(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158451
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】無線中継装置、通信システム、無線中継装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20221006BHJP
H04W 52/14 20090101ALI20221006BHJP
H04W 52/18 20090101ALI20221006BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20221006BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20221006BHJP
H04B 7/185 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H04W52/02 111
H04W52/14
H04W52/18
H04W16/26
H04W72/04 131
H04B7/185
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063366
(22)【出願日】2021-04-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、「HAPSを利用した無線通信システムに係る周波数有効利用技術に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】小西 光邦
(72)【発明者】
【氏名】長手 厚史
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K067AA43
5K067GG03
5K072AA20
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB22
5K072DD01
5K072EE34
5K072FF18
5K072GG12
5K072GG13
5K072GG14
5K072GG17
5K072GG22
(57)【要約】
【課題】基地局と端末装置との間の通信を中継する無線中継装置においてデータ通信の通信に影響を与えることなく電力増幅器の低消費電力化を図る。
【解決手段】無線中継装置10は、UEに送信する下りリンクの送信信号を増幅する電力増幅器110を有し、下りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する下りリンク送信停止パターンの情報を取得し、下りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出し、下りリンク送信停止パターンの情報とフレームタイミングの検出結果とに基づいて、下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について電力増幅器110に印加するバイアスを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と端末装置との間の通信を中継する無線中継装置であって、
前記端末装置に送信する下りリンクの送信信号を増幅する第1の電力増幅器と、
前記基地局装置に送信する上りリンクの送信信号を増幅する第2の電力増幅器と、
下りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する下りリンク送信停止パターンの情報を取得する情報取得部と、
前記下りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出するフレームタイミング検出部と、
前記下りリンク送信停止パターンの情報と前記フレームタイミングの検出結果とに基づいて、前記下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第1の電力増幅器に印加するバイアスを制御する制御部と、
を備えることを特徴とする無線中継装置。
【請求項2】
請求項1の無線中継装置において、
前記情報取得部は、上りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する上りリンク送信停止パターンの情報を取得し、
前記フレームタイミング検出部は、前記上りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出し、
前記制御部は、前記上りリンク送信停止パターンの情報と前記フレームタイミングの検出結果とに基づいて、前記上りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について記第2の電力増幅器に印加するバイアスを制御する、ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項3】
請求項1又は2の無線中継装置において、
前記情報取得部は、複数の基地局装置のスケジューリング情報を集中管理するサーバ又は前記サーバの機能を有する基地局から、前記送信停止パターンの情報を取得する、ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項4】
請求項1の無線中継装置において、
前記第1の電力増幅器は、無入力時又は小信号入力時に電力を消費する第1電力増幅動作と無入力時又は小信号入力時の消費電力が前記第1電力増幅動作よりも小さい第2電力増幅動作とを切り替え可能に構成され、
前記制御部は、前記下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第2電力増幅動作になるように前記第1の電力増幅器に印加するバイアスを変更する、
ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項5】
請求項2の無線中継装置において、
前記第2の電力増幅器は、無入力時又は小信号入力時に電力を消費する第1電力増幅動作と無入力時又は小信号入力時の消費電力が前記第1電力増幅動作よりも小さい第2電力増幅動作とを切り替え可能に構成され、
前記制御部は、前記上りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第2電力増幅動作になるように前記第2の電力増幅器に印加するバイアスを変更する、
ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項6】
請求項4又は5の無線中継装置において、
前記第1電力増幅動作はA級又はAB級の電力増幅動作であり、
前記第2電力増幅動作はC級又はB級の電力増幅動作である、ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの無線中継装置において、
前記フレームタイミング検出部は、前記基地局装置から受信した無線信号に含まれる同期信号に基づいて、前記無線フレームのフレームタイミングを検出する、ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかの無線中継装置において、
前記フレームタイミング検出部は、GNSSの人工衛星から受信した時刻情報と、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継するフィーダリンクにおける伝搬遅延量の推定結果とに基づいて、前記下りリンクの無線フレーム及び前記上りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出する、ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの無線中継装置において、
前記送信停止パターンの情報は、前記無線中継装置が形成するセル及びその周辺のセルにおけるデータトラフィック情報に基づいて決定されている、ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかの無線中継装置において、
前記送信停止パターンの情報は、前記無線中継装置の位置情報又は前記無線中継装置が形成するセルのフットプリントの情報に基づいて決定されている、ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかの無線中継装置において、
前記送信停止パターンの情報は、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継するフィーダリンク信号に多重化されて前記基地局装置から送信されている、ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれかの無線中継装置において、
前記送信停止パターンの情報は、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継するフィーダリンクとは別の通信回線を介して、前記基地局装置から送信されている、ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかの無線中継装置において、
前記無線中継装置は、前記基地局装置と複数のセクタセルに在圏する端末装置との間の通信を中継し、
前記情報取得部は、前記セクタセルごとに、前記送信停止パターンの情報を取得し、
前記フレームタイミング検出部は、前記セクタセルごとに、前記無線フレームのフレームタイミングを検出し、
前記第1の電力増幅器、前記第2の電力増幅器及び前記制御部はそれぞれ、前記セクタセルごとに設けられている、ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかの無線中継装置において、
前記無線中継装置は、上空に位置する浮揚体又は飛行体に搭載され、地上基地局のセルを含むエリアに向けて広域のセルを形成する、ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかの無線中継装置と基地局装置とを備える通信システム。
【請求項16】
請求項15の通信システムにおいて、
複数の基地局装置のスケジューリング情報を集中管理し、前記スケジューリング情報に基づいて、前記送信停止パターンの情報を前記無線中継装置に送信するサーバを備える、ことを特徴とする通信システム。
【請求項17】
請求項15又は16の通信システムにおいて、
前記基地局装置は、前記送信停止パターンの情報を、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継するフィーダリンク信号に多重化して前記無線中継装置に送信する、ことを特徴とする通信システム。
【請求項18】
端末装置に送信する下りリンクの送信信号を増幅する第1の電力増幅器と、基地局装置に送信する上りリンクの送信信号を増幅する第2の電力増幅器とを有し、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継する無線中継装置の制御方法であって、
下りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する下りリンク送信停止パターンの情報を取得することと、
前記下りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出することと、
前記下りリンク送信停止パターンの情報と前記フレームタイミングの検出結果とに基づいて、前記下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第1の電力増幅器に印加するバイアスを制御することと、
を含むことを特徴とする無線中継装置の制御方法。
【請求項19】
請求項18の無線中継装置の制御方法において、
上りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する上りリンク送信停止パターンの情報を取得することと、
前記上りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出することと、
前記上りリンク送信停止パターンの情報と前記フレームタイミングの検出結果とに基づいて、前記上りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第2の電力増幅器に印加するバイアスを制御することと、
を含むことを特徴とする無線中継装置の制御方法。
【請求項20】
端末装置に送信する下りリンクの送信信号を増幅する第1の電力増幅器と、基地局装置に送信する上りリンクの送信信号を増幅する第2の電力増幅器とを有し、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継する無線中継装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
下りリンクの無線フレームを構成する複数のサブフレームにおける送信信号を停止する下りリンク送信停止パターンの情報を取得するためのプログラムコードと、
前記下りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出するためのプログラムコードと、
前記下りリンク送信停止パターンの情報と前記フレームタイミングの検出結果とに基づいて、前記下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第1の電力増幅器に印加するバイアスを制御するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項21】
請求項20のプログラムにおいて、
上りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する上りリンク送信停止パターンの情報を取得するためのプログラムコードと、
前記上りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出するためのプログラムコードと、
前記上りリンク送信停止パターンの情報と前記フレームタイミングの検出結果とに基づいて、前記上りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第2の電力増幅器に印加するバイアスを制御するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局と端末装置との間の通信を中継する無線中継装置、通信システム、無線中継装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基地局の電力増幅器の消費電力を制御する無線通信システムが知られている。特許文献1には、直交周波数分割多重接続方法を使用する無線通信システムにおいて、無線資源に関するスケジューリング情報を確認し、その確認結果を利用してユーザデータが割り当てられていないシンボルの存在有無を判断し、ユーザデータが割り当てられていないシンボルが存在するとき、ユーザデータが割り当てられていないシンボル区間では電力増幅器に印加されるバイアスをオフさせる方法が開示されている。この方法によれば、基地局は、ユーザデータが存在しないシンボル区間では電力増幅器のバイアスをオフするように制御するので、基地局の電力増幅器の消耗電力を最適化することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基地局から離して設置され基地局と端末装置との間の通信を中継する無線中継装置に上記方法を適用してシンボル区間で電力増幅器のバイアスをオフする制御を行う場合、次のような課題がある。すなわち、互いに離れている基地局と無線中継装置との間の伝送遅延により、送信信号が発生するシンボル区間の情報をリアルタイム且つ高速に無線中継装置へ伝送して共有することが難しい。特に、上空滞在型の無線中継装置の場合は、基地局との距離が長くなって伝送遅延が大きくなるため、送信信号が発生するシンボル区間の情報をリアルタイム且つ高速に共有するのが更に難しくなる。送信信号が発生するシンボル区間の情報のリアルタイム且つ高速の共有ができないと、上記方法におけるシンボル区間で電力増幅器のバイアスをオフする制御を正確に行うことができない。そのため、データ通信に影響を与えることなく無線中継装置の電力増幅器の低消費電力化を図ることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る無線中継装置は、基地局装置と端末装置との間の通信を中継する無線中継装置である。この無線中継装置は、前記端末装置に送信する下りリンクの送信信号を増幅する第1の電力増幅器と、前記基地局装置に送信する上りリンクの送信信号を増幅する第2の電力増幅器と、下りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する下りリンク送信停止パターンの情報を取得する情報取得部と、前記下りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出するフレームタイミング検出部と、前記下りリンク送信停止パターンの情報と前記フレームタイミングの検出結果とに基づいて、前記下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第1の電力増幅器に印加するバイアスを制御する制御部と、を備える。
【0006】
前記無線中継装置において、前記情報取得部は、上りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する上りリンク送信停止パターンの情報を取得し、前記フレームタイミング検出部は、前記上りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出し、前記制御部は、前記上りリンク送信停止パターンの情報と前記フレームタイミングの検出結果とに基づいて、前記上りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について記第2の電力増幅器に印加するバイアスを制御してもよい。
【0007】
前記無線中継装置において、前記情報取得部は、複数の基地局装置のスケジューリング情報を集中管理するサーバ又は前記サーバの機能を有する基地局から、前記送信停止パターンの情報を取得してもよい。
【0008】
前記無線中継装置において、前記第1の電力増幅器は、無入力時又は小信号入力時に電力を消費する第1電力増幅動作と無入力時又は小信号入力時の消費電力が前記第1電力増幅動作よりも小さい第2電力増幅動作とを切り替え可能に構成され、前記制御部は、前記下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第2電力増幅動作になるように前記第1の電力増幅器に印加するバイアスを変更してもよい。
【0009】
また、前記無線中継装置において、前記第2の電力増幅器は、無入力時又は小信号入力時に電力を消費する第1電力増幅動作と無入力時又は小信号入力時の消費電力が前記第1電力増幅動作よりも小さい第2電力増幅動作とを切り替え可能に構成され、前記制御部は、前記上りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第2電力増幅動作になるように前記第2の電力増幅器に印加するバイアスを変更してもよい。
【0010】
ここで、前記第1電力増幅動作はA級又はAB級の電力増幅動作であり、前記第2電力増幅動作はC級又はB級の電力増幅動作であってもよい。
【0011】
前記無線中継装置において、前記フレームタイミング検出部は、前記基地局装置から受信した無線信号に含まれる同期信号に基づいて、前記無線フレームのフレームタイミングを検出してもよいし、又は、GNSSの人工衛星から受信した時刻情報と、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継するフィーダリンクにおける伝搬遅延量の推定結果とに基づいて、前記無線フレームのフレームタイミングを検出してもよい。
【0012】
前記無線中継装置において、前記下りリンク送信停止パターンの情報及び前記上りリンク送信停止パターンの情報は、前記無線中継装置が形成するセル及びその周辺のセルにおけるデータトラフィック情報に基づいて決定されていてもよいし、又は、前記下りリンク送信停止パターンの情報及び前記上りリンク送信停止パターンの情報は、前記無線中継装置の位置情報又は前記無線中継装置が形成するセルのフットプリントの情報に基づいて決定されていてもよい。
【0013】
前記無線中継装置において、前記送信停止パターンの情報は、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継するフィーダリンク信号に多重化されて前記基地局装置から送信されてもよい。
【0014】
前記無線中継装置において、前記送信停止パターンの情報は、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継するフィーダリンクとは別の通信回線を介して、前記基地局装置から送信されてもよい。
【0015】
前記無線中継装置において、前記基地局装置と複数のセクタセルに在圏する端末装置との間の通信を中継し、前記情報取得部は、前記セクタセルごとに、前記送信停止パターンの情報を取得し、前記フレームタイミング検出部は、前記セクタセルごとに、前記無線フレームのフレームタイミングを検出し、前記第1の電力増幅器、前記第2の電力増幅器及び前記制御部はそれぞれ、前記セクタセルごとに設けてもよい。
【0016】
前記無線中継装置は、上空に位置する浮揚体又は飛行体に搭載され、地上基地局のセルを含むエリアに向けて広域のセルを形成してもよい。
【0017】
本発明の他の態様に係る通信システムは、前記いずれかの無線中継装置と基地局装置とを備える。
【0018】
前記通信システムにおいて、複数の基地局装置のスケジューリング情報を集中管理し、前記スケジューリング情報に基づいて、前記送信停止パターンの情報を前記無線中継装置に送信するサーバを備えてもよい。
【0019】
前記通信システムにおいて、前記基地局装置は、前記送信停止パターンの情報を、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継するフィーダリンク信号に多重化して前記無線中継装置に送信してもよい。
【0020】
本発明の更に他の態様に係る制御方法は、端末装置に送信する下りリンクの送信信号を増幅する第1の電力増幅器と、基地局装置に送信する上りリンクの送信信号を増幅する第2の電力増幅器とを有し、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継する無線中継装置の制御方法である。この制御方法は、下りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する下りリンク送信停止パターンの情報を取得することと、前記下りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出することと、前記下りリンク送信停止パターンの情報と前記フレームタイミングの検出結果とに基づいて、前記下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第1の電力増幅器に印加するバイアスを制御することと、を含む。
【0021】
前記無線中継装置の制御方法において、上りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する上りリンク送信停止パターンの情報を取得することと、前記上りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出することと、前記上りリンク送信停止パターンの情報と前記フレームタイミングの検出結果とに基づいて、前記上りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第2の電力増幅器に印加するバイアスを制御することと、を含んでもよい。
【0022】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、端末装置に送信する下りリンクの送信信号を増幅する第1の電力増幅器と、基地局装置に送信する上りリンクの送信信号を増幅する第2の電力増幅器とを有し、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信を中継する無線中継装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、下りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する下りリンク送信停止パターンの情報を取得するためのプログラムコードと、前記下りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出するためのプログラムコードと、前記下りリンク送信停止パターンの情報と前記フレームタイミングの検出結果とに基づいて、前記下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第1の電力増幅器に印加するバイアスを制御するためのプログラムコードと、を含む。
【0023】
前記プログラムにおいて、上りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する上りリンク送信停止パターンの情報を取得するためのプログラムコードと、前記上りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出するためのプログラムコードと、前記上りリンク送信停止パターンの情報と前記フレームタイミングの検出結果とに基づいて、前記上りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第2の電力増幅器に印加するバイアスを制御するためのプログラムコードと、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基地局と端末装置との間の通信を中継する無線中継装置においてデータ通信の通信に影響を与えることなく電力増幅器の低消費電力化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る無線中継装置を含む通信システムの主要構成の一例を示す説明図。
【
図2】実施形態に係る無線中継装置を含む階層セル構成の通信システムの全体構成の一例を示す説明図。
【
図3】実施形態に係る無線中継装置を含む階層セル構成の通信システムの全体構成の他の例を示す説明図。
【
図4】実施形態に係る通信システムにおける無線中継装置のデータ送信停止時の不要な送信機雑音の一例を示す説明図。
【
図5】実施形態に係る通信システムにおける下りリンク及び上りリンクの無線フレームの一例を示す説明図。
【
図6】
図2及び
図3の通信システムにおける無線中継装置の電力増幅器の電力増幅機能をOFFにするバイアス制御の一例を示す説明図。
【
図7】実施形態に係る無線中継装置10におけるフレームタイミングを検出するための同期方法の一例を示す説明図。
【
図8】実施形態に係る無線中継装置10におけるフレームタイミングを検出するための同期方法の他の例におけるフレームタイミングの誤差ΔTを示す説明図。
【
図9】実施形態に係る通信システムにおける無線中継装置の下りリンクに対応する部分の一構成例を示すブロック図。
【
図10】実施形態に係る通信システムにおける無線中継装置の下りリンクに対応する部分の他の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ここでは、3GPPのLTE/LTE-Advancedの移動通信システム、第5世代以降の次世代のNR(New Radio)の移動通信システムのへの適用を前提に本発明の実施形態を説明するが、類似のセル構成、物理チャネル構成を用いるシステムであれば、本発明の概念はどのようなシステムにも適用可能である。
【0027】
本書に記載された実施形態に係る無線中継装置は、地上基地局の地上セルとの間でサービスリンクの周波数帯を共用し、地上基地局の地上セルと重なる大セルを形成する上空滞在型の無線中継装置である。本実施形態の無線中継装置は、地上の基地局装置と端末装置(UE)との間で中継している中継信号の無線フレームのフレームタイミングを検出し、当該無線フレームの準静的スケジューリング情報(例えば、送信信号を停止するスロットを特定する送信停止パターン)を取得する。本実施形態の無線中継装置は、前記フレームタイミングと前記準静的スケジューリング情報とに基づいてサービスリンクの電力増幅器(アンプ)のバイアスを制御し、端末装置(UE)に対するデータ信号を含まない時間帯(例えば特定のスロット)についてアンプ(電力増幅器)の電力増幅機能をOFFにすることにより、サービスリンクのデータ信号を送信していない非データ送信時の電力増幅器(アンプ)の低消費電力化を図るともに、非データ送信時における不要な雑音信号の増幅及び放射を低減して地上セルへの干渉を抑制することができる。
【0028】
図1は、本実施形態に係る無線中継装置10を含む通信システム(無線中継システム)の主要構成の一例を示す説明図である。
図1において、通信システムは、上空を飛行する飛行体(例えば、飛行船、ソーラープレーン、ドローンなど)15などに設けられた上空滞在型の無線中継装置10を備える。無線中継装置10は、リピータ型の中継局であり、フィーダリンクFLを介して地上のHAPS基地局装置35と無線通信を行い、サービスリンクSLを介して端末装置(UE)60と無線通信を行い、HAPS基地局装置35と端末装置(UE)60との間の通信を中継する。無線中継装置10は、サービスリンクSLの送信信号を増幅する第1の電力増幅器としての電力増幅器(PA)110と、フィーダリンクFLの送信信号を増幅する第2の電力増幅器としての電力増幅器(PA)120とを有する。なお、通信システム(無線中継システム)は、無線中継装置10のほかHAPS基地局装置35を含んでもよく、UE60を更に含んでもよい。
【0029】
フィーダリンクFLの周波数(周波数帯)とサービスリンクSLの周波数(周波数帯)は、電波の回り込みによる干渉を防止するために互いに異なる周波数(周波数帯)であってもよい。
【0030】
無線中継装置10は、フィーダリンクFLを介してHAPS基地局装置35から受信する下りリンクの高周波無線(RF)信号に含まれる同期信号を検出する機能を備え、中継対象の下りリンクの信号(以下「下りリンク信号」ともいう。)のフレームタイミングを検出できる。また、無線中継装置10は、HAPS基地局装置35又は中央制御サーバから、下りリンクの準静的スケジューリング情報、又は、下りリンク及び上りリンクの準静的スケジューリング情報を受信する。
【0031】
準静的スケジューリング情報は、無線フレームを構成する複数のスロットについてスロットごとに送信対象のデータを含むか否かを特定することができる情報であり、当該複数のスロットにおける送信信号を停止する下りリンク送信停止パターンの情報である。この準静的スケジューリング情報は、無線フレームを構成する複数のリソースエレメント(RE)に割り当てられる複数のシンボルについてシンボルごとにデータを含むか否か(送信対象のシンボルか非送信対象のシンボルか)を特定する通常のスケジューリング情報ではない。前記準静的スケジューリング情報は、無線フレームごとに変化する情報ではなく、複数の無線フレームを一単位として定期的に又は不定期的に変更される。
【0032】
無線中継装置10は、HAPS基地局装置35から受信した同期信号に基づいて自律的に検出したフレームタイミングの検出結果と、HAPS基地局装置35から受信して取得した下りリンクの準静的スケジューリング情報とに基づき、送信対象のデータを含まないスロットについて、電力増幅器110への電源供給を停止(オフ)するのではなく、電力増幅器110の電力増幅機能を一時的に停止するように電力増幅器110に印加するバイアスをオフにするバイアス制御を行う。
【0033】
なお、
図1の通信システムにおいて、HAPS基地局装置35から受信した同期信号に基づいてフレームタイミングを検出するのではなく、GPS(Global Positioning System)等のGNSS(global navigation satellite system)の人工衛星からの時刻情報に基づいてフレームタイミングを検出してもよい。この場合、無線中継装置10及びHAPS基地局装置35はそれぞれGNSS人工衛星からの電波を受信するGNSS受信機を備え、例えば、GNSS受信機から出力される絶対時刻情報に基づいて内部クロックを定期的に補正し、補正後の内部クロックの出力信号と予め設定された無線フレームの先頭タイミングとに基づいて、フレームタイミングを検出してもよい。
【0034】
図2は、本実施形態に係る無線中継装置を含む階層セル構成の通信システムの全体構成の一例を示す説明図である。
図2において、災害時対応や臨時のイベントなどによる通信トラフィック対策として、上空に位置して移動可能な浮揚体としての飛行船、ソーラープレーン、ドローンなどの飛行体15のアンテナ102から地上又は水上(例えば海上)に向かって形成される移動通信ネットワークの複数のサービスリンクSL(1),SL(2)の広域の大セル10A(1),10A(2)を展開している。この複数の大セル10A(1),10A(2)は、単一の無線中継装置によって形成され、「セクタセル」ともいう。大セル10Aの内側には、地上又は水上(例えば海上)に設置された既存の複数の地上基地局20(1),20(2)のアンテナにより形成される移動通信ネットワークのセル(以下「地上セル」という。)20A(1),20A(2)が存在する。
【0035】
なお、
図2は、大セル10(1)A内に複数の地上セル20(1)A,20(2)Aが含まれるように各セルが互いに重畳する階層セル構成の例を示しているが、大セル10(1)Aの一部と複数の地上セル20(1)A,20(2)Aの少なくとも一部が互いに重複しているセル構成であってもよい。
【0036】
図2の例では、無線中継装置10を有する飛行体15が上空を移動可能な飛行体としての飛行船タイプのHAPS(「高高度プラットフォーム局」又は「高高度疑似衛星」)である例を示しているが、飛行体15は、上空を移動又は飛行可能なドローン、気球、航空機、ヘリコプター、ソーラープレーンタイプのHAPS若しくはLAPS(「低高度プラットフォーム局」又は「低高度疑似衛星」)、飛行船タイプのLAPS、人工衛星などの他の無人又は有人の飛行体であってもよい。また、飛行体15は、無線中継を行う運用時に位置する上空の所定の位置に移動した後、その位置にとどまるように又はその位置を含む所定範囲の飛行空間内を循環飛行するように制御してもよい。
【0037】
飛行体は、自律制御若しくは外部から制御により又は飛行体に搭乗する操縦者の操縦により、地面、海面、又は川若しくは湖などの水面から100[km]以下の高度の空域を飛行して位置するように制御されてもよい。また、飛行体の飛行空域は、高度が11[km]以上及び50[km]以下の成層圏の空域であってもよい。更に、飛行体の飛行空域は、気象条件が比較的安定している高度15[km]以上25[km]以下の空域であってもよく、特に高度がほぼ20[km]の空域であってもよい。
【0038】
図2において、複数の大セル10A(1),10A(2)及び複数の地上セル20A(1),20A(2)は、互いに同一周波数帯で運用されている。例えば、地上セル20(1)A,20(2)Aは、移動局である端末装置(以下「UE」ともいう。)との無線通信に大セル10(1)A,10(2)Aと同じ周波数(周波数帯)Aが用いられる同一周波数のセル(例えば、マクロセル又はスモールセル)である。
図1中のUE61(1),61(2)はそれぞれ、大セル10A(1),10A(2)に在圏して当該セル10A(1),10A(2)に接続している。また、
図2中のUE62(1),62(2)はそれぞれ、地上セル20A(1),20A(2)に在圏して当該セル20A(1),20A(2)に接続している。
【0039】
本実施形態の移動通信システムは、LTE(Long Term Evolution)/LTE-Advanced又は第5世代などの次世代の標準仕様に準拠した通信システムであり、無線中継装置10は、複数の大セル10A(1),10A(2)を形成するサービスリンクSL(1),SL(2)のアンテナ101と、地上側に設けられたHAPS基地局装置(例えば、eNodeB、gNodeB)35と無線通信するためのフィーダリンクFLのアンテナ102とを有する。HAPS基地局装置35は、回線終端装置及び専用回線などの通信回線を介して移動体通信網のHAPSコアネットワーク30に接続され、コアネットワーク装置やサーバなどの各種ノードとの間で所定の通信インターフェースにより通信可能になっている。
【0040】
地上基地局(例えば、eNodeB、gNodeB)20(1),20(2)は、例えば、マクロセル基地局又はスモールセル基地局である。マクロセル基地局は、移動体通信網において屋外に設置されている通常の半径数百m乃至数km程度の広域エリアである地上セルをカバーする大出力の基地局である。スモールセル基地局は、広域のマクロセル基地局とは異なり、無線通信可能距離が数m乃至数百m程度であり、一般家庭、店舗、オフィス等の建物の内部にも設置することができる小出力の基地局である。マクロセル基地局又はスモールセル基地局はそれぞれ、他の基地局と例えば有線の通信回線で接続され、所定の通信インターフェースで通信可能になっている。また、マクロセル基地局又はスモールセル基地局は、回線終端装置及び専用回線などの通信回線を介して移動体通信網の地上コアネットワーク40に接続され、コアネットワーク装置やサーバなどの各種ノードとの間で所定の通信インターフェースにより通信可能になっている。
【0041】
なお、HAPSコアネットワーク30及び地上コアネットワーク40は、大セル10A(1),10A(2)のHAPS基地局装置35及び地上セル20A(1),20A(2)の地上基地局20(1),20(2)を収容する共通のコアネットワークであってもよい。また、セル10A(1),10A(2)20A(1),20A(2)で共通に用いられる周波数は、例えば、300MHz~30GHzのマイクロ波帯の周波数でもよいし、30GHzよりも高いミリ波帯の周波数でもよい。
【0042】
本実施形態において、飛行体15に搭載された無線中継装置10は、アンテナ102と地上側のフィーダリンクの中継装置であるゲートウェイ(GW)局が接続されたHAPS基地局装置35を介して、移動通信網のHAPSコアネットワーク30、各種のコアネットワーク装置、インターネットなどの外部ネットワーク、中央制御サーバ50などの各種サーバ等と通信することができる。
【0043】
中央制御サーバ50は、HAPS基地局装置35及び地上基地局20(1),20(2)のスケジューリング情報等の基地局情報を一元管理し、基地局を制御するための制御情報を生成することができる。また、中央制御サーバ50は、無線中継装置10の電力増幅器110(120)のバイアス制御に用いられる準静的スケジューリング情報を管理し、準静的スケジューリング情報を無線中継装置10に通知する機能を有する。なお、中央制御サーバ50は、データセンターなどの遠隔地に設置してもよいし、HAPSコアネットワーク30又は地上コアネットワーク40に設けてもよい。
【0044】
UE61(1),61(2)はそれぞれ、大セル10A(1),10A(2)に在圏するときに、その在圏するセルに対応する上空の無線中継装置10を介してHAPS基地局装置35と間で所定の通信方式及び無線通信リソースを用いて無線通信することができる。また、UE62(1),63(2)はそれぞれ、地上セル20A(1),20A(2)に在圏するときに、その在圏するセルに対応する地上基地局20(1),20(2)と間で所定の通信方式及び無線通信リソースを用いて無線通信することができる。UE61(1),61(2)及びUE62(1),62(2)はそれぞれ、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、無線通信部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより無線中継装置10を介したHAPS基地局装置35との通信及び地上基地局20(1),20(2)との間の無線通信を行うことができる。
【0045】
HAPS基地局装置35は、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、HAPSコアネットワーク30に対する外部通信インターフェース部、中央制御サーバ50に対する外部通信インターフェース部、無線通信部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより、所定の通信方式及び無線通信リソースを用いてUE61(1),61(2)との間の無線通信を行ったり、HAPSコアネットワーク30のコアネットワーク装置との間の情報の送受信を行ったり、中央制御サーバ50との間の情報の送受信を行ったりすることができる。
【0046】
地上基地局20(1),20(2)はそれぞれ、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、地上コアネットワーク40に対する外部通信インターフェース部、無線通信部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより、所定の通信方式及び無線通信リソースを用いてUE62(1),62(2)との間の無線通信を行ったり、地上コアネットワーク40のコアネットワーク装置との間の情報の送受信を行ったり、中央制御サーバ50との間の情報の送受信を行ったりすることができる。
【0047】
無線中継装置10は、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、サービスリンク及びフィーダリンクの無線通信部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより、所定の通信方式及び無線通信リソースを用いてUE62(1),62(2)との間の無線通信を行ったり、HAPS基地局装置35を介して中央制御サーバ50との間の情報の送受信を行ったりすることができる。
【0048】
無線中継装置10は、所定のプログラムが実行されることにより、HAPS基地局装置35から受信した無線信号に含まれる同期信号に基づいて無線フレームのフレームタイミングを検出する処理を行ったり、HAPS基地局装置35又は中央制御サーバ50から受信した準静的スケジューリング情報に基づいて電力増幅器110(120)のバイアスを制御したりすることができる。
【0049】
HAPS基地局装置35及び地上基地局20(1),20(2)は、UEに対してOFDM(直交周波数分割多重)方式の下りリンクの無線通信可能な基地局装置である。各基地局装置35,20(1),20(2)は、例えば、アンテナ、無線信号経路切り換え部、送受共用器(DUP:Duplexer)、下りリンク無線受信部及び下りリンク変調部としてのOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調部、制御部、上りリンク無線受信部及び上りリンク復調部(例えば、SC-FDMA(Single-Carrier Frequency-Division Multiple Access)復調部又はOFDM復調部)など備える。更に、各基地局装置35,20(1),20(2)は、無線インターフェースベースの同期などの特殊用途のために、下りリンク無線送信部及びOFDM復調部を備えてもよい。
【0050】
SC-FDMA復調部は、上りリンク無線受信部で受信した受信信号に対してSC-FDMA方式の復調処理を実行し、復調されたデータを制御部に渡す。OFDM復調部は、上りリンク無線受信部で受信した受信信号に対してOFDM方式の復調処理を実行し、復調されたデータを制御部に渡す。OFDM変調部は、制御部から受けた自局のセルに在圏しているUEに向けて送信する下りリンク信号のデータを、所定の電力で送信されるように、OFDM方式で変調する。また、基地局が例えばサーバから送信停止対象のスロットの情報を受信した場合、OFDM変調部は、無線フレーム中の特定のスロットについてのみ下りリンク送信を停止するように制御される。下りリンク無線送信部は、OFDM変調部で変調した送信信号を、送受共用器、無線信号経路切り換え部及びアンテナを介して送信する。
【0051】
本実施形態の移動通信システムにおいて、
図3に示すように、上空の無線中継装置10及び地上基地局20(1),20(2)はそれぞれ、GPS等のGNSSの人工衛星からの電波を受信するGNSS受信機103を備え、GNSS受信機103から出力される絶対時刻情報に基づいて内部クロックを補正し、互いに時刻同期してもよい。この場合、無線中継装置10は、GNSS受信機103からの絶対時刻情報に基づいて補正された内部クロックのクロック信号及び絶対時刻情報に基づいて、地上基地局20(1),20(2)との間で同期した無線フレームのフレームタイミングを検出することができる。
【0052】
図2及
図3に例示した上記構成の階層セル構成の移動通信システムにおいて、上空滞在型の無線中継装置10の電力増幅器110(120)の低消費電力化及びデータ送信停止時の不要な送信機雑音(
図4参照)が課題になっている。この低消費電力化及び送信機雑音の抑圧のために、従来の電力増幅器に印加されるバイアスの制御方法を適用し、セルの無線フレームを構成する各スロットにおいてユーザデータが割り当てられていないシンボルの存在有無を判断し、ユーザデータが割り当てられていないシンボルが存在するとき、ユーザデータが割り当てられていないシンボル区間では電力増幅器に印加されるバイアスをオフさせる方法が考えられる。
【0053】
しかしながら、上記従来のバイアスの制御方法を適用した方法では、互いに離れているHAPS基地局装置35と無線中継装置10との間の伝送遅延により、送信信号が発生するシンボル区間の情報をリアルタイム且つ高速に無線中継装置10へ伝送して共有することが難しい。特に、上空滞在型の無線中継装置10の場合は、基地局装置との距離が長くなって伝送遅延が大きくなるため、送信信号が発生するシンボル区間の情報をリアルタイム且つ高速に共有するのが更に難しくなる。送信信号が発生するシンボル区間の情報のリアルタイム且つ高速の共有ができないと、上記方法におけるシンボル区間で電力増幅器110(120)のバイアスをオフする制御を正確に行うことができない。そのため、データ通信に影響を与えることなく無線中継装置10の電力増幅器110(120)の低消費電力化を図ることができず、また、送信機雑音を抑圧することができない。
【0054】
そこで、本実施形態では、階層セル構成における周波数共用法の一つである無線フレームにおける時分割による無線リソース割当制御を用いた干渉回避に着目し、無線中継装置10で無線フレームのフレームタイミングを検出するとともに、無線中継装置10とHAPS基地局装置35との間で無線フレームを構成する複数のスロットにおける干渉回避のための送信信号を停止する送信停止パターンの情報を共有し、送信信号を停止するスロットの時間帯について無線中継装置10の電力増幅器110(120)の消費電力を低下させるように電力増幅器110(120)に印加するバイアスを制御している。
【0055】
例えば、
図5の例において、下りリンクの無線フレーム910では、2、3、7、8番目のスロットでデータを割り当てないように下りリンク送信停止パターンが予め設定されているため、当該スロットでの送信信号が停止される。また、上りリンクの無線フレーム920では、2、5番目のスロットでデータを割り当てないように上りリンク送信停止パターンが予め設定されているため、当該スロットでの送信信号が停止される。このように下りリンク送信停止パターン及び上りリンク送信停止パターンを予め取り決められて設定されるため、電力増幅器110(120)の電力増幅機能をOFFにするようにバイアス制御を行う時間帯(スロットの位置)がわかる。
【0056】
図6は、
図2及び
図3の通信システムにおける無線中継装置10の電力増幅器110の電力増幅機能をOFFにするバイアス制御の一例を示す説明図である。
図6において、地上セル20(1)A,20(2)Aの無線フレーム921,922において保護対象の中央のスロットに対する与干渉を回避するために、各セルのフレームタイミングを同期させた状態で、大セル10A(1)の対応する中央のスロットについてデータを割り当てないとともに電力増幅器110に印加するバイアスをOFFにして電力増幅機能を停止している。これにより、当該スロットの時間帯において大セル10A(1)から地上セル20(1)A,20(2)Aへの与干渉を回避するとともに送信機雑音の放射を抑圧することができる。なお、
図2及び
図3の通信システムにおいては、2番目の大セル10A(2)の配下には地上セルが存在しないため、大セル10A(2)の無線フレームでは常に送信してもよい。
【0057】
前述の下りリンク送信停止パターンの情報及び上りリンク送信停止パターンの情報は、HAPS基地局装置35又は中央制御サーバ50によってすべて管理・把握されている。従って、無線中継装置10は、下りリンク送信停止パターンの情報及び上りリンク送信停止パターンの情報を準静的スケジューリング情報として、HAPS基地局装置35又中央制御サーバ50から取得することができる。
【0058】
無線中継装置10において、準静的スケジューリング情報(下りリンク送信停止パターンの情報及び上りリンク送信停止パターンの情報)に基づいて電力増幅器110(120)のバイアスを制御するには、無線フレームの先頭のタイミングを特定する必要がある。
【0059】
図2の通信システムでは、無線中継装置10は、HAPS基地局装置35から受信する無線フレームの所定位置に配置された同期信号に基づいてフレームタイミングを検出し、無線フレームの先頭のタイミングを特定することができる。
【0060】
また、
図3の通信システムでは、無線中継装置10及び基地局装置35がそれぞれGNSS人工衛星からの電波を受信するGNSS受信機を備え、例えば、GNSS受信機から出力される絶対時刻情報に基づいて内部クロックを定期的に補正することにより、無線中継装置10及び基地局装置35は互いに時刻同期した状態になっている。無線中継装置10は、補正後の内部クロックの出力信号と予め設定された無線フレームの先頭タイミングとに基づいて、フレームタイミングを検出し、無線フレームの先頭のタイミングを特定することができる。
【0061】
図2及び
図3において、中央制御サーバ50は、準静的スケジューリング情報を地上基地局20(1),20(2)及び無線中継装置10に対して配信する。
【0062】
HAPS基地局装置35は、HAPSコアネットワーク30から受信したスケジューリング情報に従い、サービスリンク及びフィーダリンクの無線通信のスケジューリングを実施する。また、HAPS基地局装置35は、GNSSによる無線中継装置10の位置情報と大セル10A(1),10A(2)のフットプリント情報を中央制御サーバ50に報告する。
【0063】
地上基地局20(1),20(2)はそれぞれ、地上コアネットワーク40から受信したスケジューリング情報に従い、サービスリンク及びフィーダリンクの無線通信のスケジューリングを実施する。また、地上基地局20(1),20(2)はそれぞれ、他セル(主に大セル10A(1),10A(2))からの受信電力(干渉電力)を中央制御サーバ50に報告する。
【0064】
無線中継装置10は、中継信号のフレームタイミングを検出し、前述の準静的スケジューリング情報等に従い、電力増幅器(アンプ)のバイアスをセルごとに制御する。
【0065】
HAPSコアネットワーク30のNW装置は、大セル10A(1),10A(2)それぞれのデータトラフィック情報を中央制御サーバ50に報告する。地上コアネットワーク40のNW装置は、地上セル20A(1),20A(2)それぞれのデータトラフィック情報を中央制御サーバ50に報告する。
【0066】
中央制御サーバ50は、HAPS基地局装置35及び地上基地局20(1),20(2)の準静的スケジューリング情報を集中管理することができる。例えば3GPPのLTE-Release10では、大セル基地局と小セル基地局が混在するヘテロジーニアスネットワークにおいて、大セル基地局の物理共有チャネル(PDSCH)あるいは物理制御チャネル(PDCCH)の送信を停止するサブフレームの位置を示したABS(Almost Blank Subframe)パターンを利用してセル間の干渉を回避するeICIC(enhanced Inter-Cell Interference Coordination)の仕組みが存在する。ABSパターンは40ビットのビットマップ情報であり、このABSパターンを、準静的スケジューリング情報の送信停止パターンの情報として中央制御サーバ50等を介してHAPS基地局装置35及び地上基地局20(1),20(2)に配信することができる。HAPS基地局装置35及び地上基地局20(1),20(2)は、準静的スケジューリング情報に含まれるABSパターンに基づいて協調した互いに準静的なスケジューリング制御を行うことで、大セル10A(1)と地上セル20A(1),20A(2)との間の時間軸上での干渉回避制御ができる。
【0067】
なお、本実施形態における中央制御サーバ50による準静的スケジューリング情報の配信方法は、このようなeICICの仕組みを利用することができるが、必ずしもこの方法に限定されるものではない。
【0068】
また、中央制御サーバ50は、HAPS基地局装置35から受信した無線中継装置10の位置情報及び大セル10A(1),10A(2)のフットプリント情報、地上基地局20(1),20(2)から受信した他セル(主に大セル10A(1),10A(2))からの受信電力(干渉電力)、並びに、HAPSコアネットワーク30及び地上コアネットワーク40のそれぞれのNW装置から受信したデータトラフィック情報の少なくとも一つの情報に基づいて、前述の下りリンク送信停止パターンの情報及び上りリンク送信停止パターンの情報を含む準静的スケジューリング情報を更新し、更新後の準静的スケジューリング情報を地上基地局20(1),20(2)及び無線中継装置10に配信してもよい。
【0069】
例えば、中央制御サーバ50は、無線中継装置10の位置の移動距離が所定の閾値(距離)よりも大きくなったとき、又は、大セル10A(1),10A(2)のフットプリントの移動距離が所定の閾値(距離)よりも大きくなったときに、前述の準静的スケジューリング情報における下りリンク送信停止パターンの情報、上りリンク送信停止パターンの情報又はその両方を更新してもよい。
【0070】
本実施形態において、
図2及び
図3に例示するように、無線中継装置10は複数の大セル10A(1),10A(2)の信号を中継し、それらが個別のフットプリントを形成するように制御してもよい。その場合、無線中継装置10には複数の大セル10A(1),10A(2)の準静的スケジューリングが設定されてもよい。例えば、無線中継装置10が大セル10A(1),10A(2)のフットプリントを形成する場合に(
図2、
図3参照)、第1の大セル10A(1)のフットプリント内には干渉を与え得る他の地上基地局20(1),20(2)が存在し、また第2の大セル10A(2)のフットプリント内に干渉を与え得る他の地上基地局が存在しない場合には、第1の大セル10A(1)には一定の送信停止の時間(スロット)を有する準静的スケジューリング情報を与え、一方で、第2の大セル10A(2)にはすべての時間(スロット)において送信停止を行わなくてもよいような準静的スケジューリング情報を配信してもよい。
【0071】
上記フットプリント内に干渉を与え得る他の地上基地局が存在するかどうかについては、例えば、無線中継装置10に搭載されたアンテナ101の放射パターン情報と、無線中継装置10および他の地上基地局の位置情報とに基づいて、推定することができる。
【0072】
また、無線中継装置10がドローンなどの飛行体に搭載された上空滞在型の無線中継装置であった場合には、その位置が時々刻々変化することから、GNSSの位置情報と、あらかじめ設定された航路情報等と、アンテナ101の放射パターン情報とに基づいて、一つまたは複数のフットプリント情報を中央制御サーバ50で推定し、そのフットプリント情報に基づいて準静的スケジューリング情報を一定間隔で更新し、配信してもよい。
【0073】
また、中央制御サーバ50は、地上基地局20(1),20(2)が大セル10A(1),10A(2)から受信した受信電力(干渉電力)が所定の閾値よりも大きくなったときに、前述の準静的スケジューリング情報における下りリンク送信停止パターンの情報、上りリンク送信停止パターンの情報又はその両方を更新してもよい。
【0074】
地上セル20A(1),20A(2)における大セル10A(1),10A(2)からの干渉レベルは例えば次のように測定することができる。3GPPのLTEに準拠した標準的なUEにおいては、RRC(Radio Resource Control) Connected状態において、基地局から指示されたイベント条件を満たした際に、MR(Measurement Report)を送信することができる。UEは、MRにより、現在在圏しているセルや他のセルからのRSRP(Reference Signal Received Power)等の測定結果を基地局やネットワークに対して報告することができる。本実施形態の地上基地局20(1),20(2)は、自身のエリアに在圏するUEから上記MRを用いて、主に無線中継装置10からの干渉信号電力を報告させ、中央制御サーバ50に報告することができる。
【0075】
また、中央制御サーバ50は、HAPSコアネットワーク30及び地上コアネットワーク40それぞれのNW装置から受信したデータトラフィック情報が所定の閾値よりも大きくなったときに、前述の準静的スケジューリング情報における下りリンク送信停止パターンの情報、上りリンク送信停止パターンの情報又はその両方を更新してもよい。
【0076】
また、前述の
図2及び
図3において、中央制御サーバ50を設けずに、HAPS基地局装置35が中央制御サーバ50の機能を有してもよい。
【0077】
図7は、本実施形態に係る無線中継装置10におけるフレームタイミングを検出するための同期方法の一例を示す説明図である。無線中継装置10は、フレームタイミングを検出するために、HAPS基地局装置35から受信する下りリンクの中継信号であるRF信号(無線信号)に含まれる同期信号を検出する方法を用いることができる。無線中継装置10はRF信号受信機構(無線インターフェースベースの同期装置)を備えており、任意のRF信号波形データを保持しておくことが可能である。無線中継装置10は、HAPS基地局装置35から送信されることが想定されている同期信号のレプリカを保持し、受信したRF信号に対してレプリカ信号を用いて時間相関処理を行うことにより、その相関値のピーク位置を検出し、フレームタイミングを特定する。
【0078】
図7において、無線中継装置10は、HAPS基地局装置35の同期信号915として、PSS915(1)及びSSS915(2)の両方を受信して時間同期処理を行っている。
図7において、無線中継装置10は、所定のタイミングでCPを含むHAPS基地局装置35からのPSS915(1)及びSSS915(2)が連続した同期信号915を受信する。また、無線中継装置10は、CPをそれぞれ含むPSSのレプリカ916(1)及びSSSのレプリカ916(2)が連続した結合レプリカ系列916を生成する。この結合レプリカ系列916を、内部クロックの所定時を基準にしてスライドさせながら同期信号(SSS,PSS)915の受信信号と結合レプリカ系列916との間の相関値971を演算し、その相関値971のピーク971pを検出する。この相関値のピーク971pが検出された内部クロックの時刻をフレームタイミング(同期信号915の後端の時刻)Tsとして記憶する。その後、次の時間同期処理(フレームタイミング検出処理)を行うまでの各無線フレームの送信タイミング(各無線フレームの開始時刻)は、上記フレームタイミングTsを基準にして設定される。
【0079】
図7の例では、上記相関を演算するときに用いる結合レプリカ系列916の長さがPSSのレプリカのおよそ2倍になるため、PSSのみを用いたときの相関値972の場合に比較してノイズの影響を受けにくくなり、相関値のピーク(フレームタイミングTs)を検出するときの相関検出特性もおよそ2倍になる。そのため、レプリカのフレームタイミングTsの精度がより高くなる。
【0080】
無線中継装置10にGPS受信機などのGNSS受信機が搭載されている場合には、絶対時刻としてのUTC(協定世界時)時刻を取得することが可能である。従って、無線中継装置10は、GNSS受信機から出力されるUTC時刻に同期するように内部クロックのクロック信号を補正し、かつ、特定のUTC時刻とフレームタイミング(例えば、無線フレームの開始タイミング、又は、無線フレーム中の特定のスロット番号のスロットの開始タイミング)を紐づけ、HAPS基地局装置35と飛行体15の位置情報から推定される伝搬遅延を補正することにより、無線中継装置10は、HAPS基地局装置35からの同期信号を用いずに、フレームタイミングを自律的に特定して検出することができる。
【0081】
なお、無線中継装置10と地上に設置された中継元の基地局(HAPS基地局装置35)との間に、距離差による伝搬遅延が存在する場合には、無線中継装置10のUTC時刻で特定した無線フレーム911と実際に中継元の基地局(HAPS基地局装置35)から受信した信号の無線フレーム912のフレームタイミングとの間に誤差(
図8中のΔT)が生じる場合がある。この誤差は、無線中継装置10の位置情報と、中継元の基地局(HAPS基地局装置35)の位置情報を用いて伝搬遅延量を中央制御サーバ50が推定し、その推定結果を無線中継装置10に配信することで補正可能である。
【0082】
図9は、実施形態に係る通信システムにおける無線中継装置10の下りリンクに対応する部分の一構成例を示すブロック図である。なお、図中のHAPS基地局装置35は、地上基地局20(1),20(2)との間で、送信時の無線フレームのフレームタイミングが同期した状態になっている。この無線フレームのフレームタイミングの同期は、地上における大セル10A(1)の中心と無線中継装置10のアンテナ101との距離による伝搬遅延と、地上セル20A(1)、20A(2)と基地局20(1),20(2)のアンテナとの距離による伝搬遅延とを考慮し、同一フレーム番号(SFN:システムフレーム番号)の無線フレームがほぼ同じタイミングで地上に到達するように補正して行ってもよい。
【0083】
図9において、無線中継装置10は、サービスリンクのアンテナ101と、フィーダリンクのアンテナ102と、フィーダリンク側のデュプレクサ部111と、フィーダリンク受信信号に対する電力増幅器(LNA)112と、フィーダリンク受信信号に対するフィルタ部113と、フィーダリンクFLの周波数とサービスリンクSLの周波数との間の周波数変換処理を行う周波数変換部114と、サービスリンク送信信号に対するフィルタ部115と、サービスリンク送信信号を増幅するFET(電界効果ドランジスタ)等からなる電力増幅器(PA)110と、サービスリンク側のデュプレクサ部116と、内部クロック117とフレーム検出制御部118と、電力増幅器(PA)110に印加するバイアスを制御するバイアス制御部119とを備える。
【0084】
フレーム検出制御部118は、内部クロック117のクロック信号を基準にして、HAPS基地局装置35から受信した中継信号に含まれる同期信号に基づき、下りリンクのフレームタイミング(例えば、無線フレームの先頭の時刻情報、又は、同期信号を含む所定番号のスロットの先頭の時刻情報)を検出し、その検出結果をバイアス制御部119に出力する。
【0085】
また、フレーム検出制御部118は、フィルタ部115から分岐した中継信号に多重化された下りリンク送信停止パターンの情報を含む準静的スケジューリング情報を復調・復号して抽出し、抽出した準静的スケジューリング情報をバイアス制御部119に渡す。
【0086】
バイアス制御部119は、フレーム検出制御部118から出力された下りリンクのフレームタイミングの検出結果と、準静的スケジューリング情報に含まれる下りリンク送信停止パターンの情報とに基づいて、下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について電力増幅器110の消費電力を低下させるように電力増幅器110に印加するバイアスを制御する。
【0087】
例えば、電力増幅器110が無入力時又は小信号入力時に電力を消費する第1電力増幅動作と無入力時又は小信号入力時の消費電力が前記第1電力増幅動作よりも小さい第2電力増幅動作とを切り替え可能に構成されている場合、バイアス制御部119は、下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について前記第2電力増幅動作になるように電力増幅器110に印加するバイアスを制御する。ここで、第1電力増幅動作はA級又はAB級の電力増幅動作であり、第2電力増幅動作はC級又はB級の電力増幅動作であってもよい。
【0088】
また、電力増幅器110がFET(電界効果ドランジスタ)で構成されている場合、バイアス制御部119は、下りリンクの送信信号を送信するスロットの時間帯についは、電力増幅器110をA級動作で動作させるようにバイアスをオンにして所定のゲートバイアス電圧を電力増幅器110に印加する。一方、下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯については、バイアス制御部119は、電力増幅器110を消費電力がA級動作よりも小さいC級動作で動作させるようにバイアスをオフにして電力増幅器110へのゲートバイアス電圧の印加を停止する。
【0089】
図9において、下りリンク送信停止パターンの情報を含む準静的スケジューリング情報は、中央制御サーバ50からHAPS基地局装置35のベースバンド処理部352に配信される。HAPS基地局装置35のベースバンド処理部352は、スケジューラ部353により、内部クロック154のクロック信号を基準にして、送信対象のデータに基づいて所定の無線フレームで中継信号を生成し、アンテナ351を介して無線中継装置10に送信する。中継信号の無線フレームには同期信号が配置され、また、準静的スケジューリング情報が多重化される。
【0090】
図9において、中央制御サーバ50は、中継信号のフィーダリンクとは別の通信回線(例えば、衛星通信回線、WiFi回線、他の移動通信回線など)を介して、外部回線送受信部(例えば、衛星通信モジュール、WiFiモジュール、他の移動通信モジュール)55及びアンテナ551から無線中継装置10に送信してもよい。無線中継装置10のバイアス制御部119は、中継信号のフィーダリンクとは別の通信回線(衛星通信回線、WiFi回線、他の移動通信回線など)を介して、アンテナ121及び外部回線送受信部(例えば、衛星通信モジュール、WiFiモジュール、他の移動通信モジュール)120で受信された中央制御サーバ50からの準静的スケジューリング情報を取得する。
【0091】
図10は、実施形態に係る通信システムにおける無線中継装置の下りリンクに対応する部分の他の構成例を示すブロック図である。なお、
図10において、
図9と同様な構成については説明を省略する。
【0092】
図10において、無線中継装置10は、アンテナ131を介してGNSSの人工衛星からの電波を受信して前述のUTC時刻を出力するGNSS受信部130を備える。GNSS受信部130から出力されるUTC時刻に同期するように内部クロック117のクロック信号が補正される。フレーム検出制御部118は、内部クロック117のクロック信号に基づき、前述のように特定のUTC時刻とフレームタイミング(例えば、無線フレームの開始タイミング、又は、無線フレーム中の特定のスロット番号のスロットの開始タイミング)を紐づけ、HAPS基地局装置35と飛行体15の位置情報から推定される伝搬遅延を補正することにより、HAPS基地局装置35からの同期信号を用いずに、フレームタイミングを自律的に特定して検出することができる。
【0093】
また、
図10において、HAPS基地局装置35は、アンテナ355を介してGNSSの人工衛星からの電波を受信して前述のUTC時刻を出力するGNSS受信部356を備える。GNSS受信部356から出力されるUTC時刻に同期するように内部クロック354のクロック信号が補正される。ベースバンド処理部352は、内部クロック354のクロック信号に基づき、前述のように特定のUTC時刻とフレームタイミング(例えば、無線フレームの開始タイミング、又は、無線フレーム中の特定のスロット番号のスロットの開始タイミング)を紐づけることにより、送信時の無線フレームのフレームタイミングを設定することができる。
【0094】
図9及び
図10において、無線中継装置10のフレーム検出制御部118は、下りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する下りリンク送信停止パターンの情報を含む準静的スケジューリング情報を取得する情報取得部及び下りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出するフレームタイミング検出部として機能する。また、バイアス制御部119は、下りリンク送信停止パターンの情報とフレームタイミングの検出結果とに基づいて、下りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について電力増幅器110の消費電力を低下させるように電力増幅器110に印加するバイアスを制御する第1の制御部として機能する。
【0095】
また、
図9及び
図10に例示する無線中継装置10の構成は、複数のセクタセルである大セル10A(1),10A(2)のそれぞれについて設けられ、フレーム検出制御部118は、大セル(セクタセル)ごとに、下りリンク送信停止パターンの情報を含む準静的スケジューリング情報を取得し、下りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出する。また、バイアス制御部119は、大セル(セクタセル)ごとに、前述の電力増幅器110に対するバイアス制御を行ってもよい。
【0096】
以上、本実施形態によれば、上空に位置する無線中継装置10におけるサービスリンクSLのデータ信号を送信していない非データ送信時の電力増幅器(PA)110の低消費電力化を図るともに、非データ送信時における無線中継装置10からの不要な雑音信号の放射を低減して地上セル20A(1),20A(2)への干渉を抑制することができる。
【0097】
なお、上記実施形態では、無線中継装置10から地上のUEに向かってRF信号が送信されるサービスリンクSLの下りリンクに適用した場合について主に説明したが、本発明は、無線中継装置10からHAPS基地局装置35に向かってRF信号が送信されるフィーダリンクFLの上りリンクにも同様に適用できる。この場合、無線中継装置10は、上りリンクの無線フレームを構成する複数のスロットにおける送信信号を停止する上り送信停止パターンの情報を取得する情報取得部と、上りリンクの無線フレームのフレームタイミングを検出するフレームタイミング検出部と、上り送信停止パターンの情報とフレームタイミングの検出結果とに基づいて、上りリンクの送信信号を停止するスロットの時間帯について電力増幅器(PA)120の消費電力を低下させるように電力増幅器(PA)120に印加するバイアスを制御する第2の制御部と、を備える。このフィーダリンクFLの上りリンクの場合、上空に位置する無線中継装置10におけるフィーダリンクFLのデータ信号を送信していない非データ送信時の電力増幅器(PA)120の低消費電力化を図るともに、非データ送信時における無線中継装置10からの不要な雑音信号の放射を低減することができる。なお、上りリンクの無線フレームのフレームタイミングの検出は、次のように行うことができる。例えば、HAPS基地局装置35の下りリンク及び上りリンクのフレームタイミングが互いに同期するとともにそれらのフレームタイミングが地上基地局20(1),20(2)の下りリンク及び上りリンクのフレームタイミングと同期していることを前提とし、上記フレームタイミング検出部が、HAPS基地局装置35から下りリンクの無線信号に含まれる同期信号に基づいて下りリンクのフレームタイミングを検出し、その後、下りリンクのフレームタイミングに合わせるように上りリンクのフレームタイミングを決定することで、上りリンクの無線フレームのフレームタイミングを間接的に検出してもよい。
【0098】
また、本明細書で説明された処理工程並びに通信システム、移動通信システム、基地局、基地局装置、無線中継装置及び端末装置(ユーザ装置、移動局)の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0099】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、Node B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0100】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0101】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0102】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0103】
10 :無線中継装置
10A(1),10A(2):大セル(セクタセル)
15 :飛行体
20 :地上基地局
20A(1),20A(2) :地上セル
30 :HAPSコアネットワーク
35 :HAPS基地局装置
40 :地上コアネットワーク
50 :中央制御サーバ
55 :外部回線送受信部
101 :アンテナ
102 :アンテナ
103 :GNSS受信機
110 :電力増幅器
111 :デュプレクサ部
113 :フィルタ部
114 :周波数変換部
115 :フィルタ部
116 :デュプレクサ部
117 :内部クロック
118 :フレーム検出制御部
119 :バイアス制御部
121 :アンテナ
130 :GNSS受信部
131 :アンテナ
154 :内部クロック
351 :アンテナ
352 :ベースバンド処理部
353 :スケジューラ部
354 :内部クロック
355 :アンテナ
356 :GNSS受信部
551 :アンテナ