(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158414
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】物理量計測装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/684 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
G01F1/684 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063297
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石塚 典男
(72)【発明者】
【氏名】上ノ段 暁
(72)【発明者】
【氏名】八文字 望
(72)【発明者】
【氏名】伊集院 瑞紀
(72)【発明者】
【氏名】余語 孝之
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035AA02
2F035EA03
2F035EA08
(57)【要約】
【課題】ハウジングの封止部材との界面付近に発生する熱応力を抑制してワイヤの接続信頼性を容易に確保する。
【解決手段】物理量計測装置20は、ハウジング100と、ハウジング100に封止されたコネクタ端子117と、コネクタ端子117にボンディングされたワイヤ350と、ワイヤ350を封止し、コネクタ端子117及びハウジング100に接触する封止部材250とを備える。ハウジング100の線膨張係数は、封止部材250よりも大きい。コネクタ端子117は、ボンディング面118と、ボンディング面118に連続し且つハウジング100に封止された側面119とを有する。ハウジング100は、側面119に接触する第1面115と、第1面115に連続し封止部材250に接触する第2面116とを有する。第1面115に連続する第2面116の端部116aは、ボンディング面118と面一の形状に形成される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量を計測するセンサを収容するハウジングと、
前記ハウジングに封止された端子と、
前記端子にボンディングされたワイヤと、
前記ワイヤを封止し、前記端子及び前記ハウジングのそれぞれに接触する封止部材と、を備え、
前記ハウジングの線膨張係数は、前記封止部材の線膨張係数よりも大きく、
前記端子は、前記ワイヤがボンディングされ且つ前記封止部材に接触するボンディング面と、前記ボンディング面に連続し且つ前記ハウジングに封止された側面とを有し、
前記ハウジングは、前記端子の前記側面に接触する第1面と、前記第1面に連続し前記封止部材に接触する第2面と、を有し、
前記第1面に連続する前記第2面の端部は、前記ボンディング面と面一の形状に形成される
ことを特徴とする物理量計測装置。
【請求項2】
前記第2面は、前記端子の幅方向において前記端部から離隔するに従って、前記端子の板厚方向の前記ワイヤとは反対側に向かって傾斜する
ことを特徴とする請求項1に記載の物理量計測装置。
【請求項3】
前記端子は、前記端子の前記幅方向に間隔をあけて配置される複数の前記端子によって構成され、
隣り合う前記端子の間に位置する前記第2面は、前記端子の前記板厚方向及び前記幅方向を含む平面により切断される断面がV字状に形成される溝を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の物理量計測装置。
【請求項4】
前記溝の深さは、前記端子の板厚の3分の1以上2分の1以下である
ことを特徴とする請求項3に記載の物理量計測装置。
【請求項5】
前記ハウジングの前記線膨張係数は、前記封止部材の前記線膨張係数の5倍以上6倍以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の物理量計測装置。
【請求項6】
主通路を流れる被計測気体の一部を取り込む副通路を有し、
前記ハウジングは、前記副通路が形成される正面部と、前記ハウジングの前記正面部とは反対側の背面部と、を有し、
前記第2面は、前記背面部に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の物理量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気流量、圧力、温度又は湿度等の物理量は、様々な機器において重要な制御パラメータとして広く使用されている。これらの物理量を計測する物理量計測装置は、機器の性能を左右する重要な構成部品のひとつである。例えば、内燃機関を搭載した車両では、省燃費及び排気ガス浄化に関する要望が非常に高い。これらの要望に応えるには、内燃機関の主要な制御パラメータである吸入空気量を高い精度で計測する物理量計測装置が必要である。
【0003】
上記のような物理量計測装置は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の装置は、ハウジングに回路基板が接着され、この回路基板上に吸入空気量を計測するセンサが実装された構造を有する。センサ等の電子部品が実装された回路基板と、回路基板からの電気信号を外部装置へ提供するコネクタ端子とは、ワイヤボンディングによって接続されることがある。回路基板とコネクタ端子とをワイヤボンディングによって接続する手法は、例えば特許文献2に開示されている。特許文献2の装置は、ハウジングと一体成形されたコネクタ端子と、ハウジングに収容された回路基板とが、ワイヤボンディングによって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/117971号
【特許文献2】特開2004-28934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物理量計測装置では、ハウジングと一体成形されたコネクタ端子と、ハウジングに収容された回路基板とをワイヤボンディングによって接続した後、コネクタ端子及びワイヤを樹脂製の封止部材によって封止することがある。このとき、ハウジングの線膨張係数が封止部材の線膨張係数よりも大きいと、ハウジングには、封止部材との界面付近に大きな熱応力が発生する。これにより、ハウジングに封止されたコネクタ端子と封止部材とが剥離し、封止部材に封止されたワイヤが熱疲労によって破断する可能性がある。ハウジングと封止部材との線膨張係数差が僅少となるように、ハウジングの樹脂材料を選定することも考えられる。しかし、使用環境が過酷な物理量計測装置に要求される性能を満たしつつ、両者の線膨張係数差を僅少とするものとして選定される樹脂材料は、高価であり、その樹脂材料をハウジングに採用することは容易ではない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ハウジングの封止部材との界面付近に発生する熱応力を抑制してワイヤの接続信頼性を容易に確保することが可能な物理量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の物理量計測装置は、物理量を計測するセンサを収容するハウジングと、前記ハウジングに封止された端子と、前記端子にボンディングされたワイヤと、前記ワイヤを封止し、前記端子及び前記ハウジングのそれぞれに接触する封止部材と、を備え、前記ハウジングの線膨張係数は、前記封止部材の線膨張係数よりも大きく、前記端子は、前記ワイヤがボンディングされ且つ前記封止部材に接触するボンディング面と、前記ボンディング面に連続し且つ前記ハウジングに封止された側面とを有し、前記ハウジングは、前記端子の前記側面に接触する第1面と、前記第1面に連続し前記封止部材に接触する第2面と、を有し、前記第1面に連続する前記第2面の端部は、前記ボンディング面と面一の形状に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハウジングの封止部材との界面付近に発生する熱応力を抑制してワイヤの接続信頼性を容易に確保することが可能な物理量計測装置を提供することができる。
上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の物理量計測装置が使用される電子燃料噴射方式の内燃機関制御システムの構成を示す図。
【
図4】
図2に示すカバーを取り除いた物理量計測装置の正面図。
【
図5】
図3に示す封止部材を取り除いた物理量計測装置の背面図。
【
図8】
図7に示す一点鎖線に囲まれた部分の拡大図。
【
図10】
図9に示す一点鎖線に囲まれた部分の拡大図。
【
図11】本実施形態の変形例の物理量計測装置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有するため、その説明を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態の物理量計測装置20が使用される電子燃料噴射方式の内燃機関制御システム1の構成を示す図である。
【0012】
内燃機関制御システム1では、エンジンシリンダ11とエンジンピストン12とを備える内燃機関10の動作に基づき、吸入空気である被計測気体2が、エアクリーナ21から吸入され、主通路22である例えば吸気ボディとスロットルボディ23と吸気マニホールド24とを介して、エンジンシリンダ11の燃焼室に導かれる。燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体2の物理量は、本実施形態の物理量計測装置20によって計測され、計測された物理量に基づいて燃料噴射弁14より燃料が供給され、被計測気体2と共に混合気の状態で燃焼室に導かれる。なお、本実施形態では、燃料噴射弁14は内燃機関の吸気ポートに設けられ、吸気ポートに噴射された燃料が被計測気体2と共に混合気を成形し、吸気弁15を介して燃焼室に導かれ、燃焼して機械エネルギを発生する。
【0013】
燃焼室に導かれた燃料及び空気は、燃料と空気との混合状態を成しており、点火プラグ13の火花着火により、爆発的に燃焼し、機械エネルギを発生する。燃焼後の気体は排気弁16から排気管に導かれ、排気ガス3として排気管から車外に排出される。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体2の流量は、アクセルペダルの操作に基づいてその開度が変化するスロットルバルブ25により制御される。前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量に基づいて燃料供給量が制御され、運転者はスロットルバルブ25の開度を制御して前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量を制御することにより、内燃機関が発生する機械エネルギを制御することができる。
【0014】
エアクリーナ21から取り込まれ主通路22を流れる吸入空気である被計測気体2の流量、温度、湿度又は圧力等の物理量が物理量計測装置20により計測され、物理量計測装置20から吸入空気の物理量を表す電気信号が制御装置4に入力される。また、スロットルバルブ25の開度を計測するスロットル角度センサ26の出力が制御装置4に入力され、さらに内燃機関10のエンジンピストン12や吸気弁15や排気弁16の位置や状態、更に内燃機関10の回転速度を計測するために、回転角度センサ17の出力が、制御装置4に入力される。排気ガス3の状態から燃料量と空気量との混合比の状態を計測するために、酸素センサ28の出力が制御装置4に入力される。
【0015】
制御装置4は、物理量計測装置20の出力である吸入空気の物理量と、回転角度センサ17の出力に基づき計測された内燃機関10の回転速度とに基づいて、燃料噴射量や点火時期を演算する。これら演算結果に基づいて、燃料噴射弁14から供給される燃料量や、点火プラグ13により点火される点火時期が制御される。燃料供給量や点火時期は、実際には更に、物理量計測装置20によって計測される温度や、スロットル角度の変化状態、エンジン回転速度の変化状態、酸素センサ28によって計測された空燃比の状態に基づいて、きめ細かく制御される。制御装置4は、更に内燃機関のアイドル運転状態において、スロットルバルブ25をバイパスする空気量をアイドルエアコントロールバルブ27により制御し、アイドル運転状態での内燃機関10の回転速度を制御する。
【0016】
内燃機関10の主要な制御量である燃料供給量や点火時期はいずれも物理量計測装置20の出力を主パラメータとして演算される。したがって、物理量計測装置20の計測精度の向上や、経時変化の抑制、信頼性の向上が、車両の制御精度の向上や信頼性の確保に関して重要である。
【0017】
特に近年、車両の省燃費に関する要望が非常に高く、また排気ガス浄化に関する要望が非常に高い。これらの要望に応えるには、物理量計測装置20によって吸入空気の物理量を高い精度で計測することが極めて重要である。また、物理量計測装置20が高い信頼性を確保していることも大切である。
【0018】
物理量計測装置20が搭載される車両は、温度や湿度の変化が大きい環境で使用される。物理量計測装置20は、その使用環境における温度や湿度の変化への対応や、塵埃や汚染物質などへの対応も、考慮されていることが望ましい。
【0019】
また、物理量計測装置20は、内燃機関10の発熱の影響を受ける吸気管に装着される。このため、内燃機関により発生した熱が吸気管を介して物理量計測装置20に伝わる。物理量計測装置20は、被計測気体2と熱伝達を行うことにより被計測気体2の流量を計測するので、外部からの熱の影響をできるだけ抑制することが重要である。
【0020】
車両に搭載される物理量計測装置20は、以下の説明において述べるように、単に発明が解決しようとする課題の欄に記載された課題を解決し、発明の効果の欄に記載された効果を奏するのみでなく、上述した色々な課題を十分に考慮し、製品として求められる色々な課題を解決し、色々な効果を奏する。物理量計測装置20が解決する具体的な課題や奏する具体的な効果は、以下の説明において述べる。
【0021】
図2は、本実施形態の物理量計測装置20の正面図である。
図2では、カバー200がハウジング100に取り付けられた状態を示す。
図3は、
図2に示す物理量計測装置20の背面図である。
図3では、封止部材250が回路基板300を覆った状態を示す。
図4は、
図2に示すカバー200を取り除いた物理量計測装置20の正面図である。
図5は、
図3に示す封止部材250を取り除いた物理量計測装置20の背面図である。以下の説明では、被計測気体2が、
図1に示す主通路22の中心軸22aに沿って流れるものとする。
【0022】
物理量計測装置20は、主通路22の通路壁に設けられた取り付け孔から主通路22の内部に挿入されて主通路22に固定された状態で使用される。物理量計測装置20は、被計測気体2が流れる主通路22に配置される筐体を備える。物理量計測装置20の筐体は、ハウジング100と、ハウジング100の後述する計測部113の正面部121に取り付けられるカバー200と、計測部113の背面部122から露出する回路基板300を封止する封止部材250とを有する。
【0023】
ハウジング100は、例えば、合成樹脂材料を射出成形することによって形成される。ハウジング100の成形に用いられる樹脂材料は、物理量計測装置20としての要求性能を満たし比較的安価なPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂等が挙げられる。カバー200は、例えば、金属材料又は合成樹脂材料から成る板状部材によって形成される。本実施形態では、アルミニウム合金又は合成樹脂材料を射出成形することによって形成される。カバー200は、計測部113の正面部121を全面的に覆う大きさを有する。封止部材250は、例えば、合成樹脂材料を、計測部113の背面部122における回路基板300の露出領域に流し込んで成形することによって形成される。封止部材250の成形に用いられる樹脂材料は、物理量計測装置20としての要求性能を満たすエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0024】
ハウジング100は、物理量計測装置20を主通路22に固定するためのフランジ111と、フランジ111から突出して外部装置との電気的な接続を行うために主通路22から外部に露出するコネクタ112とを有する。更に、ハウジング100は、主通路22を流れる被計測気体2の物理量を計測するためにフランジ111から主通路22の中心軸22aに向かって突出するように延びる計測部113を有する。
【0025】
計測部113は、流量、温度、湿度又は圧力等の物理量を計測するセンサを収容するハウジング100の部分である。具体的に、計測部113は、流量検出素子321を有するチップパッケージ310、温度センサ331、湿度センサ333、圧力センサ335を収容する。計測部113は、フランジ111から真っ直ぐ延びる薄くて長い形状を成す。計測部113は、幅広な正面部121及び背面部122と、幅狭な一対の側面部123,124と、幅狭な先端面部125とを有する。
【0026】
正面部121及び背面部122は、計測部113の長手方向及び短手方向をそれぞれ長辺及び短辺とする矩形状の面であり、計測部113を構成する各面のうちでも面積が広い主面である。正面部121は、計測部113のうち、副通路134,135が形成される部分である。背面部122は、計測部113のうち、正面部121とは反対側の部分である。正面部121及び背面部122は、物理量計測装置20が主通路22に取り付けられた状態において、主通路22の中心軸22aに沿って平行に配置される。側面部123は、計測部113の短手方向の一方側に位置し、物理量計測装置20が主通路22に取り付けられた状態において、主通路22の上流側に向けて配置される。側面部124は、計測部113の短手方向の他方側に位置し、物理量計測装置20が主通路22に取り付けられた状態において、主通路22の下流側に向けて配置される。先端面部125は、正面部121、背面部122、側面部123及び側面部124に連続する面である。先端面部125は、フランジ111から離隔した計測部113の端面に位置し、物理量計測装置20が主通路22に取り付けられた状態において、主通路22の中心軸22aに沿って平行に配置される。物理量計測装置20は、主通路22の上流側及び下流側を向く側面部123及び側面部124が幅狭な形状を成すことにより、被計測気体2に対して流体抵抗を小さい値に抑えることができる。
【0027】
本実施形態では、主通路22に取り付けられた状態での物理量計測装置20の姿勢は、フランジ111と近接する計測部113の基端部が上側に配置され、フランジ111から離隔した計測部113の先端面部125が下側に配置される姿勢である。但し、主通路22に取り付けられた状態での物理量計測装置20の姿勢は、本実施形態に限定されるものではなく、種々の姿勢とすることができる。例えば、物理量計測装置20の姿勢は、計測部113の基端部と先端面部125とが同一の高さとなるように水平に取り付けられる姿勢であってよい。
【0028】
計測部113は、側面部123に副通路134,135の入口131が設けられ、側面部124に第1出口132及び第2出口133が設けられる。入口131と第1出口132及び第2出口133とは、フランジ111から主通路22の中心軸22aに向かう方向において計測部113の先端面部125に近い位置に設けられる。第2出口133は、主通路22の下流側に向けて配置される。第2出口133は、第1出口132よりも若干大きい開口面積を有しており、第1出口132よりも計測部113の基端部側に隣接した位置に設けられる。計測部113は、主通路22の通路壁の内面から離れた中心軸22aに近い部分を流れる被計測気体2を、副通路134,135に取り込むことができる。これにより、物理量計測装置20は、中心軸22aに近い部分を流れる被計測気体2の流量を計測することができ、熱等の影響による計測精度の低下を抑制できる。
【0029】
計測部113には、主通路22を流れる被計測気体2の一部を取り込む副通路134,135と、物理量を計測するセンサが実装された回路基板300とが設けられる。
【0030】
副通路134,135は、計測部113の正面部121に凹状に設けられており、ハウジング100にカバー200を取り付けることによって覆われる構造となっている。回路基板300は、計測部113のうち、側面部123に近い領域に設けられる。副通路134,135は、計測部113のうち、回路基板300よりも先端面部125に近い領域と、回路基板300よりも側面部124に近い領域とに亘って設けられる。副通路134,135は、第1副通路134と、第2副通路135とを有する。
【0031】
第1副通路134は、計測部113の側面部123に開口する入口131と、計測部113の側面部124に開口する第1出口132との間に亘って、計測部113の短手方向に沿って延びるように形成される。第1副通路134は、入口131から、主通路22内の被計測気体2の流れ方向に沿って延び、第1出口132まで繋がる流路である。第1副通路134は、主通路22を流れる被計測気体2を入口131から取り込み、取り込んだ被計測気体2を第1出口132から主通路22に戻す。
【0032】
第2副通路135は、第1副通路134の途中で分岐して計測部113の基端部に向かって(フランジ111に向かって)延びる往路部136と、計測部113の基端部において折り返されてUターンし、計測部113の先端面部125に向かって延びる復路部137とを有する。往路部136は、第1副通路134の途中で分岐して第1副通路134から離れる方向に向かって延びる。復路部137は、往路部136の端部において折り返されてUターンし、第1副通路134に近接する方向に向かって延びる。復路部137は、入口131よりも主通路22の下流側の位置において、主通路22の下流側に向かって開口する第2出口133に繋がる。第2副通路135は、第1副通路134から分岐して流れ込んだ被計測気体2を通過させて第2出口133から主通路22に戻す。第2副通路135は、計測部113の長手方向に沿って延びる往路部136及び復路部137を有するので、通路長を長く確保することができる。これにより、物理量計測装置20は、主通路22内に脈動が生じた場合でも、第2副通路135に配置された流量検出素子321が、脈動の影響を余り受けずに、第2副通路135に流れる被計測気体2の流量を計測することができる。
【0033】
回路基板300は、平面視において略長方形状を成す。回路基板300は、回路基板300の長手方向が計測部113の基端部から先端面部125に向かって延び、回路基板300の短手方向が計測部113の側面部123から側面部124に向かって延びるように、計測部113内に配置される。
【0034】
回路基板300は、実装面300a及び実装面300bの両面に電子部品を実装可能な回路基板である。回路基板300の実装面300aは、計測部113の正面部121に配置される。回路基板300の実装面300bは、計測部113の背面部122に配置される。回路基板300の実装面300aには、流量検出素子321を支持するチップパッケージ310、温度センサ331、湿度センサ333及び圧力センサ335等の電子部品が実装される。回路基板300の実装面300bには、LSI341及びマイコン343等の電子部品が実装される。
【0035】
チップパッケージ310は、回路基板300の実装面300aの中央部に実装される。チップパッケージ310は、実装面300aの中央部に固定された固定部311と、固定部311から第2副通路135の往路部136に向けて張り出した張出部312とを有する。張出部312には、流量検出素子321が設けられる。流量検出素子321は、ダイヤフラム状(薄膜状)の検出面を有しており、この検出面が、第2副通路135の往路部136に露出している。流量検出素子321は、第2副通路135の往路部136に取り込まれた被計測気体2の流量を計測する。
【0036】
温度センサ331は、回路基板300の実装面300aにおける入口131付近の端部に実装される。温度センサ331は、入口131近傍に一端が開口し、他端が正面部121と背面部122との両方に開口する計測部113の温度検出通路の途中に配置される。温度センサ331は、温度検出通路に取り込まれた被計測気体2の温度を計測する。
【0037】
湿度センサ333は、回路基板300の実装面300aにおいてチップパッケージ310よりも計測部113の先端面部125側に実装される。湿度センサ333は、背面部122に開口する計測部113の窓部から取り込まれた被計測気体2の湿度を計測する。
【0038】
圧力センサ335は、回路基板300の実装面300aにおいてチップパッケージ310よりも計測部113の基端部側に実装される。圧力センサ335は、第2副通路135の途中に開口する計測部113の圧力導入通路から取り込まれた被計測気体2の圧力を計測する。
【0039】
LSI341及びマイコン343は、回路基板300の実装面300bに実装される。LSI341及びマイコン343は、流量検出素子321、温度センサ331、湿度センサ333又は圧力センサ335からの出力信号に対して各種の信号処理及び演算処理を行い、物理量の計測結果を表す電気信号である計測信号を出力する。この計測信号は、回路基板300の配線パターン、電極パッド301、ワイヤ350、コネクタ端子117を介して、コネクタ112から物理量計測装置20の外部に出力される。物理量計測装置20の外部に出力された計測信号は、制御装置4に入力される。
【0040】
図6は、
図5に示すコネクタ端子117付近の拡大図である。
図7は、
図6に示すA-A線断面の模式図である。
図8は、
図7に示す一点鎖線に囲まれた部分の拡大図である。
【0041】
コネクタ端子117は、物理量の計測信号を外部に出力する端子である。コネクタ端子117は、インサート成形等によってハウジング100と一体成形される。コネクタ端子117は、ハウジング100の端子封止部114から一部が露出した状態で端子封止部114に封止される。コネクタ端子117は、例えば、リン青銅等の導電材料から成る板状部材によって形成される。コネクタ端子117の線膨張係数は、10ppm/K以上30ppm/K以下であってもよく、例えば20ppm/K程度であってもよい。
【0042】
コネクタ端子117は、
図8に示すように、ボンディング面118と、側面119とを有する。ボンディング面118は、ハウジング100の端子封止部114から露出し、ワイヤ350がボンディングされる面である。ボンディング面118は、封止部材250に接触する。ボンディング面118は、コネクタ端子117の幅方向と軸線方向とに広がる。側面119は、ボンディング面118に連続する面であって、ハウジング100の端子封止部114に封止された面である。側面119は、コネクタ端子117の板厚方向と軸線方向とに広がる。
【0043】
コネクタ端子117の幅方向は、側面119に直交する方向であり、計測部113の短手方向である。本実施形態では、コネクタ端子117の幅方向をX軸とし、計測部113の短手方向のうち側面部123から側面部124に向かう方向を+X軸方向とする。コネクタ端子117の板厚方向は、ボンディング面118に直交する方向であり、計測部113の長手方向及び短手方向に直交する方向である。本実施形態では、コネクタ端子117の板厚方向をY軸とし、計測部113の長手方向及び短手方向に直交する方向のうち正面部121から背面部122に向かう方向を+Y軸方向とする。コネクタ端子117の軸線方向は、コネクタ端子117の幅方向及び板厚方向のそれぞれに直交する方向であり、計測部113の長手方向である。本実施形態では、コネクタ端子117の軸線方向をZ軸とし、計測部113の長手方向のうち計測部113の基端部から先端面部125に向かう方向を+Z軸方向とする。
【0044】
コネクタ端子117は、
図6及び
図7に示すように、コネクタ端子117の幅方向に間隔をあけて配置される複数のコネクタ端子117によって構成されてもよい。複数のコネクタ端子117は、当該幅方向において側面部123に最も近いコネクタ端子117aと、当該幅方向において側面部124に最も近いコネクタ端子117bとを含む。
【0045】
ワイヤ350は、回路基板300とコネクタ端子117とをワイヤボンディングによって接続するためのボンディングワイヤである。ワイヤ350は、
図6に示すように、回路基板300の実装面300bの電極パッド301と、コネクタ端子117のボンディング面118とを接続する。ワイヤ350は、アルミ又は銅等の金属材料から成る線状部材によって形成される。ワイヤ350の線膨張係数は、10ppm/K以上30ppm/K以下であってもよく、例えば20ppm/K程度であってもよい。
【0046】
封止部材250は、ハウジング100の計測部113の背面部122から露出する回路基板300の実装面300bを覆う。封止部材250は、例えば、エポキシ樹脂等の合成樹脂材料を成形することによって形成される。封止部材250の線膨張係数は、ガラス転移温度以下において、10ppm/K以上30ppm/K以下であってもよく、例えば20ppm/K程度であってもよい。封止部材250は、
図8に示すように、ワイヤ350を封止する。封止部材250は、コネクタ端子117のボンディング面118、及び、ハウジング100の端子封止部114に接触する。
【0047】
ハウジング100の端子封止部114は、計測部113の基端部に位置するコネクタ端子117を封止する部分である。端子封止部114を含むハウジング100は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂等の合成樹脂材料を成形することによって形成される。ハウジング100は、封止部材250よりも大きい線膨張係数を有する樹脂材料を用いて成形される。ハウジング100の線膨張係数は、ガラス転移温度以下において、60ppm/K以上110ppm/K以下であってもよく、例えば100ppm/K程度であってもよい。ハウジング100の線膨張係数は、封止部材250の線膨張係数の5倍以上6倍以下であってもよい。
【0048】
端子封止部114は、
図8に示すように、第1面115と、第2面116とを有する。第1面115は、コネクタ端子117の側面119に接触する面である。第1面115は、コネクタ端子117の板厚方向と軸線方向とに広がる。第2面116は、第1面115に連続する面であって、封止部材250に接触する面である。第2面116は、コネクタ端子117の幅方向と軸線方向に広がる。
【0049】
第2面116は、第2面116のコネクタ端子117の幅方向における端部であって、第1面115に連続する端部116aを有する。第2面116の端部116aの高さ(コネクタ端子117の板厚方向における位置)は、ボンディング面118の高さと同一である。すなわち、第2面116の端部116aは、ボンディング面118と面一の形状に形成される。言い換えると、第2面116の端部116aは、ボンディング面118と同一平面上に配置される形状に形成される。
【0050】
ハウジング100の端子封止部114は、コネクタ端子117の板厚方向に開閉移動する上金型(可動型)と、移動しない下金型(固定型)との間に溶融樹脂を充填し硬化させることによって成形される。仮に、上金型の成形面のボンディング面118及び端部116aに対応する部分を平坦にしてボンディング面118に接触させて成形しても、樹脂には数%の熱収縮が発生するので、端部116aはボンディング面118から数10μm以内の範囲で低くなる。
【0051】
本実施形態において、第2面116の端部116aとボンディング面118とが面一とは、第2面116の端部116aとボンディング面118とが完全に同一の平面上に配置される場合だけでなく、次のような場合も含む。すなわち、第2面116の端部116aが、コネクタ端子117の板厚方向のワイヤ350とは反対側に向かう方向(-Y軸方向)にボンディング面118から数10μm以内の範囲で低くなって配置される場合も含む。なお、ボンディング面118の縁部には、コネクタ端子117がプレス加工等によって切断される際にダレが発生することがある。第2面116の端部116aは、ダレが発生した縁部以外の大部分であるボンディング面118の主部と面一の形状に形成される。
【0052】
第2面116は、コネクタ端子117の幅方向において隣り合うコネクタ端子117同士の中間に位置する中間部116bを有する。第2面116の中間部116bは、第2面116の端部116aから、コネクタ端子117の板厚方向のワイヤ350とは反対側に向かう方向に所定距離だけ低い位置に配置されるように形成される。この所定距離は、コネクタ端子117の板厚の2分の1以下の長さであってもよく、例えば3分の1以上2分の1以下の長さであってもよい。
【0053】
第2面116は、ボンディング面118に対して傾斜する傾斜面116cを有する。第2面116の傾斜面116cは、コネクタ端子117の幅方向において端部116aから離隔するに従って、コネクタ端子117の板厚方向のワイヤ350とは反対側に向かう方向(-Y軸方向)に傾斜する。第2面116の傾斜面116cは、コネクタ端子117の幅方向において端部116aと中間部116bとの間に形成される。更に、第2面116の傾斜面116cは、コネクタ端子117の幅方向においてコネクタ端子117aから側面部123に向かって延びる第2面116の外側部分116dに形成される。同様に、第2面116の傾斜面116cは、コネクタ端子117の幅方向においてコネクタ端子117bから側面部124に向かって延びる第2面116の外側部分116eに形成される。
【0054】
すなわち、隣り合うコネクタ端子117の間に位置する第2面116は、コネクタ端子117の板厚方向及び幅方向を含む平面により切断される断面がV字状に形成される溝116fを有する。V字状の溝116fの深さは、コネクタ端子117の板厚の2分の1以下の長さであってもよく、例えば3分の1以上2分の1以下の長さであってもよい。
【0055】
図9及び
図10を用いて、本実施形態の作用効果について説明する。
図9は、比較例の物理量計測装置20を説明する図である。
図9は、
図7に対応する図である。
図10は、
図9に示す一点鎖線に囲まれた部分の拡大図である。
図10は、
図8に対応する図である。
【0056】
比較例の物理量計測装置20では、第2面116は、端部116a及び中間部116bの高さがボンディング面118よりも高い凸状面116gを有する。比較例の物理量計測装置20では、端子封止部114を含むハウジング100が、封止部材250よりも大きい線膨張係数を有する。ハウジング100と封止部材250との線膨張係数差によって、封止部材250との界面付近の端子封止部114には熱応力が発生する。
【0057】
特に、ハウジング100が比較的安価なPBT樹脂、封止部材250がエポキシ樹脂を用いて成形される場合、ハウジング100の線膨張係数は、封止部材250の線膨張係数の5倍~6倍になる。この場合、比較例の物理量計測装置20に、-40℃以上130℃以下の熱負荷を与えると、ハウジング100の端子封止部114は、
図10のS1及びS2に示すような封止部材250との界面付近、すなわち第2面116付近において、大きな熱応力が発生する。そして、この熱応力の作用によって、端子封止部114に封止されたコネクタ端子117と封止部材250とが剥離する可能性がある。この剥離が大きいと、封止部材250に封止されたワイヤ350が熱疲労によって破断してしまう。すなわち、比較例の物理量計測装置20では、ワイヤ350の接続信頼性を確保することが難しい。
【0058】
これに対し、本実施形態の物理量計測装置20は、第2面116の端部116aの高さが、コネクタ端子117のボンディング面118の高さと同一である。すなわち、第2面116の端部116aは、ボンディング面118と面一の形状に形成される。これにより、本実施形態の物理量計測装置20は、封止部材250との界面付近の端子封止部114の体積を減少させることができるので、当該端子封止部114の熱変形量を小さくすることができる。
【0059】
しかも、本実施形態の物理量計測装置20は、封止部材250との界面付近の端子封止部114の熱変形がコネクタ端子117によって規制され難くなる。例えば、比較例の物理量計測装置20のように第2面116が凸状面116gを有する場合、端子封止部114の熱収縮時、端子封止部114の凸状面116g付近がボンディング面118と干渉し、凸状面116g付近の熱収縮がボンディング面118によって規制され易い。これに対し、本実施形態の物理量計測装置20は、第2面116の端部116aの高さがボンディング面118の高さと同一であるので、封止部材250との界面付近の端子封止部114の熱変形がコネクタ端子117によって規制され難くなる。
【0060】
このようなことから、本実施形態の物理量計測装置20は、封止部材250との線膨張係数差が僅少となるよう高価な樹脂材料をハウジング100に採用しなくても、封止部材250との界面付近の端子封止部114に発生する熱応力を抑制することができる。本実施形態の物理量計測装置20は、コネクタ端子117と封止部材250との剥離を抑制することができ、ワイヤ350の熱疲労による破断を抑制することができる。したがって、本実施形態の物理量計測装置20は、ワイヤ350の接続信頼性を容易に確保することができる。
【0061】
更に、本実施形態の物理量計測装置20は、第2面116が、コネクタ端子117の幅方向において端部116aから離隔するに従って、コネクタ端子117の板厚方向のワイヤ350とは反対側に向かって傾斜する。すなわち、第2面116は、上記のような傾斜面116cを有する。
【0062】
仮に、第2面116を、端部116aから中間部116bに向かって階段状に下がるような凹状に形成する場合、上金型の成形面は、この凹状に対応する凸状部分を有する。この場合、上金型と下金型との間に配置されたコネクタ端子117が位置ずれを起こすと、上金型の凸状部分がコネクタ端子117を噛み易くなり、不良品が発生し易く、生産性が低下し易い。
【0063】
本実施形態の物理量計測装置20は、第2面116が上記のような傾斜面116cを有するので、上金型の成形面は、傾斜面116cに対応する傾斜面を有する。上金型の成形面が傾斜面116cに対応する傾斜面を有することにより、成形時に上金型の成形面がコネクタ端子117の位置を規制して、位置ずれを抑制することができる。これにより、本実施形態の物理量計測装置20は、コネクタ端子117の噛み込みを抑制することができ、生産性の低下を抑制することができる。したがって、本実施形態の物理量計測装置20は、コネクタ端子117が一体成形されたハウジング100の生産コストを抑制することができる。
【0064】
しかも、本実施形態の物理量計測装置20は、ハウジング100の線膨張係数が封止部材250の線膨張係数より大きい場合でも、封止部材250との界面付近の端子封止部114に発生する熱応力を抑制することができる。本実施形態の物理量計測装置20は、コネクタ端子117と封止部材250との剥離を抑制することができ、ワイヤ350の熱疲労による破断を抑制することができる。
【0065】
このようなことから、本実施形態の物理量計測装置20は、第2面116が上記のような傾斜面116cを有することにより、封止部材250との界面付近の端子封止部114に発生する熱応力を容易に抑制することができ、ワイヤ350の接続信頼性を容易に確保することができる。
【0066】
特に、本実施形態の物理量計測装置20は、隣り合うコネクタ端子117の間に位置する第2面116が、V字状の溝116fを有する。V字状の溝116fを有する本実施形態と、凸状面116gを有する比較例とにおいて、ハウジング100の端子封止部114と封止部材250との界面付近に発生する熱応力を解析すると、本実施形態の熱応力は、比較例の3分の1程度であった。これにより、本実施形態の物理量計測装置20では、上記の端子封止部114に発生する熱応力を大幅に抑制することができ、ワイヤ350の接続信頼性を十分に確保することができる。
【0067】
更に、本実施形態の物理量計測装置20は、V字状の溝116fの深さが、コネクタ端子117の板厚の3分の1以上2分の1以下の長さであってもよい。V字状の溝116fの深さがコネクタ端子117の板厚の3分の1以上の長さであると、上記の端子封止部114に発生する熱応力を抑制する効果が大きい。V字状の溝116fの深さがコネクタ端子117の板厚の2分の1以下の長さであると、端子封止部114は、中間部116b付近の樹脂量を確保し易くなるので、中間部116b付近の強度を確保し易くなると共に、コネクタ端子117を固定し易くなる。したがって、本実施形態の物理量計測装置20は、上記の端子封止部114に発生する熱応力を効果的に抑制してワイヤ350の接続信頼性を確保することができると共に、ハウジング100の端子封止部114における機械的信頼性を確保し易くすることができる。
【0068】
更に、本実施形態の物理量計測装置20は、ハウジング100の線膨張係数が封止部材250の線膨張係数の5倍以上6倍以下であってもよい。すなわち、物理量計測装置20は、ハウジング100にPBT樹脂、封止部材250にエポキシ樹脂を採用する例のように、封止部材250の5倍以上6倍以下の線膨張係数を有する樹脂材料をハウジング100に採用する場合でも、上記の端子封止部114に発生する熱応力を抑制することができる。これにより、本実施形態の物理量計測装置20は、ハウジング100に比較的安価な樹脂材料を採用しても、当該熱応力を抑制することができるので、ワイヤ350の接続信頼性を更に容易に確保することができる。
【0069】
更に、本実施形態の物理量計測装置20では、ハウジング100が、副通路134,135が形成される正面部121と、ハウジング100の正面部121とは反対側の背面部122とを有し、第2面116が背面部122に形成される。すなわち、ハウジング100の計測部113において、第2面116は、副通路134,135が形成される正面部121とは反対側の背面部122に形成される。
【0070】
ハウジング100の成形金型では、ハウジング100の複雑形状部分は、金型に抱き付き易いので、固定型である下金型によって成形することが多い。仮に、成形後のハウジング100が上金型に抱き付いた状態で上金型を開放する場合、ハウジング100の成形金型には、成形後のハウジング100を取り出すための複雑な機構が必要となる。本実施形態のハウジング100では、副通路134,135が形成される正面部121が、複雑形状部分に相当するので、正面部121を下金型によって成形することが好ましい。
【0071】
本実施形態の物理量計測装置20では、第2面116は、副通路134,135が形成される正面部121とは反対側の背面部122に形成される。これにより、本実施形態の物理量計測装置20では、副通路134,135が形成される正面部121を下金型によって成形するとし、下金型にコネクタ端子117を配置して、第2面116を上金型によって成形することができる。したがって、本実施形態の物理量計測装置20では、ハウジング100の成形金型や成形工程を複雑化することなく、ハウジング100を適切に成形することができる。よって、本実施形態の物理量計測装置20は、ハウジング100の生産コストを更に抑制することができるので、ワイヤ350の接続信頼性を更に容易に確保することができる。
【0072】
図11及び
図12を用いて、本実施形態の変形例について説明する。
図11は、本実施形態の変形例の物理量計測装置20を説明する図である。
図11は、
図7に対応する図である。
図12は、
図11に示す一点鎖線に囲まれた部分の拡大図である。
図12は、
図8に対応する図である。
【0073】
本実施形態の物理量計測装置20は、
図7及び
図8に示すように、隣り合うコネクタ端子117の間に位置する第2面116が、V字状の溝116fを有する。これに対し、変形例の物理量計測装置20は、
図11及び
図12に示すように、隣り合うコネクタ端子117の間に位置する第2面116が、平坦面116hを有していてもよい。すなわち、変形例の物理量計測装置20は、第2面116が傾斜面116cを有しておらず、端部116aだけでなく中間部116bにおいても、ボンディング面118と面一の形状に形成されていてもよい。第2面116の端部116a及び中間部116bとボンディング面118とが面一とは、上記と同様に定義される。
【0074】
変形例の物理量計測装置20においても、封止部材250との界面付近の端子封止部114に発生する熱応力を抑制することができ、コネクタ端子117と封止部材250との剥離を抑制することができる。変形例の物理量計測装置20は、ワイヤ350の熱疲労による破断を抑制することができ、ワイヤ350の接続信頼性を容易に確保することができる。
【0075】
[その他]
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
2…被計測気体、20…物理量計測装置、22…主通路、100…ハウジング、115…第1面、116…第2面、116a…端部、116f…溝、117…コネクタ端子(端子)、118…ボンディング面、119…側面、121…正面部、122…背面部、134,135…副通路、250…封止部材、310…チップパッケージ(センサ)、331…温度センサ(センサ)、333…湿度センサ(センサ)、335…圧力センサ(センサ)、350…ワイヤ