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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158336
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】自動車用フード構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/10 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B62D25/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063143
(22)【出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】李 威澄
(72)【発明者】
【氏名】加嶋 寛子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【テーマコード(参考)】
3D004
【Fターム(参考)】
3D004AA01
3D004AA04
3D004BA02
3D004CA02
3D004CA15
(57)【要約】
【課題】自動車用フード構造において、張り剛性、耐デント性、および歩行者保護性能について高い性能を確保する。
【解決手段】自動車用フード構造は、アウタパネル4、インナパネル20、および支持部31を備える。インナパネル20は、隆起部22と内側傾斜壁23とを有する。隆起部22は、アウタパネル4の下面と対向して配置され下面を支持する支持面21を有する。内側傾斜壁23は、隆起部22から連続して支持面21に対して傾斜している。支持部31は、インナパネル20の車両幅方向のサイド部の車両前後方向の前部側に設けられ、アウタパネル4の下面を車両高さ方向の下側から支える。車両幅方向のサイド部に配置された内側傾斜壁23の車両前後方向の前部側に、トリム孔29が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用フードの上面を構成するアウタパネルと、
前記アウタパネルの下面と対向して配置され前記下面を支持する支持面を有する隆起部、前記隆起部から連続して前記支持面に対して傾斜している内側傾斜壁、前記内側傾斜壁から連続して前記アウタパネルの前記下面に間隔を空けて対向している溝底壁、および前記溝底壁から連続して前記溝底壁に対して傾斜している外側傾斜壁を有するインナパネルと、
前記インナパネルの車両幅方向のサイド部の車両前後方向の前部側に設けられ、前記アウタパネルの前記下面を車両高さ方向の下側から支える支持部と
を備え、
前記車両幅方向のサイド部に配置された前記内側傾斜壁の前記車両前後方向の前部側に、トリム孔が設けられている、自動車用フード構造。
【請求項2】
前記自動車用フードを車両に対して開閉可能に軸支するように前記インナパネルの前記車両幅方向のサイド部の前記車両前後方向の後部側に設けられたヒンジ部を備え、
前記トリム孔は、前記車両幅方向のサイド部に配置された前記内側傾斜壁の前記車両前後方向の前部側のみに設けられている、請求項1に記載の自動車用フード構造。
【請求項3】
前記内側傾斜壁は、
前記隆起部の前記車両幅方向のサイド部から連続して前記支持面に対して傾斜し、前記車両前後方向に延びている内側側壁部と、
前記隆起部の前記車両前後方向の前方から連続して前記支持面に対して傾斜し、前記車両幅方向に延びている内側前壁部と、
前記隆起部の前記車両幅方向のサイド部の前記車両前後方向の前部側から連続して前記支持面に対して傾斜し、前記内側側壁部と前記内側前壁部とを接続している内側コーナー壁部と
を備え、
前記トリム孔は、前記内側コーナー壁部に設けられている、請求項1又は2に記載の自動車用フード構造。
【請求項4】
前記トリム孔は、前記内側コーナー壁部の前記車両高さ方向の上端から隙間を空けて前記車両高さ方向の下側に設けられている、請求項3に記載の自動車用フード構造。
【請求項5】
前記トリム孔は、前記トリム孔の前記車両高さ方向の上端を起点に前記内側コーナー壁部の一部を前記アウタパネルに向かって切り起こすことによって形成されており、
前記支持部は、前記切り起こしによって形成された切り起こし片を含む、請求項3又は4に記載の自動車用フード構造。
【請求項6】
前記トリム孔は、前記トリム孔の前記車両高さ方向の下端を起点に前記内側コーナー壁部の一部を前記アウタパネルに向かって切り起こすことによって形成されており、
前記支持部は、前記切り起こしによって形成された切り起こし片を含み、
前記切り起こし片は、前記トリム孔の前記車両高さ方向の下端から前記アウタパネルの前記下面まで延びる脚部と、前記脚部の先端から延び、前記アウタパネルの前記下面に対向して前記アウタパネルの前記下面を支持する座部とを有する、請求項3又は4に記載の自動車用フード構造。
【請求項7】
前記脚部には、貫通孔が設けられている、請求項6に記載の自動車用フード構造。
【請求項8】
前記脚部は、折れ曲がっている、請求項6に記載の自動車用フード構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用フード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用フード構造においては、洗車時など弾性状態でフードアウタ面から荷重を負荷した場合の張り剛性、局所的に強い荷重が加わった際の凹み抑制を目的とする耐デント性を高くすることが求められている。また、安全性の観点から高い歩行者保護性能が求められている。歩行者保護性能は、車両前方衝突時にフード部分が潰れることに伴う衝撃吸収性能を示している。
【0003】
特許文献1には、インナパネルの縦壁に複数のトリム孔を設け、車両前後方向の前部の潰れ性を向上させることによって、歩行者保護性能の向上が図られた自動車用フード構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-182738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1においては、張り剛性や耐デント性の向上に関する特段の工夫は詳細に記載されておらず、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、自動車用フード構造において、張り剛性、耐デント性、および歩行者保護性能について高い性能を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、自動車用フードの上面を構成するアウタパネルと、前記アウタパネルの下面と対向して配置され前記下面を支持する支持面を有する隆起部、前記隆起部から連続して前記支持面に対して傾斜している内側傾斜壁、前記内側傾斜壁から連続して前記アウタパネルの前記下面に間隔を空けて対向している溝底壁、および前記溝底壁から連続して前記溝底壁に対して傾斜している外側傾斜壁を有するインナパネルと、前記インナパネルの車両幅方向のサイド部の車両前後方向の前部側に設けられ、前記アウタパネルの前記下面を車両高さ方向の下側から支える支持部とを備え、前記車両幅方向のサイド部に配置された前記内側傾斜壁の前記車両前後方向の前部側に、トリム孔が設けられている、自動車用フード構造を提供する。
【0008】
本発明の自動車用フード構造によれば、アウタパネルの車両前後方向の前部の下面が、支持部によって車両高さ方向の下側から支持されている。そのため、アウタパネルの張り剛性や耐デント性を高く確保できる。また、車両幅方向のサイド部に配置された内側傾斜壁の車両前後方向の前部側にトリム孔が設けられている。当該部分の内側傾斜壁は、車両の前方からの衝撃および上方からの衝撃に対して抗力を発揮するが、当該部分にトリム孔を設けることで両衝撃に対して自動車用フードを潰れ易くでき、高い歩行者保護性能を確保できる。なお、支持部は、インナパネルの一部であってもよいし、インナパネルとは別体であってもよい。
【0009】
自動車用フード構造は、前記自動車用フードを車両に対して開閉可能に軸支するように前記インナパネルの前記車両幅方向のサイド部の前記車両前後方向の後部側に設けられたヒンジ部を備え、前記トリム孔は、前記車両幅方向のサイド部に配置された前記内側傾斜壁の前記車両前後方向の前部側のみに設けられていてもよい。
【0010】
前記の構成によれば、車両前後方向の後部側に設けられたヒンジ部から離れた位置(車両前後方向の前部側)のみにトリム孔が設けられている。換言すれば、ヒンジ部付近にはトリム孔が設けられておらず、ヒンジ部付近の剛性の低下を抑制し、高い曲げ剛性およびねじり剛性を確保できる。
【0011】
前記内側傾斜壁は、前記隆起部の前記車両幅方向のサイド部から連続して前記支持面に対して傾斜し、前記車両前後方向に延びている内側側壁部と、前記隆起部の前記車両前後方向の前方から連続して前記支持面に対して傾斜し、前記車両幅方向に延びている内側前壁部と、前記隆起部の前記車両幅方向のサイド部の前記車両前後方向の前部側から連続して前記支持面に対して傾斜し、前記内側側壁部と前記内側前壁部とを接続している内側コーナー壁部とを備え、前記トリム孔は、前記内側コーナー壁部に設けられていてもよい。
【0012】
前記の構成によれば、内側傾斜壁のうち、車両幅方向のサイド部で車両前後方向の最前部にトリム孔を設けることができる。そのため、曲げ剛性およびねじり剛性の低下を抑制できる。
【0013】
前記トリム孔は、前記内側コーナー壁部の前記車両高さ方向の上端から隙間を空けて前記車両高さ方向の下側に設けられていてもよい。
【0014】
前記の構成によれば、トリム孔が内側コーナー壁部内で終端し、隆起部までは延びていない。従って、隆起部と内側コーナー壁部との境界には稜線が形成される。曲げ変形やねじり変形は、面に対して生じ易いが、稜線部に対しては生じ難い。従って、上記構成では、曲げ変形やねじり変形が稜線によって抑えられ、曲げ剛性およびねじり剛性の低下を抑制できる。
【0015】
前記トリム孔は、前記トリム孔の前記車両高さ方向の上端を起点に前記内側コーナー壁部の一部を前記アウタパネルに向かって切り起こすことによって形成されており、前記支持部は、前記切り起こしによって形成された切り起こし片を含んでもよい。
【0016】
前記の構成によれば、トリム孔の形成と支持部の形成とが同時に達成され得る。インナパネルにトリム孔の形状の切断加工を施す際、トリム孔の車両高さ方向の上端以外を切断し、トリム孔の上端に折線が形成されるように、アウタパネルに向けて曲げ加工を施す(即ち、切り起こす)。その結果、アウタパネルの下面を支持する切り起こし片が形成され、当該切り起こし片が支持部となり得る。そのため、支持部の形成のために別部材を必要とせず、内側コーナー壁部の一部を切り起こすことのみによって、支持部が形成され、同時にトリム孔も形成され得る。
【0017】
前記トリム孔は、前記トリム孔の前記車両高さ方向の下端を起点に前記内側コーナー壁部の一部を前記アウタパネルに向かって切り起こすことによって形成されており、前記支持部は、前記切り起こしによって形成された切り起こし片を含み、前記切り起こし片は、前記トリム孔の前記車両高さ方向の下端から前記アウタパネルの前記下面まで延びる脚部と、前記脚部の先端から延び、前記アウタパネルの前記下面に対向して前記アウタパネルの前記下面を支持する座部とを有してもよい。
【0018】
前記の構成によれば、脚部は、アウタパネルに加えられる車両高さ方向の荷重を圧縮荷重として支持する。そのため、当該荷重を曲げ荷重として受ける場合に比べて、支持部は変形し難い。従って、高い張り剛性や耐デント性を確保できる。
【0019】
前記脚部には、貫通孔が設けられていてもよい。
【0020】
前記の構成によれば、支持部に含まれる切り起こし片の車両高さ方向の変形抵抗が低下し得る。即ち、車両高さ方向に自動車用フードが潰れ易くなる。そのため、歩行者が自動車用フードに乗り上げたときなどに生じ得る上方からの衝撃に対する衝撃吸収性能が向上し、脚部に貫通孔が設けられていない場合に比べて歩行者保護性能を向上できる。
【0021】
前記脚部は、折れ曲がっていてもよい。
【0022】
前記の構成によれば、支持部に含まれる切り起こし片の車両高さ方向の変形抵抗が低下し得る。そのため、脚部が折れ曲がっていない場合に比べて歩行者保護性能を向上できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の自動車用フード構造によれば、張り剛性、耐デント性、および歩行者保護性能について高い性能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】自動車の前部を示す斜視図。
図2】本発明に係る自動車用フード構造を車両前方から見た斜視図。
図3図2の自動車用フード構造からアウタパネルを除いた斜視図。
図4図3の自動車用フード構造を上から見た平面図。
図5図3の部分Vの拡大図。
図6図5の線VI-VIでの端面図。
図7】第2実施形態の図5と同様の拡大図。
図8図7の線VIII-VIIIでの端面図。
図9】第3実施形態の図5と同様の拡大図。
図10図9の線X-Xでの端面図。
図11】第3実施形態の変形例の図5と同様の拡大図。
図12図11の線XII-XIIでの端面図。
図13】第4実施形態の図5と同様の拡大図。
図14図13の線XIV-XIVでの端面図。
図15】第5実施形態の図5と同様の拡大図。
図16図15の線XVI-XVIでの端面図。
図17】第6実施形態の図5と同様の拡大図。
図18図17の線XVIII-XVIIIでの端面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係る自動車用フード構造について図面を用いて説明する。これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印UPは車両高さ方向の上方を示し、矢印Wは車両幅方向の右方を示している。また、自動車用フード1の閉止状態では、自動車用フード前方側は車両前方側と同じ方向であり、自動車用フード上方側は車両上方側と同じ方向であり、自動車用フード幅方向は車両幅方向と同じ方向である。以下の説明において、自動車用フード1は閉止状態とする。
【0026】
(第1実施形態)
図1では、本実施形態に係る自動車用フード構造が適用された自動車用フード1を備える車両2が示されている。自動車用フード1は、図示しないエンジンルームを車両上方から覆うように車両前部に配置されている。自動車用フード1は、後述するヒンジ部3を介して車両本体に開閉可能に取り付けられている。すなわち、自動車用フード1はヒンジ部3のヒンジ軸回りに回転移動することでエンジンルームを開閉するように構成されている。
【0027】
図2および図3を参照すると、自動車用フード構造は、自動車用フード1の上面を構成するアウタパネル4と、自動車用フード1の下面を構成するインナパネル20とを備える。アウタパネル4の外周端部とインナパネル20の外周端部とは、例えばヘミング加工によって接合されている。
【0028】
アウタパネル4およびインナパネル20は、一例として、いずれもアルミニウム合金板をプレス成形することにより形成されている。アウタパネル4およびインナパネル20は、鋼板等の他の金属板が適用されてもよい。
【0029】
図3および図4を参照すると、インナパネル20は、アウタパネル4の下面と対向して配置され、アウタパネル4の下面を支持する支持面21を有する隆起部22を有する。本実施形態では、隆起部22は、車両高さ方向から見て概略六角形の形状を有し、インナパネル20の中央部において隆起した部分である。本実施形態では、隆起部22は、支持面21において車両高さ方向の下方へ凹んだ形状を有する凹部40を備える。本実施形態では、凹部40は、車両幅方向に延びており、車両前後方向に間隔を空けて4つ設けられている。
【0030】
本実施形態では、アウタパネル4の下面およびインナパネル20の支持面21は、マスチック接着剤5によって接合される(図6参照)。インナパネル20はさらに、内側傾斜壁23、溝底壁24、および外側傾斜壁25を有する。内側傾斜壁23は、隆起部22から連続して支持面21に対して傾斜している。溝底壁24は、内側傾斜壁23から連続してアウタパネル4の下面に間隔を空けて対向している。外側傾斜壁25は、溝底壁24から連続して溝底壁24に対して傾斜している。本実施形態では、内側傾斜壁23と溝底壁24と外側傾斜壁25とによって、溝底壁24を溝底とする環状の溝41が形成されている。溝41は、車両高さ方向の上方に開口し、隆起部22を囲んで設けられている。隆起部22は、この溝41に対して隆起した上面部となっている。
【0031】
本実施形態に係る自動車用フード1は、車両幅方向の中心において車両前後方向に延びる軸Xに関して対称であるため、以下の説明では、自動車用フード1の車両幅方向の片サイド側のみを説明する。
【0032】
本実施形態では、内側傾斜壁23は、内側後壁部23a、内側側壁部23b、内側前壁部23c、および内側コーナー壁部23dを備える。内側後壁部23aは、隆起部22の車両前後方向の後方から連続して支持面21に対して傾斜し、車両幅方向に延びている。内側側壁部23bは、隆起部22の車両幅方向のサイド部から連続して支持面21に対して傾斜し、車両前後方向に延びている。内側前壁部23cは、隆起部22の車両前後方向の前方から連続して支持面21に対して傾斜し、車両幅方向に延びている。内側側壁部23bは、例えば、車両前後方向の前方に向かって、軸Xに近づくように構成されていてもよい。すなわち、内側側壁部23bは、軸Xと平行ではなく、軸Xに対して傾斜していてもよい。
【0033】
内側コーナー壁部23dは、隆起部22の車両幅方向のサイド部の車両前後方向の前部側から連続して支持面21に対して傾斜し、内側側壁部23bと内側前壁部23cとを接続している。本実施形態では、内側コーナー壁部23dは平面形状である。内側コーナー壁部23dと隆起部22との間には、稜線26が形成されている。また、内側コーナー壁部23dと溝底壁24との間には、谷線30が形成されている。
【0034】
本実施形態では、溝底壁24は、溝底後壁部24a、溝底側壁部24b、および溝底前壁部24cを有する。溝底後壁部24aは、内側後壁部23aから連続してアウタパネル4の下面に間隔を空けて対向している。溝底側壁部24bは、内側側壁部23bと内側コーナー壁部23dの一部とから連続してアウタパネル4の下面に間隔を空けて対向している。溝底前壁部24cは、内側前壁部23cと内側コーナー壁部23dの一部とから連続してアウタパネル4の下面に間隔を空けて対向している。
【0035】
本実施形態では、外側傾斜壁25は、外側後壁部25a、外側側壁部25b、および外側前壁部25cを有する。外側後壁部25aは、溝底後壁部24aから連続して溝底後壁部24aに対して傾斜している。外側側壁部25bは、溝底側壁部24bから連続して溝底側壁部24bに対して傾斜している。外側前壁部25cは、溝底前壁部24cから連続して溝底前壁部24cに対して傾斜している。
【0036】
本実施形態では、図4に点線で示されているように、インナパネル20は、溝底前壁部24cの車両幅方向の中央、すなわち、溝底前壁部24cの軸X上に設けられたロック部材27を備える。ロック部材27は、自動車用フード1を車両本体に対して閉じた状態で固定する機能を有する。また、本実施形態では、インナパネル20は、デントリインフォース28を備える。デントリインフォース28は、自動車用フード1の前部の張り剛性を向上させる機能を有する。デントリインフォース28は、ロック部材27と溝底前壁部24cとを車両高さ方向の上方から覆うように設けられている。
【0037】
図3および図4を参照すると、自動車用フード構造はヒンジ部3を備える。ヒンジ部3は、自動車用フード1を車両2に対して開閉可能に軸支するようにインナパネル20の車両幅方向のサイド部の車両前後方向の後部側に設けられている。すなわち、ヒンジ部3は、インナパネル20の下面における溝底後壁部24aのサイド部、換言すると溝底後壁部24aと溝底側壁部24bとが合流する部分に接合されている。
【0038】
図5および図6を参照すると、インナパネル20には、貫通孔であるトリム孔29が設けられている。トリム孔29は、トリム孔29の車両高さ方向の上端を起点に内側コーナー壁部23dの一部をアウタパネル4に向かって切り起こすことによって形成されている。詳細には、トリム孔29は、車両幅方向のサイド部に配置された内側傾斜壁23の車両前後方向の前部側のみ(本実施形態では内側コーナー壁部23dのみ)に設けられている。ここで、車両前後方向の前部側とは、インナパネル20を車両前後方向に2分割した場合の前側のことである。本実施形態では、トリム孔29は矩形である。但し、トリム孔29は、矩形以外の多角形やその他の任意の形状であってもよい。また、トリム孔の位置は、本実施形態の位置に限らず、他の箇所にも設けてもよい。
【0039】
トリム孔29は、内側コーナー壁部23dの車両高さ方向の上端(稜線26)から隙間aを空けて車両高さ方向の下側に設けられている。すなわち、トリム孔29は稜線26を残すように設けられている。隙間aは、内側コーナー壁部23dの上端(稜線26)から下端(谷線30)までの長さbの10%程度以上であってもよい(a≧0.1b)。
【0040】
また、トリム孔29は、内側コーナー壁部23dの車両高さ方向の下端(谷線30)から隙間cを空けて車両高さ方向の上側に設けられている。すなわち、トリム孔29は谷線30を残すように設けられている。隙間cは、稜線26から谷線30までの長さbの10%程度以上であってもよい(c≧0.1b)。
【0041】
自動車用フード構造は支持部31を備える。本実施形態では、支持部31は、インナパネル20の一部であり、切り起こしによって形成された切り起こし片35Aを含む。すなわち、切り起こし片35Aは、アウタパネル4の下面を車両高さ方向の下側から支える。また、本実施形態では、切り起こし片35Aは、マスチック接着剤5によってアウタパネル4に接合されている。
【0042】
以下、張り剛性、耐デント性、曲げ剛性、およびねじり剛性について言及する。
【0043】
張り剛性は、自動車用フード1の弾性状態でフードアウタ面から荷重が加わった際の剛性を示す指標であり、例えばアウタパネル4に面直方向に荷重を加えた際の変形量を測定することにより得られる。当該変形量が小さいほど張り剛性は高く、良好であると評価される。また、耐デント性は、負荷荷重が少し高いものの、前記張り剛性と略同様の手法で評価され、同様に荷重負荷後の残留変形が小さいほど良好であると評価される。そのため、アウタパネル4の下面を車両高さ方向の下側から支えるような支持部31を設けることで、張り剛性や耐デント性は向上し得る。
【0044】
曲げ剛性は、自動車用フード1の耐曲げ性を示す指標であり、例えば2つのヒンジ部3とロック部材27とを支持点として、自動車用フード1の前方角部(図4に示す部分A)に車両高さ方向の下方から上方に向けて荷重を加えた際の変形量を測定することにより得られる。当該変形量が小さいほど曲げ剛性は高く、良好であると評価される。そのため、2つのヒンジ部3とロック部材27の付近の剛性の低下を抑制することで、曲げ剛性の低下を抑制できる。
【0045】
ねじり剛性は、自動車用フード1の耐ねじれ性を示す指標であり、例えば2つのヒンジ部3を含む自動車用フード1の3つの角部を支持点として、残りの1つの角部(図4に示す部分A)に車両高さ方向の上方から下方に向けて荷重を加えた際の変形量を測定することにより得られる。当該変形量が小さいほどねじり剛性は高く、良好であると評価される。そのため、ヒンジ部3付近の剛性の低下を抑制することで、ねじり剛性の低下を抑制できる。
【0046】
本実施形態の自動車用フード構造によれば、アウタパネル4の車両前後方向の前部の下面が、支持部31によって車両高さ方向の下側から支持されている。そのため、アウタパネル4の張り剛性や耐デント性を向上できる。
【0047】
また、本実施形態では、車両前後方向の後部側に設けられたヒンジ部3から離れた位置(車両前後方向の前部側にある内側コーナー壁部23d)のみにトリム孔29が設けられている。換言すれば、ヒンジ部3付近にはトリム孔29が設けられておらず、ヒンジ部3付近の剛性の低下を抑制し、高い曲げ剛性およびねじり剛性を確保できる。
【0048】
また、本実施形態では、車両幅方向のサイド部に配置された内側傾斜壁23の車両前後方向の前部側の内側コーナー壁部23dにトリム孔29が設けられている。内側コーナー壁部23dは、車両2の前方からの衝撃および上方からの衝撃に対して抗力を発揮するが、内側コーナー壁部23dにトリム孔29を設けることで両衝撃に対して自動車用フード1を潰れ易くでき、高い歩行者保護性能を確保できる。
【0049】
また、本実施形態では、トリム孔29は、内側傾斜壁23のうち、車両幅方向のサイド部で車両前後方向の最前部(即ち内側コーナー壁部23d)に設けられている。また、トリム孔29は、内側傾斜壁23のうち、ロック部材27から車両幅方向において大きく離れた位置にある内側コーナー壁部23dに設けられている。すなわち、ヒンジ部3付近およびロック部材27付近にはトリム孔29が設けられていない。そのため、曲げ剛性およびねじり剛性の低下を抑制できる。
【0050】
また、本実施形態では、トリム孔29が内側コーナー壁部23d内で終端し、隆起部22までは延びておらず、隆起部22と内側コーナー壁部23dとの境界には稜線26が形成されている。曲げ変形やねじり変形は、面に対して生じ易いが、稜線部に対しては生じ難い。従って、稜線26が形成されていることで、曲げ変形やねじり変形が抑えられ、曲げ剛性およびねじり剛性の低下を抑制できる。
【0051】
また、本実施形態では、トリム孔29の形成と支持部31の形成とが同時に達成され得る。インナパネル20にトリム孔29の形状の切断加工を施す際、トリム孔29の車両高さ方向の上端以外を切断し、トリム孔29の上端に折線36が形成されるように、アウタパネル4に向けて曲げ加工を施す(即ち、切り起こす)。その結果、アウタパネル4の下面を支持する切り起こし片35Aが形成され、当該切り起こし片35Aが支持部31となり得る。そのため、支持部31の形成のために別部材を必要とせず、内側コーナー壁部23dの一部を切り起こすことのみによって、支持部31が形成され、同時にトリム孔29も形成され得る。
【0052】
以上より、本実施形態の自動車用フード構造によれば、張り剛性、耐デント性、曲げ剛性、ねじり剛性、および歩行者保護性能について高い性能を確保できる。
【0053】
(第2実施形態)
図7および図8を参照すると、本発明の第2実施形態に係る自動車用フード構造の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第2実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0054】
第2実施形態に係る自動車用フード構造では、トリム孔29は、トリム孔29の車両高さ方向の下端を起点に内側コーナー壁部23dの一部をアウタパネル4に向かって切り起こすことによって形成されている。
【0055】
また、支持部31は、切り起こしによって形成された切り起こし片35Bを含む。すなわち、切り起こし片35Bは、アウタパネル4の下面を車両高さ方向の下側から支える。切り起こし片35Bは、脚部37と座部38とを有する。第2実施形態では、脚部37は、トリム孔29の車両高さ方向の下端からアウタパネル4の下面まで、溝底壁24に対して垂直方向に延びる。座部38は、脚部37の先端から延び、アウタパネル4の下面に対向してアウタパネル4の下面を支持する。第2実施形態では、座部38は、マスチック接着剤5によってアウタパネル4に接合されている。また、第2実施形態では、座部38は、脚部37から隆起部22に向かって延びている。
【0056】
第2実施形態に係る自動車用フード構造によれば、脚部37は、アウタパネル4に加えられる荷重を圧縮荷重として支持する。そのため、当該荷重を曲げ荷重として受ける場合に比べて、支持部31は変形し難い。従って、高い張り剛性および耐デント性を確保しやすい。
【0057】
図9および図10に示すように、第2実施形態の変形例では、座部38は、脚部37から隆起部22と反対方向、すなわち、外側傾斜壁25に向かって延びている。
【0058】
座部38が外側傾斜壁25に向かって延びることで、隆起部22から遠い領域までアウタパネル4を支持することが可能であり、広い範囲で張り剛性および耐デント性を向上することができる。
【0059】
(第3実施形態)
図11および図12を参照すると、本発明の第3実施形態に係る自動車用フード構造の構成は、以下の点で第2実施形態と異なる。第3実施形態のその他の構成は第2実施形態と同様であり、第2実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0060】
第3実施形態に係る自動車用フード構造では、脚部37には、貫通孔39が設けられている。第3実施形態では、貫通孔39は、脚部37の中央部に設けられている。貫通孔39は、例えば概略矩形に形成されている。座部38は、図示とは反対に隆起部22に向かって延びていてもよい。
【0061】
第3実施形態に係る自動車用フード構造によれば、支持部31に含まれる切り起こし片35Cの車両高さ方向の変形抵抗が低下し得る。即ち、車両高さ方向に自動車用フード1が潰れ易くなる。そのため、歩行者が自動車用フード1に乗り上げたときなどに生じ得る上方からの衝撃に対する衝撃吸収性能が向上し、脚部37に貫通孔39が設けられていない場合に比べて歩行者保護性能を向上できる。
【0062】
(第4実施形態)
図13および図14を参照すると、本発明の第4実施形態に係る自動車用フード構造の構成は、以下の点で第2実施形態と異なる。第4実施形態のその他の構成は第2実施形態と同様であり、第2実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0063】
第4実施形態に係る自動車用フード構造では、脚部37は、溝底壁24に対して角度θ1で設けられている。角度θ1は、溝底壁24に対する内側コーナー壁部23dの角度θ2より大きく、90°より小さい(θ2<θ1<90°)。
【0064】
第4実施形態に係る自動車用フード構造が金型を用いて製造される場合、脚部37と座部38との角度θ3は、90°以上である必要がある(θ3≧90°)。すなわち、角度θ1は、角度θ2より大きく、90°より小さく、かつ、角度θ3が90°以上となるように設定されなくてはならない。
【0065】
第4実施形態に係る自動車用フード構造によれば、切り起こし片35Dに加えられた衝撃によって、脚部37が倒れるように変形するため、角度θ1が90°の場合に比べ、切り起こし片35Dの車両高さ方向の変形抵抗が低下し得る。そのため、歩行者が自動車用フード1に乗り上げたときなどに生じ得る上方からの衝撃に対する衝撃吸収性能が向上し、歩行者保護性能を向上できる。
【0066】
(第5実施形態)
図15および図16を参照すると、本発明の第5実施形態に係る自動車用フード構造の構成は、以下の点で第2実施形態と異なる。第5実施形態のその他の構成は第2実施形態と同様であり、第2実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0067】
第5実施形態に係る自動車用フード構造では、脚部37は、折れ曲がっている。折れ曲がった脚部37は、図示の例のように隆起部22に向かって凸形状であってもよいし、図示とは反対に隆起部22から離れる方向に凸形状であってもよい。第5実施形態に係る自動車用フード構造が金型を用いて製造され、脚部37が隆起部22から離れる方向に凸形状である場合、座部38は図示とは反対に隆起部22に向かって延びている必要がある。
【0068】
第5実施形態に係る自動車用フード構造によれば、支持部31に含まれる切り起こし片35Eの車両高さ方向の変形抵抗が低下し得る。そのため、脚部37が折れ曲がっていない場合に比べて歩行者保護性能を向上できる。
【0069】
(第6実施形態)
図17および図18を参照すると、本発明の第6実施形態に係る自動車用フード構造の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第6実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0070】
第6実施形態に係る自動車用フード構造では、トリム孔29は、内側コーナー壁部23dを切り抜いて設けられている。また、支持部31は、インナパネル20とは別部品(別体)である。支持部31は、インナパネル20の車両幅方向のサイド部の車両前後方向の前部側に設けられ、アウタパネル4の下面を車両高さ方向の下側から支える。支持部31は、溝底側壁部24bと溝底前壁部24cとが合流する部分に設けられている。
【0071】
第6実施形態では、支持部31は、底面部32、頂面部33、及び柱部34を備える。底面部32は、支持部31の底面を構成し、インナパネル20にスポット溶接、FSW接合あるいTOX接合等によって強固に接合される部分である。頂面部33は、支持部31の頂面を構成し、アウタパネル4にマスチック接着剤5によって接合される部分である。柱部34は、底面部32と頂面部33とを接続する部分である。第6実施形態では、柱部34は、車両高さ方向の中央近傍で折れ曲がっている。
【0072】
第6実施形態に係る自動車用フード構造によれば、トリム孔29と支持部31とを別々に設計できる。そのため、大きなトリム孔29を設けることで自動車用フード1を潰れ易くしつつ、自動車用フード1の張り剛性を確保し得る程度の強度の支持部31を設けることができる。従って、自動車用フード1の車両高さ方向の変形抵抗が低下し、歩行者保護性能を向上できる。また、柱部34は、車両高さ方向の中央近傍で折れ曲がっているため、上方からの衝撃に対しては潰れ易く、高い歩行者保護性能を確保できる。
【符号の説明】
【0073】
1 自動車用フード
2 車両
3 ヒンジ部
4 アウタパネル
5 マスチック接着剤
20 インナパネル
21 支持面
22 隆起部
23 内側傾斜壁
23a 内側後壁部
23b 内側側壁部
23c 内側前壁部
23d 内側コーナー壁部
24 溝底壁
24a 溝底後壁部
24b 溝底側壁部
24c 溝底前壁部
25 外側傾斜壁
25a 外側後壁部
25b 外側側壁部
25c 外側前壁部
26 稜線
27 ロック部材
28 デントリインフォース
29 トリム孔
30 谷線
31 支持部
32 底面部
33 頂面部
34 柱部
35A~E 切り起こし片
36 折線
37 脚部
38 座部
39 貫通孔
40 凹部
41 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18