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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015840
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】レスキュー用ジャッキ
(51)【国際特許分類】
   B66F 3/12 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B66F3/12 F
B66F3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118954
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】390003447
【氏名又は名称】川▲崎▼工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 康司
(57)【要約】
【課題】ジャッキアップ対象物を持ち上げる際、レスキュー用ジャッキ自体が倒れることなく、かつ、持ち上げているジャッキアップ対象物が滑り難くジャッキアップ対象物の持ち上げ作業を安定して行う。
【解決手段】倒れた家屋の柱や屋根、壁、塀等の構造物や家具等のジャッキアップ対象物5の下に対象物受台10の当接面を当接させ、当該対象物受台10を台座15に対し上昇させてジャッキアップ対象物5を持ち上げるレスキュー用ジャッキであって、対象物受台10は台座15とを結ぶ直線上を昇降するように構成されており、対象物受台10における当接面には、複数の凸部を有する滑り止め部を設けている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
倒れた家屋の柱や屋根、壁、塀等の構造物や家具等のジャッキアップ対象物の下に対象物受台の当接面を当接させ、当該対象物受台を台座に対し上昇させてジャッキアップ対象物を持ち上げるレスキュー用ジャッキであって、
前記対象物受台は、当該対象物受台と前記台座とを結ぶ直線上を昇降するように構成されており、前記対象物受台における当接面には、複数の凸部からなる滑り止め部が設けられていることを特徴とするレスキュー用ジャッキ。
【請求項2】
請求項1記載のレスキュー用ジャッキにおいて、
前記対象物受台の当接面は、水平な水平当接面と、水平当接面の少なくとも一方側に設けられた傾斜当接面とを有し、前記水平当接面および前記傾斜当接面にはそれぞれ前記滑り止め部が設けられていることを特徴とするレスキュー用ジャッキ。
【請求項3】
請求項2記載のレスキュー用ジャッキにおいて、
前記対象物受台の傾斜当接面には、正面視、三角形状である一方、側面視、台形の形状に形成された複数の凸部が設けられていることを特徴とするレスキュー用ジャッキ。
【請求項4】
請求項3記載のレスキュー用ジャッキにおいて、
前記対象物受台の傾斜当接面には、さらに、側面視、三角形である三角柱を寝かせた形状に形成された複数の凸部が設けられていることを特徴とするレスキュー用ジャッキ。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一の請求項に記載のレスキュー用ジャッキは、前記対象物受台と前記台座とを左右の連結軸に対しそれぞれ軸受孔を介し菱形に組まれ、左右の連結軸に通したネジ棒の回転により屈伸して前記対象物受台を台座に対し昇降させるパンタグラフ式のレスキュー用ジャッキであることを特徴とするレスキュー用ジャッキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等で倒れた家屋の柱や屋根、壁、塀等の構造物や家具等のジャッキアップ対象物を持ち上げるレスキュー用ジャッキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレスキュー用ジャッキとして、例えば、パンタグラフ型の油圧ジャッキのリンク体を構成するロアアームとアッパーアームの一方の連結部に、スプレッダ上部材とスプレッダ下部材とを有するスプレッダ・アタッチメントを着脱可能に装着したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-280914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された従来のレスキュー用ジャッキは、パンタグラフ型の油圧ジャッキのリンク体を構成するロアアームとアッパーアームの一方の連結部に設けたスプレッダ・アタッチメントによってジャッキアップ対象物を持ち上げるため、バランスが悪く、ジャッキアップ対象物を持ち上げている際、レスキュー用ジャッキ自体が倒れるおそれがある、という問題があった。
【0005】
また、スプレッダ・アタッチメントのスプレッダ上部材でジャッキアップ対象物を持ち上げる場合、ジャッキアップ対象物を持ち上げていくと、スプレッダ上部材の傾斜が大きくなるため、ジャッキアップ対象物が滑り易くなり、ジャッキアップ対象物の持ち上げ作業が不安定である、という問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、ジャッキアップ対象物を持ち上げる際、レスキュー用ジャッキ自体が倒れることなく、かつ、持ち上げているジャッキアップ対象物が滑り難くジャッキアップ対象物の持ち上げ作業を安定して行うことができるレスキュー用ジャッキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る実施形態のレスキュー用ジャッキは、倒れた家屋の柱や屋根、壁、塀等の構造物や家具等のジャッキアップ対象物の下に対象物受台の当接面を当接させ、当該対象物受台を台座に対し上昇させてジャッキアップ対象物を持ち上げるレスキュー用ジャッキであって、前記対象物受台は、当該対象物受台と前記台座とを結ぶ直線上を昇降するように構成されており、前記対象物受台における当接面には、複数の凸部からなる滑り止め部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る実施形態のレスキュー用ジャッキでは、前記対象物受台の当接面は、水平な水平当接面と、水平当接面の少なくとも一方側に設けられた傾斜当接面とを有し、前記水平当接面および前記傾斜当接面にはそれぞれ前記滑り止め部が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る実施形態のレスキュー用ジャッキでは、前記対象物受台の傾斜当接面に設けられた前記滑り止め部を構成する複数の凸部は、正面視、三角形状であることも特徴とする。
また、本発明に係る実施形態のレスキュー用ジャッキでは、前記対象物受台の傾斜当接面に設けられた前記滑り止め部を構成する正面視、三角形状の凸部の頂点は、その三角形の底辺の中間点から伸ばした垂線よりも前記水平当接面側に位置するように形成されていることも特徴とする。
また、本発明に係る実施形態のレスキュー用ジャッキでは、前記対象物受台と前記台座とを左右の連結軸に対しそれぞれ軸受孔を介し菱形に組まれ、左右の連結軸に通したネジ棒の回転により屈伸して前記対象物受台を台座に対し昇降させるパンタグラフ式のレスキュー用ジャッキであることも特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る実施形態のレスキュー用ジャッキでは、ジャッキアップ対象物を受ける対象物受台はレスキュー用ジャッキの台座とを結ぶ直線上を昇降するように構成されているため、ジャッキアップ対象物を持ち上げる際、バランス良く持ち上げることが可能となり、レスキュー用ジャッキ自体が倒れることを極力防止することができる。
また、対象物受台におけるジャッキアップ対象物との当接面には、複数の凸部からなる滑り止め部を設けているため、ジャッキアップ対象物の持ち上げ作業を安定した状態で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施の形態のレスキュー用ジャッキを構成するパンタグラフ式ジャッキ本体が最も収縮した状態の正面図、最も伸長した状態の正面図である。
図2】本発明に係る実施の形態のレスキュー用ジャッキを構成するパンタグラフ式ジャッキ本体が最も収縮した状態の平面図である。
図3】本発明に係る実施の形態のレスキュー用ジャッキを構成するパンタグラフ式ジャッキ本体の対象物受台の拡大平面図である。
図4】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施の形態のレスキュー用ジャッキを構成するパンタグラフ式ジャッキ本体の対象物受台の正面図、左側面図である。
図5】(a),(b)それぞれ図4(a)におけるA部分の拡大図、B部分の拡大図である。
図6】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施の形態のレスキュー用ジャッキを構成するパンタグラフ式ジャッキ本体の対象物受台の上部の拡大左側面図、図6(a)におけるC部分の拡大図である。
図7】(a)~(d)それぞれ本発明に係る実施の形態のレスキュー用ジャッキのハンドルセットを構成するハンドル棒の平面図、正面図、左側面図、図6(c)におけるD部分の拡大図である。
図8】(a)~(d)それぞれ本発明に係る実施の形態のレスキュー用ジャッキのハンドルセットを構成するエクステンションバーの平面図、正面図、左側面図、右側面図である。
図9】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施の形態のレスキュー用ジャッキのハンドルセットを構成するハンドルレバーの正面図、平面図である。
図10】本発明に係る実施の形態のレスキュー用ジャッキで使用するハンドルセットの一例を組み上げた状態を示す斜視図である。
図11】本発明に係る実施の形態のレスキュー用ジャッキの使用方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態のレスキュー用ジャッキの一実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、下記に説明する実施形態は、あくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0011】
<実施の形態のレスキュー用ジャッキの構成>
本発明に係る実施の形態のレスキュー用ジャッキは、図1に示すように自動車のトランクに車載されるパンタグラフ式のジャッキ本体1の対象物受台10を、自動車用ではなく、倒れた家屋の柱や屋根、壁、塀等の構造物や家具等のジャッキアップ対象物用に滑り難く加工したことを特徴とするもので、パンタグラフ式のジャッキ本体1と、ハンドル棒2a、エクステンションバー2bおよびハンドルレバー2cから構成されたハンドルセット2等を備えて構成される。
【0012】
(パンタグラフ式ジャッキ本体1の構成)
図1(a),(b)は、それぞれ、実施の形態のレスキュー用ジャッキが使用されるパンタグラフ式ジャッキ本体1が最も収縮した状態の正面図、最も伸長した状態の正面図である。
【0013】
図1(a),(b)に示すように、実施の形態のレスキュー用ジャッキが使用されるパンタグラフ式ジャッキ本体1は、対象物受台10以外の構成は、周知のものであり、倒れた家屋の柱や屋根、壁、塀等の構造物や家具等のジャッキアップ対象物5を下方から受ける対象物受台10と、対象物受台10に上端部11a,12aがそれぞれ連結ピン11c,12cにより回動自在に支持された一対のアッパアーム11,12と、一対のアッパアーム11,12の下端部11b,12bにそれぞれの上端部13b,14bが2つの連結軸16,17を介し回動自在に連結された一対のロアアーム13,14と、一対のロアアーム13,14の下端部13a,14aのそれぞれを連結ピン13c,14cを介し回動自在に支持する台座15と、一対のアッパアーム11,12と一対のロアアーム13,14とを回動自在に連結する2つの連結軸16,17間に挿通されるネジ棒18等から構成されている。ネジ棒18には、ネジ棒18を回転させるためハンドル棒2先端の引掛け部2aが引掛けられるハンドル継手18aが設けられていると共に、連結軸17に形成された雌ネジ部(図示せず。)に螺合するネジ山18bが形成されている。
【0014】
図1(a),(b)から明らかなようにパンタグラフ式ジャッキ本体1では、対象物受台10は、対象物受台10と台座15とを結ぶ直線上を昇降するように構成されており、対象物受台10が上昇すると、図1(a),(b)に示すようにアッパアーム11,12およびロアアーム13,14は鉛直状態に近付くため、ネジ棒18のハンドル継手18aはパンタグラフ式ジャッキ本体1の中心、すなわち対象物受台10および台座15の方へ近付くことがわかる。
【0015】
(対象物受台10)
対象物受台10は、図1(a).(b)から明らかなように対象物受台10と台座15とを結ぶ直線上を昇降するように構成されており、対象物受台10は、図1(a)、(b)や図4(a)等に示すように、正面視、八角形に形成されており、水平な水平当接面10aと、水平当接面10aの両側に設けられた傾斜当接面10b,10bとを有し、水平当接面10aには、正面視および側面視の両方から見ても台形の四角錐台の形状の複数の水平当接面用凸部10a2が集合して構成した水平当接面用滑り止め部10a1が設けられている一方,傾斜当接面10b,10bには、少なくとも2種類の上側傾斜当接面用凸部10b2,10b3から構成された傾斜当接面用滑り止め部10b1,10b1’が設けられている。
【0016】
(水平当接面10aの複数の水平当接面用凸部10a2の形状)
水平当接面10aの複数の水平当接面用凸部10a2の形状は、図4(a),(b)~図6(a),(b)に示すように正面視および側面視の両方から見ても台形の四角錐台の形状に形成されており、四角錐台の複数の水平当接面用凸部10a2が集合して水平当接面10aに水平当接面用滑り止め部10a1を構成している。
【0017】
(傾斜当接面10bの複数の上側傾斜当接面用凸部10b2,10b3の形状)
傾斜当接面10bの上側である水平当接面10a側の上側傾斜当接面用凸部10b2は、図4(a),(b)~図6(a),(b)に示すように傾斜当接面10bに沿って上下方向に5段で、正面視は、図5(a),(b)等に示すように三角形である一方、側面視は、図6(a),(b)等に示すように台形の形状に形成されており、このような複数(5行(段)×18列=90個)の上側傾斜当接面用凸部10b2が集合して傾斜当接面10bの上側に上側傾斜当接面用滑り止め部10b1を構成している。
【0018】
また、この上側傾斜当接面用凸部10b2の頂点は、その三角形の底辺の中間点から伸ばした垂線よりも水平当接面側10aに位置するように形成されている。
【0019】
傾斜当接面10bの下側の下側傾斜当接面用凸部10b3は、正面視は、図5(a),(b)等に示すように長方形に近似した台形である一方、側面視は、図6(a),(b)等に示すように三角形である三角柱を寝かせた形状に形成されており、このような三角柱形状の下側傾斜当接面用凸部10b3が複数(1行(段)×18列=18個)集合して傾斜当接面10bの下側に下側傾斜当接面用滑り止め部10b1’を構成している。
【0020】
つまり、対象物受台10の傾斜当接面10bには、正面視は三角形である一方、側面視は台形の形状に形成された複数(5行(段)×18列=90個)の上側傾斜当接面用凸部10b2と、その下に正面視はほぼ長方形である一方、側面視は三角形の三角柱形状の下側傾斜当接面用凸部10b3とが複数(1行(段)×18列=18個)設けられて傾斜当接面用滑り止め部10b1を構成している。
【0021】
(ハンドルセット2の構成)
本実施形態のハンドルセット2は、上述したようにハンドル棒2a(図7参照。)と、エクステンションバー2b(図8参照。)と、ハンドルレバー2c(図8参照。)との3分割構造で構成されている。
【0022】
(ハンドル棒2a)
ハンドル棒2aは、図7(a)~(d)に示すように先端部には、パンタグラフ式ジャッキ本体1のネジ棒18のハンドル継手18aに引掛ける鍵状の引掛け部2a1が設けられている一方、後端部(基端部)には、エクステンションバー2bの先端部に連結するため圧縮スプリング2a4によって付勢されて円錐形の凹部2a3を有するプランジャ入出孔2a5から入出する棒状のピンプランジャ2a2が設けられている。尚、円錐形の凹部2a3の表面側の最大径は、プランジャ入出孔2a5の内径よりも位大きく形成されており、ユーザがピンプランジャ2a2を押してエクステンションバー2bと連結し易く構成している。
【0023】
(エクステンションバー2b)
エクステンションバー2bは、図7(a)~(d)に示すように先端部には、ハンドル棒2aのピンプランジャ2a2が嵌るピンプランジャ嵌合孔2b1が設けられている一方、後端部には、ハンドルレバー2cの連結孔2c2に挿入した際、抜け止めとなるボールプランジャ2b2が設けられている。
【0024】
(ハンドルレバー2c)
ハンドルレバー2cは、ハンドルレバー本体2c1の先端部にユーザが握るハンドル部2c2が設けられている一方、ハンドルレバー本体2c1の後端部にエクステンションバー2bの後端部が挿入されてボールプランジャ2b2で抜け止めされるボールプランジャ挿入孔2c11が設けられている。
【0025】
<実施形態のレスキュージャッキの動作>
次に、実施形態のレスキュージャッキの動作として、このレスキュージャッキを使用して、地震等で倒れた家屋の柱や屋根、壁、塀等の構造物や家具等のジャッキアップ対象物5を持ち上げる場合の動作について説明する。
【0026】
図8に示すように、地震などによって人の上にジャッキアップ対象物5が倒れていた場合、救助者は、安全等を確保の上、まずは、実施形態のレスキュージャッキでジャッキアップ対象物5を持ち上げる場合、本発明に係る実施形態のレスキュージャッキのパンタグラフ式ジャッキ本体1の台座15が滑らないように薄板である当て木3の上に置き安定させ、ネジ棒18のハンドル継手18aを手等で回転させて、対象物受台10がジャッキアップ対象物5の一部に当たるようにパンタグラフ式ジャッキ本体1を伸長させる。
【0027】
また、地面とジャッキアップ対象物5との間に適宜、ブロックや木片4を入れて、パンタグラフ式ジャッキ本体1が倒れても安全な状態にしておく。
【0028】
そして、図10に示すようにハンドル棒2a(図7参照。)と、エクステンションバー2b(図8参照。)とハンドルレバー2c(図8参照。)とを連結してハンドルセット2を構成し、ハンドル棒2先端の引掛け部2a1(図7参照。)を、パンタグラフ式ジャッキ本体1のネジ棒18のハンドル継手18aに引掛けて、ハンドルレバー2cを回転させて、パンタグラフ式ジャッキ本体1のネジ棒18を回転させてパンタグラフ式ジャッキ本体1を伸長させ、対象物受台10を上昇させる。
【0029】
すると、対象物受台10の上には、倒れたロッカー等のジャッキアップ対象物5が当接しており、最初はジャッキアップ対象物5の倒れ方が大きいため、ジャッキアップ対象物5には対象物受台10の水平当接面10aの四角錐台形状の複数の水平当接面用凸部10a2からなる水平当接面用滑り止め部10a1が主に当接する。
【0030】
そのため、ジャッキアップ対象物5をパンタグラフ式ジャッキ本体1で持ち上げる際に水平当接面10aの四角錐台形状の複数の水平当接面用凸部10a2からなる水平当接面用滑り止め部10a1がジャッキアップ対象物5に当接して押し上げるため、ジャッキアップ対象物5が前後左右どの方向にも滑らずに持ち上げることができる。
【0031】
そして、ハンドルレバー2cの回転によりジャッキアップ対象物5が上昇してジャッキアップ対象物5の傾斜が大きくなった場合には、適宜、地面とジャッキアップ対象物5との間に適宜、木片4やブロック等を追加していく。
【0032】
その際、ジャッキアップ対象物5の傾斜が大きくなった場合には、パンタグラフ式ジャッキ本体1の対象物受台10の水平当接面10aとジャッキアップ対象物5との当接は、片当り等となってパンタグラフ式ジャッキ本体1が倒れたり、ジャッキアップ対象物5が滑るおそれが出てくる。
【0033】
しかし、本実施形態のパンタグラフ式ジャッキ本体1の対象物受台10では、傾斜当接面10bには、正面視は図5(a),(b)等に示すように三角形である一方、側面視は図6(a),(b)等に示すように台形の形状に形成された複数(5行(段)×18列=90個)の上側傾斜当接面用凸部10b2からなる傾斜当接面用滑り止め部10b1と、正面視は図5(a),(b)等に示すように長方形に近似した台形である一方、側面視は図6(a),(b)等に示すように三角形である三角柱を寝かせた形状の三角柱形状の下側傾斜当接面用凸部10b3からなる傾斜当接面用滑り止め部10b1’が設けられており、これらの傾斜当接面用滑り止め部10b1,10b1’が水平当接面10aの水平当接面用滑り止め部10a1よりも接触面積が増大するため、パンタグラフ式ジャッキ本体1が倒れたり、ジャッキアップ対象物5が滑ることを確実に防止して、ジャッキアップ対象物5を持ち上げることができる。
【0034】
特に、対象物受台10の傾斜当接面10bで上側傾斜当接面用滑り止め部10b1を構成する上側傾斜当接面用凸部10b2は、正面視が図5(a),(b)等に示すように三角形であるため、ジャッキアップ対象物5が持ち上がっていった場合に、正面視三角形の上側傾斜当接面用凸部10b2がジャッキアップ対象物5に食い込む等してジャッキアップ対象物2がパンタグラフ式ジャッキ本体1のアッパアーム11,12およびロアアーム13,14の長手方向に滑ることを確実に防止して、ジャッキアップ対象物5を持ち上げることができる。
【0035】
一方、対象物受台10の傾斜当接面10bで下側傾斜当接面用滑り止め部10b1’を構成する下側傾斜当接面用凸部10b3は、正面視は図5(a),(b)等に示すように長方形に近似した台形である一方、側面視は図6(a),(b)等に示すように三角形である三角柱を寝かせた形状の三角柱形状であるため、ジャッキアップ対象物5が持ち上がっていった場合に、側面視は図6(a),(b)等に示すように三角形である三角柱を寝かせた形状の三角柱形状の下側傾斜当接面用凸部10b3がジャッキアップ対象物5に食い込む等して、ジャッキアップ対象物2がパンタグラフ式ジャッキ本体1のアッパアーム11,12およびロアアーム13,14の短手方向に滑ることを確実に防止して、ジャッキアップ対象物5を持ち上げることができる。
【0036】
<実施形態のレスキュー用ジャッキのまとめ>
以上説明したように本発明に係る実施形態のレスキュー用ジャッキ1では、ジャッキアップ対象物5を受ける対象物受台10と、パンタグラフ式のジャッキ本体1の台座15とを結ぶ直線上を昇降するように構成したため、ジャッキアップ対象物5を持ち上げる際、バランス良く持ち上げることが可能となり、パンタグラフ式のジャッキ本体1が倒れることを極力防止することができる。
【0037】
また、対象物受台10におけるジャッキアップ対象物5と当接する水平当接面10aには、複数の水平当接面用凸部10a2からなる水平当接面用滑り止め部10a1を設ける一方、傾斜当接面10bには、複数の上側傾斜当接面用凸部10b2からなる上側傾斜当接面用滑り止め部10b1と複数の下側傾斜当接面用凸部10b3からなる下側傾斜当接面用滑り止め部10b1’を設けたため、対象物受台10でジャッキアップ対象物5を持ち上げる際、水平当接面用滑り止め部10a1や上側傾斜当接面用滑り止め部10b1、下側傾斜当接面用滑り止め部10b1’がジャッキアップ対象物5がズレることを防止するので、ジャッキアップ対象物5の持ち上げ作業を安定した状態で行うことができる。
【0038】
特に、対象物受台10の水平当接面10aの水平当接面用滑り止め部10a1を構成する複数の複数の水平当接面用凸部10a2の形状は、図4(a),(b)~図6(a),(b)に示すように正面視および側面視の両方から見ても台形の四角錐台の形状に形成されているため、ジャッキアップ対象物5がズレることを防止するので、ジャッキアップ対象物5の持ち上げ作業を安定した状態で行うことができる。
【0039】
また、対象物受台10の傾斜当接面10bにおける上側傾斜当接面用滑り止め部10b1を構成する上側傾斜当接面用凸部10b2は、正面視が図5(a),(b)等に示すように三角形であるため、ジャッキアップ対象物5が持ち上がっていった場合に、正面視三角形の上側傾斜当接面用凸部10b2がジャッキアップ対象物5に食い込む等してジャッキアップ対象物2がパンタグラフ式ジャッキ本体1のアッパアーム11,12およびロアアーム13,14の長手方向に滑ることを防止するので、ジャッキアップ対象物5の持ち上げ作業をより安定した状態で行うことができる。
【0040】
また、対象物受台10の傾斜当接面10bにおける下側傾斜当接面用滑り止め部10b1’を構成する下側傾斜当接面用凸部10b3は、正面視は図5(a),(b)等に示すように長方形に近似した台形である一方、側面視は図6(a),(b)等に示すように三角形である三角柱を寝かせた形状の三角柱形状であるため、ジャッキアップ対象物5が持ち上がっていった場合に、その下側傾斜当接面用凸部10b3がジャッキアップ対象物5に食い込む等して、ジャッキアップ対象物2がパンタグラフ式ジャッキ本体1のアッパアーム11,12およびロアアーム13,14の短手方向に滑ることを防止するので、ジャッキアップ対象物5の持ち上げ作業をより安定した状態で行うことができる。
【0041】
尚、上記実施形態のレスキュー用ジャッキでは、対象物受台10と台座15とを左右の連結軸に対しそれぞれ軸受孔を介し菱形に組まれ、左右の連結軸に通したネジ棒の回転により屈伸して対象物受台10を台座15に対し昇降させるパンタグラフ式ジャッキ本体1を使用して説明したが、本発明ではこれに限らず、対象物受台10が対象物受台10と台座15とを結ぶ直線上を昇降するように構成したジャッキであれば、スクリュージャッキ等、パンタグラフ式ジャッキ以外でも適用可能である。
【0042】
また、上記実施形態のレスキュー用ジャッキでは、対象物受台10の水平当接面10aの両側の傾斜当接面10b,10bそれぞれに傾斜当接面用滑り止め部10b1,10b1’を設けて説明したが、本発明ではこれに限らず、水平当接面10aの一方の傾斜当接面10bにのみ2種類の傾斜当接面用滑り止め部10b1,10b1’を設けても良いし、水平当接面10aの両側の傾斜当接面10b,10bそれぞれに1種類の傾斜当接面用滑り止め部10b1または傾斜当接面用滑り止め部10b1’を設けたり、あるいは水平当接面10aの一方の傾斜当接面10bにのみ1種類の傾斜当接面用滑り止め部10b1または傾斜当接面用滑り止め部10b1’を設けても良い。
【0043】
また、本発明では、対象物受台10の水平当接面10aの一方側にのみ傾斜当接面10bを形成し、その傾斜当接面10bに2種類の傾斜当接面用滑り止め部10b1,10b1’や1種類の傾斜当接面用滑り止め部10b1または傾斜当接面用滑り止め部10b1’を設けるようにしても良いし、さらには水平当接面10aに水平当接面用滑り止め部10a1を設けずに傾斜当接面10bにのみ2種類の傾斜当接面用滑り止め部10b1,10b1’や1種類の傾斜当接面用滑り止め部10b1または傾斜当接面用滑り止め部10b1’を設けたり、対象物受台10に水平当接面10aおよび傾斜当接面10b,10bを設ける代わりに湾曲面からなる湾曲当接面のみ、あるいは水平当接面10aおよび傾斜当接面10b,10bと湾曲当接面を設け、その湾曲当接面に複数の凸部からなる滑り止め部を設けるようにしても勿論良い。
【0044】
また、上記実施形態のレスキュー用ジャッキでは、パンタグラフ式のジャッキ本体1を昇降させるハンドルセット2をハンドル棒2a、エクステンションバー2bおよびハンドルレバー2cの3点から構成して説明したが、本発明ではこれに限定されず、2点のハンドルセットで構成しても良いし、あるいは1点のハンドルでも良いし、要は、パンタグラフ式のジャッキ本体1を昇降させることが出来れば、ハンドルセット2の構成は何でも良い。
【符号の説明】
【0045】
1 パンタグラフ式のジャッキ本体
10 対象物受台
10a 水平当接面
10a1 水平当接面用滑り止め部
10a2 水平当接面用凸部
10b 傾斜当接面
10b1 上側傾斜当接面用滑り止め部
10b2 上側傾斜当接面用凸部
10b1’ 下側傾斜当接面用滑り止め部
10b3 下側傾斜当接面用凸部
11,12 アッパアーム
13,14 ロアアーム
15 台座
16,17 連結軸
18 ネジ棒
18a ハンドル継手
18b ネジ部
2 ハンドルセット
2a ハンドル棒
2b エクステンションバー
2c ハンドルレバー
3 当て木
4 木片
5 ジャッキアップ対象物
図1
図2
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