(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158428
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】金属製容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/26 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B65D1/26 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063327
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】南馬 孝之
(72)【発明者】
【氏名】土橋 希望
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA09
3E033DA08
3E033DA10
3E033DD02
3E033DD05
3E033FA01
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】広口のカップとした場合でも口当たりの良いカール部を提供する。
【解決手段】有底筒状の胴部の開口端部に、該開口端部のエッジを含む端部が折り返されてなるカール部を有しており、カール部は、その始端部に連続する胴部の上端部の外面とエッジとの間に隙間が形成されるとともに、エッジを含むカール端部が胴部の中心軸に直交する平面に対して開口端に向けて上り勾配となるように傾斜しており、カール部の中心軸に沿う高さをW、カール部の半径方向に沿う幅をTとしたとき、WはTより小さい。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の胴部の開口端部に、該開口端部のエッジを含む端部が折り返されてなるカール部を有しており、前記カール部は、その始端部に連続する前記胴部の上端部の外面と前記エッジとの間に隙間が形成されるとともに、前記エッジを含むカール端部が前記胴部の中心軸に直交する平面に対して開口端に向けて上り勾配となるように傾斜しており、前記カール部の前記中心軸に沿う高さをW、前記カール部の半径方向に沿う幅をTとしたとき、WはTより小さいことを特徴とする金属製容器。
【請求項2】
前記カール部の下端から前記カール部の外面側における前記エッジまでの前記中心軸に沿う高さをXとしたとき、(1/20)×W<X<(1/2)×Wであることを特徴とする請求項1に記載の金属製容器。
【請求項3】
前記カール部の外面側における前記エッジと前記胴部の上端部の外面との間の前記中心軸に直交する平面に沿う距離をBとしたとき、(1/20)×T<B<(1/2)×Tであることを特徴とする請求項2に記載の金属製容器。
【請求項4】
前記カール部の前記中心軸に沿う高さWが1.2mm以上4.0mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の金属製容器。
【請求項5】
前記カール端部が前記平面となす角度は5°以上80°以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の金属製容器。
【請求項6】
前記中心軸を通る縦断面において、前記胴部の上端に連続し上方に向かうにしたがって漸次拡径する上部内周側屈曲部と、該上部内周側屈曲部の外周端に連続し該上部内周側屈曲部との間で天頂折り返し部を形成するとともに下方に向けて屈曲する上部外周側屈曲部と、該上部外周側屈曲部の外周端に連続し斜め下方に向けて凸となる下部屈曲部と、該下部屈曲部に連続し前記カール端部とを備え、前記上部外周側屈曲部の外面の曲率半径が1.0mm以上5.0mm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の金属製容器。
【請求項7】
前記下部屈曲部により構成される前記カール部の最下端部位の外面が曲率半径0.5mm以上10mm以下の屈曲面に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の金属製容器。
【請求項8】
前記胴部の上端に、前記上部内周側屈曲部の始端部を構成するとともに前記中心軸を通る縦断面でほぼ直線状をなすテーパ面部が形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の金属製容器。
【請求項9】
前記胴部の上端部は前記中心軸に沿う円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の金属製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金等からなる金属製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の飲料用カップには陶器製、ガラス製、金属製、紙製、プラスチック製等がある。このうち、金属製、紙製、プラスチック製のカップは、陶器製やガラス製と比べて、軽量でスタックしても嵩張りにくいので、持ち運びに優れている。
特許文献1にはテーパ状の金属カップ(金属製カップ)が開示されている。この金属製カップは、アルミニウム製で、プラスチックカップより硬く、耐久性があり、また、リサイクル性に優れていると記載されている。開口端部に形成されるカール部の内径は2.0インチ~5.0インチの間の直径であると記載されている。
【0003】
また、この金属製カップを製造する方法として、金属板を抜き及び絞り加工してカップを形成し、そのカップにしごき加工を施すことにより円筒状の垂直壁プリフォームを形成し(DI工程)、その開口端部を丸めてカール部を形成した後、段階的絞り処理により、カール部から底部に向けて、連続的に小さくなる直径及び異なる高さの垂直壁区画を有する垂直絞りカップを形成し、その後、テーパ状の輪郭を有するダイを用いて、垂直壁区画の各々を拡げることにより、各垂直壁区画をテーパ状側壁としたテーパ状カップを形成し、最後に、カップの底に、ドーム部を形成する、ことが記載されている。
【0004】
一方、金属キャップが巻き締められる缶体として、特許文献2に開示のものがある。この缶体では、缶体の開口部に形成されたカール部は、カール部の内側の空間部の断面積が4mm2以上であり、カール部の全周にわたって該カール部の基端側の外面と切断先端部との間に隙間が形成されている。カール部が設けられる開口端部の外径は25mm以上40mm以下と例示されている。また、缶軸を通る缶軸方向に沿う断面において、隙間の径方向の距離が切断先端部におけるカール部の板厚の2倍以上の大きさとされている。このようなカール部の形状とすることにより、カール部の内側の空間部に全周にわたって隙間が形成されているので、余剰の内容物が空間部に留まり難く、また、カール部の隙間を通じてカール部の内側の空間部を容易に洗浄できるので、口部の外観を美しく保つことができるとともに、口部を衛生的に保つことができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-508874号公報
【特許文献2】特開2019-172271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような飲料容器の場合、開口部の周囲に形成されるカール部の形状は、消費者が飲料を飲む際に唇に直接触れる部位であるため、飲み心地に影響する。特許文献2記載の缶体は、開口端部の外径が小さいため、唇に触れる範囲も制限されるが、特許文献1記載の金属製カップのように、直径が大きくなると、唇に触れる範囲も横に長くなるため、その触感が飲み心地に大きく影響する。このため、口当たりの良いカール部形状とすることが望まれている。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、広口のカップとした場合でも口当たりの良いカール部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属製容器は、有底筒状の胴部の開口端部に、該開口端部のエッジを含む端部が折り返されてなるカール部を有しており、前記カール部は、その始端部に連続する前記胴部の上端部の外面と前記エッジとの間に隙間が形成されるとともに、前記エッジを含むカール端部が前記胴部の中心軸に直交する平面に対して前記中心軸に向かうにしたがって上り勾配となるように傾斜しており、前記カール部の前記中心軸に沿う高さをW、前記カール部の半径方向に沿う幅をTとしたとき、WはTより小さい。
【0009】
この金属製容器は、カール部の高さWと幅TがW<Tであり、その高さが小さいとともに、カール端部が上り勾配に傾斜しているため、このカール端部に触れる下唇もエッジ付近には触れにくく、したがって、違和感がなく、口当たりがよい。
なお、カール部のエッジと胴部の上端部の外面との間に隙間が形成されているため、洗浄等によりカール部内に水等が侵入した場合でも、速やかに排出することができる。
【0010】
この金属製容器において、前記カール部の下端から前記カール部の外面側における前記エッジまでの前記中心軸に沿う高さをXとしたとき、(1/20)×W<X<(1/2)×Wであるとよい。
【0011】
このようにエッジの位置を規制することにより、良好な口当たりを確保しつつ、カール部内に侵入した水等の排出を容易にすることができる。Xが(1/20)×W以下であると、飲料を飲む際に下唇にエッジが当たるおそれがある。一方、Xが(1/2)×W以上であると、カール部内に侵入した水等を排出し難くなる。
【0012】
また、、前記カール部の外面側における前記エッジと前記胴部の上端部の外面との間の前記中心軸に直交する平面に沿う距離をBとしたとき、(1/20)×T<B<(1/2)×Tであるとよい。
Bが(1/2)×T以上であると、飲料を飲む際に下唇にエッジが当たるおそれがある。一方、Bが(1/20)×T以下であると、カール部内に侵入した水等を排出し難くなる。
【0013】
この金属製容器において、前記カール部の前記中心軸に沿う高さWが1.2mm以上4.0mm以下であるとよい。
【0014】
この金属製容器において、前記カール端部が前記平面となす角度は5°以上80°以下であるとよい。
カール端部の角度が5°未満であると、下唇をカール部に当てたときに、エッジ付近も唇に触れやすくなることから、口当たりの良さが低減する。その角度が80°を超えるのは、カーリング加工が困難になる。
【0015】
この金属製容器において、前記中心軸を通る縦断面において、前記胴部の上端に連続し上方に向かうにしたがって漸次拡径する上部内周側屈曲部と、該上部内周側屈曲部の外周端に連続し該上部内周側屈曲部との間で天頂折り返し部を形成するとともに下方に向けて屈曲する上部外周側屈曲部と、該上部外周側屈曲部の外周端に連続し斜め下方に向けて凸となる下部屈曲部と、該下部屈曲部に連続する前記カール端部とを備え、前記上部外周側屈曲部の外面の曲率半径が1.0mm以上5.0mm以下である。
【0016】
前述したカール部の高さが小さいこととも相まって、上部外周側屈曲部の外面の曲率半径が1.0mm以上5.0mm以下と小さいことから、カール部の剛性が高く、広口のカップの開口部に適用しても変形等を生じることが防止される。
【0017】
この金属製容器において、前記下部屈曲部により構成される前記カール部の最下端部位の外面が曲率半径0.5mm以上10mm以下の屈曲面に形成されているとよく、丸みを帯びた形状により、唇への違和感をより緩和することができる。
【0018】
この金属製容器において、前記胴部の上端に、前記上部内周側屈曲部の始端部を構成するとともに前記中心軸を通る縦断面でほぼ直線状をなすテーパ面部が形成されている。
【0019】
上部内周側屈曲部の一部にテーパ面部が形成されることにより、その部位の剛性が向上し、さらに変形等を防止できる。この場合、上部内周側屈曲部であり、唇への接触は少ないので、飲料を飲むときに違和感が生じることは少ない。
【0020】
この金属製容器において、前記胴部の上端部は前記中心軸に沿う円筒状に形成されているとよい。
カール部の成形には、カーリング前のエッジに型を当てて、胴部の中心軸に沿って押圧する加工となるが、このカール部が連続する胴部の上端部が円筒状であることから、その型からの荷重を受けても座屈等の変形が生じにくく、したがって、正確にカーリングすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、広口のカップとした場合でも口当たりの良いカール部を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態の金属製カップ(金属製容器)の中心軸を中心に半分を縦断面とした正面図である。
【
図2】
図1の金属製カップのカール部の拡大断面図である。
【
図3】絞りしごき工程で得られる筒体の中心軸を中心に半分を縦断面図とした正面図である。
【
図4】下部段部形成工程で加工している状態を示す要部の縦断面図である。
【
図5】段部形成工程で加工している状態を示す要部の縦断面図である。
【
図6】
図5の段部形成工程に続く整形工程で加工している状態を示す要部の縦断面図である。
【
図7】
図6の整形工程に続く段部形成工程で加工している状態を示す要部の縦断面図である。
【
図8】プレカール工程において加工している状態を示す要部の断面図である。
【
図9】カーリング工程においてカーリングツールで加工している状態を示す断面図である。
【
図11】カーリング工程の開始初期の状態を示す要部の断面図である。
【
図12】カーリング工程でカール部を形成した状態を示す要部の断面図である。
【
図13】テーパ状中間筒体がカーリング工程で変形しやすい場合にカーリングツールの位置を
図11に示す状態から移動して成形している状態を示す要部の断面図である。
【
図14】
図13に示す加工により形成されたカール部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る金属製容器の実施形態を図面を参照して説明する。
一実施形態の金属製容器は、
図1に示すように広口の金属製カップ1である。この金属製カップ1は、
図1に示すように、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板をプレス成形により有底筒状に形成したものであり、底部2の直径より開口部3の直径が大きく、全体として底部2から開口部3に向けて漸次拡径するテーパ状の胴部4を有し、開口部3に、エッジEを含む端部を半径方向外方に巻き込んでなるカール部5が形成されている。この金属製カップ1の半径方向の中心を中心軸Cとする。
【0024】
底部2は、凹状に湾曲したドーム部6、その外周縁に連続し、中心軸方向下方に向かうにしたがって漸次拡径する内側テーパ壁部7、内側テーパ壁部7の外周縁に連続し、金属製カップ1をテーブル等に置いたときに接地部となるリム部8、リム部8の外周端から胴部4の最下端につながるテーパ状の立ち上がり部9を連続させた形状である。ドーム部6は、中心軸C上の位置において、リム部8先端からの距離が最も大きい凹状である。リム部8は、中心軸C周りにリング状に形成され、中心軸Cの下方に向けて凸となる屈曲面に形成され、その最も突出位置が接地部となる。リム部8の屈曲面の最外周端は胴部4の最も径の小さい最下端よりも小径に形成されており、このリム部8の最外周端と胴部4の最下端との間が立ち上がり部9により連結されている。
【0025】
胴部4は、底部2付近と開口部3付近とに中心軸Cに沿うストレート状の円筒部11,12が形成されており、底部2から連続する下部円筒部11の上端に、わずかな範囲で下部段部13が形成されるとともに、カール部5に連続する上部円筒部12の下端にも、わずかな範囲で上部段部14が形成され、これら下部段部13の上端と上部段部14の下端との間が、下方から上方に向けて漸次直径が大きくなるテーパ筒部15に形成されている。
【0026】
カール部5は、
図2に示すように、中心軸Cを通る断面(縦断面)において、胴部4における上部円筒部12の上端に連続し上方に向かうにしたがって漸次拡径する上部内周側屈曲部71と、上部内周側屈曲部71の外周端に連続し上部内周側屈曲部71との間で天頂折り返し部72を形成するとともに下方に向けて屈曲する上部外周側屈曲部73と、上部外周側屈曲部73の外周端に連続し斜め下方に向けて凸となる下部屈曲部74と、下部屈曲部74に連続しエッジEを有するカール端部75とが連続して形成されている。上部内周側屈曲部71の後半部分から上部外周側屈曲部73の前半部分にかけて配置される天頂折り返し部72の中間位置がカール部5において最も上端位置に配置され、下部屈曲部74の後半部分がカール部5において最も下端位置に配置されている。
【0027】
また、カール部5の始端部に連続する胴部4の上部円筒部12の上端部の外面とカール部5の外面側におけるエッジEとの間に隙間gが形成されるとともに、エッジEを含むカール端部75が胴部4の中心軸Cに直交する平面に対して中心軸Cに向かうにしたがって上り勾配となるように傾斜している。このカール端部75は下部屈曲部74に連続しており、中心軸Cを通る縦断面において、下方に凸となるようにわずかに湾曲しているが、下部屈曲部74の曲率半径R5より大きく、長さも短いため、下部屈曲部74の終端からほぼ直線状に延びているとみなしてよい。
【0028】
このカール部5は、例えば、カール部5の直径(開口端部の外径)D1が75mm以上100mm以下、上部円筒部12の直径D4が70mm以上95mm以下、カール部5の半径方向の厚さTが1.8mm以上5.0mm以下、金属製カップ1の中心軸Cに沿うカール部5の高さWが1.2mm以上4.0mm以下である。この場合、WはTより小さい(W<T)。また、胴部4の上部円筒部12の上端部の外面とカール部5の外面側におけるエッジEとの間の隙間gは、中心軸Cに直交する平面に沿う寸法Bが0.1mm以上2.0mm以下であり、好ましくは0.3mm以上1.6mm以下である。
【0029】
また、カール部5の下端からカール部5の外面側におけるエッジEまでの中心軸に沿う高さXは0.1mm以上2.0mm以下であり、好ましくは0.3mm以上1.5mm以下である。この場合、XとBとは、カール部5の高さW、幅Tに対して、(1/20)×W<X<(1/2)×W、かつ、(1/20)×T<B<(1/2)×Tの関係に設定される。
【0030】
各屈曲部については、それぞれ外面の曲率半径で、上部内周側屈曲部71の曲率半径R1が0.8mm以上5.0mm以下である。上部外周側屈曲部73は、大きく分けて前半部分と後半部分との二つの曲率部からなり、前半部分の曲率半径R2が1.0mm以上3.0mm、好ましくは1.3mm以上2.5mm以下であり、後半部分の曲率半径R3が1.3mm以上5.0mm以下であり、好ましくは1.5mm以上3.8mm以下である。下部屈曲部74も、大きく分けて前半部分と後半部分との二つの曲率部からなり、前半部分の曲率半径R4が0.5mm以上2.5mm以下である。後半部分の曲率半径R5が0.8mm以上10mm以下であり、1.0mm以上5.0mm以下が好ましい。カール部5の最下端部位の外面は曲率半径R5の下部屈曲部74により形成される。
また、胴部4の中心軸Cに直交する平面に対するカール端部75の傾斜角度θ1は5°以上80°以下に設定されており、好ましくは10°以上50°以下である。
【0031】
その他の諸寸法は必ずしも限定されるものではないが、例えば、接地部の直径D2が45mm以上60mm以下、全体の高さH1が80mm以上180mm以下、ドーム部6の深さH2が1mm以上15mm以下、下部円筒部11の直径D3が50mm以上70mm以下、底面から下部段部13の下端までの高さH3が8mm以上25mm以下、カール部5の上端から上部段部14の上端までの長さH4が8mm以上20mm以下、水平面に対するテーパ筒部15の角度θ2が80°以上88°以下に形成される。
【0032】
次に、この金属製カップ1の製造方法について説明する。
この金属製カップ1は、金属板を絞りしごき加工することにより有底円筒状の筒体21を形成する筒体形成工程と、筒体形成工程後に、外径の異なる複数のパンチ40~43を外径の小さい順に用いながら、前記筒体21に開口部22側から前記パンチ40~43を押し込んで、前記筒体21の胴部23を、底部2側より開口部22側に向けて徐々に拡径してテーパ状のテーパ状中間筒体50を形成する拡径工程と、この拡径工程により形成されたテーパ状中間筒体50の開口端部にカール部5を形成するカール工程と、を有する工程を経て製造される。以下、工程順に説明する。
【0033】
[筒体形成工程]
筒体形成工程では、
図3(a)(b)に示すように、アルミニウム又はアルミニウム合金製の板材を打ち抜いて絞り加工することにより、次工程の筒体21よりも大径で浅いカップ25を形成するカップ形成工程と、このカップ25に絞り加工及びしごき加工(絞りしごき加工)を加えて、カップ25より小径で図に示すように所定高さの有底円筒状の筒体21を形成する絞りしごき工程とを有する。この絞りしごき工程では、筒体21の底部2は、金属製カップ1の底部2の最終形状に仕上げられ、ドーム部6、内側テーパ壁部7、リム部8、テーパ状の立ち上がり部9を有している。
【0034】
[拡径工程]
拡径工程は、複数の工程からなり、筒体21の胴部23に底部2側の直径より開口部22側の直径が大きい段部を形成する段部形成工程と、段部を押し広げながらテーパ面状に整形する整形工程とを、順次繰り返すことにより、
図3(c)に示すテーパ状中間筒体50を形成する。
この場合、筒体21の最下部に下部段部13を形成する下部段部形成工程の後、その下部段部13の若干上方位置に第1段部を形成する第1段部形成工程、その第1段部を整形する第1整形工程、その整形面の上端付近に第2段部を形成する第2段部形成工程、第2段部を整形する第2整形工程、・・・というように、最初の下部段部形成後は、段部形成工程と整形工程とを交互に施工し、一つの段部を形成して、その段部を整形しながら、全体をテーパ状に形成する。また、筒体21の最上部においては、最後に上部段部14を形成するための上部段部形成工程を施工し、これにより拡径工程を終了する。
【0035】
以下、その詳細を説明する。なお、この拡径工程においては、筒体21の形状が徐々に変化していくが、拡径工程の最後に形成される筒体をテーパ状中間筒体50とし、それまでの途中の工程で形成される筒体については、筒体形成工程で用いた筒体と同一の符号21を付して説明する。
【0036】
(段部形成工程)
段部形成工程は、
図4~
図7に示すように、直径の異なる複数の段付きパンチ40~42と、2個の段無しパンチ43とが用いられる(図には直径の異なる3個の段付きパンチ40~42と、1個の段無しパンチ43のみ示されている。以下では、段付きパンチを符号40~42、段無しパンチを符号43により代表して説明する)。
【0037】
段付きパンチ40~42は、
図5及び
図7(
図4及び
図6にも二点鎖線で示している)に示すように、ガイド部44と、ガイド部44より大径の成形部45とを連続させた段付き形状に形成されており、ガイド部44を先端側に配置している。ガイド部44は、筒体21内に先行して挿入されるが、このガイド部44では筒体21が成形されることはなく、筒体21との芯合わせのために用いられる。
【0038】
これら段付きパンチ40~42のガイド部44の外周面は、先端側が丸面取り面46に形成され、その丸面取り面46の外周端からほぼストレートの円柱状外面47に形成されている。各段付きパンチ40~42のガイド部44の最大径は、自身の段付きパンチ40~42によって段部が形成される前の筒体21の開口部の内径よりわずかに小さく形成される。成形部45は、ガイド部44の円柱状外面47から半径方向外方に突出するように凸状湾曲面に形成され、その最大直径がガイド部44の円柱状外面47の直径より大きく形成されている。そして、その成形部45により筒体21の底部2側より開口部22側の直径が大きい段部51~53(
図4~
図7において、それぞれ成形部位の異なる段部を符号51~53にて示す)が形成される。
【0039】
段無しパンチ43は、
図4に示すように、段付きパンチ40~42のようなガイド部44を有しない成形部48のみからなるパンチである。
そして、2個の段無しパンチ43は、段付きパンチ40~42のうちの最も直径の小さい段付きパンチ40の成形部45と同じかそれよりわずかに小さい直径に形成された下部段部用パンチ43と、整形パンチ61うちの最も直径の大きい整形パンチ61の整形面65の最大直径と同じかそれよりわずかに小さい直径に形成された上部段部用パンチ(図示略、段無しパンチを代表して符号43により示す)とから構成される。なお、これら段無しパンチ43はガイド部44を有しないので、成形部48の凸状湾曲面48aが先端方向に延びて形成されており、その最小径が、段無しパンチ43により成形される前の筒体21の内径より小さく形成されている。
【0040】
(整形工程)
整形工程では、段部形成工程で形成した段部52,53を滑らかなテーパ面状に整形する工程である。この整形工程で用いられる整形パンチ61は、
図6に示すように、先端部が丸面取り面62に形成されるとともに、丸面取り面62の後端に先端から後方に向かうにしたがって漸次拡大するテーパ状面63が連続し、そのテーパ状面63の後端面に大きな曲率半径の凸状湾曲面64が形成されている。そして、そのテーパ状面63の途中位置から凸状湾曲面64の前半部分にかけた領域が整形面65とされている。
【0041】
この場合、整形面65は、その先端を符号65aで示したように、段部形成工程で形成された段部52よりも先端方向に十分離れた位置から整形できるように先端方向に長く形成されており、一方、整形面65の後端65bが段部形成工程で形成された段部52,53の若干後方位置まで整形できる長さに形成されている。したがって、この整形面65は、ストレートのテーパ面ではなく、半径方向外方にわずかに膨らむように湾曲した凸状湾曲面64を有するテーパ面である。このような形状とすることにより、段部52,53の前後を含む広い領域を半径方向外方に押し広げたときの弾性回復(スプリングバック)を抑えることができ、筒体21の胴部23を確実にテーパ面に形成することができる。したがって、この整形工程では、段部形成工程で形成した段部52,53の前後の広い領域を滑らかなテーパ状に整形することができる。
【0042】
これら段部形成工程と整形工程とにおいて、まず、胴部4の最も下方に配置されている下部段部13を成形する(下部段部形成工程)。この下部段部13は、最も直径の小さい段付きパンチ40と下部段部用パンチ43とにより形成され、最初に段付きパンチ40により底部2付近に段部(このときの段部を初期段部とする)51を形成する。この場合、筒体21の底面に近い位置での加工であり、段付きパンチ40で底部2に接近した位置まで加工すると、先に加工した底部2にガイド部44が衝突して変形させるおそれがあるため、底部2に到達しない位置まで段付きパンチ40で加工する。この段付きパンチ40で加工した状態を
図4の二点鎖線で示している。次いで、段無しパンチ(下部段部用パンチ)43を筒体21に嵌合して、この段付きパンチ40で形成した初期段部51の位置を下方に押し下げるように、初期段部51の下方を拡径しながら加工して、下部段部13を形成する。この段無しパンチ43は、段付きパンチ40の成形部45と同じかわずかに小さい外径に形成されているため、段部52により拡径された筒体21の胴部23に嵌合され、該胴部23と芯合わせされる。また、この段無しパンチ43は、ガイド部44を有していないため、段付きパンチ40よりも底部2近くまで接近させることができる。
なお、この下部段部用パンチ43により形成される下部段部13より下方位置は、下部段部形成工程を含め、拡径工程時にチャック部70により筒体21の外周面が保持される部分であり、テーパ状に形成しないで下部円筒部11をストレートのまま残しておく。
【0043】
次に、二番目に直径の小さい段付きパンチ(便宜的に
図5により説明する)41により、下部段部13(
図5には図示略)の若干上方位置に第1段部52を形成する。このとき、段付きパンチ41のガイド部44が下部段部13の大径部内に挿入して、パンチ41の筒体21への芯合わせがなされる。
【0044】
そして、この第1段部52を形成した後、第1段部52の前後が整形パンチ61によって滑らかなテーパ状に整形される。この場合、前述したように整形パンチ61の整形面65がストレートのテーパ面ではなく、半径方向外方にわずかに膨らんだ湾曲面状に形成されているので、前工程で形成された段部52を半径内方から十分に押し広げて、その痕跡を有効に消すことができ、滑らかなテーパ状に形成することができる。
【0045】
そして、この段部形成工程と整形工程とを必要回数繰り返した後、最後に、上部段部用パンチ(図示略)によって筒体21の開口部22の若干下方位置に上部段部14を形成する(上部段部形成工程)。この上部段部用パンチも下部段部用パンチ43と同様、ガイド部を有しない成形部48のみのパンチである。この上部段部形成パンチは、最も直径の大きい整形パンチ61の整形面65と同じかわずかに小さい直径に形成されているので、それまでに形成した筒体21の開口部から抵抗なく嵌合して芯合わせされる。そして、整形パンチ61で整形したテーパ面の最上部を加工して、上部段部14を形成する。上部段部14の上方はストレートの円筒状の上部円筒部12´(
図9の二点鎖線参照)となる。
【0046】
この上部段部14を形成した後は上部円筒部12´をストレートのまま残しておくため整形工程を実施しないが、上部段部14を段付きパンチ41,42により形成すると、その前に実施された整形工程で整形したテーパ状部分がガイド部44により変形させられてしまうため、ガイド部44を有しないパンチ(上部段部用パンチ)を用いることにより上部段部14の下方部位を変形させないようにしている。
したがって、この一連の拡径工程によって形成されるテーパ状中間筒体50は、その底部2付近が中心軸Cに沿うストレート状の下部円筒部11に形成され、開口部22が同じくストレート状の上部円筒部12´に形成される。
【0047】
[カール部成形工程]
拡径工程の後、テーパ状中間筒体50の上部円筒部12´のエッジEを含む端部を径方向の外側に折り返しながら巻回することによりカール部5を形成する。
このカール部成形工程は、上部円筒部12´の先端部を特定の曲率半径で半径外方に押し広げるように加工するプレカール工程と、プレカール工程後に、エッジEを反転させるように、押し広げた部分より下方部分を丸めるカーリング工程との二段階に分けて行われる。
【0048】
(プレカール工程)
プレカール工程においては、
図8に示すプレカール型80が用いられる。このプレカール型80は、上部円筒部12´内に挿入されるガイド部81と、ガイド部81の基端部で周方向に沿う環状に形成された成形用凹部82とを備える。この成形用凹溝82は、軸線Cを通る縦断面において円弧状凹面に形成されており、その成形用凹溝82を上部円筒部12´の開口端(エッジE)に対向させた状態でこれらを同軸上に配置し、中心軸Cに沿ってプレカール型80のガイド部81を上部円筒部12´内に挿入し、成形用凹部82の内周側に上部円筒部12´の開口端部を導入して押圧することにより、エッジEを含む端部を成形用凹溝82の内周面に沿って押し広げるように加工して、円弧状に屈曲したプレカール部83を形成する。
なお、このプレカール工程でも、エッジE付近は加工が難しく、わずかな曲率かほぼ直線状に形成される。
【0049】
(カーリング工程)
カーリング工程では、
図9に示すように、複数のカーリングツール85が用いられる。このカーリングツール85は、中心軸Cに交差する方向に沿う軸C1を中心に回転自在であり、テーパ状中間筒体50の周方向に等間隔で複数設けられている。
図10に示す例では、6個のカーリングツール85が設けられており、それぞれの軸C1がテーパ状中間筒体50の中心軸Cに直交し、中心軸Cを中心として放射状に配置されている。
【0050】
各カーリングツール85は、カーリング成形のための成形用溝86が形成されている。この成形用溝86は、カーリングツール85の全周に周方向に連続して形成されており、カーリングツール85が
図9及び
図10に示す配置であることから、テーパ状中間筒体50の接線方向に沿って配置される。そして、
図11に示すように、この成形用溝86において、テーパ状中間筒体50の半径方向内側の側面にプレカール部83の基端部付近を当接させながら、成形用溝86に沿って巻回することにより、エッジEを含む端部を折り返しながらカール部5を形成する。
【0051】
この場合、成形用溝86は、断面円弧状の凹円弧面部87と、凹円弧面部87におけるテーパ状中間筒体50の半径方向内方側の側縁に連続し成形用溝86の開口幅を広げる方向に傾斜するテーパ面88と、凹円弧面部87におけるテーパ状中間筒体50の半径方向外方側の側縁に連続し軸C1にほぼ直交する平面部89とを有している。テーパ面88におけるテーパ状中間筒体50の半径方向内側の側縁には凸円弧面状の面取り部90がさらに連続している。
【0052】
そして、このカーリングツール85の成形用溝86の内面をテーパ状中間筒体50の開口端部に中心軸C方向に押し付けながら、上部円筒部12´の周囲を旋回させることにより、成形用溝86の内面によって上部円筒部12´のエッジEより若干下方部位の端部(プレカール部83の基端部付近)を拡開しながら折り返して、カール部5を形成する。
このとき、エッジE付近は予めプレカール工程によって円弧状に屈曲させられているので、エッジEが成形用溝86の内面に当接することなく移動して、
図12に示すように、小さなカール部5を円滑に成形することができる。また、このプレカール部83によりエッジE付近の剛性が高められているので、カーリング工程時に変形が抑制される。このプレカール部83は、カーリング工程後には、カール部5の下部屈曲部74の後半部分からカール端部75を形成し、わずかな形状変化は生じるが、ほぼプレカール工程時の形状が維持される。
【0053】
なお、このカール部成形工程では、テーパ状中間筒体50の胴体に対しても、プレカール工程ではプレカール型80が軸方向に押圧し、カーリング工程でもカーリングツール85が軸方向に押圧することになるが、テーパ状中間筒体50の開口部は中心軸Cに沿うストレートの上部円筒部12´により形成されているとともに、それまでの拡径工程を経たことによる加工硬化の効果も相俟って、座屈や変形が生じにくい。
【0054】
このようにして製造される金属製カップ1は、底部2及び開口部3付近に若干の長さのストレートの円筒部11,12が形成され、その間の胴部4の大部分が底部2から開口部3に向けて漸次拡径するテーパ状に形成されている。その製造方法においては、筒体21の底部2側より開口部22側の直径が大きい段部52,53を形成した後、その段部52,53を押し広げるようにテーパ状に整形するという工程を繰り返すことにより、胴部4の全体を滑らかなテーパ状に形成している。
【0055】
内周側から半径方向外方に金属材料を押し広げる加工となるので、しわが生じにくい。また、最初に段部52,53を形成してからテーパ状に整形しているので、段部52,53を形成せずにテーパ状に加工する場合に比べて割れの発生も少なくなる。このため、滑らかなテーパ状の胴部4を形成することができる。
【0056】
また、この金属製カップ1の底部2は、最初の段階で形成される有底円筒状の筒体21に形成した底部2をそのまま用いており、この底部2より上方部分を拡径加工している。したがって、筒体21を形成する工程(筒体形成工程)は、既存の飲料缶用の設備をそのまま用いて実施することができる。
【0057】
また、開口部3にはカール部5が形成されているため、口触りも滑らかである。特に、このカール部5は、高さWが幅Tより小さい(W<T)とともに、カール端部75が上り勾配に傾斜しているため、このカール端部75に触れる下唇もエッジE付近には触れにくく、したがって、違和感がなく、口当たりがよい。この場合、高さWが1.2mm以上4.0mm以下と比較的小さいことも、口当たりを良くする効果がある。なお、カール端部75の角度θ1が5°未満であると、下唇をカール部5に当てたときに、エッジE付近も唇に触れやすくなることから、口当たりの良さが低減する。その角度θ1が80°を超えるのは、カーリング加工が困難になる。
【0058】
また、カール部5の外面におけるエッジEの位置を(1/20)×W<X<(1/2)×W、かつ、(1/20)×T<B<(1/2)×Tに設定したことにより、良好な口当たりを確保しつつ、カール部内に侵入した水等の排出を容易にすることができる。Xが(1/20)×W以下、又はBが(1/2)×T以上であると、飲料を飲む際に下唇にエッジEが当たるおそれがある。一方、Xが(1/2)×W以上、又はBが(1/20)×T以下であると、カール部5内に侵入した水等を排出し難くなる。
【0059】
また、上部外周側屈曲部73の外面の曲率半径R2が1.0mm以上3.0mm以下、R3が1.3mm以上5.0mm以下と小さいことから、カール部5の高さWが小さいこととも相まって、カール部5の剛性が高く、広口のカップの開口部に適用しても変形等を生じることが防止される。
なお、カール部5のエッジEと胴部4の上部円筒部12の外面との間に隙間gが形成されているため、洗浄等によりカール部5内に水等が侵入した場合でも、速やかに排出することができる。この場合、カール端部75が傾斜しているが、その角度が小さく、隙間が大きいことから、内部の水等を容易に排出することができる。
【0060】
ところで、本実施形態のような広口(D1が75mm以上100mm以下)のテーパ状中間筒体50を複数個のカーリングツール85で成形する場合、カーリングツール85が当接した部分で局部的に押し広げられ、テーパ状中間筒体50の開口端部は真円でなく、各カーリングツール85の当接位置を角部とする多角形状に変形しやすい。実施形態のように6個のカーリングツール85によりカール成形する場合、テーパ状中間筒体50の開口端部は六角形状に変形する。
【0061】
若干の変形程度では問題ないが、テーパ状中間筒体50の上部円筒部12´の肉厚が薄い場合などが原因で大きく多角形状に変形する場合は、その変形の間は成形用溝86の凹円弧面部87に入り込まないように、
図11に示される位置よりもカーリングツール85を半径方向外方に配置して、カーリングツール85のテーパ面88の内周部でプレカール部83を受けるようにする。そして、中心軸C方向(
図13の矢印A方向)に押圧することにより、テーパ状中間筒体50のプレカール部83が鎖線で示す位置に変形した状態でもテーパ面88に当接した状態を維持する。その状態でさらに矢印Aで示すように押圧することにより、プレカール部83をテーパ面88から凹円弧面部87に案内して折り返すようにしている。これにより、カール成形時に開口端部が半径方向外方に逃げてしまって成形不良になったり、開口端部にクラックが生じたりする不具合の発生を防止し、所望の形状のカール部5を形成することができる。
このテーパ面88の中心軸C方向と平行な方向(垂直方向)に対する角度θ3は50°以上80°以下、テーパ状中間筒体50の半径方向に沿うテーパ面88の距離Lは0.1mm以上0.5mm以下が好ましい。
このようにして成形されたカール部5Aは、
図14に示すように、上部内周側屈曲部71の始端部が、カーリングツール85のテーパ面88で押されることにより、中心軸Cを通る縦断面でほぼ直線状をなすテーパ面部71aにより構成される。このテーパ面部71aの中心軸C方向と平行な方向(垂直方向)に対する角度θ4は5°以上40°以下となる。このほぼ直線状は、直線だけでなく、直線とみなし得る程度に小さい曲率である場合も含む。
【0062】
上記実施形態では、カール工程において、6個のカーリングツール85を用いたが、その個数は限定されない。3個以上あればよい。
また、プレカール工程は必ずしも設けなくでもよく、テーパ状中間筒体50の上部円筒部12´のエッジEをカーリングツール85の成形用溝86の内周面に当接させながらカーリングしてもよい。
また、拡径工程において、一つの段部を形成した後、この段部をテーパ面状に整形し、その後、その上方に新たな段部を形成してテーパ面状に整形するというように、段部形成工程と整形工程とを交互に繰り返したが、段部形成工程を複数回実施することにより、中心軸Cに沿って複数個の段部を形成した後、これら段部を底部側から1個ずつ順次整形することとしてもよい。また、2個以上の段部をまとめて整形することも可能である。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
C 中心軸
E エッジ
1 金属製カップ
2 底部
3 開口部
4 胴部
5 カール部
6 ドーム部
7 内側テーパ壁部
8 リム部
9 立ち上がり部
11 下部円筒部
12 上部円筒部
13 下部段部
14 上部段部
15 テーパ筒部
21 筒体
25 カップ
41,42 段付きパンチ
43 段無しパンチ(下部段部用パンチ)
44 ガイド部
45 成形部
47 円柱状外面
48 成形部
48a 凸状湾曲面
50 テーパ状中間筒体
51 段部(初期段部)
52,53 段部
61 整形パンチ
63 テーパ状面
64 凸状湾曲面
65 整形面
70 チャック部
71 上部内周側屈曲部
72 天頂折り返し部
73 上部外周側屈曲部
74 下部屈曲部
75 カール端部
80 プレカール型
81 ガイド部
82 成形用凹溝
83 プレカール部
85 カーリングツール
86 成形用溝
87 凹円弧面部
88 テーパ面部
89 平面部
90 面取り部