(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158429
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/14 20060101AFI20221006BHJP
B60N 2/18 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B60N2/14
B60N2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063328
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北島 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】小泉 勇太
(72)【発明者】
【氏名】稲熊 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】中川 茂
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA07
3B087BC18
3B087BD15
(57)【要約】
【課題】回転ロック機構のロック解除を、専用の電装部品を要することなく可能にすることにある。
【解決手段】シート本体20を回転移動させる回転機構と、回転機構によるシート本体20の回転移動を予め決められた位置でロックする回転ロック機構50とを備えた車両用シート装置10において、シート本体20には、乗員脚部側を支持可能なシートクッション20Aの前部(21)の座面角度を変更する角度変更機構23が設けられているとともに、回転ロック機構50は、角度変更機構23の動作によってロックを解除できるように構成されている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体を回転移動させる回転機構と、前記回転機構による前記シート本体の回転移動を予め決められた位置でロックする回転ロック機構とを備えた車両用シート装置において、
前記シート本体には、乗員脚部側を支持可能なシートクッションの前部の座面角度を変更する角度変更機構が設けられているとともに、前記回転ロック機構は、前記角度変更機構の動作によってロックを解除できるように構成されている車両用シート装置。
【請求項2】
前記回転ロック機構は、前記角度変更機構の動作に連動するリンクと、シート本体側に設けられたロック部と、前記シート本体の回転移動に追従しない被ロック部とを有し、
前記ロック部が被ロック部に止められることにより、前記回転機構による前記シート本体の回転がロックされるとともに、
前記角度変更機構の動作が前記リンクを介して機構的に前記ロック部に伝達されて、前記ロック部が前記被ロック部から外れるように動かされることにより、前記回転ロック機構のロックが解除される請求項1に記載の車両用シート装置。
【請求項3】
前記シートクッションは、その前部をなす第一クッション部と、前記第一クッション部の後方に位置して着座した乗員のヒップポイントを支持可能な第二クッション部とを有して、前記シート本体を支持する支持部材に配設されており、
前記第一クッション部側に前記リンクが設けられているとともに、前記支持部材に前記ロック部が設けられている請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項4】
前記シート本体を車両前向きの一般位置とドア開口部を向く乗降位置との間で回転移動させる前記回転機構を備える請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用シート装置。
【請求項5】
前記シートクッションは、その前部をなす第一クッション部と、前記第一クッション部の後方に位置して着座した乗員のヒップポイントを支持可能な第二クッション部とを有し、
一般位置の前記シート本体において、前記角度変更機構によって第一クッション部が前記第二クッション部に対して上側に傾斜する上向き姿勢となる際の動作によって、前記回転ロック機構のロックが解除される請求項4に記載の車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート本体を回転移動させる回転機構と、回転機構によるシート本体の回転移動を予め決められた位置でロックする回転ロック機構とを備えた車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用シート装置が特許文献1に記載されている。この車両用シート装置の回転機構は、シート本体を支持する回転台座と、回転台座を支承するベース板とを有し、回転台座をベース板上で回転させられるように構成されている。またベース板に対する回転台座の回転は予め決められた位置でロックされる。即ち、回転台座が予め決められた位置に到達することで、回転台座に設けられた軸キャッチャーのキャッチャー口に、ベース板に設けられた回転ロック棒が押し込まれる。そしてキャッチャー口が閉じて軸キャッチャーに回転ロック棒が保持されることにより、ベース板に対する回転台座の回転がロックされる。また回転台座に設けられた電動オープナーを作動させてキャッチャー口を開放することにより、ベース板に対する回転台座の回転移動が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記車両用シート装置では、軸キャッチャーと回転ロック棒と電動オープナーとから回転ロック機構が構成され、軸キャッチャーが回転ロック棒を保持することで、シート本体の回転移動をロックする。しかし公知技術では、回転ロック機構のロック解除に電動オープナーという専用の電装部品を使用するため、車両用シート装置のコストアップになる。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、回転ロック機構のロック解除を、専用の電装部品を要することなく可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用シート装置は、シート本体を回転移動させる回転機構と、回転機構によるシート本体の回転移動を予め決められた位置でロックする回転ロック機構とを備えている。この種のシート構成においては、回転ロック機構のロック解除を、専用の電装部品を要することなく可能にすることが望ましい。そこで本発明のシート本体には、乗員脚部側を支持可能なシートクッションの前部の座面角度を変更する角度変更機構が設けられているとともに、回転ロック機構は、角度変更機構の動作によってロックを解除できるように構成されている。本発明では、角度変更機構の動作を利用して回転ロック機構のロック解除を行えるため、ロック解除専用の電装部品を省略することが可能となる。
【0006】
第2発明の車両用シート装置は、第1発明の車両用シート装置において、回転ロック機構は、角度変更機構の動作に連動するリンクと、シート本体側に設けられたロック部と、シート本体の回転移動に追従しない被ロック部とを有している。そしてロック部が被ロック部に止められることにより、回転機構によるシート本体の回転がロックされるとともに、角度変更機構の動作がリンクを介して機構的にロック部に伝達されて、ロック部が被ロック部から外れるように動かされることにより、回転ロック機構のロックが解除される。本発明の回転ロック機構のロックは、シート本体側に設けられたロック部が被ロック部にロックされることでなされ、ロック解除は、ロック部が被ロック部から外れるように動かされることでなされる。そこで本発明では、角度変更機構の動作がリンクを介して機構的に伝達されることで、ロック部が被ロック部から外れるように構成されているため、回転ロック機構のロック解除をより確実に行うことができる。
【0007】
第3発明の車両用シート装置は、第2発明の車両用シート装置において、シートクッションは、その前部をなす第一クッション部と、第一クッション部の後方に位置して着座した乗員のヒップポイントを支持可能な第二クッション部とを有して、シート本体を支持する支持部材に配設されている。そして第一クッション部側にリンクが設けられているとともに、支持部材にロック部が設けられている。本発明では、角度変更機構によって第一クッション部の座面角度を変更する構成となっている。そして第一クッション部側に設けられたリンクによって、支持部材に設けられたロック部を第一クッション部の姿勢に応じて動かすことができる。
【0008】
第4発明の車両用シート装置は、第1発明~第3発明のいずれかの車両用シート装置において、シート本体を車両前向きの一般位置とドア開口部を向く乗降位置との間で回転移動させる回転機構を備える。本発明では、シート本体を、回転機構によって一般位置と乗降位置との間で回転移動させることができ、優れた乗降性の確保に資する構成となる。
【0009】
第5発明の車両用シート装置は、第4発明の車両用シート装置において、シートクッションは、その前部をなす第一クッション部と、第一クッション部の後方に位置して着座した乗員のヒップポイントを支持可能な第二クッション部とを有している。そして一般位置のシート本体において、角度変更機構によって第一クッション部が第二クッション部に対して上側に傾斜する上向き姿勢となる際の動作によって、回転ロック機構のロックが解除される。本発明では、一般位置のシート本体において、第一クッション部を上向き姿勢にすることで、回転ロック機構のロックが解除されてシート本体の回転移動が許容される。そしてシート本体が回転移動する間において、上向き姿勢の第一クッション部によって乗員脚部を支持することにより、乗員脚部とフロア等との意図しない接触を極力回避することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る第1発明によれば、回転ロック機構のロック解除を、専用の電装部品を要することなく可能にすることができる。また第2発明によれば、回転ロック機構のロック解除をより確実に行うことができる。また第3発明によれば、回転ロック機構のロック解除を更に確実に行うことができる。また第4発明によれば、乗降性を確保しつつ、回転ロック機構のロック解除を、専用の電装部品を要することなく可能にすることができる。そして第5発明によれば、乗降性をより確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一般位置の車両用シート装置の概略斜視図である。
【
図2】乗降位置の車両用シート装置の概略斜視図である。
【
図3】一般位置の車両用シート装置の概略側面図である。
【
図4】シートクッションの骨格部分と回転機構を示す概略透視上面図である。
【
図5】シートクッションの骨格部分と回転ロック機構を示す概略側面図である。
【
図6】回転移動の際の車両用シート装置の概略側面図である。
【
図7】乗降位置の車両用シート装置の概略側面図である。
【
図8】オットマン機構を作動させた車両用シート装置の概略側面図である。
【
図10】ロック解除の際の回転ロック機構を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図10を参照して説明する。各図には、便宜上、車両の前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示する。また
図5及び
図10では、シートクッションと回転ロック機構の主構成について図示し、他の構成を簡略化して図示する。そして
図3、
図6~
図8では、シート本体の主構成を図示し、他の構成を簡略化又は省略して図示する。
【0013】
[車両用シート装置の概要]
図1に示す車両用シート装置10は、車両の車室内の前部左側に設置されるシート装置である。この車両用シート装置10の前側にはフロントガラスFGが設けられ、車両用シート装置10の左側にはドア開口部Dが設けられている。そして車両用シート装置10は、シート本体20を車両前後方向にスライドさせる前後スライド機構30と、その前後スライド機構30の上側でシート本体20を回転させる回転機構40と、シート本体20の回転移動をロックする回転ロック機構50とを備えている。ここで前後スライド機構30は、車室内のフロアF上に固定されて車両前後方向に延びる左右一対のロアレール32と、左右一対のロアレール32に沿って前後スライドする左右の一対のアッパレール33とを備えている(
図1では、便宜上、各ロアレールに共通の符号32を付し、各アッパレールに共通の符号33を付す)。各アッパレール33は、多段式ロック機構(図示省略)にて、各ロアレール32に対して多段階でスライドロックできるように構成されている。
【0014】
また
図1に示すシート本体20は、座部となるシートクッション20Aと、背凭れとなるシートバック20Bとを備え、シートクッション20Aの後部からシートバック20Bが起立している。このシートクッション20Aは、後述するように前部(21)の座面角度を変更できるように構成されており、さらに前端部にはオットマン機構26が設けられている。またシートクッション20Aとシートバック20Bとの連結位置にはシートバック20Bの傾斜角度(リクライニング角度)を調整するリクライナRが設けられている。
【0015】
そして車両用シート装置10では、
図1及び
図2に示すように、回転機構40によってシート本体20を車両前向きの一般位置からドア開口部Dを向く乗降位置に回転移動させる。即ち、回転機構40は、後述するように、前後スライド機構30上のベース部材41に対してシート本体20を支持する支持部材42を回転移動させられるように構成されている。また回転機構40によるシート本体20の回転移動は、回転ロック機構50によって予め決められた位置、即ち、
図1に示す一般位置でロックされている。このためシート本体20の回転移動の際に、回転ロック機構50のロックを解除するのであるが、このときコストアップの抑制の観点などからロック解除に専用の電装部品を使用することは極力回避すべきである。そこで本実施例では、後述する構成によって、回転ロック機構50のロック解除を、専用の電装部品を要することなく可能にすることとした。以下、車両用シート装置10の各構成について詳述する。
【0016】
[シートクッション]
図1~
図3に示すシートクッション20Aは、上方視で概ね矩形に形成されており、第一クッション部21と、第二クッション部22と、第一クッション部21の座面角度を変更する角度変更機構23と、オットマン機構26とを備えている。
図3に示す第一クッション部21は、一般位置を基準としてシートクッション20Aの前部をなす部分であり、着座した乗員CMの脚部側(乗員脚部側)、特に膝部の上側を支持することが可能である。また第二クッション部22は、シートクッション20Aの後部をなす部分であり、着座状態の乗員CMのヒップポイントHPを支持することが可能である。ここで第一クッション部21と第二クッション部22の寸法は、例えばSAE規格に準拠した乗員模型を基に設定することが可能である。即ち、AM95乗員模型とJF05乗員模型の間のサイズの乗員模型を選択し、この乗員模型のヒップポイントや脚部の位置を基に両クッション部21,22の寸法を設定することができる。
【0017】
また第一クッション部21は、
図3及び
図4を参照して、左右の骨格をなす一対の第一フレーム21Fを有している(
図4では、便宜上、左右の第一フレームに共通の符号21Fを付す)。そして各第一フレーム21Fの上には、これらの間に渡された板材又はワイヤ材(図示省略)を介して、乗員を弾性的に支持する第一弾性部21P(カバーで被覆されたパッド)が配設されている。また第二クッション部22も、左右の骨格をなす一対の第二フレーム22Fと、第二弾性部22Pとを有している(
図4では、便宜上、左右の第二フレームに共通の符号22Fを付す)。そして第一クッション部21の各第一フレーム21Fと、第二クッション部22の各第二フレーム22Fとは、後述する角度変更機構23を介して回動可能に連結されている。
【0018】
[角度変更機構]
角度変更機構23は、
図4を参照して、第二クッション部22に対して第一クッション部21の座面角度を変えられるように連結する機構である。この角度変更機構23は、前部回転軸24と前部駆動部25とから構成されている。即ち、第一クッション部21の左右の第一フレーム21Fの後端部に、シート幅方向に延びる前部回転軸24が固定され、この前部回転軸24は、第二クッション部22の左右の第二フレーム22Fの前端部に回動可能に連結されている。そして第二フレーム22Fには前部駆動部25が固定されており、この前部駆動部25にて前部回転軸24を軸心周りに回転させることで、
図5に示すように第一フレーム21Fを第二フレーム22Fに対して上下回動させられるようになっている。
【0019】
そして
図5~
図7を参照して、シートクッション20Aでは、その前部をなす第一クッション部21だけを、角度変更機構23によって第二クッション部22に対して上下回動させられるようになっている。即ち、第一クッション部21は、
図5に示す第一フレーム21Fを回動させることにより、上向き姿勢(図中Xで示す姿勢)と下向き姿勢(図中Yで示す姿勢)との間で調節可能となっている。そして
図5では、第一クッション部21をやや下側に向けた通常姿勢として、第一クッション部21の座面角度を、
図3に示す第二クッション部22の座面角度に合わせている。また
図6では、第一クッション部21が、第二クッション部22に対して上側に傾斜する上向き姿勢となっている。また
図7では、第一クッション部21が、第二クッション部22に対して下側に傾斜する下向き姿勢となっている
【0020】
ここで
図5に示す第一クッション部21の各第一フレーム21Fの姿勢は、図示しない制御部によって制御可能であり、また図示しない操作部を操作することでも調節可能である。例えば制御部による制御の場合には、後述する回転機構40の作動状況、ドア開口部Dの開閉情報、乗員を検知するセンサ(図示省略)からの情報等が制御部に入力される。そして制御部によって、乗員CMが降車又は乗車するかを判定し、この判定結果に基づいて角度変更機構23の前部駆動部25を作動させることが可能となっている。そして第一クッション部21の上下回動の際には、
図6及び
図7を参照して、シートバック20B及び第二クッション部22の姿勢を維持、即ち、第二クッション部22の座面角度やトルソ角θを一定に維持しておくことが可能となっている。
【0021】
[オットマン機構]
図3及び
図8に示すオットマン機構26は、乗員脚部(膝下部分)を押し上げ可能な機構であり、第一クッション部21の前端部に上下回動可能に連結されている。このオットマン機構26は、
図3及び
図4を参照して、オットマン本体27と、駆動機構(オットマン回転軸28,オットマン駆動部29)とを備えている。オットマン本体27は、その骨格をなす左右一対のリンクアーム271と、各リンクアーム271間に渡された支持板272とを有している(
図4では、便宜上、左右のリンクアームに共通の符号271を付す)。これら各リンクアーム271と支持板272上には、オットマン用の弾性部27Pが配設されている。またオットマン本体27の左右のリンクアーム271の後端部には、それぞれシート幅方向に延びるオットマン回転軸28が固定され、各オットマン回転軸28は、第一クッション部21の左右の第一フレーム21Fの前端部に回動可能に連結されている。そしてオットマン回転軸28を、第一フレーム21Fに固定されたオットマン駆動部29にて軸心周りに回転させる。こうすることでオットマン本体27の各リンクアーム271を、
図3及び
図8に示すように、第一クッション部21の各第一フレーム21Fに対して上下回動させられるようになっている。
【0022】
そしてオットマン本体27は、オットマン用の駆動機構によって、
図3に示す展開位置と、
図8に示す格納位置の間で移動することができる。このオットマン本体27の位置調整は、図示しない制御部によって制御可能であり、また図示しない操作部を操作することでも調節可能である。そして
図8に示す展開位置のオットマン本体27は、一般位置を基準として、第一クッション部21の第一フレーム21Fに対して前側に延びた状態となり、乗員脚部を押し上げることが可能となる。また
図3に示す格納位置のオットマン本体27は、シートクッション20Aの下側に延びた状態となって、乗員脚部に極力接しない位置に配置される。即ち、格納位置のオットマン本体27では、その骨格をなす各リンクアーム271が、第一クッション部21(第一弾性部21P)前端から垂直に下方に延びる仮想線VLよりも車両後方位置に配置される。
【0023】
[回転機構]
図1及び
図2に示す回転機構40は、シート本体20を一般位置と乗降位置との間で回転移動させる機構であり、ベース部材41と支持部材42との間に配設されている。ここでベース部材41は、シート本体20の回転移動に追従しない部位であり、左右のアッパレール33間に渡された上方視で矩形の板材で構成されている。また支持部材42は、シート本体20を支持する上方視で矩形の部材であり、シート本体20の回転移動に追従することができる。そして回転機構40は、
図9に示すように、ベース部材41上に固定された内輪43と、内輪43(外周側)に対して回転可能に支持された外輪44とを備え、この外輪44の上に支持部材42が固定されている。またベース部材41又は支持部材42には、内輪43に対して外輪44を回転させる駆動部(図示省略)が設けられている。これにより、支持部材42に支持されたシート本体20を、ベース部材41に対して内輪43及び外輪44の軸心回りに回転(上方視で略90°回転)させられるようになっている。そして回転機構40によるシート本体20の回転移動は、後述する回転ロック機構50によってロックすることが可能となっている。
【0024】
[回転ロック機構]
図1及び
図5に示す回転ロック機構50は、回転機構40によるシート本体20の回転移動を予め決められた位置、即ち、一般位置でロックする機構である。この回転ロック機構50は、シート本体20側に設けられたロック部51と、シート本体20の回転移動に追従しない被ロック部52と、後述するリンク53とを有している。ここで被ロック部52は、回転機構40のベース部材41の車両左側に設けられ、車幅方向に延びる横ピン521と、この横ピン521の左右端から下側に延びてベース部材41に固定されている縦ピン522とから構成されている。またロック部51は、一般位置のシート本体20を基準として前後方向に長尺な部材であり、支持部材42の左側部に上下回動可能に設けられている。このロック部51の後端部には、下側に屈曲する係止部511が設けられ、ロック部51の前端部の近傍位置には、板状の荷重受け部512が設けられている。そしてロック部51は、その後端部と前端部の中央部分に挿設された回転中心ピン513を介して支持部材42に上下回動可能に連結されている。
【0025】
そして
図1及び
図5に示すようにシート本体20が一般位置にある場合、回転ロック機構50のロック部51は、図示しない付勢部によって後端部が下方に付勢される。これによりロック部51の後端部が下回動し、この後端部に設けられた係止部511が被ロック部52の横ピン521に係止される(
図5の実線で示す状態を参照)。こうしてロック部51が被ロック部52に止められて、このロック部51を備えた支持部材42がベース部材41に対して回転移動不能となることにより、回転機構40によるシート本体20の回転移動がロックされる。また係止状態においてロック部51の前端部が上方を向き、この前端部に設けられた荷重受け部512が上方位置に配置される。そして荷重受け部512が外力により下側に押圧されると、ロック部51の後端部は付勢力に抗して上回動し、これにより係止部511が被ロック部52の横ピン521から外れるようになる(
図5の破線で示す状態を参照)。こうしてロック部51が被ロック部52から外れるように動いて、回転ロック機構50のロックが解除されることにより、シート本体20を支持する支持部材42がベース部材41に対して回転移動可能となる。
【0026】
[回転ロック機構のロック解除]
図1及び
図2を参照して、後述の乗員降車時においては、一般位置のシート本体20を回転機構40にて乗降位置に回転移動させ、シート本体20上の乗員をドア開口部Dに向ける。このとき回転ロック機構50のロックを解除して、一般位置のシート本体20の回転移動を可能にする。この種の構成では、コストアップの抑制の観点などから、回転ロック機構50のロック解除に専用の電装部品を使用することは極力回避すべきである。
【0027】
[リンクによるロック解除]
そこで車両用シート装置10には、
図4及び
図5に示すように、シートクッション20Aの前部の座面角度を変更する角度変更機構23が設けられている。そして回転ロック機構50は、角度変更機構23の動作によってロックを解除できるように構成されている。即ち、回転ロック機構50には、角度変更機構23の動作に連動するリンク53が設けられており、このリンク53は、角度変更機構23の前部回転軸24、即ち、第一フレーム21Fの後端部側(第一クッション部側)に設けられている。そしてリンク53は、前部回転軸24の回転に連動して上下回動可能であるとともに、各第一フレーム21Fとは逆向きに回動できるように前部回転軸24から車両後側に延びている。またリンク53は、
図5に示す各第一フレーム21Fが通常状態のときに、前部回転軸24から後方に向かうにつれて次第に下方に傾斜している。そして本実施例では、リンク53が下回動する際に、リンク53の下端部がロック部51の荷重受け部512に届くように構成されている。即ち、
図10に示すようにリンク53の下端部が下回動する際に、この下端部の回動軌跡Tに荷重受け部512が重なるように配置されている。
【0028】
そこで
図10を参照して、第一クッション部21を上向き姿勢とするように角度変更機構23の前部回転軸24を軸心周りに回転させる。このとき第一クッション部21の各第一フレーム21Fが前部回転軸24を中心に上回動し、その動作に連動してリンク53が前部回転軸24を中心に下回動する。そしてリンク53の下端部がロック部51の荷重受け部512に当接し、さらにリンク53の下回動によって荷重受け部512が下側に押圧されていく。こうしてロック部51の荷重受け部512が下側に押圧されると、ロック部51の後端部は付勢力に抗して上回動し、これにより係止部511が被ロック部52の横ピンから外れるようになる。このように角度変更機構23の動作がリンク53を介して機構的にロック部51に伝達されて、ロック部51が被ロック部52から外れるように動かされることにより、回転ロック機構50のロックを解除することができる。なお第一クッション部21側のリンク53と支持部材42のロック部51とは、シート本体20とともに回転移動する。このため後述するようにシート本体20が回転移動する間、第一クッション部21を上向き姿勢にしておくことで、リンク53によるロック部51の解除状態が維持される。
【0029】
[乗員降車時の車両用シート装置の挙動]
乗員降車時においては、上述のように回転ロック機構50のロックを解除して、
図1に示す回転機構40によるシート本体20の回転移動を許容する。つづいてシート本体20が一般位置から乗降位置に回転移動する間において、
図6に示すように、第一クッション部21が第二クッション部22に対して上向き姿勢で維持される。こうして乗員降車時のシート本体20が回転移動する間において、上向き姿勢の第一クッション部21によって乗員脚部を支持することにより、乗員脚部とフロアF等との意図しない接触を極力回避することができる。そして
図7に示す乗降位置のシート本体20において、シートバック20B及び第二クッション部22の姿勢を維持した状態で、第一クッション部21が上向き姿勢から下向き姿勢となるように制御される。このように、降車時において第二クッション部22とシートバック20Bの姿勢、即ち、第二クッション部22の座面角度やトルソ角θを極力保つことにより、乗降時において乗員CMに対する前滑り感を極力与えない構成とすることができる。そのうえで第一クッション部21を上向き姿勢から下向き姿勢に変位させて、乗員脚部(膝下部分)を路面RS等に近づけることにより、降車時における乗員CMの足付き性の確保に資する構成となる。なお乗降位置のシート本体20では、第一クッション部21の姿勢にて足付き性を確保できるため、シートクッション20Aをドア開口部Dから外部に過度に突出させる必要がなく、駐車場等での使い勝手の良い構成となっている。
【0030】
また乗員降車時においては、
図7に示すようにオットマン機構26を格納位置に移動させておく。この格納位置のオットマン機構26の各リンクアーム271は、第一クッション部21の前端から垂直に下方に延びる仮想線VLよりもシート後方位置に配置された状態となる。このためシート本体20から乗員CMが立ち上がろうとした際に、乗員脚部にオットマン機構26(特に骨格部分)が過度に干渉しにくくなり、オットマン機構26が乗降動作の邪魔になるといった事態を極力回避することができる。
【0031】
[乗員乗車時の車両用シート装置の挙動]
また
図7を参照して、乗員乗車時には、乗降位置のシート本体20において第一クッション部21を下向き姿勢とした状態で乗員CMを着座させる。そしてシート本体20の回転移動の開始に伴って第一クッション部21を下向き姿勢から上向き姿勢となるように制御する。つづいてシート本体20が乗降位置から一般位置に回転移動する間、
図6に示すように、第一クッション部21が第二クッション部22に対して上向き姿勢で維持される。こうして乗員乗車時のシート本体20が回転移動する間において、上向き姿勢の第一クッション部21によって乗員脚部を支持することにより、乗員脚部とフロアF等との意図しない接触を極力回避することができる。
【0032】
そして
図5を参照して、シート本体20が一般位置に到達したのちに回転ロック機構50をロックすることで、シート本体20を車両前向きの位置で保持する。この回転ロック機構50のロックに際しては、
図10を参照して、前部回転軸24を軸心周りに逆回転させて、第一クッション部21を上向き姿勢から下側に向けていく(
図10の二点破線状態を参照)。このとき回転ロック機構50のリンク53が、角度変更機構23の動作に連動して、前部回転軸24を中心に上回動してロック部51の荷重受け部512から離れていく。そしてロック部51は、図示しない付勢部によって後端部が下になる方向に付勢されることで、この後端部に設けられた係止部511が被ロック部52の横ピン521に係止される(
図10の二点破線状態を参照)。
【0033】
こうして
図3に示す一般位置にシート本体20をロックしたのち、第一クッション部21の姿勢を、ロック状態が維持できる範囲で調整することで、乗員CMに応じたシートクッション20A前部の座面角度を調節することが可能となる。例えば両クッション部21,22の座面角度を合わせられるように、第一クッション部21を通常姿勢にすることができる。また
図8に示すようにオットマン機構26を作動させて、乗員脚部を持ち上げることにより、乗員CMに対する優れた着座感の確保に資する構成となる。
【0034】
以上説明した通り本実施例では、角度変更機構23の動作を利用して回転ロック機構50のロック解除を行えるため、ロック解除専用の電装部品を省略することが可能となる。即ち、回転ロック機構50のロックは、シート本体20側に設けられたロック部51が被ロック部52にロックされることでなされ、ロック解除は、ロック部51が被ロック部52から外れるように動かされることでなされる。そこで本実施例では、角度変更機構23の動作がリンク53を介して機構的に伝達されることで、ロック部51が被ロック部52から外れるように構成されているため、回転ロック機構50のロック解除をより確実に行うことができる。このため本実施例によれば、回転ロック機構50のロック解除を、専用の電装部品を要することなく可能にすることができる。こうして車両用シート装置10では、ロック解除専用の電装部品を要しないため、原価の低減や部品点数や質量の削減を図ることができる。さらに角度変更機構23の動作にリンク53の動作を連動させることで、回転ロック機構50のロック解除を速やかに行うことができ、作動時間短縮に資する構成となる。
【0035】
さらに本実施例では、角度変更機構23によって第一クッション部21の座面角度を変更する構成となっている。そして第一クッション部21側に設けられたリンク53によって、支持部材42に設けられたロック部51を第一クッション部の姿勢に応じて動かすことができる。また本実施例では、シート本体20を、回転機構40によって一般位置と乗降位置との間で回転移動させることができ、優れた乗降性の確保に資する構成となる。そして本実施例では、一般位置のシート本体20において、第一クッション部21を上向き姿勢にすることで、回転ロック機構50のロックが解除されてシート本体20の回転移動が許容される。そしてシート本体20が回転移動する間において、上向き姿勢の第一クッション部21によって乗員脚部を支持することにより、乗員脚部とフロアF等との意図しない接触を極力回避することができる。
【0036】
本実施形態の車両用シート装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、シートクッションの構成を例示したが、シートクッションの構成を限定する趣旨ではない。例えば角度変更機構は、第一クッション部と第二クッション部を前部回転軸で連結(ヒンジ連結)する場合のほか、四節リンク等の各種のリンク機構を介して連結する構成を取り得る。また第一クッション部と第二クッション部とは、骨格となるフレームは個別に設けられるが、弾性部(パッドとカバー)は必ずしも分割されている必要はない。またオットマン機構は、第一クッション部とは個別に作動する構成のほか、第一クッション部と連動して作動する構成とすることができる。なおオットマン機構は、必要に応じてシートクッションに取付けられる構成であり、省略することも可能である。また本実施形態では、乗員の乗降動作の際のシートクッションの制御手法を例示したが、制御手法を限定する趣旨ではない。
【0037】
また本実施形態では、角度変更機構の動作によって回転ロック機構のロック解除を行う構成を例示したが、ロック解除の構成を限定する趣旨ではない。例えば回転ロック機構のロック解除は、角度変更機構の動作を機構的に伝達することで行うことが可能である。即ち、リンクとロック部の間に、別のリンクやギヤやケーブル等の他部材を介在させてもよく、リンクの代わりに他部材を使用してもよい。なおリンクは、前部回転軸のほか、第一フレームに設けることもできる。またリンクとロック部の配置位置も適宜変更可能であり、必ずしもシートクッション前部や支持部材に配置する必要はない。また本実施形態では、第一クッション部を上向き姿勢とする際の角度変更機構の動作にて回転ロック機構のロック解除を行った。これとは異なり、リンクの構成変更や他部材の使用によって、第一クッション部を下向き姿勢とする際の角度変更機構の動作によって回転ロック機構のロックを解除することも可能である。
【0038】
また本実施形態では、回転機構や回転ロック機構の構成を例示したが、各機構の構成を限定する趣旨ではない。例えばベース部材と支持部材とをリンクを介して回転移動させる回転機構を採用することができる。また回転ロック機構は、ロック部と被ロック部とを、上下方向のほか、車両前後方向や車幅方向から係止する構成を採用でき、ロック部と被ロック部の構成も適宜変更可能である。なお回転ロック機構によるシート本体の回転移動のロック位置は、必ずしも一般位置に限る必要はなく、乗降位置等の各種の位置に設定できる。また一般位置のシート本体は、必ずしも車両前向きである必要はなく、車両の適宜の向きに向けておくことができる。また回転移動後のシート本体の位置は、必ずしもドア開口部側を向く乗降位置に設定する必要はなく、その位置が一般位置と異なっていればよい。そして車両用シート装置は、一人用や複数人用のシート本体を有していてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 車両用シート装置
20A シートクッション
20B シートバック
20 シート本体
21 第一クッション部
21F 第一フレーム
21P 第一弾性部
22 第二クッション部
22F 第二フレーム
22P 第二弾性部
23 角度変更機構
24 前部回転軸
25 前部駆動部
26 オットマン機構
27 オットマン本体
27P オットマン用の弾性部
271 リンクアーム
272 支持板
28 オットマン回転軸
29 オットマン駆動部
30 前後スライド機構
32 ロアレール
33 アッパレール
40 回転機構
41 ベース部材
42 支持部材
43 内輪
44 外輪
50 回転ロック機構
51 ロック部
511 係止部
512 荷重受け部
513 回転中心ピン
52 被ロック部
521 横ピン
522 縦ピン
53 リンク
D ドア開口部
F フロア
FG フロントガラス
HP ヒップポイント
R リクライナ
RS 路面
T 回動軌跡
VL 仮想線
θ トルソ角