(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158395
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】分電盤及び被覆部材
(51)【国際特許分類】
H02B 1/40 20060101AFI20221006BHJP
H02B 1/30 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H02B1/40 B
H02B1/30 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063262
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 諒
【テーマコード(参考)】
5G211
【Fターム(参考)】
5G211AA12
5G211AA14
5G211AA18
5G211BB13
(57)【要約】
【課題】分電盤の配線口を部分的に塞ぐことができるようにすること。
【解決手段】背面側に配線を引き込むための配線口12を備えた分電盤1であって、配線口12の周縁に複数の取付孔13を備え、配線口12のうち分電盤1に取り付けた配電機器21よりも右側もしくは左側に位置する部分を配線口12の上部と配線口12の下部に渡って被覆するプレート状の被覆部71を有する被覆部材70を備えた分電盤1とする。また、配線口12の上部から下部に渡って被覆することが可能なプレート状の被覆部71と、取り付けるために用いられる取付部72と、を備えた被覆部材70とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面側に配線を引き込むための配線口を備えた分電盤であって、配線口の周縁に複数の取付孔を備え、配線口のうち分電盤に取り付けた配電機器よりも右側もしくは左側に位置する部分を配線口の上部と配線口の下部に渡って被覆するプレート状の被覆部を有する被覆部材を備えた分電盤。
【請求項2】
被覆部材の左右幅が分岐ブレーカの左右幅の整数倍で形成された請求項1に記載の分電盤。
【請求項3】
被覆部材は、分岐ブレーカの左右幅の整数倍で切離すために用いることが可能な分割部を備えた請求項1または請求項2に記載の分電盤。
【請求項4】
被覆部材の両端に可撓性の取付突部を備え、取付孔に取付突部が押し込まれて被覆部材が固定された請求項1から請求項3の何れかに記載の分電盤。
【請求項5】
配線を引き込むための配線口を背面側に備えた分電盤に取り付けられる被覆部材であって、配線口の上部から下部に渡って被覆することが可能なプレート状の被覆部と、被覆部材を取り付けるために用いられる取付部と、を備えた被覆部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分電盤及び被覆部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、背面側に配線を引き込むための配線口を備えた分電盤が知られている。このような分電盤は、壁などの設置面に設けた穴を通して壁面裏から引き出されたケーブルを分電盤内の配電機器に接続させて使用する。このため、これらの分電盤には、壁などの設置面に固定されるボデー部材の略背面全体に広がる配線口を備えている。
【0003】
ところで、近年、電気機器の普及により従来よりも電気を使用する機会が多くなってきている。このため、主幹容量の変更や分岐回路数の増設、太陽光発電やEV・PHEV用などの機能を追加するなどの要求がある。また、配電盤や分電盤などの盤は、長年使用することによって外部環境の影響を受けて劣化するため、一定期間使用した盤は交換することが推奨されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
一方、新しい分電盤は従来と同程度の性能を持たせる分電盤に比べて小型化していることが多い。これは、内部に取り付けられる機器の小型化がなされていることが多いからである。とはいえ、既設の分電盤が設置されていた壁面には壁面裏からケーブルを引き出すための穴が開いており、小型化した新しい分電盤を同じ位置に取り付けた場合、その穴や既設の分電盤を取り付けていた取付用の穴などが露出してしまうおそれがある。
【0006】
このような問題を解決するため、交換する分電盤を既設の分電盤と同じサイズかそれよりも大きなサイズを選定して取り付けることが考えられる。このようにすれば、壁面の穴は交換する分電盤によって覆われることとなる。しかしながら、分電盤にはボデー部材の略背面全体に広がる配線口が備えられている。この配線口の前側には障害が少ないため、壁などの設置面の穴から分電盤内に塵や害虫などの異物が侵入するおそれがある。また、見た目も良いとは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、分電盤の配線口を部分的に塞ぐことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、背面側に配線を引き込むための配線口を備えた分電盤であって、配線口の周縁に複数の取付孔を備え、配線口のうち分電盤に取り付けた配電機器よりも右側もしくは左側に位置する部分を配線口の上部と配線口の下部に渡って被覆するプレート状の被覆部を有する被覆部材を備えた分電盤とする。
【0009】
また、被覆部材の左右幅が分岐ブレーカの左右幅の整数倍で形成された構成とすることが好ましい。
【0010】
また、被覆部材は、分岐ブレーカの左右幅の整数倍で切離すために用いることが可能な分割部を備えた構成とすることが好ましい。
【0011】
また、被覆部材の両端に可撓性の取付突部を備え、取付孔に取付突部が押し込まれて被覆部材が固定されていることが好ましい。
【0012】
また、配線を引き込むための配線口を背面側に備えた分電盤に取り付けられる被覆部材であって、配線口の上部から下部に渡って被覆することが可能なプレート状の被覆部と、被覆部材を取り付けるために用いられる取付部と、を備えた被覆部材とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、分電盤の配線口を部分的に塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態における分電盤の斜視図である。ただし、通常ボデー部材に取りつけられ、正面側の外形を形成するカバーは外した状態である。
【
図4】取付台に配電機器を取り付けた例を示す図である。
【
図5】配電機器の左側に被覆部材を取り付けた例を示す図である。
【
図6】
図1に示す例で取り付けた被覆部材の斜視図である。
【
図7】
図6に示す被覆部材を反対側から見た斜視図である。
【
図8】
図6及び
図7に示す被覆部材を取り付けた例を示す断面図である。
【
図9】配電機器の背面側にも被覆部材を取り付けた例を示す図である。
【
図11】
図10に示す被覆部材を反対側から見た斜視図である。
【
図13】概略平板状に形成した被覆部材の例を示す斜視図である。
【
図14】
図13に示す被覆部材を反対側から見た斜視図である。
【
図16】短手方向に取付部を形成した被覆部材の例を示す斜視図である。
【
図17】
図16に示す被覆部材を反対側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1乃至
図4に示されていることから理解されるように、本実施形態の分電盤1は、背面側に配線を引き込むための配線口12を備えている。この分電盤1は、配線口12の周縁に複数の取付孔13を備え、配線口12のうち分電盤1に取り付けた配電機器21よりも右側もしくは左側に位置する部分を配線口12の上部と配線口12の下部に渡って被覆するプレート状の被覆部71を有する被覆部材70を備えている。このため、分電盤1の配線口12を部分的に塞ぐことができる。
【0016】
ここで、分電盤1の概要から説明する。分電盤1は壁などの設置面に固定されるボデー部材11を備えている。
図3に示すことから理解されるように、このボデー部材11には、分電盤1の背面側から配線を引き込むための配線口12が設けられている。なお、この配線口12の周縁には複数の取付孔13を備えている。
【0017】
分電盤1には主幹ブレーカ21aや分岐ブレーカ21bなどの配電機器21が搭載される。実施形態においては、
図4に示すことから理解されるように、配電機器21を取り付けた取付台22をボデー部材11に固定し、配電機器21を分電盤1に搭載するようにしている。なお、ボデー部材11に固定した取付台22に対して、配電機器21を固定しても良い。
【0018】
取付台22をボデー部材11に固定する方法は色々あるが、
図1及び
図2に示す例の場合、配線口12の周縁に備えた複数の取付孔13の一部を用いて取付レール23をボデー部材11に固定し、この取付レール23に対して取付台22を固定している。この例では二つの取付レール23に掛け渡すように取付台22を固定しているが、そのような形態に限る必要は無い。例えば配線口12の左右端側に備えられた取付孔13と、取付レール23に備えられた取付孔13を利用して取付台22をボデー部材11に固定しても良い。
【0019】
左右方向に大き目な分電盤1を使用する場合、取付台22など配電機器21の固定のために必要となる部材をボデー部材11に固定しただけでは、取付台22の右隣や左隣などに位置する配線口12の一部は、正面側から大きく見える状態になりうる。本発明では、このような部分、つまり配線口12の一部を覆うために被覆部材70を用いる。なお
図2に示す例では、配電機器21の右側に被覆部材70を取り付けており、
図5に示す例では、配電機器21の左側に被覆部材70を取り付けている。
【0020】
図6及び
図7に示す被覆部材70は、配線口12の上部から下部に渡って被覆することが可能なプレート状の被覆部71を備えている。また、この被覆部材70は、被覆部材70をボデー部材11などに取り付けるために用いられる取付部72を備えている。より具体的にはプレート状の被覆部71を備える板状部材の両端側に取付部72を備えている。この取付部72は取付孔13と対向可能な取付面72aが設けられている。また、この取付面72aには、取付孔13に差し込むことが可能な取付突部72bを備えている。
【0021】
図6及び
図7に示す例では、取付部72と被覆部71が背面方向にずれるように配置できるものとするため、取付部72と被覆部71とそれらを繋ぐ接続部73により構成される部分が側面視でハット形状となるように構成されている。被覆部71を取付部72より背面側に配置する構造とすれば、分電盤1の内部のスペースを広く確保することができる。
【0022】
なお、
図6及び
図7に示す例では、被覆部71を背面側に配置することができるようにするため、取付部72に対して、取付面72aから取付突部72bが延びる側に、被覆部71がずれるように構成している。
【0023】
また、実施形態では背面側に切欠部23aを備える取付レール23と隣り合うように被覆部材70を配置しているが、被覆部71を取付部72より背面側に配置する構造としているため、分電盤1に取り付けられる配電機器21同士の配線を行う際に、切欠部23aにケーブルを通すことができる(
図1及び
図8参照)。したがって、配線口12の使用しない部分を被覆しながら、分電盤1の内部の配線が行いやすい構造とすることができる。
【0024】
ところで、実施形態の被覆部材70は樹脂材を用いて構成されている。被覆部材70は樹脂材で形成すると、取付突部72bを可撓性とすることもでき、この取付突部72bを取付孔13に挿入させることだけで被覆部材70を固定することも可能となる。なお、被覆部材70は必ずしも樹脂材である必要はなく、例えば金属製であってもよい。
【0025】
実施形態の被覆部材70は、被覆部材70の取付突部72bをボデー部材11の配線口12の周縁に複数備えた取付孔13に押し込めば、取付突部72bが変形して取付孔13に嵌るため、簡単に取り付けることができる。また、簡単に取り外すこともできる。なお、このような取付突部72bは必須のものでは無い。ねじやブッシュ材などを使用して被覆部材70をボデー部材11などに固定するようにしてもよい。
【0026】
また、被覆部材70の横幅は分岐ブレーカ21bの横幅の整数倍の大きさで形成するのが好ましい。配線口12の周縁に位置する複数の取付孔13は、その間隔が分岐ブレーカ21bの横幅の長さとなっている。このため、取付レール23などを取り付ける際、取付レール23は分岐ブレーカ21bの横幅の整数倍分だけずらして取り付けることを選択することができる。このずれ分が、塞ぎたい開口の左右方向(場合によっては上下方向)のずれと対応する。したがって、被覆部材70の横幅を分岐ブレーカ21bの横幅の整数倍の大きさで形成しておけば、被覆部材70を一つ又は複数用いることで所望のエリアをあらかた覆うことが可能になる。
【0027】
なお、
図6及び
図7に示す例の被覆部材70では、分岐ブレーカ21bの2回路分の幅で形成したものを2つ並べたもの、つまり分岐ブレーカ21bの横幅の4倍の長さの横幅を持つ被覆部材70としている。
【0028】
実施形態の被覆部材70は、分岐ブレーカ21bの左右幅の整数倍で切離すために用いることが可能な分割部75を備えた構造となっている。
図6及び
図7に示す例では、1つの被覆部材70を分岐ブレーカ21bの4回路分の幅で形成しており、その被覆部材70を容易に半分(つまり分岐ブレーカ21b2回路分の幅)に切離し可能な構成となっている。
【0029】
図6及び
図7に示す例では、切離し可能な箇所に分割部75となる切れ込みが入っている。被覆部材70に切れ込みなどのガイドを入れておくと、はさみや工具などを使用せずに切り離すことができ、必要な幅を適宜調整することができる。
【0030】
なお、
図9に示す例から理解されるように、被覆部材70は、分電盤1に取り付けた配電機器21よりも右側もしくは左側に位置する配線口12を被覆するだけでなく、配電機器21の取付位置の背面側で配線口12を被覆するために用いることもできる。
【0031】
分電盤1によっては、前後方向に取付位置が異なる取付孔13を備えている場合があるが、この場合、配電機器21を固定した取付台22の固定には、前方に位置する取付孔13を使用し、後方に位置する取付孔13を被覆部材70の取付に使用することもできる。このようにすれば、取付台22の背面側で被覆部材70によって配線口12を被覆することができる。
【0032】
なお、被覆部材70は切れ込みや穴などのカット部74を部分的に加工できるものであるのが好ましい。例えば、はさみや工具を使用して被覆部材70にカット部74を設けることができるものであれば、配電機器21への配線の引き込み量が少ない場合などは、被覆部材70の一部に設けたカット部74に配線を通すことができ、被覆面積を大きくしつつ、配線作業しやすいものとすることができる。また、分電盤1の気密性を高めることができる。
【0033】
ところで、被覆部材70は
図6及び
図7に示す以外にもいろいろな形態が考えられるが、以下では、それらの例について説明する。
図10及び
図11に示す例では、被覆部材70の被覆部71を取付部72よりも前方側に位置させることができる形態である。このような形態とすれば、被覆部71を取付レール23の切欠部23aよりも前方に配置させることが可能となり、より気密性を高めることができる(
図12参照)。
【0034】
なお、
図10及び
図11に示す例では、被覆部材70の被覆部71を取付部72よりも前方側に位置させることができる形態とするため、取付部72に対して、取付面72aから取付突部72bが延びる側と反対側に、被覆部71がずれるように構成している。
【0035】
また、
図13及び
図14に示すように、被覆部71と取付部72が同一面上に位置するような構成としても良い。
図13及び
図14に示す例では、平板状の部分の両端の部分が取付部72であり、平板状の部分の中央部が被覆部71である。このようなシンプルな形態であれば、かさばりにくいため、複数の被覆部材70の持ち運びに都合が良い。なお、この例の被覆部材70を取り付けると
図15に示すようになる。
【0036】
また、今までの例では、被覆部材70の長手方向の端部に取付部72を設けていたが、取付部72を被覆部材70の短手方向の端部に形成してもよい(
図16及び
図17参照)。この場合、取付部72に形成される取付突部72bは、配線口12の左右側部や取付レール23に備えた取付孔13に取り付ければよい(
図18及び
図19参照)。また、長手方向の端部と短手方向の端部の両方に取付部72を備える構成としてもよい。
【0037】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、被覆部材70の被覆部71は、必ずしも正面視矩形状である必要はなく、配線口12の上部と配線口12の下部に渡って被覆するものであればよく、異なる形状とすることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 分電盤
12 配線口
13 取付孔
21 配電機器
21b 分岐ブレーカ
70 被覆部材
71 被覆部
72 取付部
72b 取付突部
75 分割部