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特開2022-158460充電装置、および、当該充電装置を備えた電力システム
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  • 特開-充電装置、および、当該充電装置を備えた電力システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158460
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】充電装置、および、当該充電装置を備えた電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221006BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20221006BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20221006BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221006BHJP
   B60L 53/30 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J13/00 311A
H02J13/00 301A
H02J7/35 K
H02J3/38 110
H02J3/38 130
B60L53/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063382
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】増山 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小澤 悠介
(72)【発明者】
【氏名】村井 謙介
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AA07
5G064AC06
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB11
5G064DA11
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CB16
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD04
5H125AA01
5H125AC11
5H125AC24
5H125BC08
5H125BE01
5H125CA18
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】集中管理装置による管理対象を、充電電力を制御できない充電装置まで拡張できる電力システム、および、当該電力システムに用いられる充電装置を提供する。
【解決手段】接続された電気自動車Bの充電を行う通電状態と、充電を行わない不通状態とを切り替える充電装置Aにおいて、通電状態と不通状態とを切り替える開閉器12と、
通電状態にする優先度に応じた値であるパラメータkを設定する優先度設定部119を有し、かつ、充電装置Aを管理する集中管理装置Fから入力される誘導指標pr、パラメータk、および、あらかじめ設定されている最適化問題に基づいて、通電状態とするか不通状態とするかを判断するための判断指標Xを算出する判断指標演算部111と、判断指標Xを所定値と比較した比較結果に基づいて、開閉器12の切り替えを指示する判断部112とを備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された電気自動車等の充電を行う通電状態と、充電を行わない不通状態とで切り替えられる充電装置であって、
前記通電状態と前記不通状態とを切り替える開閉器と、
前記通電状態にする優先度に応じた値である優先度パラメータを設定する優先度設定部を有し、かつ、前記充電装置を管理する集中管理装置から入力される誘導指標、前記優先度パラメータ、および、あらかじめ設定されている最適化問題に基づいて、前記通電状態とするか前記不通状態とするかを判断するための判断指標を算出する判断指標演算部と、
前記判断指標を所定値と比較した比較結果に基づいて、前記通電状態とするか前記不通状態とするかを前記開閉器に指示する判断部と、
を備えている、
充電装置。
【請求項2】
前記優先度設定部は、前記通電状態である場合に、前記不通状態である場合より前記優先度を高くするように、前記優先度パラメータを設定する、
請求項1に記載の充電装置。
【請求項3】
前記不通状態から前記通電状態に切り替えられたオン回数をカウントするオン回数カウント部をさらに備え、
前記判断部は、
前記判断指標が前記所定値に基づく所定範囲内にある場合、前記通電状態と前記不通状態との切り替えを指示せず、
前記オン回数が大きいほど、前記所定範囲を広くし、
前記オン回数が上限値になった場合、前記通電状態とする指示を行う、
請求項1または2に記載の充電装置。
【請求項4】
前記優先度設定部は、前記電気自動車等の利用開始までの時間が短いほど前記優先度を高くするように、前記優先度パラメータを設定する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の充電装置。
【請求項5】
前記優先度設定部は、前記電気自動車等の走行予定距離が大きいほど前記優先度を高くするように、前記優先度パラメータを設定する、
請求項1ないし4のいずれかに記載の充電装置。
【請求項6】
前記優先度設定部は、あらかじめ設定された優先度レベルに応じて前記優先度を高くするように、前記優先度パラメータを設定する、
請求項1ないし5のいずれかに記載の充電装置。
【請求項7】
前記判断部は、前記電気自動車等の利用開始までの時間が、前記電気自動車等の充電率が要求された要求充電率になるまでの時間以下の場合、前記通電状態とする指示を行う、
請求項1ないし6のいずれかに記載の充電装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の複数の充電装置と、
共通の前記誘導指標を前記各充電装置に出力する前記集中管理装置と、
を備えている電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車などへの充電を行う充電装置、および、当該充電装置を備えた電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力系統に接続された複数の電力装置を管理して、電力系統との間で送受される電力の制御を行う電力システムが普及しつつある。例えば、特許文献1には、集中管理装置と複数の電力装置とを備え、自律分散協調制御方式により出力電力の制御を行う電力システムの一例が開示されている。集中管理装置は、電力システム全体の出力電力を目標電力に制御するための誘導指標を算出する。複数の電力装置は、集中管理装置が算出した共通の誘導指標を用いて、それぞれ設定されている最適化問題に基づいて、自装置の出力電力の目標値を算出する。そして、出力電力が当該目標値となるように、自装置の出力電力を制御する。各電力装置が、誘導指標に基づいて自律的に出力電力を制御することで、電力システム全体の出力電力が目標電力に制御される。集中管理装置は、各電力装置の状態などを把握することなく、指標を算出して送信するだけなので、演算や通信の負担が小さい。したがって、高性能で高価な集中管理装置は必要でなく、初期導入費用を軽減できる。また、電力システムを拡張する場合に、集中管理装置の大きな改修が必要にならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-148627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、電力装置として、出力電力を制御可能な太陽光発電装置と、充電および放電が可能であり、入出力電力を制御可能な蓄電装置とを想定している。集中管理装置は、入出力電力を制御できない電力装置を管理対象に含めることができない。例えば、電気自動車用の小規模な充電装置は、接続された電気自動車への充電電力の制御ができない。したがって、集中管理装置は、このような充電装置を管理対象に含めることができなかった。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、集中管理装置による管理対象を、充電電力を制御できない充電装置まで拡張できる電力システム、および、当該電力システムに用いられる充電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供される充電装置は、接続された電気自動車等の充電を行う通電状態と、充電を行わない不通状態とで切り替えられる充電装置であって、前記通電状態と前記不通状態とを切り替える開閉器と、前記通電状態にする優先度に応じた値である優先度パラメータを設定する優先度設定部を有し、かつ、前記充電装置を管理する集中管理装置から入力される誘導指標、前記優先度パラメータ、および、あらかじめ設定されている最適化問題に基づいて、前記通電状態とするか前記不通状態とするかを判断するための判断指標を算出する判断指標演算部と、前記判断指標を所定値と比較した比較結果に基づいて、前記通電状態とするか前記不通状態とするかを前記開閉器に指示する判断部とを備えている。
【0007】
「電気自動車等」とは、動力源としての電動機および電動機に電力を供給する蓄電池を備えた移動体である。したがって、「電気自動車等」は、電動機のみを動力源とするいわゆる電気自動車だけでなく、内燃機関が併設されたプラグインハイブリッド車なども含む。また、「電気自動車等」は、自動車のみならず、二輪車(電動オートバイ、電動アシスト自転車)などの他の乗り物も含み、また、無人搬送車なども含む。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記優先度設定部は、前記通電状態である場合に、前記不通状態である場合より前記優先度を高くするように、前記優先度パラメータを設定する。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記不通状態から前記通電状態に切り替えられたオン回数をカウントするオン回数カウント部をさらに備え、前記判断部は、前記判断指標が前記所定値に基づく所定範囲内にある場合、前記通電状態と前記不通状態との切り替えを指示せず、前記オン回数が大きいほど、前記所定範囲を広くし、前記オン回数が上限値になった場合、前記通電状態とする指示を行う。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記優先度設定部は、前記電気自動車等の利用開始までの時間が短いほど前記優先度を高くするように、前記優先度パラメータを設定する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記優先度設定部は、前記電気自動車等の走行予定距離が大きいほど前記優先度を高くするように、前記優先度パラメータを設定する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記優先度設定部は、あらかじめ設定された優先度レベルに応じて前記優先度を高くするように、前記優先度パラメータを設定する。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記電気自動車等が接続されたことを検出する接続検出部をさらに備え、前記判断部は、前記接続検出部が前記電気自動車等の接続を検出したときに、前記通電状態とする指示を行い、第1時間の間、前記通電状態を継続させる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記判断部は、前記不通状態から前記通電状態に切り替えた場合、第2時間の間、前記通電状態を継続させる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記判断部は、前記電気自動車等の利用開始までの時間が、前記電気自動車等の充電率が要求された要求充電率になるまでの時間以下の場合、前記通電状態とする指示を行う。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記判断部は、前記集中管理装置から前記誘導指標が入力されない場合、前記通電状態とする指示を行う。
【0017】
本発明の第2の側面によって提供される電力システムは、本発明の第1の側面によって提供される複数の充電装置と、共通の前記誘導指標を前記各充電装置に出力する前記集中管理装置とを備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、判断指標演算部は、集中管理装置から入力される共通の誘導指標、設定された優先度パラメータ、および、あらかじめ設定されている最適化問題に基づいて判断指標を算出する。そして、判断部は、判断指標を所定値と比較した比較結果に基づいて、通電状態とするか不通状態とするかを指示する。つまり、充電装置は、通電状態(オン)と不通状態(オフ)とを、誘導指標に基づいて自律的に切り替える。したがって、集中管理装置は、充電電力を制御できない充電装置に対して、誘導指標に基づくオンオフ制御を行わせることができる。これにより、電力システムにおいて、集中管理装置による管理対象を、入出力電力を制御できない充電装置まで拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る電力システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る充電装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】誘導指標に対する判断指標の変化特性を示す特性図である。
図4】各パラメータの設定方法について説明するための図である。
図5】電気自動車の優先度レベルに応じてパラメータk7を設定したときの、判断指標Xの変化特性の違いを説明するための図である。
図6】制御部が行うオンオフ処理を説明するためのフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1は、第1実施形態に係る電力システムの全体構成を示すブロック図である。電力システムGは、電力系統Eに連系しており、電力系統Eから送受電可能である。電力システムGは、電力システムGと電力系統Eとの接続点における電力(以下「接続点電力」とする)が目標電力となるように、自律分散協調制御方式により出力電力の制御を行う。なお、以下の説明において、電力システムGが電力系統Eに送電している(逆潮流している)場合、接続点電力を正の値とする。一方、電力システムGが電力系統Eから受電している場合、接続点電力を負の値とする。電力システムGは、集中管理装置F、パワーコンディショナC1~Cn、パワーコンディショナD1~Dm、充電装置A1~Ak、および、ユーザ情報データベースHを備えている。本実施形態では、電力システムGが事業所に設置された電力システムであり、充電装置A1~Akが、従業員の通勤用車両および営業用車両などに充電を行う、事業所の駐車場に配置された充電ステーションを構成する場合を例にして説明する。
【0022】
集中管理装置Fは、接続点電力を監視し、接続点電力を目標電力に瞬時値制御するための指標を算出する。本実施形態では、集中管理装置Fは、電力システムGと電力系統Eとの接続点で検出した電力値を、接続点電力P(t)として用いる。なお、集中管理装置Fは、各パワーコンディショナC1~Cn,D1~Dm、および、各充電装置A1~Akがそれぞれ検出した入出力電力の検出値を受信して、これらの検出値から算出される合計値を接続点電力P(t)として用いてもよい。集中管理装置Fは、設定された目標電力Pcと接続点電力P(t)との差に基づいて誘導指標prを算出し、各パワーコンディショナC1~Cn,D1~Dm、および、各充電装置A1~Akに、共通の誘導指標prを送信する。なお、通信方法は限定されず、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0023】
パワーコンディショナC1~Cnは、それぞれ太陽電池が接続され、太陽電池が発電した直流電力を交流電力に変換して出力する。各パワーコンディショナC1~Cnは、目標電力算出部91および出力制御部92を備えている。目標電力算出部91は、集中管理装置Fから受信した誘導指標prを用いて、あらかじめ設定されている最適化問題に基づいて、自装置の出力電力の目標値である目標電力値Prefを算出する。出力制御部92は、目標電力算出部91が算出した目標電力値Prefに基づいて、出力電力の制御を行う。
【0024】
パワーコンディショナD1~Dmは、それぞれ蓄電池が接続され、蓄電池の充放電を行う。図1においては省略しているが、各パワーコンディショナD1~Dmは、パワーコンディショナC1~Cnと同様、目標電力算出部91および出力制御部92を備えている。パワーコンディショナD1~Dmの目標電力算出部91には、蓄電池の充放電に適した最適化問題があらかじめ設定されている。
【0025】
充電装置A1~Akは、接続された電気自動車B1~Bkをそれぞれ充電する装置である。以下では、充電装置A1~Akを区別せず説明する場合、「充電装置A」と記載する。また、電気自動車B1~Bkを区別せず説明する場合、「電気自動車B」と記載する。電気自動車Bは、電動機を動力源として走行可能な自動車であり、内燃機関が併設された自動車(たとえばプラグインハイブリッド車)も含んでいる。電気自動車Bは、蓄電池3を搭載している。充電装置Aは、充電ケーブル2によって接続されている電気自動車Bに搭載された蓄電池3を充電する。電気自動車Bの電動機は、蓄電池3に蓄積された電力によって動作する。
【0026】
各充電装置Aは、充電電力の制御を行うことができず、接続された電気自動車Bが電力系統Eに連系して充電される通電状態と、解列して充電されない不通状態とを切り替える。充電装置Aは、集中管理装置Fから受信した誘導指標prに基づいて、通電状態と不通状態とを切り替える。また、本実施形態では、充電装置Aは、後述するように、充電の優先度を考慮して、通電状態と不通状態との切り替えを行う。なお、各充電装置Aは、接続された電気自動車Bの蓄電池3から放電を行う機能を備えていてもよい。充電装置Aの詳細については、後述する。
【0027】
ユーザ情報データベースHは、各電気自動車Bのユーザに関する各種情報を記憶している。ユーザ情報データベースHは、各充電装置Aと通信を行って、必要な情報を各充電装置Aに送信する。なお、通信方法は限定されず、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。各種情報には、電気自動車Bの利用時刻、走行予定距離、蓄電池容量、要求充電率、および優先度レベルなどが含まれる。例えば、電気自動車Bが通勤用車両である場合は、利用時刻としてユーザの帰宅時刻が設定され、走行予定距離としてユーザの通勤距離が設定される。また、電気自動車Bが営業用車両である場合は、利用時刻としてユーザの営業開始時刻が設定され、走行予定距離としてユーザの訪問先に応じた走行距離が設定される。なお、各種情報に含まれる情報は、これらに限定されない。
【0028】
集中管理装置Fから受信した共通の誘導指標prに基づいて、各パワーコンディショナC1~Cn,D1~Dmが自律的に入出力電力を制御し、各充電装置A1~Akが自律的に通電状態と不通状態とで切り替わる。これにより、電力システムG全体の出力電力(接続点電力P(t))が目標電力Pcに制御される。本実施形態においては、集中管理装置Fは、接続点電力P(t)が目標電力Pcより大きい場合に誘導指標prを大きくし、接続点電力P(t)が目標電力Pcより小さい場合に誘導指標prを小さくする。各パワーコンディショナC1~Cn,D1~Dmおよび各充電装置A1~Akは、集中管理装置Fから受信した誘導指標prが大きいほど、接続点電力P(t)を小さくするように動作し、誘導指標prが小さいほど、接続点電力P(t)を大きくするように動作する。パワーコンディショナC1~Cn,D1~Dmおよび集中管理装置Fの詳細な説明は省略する。
【0029】
次に、充電装置Aの詳細について説明する。充電装置Aと電気自動車Bとは、充電ケーブル2によって接続される。充電ケーブル2は、充電コネクタが電気自動車Bの充電口に接続され、充電プラグが充電装置Aの充電用コンセントに接続される。充電装置Aは、ユーザ情報データベースHと通信を行っており、ユーザ情報データベースHから、各種情報を受信する。また、本実施形態では、充電装置Aは、充電ケーブル2で接続された電気自動車Bとも通信を行っており、電気自動車Bから蓄電池3の現在の充電率(SoC:State of Charge)および蓄電池容量などの情報を受信する。なお、通信方法は限定されず、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。有線通信の場合、充電ケーブル2に電力線とは別に配置された通信線を利用してもよいし、電力線に通信信号を重畳させるPLC(Power Line Communication)通信を行ってもよい。
【0030】
図2は、充電装置Aの内部構成を示すブロック図である。充電装置Aは、制御部11、開閉器12、充電用コンセント13、接続検出部14、および受信部15を備えている。
【0031】
充電用コンセント13は、電気自動車Bを充電装置Aに接続するためのコンセントであり、電気自動車Bに接続された充電ケーブル2の充電プラグが接続される。接続検出部14は、充電装置Aに電気自動車Bが接続されたことを検出する。具体的には、接続検出部14は、電気自動車Bに接続された充電ケーブル2の充電プラグが充電用コンセント13に接続されているか否かを検出する。なお、接続検出部14は、他の方法で、充電装置Aに電気自動車Bが接続されたことを検出してもよい。接続検出部14は、検出結果を制御部11に出力する。受信部15は、集中管理装置Fから誘導指標prを受信し、電気自動車Bおよびユーザ情報データベースHから情報を受信する。受信部15は、受信した誘導指標prおよび各種情報を制御部11に出力する。
【0032】
開閉器12は、充電装置Aの内部で、充電装置Aの充電用コンセント13につながる接続線に配置されており、電気自動車Bが充電される通電状態と、充電されない不通状態とを切り替えるスイッチである。開閉器12が閉路状態(オン)のときに、充電装置Aは通電状態になって、電気自動車Bは充電される。一方、開閉器12が開放状態(オフ)のときに、充電装置Aは不通状態になって、電気自動車Bは充電されない。開閉器12は、制御部11より入力される判断結果に基づいて、切り替えを行う。
【0033】
制御部11は、受信部15から入力される誘導指標prおよび各種情報と、接続検出部14から入力される検出結果とに基づいて、開閉器12を切り替えるための判断を行って、判断結果を開閉器12に出力する。制御部11は、判断指標演算部111、判断部112、充電率取得部113、蓄電池容量取得部114、オン回数カウント部115、ユーザ情報取得部116、および誘導指標取得部117を備えている。
【0034】
充電率取得部113は、受信部15から入力される情報のうち、電気自動車Bから受信した電気自動車Bの蓄電池3の充電率を取得する。充電率取得部113は、取得した充電率を判断指標演算部111および判断部112に出力する。蓄電池容量取得部114は、受信部15から入力される情報のうち、電気自動車Bから受信した電気自動車Bの蓄電池容量を取得する。なお、蓄電池容量取得部114は、蓄電池容量を、ユーザ情報データベースHから受信した情報から取得してもよい。蓄電池容量取得部114は、取得した蓄電池容量を判断指標演算部111および判断部112に出力する。
【0035】
オン回数カウント部115は、判断部112が開閉器12を開放状態(オフ)から閉路状態(オン)に切り替えた回数(オン回数)をカウントする。オン回数は、1日(24時間)ごとに「0」に初期化される。すなわち、オン回数カウント部115は、1日の中でのオン回数をカウントする。オン回数カウント部115は、オン回数を判断指標演算部111および判断部112に出力する。ユーザ情報取得部116は、受信部15から入力される情報のうち、ユーザ情報データベースHから受信した情報を取得する。ユーザ情報取得部116は、取得した情報を判断指標演算部111および判断部112に出力する。誘導指標取得部117は、受信部15から入力される誘導指標prを取得する。誘導指標取得部117は、取得した誘導指標prを判断指標演算部111および判断部112に出力する。
【0036】
判断指標演算部111は、誘導指標取得部117から入力される誘導指標prを用いて、あらかじめ設定されている最適化問題に基づいて、通電状態とするか不通状態とするかを判断するための判断指標Xを算出する。この最適化問題は、評価関数を含んでいる。
【0037】
判断指標演算部111は、設定されている評価関数から導出される下記(1)式で示す演算式が設定されており、この演算式によって、判断指標Xを算出する。指標限界prlmtは、集中管理装置Fが算出する誘導指標prの最大値および最小値を定義する値である。a1,a2,kは設定パラメータであり、電気自動車Bの蓄電池3の特性や電気自動車Bの充電の優先度などに応じて適宜設定される。パラメータa1は、主に、誘導指標prの変化に応じた判断指標Xの変化量を調整する値であり、0より大きい値が設定される。パラメータa2は、主に、判断指標Xが変化し始める誘導指標prを調整する値である。本実施形態では、パラメータa1およびパラメータa2には「1」が設定されている。なお、パラメータa1およびパラメータa2は限定されない。また、パラメータa1およびパラメータa2は、誘導指標prが正の値の場合と負の値の場合とで異なった値が設定されてもよい。パラメータkは、電気自動車Bの充電の優先度を設定する値である。本実施形態では、優先度が高いほど小さい値になるように、パラメータkが設定される。パラメータkの具体的な算出方法は後述する。判断指標演算部111は、算出した判断指標Xを、判断部112に出力する。なお、判断指標演算部111は、下記(1)式で示す演算式ではなく、設定されている評価関数を解くことで、判断指標Xを算出してもよい。
【数1】
【0038】
図3は、パラメータa1およびパラメータa2に「1」が設定され、パラメータkに「0」(優先度の基準値)が設定された場合の、誘導指標prに対する判断指標Xの変化特性を示す特性図である(実線参照)。同図においては、横軸が誘導指標prであり、縦軸が判断指標Xである。判断指標Xの変化特性は、同図に示すように、誘導指標prに比例して、誘導指標prが大きいほど小さくなり、誘導指標prが「0」のときに「0」になっている。また、誘導指標prが最大値prlmtのときに「-1」になり、誘導指標prが最小値(-prlmt)のときに「1」になっている。
【0039】
電気自動車Bの充電の優先度を設定するパラメータkは、優先度が高いほど小さい値が設定される。パラメータkにより小さい値が設定されるほど、誘導指標prが「0」のときの判断指標Xが小さくなり、図3の判断指標Xの変化特性を示す直線が図における下方に平行移動する(図3の破線参照)。
【0040】
判断指標演算部111は、優先度設定部119を備えている。優先度設定部119は、パラメータkを算出して設定する。判断指標演算部111は、充電率取得部113から充電率を入力され、蓄電池容量取得部114から蓄電池容量を入力され、オン回数カウント部115からオン回数を入力され、ユーザ情報取得部116から情報を入力されて、パラメータkを算出する。本実施形態では、パラメータkは、パラメータk1~k7に基づいて算出される。
【0041】
パラメータk1は、充電率取得部113から入力された充電率に基づいて設定される。本実施形態では、優先度設定部119は、図4(a)に示すように、充電率が低いほどパラメータk1を小さい値に設定する。なお、図4(a)は一例であって、パラメータk1の設定方法は限定されない。
【0042】
パラメータk2は、ユーザ情報取得部116から入力された電気自動車Bの利用時刻に基づいて設定される。本実施形態では、優先度設定部119は、現在時刻から、電気自動車Bの利用開始までの時間を算出する。そして、優先度設定部119は、図4(b)に示すように、パラメータk2を、利用開始までの時間が所定時間以上の場合には「0」とし、利用開始までの時間が所定時間未満の場合には、時間が短いほど小さい値に設定する。なお、図4(b)は一例であって、パラメータk2の設定方法は限定されない。
【0043】
パラメータk3は、蓄電池容量取得部114から入力された蓄電池容量に基づいて設定される。本実施形態では、優先度設定部119は、図4(c)の実線で示すように、パラメータk3を、蓄電池容量が第1の所定値以上の場合には「0」とし、蓄電池容量が第1の所定値未満の場合には、蓄電池容量が大きいほど小さい値に設定し、蓄電池容量が第1の所定値より小さい第2の所定値以下の場合には固定値に設定する。なお、図4(c)は一例であって、パラメータk3の設定方法は限定されない。本実施形態において、優先度設定部119が、蓄電池容量が大きいほどパラメータk3を小さい値に設定しているのは、蓄電池容量が大きいと充電時の充電率の増加が遅いので優先的に充電させるという考えによるものである。一方、蓄電池容量が小さいと満充電までに必要な充電量が少ない。したがって、蓄電池容量の小さいものを先に充電して、充電の必要な電気自動車Bの数を減少させることができる。この考えのもとに、優先度設定部119は、図4(c)の破線で示すように、蓄電池容量が小さいほどパラメータk3を小さい値に設定してもよい。
【0044】
パラメータk4は、ユーザ情報取得部116から入力された電気自動車Bの走行予定距離に基づいて設定される。本実施形態では、優先度設定部119は、図4(d)に示すように、パラメータk4を、走行予定距離が第1距離以上の場合には「0」とし、走行予定距離が第1の所定値未満の場合には、走行予定距離が大きいほど小さい値に設定し、走行予定距離が第1距離より小さい第2距離以下の場合には固定値に設定する。なお、図4(d)は一例であって、パラメータk4の設定方法は限定されない。
【0045】
パラメータk5は、充電装置Aが通電状態であるか不通状態であるかに基づいて設定される。優先度設定部119は、判断部112から、充電装置Aが通電状態であるか不通状態であるか(判断部112が開閉器12を開放状態としているか閉路状態としているか)の情報を取得する。優先度設定部119は、充電装置Aが通電状態である場合に、パラメータk5を、充電装置Aが不通状態である場合より小さい値に設定する。なお、各場合にパラメータk5に設定される値は限定されない。
【0046】
パラメータk6は、充電装置Aの通電状態と不通状態との切り替え回数に基づいて設定される。優先度設定部119は、オン回数カウント部115からオン回数を入力される。本実施形態では、優先度設定部119は、図4(e)に実線で示すように、パラメータk6を、オン回数が第1回数以下の場合には「0」とし、オン回数が第1回数より大きい場合には、オン回数が大きいほど小さい値に設定し、オン回数が第1距離より大きい第2回数以上の場合には固定値に設定する。なお、図4(e)は一例であって、パラメータk6の設定方法は限定されない。本実施形態において、優先度設定部119が、オン回数が大きい場合にパラメータk6を小さい値に設定しているのは、充電装置Aによる充電の優先度を高くして、充電装置Aを不通状態に切り替えられにくくするためである。一方、優先度設定部119は、図4(e)の破線に示すように、パラメータk6を、オン回数が大きいほど大きい値に設定してもよい。この場合、充電装置Aによる充電の優先度が低くなって、充電装置Aを通電状態に切り替えられにくくできる。
【0047】
パラメータk7は、ユーザ情報取得部116から入力された電気自動車Bの優先度レベルに基づいて設定される。本実施形態では、優先度レベルは、優先度を高くするレベル1、優先度を低くするレベル3、および優先度を修正しないレベル2の3種類のレベルが設けられている。ユーザは、電気自動車Bの優先度レベルとして、いずれかのレベルをユーザ情報データベースHに登録する。なお、ユーザ情報データベースHには、あらかじめレベル3が登録されており、ユーザが必要に応じて、レベル1またはレベル2に変更してもよい。優先度設定部119は、優先度レベルがレベル1の場合、パラメータk7を、レベル2の場合より小さい値に設定する。また、優先度設定部119は、優先度レベルがレベル3の場合、パラメータk7を、レベル2の場合より大きい値に設定する。なお、優先度レベルは、3種類に限定されず、2種類であってもよいし、4種類以上であってもよい。また、優先度設定部119は、ユーザ情報データベースHに登録された優先度レベルではなく、他の要素に応じて設定された優先度レベルに基づいて、パラメータk7を設定してもよい。このような優先度レベルは、例えば、オン回数カウント部115がカウントしたオン回数に応じて、設定されてもよい。
【0048】
本実施形態では、優先度設定部119は、パラメータk1~k6を加算してパラメータk’を算出し、パラメータk’が(-1≦k≦1)の範囲に収まるように規格化を行う。規格化は、各パラメータk1~k6がそれぞれ取りうる最大値を加算した値が1となるように、また、各パラメータk1~k6がそれぞれ取りうる最小値を加算した値が-1となるように、パラメータk’を補正する。そして、優先度設定部119は、規格化されたパラメータk’にパラメータk7を加算することで、パラメータkを算出する。
【0049】
図5は、電気自動車Bの優先度レベルに応じてパラメータk7を設定したときの、判断指標Xの変化特性の違いを説明するための図である。図5は、パラメータk’が「0」の場合の、判断指標Xの変化特性を示している。実線は、優先度レベルがレベル2であり、パラメータk7が「0」である場合の判断指標Xの変化特性を示している。破線は、優先度レベルがレベル1であり、パラメータk7が「-α」である場合の判断指標Xの変化特性を示している。一点鎖線は、優先度レベルがレベル3であり、パラメータk7が「α」である場合の判断指標Xの変化特性を示している。図5に示すように、パラメータk’が同じ「0」であっても、レベル1の場合(破線参照)にX≦0となる誘導指標prの範囲R1と、レベル3の場合(一点鎖線参照)にX≦0となる誘導指標prの範囲R3とは、異なっている。つまり、優先度レベルをレベル1~3のいずれに設定するかで、X≦0となる誘導指標prの範囲を変更することができる。
【0050】
なお、優先度設定部119でのパラメータkの算出は、パラメータk1~k7をすべて用いる場合に限定されず、少なくともいずれか1個を用いればよい。また、優先度設定部119でのパラメータkの算出方法は、上述した方法に限定されない。
【0051】
判断部112は、判断指標演算部111より入力される判断指標Xを所定値と比較することで、通電状態とするか不通状態とするかを判断する。判断部112は、判断結果を開閉器12に出力する。判断部112は、判断指標Xが所定値以下であれば通電状態にすると判断し、判断結果として開閉器12に閉路状態(オン)とする指示を行う。一方、判断部112は、判断指標Xが所定値より大きければ不通状態にすると判断し、判断結果として開閉器12に開放状態(オフ)とする指示を行う。本実施形態では、比較のための所定値は「0」である。なお、所定値は限定されない。
【0052】
上記(1)式から明らかなように、判断指標Xは、誘導指標prに比例して、誘導指標prが大きいほど小さくなる(図3参照)。したがって、誘導指標prが大きくなると、判断指標Xが小さくなって、所定値(例えば「0」)を下回ることにより、開閉器12が開放状態から閉路状態に切り替えられる。これにより、電気自動車Bへの充電が開始され、消費される電力が増加して、接続点電力P(t)が減少する。一方、誘導指標prが小さくなると、判断指標Xが大きくなって、所定値(例えば「0」)を上回ることにより、開閉器12が閉路状態から開放状態に切り替えられる。これにより、電気自動車Bへの充電が停止され、消費される電力が減少して、接続点電力P(t)が増加する。
【0053】
また、開閉器12の開放状態と閉路状態とが切り替るタイミングは、パラメータkによって異なる。パラメータkは、電気自動車Bの充電の優先度が高いほど小さな値に設定される。図3では、パラメータkに「0」が設定された場合の判断指標Xを実線で示し、パラメータkに「-0.5」が設定された場合の判断指標Xを破線で示している。破線で示す判断指標Xの方が、実線で示す判断指標Xの場合より、誘導指標prがより小さいときに所定値(例えば「0」)以下になるので、開閉器12が閉路状態になりやすい。つまり、優先度が高いほど(パラメータkが小さいほど)、誘導指標prが増加したときに、開放状態から閉路状態に切り替わるタイミングが早くなり、誘導指標prが減少したときに、閉路状態から開放状態に切り替わるタイミングが遅くなる。
【0054】
本実施形態では、判断部112は、所定の場合に、判断指標Xに基づく判断より優先して、開閉器12を強制的に閉路状態(オン)に切り替えて、充電装置Aを通電状態にする。
【0055】
充電装置Aに電気自動車Bを接続したときに充電が開始されないと、ユーザは、電気自動車Bまたは充電装置Aが故障していると感じてしまう。これを防ぐために、本実施形態では、判断部112は、充電装置Aに電気自動車Bが接続されたときには、充電装置Aを通電状態に切り替え、通電状態をしばらく継続させる。具体的には、判断部112は、接続検出部14から、電気自動車Bが接続されたことを示す信号を入力されたときに、開閉器12に閉路状態とする指示を行い、所定の時間T1の間、閉路状態を継続させる。これにより、充電装置Aは、電気自動車Bを接続された場合、通電状態になって充電を開始し、所定の時間T1の間、充電を継続する。
【0056】
充電装置Aが不通状態から通電状態に切り替わると、電力の消費が増加するので、誘導指標prが減少する。これに応じて充電装置Aが不通状態に切り替えらえると、通電状態と不通状態との切り替えを短時間に繰り返すチャタリングが発生する場合がある。これを防ぐために、本実施形態では、判断部112は、充電装置Aが通電状態に切り替えられて充電を開始したときには、通電状態をしばらく継続させる。具体的には、判断部112は、開閉器12を開放状態から閉路状態に切り替えた場合、所定の時間T2の間、閉路状態を継続させる。これにより、充電装置Aは、通電状態に切り替えられて充電を開始した場合、所定の時間T2の間、充電を継続する。
【0057】
走行中に電気自動車Bの充電率が不足してしまうと、電気自動車Bが走行できなくなる。これを防ぐために、本実施形態では、ユーザは、あらかじめ必要な充電率を、要求充電率としてユーザ情報データベースHに登録している。そして、判断部112は、電気自動車Bの利用時刻までに充電率が要求充電率となるように、開閉器12を強制的に閉路状態に切り替える機能を有する。具体的には、判断部112は、ユーザ情報取得部116から入力された利用時刻と現在時刻とから、電気自動車Bの利用開始までの時間Tx[分]を算出する。また、判断部112は、充電率取得部113から入力された現在の充電率S1[%]と、ユーザ情報取得部116から入力された要求充電率S2[%]と、蓄電池容量取得部114から入力された蓄電池容量W[kWh]とから、利用時刻までに要求充電率まで充電できるか否かを判断する。充電装置Aの充電電力はあらかじめ設定されており、Px[kW]とすると、判断部112は、例えば下記(2)式の不等式が成立する場合に、充電時間が足りなくなると判断して、開閉器12に閉路状態とする指示を行う。開閉器12は、開放状態であるときには閉路状態に切り替わり、閉路状態であるときには閉路状態を継続する。これにより、充電装置Aは、強制的に通電状態になって電気自動車Bの充電を行うので、電気自動車Bは、利用時刻に要求充電率まで充電される。
【数2】
【0058】
充電装置Aと集中管理装置Fとの通信に障害が発生した場合、充電装置Aは、集中管理装置Fから誘導指標prを受信できない。この場合、判断指標演算部111は、判断指標Xを算出できず、判断部112は、開閉器12に判断結果を出力できない。したがって、判断部112は、開閉器12が開放状態であった場合、本来は閉路状態に切り替えるべき状態であっても、閉路状態に切り替えることができない。これにより、充電装置Aは、電気自動車Bに充電できなくなる。これを防ぐために、本実施形態では、判断部112は、集中管理装置Fから誘導指標prを受信できない場合は、充電装置Aを通電状態にする。具体的には、判断部112は、誘導指標取得部117から誘導指標prが入力されない場合、開閉器12に閉路状態とする指示を行う。開閉器12は、開放状態であるときには閉路状態に切り替わり、閉路状態であるときには閉路状態を継続する。これにより、充電装置Aは、誘導指標prを受信できない場合には、常に通電状態になる。
【0059】
開閉器12には、1日のうちで開放状態から閉路状態に切り替える回数の上限値が設定されている。この上限値を超えて切り替えが行われると、開閉器12の動作寿命が短くなるおそれがある。これを防ぐために、本実施形態では、判断部112は、開放状態から閉路状態への切り替え回数が上限値になった場合は、充電装置Aを不通状態に切り替えないようにする。具体的には、判断部112は、オン回数カウント部115からオン回数を入力される。判断部112は、オン回数が上限値になった場合、開閉器12の閉路状態を継続させる。これにより、充電装置Aは、オン回数が上限値になった場合には、常に通電状態になる。
【0060】
図6は、制御部11が行うオンオフ処理を説明するためのフローチャートの一例である。当該オンオフ処理は、充電装置Aを通電状態にするか不通状態にするかを判断して、判断結果を開閉器12に出力する処理である。当該オンオフ処理は、充電装置Aが起動されたときに開始される。
【0061】
まず、電気自動車Bが接続されたか否かが判別される(S1)。具体的には、判断部112が、接続検出部14から、電気自動車Bが接続されたことを示す信号を入力されたか否かを判別する。電気自動車Bが接続されていない場合(S1:NO)、ステップS1に戻って、ステップS1の判別が繰り返される。つまり、電気自動車Bが接続されるのを待つ。電気自動車Bが接続された場合(S1:YES)、開閉器12が閉路状態(オン)に切り替えられて、所定の時間T1の間、閉路状態が継続される(S2)。具体的には、判断部112が、開閉器12に閉路状態とする指示を行い、所定の時間T1の間、閉路状態とする指示を継続する。
【0062】
次に、開閉器12が閉路状態(オン)に切り替えられたか否かが判別される(S3)。具体的には、判断部112が、開閉器12に開放状態とする指示を行っている状態から、閉路状態とする指示を行うようになったか否かを判別する。開閉器12が閉路状態に切り替えられた場合(S3:YES)、所定の時間T2の間、閉路状態が継続され(S4)、ステップS5に進む。具体的には、判断部112が、所定の時間T2の間、閉路状態とする指示を継続する。一方、開閉器12が閉路状態に切り替えられなかった場合(S3:YES)、ステップS4の処理は行われず、ステップS5に進む。
【0063】
次に、電気自動車Bの充電率が要求充電率まで充電可能であるか否かが判別される(S5)。具体的には、判断部112は、電気自動車Bの利用開始までの時間Tx[分]を算出し、現在の充電率S1[%]、要求充電率S2[%]、蓄電池容量W[kWh]、および、充電装置Aの充電電力Px[kW]から、上記(2)式の不等式が成立するか否かを判別する。要求充電率まで充電可能でない場合(S5:NO)、すなわち、上記(2)式の不等式が成立する場合、判断部112が開閉器12に閉路状態(オン)とする指示を行い(S11)、処理はステップS3に戻る。要求充電率まで充電可能である場合(S5:YES)、誘導指標prが受信されたか否かが判別される(S6)。具体的には、判断部112は、誘導指標取得部117から誘導指標prが入力されたか否かを判別する。誘導指標prが受信されなかった場合(S6:NO)、判断部112が開閉器12に閉路状態(オン)とする指示を行い(S11)、処理はステップS3に戻る。誘導指標prが受信された場合(S6:YES)、オン回数(開放状態から閉路状態への切り替え回数)が上限値になったか否かが判別される(S7)。具体的には、判断部112は、オン回数カウント部115から入力されるオン回数が上限値以上であるか否かを判別する。オン回数が上限値になった場合(S7:YES)、判断部112が開閉器12に閉路状態(オン)とする指示を行い(S11)、処理はステップS3に戻る。
【0064】
オン回数が上限値になっていない場合(S7:NO)、パラメータkが算出される(S8)。具体的には、優先度設定部119が、パラメータk1~k7をそれぞれ設定し、パラメータk1~k7に基づいてパラメータkを算出する。次に、判断指標Xが算出される(S9)。具体的には、判断指標演算部111が、上記(1)式で示す演算式と、優先度設定部119が算出したパラメータkと、誘導指標取得部117から入力される誘導指標prとに基づいて、判断指標Xを算出する。
【0065】
次に、判断指標Xが所定値「0」より小さいか否かが判別される(S10)。具体的には、判断部112が、判断指標演算部111から入力される判断指標Xが「0」より小さいか否かを判別する。判断指標Xが所定値「0」より小さい場合(S10:YES)、判断部112が開閉器12に閉路状態(オン)とする指示を行い(S11)、処理はステップS3に戻る。一方、判断指標Xが所定値「0」以上の場合(S10:NO)、判断部112が開閉器12に開放状態(オフ)とする指示を行い(S12)、処理はステップS3に戻る。
【0066】
オンオフ処理は、電気自動車Bが満充電になった場合、および、電気自動車Bの接続が解除された場合などには、処理が終了される。なお、図6のフローチャートに示す処理は一例であって、制御部11が行うオンオフ処理は上述したものに限定されない。
【0067】
次に、本実施形態に係る充電装置A、および、電力システムGの作用および効果について説明する。
【0068】
本実施形態によると、判断指標演算部111は、集中管理装置Fから受信した共通の誘導指標prと、あらかじめ設定されている最適化問題とに基づいて判断指標Xを算出する。そして、判断部112は、判断指標Xを所定値と比較することで、通電状態とするか不通状態とするかを判断し、判断結果を開閉器12に出力する。開閉器12は、判断部112より入力される判断結果に基づいて、閉路状態(オン)と開放状態(オフ)との切り替えを行う。つまり、充電装置Aは、集中管理装置Fから受信した誘導指標prに基づいて、接続された電気自動車Bが充電される通電状態と、充電されない不通状態とを自律的に切り替える。したがって、集中管理装置Fは、充電電力を制御できない充電装置Aに対して、誘導指標prに基づくオンオフ制御を行わせることができる。これにより、電力システムGにおいて、集中管理装置Fによる管理対象を、充電電力を制御できない充電装置まで拡張できる。
【0069】
また、本実施形態によると、各充電装置Aは、優先度設定部119によって設定されるパラメータkによって、充電の優先度が設定される。したがって、各充電装置Aは、優先度に応じて、通電状態と不通状態との切り替えのタイミングを異ならせることができる。よって、多数の充電装置Aが、同時に通電状態に切り替えられたり、不通状態に切り替えられることが抑制される。これにより、多数の充電装置Aが、通電状態と不通状態との切り替えを短時間に繰り返すチャタリングが発生することを抑制できる。また、優先度が高い充電装置Aほど通電状態になりやすいので、優先して電気自動車Bを充電することができる。
【0070】
また、本実施形態によると、優先度設定部119は、電気自動車Bの充電率が低い場合に、パラメータk1を小さい値に設定してパラメータkを小さくすることで、充電装置Aによる充電の優先度を高くする。これにより、充電率が低い電気自動車Bが優先的に充電される。したがって、電気自動車Bが、充電率が低いままで放置されることを防止できる。
【0071】
また、本実施形態によると、優先度設定部119は、電気自動車Bの利用開始までの時間が短い場合に、パラメータk2を小さい値に設定してパラメータkを小さくすることで、充電装置Aによる充電の優先度を高くする。これにより、利用開始が近い電気自動車Bが優先的に充電される。したがって、利用開始時に、電気自動車Bの充電率が不足することを抑制できる。
【0072】
また、本実施形態によると、優先度設定部119は、蓄電池容量が大きい場合にパラメータk3を小さい値に設定してパラメータkを小さくすることで、充電装置Aによる充電の優先度を高くする。これにより、蓄電池容量が大きい電気自動車Bが優先的に充電される。したがって、充電に時間がかかる電気自動車Bの充電率が、利用開始時に不足することを抑制できる。
【0073】
また、本実施形態によると、優先度設定部119は、走行予定距離が大きい場合にパラメータk4を小さい値に設定してパラメータkを小さくすることで、充電装置Aによる充電の優先度を高くする。これにより、走行予定距離が大きい電気自動車Bが優先的に充電される。したがって、電気自動車Bの充電率が、走行中に不足することを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態によると、優先度設定部119は、充電装置Aが通電状態である場合にパラメータk5を小さい値に設定してパラメータkを小さくすることで、充電装置Aによる充電の優先度を高くする。これにより、充電装置Aは、通電状態である場合には、通電状態が継続されやすくなる。一方、優先度設定部119は、充電装置Aが不通状態である場合にパラメータk5を大きい値に設定してパラメータkを大きくすることで、充電装置Aによる充電の優先度を低くする。これにより、充電装置Aは、不通状態である場合には、不通状態が継続されやすくなる。つまり、充電装置Aは、ヒステリシスな動作を行う。これにより、チャタリングが発生することを抑制できるので、チャタリングによって開閉器12の寿命が短くなることを抑制できる。
【0075】
また、本実施形態によると、優先度設定部119は、オン回数が大きい場合にパラメータk6を小さい値に設定してパラメータkを小さくすることで、充電装置Aによる充電の優先度を高くする。これにより、充電装置Aは、オン回数が大きいほど、不通状態に切り替えられにくくなるので、オン回数が大きくなりすぎることを抑制できる。
【0076】
また、本実施形態によると、優先度設定部119は、あらかじめユーザに登録された優先度レベルに応じてパラメータk7を設定してパラメータkを調整することで、充電装置Aによる充電の優先度を調整する。これにより、ユーザは、都合に応じて優先度を変化させることができる。
【0077】
また、本実施形態によると、判断部112は、充電装置Aに電気自動車Bが接続されたときには、判断指標Xに基づく判断より優先して、充電装置Aを通電状態に切り替え、通電状態をしばらく継続させる。これにより、電気自動車Bが接続されても充電が開始されない状態になることを防止できる。
【0078】
また、本実施形態によると、判断部112は、充電装置Aが通電状態に切り替えられた場合には、判断指標Xに基づく判断より優先して、通電状態をしばらく継続させる。これにより、充電装置Aが通電状態に切り替えられた直後に不通状態に切り替えらえることがなくなるので、チャタリングの発生を抑制できる。
【0079】
また、本実施形態によると、判断部112は、電気自動車Bの利用時刻までに充電率が要求充電率となるように、判断指標Xに基づく判断より優先して、充電装置Aを通電状態にする。これにより、電気自動車Bは利用時刻に要求充電率まで充電されるので、走行中に充電率が不足してしまうことが抑制される。
【0080】
また、本実施形態によると、判断部112は、集中管理装置Fから誘導指標prを受信できない場合、充電装置Aを通電状態にする。これにより、充電装置Aが誘導指標prを受信できない場合に、電気自動車Bが充電されなくなることを防止できる。
【0081】
また、本実施形態によると、判断部112は、オン回数が上限値になった場合には、判断指標Xに基づく判断より優先して、充電装置Aを通電状態にする。これにより、通電状態が継続して不通状態に切り替わらないので、オン回数が増加しない。したがって、オン回数が上限値を超えて増加することを抑制できる。
【0082】
なお、本実施形態においては、判断部112が、判断指標演算部111より入力される判断指標Xを所定値(例えば「0」)と比較することで、通電状態とするか不通状態とするかを判断する場合について説明したが、これに限られない。充電装置Aにおいてチャタリングが発生することを抑制するために、判断部112は、所定値に基づく所定範囲、例えば所定値が「0」の場合、-0.1~0.1の範囲を不感帯領域として設定してもよい。なお、所定範囲は限定されない。判断部112は、判断指標Xが不感帯領域にある場合、通電状態と不通状態との切り替えを行わない。ただし、不感帯領域を広く設定し過ぎると、チャタリングを抑制できる代わりに細かな制御ができなくなる。つまり、不感帯領域の設定は、チャタリングの抑制と細かな制御とのトレードオフになる。不感帯領域は、チャタリングの頻繁な発生を抑制しつつ、ある程度細かな制御が行えるように設定される。また、不感帯領域の範囲は固定されず可変であってもよい。例えば、オン回数カウント部115が検出したオン回数に応じてパラメータk6を設定する代わりに、オン回数が大きいほど不感帯領域の範囲を広くしてもよい。この場合、オン回数が小さいときには細かな制御が可能となり、オン回数が大きくなるとチャタリングをより抑制可能となる。また、オン回数の増加が抑制できる。
【0083】
本実施形態においては、充電装置Aが充電ケーブル2を介して電気自動車Bを充電する場合について説明したが、これに限られない。例えば、充電装置Aは、非接触電力伝送技術を用いて、電気自動車Bを充電してもよい。つまり、充電装置Aが備える送電コイルと、電気自動車Bが備える受電コイルとを磁気的に結合させて、充電装置Aから電気自動車Bに非接触で電力を供給することで充電を行ってもよい。この場合、接続検出部14は、電気自動車Bの受電コイルが充電装置Aの送電コイルから受電可能な範囲に入ったことを検出すればよい。
【0084】
本実施形態においては、充電装置Aが電気自動車Bと通信を行って、充電率および蓄電池容量を受信する場合について説明したが、これに限られない。充電装置Aが電気自動車Bとの通信機能を有さない場合は、電気自動車Bのユーザが、充電装置Aの図示しない操作手段を操作して、蓄電池容量および現在の充電率を手入力してもよい。この場合、充電装置Aは、充電中に、蓄電池容量と充電電力とから充電率を随時更新すればよい。
【0085】
本実施形態においては、充電装置Aが電気自動車Bを充電する場合について説明したが、これに限られない。充電装置Aは、電気自動車Bの代わりに、動力源として電動機を備えた二輪車(電動オートバイ、電動アシスト自転車)などの乗り物、および、無人搬送車などの充電を行ってもよい。
【0086】
本実施形態においては、電力システムGが、太陽電池が接続されたパワーコンディショナC1~Cnと、蓄電池が接続されたパワーコンディショナD1~Dmとを備えている場合について説明したが、これに限られない。電力システムGは、パワーコンディショナC1~Cnを備えていなくてもよいし、パワーコンディショナD1~Dmを備えていなくてもよい。また、電力システムGがその他の電力装置を備え、集中管理装置Fが当該電力装置を管理対象に含めてもよい。
【0087】
本発明に係る充電装置および電力システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る充電装置および電力システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0088】
A:充電装置、111:判断指標演算部、119:優先度設定部、112:判断部、115:オン回数カウント部、12:開閉器、14:接続検出部、B:電気自動車、F:集中管理装置、G:電力システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6