(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158316
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
F01D 15/10 20060101AFI20221006BHJP
F01K 23/14 20060101ALI20221006BHJP
F01K 23/10 20060101ALI20221006BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F01D15/10 D
F01K23/14
F01D15/10 A
F01K23/10 V
F01D25/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063102
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】奥尾 章矩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 照昌
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G081BA03
3G081BA16
3G081BB00
3G081BC07
3G081BD00
3G081DA30
(57)【要約】
【課題】一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチの状態を所望の態様で検出できるクラッチ状態検出装置の提供。
【解決手段】一実施の形態によれば、クラッチ状態検出装置100は、ガスタービン2の回転速度と蒸気タービン4の回転速度との回転速度差が所定値以下であるか否かを検出する速度差検出部101と、蒸気タービン4の入口蒸気圧力が所定圧力以上であるか否かを検出する蒸気圧力検出部102と、速度差検出部101で回転速度差が所定値以下であることが検出され且つ蒸気圧力検出部102で入口蒸気圧力が所定圧力以上であることが検出された際に、クラッチが接続状態であると判定する判定部103と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、発電機と、蒸気タービンとが共有の回転軸により繋がれ、前記発電機と前記蒸気タービンとの間の動力伝達をクラッチにより接続状態又は遮断状態に切り替える一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置であって、
前記ガスタービンの回転速度と前記蒸気タービンの回転速度との回転速度差が所定値以下であるか否かを検出する速度差検出部と、
前記蒸気タービンの入口蒸気圧力が所定圧力以上であるか否かを検出する蒸気圧力検出部と、
前記速度差検出部で前記回転速度差が前記所定値以下であることが検出され且つ前記蒸気圧力検出部で前記入口蒸気圧力が前記所定圧力以上であることが検出された際に、前記クラッチが接続状態であると判定する判定部と、を備える、一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置。
【請求項2】
前記速度差検出部は、前記回転速度差が前記所定値よりも大きい値の他の所定値以上であるか否かも検出するようになっており、
前記判定部は、前記速度差検出部で前記回転速度差が前記他の所定値以上であることが検出された際に、前記クラッチが遮断状態であると判定する、請求項1に記載の一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記速度差検出部で前記回転速度差が所定値以下であることが検出されない際に、及び/又は、前記蒸気圧力検出部で前記入口蒸気圧力が前記所定圧力以上あることが検出されない際に、前記クラッチが遮断状態であると判定する、請求項1又は2に記載の一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置。
【請求項4】
前記蒸気タービンは、前記ガスタービンの排ガスにより排熱回収ボイラで生成される高圧蒸気により回転する高圧タービンと、前記高圧蒸気の圧力よりも低い圧力の蒸気により回転する他のタービンとを有し、
前記蒸気圧力検出部は、前記他のタービンの入口蒸気圧力が前記所定圧力としての第1所定圧力以上であることを検出した際に、又は、前記他のタービンの入口蒸気圧力が前記所定圧力としての第1所定圧力以上であり且つ前記高圧タービンの入口蒸気圧力が前記所定圧力としての第2所定圧力以上であることを検出した際に、前記蒸気タービンの入口蒸気圧力が前記所定圧力以上であると判定する、請求項1乃至3のいずれかに記載の一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置。
【請求項5】
前記他のタービンは、前記高圧タービンが排出した蒸気を加熱した再熱蒸気により回転する中圧タービンである、請求項4に記載の一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置。
【請求項6】
ガスタービンと、発電機と、蒸気タービンとが共有の回転軸により繋がれ、前記発電機と前記蒸気タービンとの間の動力伝達をクラッチにより接続状態又は遮断状態に切り替える一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置であって、
前記ガスタービンの回転速度と前記蒸気タービンの回転速度との回転速度差が所定値以下であるか否かを検出する速度差検出部と、
前記発電機の発電出力が増加したか否かを検出する発電出力検出部と、
前記速度差検出部で前記回転速度差が所定値以下であることが検出され且つ前記発電出力検出部で前記発電出力が増加したことが検出された際に、前記クラッチが接続状態であると判定する判定部と、を備える一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置。
【請求項7】
前記速度差検出部は、前記回転速度差が前記所定値よりも大きい値の他の所定値以上であるか否かも検出するようになっており、
前記判定部は、前記速度差検出部で前記回転速度差が前記他の所定値以上であることが検出された際に、前記クラッチが遮断状態であると判定する、請求項6に記載の一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置。
【請求項8】
前記発電出力検出部は、互いに異なる2つの時点での前記発電機の発電出力の差分を演算し、前記差分が所定出力値以上である際に、前記発電出力が増加したと判定する、請求項6又は7に記載の一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置。
【請求項9】
ガスタービンと、発電機と、蒸気タービンとが共有の回転軸により繋がれ、前記発電機と前記蒸気タービンとの間の動力伝達をクラッチにより接続状態又は遮断状態に切り替える一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出方法であって、
前記ガスタービンの回転速度と前記蒸気タービンの回転速度との回転速度差が所定値以下であるか否かを検出する速度差検出工程と、
前記蒸気タービンの入口蒸気圧力が所定圧力以上であるか否かを検出する蒸気圧力検出工程と、
前記速度差検出工程で前記回転速度差が前記所定値以下であることが検出され且つ前記蒸気圧力検出工程で前記入口蒸気圧力が前記所定圧力以上であることが検出された際に、前記クラッチが接続状態であると判定する判定工程と、を備える、一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出方法。
【請求項10】
ガスタービンと、発電機と、蒸気タービンとが共有の回転軸により繋がれ、前記発電機と前記蒸気タービンとの間の動力伝達をクラッチにより接続状態又は遮断状態に切り替える一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出方法であって、
前記ガスタービンの回転速度と前記蒸気タービンの回転速度との回転速度差が所定値以下であるか否かを検出する速度差検出工程と、
前記発電機の発電出力が増加したか否かを検出する発電出力検出工程と、
前記速度差検出工程で前記回転速度差が所定値以下であることが検出され且つ前記発電出力検出工程で前記発電出力が増加したことが検出された際に、前記クラッチが接続状態であると判定する判定工程と、を備えるクラッチ状態検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一軸型コンバインドサイクル発電プラントは、ガスタービンと、発電機と、蒸気タービンとを繋ぐ共通の回転軸を備える。このような発電プラントには、上記回転軸の発電機と蒸気タービンとの間の部分にクラッチが設けられ、このクラッチで発電機と蒸気タービンとの間の動力伝達を接続状態又は遮断状態に切り替えるものがある。
【0003】
上記のようにクラッチを備える一軸型コンバインドサイクル発電プラントの一般的な起動操作では、まず、発電機と蒸気タービンとの間の動力伝達がクラッチにより遮断状態とされる。次いで、ガスタービンが回転駆動され、発電機がガスタービンの回転によって回転する。そして、ガスタービンが定格回転速度に到達した後、発電機が送電網に並列される。
【0004】
そして、上記並列後、ガスタービンの排ガスにより排熱回収ボイラで発生した蒸気が蒸気タービンに供給され、蒸気タービンが回転駆動される。そして、蒸気タービンが定格回転速度に到達した際、クラッチが発電機と蒸気タービンとの間の動力伝達を接続状態に切り替え、蒸気タービンの回転動力も発電機に伝達される。なお、上記クラッチは、通常、蒸気タービンが定格回転速度に到達した際に、機械的に且つ自動的に接続状態に切り替わるように構成されている。
【0005】
図4は、上述の一般的な起動操作を説明するグラフである。詳しくは、
図4のグラフは、ガスタービンが定格回転速度に到達し且つ発電機が並列された後の様子を示している。図示のグラフにおける横軸は時間であり、縦軸はタービン回転速度である。符号R1で示す線は、ガスタービンの回転速度を示し、符号R2で示す線は、蒸気タービンの回転速度を示し、符号MWで示す線は、発電機出力を示す。
【0006】
ガスタービンの回転速度R1が定格回転速度に到達して維持されると、発電機出力MWは、基本的に一定の値となる。そして、この状態における所定のタイミングで(
図4中、時間軸上の「ST起動」で)、蒸気タービンが回転駆動される。その後、蒸気タービン回転速度R2は次第に増加し、その後、定格回転速度に維持される。そして、時間軸上の「クラッチ接続」に示すように、クラッチによって発電機と蒸気タービンとの間の動力伝達が接続状態に切り替えられる。これにより、蒸気タービンの動力も発電機に伝わり、発電機出力MWが上昇している。
【0007】
上記のようなクラッチを備える一軸型コンバインドサイクル発電プラントにおいて良好な制御を実施するためには、クラッチの接続遮断を的確に検出する機能が必要である。
図5は、一軸型コンバインドサイクル発電プラントで使用可能なクラッチ状態検出装置の例の概略構成を示す。
【0008】
図5のクラッチ状態検出装置は、速度差検出部201と、保持回路部202とを備える。このクラッチ状態検出装置は、クラッチ接続状態においてガスタービンの回転速度R1と蒸気タービンの回転速度R2とが一致することに着目するものであり、速度差検出部201でガスタービンの回転速度R1と蒸気タービンの回転速度R2との回転速度差(GT/ST回転速度差)を検出する。そして、保持回路部202は、速度差検出部201の検出結果を受け、GT/ST回転速度差が小さい場合にセット状態になり、GT/ST回転速度差が大きい場合にリセット状態になる。そして、例えば保持回路部202がセット状態である際にクラッチ接続状態が特定され、リセット状態である際にクラッチ遮断状態が特定される。
【0009】
しかしながら、
図5に示す構成では、クラッチ遮断後にガスタービン及び蒸気タービンの回転速度を降速させる際にも、クラッチ接続状態が検出される場合がある。
図6は、
図5に示すクラッチ状態検出装置が、ガスタービン及び蒸気タービンの降速時にクラッチ接続状態を検出する様子の例を説明するグラフである。
【0010】
図6の例では、クラッチ遮断後に、まず、蒸気タービンが停止され、次にガスタービンが停止され、それぞれの回転速度R1,R2は次第に低下していく。そして、ガスタービンのタービン時定数が蒸気タービンの時定数よりも小さいことで、ガスタービンが後に停止されたにもかかわらず、その低下した回転速度R1が蒸気タービンの低下した回転速度R2に追いついている。この場合、ガスタービンの停止後で且つ蒸気タービンの停止前においては、GT/ST回転速度差が大きくなり、クラッチ遮断が検出されるが、蒸気タービンが停止された後においては、GT/ST回転速度差が小さくなり、クラッチ接続状態が検出される。
【0011】
通常の起動運転では、発電機と蒸気タービンとの間の動力伝達が接続状態となった際に、供給蒸気を増加させて蒸気タービンの出力を増加させる。例えばこのような供給蒸気を増加させる処理が、クラッチ接続状態の検出に応じて開始するよう自動化されている場合には、上記のような降速時に検出されるクラッチ接続状態を契機に蒸気タービンの出力が増加する状況が生じ得る。この場合、不所望な運転がなされる状況が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチの状態を所望の態様で検出できるクラッチ状態検出装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施の形態において、一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置は、ガスタービンと、発電機と、蒸気タービンとが共有の回転軸により繋がれ、前記発電機と前記蒸気タービンとの間の動力伝達をクラッチにより接続状態又は遮断状態に切り替える一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置である。このクラッチ状態検出装置は、前記ガスタービンの回転速度と前記蒸気タービンの回転速度との回転速度差が所定値以下であるか否かを検出する速度差検出部と、前記蒸気タービンの入口蒸気圧力が所定圧力以上であるか否かを検出する蒸気圧力検出部と、前記速度差検出部で前記回転速度差が前記所定値以下であることが検出され且つ前記蒸気圧力検出部で前記入口蒸気圧力が前記所定圧力以上であることが検出された際に、前記クラッチが接続状態であると判定する判定部と、を備える。
【0015】
また、一実施の形態において、一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置は、ガスタービンと、発電機と、蒸気タービンとが共有の回転軸により繋がれ、前記発電機と前記蒸気タービンとの間の動力伝達をクラッチにより接続状態又は遮断状態に切り替える一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出装置である。このクラッチ状態検出装置は、前記ガスタービンの回転速度と前記蒸気タービンの回転速度との回転速度差が所定値以下であるか否かを検出する速度差検出部と、前記発電機の発電出力が増加したか否かを検出する発電出力検出部と、前記速度差検出部で前記回転速度差が所定値以下であることが検出され且つ前記発電出力検出部で前記発電出力が増加したことが検出された際に、前記クラッチが接続状態であると判定する判定部と、を備える。
【0016】
また、一実施の形態において、一軸型コンバインドサイクル発電プラントにおけるクラッチ状態検出方法は、ガスタービンと、発電機と、蒸気タービンとが共有の回転軸により繋がれ、前記発電機と前記蒸気タービンとの間の動力伝達をクラッチにより接続状態又は遮断状態に切り替える一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出方法である。この方法は、前記ガスタービンの回転速度と前記蒸気タービンの回転速度との回転速度差が所定値以下であるか否かを検出する速度差検出工程と、前記蒸気タービンの入口蒸気圧力が所定圧力以上であるか否かを検出する蒸気圧力検出工程と、前記速度差検出工程で前記回転速度差が前記所定値以下であることが検出され且つ前記蒸気圧力検出工程で前記入口蒸気圧力が前記所定圧力以上であることが検出された際に、前記クラッチが接続状態であると判定する判定工程と、を備える。
【0017】
また、一実施の形態において、一軸型コンバインドサイクル発電プラントにおけるクラッチ状態検出方法は、ガスタービンと、発電機と、蒸気タービンとが共有の回転軸により繋がれ、前記発電機と前記蒸気タービンとの間の動力伝達をクラッチにより接続状態又は遮断状態に切り替える一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチ状態検出方法である。この方法は、前記ガスタービンの回転速度と前記蒸気タービンの回転速度との回転速度差が所定値以下であるか否かを検出する速度差検出工程と、前記発電機の発電出力が増加したか否かを検出する発電出力検出工程と、前記速度差検出工程で前記回転速度差が所定値以下であることが検出され且つ前記発電出力検出工程で前記発電出力が増加したことが検出された際に、前記クラッチが接続状態であると判定する判定工程と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一軸型コンバインドサイクル発電プラントのクラッチの状態を所望の態様で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施の形態にかかるクラッチ状態検出装置を備える一軸型コンバインドサイクル発電プラントの構成を概略的に示す図である。
【
図2】第1の実施の形態にかかるクラッチ状態検出装置の構成を概略的に示す図である。
【
図3】第2の実施の形態にかかるクラッチ状態検出装置の構成を概略的に示す図である。
【
図4】一軸型コンバインドサイクル発電プラントの一般的な起動操作を説明するグラフを示す図である。
【
図5】一軸型コンバインドサイクル発電プラントで使用可能なクラッチ状態検出装置の例の概略構成を示す図である。
【
図6】
図5に示すクラッチ状態検出装置が降速時のクラッチ接続状態を検出する様子の例を説明するグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して各実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態にかかるクラッチ状態検出装置100を備える一軸型コンバインドサイクル発電プラント1を概略的に示している。
【0022】
図1の一軸型コンバインドサイクル発電プラント1は、ガスタービン2と、発電機3と、蒸気タービン4と、を備える。ガスタービン2、発電機3及び蒸気タービン4は、一つの回転軸5を共有しており、この回転軸5により繋がれている。これにより、一軸型コンバインドサイクル発電プラント1のパワートレインが形成されている。
【0023】
ガスタービン2、発電機3及び蒸気タービン4は、発電機3がガスタービン2と蒸気タービン4との間に位置するように回転軸5上に配置される。回転軸5における発電機3と蒸気タービン4との間の部分にはクラッチ6が設けられ、クラッチ6は、発電機3と蒸気タービン4との間の動力伝達を接続状態又は遮断状態に切り替えるように構成されている。
【0024】
クラッチ6は、ガスタービン2及び発電機3の回転速度と蒸気タービン4の回転速度とが一致した際に、発電機3側の部分と蒸気タービン4側の部分とがかみ合って、接続状態になり、ガスタービン2及び発電機3の回転速度と蒸気タービン4の回転速度との速度差が一定以上大きくなった際に、発電機3側の部分と蒸気タービン4側の部分とが離れ、遮断状態になる。
【0025】
クラッチ6が接続状態になった際には、蒸気タービン4の回転がクラッチ6を介して発電機3に伝わり、発電機3と蒸気タービン4との間の動力伝達が接続状態になる。一方、クラッチ6が遮断状態になった際には、蒸気タービン4の回転はクラッチ6を介して発電機3に伝わらず、発電機3と蒸気タービン4との間の動力伝達は遮断状態になる。
【0026】
発電機3と蒸気タービン4との間の動力伝達が接続状態になると、ガスタービン2の回転動力と蒸気タービン4の回転動力とを同時に発電機3に伝達させることが可能となり、発電出力の上昇を図ることができる。なお、クラッチ6の構造は特に限られるものではなく、例えばヘリカルスプライン嵌合等のかみ合せクラッチや、摩擦クラッチ等が採用され得る。
【0027】
ガスタービン2には、燃料制御弁7を介して燃料fが供給され、蒸気タービン4には、排熱回収ボイラ(図示せず)等からの蒸気Sh、Srが蒸気加減弁8、9を介して供給される。
【0028】
本実施の形態における蒸気タービン4は、一例として、高圧タービン10と、中圧タービン11と、低圧タービン12と、を有し、高圧タービン10は、排熱回収ボイラからの高圧蒸気Shを高圧蒸気加減弁8を介して供給され、高圧蒸気Shにより回転する。排熱回収ボイラは、ガスタービン2の排ガスの熱により高圧蒸気を生成し、高圧タービン10側に供給するものである。
【0029】
また、中圧タービン11は、再熱蒸気加減弁9を介して再熱蒸気Srを供給され、再熱蒸気Srにより回転する。再熱蒸気Srは、例えば高圧タービン10が排出した蒸気を図示しない再熱器により加熱することで生成される。このような再熱蒸気Srの圧力は、高圧蒸気の圧力よりも低くなる。
【0030】
一方、低圧タービン12は、中圧タービン11が排出した蒸気により回転するように構成される。なお、蒸気タービン4は図示の例に限られるものではなく、例えば高圧タービンと低圧タービンとで構成されるものや、単一のタービンで構成されるもの等でもよい。
【0031】
また、中圧タービン11の車室に形成される蒸気入口と再熱蒸気加減弁9との間の蒸気流路には、第1蒸気圧力センサ13が設けられ、高圧タービン10の車室に形成される蒸気入口と高圧蒸気加減弁8との間の蒸気流路には、第2蒸気圧力センサ14が設けられる。第1蒸気圧力センサ13は、中圧タービン11の蒸気入口に流入する中圧タービン11の入口蒸気圧力を検出し、第2蒸気圧力センサ14は、高圧タービン10の蒸気入口に流入する高圧タービン10の入口蒸気圧力を検出する。
【0032】
また、本実施の形態では、ガスタービン2の回転速度を検出する第1速度センサ15と、蒸気タービン4の回転速度を検出する第2速度センサ16と、がさらに設けられている。第1速度センサ15は、クラッチ6に対して発電機3及びガスタービン2側に配置され、第2速度センサ16は、クラッチ6に対して蒸気タービン4側に配置されている。これら各センサ15、16は、例えばロータリーエンコーダ等でもよい。
【0033】
上述した一軸型コンバインドサイクル発電プラント1の起動操作は、上述した一般的な起動操作と同様の手順で実施される。すなわち、起動時においては、まず、発電機3と蒸気タービン4との間の動力伝達がクラッチ6により遮断状態とされる。次に、ガスタービン2が回転駆動され、発電機3がガスタービン2の回転によって回転する。そして、ガスタービン2が定格回転速度に到達した後、発電機3が送電網に並列される。そして、上記並列後、ガスタービン2の排ガスにより排熱回収ボイラで発生した高圧蒸気Sh等が蒸気タービン4に供給され、蒸気タービン4が回転駆動される。
【0034】
ここで、高圧蒸気加減弁8は、蒸気タービン4の回転速度が定格回転速度に向けて上昇するように弁開度を漸次増加させて、高圧蒸気Shの供給量を増加させていく。このように高圧蒸気Shの供給量が増加される場合、高圧タービン10の入口蒸気圧力は、供給量に比例して増加する。また、再熱蒸気加減弁9も、蒸気タービン4の回転速度が定格回転速度に向けて上昇するように弁開度を漸次増加させて、再熱蒸気Srの供給量を増加させていく。このように再熱蒸気Srの供給量が増加される場合、中圧タービン11の入口蒸気圧力も、供給量に比例して増加する。そして、蒸気タービン4が定格回転速度に到達したときに、クラッチ6が発電機3と蒸気タービン4との間の動力伝達を接続状態に切り替え、蒸気タービン4の動力も発電機3に伝達されることになる。
【0035】
以下、本実施の形態にかかるクラッチ状態検出装置100について説明する。
【0036】
図2は、クラッチ状態検出装置100の構成を概略的に示す。
図2に示すように、本実施の形態にかかるクラッチ状態検出装置100は、速度差検出部101と、蒸気圧力検出部102と、判定部103と、を有している。
【0037】
クラッチ状態検出装置100は、プロセッサを含む例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)等で構成され、必要なプログラムを記憶部から読み出して実行することで、各種の機能(速度差検出部101,蒸気圧力検出部102、判定部103の各機能)を実現してもよい。上記記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。
【0038】
なお、上記プロセッサという文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit: ASIC)、プログラマブル論理デバイス(SPLD、CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array: FPGA)等の回路を意味する。一方で、クラッチ状態検出装置100は、論理回路を有するICチップでも構成され得る。
【0039】
速度差検出部101は、ガスタービン2の回転速度と蒸気タービン4の回転速度との回転速度差が所定値以下であるか否かを検出し、蒸気圧力検出部102は、蒸気タービン4の入口蒸気圧力が所定圧力以上であるか否かを検出する。そして、判定部103は、速度差検出部101で回転速度差が所定値以下であることが検出され且つ蒸気圧力検出部102で入口蒸気圧力が所定圧力以上であることが検出された際に、クラッチ6が接続状態であると判定する。
【0040】
詳しくは、速度差検出部101は、第1速度センサ15が検出するガスタービン2の回転速度R1の情報及び第2速度センサ16が検出する蒸気タービン4の回転速度R2の情報を取得し、ガスタービン2の回転速度R1と蒸気タービン4の回転速度R2との回転速度差を、第1所定値(所定値)及びこの第1所定値よりも大きい第2所定値(他の所定値)と比較する。
【0041】
そして、速度差検出部101は、上記回転速度差が第1所定値以下であることが検出された場合に、回転速度差が小さいことを示す「GT/ST回転速度差小」の信号を判定部103に入力し、上記回転速度差が第2所定値以上であることが検出された場合に、回転速度差が大きいことを示す「GT/ST回転速度差大」の信号を判定部103に入力するようになっている。
【0042】
なお、速度差検出部101は上記態様に限られるものではなく、上記回転速度差を1つの所定値と比較し、上記回転速度差が所定値以上であった場合に、「GT/ST回転速度差小」の信号を判定部103に入力し、上記回転速度差が所定値未満である場合に、「GT/ST回転速度差大」の信号を判定部103に入力するような構成等でもよい。
【0043】
また、蒸気圧力検出部102は、第1蒸気圧力センサ13が検出する中圧タービン11の入口蒸気圧力P1の情報及び第2蒸気圧力センサ14が検出する高圧タービン10の入口蒸気圧力P2の情報を取得し、中圧タービン11の入口蒸気圧力P1を第1所定圧力と比較し、高圧タービン10の入口蒸気圧力P2を第2所定圧力と比較するように構成されている。
【0044】
詳しくは、蒸気圧力検出部102は、中圧タービン11の入口蒸気圧力P1が所定圧力としての上記第1所定圧力以上であり且つ高圧タービン10の入口蒸気圧力P2が所定圧力としての上記第2所定圧力以上であることを検出した際に、「蒸気タービン4の入口蒸気圧力が所定圧力以上である」と判定する。そして、蒸気圧力検出部102は、このように蒸気タービン4の入口蒸気圧力が所定圧力以上であると判定した場合に「ST出力有り」の信号を判定部103に入力するようになっている。なお、この「ST出力有り」の信号は、蒸気タービン4の入口蒸気圧力が蒸気供給量の増加により上昇していることを示す信号として生成されるものである。
【0045】
一方で、蒸気圧力検出部102は、上記のように蒸気タービン4の入口蒸気圧力が所定圧力以上であると判定されない場合には、「ST出力無し」の信号を判定部103に入力する。蒸気タービン4の入口蒸気圧力が所定圧力以上であると判定されない場合とは、本実施の形態において、中圧タービン11の入口蒸気圧力P1が上記第1所定圧力未満であるか、及び/又は、高圧タービン10の入口蒸気圧力P2が上記第2所定圧力未満である場合を意味する。
【0046】
なお、蒸気圧力検出部102は、中圧タービン11の入口蒸気圧力P1が上記第1所定圧力以上であること及び高圧タービン10の入口蒸気圧力P2が上記第2所定圧力以上であることのいずれか一方を検出した際に、「ST出力有り」の信号を判定部103に入力する構成等でもよい。この際、蒸気圧力検出部102は、中圧タービン11の入口蒸気圧力P1の情報のみを取得する構成等でもよい。また、蒸気圧力検出部102は、「ST出力無し」の信号を生成しない構成等でもよい。
【0047】
そして、本実施の形態における判定部103は、論理積ゲート部104と、論理和ゲート部105と、保持回路部106と、を有している。
【0048】
論理積ゲート部104は、速度差検出部101からの「GT/ST回転速度差小」の信号及び蒸気圧力検出部102からの「ST出力有り」の信号を両方取得するAND条件が成立した場合に、入力信号In1を保持回路部106に入力し、AND条件が成立しない場合には、入力信号In1を保持回路部106に入力しないように構成されている。
【0049】
論理和ゲート部105は、速度差検出部101からの「GT/ST回転速度差大」の信号及び蒸気圧力検出部102からの「ST出力無し」の信号のうちの少なくともいずれかを取得するOR条件が成立した場合に、入力信号In2を保持回路部106に入力し、何ら信号を取得しない場合に、入力信号In2を保持回路部106に入力しないように構成されている。
【0050】
そして、保持回路部106は、論理積ゲート部104から入力信号In1を取得したときにセット状態になり、論理和ゲート部105から入力信号In2を取得したときにリセット状態になるように構成されている。そして、保持回路部106は、セット状態であるときにクラッチ6が接続状態であることを示す信号(
図2における「クラッチ接続」)を生成し、リセット状態であるときにクラッチ6が遮断状態であることを示す信号(
図2における「クラッチ遮断」)を生成する。これら信号を参照することにより、現在のクラッチ6の状態を判定することが可能となる。
【0051】
なお、本実施の形態における保持回路部106はフリップフロップ回路の構成を利用するものであるが、その構成は特に限られるものではない。
【0052】
以下、クラッチ状態検出装置100の作用を、
図4に示した起動操作、及び
図6に示したクラッチ遮断後の降速時の様子を参照しつつ説明する。
【0053】
まず、
図4に従う起動操作では、ガスタービン2が定格回転速度に到達した後に、ガスタービン2の排ガスにより排熱回収ボイラで発生した高圧蒸気Sh等が蒸気タービン4に供給され、蒸気タービン4が回転駆動される。そして、蒸気タービン4の回転速度は次第に上昇し、蒸気タービン4の回転速度が定格回転速度に到達したときに、クラッチ6が発電機3と蒸気タービン4との間の動力伝達を接続状態にする。
【0054】
ここで、上述のように蒸気タービン4の回転速度は次第に上昇することで、ガスタービン2の回転速度R1と蒸気タービン4の回転速度R2との回転速度差は小さくなる。この際、クラッチ状態検出装置100は、回転速度差が上記第1所定値以下であることが速度差検出部101で検出された場合に、回転速度差が小さいことを示す「GT/ST回転速度差小」の信号を速度差検出部101から判定部103に入力する(速度差検出工程)。
【0055】
また、上述のように蒸気タービン4の回転速度が定格回転速度に向けて次第に上昇する際には、中圧タービン11の入口蒸気圧力P1及び高圧タービン10の入口蒸気圧力P2が次第に増加する。そして、クラッチ状態検出装置100は、中圧タービン11の入口蒸気圧力P1が蒸気第1所定圧力以上であり且つ高圧タービン10の入口蒸気圧力P2が上記第2所定圧力以上であることが蒸気圧力検出部102で検出された場合に、蒸気タービン4の入口蒸気圧力が所定圧力以上であると判定し、「ST出力有り」の信号を蒸気圧力検出部102から判定部103に入力する(蒸気圧力検出工程)。
【0056】
以上のように、判定部103(詳しくは、論理積ゲート部104)に「GT/ST回転速度差小」の信号及び「ST出力有り」の信号が入力されることで、論理積ゲート部104で論理積が成立し、クラッチ状態検出装置100は、論理積ゲート部104から入力信号In1を保持回路部106に入力する。この際、保持回路部106は、セット状態になり、クラッチ6が接続状態であることを示す信号を生成する。これにより、クラッチ状態検出装置100は、現在のクラッチ6の状態が接続状態であると判定し、より詳しくは起動時におけるクラッチ6の接続状態であると判定する(判定工程)。
【0057】
一方で、
図6に示すクラッチ遮断後の降速時においては、クラッチ遮断後に、まず、蒸気タービン4が停止され、次にガスタービン2が停止され、ガスタービン2の回転速度R1及び蒸気タービン4の回転速度R2は次第に低下していく。そして、ガスタービン2が後に停止されたにもかかわらず、ガスタービン2の回転速度R1が蒸気タービン4の低下した回転速度R2に追いつく。
【0058】
この際、クラッチ状態検出装置100では、ガスタービン2が停止された後で且つ蒸気タービン4が停止される前において、ガスタービン2の回転速度R1と蒸気タービン4の回転速度R2との回転速度差が上記第2所定値以上であることが速度差検出部101で検出される。そして、回転速度差が大きいことを示す「GT/ST回転速度差大」の信号が速度差検出部101から判定部103に入力される。これにより、クラッチ状態検出装置100では、判定部103における論理和ゲート部105で論理和が成立し、論理和ゲート部105から入力信号In2が保持回路部106に入力される。この際、保持回路部106はリセット状態になり、クラッチ6が遮断状態であることを示す信号が生成され、クラッチ状態検出装置100は、現在のクラッチ6の状態が遮断状態であると判定する。
【0059】
また、蒸気タービン4の回転速度R2が低下する際には、中圧タービン11の入口蒸気圧力P1及び高圧タービン10の入口蒸気圧力P2が次第に低下する。そのため、クラッチ状態検出装置100は、あるタイミングで、中圧タービン11の入口蒸気圧力P1が第1所定圧力未満であること及び/又は高圧タービン10の入口蒸気圧力P2が第2所定圧力未満であることを蒸気圧力検出部102で検出する。この際、「ST出力無し」の信号が蒸気圧力検出部102から判定部103に入力される。これによっても、保持回路部106がリセット状態になり、クラッチ6が遮断状態であることを示す信号が生成され、クラッチ状態検出装置100は、現在のクラッチ6の状態が遮断状態であると判定する。
【0060】
また、ガスタービン2の回転速度R1が蒸気タービン4の低下した回転速度R2に追いついてしまった際、ガスタービン2の回転速度R1と蒸気タービン4の回転速度R2との回転速度差が上記第1所定値以下であることが速度差検出部101で検出され、回転速度差が小さいことを示す「GT/ST回転速度差小」の信号が速度差検出部101から判定部103に入力される。
【0061】
しかしながら、蒸気タービン4の回転速度R2が低下する際には、中圧タービン11の入口蒸気圧力P1及び高圧タービン10の入口蒸気圧力P2が低下する。そのため、クラッチ状態検出装置100は、中圧タービン11の入口蒸気圧力P1が第1所定圧力以上であり且つ高圧タービン10の入口蒸気圧力P2が第2所定圧力以上であることを検出することはない。したがって、「ST出力有り」の信号が判定部103の論理積ゲート部104に入力されることはない。したがって、論理積ゲート部104で論理積が成立することはなく、論理積ゲート部104から入力信号In1が保持回路部106に入力されることはない。そのため、保持回路部106のリセット状態は維持され、クラッチ6が接続状態であることは検出されない。
【0062】
以上に説明した本実施の形態にかかるクラッチ状態検出装置100は、ガスタービン2の回転速度R1と蒸気タービン4の回転速度との回転速度差が所定値(本例では、第1所定値)以下であるか否かを検出する速度差検出部101と、蒸気タービン4の入口蒸気圧力が所定圧力以上(本例では、中圧タービンの入口蒸気圧力P1≧第1所定圧力、且つ、高圧タービンの入口蒸気圧力P2≧第2所定圧力)であるか否かを検出する蒸気圧力検出部102と、速度差検出部101で回転速度差が所定値以下であることが検出され且つ蒸気圧力検出部102で入口蒸気圧力が所定圧力以上であることが検出された際に、クラッチ6が接続状態であると判定する判定部103と、を備える。
【0063】
すなわち、このクラッチ状態検出装置100は、ガスタービン2の回転速度R1と蒸気タービン4の回転速度R2との回転速度差が小さくなったか否かという点だけでなく、入口蒸気圧力が大きくなったか否かという点をも考慮して、クラッチ6が接続状態であるか否かを判断する。
【0064】
これにより、クラッチ6の状態を所望の態様で検出できる。具体的には、起動時におけるクラッチ6の接続状態だけを検出し、降速時におけるクラッチ6の接続状態の検出を除外する態様で、クラッチ6の接続状態を検出できる。とりわけ、本実施の形態ではクラッチ6が入口蒸気圧力が増加したことを基準の1つとしてクラッチ接続状態を判定することで、判定の応答性の観点で有利となる。
【0065】
また、本実施の形態における速度差検出部101は、上記回転速度差が上記所定値(第1所定値)よりも大きい値の他の所定値(第2所定値)以上であるか否かも検出し、回転速度差が他の所定値以上であるときに、回転速度差は大きいと判定する。そして、判定部103は、速度差検出部101で上記回転速度差が上記他の所定値以上であることが検出された際に、クラッチ6が遮断状態であると判定する。
【0066】
このように速度差検出部101が2つの判断基準(所定値及び他の所定値)を用いて回転速度差が小さいか又は大きいかを判定する場合、回転速度の検出誤差により回転速度差が小さいこと又は大きいことが不所望に検出されること回避できる。そのため、判定部103が行うクラッチ状態の判定の信頼性を向上できる。
【0067】
また、本実施の形態における判定部103は、速度差検出部101で回転速度差が所定値以下であることが検出されない際に(詳しくは、回転速度差が第1所定値以下であることが検出されず且つ回転速度差が第2所定値以上であることが検出された際に)、及び/又は、蒸気圧力検出部102で入口蒸気圧力が所定圧力以上あること(詳しくは、中圧タービンの入口蒸気圧力P1≧第1所定圧力、且つ、高圧タービンの入口蒸気圧力P2≧第2所定圧力)が検出されない際に、クラッチ6が遮断状態であると判定する。
【0068】
このように判定部103が、2つ条件うちの少なくともいずれかの条件が成立した場合にクラッチ6が遮断状態であると判定する構成では、クラッチ6の遮断状態を判定する際の応答性を高めることができる。
【0069】
また、本実施の形態における蒸気圧力検出部102は、中圧タービンの入口蒸気圧力P1≧第1所定圧力、且つ、高圧タービンの入口蒸気圧力P2≧第2所定圧力であることが検出された際に、蒸気タービン4の入口蒸気圧が上昇していることを示す「ST出力有り」の信号を判定部103に入力する。「ST出力有り」の信号は、クラッチ接続状態を判定する際の指標であるが、本実施の形態では、この信号を生成する際の判断基準が2つの条件が同時に成立する場合となる。これにより、クラッチ接続状態を判定する際の信頼性を向上させている。
【0070】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について
図1及び
図3を参照しつつ説明する。
図3は、第2の実施の形態にかかるクラッチ状態検出装置110の構成を概略的に示す。
図3に示すクラッチ状態検出装置110は、速度差検出部111と、発電出力検出部112と、判定部113と、を有している。クラッチ状態検出装置110は
図1に示した一軸型コンバインドサイクル発電プラント1に適用されており、以下のクラッチ状態検出装置110の説明においては
図1で説明した構成要素を用いる場合があるが、その詳細な説明は省略する。
【0071】
本実施の形態では、速度差検出部111が、ガスタービン2の回転速度と蒸気タービン4の回転速度との回転速度差が所定値以下であるか否かを検出し、発電出力検出部112は、発電機3の発電出力が増加したか否かを検出する。そして、判定部113は、速度差検出部101で回転速度差が所定値以下であることが検出され且つ発電出力検出部112で発電出力が増加したことが検出された際に、クラッチ6が接続状態であると判定する。
【0072】
詳しくは、速度差検出部111は、第1速度センサ15が検出するガスタービン2の回転速度R1の情報及び第2速度センサ16が検出する蒸気タービン4の回転速度R2の情報を取得し、ガスタービン2の回転速度R1と蒸気タービン4の回転速度R2との回転速度差を、第1所定値(所定値)及びこの第1所定値よりも大きい第2所定値(他の所定値)と比較する。
【0073】
そして、速度差検出部111は、上記回転速度差が第1所定値以下であることが検出された場合に、回転速度差が小さいことを示す「GT/ST回転速度差小」の信号を判定部103に入力し、上記回転速度差が第2所定値以上である場合に、回転速度差が大きいことを示す「GT/ST回転速度差大」の信号を判定部113に入力する。
【0074】
発電出力検出部112は、例えば互いに異なる2つの時点での発電機3の発電出力の差分を順次演算し、演算した差分が所定出力値以上である際に、発電出力が増加したと判定するようになっている。そして、発電出力検出部112は、発電出力が増加したと判定した場合に、発電出力が増加したことを示す「発電機出力増」の信号を判定部103に入力する。本実施の形態では、クラッチ6が遮断状態から接続状態に移行したレベルで発電出力が増加した場合に、「発電機出力増」の信号が生成されることを想定している。本実施の形態における発電出力検出部112は、互いに異なる2つの時点での発電機3の発電出力の差分を順次演算するべく、発電機3の発電出力MWの情報を順次取得するように構成されている。
【0075】
なお、発電出力検出部112の処理は、上述の態様に限られるものではなく、例えば所定の期間における発電出力の増加率や、積分値等を、対応する閾値と比較することで、発電機3の発電出力が増加したか否かを判定してもよい。
【0076】
また、本実施の形態における判定部113は、論理積ゲート部114と保持回路部116とで構成されている。そして、論理積ゲート部114は、速度差検出部111からの「GT/ST回転速度差小」の信号及び発電出力検出部112からの「発電機出力増」の信号を両方取得するAND条件が成立した場合に、入力信号In1を保持回路部116に入力し、AND条件が成立しない場合には、入力信号In1を保持回路部116に入力しないように構成されている。
【0077】
また、保持回路部116は、上述のように論理積ゲート部114から入力信号In1を入力されるか又は速度差検出部111から「GT/ST回転速度差大」の信号を入力されるようになっている。そして、保持回路部116は、論理積ゲート部114から入力信号In1を取得したときに、セット状態になり、速度差検出部111から「GT/ST回転速度差大」の信号を取得したときに、リセット状態になるように構成されている。
【0078】
そして、保持回路部116は、セット状態であるときに、クラッチ6が接続状態であることを示す信号(
図3における「クラッチ接続」)を生成し、リセット状態であるときに、クラッチ6が遮断状態であることを示す信号(
図3における「クラッチ遮断」)を生成する。これら信号を参照することにより、現在のクラッチ6の状態を判定することが可能となる。
【0079】
以下、クラッチ状態検出装置110の作用を、
図4に示した起動操作、及び
図6に示したクラッチ遮断後の降速時の様子を参照しつつ説明する。
【0080】
まず、
図4に示す起動操作では、蒸気タービン4の回転速度R2が次第に上昇することで、ガスタービン2の回転速度R1と蒸気タービン4の回転速度R2との回転速度差は小さくなる。この際、クラッチ状態検出装置110は、回転速度差が上記第1所定値以下であることが速度差検出部111で検出された場合に、回転速度差が小さいことを示す「GT/ST回転速度差小」の信号を速度差検出部111から判定部113に入力する。
【0081】
また、蒸気タービン4の回転速度が定格回転速度に到達した際には、クラッチ6が接続状態になり、蒸気タービン4の回転動力が発電機3に伝達されることで、発電出力が増加する。これにより、発電出力検出部112は、互いに異なる2つの時点での発電機の発電出力の差分が所定出力値以上であることを検出し、発電出力が増加したことを示す「発電機出力増」の信号を判定部103に入力する。
【0082】
以上のように、判定部103(詳しくは、論理積ゲート部114)に「GT/ST回転速度差小」の信号及び「発電機出力増」の信号が入力されることで、論理積ゲート部114で論理積が成立し、クラッチ状態検出装置110は、論理積ゲート部114から入力信号In1を保持回路部116に入力する。この際、保持回路部116は、セット状態になり、クラッチ6が接続状態であることを示す信号を生成する。これにより、クラッチ状態検出装置110は、現在のクラッチ6の状態が接続状態であると判定し、より詳しくは起動時におけるクラッチ6の接続状態であると判定する。
【0083】
一方で、
図6に示すクラッチ遮断後の降速時では、クラッチ遮断後に、まず、蒸気タービン4が停止され、次にガスタービン2が停止され、ガスタービン2の回転速度R1及び蒸気タービン4の回転速度R2は次第に低下していく。そして、ガスタービン2が後に停止されたにもかかわらず、ガスタービン2の回転速度R1が蒸気タービン4の低下した回転速度R2に追いつく。
【0084】
この際、クラッチ状態検出装置110では、蒸気タービン4が停止された後で且つガスタービン2が停止される前において、ガスタービン2の回転速度R1と蒸気タービン4の回転速度R2との回転速度差が上記第2所定値以上であることが速度差検出部111で検出される。そして、回転速度差が大きいことを示す「GT/ST回転速度差大」の信号が速度差検出部111から判定部113に入力される。これにより、クラッチ状態検出装置110では、判定部113における保持回路部116がリセット状態になり、クラッチ6が遮断状態であることを示す信号が生成され、クラッチ状態検出装置110は、現在のクラッチ6の状態が遮断状態であると判定する。
【0085】
一方で、その後、ガスタービン2の回転速度R1が蒸気タービン4の低下した回転速度R2に追いついてしまった際には、ガスタービン2の回転速度R1と蒸気タービン4の回転速度R2との回転速度差が上記第1所定値以下であることが速度差検出部111で検出され、回転速度差が小さいことを示す「GT/ST回転速度差小」の信号が速度差検出部111から判定部113(詳しくは、論理積ゲート部114)に入力される。
【0086】
しかしながら、ガスタービン2の回転速度R1が低下する際には解列しているため、発電出力は0である。そのため、クラッチ状態検出装置110では、発電出力検出部112から判定部103(詳しくは、論理積ゲート部114)に「発電機出力増」の信号が入力されることはない。そのため、論理積ゲート部114で論理積が成立することはなく、論理積ゲート部114から入力信号In1が保持回路部106に入力されることはない。そのため、保持回路部106のリセット状態は維持され、クラッチ6が接続状態であることは検出されない。なお、本実施の形態では、クラッチ遮断後の降速時においては、蒸気タービン4が停止された後、発電機3と送電網とが解列され、その後、ガスタービン2が停止される。
【0087】
以上に説明した第2の実施の形態にかかるクラッチ状態検出装置110は、ガスタービン2の回転速度R1と蒸気タービン4の回転速度R2との回転速度差が小さくなったか否かという点だけでなく、クラッチ6が遮断状態から接続状態に移行したレベルで発電出力が増加したか否かという点をも考慮して、クラッチ6が接続状態であるか否かを判断する。これにより、第1の実施の形態と同様に、クラッチ6の状態を所望の態様で検出できる。すなわち、具体的には、起動時におけるクラッチ6の接続状態だけを検出し、降速時におけるクラッチ6の接続状態の検出を除外する態様で、クラッチ6の接続状態を検出できる。とりわけ、本実施の形態ではクラッチ6が遮断状態から接続状態に移行したレベルで発電出力が増加したか否かを実際の発電出力MWから判定するため、判定の信頼性の観点で有利となる。
【0088】
以上、実施の形態を説明したが、上記実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。このような実施の形態及びその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1…一軸型コンバインドサイクル発電プラント、2…ガスタービン、3…発電機、4…蒸気タービン、5…回転軸、6…クラッチ、7…燃料制御弁、8…高圧蒸気加減弁、9…再熱蒸気加減弁、10…高圧タービン、11…中圧タービン、12…低圧タービン、13…第1蒸気圧力センサ、14…第2蒸気圧力センサ、15…第1速度センサ、16…第2速度センサ、100,110…クラッチ状態検出装置、101,111…速度差検出部、102…蒸気圧力検出部、103,113…判定部、104,114…論理積ゲート部、105…論理和ゲート部、106,116…保持回路部、112…発電出力検出部