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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158418
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】口腔内フローラ改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/40 20060101AFI20221006BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61K8/40
A61Q11/00
A61P1/02
A61K31/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063307
(22)【出願日】2021-04-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 順也
【テーマコード(参考)】
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB172
4C083AB292
4C083AB472
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC432
4C083AC482
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC782
4C083AC862
4C083AD042
4C083AD272
4C083AD282
4C083AD352
4C083AD532
4C083CC41
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE31
4C083EE33
4C083EE36
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA41
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA77
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA67
(57)【要約】
【課題】効率よく口腔内フローラを改善できる手法の提供。
【解決手段】塩化セチルピリジニウムと塩化ベンザルコニウム及び/又は塩化ベンゼトニウムとを含有する口腔内フローラ改善用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化セチルピリジニウム並びに
塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムからなる群より選択される少なくとも1種
を含有する口腔内フローラ改善用組成物。
【請求項2】
口腔内のFusobacterium(フゾバクテリウム)属菌を減少させるため、及び/又は、Veillonella(ベイロネラ)属菌を減少させるため、及び/又は、Actinomyces(アクチノマイセス)属菌の口腔内フローラでの割合を増加させるための、
塩化セチルピリジニウム並びに
塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムからなる群より選択される少なくとも1種
を含有する組成物。
【請求項3】
塩化セチルピリジニウム及び塩化ベンザルコニウムを含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
塩化セチルピリジニウム100質量部に対して、塩化ベンザルコニウムを1~100質量部含有する、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
口腔用組成物である、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口腔内フローラ改善用組成物等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
口腔内には多種多様な細菌(口腔内細菌)が存在しており、口腔内細菌叢(口腔内フローラ)を構成している。近年、口腔内フローラは、腸内フローラと同様に、各種疾患に大きく関わっている可能性が指摘されており、研究も進められつつある。特に、人間に対して良い影響を与える細菌(俗に善玉菌ともいわれる)を増やし、人間に対して悪い影響を与える細菌(俗に悪玉菌)を減らすことで、口腔内フローラのバランスを改善若しくは良好に維持することが重要であると考えられている。
【0003】
また、近年、口腔内環境が全身の健康状態にも大きく影響すると考えられており、特に歯周病は口腔内のみならず全身に悪影響を与えるおそれが指摘されている。例えば、歯周病が進行すると、炎症物質が血流により拡散されたり、腸内細菌フローラが変化したりすることで、全身の疾患に影響する可能性が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】化学と生物 2016 54(9): 633-639
【非特許文献2】J Family Med Prim Care. 2019 Nov; 8(11): 3480-3486
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、口腔内フローラが歯周病、ひいては全身の健康に関連する可能性に着目し、特に口腔内フローラにおいて歯周病の発症や重傷化に関連する細菌を効率よく殺菌することで、口腔内フローラ(特に口腔内フローラにおける各細菌のバランス)を改善することができないか検討を行った。
【0006】
なお、歯周病と口腔内フローラの関係については、例えば、プラーク(歯垢)が歯周病の原因になり得ることが知られている。プラーク(歯垢)は、口腔内細菌が凝集したバイオフィルムである。大まかに言えば、次のようにしてプラークは形成される。すなわち、まず歯の表面に「ペリクル」という唾液や生理的歯肉溝浸出液由来のタンパクの薄い膜が形成され、当該ペリクルを介して連鎖球菌などの通性嫌気性菌(初期付着菌)が歯面に付着する。この初期付着菌にさまざまな口腔細菌と共凝集するFusobacterium(フゾバクテリウム)等の媒介細菌が付着し、さらに当該媒介細菌を介して嫌気性菌であるPorphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)やTreponema denticola(トレポネーマ・デンティコーラ)等の後期付着菌が付着・凝集し、プラークは成熟する。特に、後期付着菌は歯周病の原因となり、歯周組織の破壊に直接的、間接的に関係することが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、塩化セチルピリジニウムと塩化ベンザルコニウム及び/又は塩化ベンゼトニウムとを組み合わせて用いることにより、効率よく口腔内フローラが改善される可能性を見いだし、さらに検討を重ねた。
【0008】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
塩化セチルピリジニウム並びに
塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムからなる群より選択される少なくとも1種
を含有する口腔内フローラ改善用組成物。
項2.
口腔内のFusobacterium(フゾバクテリウム)属菌を減少させるため、及び/又は、Veillonella(ベイロネラ)属菌を減少させるため、及び/又は、Actinomyces(アクチノマイセス)属菌の口腔内フローラでの割合を増加させるための、
塩化セチルピリジニウム並びに
塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムからなる群より選択される少なくとも1種
を含有する組成物。
項3.
塩化セチルピリジニウム及び塩化ベンザルコニウムを含有する、項1又は2に記載の組成物。
項4.
塩化セチルピリジニウム100質量部に対して、塩化ベンザルコニウムを1~100質量部含有する、項1~3のいずれかに記載の組成物。
項5.
口腔用組成物である、項1~4のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
効率よく口腔内フローラを改善できる手法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】被験物質及びその濃度(1)CPC0.05%で唾液を処理した場合に、検出された菌種及びそのコロニー数を示す。
図2】被験物質及びその濃度(2)CPC0.05%及びBKC0.01%で唾液を処理した場合に、検出された菌種及びそのコロニー数を示す。
図3】被験物質及びその濃度(3)CPC0.05%及びBTC0.01%で唾液を処理した場合に、検出された菌種及びそのコロニー数を示す。
図4】被験物質の代わりに水で唾液を処理した場合に、検出された菌種及びそのコロニー数を示す。
図5】上記非特許文献2(J Family Med Prim Care. 2019 Nov; 8(11): 3480-3486)に記載された、口腔内細菌の3段階の区分の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、特定の成分を含有する口腔内フローラ改善用組成物やその使用等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0012】
本開示に包含される口腔内フローラ改善用組成物は、塩化セチルピリジニウムと塩化ベンザルコニウム及び/又は塩化ベンゼトニウムとを含有する。当該組成物を、本開示の組成物ということがある。また、塩化セチルピリジニウムをCPCと、塩化ベンザルコニウムをBKCと、それぞれ略記することがある。また、塩化ベンゼトニウムをBTCと略記することがある。
【0013】
上記の通り、本開示の組成物には、CPCと、BKC及びBTCからなる群より選択される少なくとも1種と、が含有される。中でも、CPC及びBKCが含有されることが好ましい。
【0014】
CPC及びBKCの含有割合は、効果が奏される範囲であれば特に限定されないが、例えばCPC100質量部に対して、1~100質量部が好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99質量部であってもよい。例えば当該範囲は2~90質量部又は5~50質量部であってもよい。
【0015】
CPC及びBTCの含有割合は、効果が奏される範囲であれば特に限定されないが、例えばCPC100質量部に対して、1~100質量部が好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99質量部であってもよい。例えば当該範囲は2~90質量部又は5~50質量部であってもよい。
【0016】
本開示の組成物におけるCPC含有量は、例えば0.005~0.5質量%程度が挙げられる。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.01~0.3質量%程度であってもよい。
【0017】
本開示の組成物におけるBKC含有量は、例えば0.001~0.5質量%程度が挙げられる。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.002、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.002~0.4質量%又は0.005~0.3質量%であってもよい。
【0018】
本開示の組成物におけるBTC含有量は、例えば0.001~0.5質量%程度が挙げられる。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.002、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.002~0.4質量%又は0.005~0.3質量%であってもよい。
【0019】
本開示の組成物は、口腔用組成物として特に好適に用いることができる。当該口腔用組成物を本開示の口腔用組成物ということがある。また、本開示の口腔用組成物は、口腔内フローラ改善用であるところ、特に、Fusobacterium(フゾバクテリウム)属菌を減少させるため、及び/又は、Veillonella(ベイロネラ)属菌を減少させるため、及び/又は、Actinomyces(アクチノマイセス)属菌の口腔内フローラでの割合を増加させるため、に好ましく用いることができる。なお、Fusobacterium(フゾバクテリウム)属菌を減少させることから、Fusobacterium(フゾバクテリウム)の口腔内フローラでの割合を減少させるためにも好ましく用いることができる。また、Veillonella(ベイロネラ)属菌を減少させることから、Veillonella(ベイロネラ)属菌の口腔内フローラでの割合を減少させるためにも好ましく用いることができる。
【0020】
上記の通り、Fusobacteriumはプラーク形成において、初期付着菌と後期付着菌とを橋渡しする媒介細菌としてはたらくため、減少した方が好ましいといえる。特に限定はされないが、Fusobacteriumの中でも、Fusobacterium nucleatum(フゾバクテリウム ヌクレアタム)を減少させるために好ましく用いることができる。Veillonellaは他の菌との共培養により、形成されるバイオフィルム量が増大するという報告があり(北海道医療大学歯学雑誌 2011,30(1),p87 )、バイオフィルム形成において中心的な役割を果たしている可能性がある。また、VeillonellaはPrevotella属やPorphyromonas属の栄養源となるビタミンKを産生することも報告されており(Virulence . 2011 Sep/Oct; 2(5): 435-444)、悪玉菌の増殖を助長してしまう可能性もある。これらのことから、Veillonellaは減少した方が好ましいと考えられる。また、Actinomycesは、口腔常在細菌の主構成菌で、比率的には、歯周炎にかかっていない健康なヒトの口に多く、歯周炎患者では減少するとされ、口の中の健康状態を見る目安とされることから、増加した方が好ましいと考えられる。
【0021】
本開示の口腔用組成物は、固形組成物、液体組成物でありえる。当該口腔用組成物は、例えば医薬品、医薬部外品として用いることができる。また、本開示の口腔用組成物の形態は、特に限定するものではないが、常法に従って例えば軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、ガム剤等の形態(剤形)にすることができる。なかでも、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、軟膏剤、ペースト剤、液剤、ジェル剤であることが好ましい。
【0022】
本開示の口腔用組成物は、効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に配合し得る任意成分を単独で又は2種以上さらに含有してもよい。
【0023】
例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、例えば、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1~5質量%である。
【0024】
また、香味剤として、例えば、メントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネール、α-テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等の香料を用いることができる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて組成物全量に対して例えば0.001~1.5質量%配合することができる。
【0025】
また、甘味剤として、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等を用いることができる。これらは、組成物全量に対して例えば0.01~1質量%配合することができる。
【0026】
さらに、湿潤剤として、ソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0027】
防腐剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を配合することができる。
【0028】
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を配合してもよい。
【0029】
pH調整剤として、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが4~8、好ましくは5~7の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の配合量は例えば0.01~2重量%であってよい。
【0030】
本開示の口腔用組成物には、CPC、BKC、及びBTCのみならず、さらに、薬効成分として酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール等の非イオン性殺菌剤、ラウロイルサルコシンナトリウム等のアニオン系殺菌剤、塩酸クロルヘキシジン等のカチオン系殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、アラントイン、カルバゾクロム、ヒノキチオール、硝酸カリウム、パラチニット等を、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0031】
また、基剤として、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等を添加することも可能である。
【0032】
また、本開示の口腔用組成物は、公知の方法または公知の方法から容易に想到する方法により調製することができる。例えば、CPC及びBKC並びに必要に応じてその他の成分等を適宜混合することによって調製することができる。
【0033】
本開示の口腔用組成物を適用する対象は、特に限定はされず、ヒト及び非ヒト哺乳類が好ましく挙げられる。非ヒト哺乳類としては、家畜やペットなどが好ましく、より具体的には例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、サル等が挙げられる。
【0034】
なお、上述した本開示の口腔用組成物に関する記載は、口腔用組成物として用いられない本開示の組成物(例えば義歯洗浄用として使用される場合が挙げられる)についても、そのまま当てはまり得る。
【0035】
本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0036】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0037】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。なお、以下特に断らない限り、%は質量%を示す。
【0038】
以下のようにして、ヒトの唾液中の細菌フローラに対する各被験物質又はその組み合わせの影響を検討した。なお、被験物質としては、殺菌剤である塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BKC)、及び塩化ベンゼトニウム(BTC)を用いた。BKCは、C14直鎖を有するものを用いた。
【0039】
20~30代の男女3名より唾液を1mlずつ採取し、ガラスビーズを入れたバイアル瓶中でよく混合し、また23G注射針を装着したシリンジを用いて分散させた。これを供試菌液として用いた。
【0040】
液体製剤180μlに供試菌液20μlを混合し、試験に供する混合液(2)及び(3)を調製した。液体製剤は、各被験物質の他、水、グリセリン、香料、防腐剤、及び可溶化剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)等を混合した液体組成物である。また、CPC0.05%水溶液(1)も調製した。当該混合液又は水溶液における各被験物質及び濃度は、次の通りである。
(1)CPC0.05%
(2)CPC0.05%及びBKC0.01%
(3)CPC0.05%及びBTC0.01%
【0041】
混合から30秒後の当該混合液((2)又は(3))200μl、あるいはCPC0.05%水溶液(1)200μlを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に大豆レシチン、Tween 80をそれぞれ終濃度0.07%、0.5%になるように添加した薬剤不活化PBS1.8mlに加え(10倍希釈)、殺菌剤の殺菌作用を不活化した。また、当該薬剤不活化PBSにより殺菌作用不活化後の各液を段階希釈し、10~10倍まで希釈した(段階混合液希釈液)。
【0042】
CDC嫌気性菌用ヒツジ血液寒天培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)に、調製した段階混合液希釈液をそれぞれ50μlずつ塗抹し、37℃で3日間嫌気培養し、生菌数をカウントした。
【0043】
またさらに、コロニー同士の重なりがなく、15個以上のコロニーが釣菌可能である希釈率のプレートを選択し、以降のコロニー同定に供した。選択したプレートにおけるコロニーをそれぞれ釣菌し(コロニーカウントを終えたプレートから全コロニーを採取)、それぞれのコロニーをWell-Plateに塗布し、マトリックス(1μL-CHCA(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid))を塗布することにより、結晶化し、MALDI-TOFMSにより菌由来のタンパク質のMSスペクトルを得た。得られたスペクトルパターンについてデータベースとのマッチングを行い、近縁種を同定した。(分析機器はBruker社製のMALDI Biotyperを使用)
被験物質濃度が、上記(1)の場合の結果を図1に、上記(2)の場合の結果を図2に、上記(3)の場合の結果を図3に、それぞれ示す。また、(1)~(3)の代わりに水を用いた場合の結果を図4に示す。
【0044】
図1図4では、検出された細菌名(近縁種名)及びそのコロニー個数を示すとともに、その細菌のランク及び善悪(善玉菌か悪玉菌か)をあわせて示す。さらに、各図の右下には、検出された菌全体に占める善玉菌(○)の割合及び悪玉菌(×)の割合を示す。
【0045】
当該ランク及び善悪の判断基準は、上記非特許文献2(J Family Med Prim Care. 2019 Nov; 8(11): 3480-3486)に記載された、口腔内細菌の3段階の区分に従った。当該区分について図5に示す。当該図では、歯周病に関わるプラークの形成に関与する菌の区分がピラミッド型で示されており、初期付着菌が土台部分(青、紫、緑、黄)に、橋渡し菌が中腹部分(橙)に、後期付着菌(歯周病菌)が頂点部分(赤)に、それぞれ配置されている。図1図4の色分けは、当該図5のピラミッドの色分けに従っており、図5の区分にない菌は「圏外」と表記した。また、図5で橙又は赤に区分される菌は悪玉、それ以外の色に区分される菌又は図5に示されていない菌は善玉とした。
【0046】
図5に示される各口腔内細菌を一覧表として下に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
当該結果から分かるように、(1)CPC0.05%で処理した場合には、善玉菌及び悪玉菌の割合が、水のそれらとほとんど変わらなかった。また、(3)CPC0.05%及びBTC0.01%で処理した場合は、水や(1)の場合に比べ、特に悪玉菌の割合が低下した。一方、(2)CPC0.05%及びBKC0.01%で処理した場合には、水や(1)の場合に比べ、著しく悪玉菌(特に、Fusobacterium)の割合が低下した。さらに、(2)で処理した場合のみ、(1)や(3)で処理した場合に比べ、Veillonella(紫)の割合が著しく低下するとともに、Actinomyces(青)の割合が増加した。これらはいずれも、上記ランクでは善玉菌(ピラミッド土台部分)にランクされる菌(初期付着菌)ではあるが、Veillonellaは他の菌との共培養により、形成されるバイオフィルム量が増大するという報告があり(北海道医療大学歯学雑誌 2011,30(1),p87 )、バイオフィルム形成において中心的な役割を果たしている可能性がある。また、VeillonellaはPrevotella属(橙)やPorphyromonas属(赤)の栄養源となるビタミンKを産生することも報告されており(Virulence . 2011 Sep/Oct; 2(5): 435-444)、悪玉菌の増殖を助長してしまう可能性もある。これらのことから、口腔内フローラのバランスとしては、Veillonellaは減少した方が好ましいと考えられる。また、Actinomycesは、口腔常在細菌の主構成菌で、比率的には、歯周炎にかかっていない健康なヒトの口に多く、歯周炎患者では減少するとされ、口の中の健康状態を見る目安とされることから、口腔内フローラのバランスとしては、増加した方が好ましいと考えられる。これらのことを勘案すると、CPCとBKCを組み合わせて用いたときのみ、特に優れた口腔内フローラ改善効果が得られたと考えられた。
【0049】
以下に処方例を記載する。なお、処方例における各成分の配合量の値は質量%を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
図1
図2
図3
図4
図5