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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158500
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】化粧板
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20221006BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20221006BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221006BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E04F13/08 A
B32B3/30
B32B27/00 E
E04B1/86 R
E04B1/86 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063450
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 彩加
【テーマコード(参考)】
2E001
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DF04
2E001GA29
2E001GA82
2E001HA32
2E001HA33
2E001HB04
2E001HD01
2E001HD03
2E001HD07
2E001HD08
2E001HD09
2E001HD11
2E001HD13
2E001JD02
2E001JD04
2E001JD06
2E110AA02
2E110AA33
2E110AA57
2E110AB04
2E110BA02
2E110BA03
2E110BA04
2E110BB02
2E110BB04
2E110GA42X
2E110GB06X
2E110GB12X
2E110GB32X
2E110GB43X
2E110GB44W
2E110GB44X
2E110GB46X
2E110GB53W
2E110GB54W
2E110GB54X
4F100AC01
4F100AC01A
4F100AK01D
4F100AK15C
4F100AK22C
4F100AK51C
4F100AL01C
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100DC11
4F100DC11A
4F100DD01A
4F100EJ08
4F100EJ08B
4F100EJ54
4F100EJ54B
4F100GB07
4F100HB00B
4F100HB31
4F100JB14
4F100JB14B
4F100JH01
4F100JJ07
4F100JL10
4F100JL10B
4F100JN01D
4F100YY00A
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】吸音性を維持しつつ、高い意匠性を有する化粧板を提供する。
【解決手段】化粧板は、表面に凹部又は孔部を有する基材層と、基材層の一方の面上に設けられ、凹部又は孔部の内壁と、基材層の表面とを覆うように形成されたインキ層と、を備えている。基材層は、ロックウールを80質量%以上含んでいることが好ましい。また、インキ層は、紫外線硬化型インキにより形成されていることが好ましい。化粧板は、基材層とインキ層との間に設けられた間接層や、インキ層の基材層と反対側の面上に設けられ、透明樹脂材料で形成されたトップコート層を備えていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹部又は孔部を有する基材層と、
前記基材層の一方の面上に設けられ、前記凹部又は前記孔部の内壁と、前記基材層の表面とを覆うように形成されたインキ層と、
を備える化粧板。
【請求項2】
前記基材層は、ロックウールを80質量%以上含んでいる
請求項1に記載の化粧板。
【請求項3】
前記インキ層は、紫外線硬化型インキにより形成されている
請求項1又は2に記載の化粧板。
【請求項4】
前記インキ層は、少なくとも4色のインキを用いて形成されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の化粧板。
【請求項5】
前記基材層と前記インキ層との間に設けられ、ウレタン系樹脂及び塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体の少なくとも一方を含む樹脂材料で形成された間接層を備える
請求項1から4のいずれか1項に記載の化粧板。
【請求項6】
前記間接層の坪量は、0.6g/m以上1.3g/m以下である
請求項5に記載の化粧板。
【請求項7】
前記インキ層の前記基材層と反対側の面上に設けられ、透明樹脂材料で形成されたトップコート層を備える
請求項1から6のいずれか1項に記載の化粧板。
【請求項8】
前記トップコート層は、厚さ0.1μm以上15μm以下である
請求項7に記載の化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建装材として、吸音ボードが広く用いられている。しかしながら、吸音ボードは、音を吸収するために、表面に凹部や孔部が設けられている。このため、吸音ボードの表面に意匠性を付与することが困難であった。そのため、例えば凹部や孔部が設けられた基材層の上面を所望の絵柄模様を印刷したシート体で被うことで、吸音ボードに意匠性を付与することが行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-132132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した方法により意匠性が付与された吸音ボードは、音を吸収するための凹部や孔部がシート体で覆われるため、凹部や孔部が露出する吸音ボードと比較して吸音性能が十分でない場合があった。
本開示は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、吸音性を維持しつつ、高い意匠性を有する化粧板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る化粧板は、表面に凹部又は孔部を有する基材層と、基材層の一方の面上に設けられ、凹部又は孔部の内壁と、基材層の表面とを覆うように形成されたインキ層と、を備えている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の態様によれば、吸音性を維持しつつ、高い意匠性を有する化粧板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第一実施形態に係る化粧板の一構成例を示す断面図である。
図2】本開示の第二実施形態に係る化粧板の一構成例を示す断面図である。
図3】本開示の第三実施形態に係る化粧板の一構成例を示す断面図である。
図4】本開示の第三実施形態に係る化粧板の他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は特許請求の範囲にかかる発明を模式的に示すものであり、各部の幅、厚さ等の寸法は現実のものとは異なり、これらの比率も現実のものとは異なる。
【0009】
本開示の第一実施形態に係る化粧板について説明する。本開示に係る化粧板は、例えば、壁面、建具、家具等に施工される化粧板である。なお、以下の説明では、化粧板の貼り付け面に接触する側を「下」、化粧板の貼り付け面に接触する側と反対側(表面)を「上」として説明する場合がある。
以下、図面を参照して本開示の各実施形態の各態様について説明する。
【0010】
1.第一実施形態
(1.1)化粧板の基本構成
図1は、本開示の実施形態に係る化粧板1の一構成例を説明するための断面図である。図1に示すように、化粧板1は、基材層11と、インキ層12とを備えている。
【0011】
基材層11は、化粧板1の基材となる層であり、化粧板1の貼り付け面の凹凸や段差などを吸収して化粧板1の施工仕上がりを良好にするとともに、化粧板1に不燃性や硬度を与える層である。インキ層12は、化粧板1に所望の色彩や絵柄模様を付与する層である。
以下、基材層1及びインキ層12の各層について詳細に説明する。
【0012】
(基材層)
基材層11は、凹部又は孔部を有し、高い吸音性を有する材料により形成されている。このような基材層11としては、例えば一般的に用いられる吸音ボードや、発泡体が挙げられる。また、化粧板を建装材として用いる場合には、高い不燃性が求められることから、吸音ボードが用いられることが好ましい。
【0013】
基材層11の凹部又は孔部の直径は、吸音性の観点から、例えば500μm以下であることが好ましい。また、基材層11の凹部又は孔部間の距離は、例えば2mm以上であることが好ましい。
【0014】
基材層11は、吸音特性に優れる吸音材を含むことが好ましい。吸音材としては、例えばグラスウール、ロックウール、アルミ繊維等の無機繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維、綿、麻、毛、絹等の天然繊維、連続気泡を有する樹脂材料等で形成された発泡体、多孔性セラミック等が用いられる。
発泡体を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。このような樹脂材料は、単独で使用してもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0015】
なかでも、不燃性の観点から、基材層11は、無機繊維を含んでいることが好ましく、ロックウールを含んでいることがより好ましい。また、基材層11は、無機繊維を80質量%以上含んでいることが好ましく、ロックウールを80質量%以上含んでいることがより好ましい。ロックウールは、グラスウールよりもさらに耐熱性能が高く、例えば700℃程度の環境下でも厚さや性能が維持されるため好ましい。
これにより、化粧板1は、ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において、以下の3つの要件のすべてを満たし、高い不燃性を有する。
(1)加熱開始後20分間の総発熱量(MJ/m)が8MJ/m以下である
(2)加熱開始後20分間の最高発熱速度が、10秒以上継続して200kW/mを超えない
(3)基材に防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴が生じない
【0016】
基材層11の厚さは特に限定されないが、例えば5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましい。また、基材層11の厚さは、250mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましい。基材層11の厚さをこのような範囲内とすることで、吸音効果を十分に得つつ、化粧材1が不要に厚くならないようにする
ことができる。
【0017】
(インキ層)
インキ層12は、化粧板1に意匠性を付与するための層である。インキ層12は、基材層11の一方の面上(上面側)に設けられており、基材層11の一方の面上に形成された吸音のための凹部又は孔部の内壁と、基材層11の表面とを覆うように形成されている。基材層11表面に形成された凹部又は孔部の内壁にもインキ層12が形成されていることにより、化粧板1に付与された絵柄模様に欠けがないため、化粧板1の意匠性が向上する。
【0018】
インキ層12を基材層11表面に形成された凹部又は孔部の内壁にも形成するために、インキ層12は例えばインクジェット印刷等の無版印刷により形成されることが好ましい。このとき、インキ層12は、基材層11表面に印刷された複数のドットにより形成されている。ドット状に形成されたインキは、互いに離れて印刷されていてもよく、重複して印刷されていても良い。このため、例えばインクジェット印刷によりインキ層12が形成される場合、インキ層12は、基材層11に形成された凹部又は孔部の内壁と、基材層11の表面とを、非連続的に覆っていてもよい。これにより、基材層11の表面に凹部又は孔部があっても凹部又は孔部内にインクを付着させることが可能となり、意匠性の高い柄の印刷を高品質で行うことが容易となる。また、これにより、インキ層12の絵柄模様のサイズの制限がなくなり、高品質で微細な絵柄模様のインキ層12を実現することが可能となる。インクジェット印刷は、例えばグラビア印刷やオフセット印刷のように印刷用の版にインキ層12の絵柄模様に対応する凹凸を付与する必要がなくなる。このため、金属加工技術の上限以上に微細な絵柄模様を形成することが可能となる。
【0019】
インキ層12は、基材層11に印刷可能なインキであればよく、例えば紫外線硬化型インキ又は水性インキを用いることができるが、特に紫外線硬化型インキにより形成されていることが好ましい。紫外線硬化型インキは、水性インキを用いた場合と比較して、乾燥機のような大規模な設備が不要となるとともに、塗布直後の紫外線照射により硬化可能であるため、製造工程の簡易化、製造時間の短縮等が可能となる。また、紫外線硬化型インキは、インクジェットノズルの目詰まりが生じ難く、好適に使用できる。
【0020】
このような紫外線硬化型インキとしては、公知の紫外線開始剤と、顔料とが添加されたアクリルウレタン系樹脂又はシリコーンアクリレート系樹脂が用いられる。
紫外線硬化型インキを用いた場合、紫外線硬化型インキの硬化には紫外線照射を用いる。紫外線は、例えば120W/cmの高圧水銀灯やメタルハライド灯を用いて照射することが好ましい。
【0021】
また、インキ層12の厚みは、10μm以上2mm以下程度が好ましい。インキ層12の厚みをこの範囲内とすることにより、インキ層12よりも下の層を隠蔽できるためである。
インキ層12は、少なくとも4色のインキを用いて形成されていることが好ましい。少なくとも4色のインキは、例えばシアン(C)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色を少なくとも含んでいることが好ましい。インキ層12が4色以上のインキを用いて形成されている場合、化粧板1に非常に高品質で高い意匠性が付与される。
【0022】
(1.2)化粧板の製造方法
以下、化粧板1の製造方法について説明する。
まず、基材層11として、表面に凹部又は孔部を有する材料を準備する。
続いて、基材層11の一方の面上に、インキ層12を形成する。インキ層12は、基材層11の一方の面上にインキを用いて所望の絵柄をインクジェット印刷等の無版印刷により印刷する。これにより、基材層11の凹部又は孔部の内壁は、基材層11の表面とともにインキで覆われ、基材層11の凹部又は孔部の内壁にも絵柄模様の一部が印刷される。
以上により、高い意匠性を有する化粧板1を得ることができる。
【0023】
(1.3)本実施形態の効果
第一実施形態に係る化粧板1は、以下の効果を有する。
(1)化粧板は、表面に凹部又は孔部を有する基材層と、基材層の一方の面上に設けられ、凹部又は孔部の内壁と、基材層の表面とを覆うように形成されたインキ層と、を備えている。
これにより、化粧板は、吸音性を維持しつつ、高い意匠性が付与される。
(2)化粧板の基材層は、ロックウールを80質量%以上含んでいることが好ましい。
これにより、化粧板の不燃性が向上する。
【0024】
(3)化粧板のインキ層は、紫外線硬化型インキにより形成されていることが好ましい。
これにより、乾燥機等の大規模な設備が不要となり、製造工程の簡易化、製造時間の短縮等が可能となる。
(4)化粧板のインキ層は、少なくとも4色のインキを用いて形成されていることが好ましい。
これにより、化粧板は、高い意匠性が付与される。
【0025】
2.第二実施形態
以下、図2を参照して、第二実施形態に係る化粧板2について説明する。図2は、化粧板2の積層構造を説明するための断面図である。
【0026】
(2.1)化粧板の基本構成
図2に示すように、化粧板2は、基材層11と、間接層23と、インキ層12とを備えている。すなわち、化粧板2は、基材層11とインキ層12との間に設けられた間接層23を備える点で、第一実施形態に係る化粧板1と相違する。
以下、間接層23について詳細に説明する。なお、基材層11及びインキ層12は、第一実施形態において説明した基材層11およびインキ層12と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0027】
(間接層)
間接層23は、基材層11とインキ層12との密着性を向上させるための層である。間接層23は、基材層11とインキ層12との間に設けられている。間接層23は、基材層11を構成する材料(例えばロックウール)と、インキ層12を構成するインキ(紫外線硬化型インキ)のいずれとも密着性の良い材料であればよい。間接層23は、例えば、ウレタン系樹脂及び塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体の少なくとも一方を含む樹脂材料で形成されていることが好ましい。
【0028】
間接層23は、坪量が0.6g/m以上1.3g/m以下となるように形成されることが好ましい。これにより、インキ層12の印刷性が向上するとともに、間接層23を不要に厚くすることがないため製造コストが低減する。
【0029】
(2.2)化粧板の製造方法
表面に凹部又は孔部を有する基材層11の表面に、間接層23を構成する材料を塗布する。例えば、間接層23を構成する材料が塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体である場合、この共重合体を溶剤に溶解して塗布し、溶剤を揮発させて硬化させることにより、間接層23を形成する。このとき、間接層23の坪量を0.6g/m以上1.3g/m以下となるように間接層23を構成する材料が塗布・乾燥される。
続いて、間接層23上に、第一実施形態と同様にしてインキ層12を形成した。
以上により、高い意匠性を有する化粧板2を得ることができる。
【0030】
(2.3)本実施形態の効果
第二実施形態に係る化粧板は、第一実施形態における効果に加えて以下の効果を有する。
(5)化粧板は、基材層とインキ層との間に、ウレタン系樹脂及び塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体の少なくとも一方を含む樹脂材料で形成された間接層を備えている。
これにより、基材層11とインキ層12との密着性を向上させ、化粧板の品質を向上させることができる。
(6)化粧板の間接層の坪量は、0.6g/m以上1.3g/m以下であることが好ましい。
これにより、インキ層の印刷性が向上するとともに、間接層を不要に厚くすることがないため製造コストが低減する。
【0031】
3.第三実施形態
以下、図3を参照して、第三実施形態に係る化粧板3について説明する。図3は、化粧板3の積層構造を説明するための断面図である。
【0032】
(3.1)化粧板の基本構成
図3に示すように、化粧板3は、基材層11と、インキ層12と、トップコート層34とを備えている。すなわち、化粧板3は、インキ層12の基材層11と反対側の面上に設けられたトップコート層34を備える点で、第一実施形態に係る化粧板1と相違する。
以下、トップコート層34について詳細に説明する。なお、基材層11及びインキ層12は、第一実施形態において説明した基材層11およびインキ層12と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0033】
(トップコート層)
トップコート層34は、インキ層12を保護するための層である。トップコート層34は、インキ層12の絵柄模様を化粧板3の上面(トップコート層34の上面)から視認可能とするために、例えば透明材料で形成されていることが好ましい。また、トップコート層34は、化粧板3の上面を保護するために、強度の高い樹脂材料で形成されていることが好ましい。すなわち、トップコート層34は、透明樹脂材料で形成されていることが好ましい。
【0034】
トップコート層34は、厚さ0.1μm以上15μm以下で形成されていることが好ましい。トップコート層34の厚さがこの範囲内である場合、表面保護層としての機能を十分に得ることができるとともに、トップコート層34を不要に厚く形成することがないため製造コストの低下につながる。
【0035】
(3.2)化粧板の他の構成
図4に示すように、第三実施形態に係る化粧板の他の例である化粧板4は、基材層11と、間接層23と、インキ層12と、トップコート層34とを備えている。すなわち、化粧板4は、間接層23を備え、第二実施形態に係る化粧板2の上面にトップコート層34を備えた構成である点で、第三実施形態に係る化粧板3と相違する。
化粧板4を構成する基材層11、インキ層12、間接層23及びトップコート層34は、第一実施形態~第三実施形態の基本構成において説明した各層と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0036】
(3.3)化粧板の製造方法
基材層11上(間接層23を有する場合には、基材層11上に形成した間接層23上)に、インキ層12を形成した後、インキ層12上にトップコート層34を構成する材料を塗布する。例えば、トップコート層34を構成する材料が紫外線硬化型インキである場合、インキ層12上に紫外線硬化型インキを塗布した後、塗布直後の紫外線硬化型インキに紫外線を照射して紫外線硬化型インキを硬化させてトップコート層34を形成する。
以上により、高い意匠性を有する化粧板3又は化粧板4を得ることができる。
【0037】
(3.4)本実施形態の効果
第三実施形態に係る化粧板は、第一実施形態における効果に加えて以下の効果を有する。
(7)化粧板は、インキ層の基材層と反対側の面上に設けられ、透明樹脂材料で形成されたトップコート層を備えている。
これにより、インキ層が保護されて、意匠性が長期間維持される。
(8)化粧板のトップコート層は、厚さ0.1μm以上15μm以下であることが好ましい。
これにより、トップコート層が表面保護層としての機能を十分に得ることができる程度の強度を有するとともに、トップコート層を不要に厚く形成することがないため製造コストの低下につながる。
【実施例0038】
以下、本開示に係る化粧板について、実施例を挙げて説明する
実施例では、上述の実施形態のいずれかで説明した構成の化粧板を作製し、後述する評価を行った。
【0039】
<実施例1>
基材層として、ロックウールを80質量%含み、孔部を複数有する吸音ボードを準備した。
続いて、基材層の一方の表面に、4色(4種類)の紫外線(UV)硬化型インキを用いてインクジェット印刷により木目柄を印刷した後、温度20℃条件下にて、紫外線光量80mJ/cmの紫外線を1秒照射して紫外線硬化型インキを硬化させ、インキ層とした。このとき、インクジェット印刷による印刷により、吸音ボードの孔部の内壁は、吸音ボードの表面とともに紫外線硬化型インキで覆われ、吸音ボードの孔部の内壁にも木目柄の一部が印刷された。
以上により、実施例1の化粧板を形成した。
【0040】
<実施例2>
インキ層を形成する前に、基材層の一方の表面に塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体(塩酢ビ系樹脂)を溶剤に溶解して塗布し、溶剤を揮発させて硬化させることにより、間接層を形成した。このとき、間接層の坪量が1.0g/mとなるようにした。続いて、間接層上にインキ層を形成した。これ以外は実施例1と同様にして、実施例2の化粧板を形成した。
【0041】
<実施例3>
インキ層の表面に、透明の紫外線硬化型樹脂により厚さ1.0μmのトップコート層を形成した。これ以外は実施例2と同様にして、実施例3の化粧板を形成した。
【0042】
<実施例4>
基材層上に設けられたインキ層の表面に、透明の紫外線硬化型樹脂により厚さ1.0μmのトップコート層を形成した。これ以外は実施例1と同様にして、実施例4の化粧板を形成した。
【0043】
<実施例5>
紫外線硬化型インキに代えて、4色(4種類)の水性インキを用いてインクジェット印刷により木目柄を印刷し、オーブン温度120℃の乾燥機で130秒水性インキを乾燥させてインキ層とした。これ以外は実施例1と同様にして、実施例5の化粧板を形成した。
【0044】
<実施例6>
基材層として表面に孔部を有する発泡体を用いた。これ以外は実施例1と同様にして、実施例6の化粧板を形成した。
【0045】
<比較例1>
基材層として、転写紙を準備した。
続いて、基材層の一方の表面に、紫外線硬化型インキに代えて4色(4種類)の溶剤系インキを用いてグラビア印刷により木目柄を印刷してインキ層とした。このとき、転写紙の表面にはほとんど凹凸がなく、グラビア印刷による印刷により、吸音ボードの表面に木目柄が印刷された。
以上により、比較例1の化粧板を形成した。
【0046】
<比較例2>
紫外線硬化型インキに代えて、4色(4種類)の溶剤系インキを用いてグラビア印刷により木目柄を印刷してインキ層とした。これ以外は実施例1と同様にして、比較例2の化粧板を形成した。
【0047】
<比較例3>
紫外線硬化型インキに代えて、4色(4種類)の溶剤系インキを用いてオフセット印刷により木目柄を印刷してインキ層とした。これ以外は実施例1と同様にして、比較例3の化粧板を形成した。
【0048】
<比較例4>
基材層として表面が平滑なプラスチックシート表面に孔部を有する発泡体を用いた。これ以外は実施例1と同様にして、比較例4の化粧板を形成した。
【0049】
[評価]
上述した各実施例及び各比較例の化粧板について、以下の評価を行った。
【0050】
(意匠性)
各化粧板の上面から、木目柄を目視で確認し、木目柄がはっきりとよれることなく印刷されている場合を「○」、木目柄の一部がよれているものの欠けることなく印刷されている場合を「△」、木目柄の一部が欠けたように印刷されている場合を「×」と評価した。
【0051】
(吸音性)
各化粧板のJIS A1409で規定される残響室法吸音率の測定方法により、間接層、インキ層、トップコート層のいずれも形成しない吸音ボードに対して周波数を125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hzと変化させてそれぞれに対する吸音率を測定し、基準吸音率とした。
続いて、各実施例及び各比較例の化粧板について、上述した測定方法により周波数を125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hzと変化させてそれぞれに対する吸音率を測定した。上述した基準吸音率と比較した際に、吸音率の値か±0.15以内の場合を「○」、±0.15未満の場合を「×」と評価した。
【0052】
(不燃性)
各実施例及び各比較例の化粧板について、ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において、以下の3つの要件のすべてを満たす場合を「○」、少なくとも1つを満たさない場合を「×」と評価した。
(1)加熱開始後20分間の総発熱量(MJ/m)が8MJ/m以下である
(2)加熱開始後20分間の最高発熱速度が、10秒以上継続して200kW/mを超えない
(3)基材に防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴が生じない
【0053】
各実施例及び各比較例の評価結果を、以下の表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
各実施例は、表面に孔部を有する基材層の一方の面上に、インクジェット印刷によりインキ層が設けられることで、インキ層が基材層表面と吸音ボード(孔部)の内壁とを覆うように形成されている。このような各実施例の化粧板は、表1に示すように、表面に孔部を有する基材層の一方の面上に、版を用いた印刷によりインキ層を形成した比較例2,3の化粧板と比較して高い意匠性を有していることが分かった。比較例2,3の化粧板は、吸音ボードの孔部の内壁がインキ層で覆われておらず、意匠性が低かった。また、各実施例の化粧板は、表1に示すように、プラスチックシート表面にインクジェット印刷によりインキ層を形成した比較例4の化粧板と比較しても高い意匠性を有していることが分かった。比較例4の化粧板は、プラスチックシートとインキとの密着性が低く、印刷した絵柄模様が十分に定着しなかったためである。
【0056】
また、基材として表面に孔部を有する吸音ボード又は発泡体を用いた各実施例の化粧板は、表面に孔部又は凹部を有していない転写紙又はプラスチックシートを基材層としてもちいた比較例1又は4と比較して、高い吸音性を有していることが分かった。
すなわち、表面に凹部又は孔部を有する基材層と、インクジェット印刷等の無版印刷により、基材層表面と凹部又は孔部の内壁とを覆うように形成されたインキ層とを備える化粧板は、高い意匠性と吸音性とを両立することができることが分かった。
【0057】
また、ロックウールを80質量%以上含む基材層を有する実施例1から実施例4の化粧板は、ロックウールを80質量%以上含まない基材層を有する実施例6の化粧板と比較して不燃性が顕著に高く、高い意匠性及び吸音性に加えて、高い不燃性を有している。
さらに、インキ層を紫外線硬化型インキで形成した実施例1から実施例4の化粧板は、インキ層を水性インキで形成した実施例5の化粧板と比較してより高い意匠性を有していた。これは、紫外線硬化型インキの硬化が、水性インキの乾燥より短い時間で可能であり、短時間で印刷によれが生じにくくなるためである。
【0058】
さらに、基材層とインキ層との間に間接層を設けた実施例2の化粧板、基材層とインキ層との間に間接層を設け、インキ層の表面にトップコート層を設けた実施例3の化粧板、インキ層の表面にトップコート層を設けた実施例4の化粧板は、いずれも高い意匠性、吸音性及び不燃性を有しており、間接層やトップコート層によって吸音性の低下や不燃性の低下が生じていないことが分かった。
【0059】
以上説明したように、表面に凹部や孔部を有している吸音ボード等に意匠性を付与する場合、インクジェット印刷等により凹部や孔部の内壁にもインキを付与することが可能な方法で形成されたインキ層を有するが好ましいことが分かった。
【0060】
本開示の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0061】
11 基材層
12 インキ層
23 間接層
34 トップコート層
図1
図2
図3
図4