(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015854
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】テープ巻付機
(51)【国際特許分類】
B65H 81/06 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B65H81/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118974
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】719002344
【氏名又は名称】萩原 康史
(72)【発明者】
【氏名】萩原 康史
(57)【要約】 (修正有)
【課題】テープを一定長さに切断して供給する機構のない簡易な装置構成で、対象物が回転プレートの回転中心軸上から変位するのを抑制し、適正なテープ巻き付けをすることができるロールテープの巻き付け性能に優れたテープ巻付機を提供する。
【解決手段】対象物8と直交する面内で回転駆動する回転プレート5を備えたテープ巻付装置において、回転プレートにロールテープ1を旋回させつつロールテープを対象物に近接する方向に移動させる径方向移動手段を備え、ロールテープからテープを引き出さずに、ロールテープから先に引き出されたテープを対象物に巻き取りながら、ロールテープを対象物に近接する方向に移動させることで、ロールテープの最外層の非粘着面と対象物が接する位置までロールテープが移動し、その後、ロールテープの最外層の非粘着面と対象物が摺接しつつ、ロールテープからテープを引き出しながら、テープを対象物に巻き付ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を中心としてテープを回転させる旋回手段として、対象物と直交する面内で回転駆動する回転プレートを備えたテープ巻付装置において、回転プレートにロールテープを旋回させつつロールテープを対象物に近接する方向に移動させる径方向移動手段を備え、回転プレートが回転しロールテープからテープを対象物に巻き付ける時、ロールテープからテープを引き出さずに、ロールテープから先に引き出されたテープを対象物に巻き取りながら、ロールテープを対象物に近接する方向に移動させることで、ロールテープの最外層の非粘着面と対象物が接する位置までロールテープが移動し、その後、ロールテープの最外層の非粘着面と対象物が摺接しつつ、ロールテープからテープを引き出しながら、テープを対象物に巻き付けることを特徴としたテープ巻付装置。
【請求項2】
回転プレートに固定された回動軸で連結されたアームに、ロールテープを保持するホルダー部を備えた請求項1に記載のテープ巻付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールテープを電線束などの対象物に重ねて巻き付けるテープ巻付機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のワイヤーハーネスの製造の一部として、電線束やそれを覆う外装部材や電線のジョイント部分に、重ねてテープを巻き付けるテープ巻付機が提案されている。例えば実用新案文献、実公昭57-5284号公報のテープ巻付機は、テープを一定長さに切断するテープ供給機構と、対象物と直交する面内で回転する回転体を備え、回転体の外周縁から回転中心軸を含む中央領域に向けて設けられたU字状の切欠きの内部両側の対向面に固定されたブラシが回転中心軸上に架け渡された対象物の周囲を回り、供給されたテープを電線などの対象物に巻き付けるものである。
【0003】
テープ巻付機は、対象物にテープを巻き付ける旋回手段として、対象物と直交する面内に配置された固定体と、隣接配置された回転体を備え、回転体は、対象物と直交する面内で回転駆動される。
【0004】
テープ巻付機の回転中心軸上に対象物を挿抜するために、固定体と回転体に、外周縁から中心軸を含む中央領域に向けてU字状の切欠が設けられている。これらのテープ巻付機では、固定体の切欠と、回転体の切欠が揃った状態で、対象物が挿抜される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のテープ巻付機では、テープを一定寸法に切断し回転体の外周に向けて供給するための機構と制御が必要になり、装置構成が複雑になってしまうという問題があった。
【0007】
従来のテープ巻付機では、対象物を回転中心にセットすることが難しく、巻き付ける時に対象物に振れが生じ、対象物が回転体の回転中心軸上から変位することで、巻き付けるテープに皺が発生し、適正な巻き付けができない場合があった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、テープを一定長さに切断して供給する機構のない簡易な装置構成で、対象物が回転プレートの回転中心軸上から変位するのを抑制し、適正なテープ巻き付けをすることができるロールテープの巻き付け性能に優れたテープ巻付機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
対象物を中心としてテープを回転させる旋回手段として、対象物と直交する面内で回転駆動する回転プレートを備えたテープ巻付装置において、回転プレートにロールテープを旋回させつつロールテープを対象物に近接する方向に移動させる径方向移動手段を備え、回転プレートが回転しロールテープからテープを対象物に巻き付ける時、ロールテープからテープを引き出さずに、ロールテープから先に引き出されたテープを対象物に巻き取りながら、ロールテープを対象物に近接する方向に移動させることで、ロールテープの最外層の非粘着面と対象物が接する位置までロールテープが移動し、その後、ロールテープの最外層の非粘着面と対象物が摺接しつつ、ロールテープからテープを引き出しながら、テープを対象物に巻き付ける。
【0010】
回転プレートに固定された回動軸で連結されたアームに、ロールテープを保持するホルダー部を備えた前項に記載のテープ巻付装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、簡易な装置構成で対象物の回転中心軸からの変位を抑制し、適正なテープ巻き付けを行うことができるロールテープの巻き付け性能に優れたテープ巻付装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明に係るテープ巻付機の斜視図である。
【
図2】
図2はテープを巻き付ける動作を示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)はテープを巻き始める動作を示す概略図である。
図3(b)はテープを巻き付ける動作を示す概略図である。
図3(c)はテープを巻き終わった状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、回転プレート5に固定された回動軸4で連結されたアーム3の先端部にホルダー部2が設けられロールテープ1(粘着テープ)を保持している。
【0014】
回動軸4は、ロールテープ1、ホルダー部2、アーム3の自重によって回動しないだけの保持力があり、且つ、ロールテープ1から対象物8に張り渡されたテープが対象物8に巻き取られ、ロールテープ1と対象物8との間に張力が加わった時には、ロールテープ1からテープを引き出さず、アーム3が容易に回動する範囲の保持力であること。
【0015】
アーム3の回動範囲は、回転内方向へは、アーム3に保持されたロールテープ1の最外層の非粘着面が対象物8と接する範囲まで回動可能とする。回転外方向へは、ロールテープ1の中心が、回転中心軸と回動軸4の中心とを結ぶ線の延長線を、超えない範囲で規制する。
【実施例0016】
図1、
図2を参照しつつテープ巻付機の動作について説明する。
図3はテープ巻付動作を行う回転プレート5、アーム3を示す概略図である。
【0017】
まず、対象物8(電線束等)を、作業者の手又は装置で保持し、回転プレート5の回転中心軸上に架け渡し、支持部7で支持する。
【0018】
回転プレート5に回動軸4で連結されたアーム3の先端部に保持されたロールテープ1のテープ端部を引き出し、テープを対象物8の半周程度に貼り付ける。
図1、
図3(a)に示すように、アーム3を回転外方向に回動させ、ロールテープ1の最外層から対象物8の外周までの距離が離れている(接していない)ように、ロールテープ1からテープを引き出して張り渡す。この時、ロールテープ1から引き出すテープの長さによって、緩く巻き付けるテープの長さが決まるため、条件によって引き出す長さを調整する。例えば、対象物8の材質等により、テープが剥がれやすい場合は長くテープを引き出し、対象物8からテープが剥がれ難く、テープを強く巻き付ける必要がある場合はテープを引き出す長さを短く調整する。
【0019】
図3(a)に示すように、駆動装置からの駆動力を受けて回転プレート5が回転方向9の方向に回転を始めることで、ロールテープ1から対象物8に張られたテープが対象物8に巻き取られ、ロールテープ1と対象物8の間に張力が加わる。回転プレート5とアーム3を連結している回動軸4の保持力は、テープの引き剥がし粘着力(テープ自背面の非粘着面に対する粘着力)より小さいため、ロールテープ1からテープが引き出されることなく、回動軸4を軸として、アーム3がロールテープ1を対象物8に近づける方向である回動方向10(回転内方向)に回動する。この時、ロールテープ1からテープを引き出さず、テープを巻き付けるため、ロールテープ1と対象物8の間に加わる張力が抑制されることで、対象物8が回転プレートの回転中心軸上から変位することが抑制される。また、張り渡されたテープにはロールテープ1を径方向に移動させるだけの張力が加わっていることで、巻き付けるテープにたるみが生じにくいことで皺の発生が抑制される。
【0020】
回転プレート5が回転方向9の方向に回転することで、アーム3が回動方向10の方向に回動し、アーム3に保持されたロールテープ1の最外層が、対象物8の外周に接する。この時、ロールテープ1と対象物8の間に張り渡されたテープには、テープの引き剥がし粘着力(テープ自背面の非粘着面に対する粘着力)による張力が加わる。
【0021】
図2、
図3(b)に示すように、テープ巻付動作中は、回転プレート5が回転方向9の方向に回転することで、ロールテープ1から対象物8に張られたテープが対象物8に巻き取られ、ロールテープ1と対象物8の間に張り渡されたテープには、テープの引き剥がし粘着力(テープ自背面の非粘着面に対する粘着力)による張力が加わる。アーム3に保持されたロールテープ1が対象物8と接する位置まで移動しているため、ロールテープ1の回転内方向への移動が規制され、ロールテープ1の最外層の非粘着面が、対象物8の外周に摺接しつつ、テープの張力によってロールテープ1からテープが引き出されながら、テープが対象物8に巻き付けられる。この時、ロールテープ1と対象物8が接しているため、対象物8がロールテープ1側に引き寄せられることがなく、対象物8が回転プレートの回転中心軸上から変位することが抑制される。またロールテープ1と対象物8が接しつつテープを巻き付けることで、引き出されているテープ長がごく短くなるため、巻き付けるテープに皺が発生することが抑制される。
【0022】
図3(c)に示すように、テープを巻き終わり、回転プレート5が停止した状態では、ロールテープ1の引き剥がし粘着力(テープ自背面の非粘着面に対する粘着力)によって、テープは引き出されず、アーム3は回転内方向への回動が規制された位置に保たれる。
【0023】
ロールテープ1から対象物8に張り渡されたテープを引き出して切断し、テープ巻付機から対象物8を取り外す。この時、アーム3は規制された範囲で容易に回動可能となる。
【0024】
上述のように、巻き付け開始時には、ロールテープ1からテープを引き出さずに、先に引き出されたテープを対象物に巻き取ることで、対象物8の回転プレートの回転中心軸上からの変位が抑制され、テープ巻き付け時には、ロールテープ1の最外層の非粘着面が、対象物8の外周に摺接しつつ、テープの張力によってロールテープ1からテープが引き出されながら、テープが対象物8に巻き付けられることで、対象物8の回転プレートの回転中心軸上からの変位が抑制され、好適な巻き付けが行われる。
【0025】
なお本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、配置箇所などは本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、アーム、回転プレートの形状である。
【0026】
また、本発明においては、旋回中にロールテープを対象物中心に向けて移動させることができる機構であれば、どのような機構であっても径方向移動手段として採用することができる。例えば、対象物軸心に対し直交する径方向に沿って延びるレール部材を配置して、スライド機構によって径方向移動手段を構成するようにしても良い。
【0027】
また、テープを巻き付ける対象物は電線束に限らず、本発明において、テープが巻き付けられる線状の材料であれば用いることができる。例えば、1本の電線や、電線を含まない線状の部材、チューブ状の材料であっても良い。