに応じてシャットダウンする。
【0027】
またマイコン21は、タイマ機能を具備しており、停止スイッチとしての正逆転スイッチSwmによるモータML,MRへの通電停止に関係してシートSが停止したことを検知可能なシート停止検知手段としても機能する。即ち、マイコン21は、モータML,MRへの通電停止からの経過時間を計測し、その経過時間が所定時間に達するとシートSが停止したものとしてシート停止と判断する。
【0028】
この場合、上記所定時間は、モータML,MRへの通電停止後、モータML,MRのショート回路形成によるブレーキ効果でシートSの回動を確実に停止可能な最小限の時間として予め設定される。
【0029】
左右のモータドライバDL,DRは、通電回路10の、バッテリBと左右のモータML,MRとを直列に接続する電力線として機能する左右モータ用の接続路10Lp,10Rpにそれぞれ接続されていて、互いに独立して機能する。左右のモータドライバDL,DRの回路構成は、全く同一であるので、図6では左モータMLのモータドライバDLのみを説明、図示し、右モータMRのモータドライバDRの説明、図示は省略する。
【0030】
図6で明らかなように、左モータML用の接続路10Lpは、左モータML用の接続路10Lpに並列に接続した第1,第2分岐路11,12を介してアースに接続される。第1分岐路11には、これを個別に開閉する常開型の第1正転用開閉手段13及び第1逆転用開閉手段15が直列に介設され、また第2分岐路12には、これを個別に開閉する常開型の第2正転用開閉手段14及び第2逆転用開閉手段16が直列に介設される。
【0031】
第1分岐路11の、第1正転用開閉手段13及び第1逆転用開閉手段15間からは逆転用通電路17が、また第2分岐路12の、第2正転用開閉手段14及び第2逆転用開閉手段16間からは正転用通電路18がそれぞれ分岐している。逆転用通電路17は、左モータMLの前記第2受電部Ms(即ちモータ逆転時に入力側となる端子)に、また正転用通電路18は、対応するモータML,MRの前記第1受電部Mo(即ちモータ正転時の入力側となる端子)にそれぞれ接続される。
【0032】
上記した各開閉手段13~16は、例えば、マイコン21からの制御信号に応動するFET(電界効果トランジスタ)でそれぞれ構成される。
【0033】
後述するように各開閉手段13~16は、通常は開放状態に保持されていて、対応する第1,第2分岐路11,12を遮断しており、また各開閉手段13~16にマイコン21よりモータ作動信号が出力されたときには閉成状態に切換わって、対応する分岐路11,12を導通させ、モータML(MR)への正転方向・逆転方向の通電を可能とする。
【0034】
例えば、図6(a)は、全開閉手段13~16が開いた初期状態(即ちシートSが停止した待機状態)であり、また図6(b)は、第1,第2正転用開閉手段13,14だけが閉じたモータML(MR)の正転駆動状態(即ちシートSの開き回動状態)であり、また図6(c)は、第1,第2逆転用開閉手段15,16だけが閉じたモータML(MR)の逆転駆動状態(即ちシートSの閉じ回動状態)である。
【0035】
更に図6(d)は、第1正転用開閉手段13と第2逆転用開閉手段16だけが閉じることでモータML(MR)のショート回路を形成するブレーキ作動状態である。尚、非通電状態のモータML(MR)にショート回路が形成された時に、シートSの慣性等でモータML(MR)が回転すると起電力が生じ、これが回転負荷となってシートSにブレーキがかかることは、特許文献1の記載でも明らかなように従来周知である。
【0036】
而して、左右のモータドライバDL,DRは、左右のモータML,MRを正転方向・逆転方向の何れにも回転させ得るようにバッテリBから各モータML,MRへの通電態様を切換可能な通電態様切換手段を構成する。
【0037】
またシート開閉駆動装置は、モータML,MRへの通電停止後、シート停止検知手段としてのマイコン21がシートSの停止を検知するまでの間だけ、通電回路10(より具体的にはモータドライバDL,DR)にモータML,MRのショート回路が形成されるようモータドライバDL,DR(通電態様切換手段)を特定切換状態に保持する自己保持手段Hを備えている。
【0038】
この自己保持手段Hは、実施形態では通電回路10の、バッテリBとモータML,MR間を直列に接続する電力線部分(即ち前記第1,第2接続路10Lp,10Rp)を開閉可能な常開型の自己保持用リレーRyL,RyRと、そのリレーRyL,RyRの作動を制御可能な前記マイコン21とを備える。自己保持用リレーRyL,RyRは、本発明の自己保持用開閉手段の一例である。
【0039】
上記自己保持用リレーRyL,RyRは、第1,第2接続路10Lp,10Rpを開閉する常開型のリレー接点部を有しており、このリレー接点部と連係するリレーコイルRcがマイコン21の信号出力側に接続される。而して、リレーコイルRcは、マイコン21からのモータ作動指令信号を受ける(従ってモータML,MRへの通電が開始される)と、励磁状態となって自己保持用リレーRyL,RyRを閉成動作させる。
【0040】
リレーコイルRcは、モータML,MRへの通電時は元より、通電停止後においてもマイコン21(シート停止検知手段)がシートSの停止を検知するまでは、マイコン21からのブレーキ指令信号で励磁状態が継続して自己保持用リレーRyL,RyRを閉じたままとし、これにより、第1,第2接続路10Lp,10Rpの導通状態を継続させる。次いで、マイコン21がシートSの停止を検知すると、リレーコイルRcが非励磁となって自己保持用リレーRyL,RyRを開くことにより、第1,第2接続路10Lp,10Rpが遮断される。
【0041】
尚、実施形態のマイコン21は、モータML,MRへの通電が停止された後、マイコン21(シート停止検知手段)がシートSの停止を検知するまでの所定期間、リレーコイルRcを連続的にオン(励磁)として自己保持用リレーRyL,RyRの閉成状態を持続させる制御態様を実行するが、この制御態様に代えて、上記所定期間にリレーコイルRcを断続的且つ交互にオンオフし、自己保持用リレーRyL,RyRの開閉を小刻みに繰り返す制御態様を採用してもよい。後者の制御態様では、モータML,MRのショート回路形成によるブレーキ効果は減るが、回路負荷を軽減可能である。
【0042】
次に本実施形態の作用を、主として図4図6を参照して説明する。
【0043】
図4(A)は初期状態(即ち待機状態)を示しており、このとき正逆転スイッチSWmは中立位置にあって、バッテリBからシステム電源22(従ってマイコン21)及びモータML,MRへの通電は停止状態に置かれる。
【0044】
また上記初期状態より、正逆転スイッチSWmが正転選択位置又は逆転選択位置に切換えられると、図4(B)で明らかなように、第1電路31を経てシステム電源22に電源供給されることでマイコン21が起動状態となる。この状態で左,右作動スイッチSWa,SWbが押されていなければ、モータML,MRへの通電は未だ開始されない。尚、図4(B)は、正逆転スイッチSWmが正転選択位置にある例を示す。
【0045】
そして、図4(B)に示すマイコン21の起動状態で、左右作動スイッチSWa,SWbの少なくとも一方が押圧操作されると、図5(C)に示す回路状態に切換わる。即ち、その押圧操作入力に基づいて、起動状態のマイコン21がモータ作動(正転)指令信号を対応するモータドライバDL,DRに出力すると共に、リレーコイルRcが励磁して自己保持用リレーRyL,RyRを閉成動作させる。これにより、同側のモータML,MRを正転駆動(図6(b)参照)させ、同側のシートSが開き回動する。またこのとき、第2電路32からもシステム電源22に電源供給される。尚、図5(C)は、右作動スイッチSWbが押圧操作された例を示す。
【0046】
これに対し、図4(A)に示す前記初期状態より正逆転スイッチSWmが逆転選択位置に保持された場合でも、第1電路31を経てシステム電源22に電源供給されることでマイコン21が起動状態となる。そして、この状態で、左右作動スイッチSWa,SWbの少なくとも一方が押圧操作された場合には、その押圧操作入力に基づいて、起動状態のマイコン21がモータ作動(逆転)指令信号を対応するモータドライバDL,DRに出力すると共に、リレーコイルRcが励磁して自己保持用リレーRyL,RyRを閉成動作させる。これにより、同側のモータML,MRを逆転駆動(図6(c)参照)させて同側のシートSを閉じ回動させる。またこのとき、第2電路32からもシステム電源22に電源供給される。
【0047】
また図5(C)の状態で、例えば正逆転スイッチSWmが中立位置に戻し操作されると、その操作入力に基づいてマイコン21はモータドライバDL,DRに対し、それまでのモータ作動指令信号に代えてブレーキ指令信号を出力する(図5(D)を参照)。これにより、モータドライバDL,DRにおいては、図6(d)で明らかなようにバッテリBからモータML,MRへの通電が停止されると共に、モータML,MRのショート回路が形成されるため、モータML,MRを効果的に制動可能となり、シートSの回動は迅速に停止する。この場合、正逆転スイッチSWmが中立位置に戻し操作されるのと同時に、第1電路31からシステム電源22への電源供給が無くなるが、自己保持用リレーRyL,RyRは閉成動作状態に保持されていて、第2電路32からシステム電源22への電源供給が行われるため、マイコン21は起動状態を継続する。
【0048】
このとき、マイコン21は、正逆転スイッチSWmの上記中立位置への戻し操作(即ちモータML,MRへの通電停止)からの経過時間を計測しており、それが予め設定した所定時間に達するとシートSの回動が停止したものとして、自己保持用リレーRyL,RyRを開放動作させる。これにより、第2電路32からシステム電源22への電源供給が無くなり、それに伴いマイコン21がシャットダウンされるため、シート開閉駆動装置の制御装置20は全停止し、かくして、制御装置20は、図4(A)の初期状態に戻る。
【0049】
このようにシートSの回動中、正逆転スイッチSWm(停止スイッチ)が中立位置に戻し操作(停止操作)されるに応じてモータML,MRへの通電が停止されるが、マイコン21(シート停止検知手段)がシートSの停止を検知するまでの間、第1電路31に代わる第2電路32からの電源供給で起動状態が維持されるマイコン21(自己保持手段H)は、モータドライバDL,DRで前記ショート回路を形成している。つまり、第2電路32は、正逆転スイッチSWm(停止スイッチ)の停止操作により第1電路31を遮断した際に、自己保持手段Hを稼動してモータドライバDL,DRを特定切換状態にするための特定電路として機能する。
【0050】
またマイコン21(シート停止検知手段)は、シートSの停止を検知すると、自己保持用リレーRyRを開放動作させて、第2電路32(即ちモータML,MRへの通電を停止すべく第1電路31を遮断した際に、自己保持手段Hを稼動してモータドライバDL,DRを特定切換状態にする特定電路)を遮断している。
【0051】
以上説明したように実施形態のシート開閉駆動装置は、正逆転スイッチSWm(即ち停止スイッチ)の中立位置への戻し操作に基づくモータML,MRへの通電停止によりシートSが作動停止したことを検知可能なマイコン21(即ちシート停止検知手段)と、モータML,MRへの通電停止後、マイコン21がシートSの停止を検知するまでの間だけ、モータML,MRのショート回路が通電回路10に形成されるようモータドライバDL,DR(即ち通電態様切換手段)を特定切換状態に保持する自己保持手段H(より具体的には自己保持用リレーRyL,RyR及びマイコン21)とを具備している。
【0052】
即ち、マイコン21は、正逆転スイッチSWmが中立位置に戻し操作されてモータML,MRへの通電が停止された後は、マイコン21(シート停止検知手段)がシートSの停止を検知するまでの間の短時間に限って、モータドライバDL,DR(通電態様切換手段)を、上記ショート回路を形成する特定切換状態に保持することで、ブレーキ効果が得られるようにしている。これにより、モータML,MRへの通電停止後にショート回路を形成するための電力消費は必要最小限に抑えられるため、節電効果が高められる。
【0053】
また上記自己保持手段Hは、通電回路10の、バッテリBとモータML,MR間を直列に接続する接続路10Lp,10Rpを開閉可能な常開型の自己保持用リレーRyL,RyRを含み、これらリレーRyL,RyRは、モータML,MRへの通電停止後においては接続路10Lp,10Rpを、マイコン21がシートSの停止を検知するまでは導通させ、その停止検知後は遮断する。これにより、シートSの停止検知後には、自己保持用リレーRyL,RyRによりモータML,MRへの通電が確実に遮断されるため、モータML,MRの保護効果が高められる。しかも上記ショート回路の形成終了のための自己保持用リレーRyL,RyRが、モータML,MRの保護手段を兼ねるため、それだけ回路構成が簡素化される。
【0054】
更に実施形態のシート停止検知手段としてのマイコン21は、正逆転スイッチSWm(即ち停止スイッチ)の操作入力によるモータML,MRへの通電停止から所定時間経過したことに基づいてシートSの停止を検知するので、モータML,MR又はシートSの停止をセンサで直接検知する場合よりも検知構成が頗る簡素化され、コスト節減が達成可能となる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0056】
例えば、前記実施形態では、荷箱2が搭載される車両としてダンプカーVを例示したが、本発明は、ダンプカー以外の種々の荷箱付き車両にも実施可能である。
【0057】
また前記実施形態では、シートSを荷箱2の左右の側板3に開閉揺動可能に軸支したものを示したが、本発明は、荷箱2の前板(例えばフロントパネル)又は後板(例えばテールゲート)にシートを開閉揺動可能に軸支した荷箱付き車両にも実施可能である。
【0058】
また前記実施形態では、シートSの開閉を任意に操作入力するためのコントローラ8を車両運転席に配設したものを示したが、コントローラの設置場所は、実施形態に限定されず、作業員が任意操作可能な適宜部位、例えば車体フレーム1又は荷箱3の適所に設置してもよい。
【0059】
また前記実施形態では、制御装置20の電子制御系(例えばマイコン21、システム電源22、モータドライバDL,DR等)がコントローラ8に内蔵されるか又はその近傍に設置されるものを例示したが、その電子制御系の設置部位は実施形態に限定されず、コントローラ8から離れた車両適所(例えば運転席、荷箱、荷箱近傍の車体フレーム上等)に設置してもよい。
【0060】
また前記実施形態では、コントローラ8の操作部においてモータML,MRの正転・逆転を選択可能で且つ電源スイッチを兼ねる正逆転スイッチSWmと、左右のモータML,MRの回転駆動開始用の左・右作動スイッチSWa,SWbの各操作ノブを並設したものを示したが、図7には、コントローラの変形例が示される。即ち、変形例では、電源のオンオフ専用の電源スイッチSWm′と、左右のモータML,MRの正転開始用の左・右正転スタートスイッチSWa′,SWbw′と、左右のモータML,MRの逆転開始用の左・右逆転スタートスイッチSWa″,SWbw″の各操作ノブがコントローラ8′に並設される。そして、この変形例において、電源スイッチSWm′がモータML,MRへの通電を停止可能な停止スイッチとして機能する。
【0061】
また前記実施形態及び変形例では、モータML,MRへの通電を停止可能な停止スイッチとして、正逆転スイッチSWm又は電源スイッチSWm′を用いたものを示したが、停止スイッチは、実施形態又は変形例に限定されず、例えば、センサ又はタイマーにより遮断するリレーでもよい。その場合、例えば開閉中のシートSが停止目標位置に達したことを検知可能なセンサを設け(或いはタイマー設定し)ておき、シートSが停止目標位置に達したときにモータML,MRへの通電を上記リレーで遮断する。
【0062】
尚、シートSの上記した停止目標位置は、シートSの回動端(即ちシートSが車両に当接して、それ以上回動できない位置)であってもよい。この場合、シートSは、それ以上回動できないことから、慣性等で回動する問題は生じないが、前記したショート回路の形成により、シートSが無理に回動しようとし続けて車両に押付けられ損傷するのを抑制することができる。
【0063】
また前記実施形態では、通電態様切換手段としてのモータドライバDL,DRの各開閉手段13~16としてFET(電界効果トランジスタ)を用いたものを示したが、開閉手段13~16は、実施形態に限定されず、FETと同様の回路開閉機能を果たす他の電子部品(例えばリレー)の使用も可能である。
【0064】
また前記実施形態では、モータML,MRへの通電停止後、シートSが停止するまでの間、モータML,MRのショート回路を形成するための自己保持用開閉手段として、自己保持用リレーRyL,RyRを用いたものを示したが、自己保持用開閉手段は、実施形態に限定されず、リレーRyL,RyRと同様の回路開閉機能を果たす他の電子部品(例えばFET)の使用も可能である。
【0065】
また本実施形態では、モータML,MRの正転中・逆転中の何れの通電停止の場合でも、モータML,MRのショート回路を形成してブレーキ作用を得るものを示したが、正転中又は逆転中の何れか一方の場合のみ上記ショート回路を形成してブレーキ作用を得るようにしてもよい。
【0066】
また前記実施形態では、正逆転スイッチSwm(停止スイッチ)によるモータML,MRへの通電停止に関係してシートSが停止したことを検知可能なシート停止検知手段としてマイコン21を使用し、即ち、マイコン21がモータML,MRへの通電停止からの経過時間からシート停止を間接的に検知するものを示したが、本発明のシート停止検知手段は、実施形態に限定されず、シートS(又はモータML,MR)の作動停止を種々の手法で検知可能である。例えば、モータML,MRのロータの回転、或いはモータML,MRに連動する減速機の歯車の回転を検知するセンサ類が上記回転の停止を検出することでシート停止と判断可能である。この場合は、そのセンサ類がシート停止検知手段を構成し、それが回転停止(従ってシートSが停止)を検知したときに自己保持用開閉手段(リレーRyL,RyRまたはFET)が遮断される。尚、上記センサ類は、回転を検知できればよく、例えば近接センサ、エンコーダを用いてもよい。
【0067】
また前記実施形態では、自己保持用開閉手段(リレーRyL,RyR又はFET)が、バッテリBとモータML,MRとを直列に接続する接続路10Lp,10Rpを開閉するものを示したが、自己保持用開閉手段の配設部位は、実施形態に限定されず、例えば、接続路10Lp,10Rpから独立し且つバッテリBからシステム電源22にのみ通電する通電路を設け、その通電路に自己保持用開閉手段を設けてもよい。
【0068】
また前記実施形態では、マイコン21が、シート停止検知手段を兼ね、且つ自己保持用開閉手段(リレーRyL,RyR又はFET)と協働して自己保持手段Hを構成し、且つまた通電態様切換手段としてのモータドライバDL,DRの各開閉手段13~16を作動制御するものを示したが、マイコン21は必要に応じて省略可能である。尚、マイコン21を省略する場合は、マイコン21に代わりシート停止検知手段として機能する前述のセンサ類を使用し、これに自己保持用開閉手段(リレーRyL,RyR又はFET)を連係動作させる。またマイコン21の省略に伴い、例えば、正逆転スイッチSWm又は電源スイッチSWm′への操作入力や、左・右作動スイッチSWa,SWb;SWa′,SWb′;SWa″,SWb″への操作入力に基づいて、モータドライバDL,DRの各開閉手段13~16が図6の切換態様を選択できるようにスイッチ回路が組み換えられる。
【0069】
また前記実施形態では、シートSの回動中、モータML,MRへの通電を停止すべく正逆転スイッチSWm(停止スイッチ)の停止操作で第1電路31を遮断した際に、自己保持手段Hを稼動してモータドライバDL,DRを特定切換状態にする特定電路(第2電路32)を1本としたものを示したが、特定電路は複数本設けてもよい。この場合、マイコン21(シート停止検知手段)によりシート停止を検知したら、全ての特定電路を遮断することで、ショート回路を形成するための電力消費を抑えることができる。
【符号の説明】
【0070】
B・・・・・・バッテリ
DL,DR・・通電態様切換手段としての左右のモータドライバ
H・・・・・・自己保持手段
ML,MR・・左右のモータ
RyL,RyR・・自己保持用開閉手段としての自己保持用リレー
S・・・・・・シート
Sc・・・・・閉じ位置
So・・・・・開き位置
SWm・・・・停止スイッチとしての、電源スイッチを兼ねる正逆転スイッチ
SWm′・・・停止スイッチとしてのオンオフ切換専用の電源スイッチ
V・・・・・・ダンプカー(車両)
1・・・・・・車体フレーム
2・・・・・・荷箱
10・・・・・通電回路
10Lp,10Rp・・接続路
21・・・・・シート停止検知手段としてのマイコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7