(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158560
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】エンブレム部材
(51)【国際特許分類】
D05C 17/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
D05C17/00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063549
(22)【出願日】2021-04-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年2月24日 美津濃株式会社のウェブサイト「https://corp.mizuno.com/jp/newsrelease/2021/20210224/?_fsi=Ir3roFw5#」を通じて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 政崇
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】丹 穣路
【テーマコード(参考)】
4L044
【Fターム(参考)】
4L044BA07
4L044BA11
(57)【要約】
【課題】設計の自由度が大きなエンブレム部材を提供する。
【解決手段】エンブレム部材1は、ベース部2と、マーク部3と、透明性部材4とを備える。ベース部2は表面2dを有する。マーク部3は、ベース部2の表面2dに形成される。透明性部材4は、マーク部3の少なくとも一部を覆うようにベース部2と接続される。この場合、透明性部材4を介してマーク部3を視認できるとともに、マーク部3の形状および素材とは独立して透明性部材4の立体的な形状を決定できる。このため、エンブレム部材1の設計の自由度を大きくできる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有するベース部と、
前記ベース部の前記表面に形成されたマーク部と、
前記マーク部の少なくとも一部を覆うように前記ベース部と接続された透明性部材とを備える、エンブレム部材。
【請求項2】
前記ベース部と前記透明性部材との接続部は、前記ベース部の一部が前記透明性部材側に突出するとともに前記透明性部材の内部に前記一部が埋設した第1構造と、前記透明性部材の一部が前記ベース部の前記表面に形成された隙間に侵入するとともに前記隙間に固定された第2構造と、の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載のエンブレム部材。
【請求項3】
前記マーク部は、前記ベース部の前記表面に施された刺繍を含む、請求項1または請求項2に記載のエンブレム部材。
【請求項4】
前記刺繍を構成する糸の断面形状が矩形状である、請求項3に記載のエンブレム部材。
【請求項5】
前記ベース部の前記表面に対して垂直な方向から前記表面を見た平面視において、前記マーク部の外周に沿うように前記透明性部材の外周が配置されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエンブレム部材。
【請求項6】
前記平面視において、前記透明性部材の前記外周は前記マーク部の前記外周より外側に配置されている、請求項5に記載のエンブレム部材。
【請求項7】
前記ベース部の前記表面は、前記透明性部材が配置された第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを含み、
前記第2領域を覆うように配置された被覆層を備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のエンブレム部材。
【請求項8】
前記透明性部材の表面は曲面状部分を含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のエンブレム部材。
【請求項9】
前記透明性部材の前記表面において、前記曲面状部分は前記ベース部側に凸となる曲面を含む、請求項8に記載のエンブレム部材。
【請求項10】
前記ベース部の前記表面に垂直な方向における前記透明性部材の断面において、前記ベース部の前記表面に沿った方向における前記透明性部材の幅は、前記ベース部から離れるに従って小さくなっている、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のエンブレム部材。
【請求項11】
前記透明性部材は、前記ベース部の前記表面に沿った方向に突出する角部を含み、
前記角部の先端側に向かうほど、前記透明性部材の厚みは薄くなっている、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のエンブレム部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンブレム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体的なエンブレム部材を形成するために立体刺繍を用いる手法が知られている(たとえば、特開平3-249259号公報参照)。特開平3-249259号公報では、刺繍模様を構成する糸の内側に弾性体を充填することで立体刺繍模様を構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の手法では、エンブレム部材の形状や触感などを大きく変更することは難しく、設計の自由度があまり大きくないという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、本開示の目的は、設計の自由度が大きなエンブレム部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエンブレム部材は、ベース部と、マーク部と、透明性部材とを備える。ベース部は表面を有する。マーク部は、ベース部材の表面に形成される。透明性部材は、マーク部の少なくとも一部を覆うようにベース部と接続される。
【発明の効果】
【0007】
上記によれば、設計の自由度が大きなエンブレム部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るエンブレム部材の平面模式図である。
【
図2】
図1の線分II-IIにおける断面模式図である。
【
図3】
図1の線分III-IIIにおける断面模式図である。
【
図4】
図1の線分IV-IVにおける断面模式図である。
【
図5】
図1のエンブレム部材の接続部の構成を説明するための模式図である。
【
図6】
図1のエンブレム部材における接続部の変形例を説明するための模式図である。
【
図7】
図1のエンブレム部材におけるマーク部を構成する刺繍の糸の断面模式図である。
【
図8】
図1のエンブレム部材におけるマーク部を構成する刺繍の糸の変形例を示す断面模式図である。
【
図9】
図1のエンブレム部材の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図9の透明性部材を形成する工程の詳細を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図9の透明性部材を形成する工程の変形例を説明するためのフローチャートである。
【
図12】
図11に示した製造方法により製造されたエンブレム部材の断面模式図である。
【
図13】
図1に示したエンブレム部材の第1変形例を示す断面模式図である。
【
図14】
図1に示したエンブレム部材の第2変形例を示す断面模式図である。
【
図15】
図1に示したエンブレム部材の第3変形例を示す断面模式図である。
【
図16】
図1に示したエンブレム部材の第4変形例を示す断面模式図である。
【
図17】
図1に示したエンブレム部材の第5変形例を示す断面模式図である。
【
図18】
図1に示したエンブレム部材の第6変形例を示す断面模式図である。
【
図19】
図1に示したエンブレム部材の第7変形例を示す断面模式図である。
【
図20】
図1に示したエンブレム部材の第8変形例を示す断面模式図である。
【
図21】
図1に示したエンブレム部材を取り付けた捕球具の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
<エンブレム部材の構成>
図1は、実施の形態に係るエンブレム部材の平面模式図である。
図2は、
図1の線分II-IIにおける断面模式図である。
図3は、
図1の線分III-IIIにおける断面模式図である。
図4は、
図1の線分IV-IVにおける断面模式図である。
図5は、
図1のエンブレム部材の接続部の構成を説明するための模式図である。
図6は、
図1のエンブレム部材における接続部の変形例を説明するための模式図である。
図7は、
図1のエンブレム部材におけるマーク部を構成する刺繍の糸の断面模式図である。
図8は、
図1のエンブレム部材におけるマーク部を構成する刺繍の糸の変形例を示す断面模式図である。
【0011】
図1~
図5に示されるように、本開示に係るエンブレム部材1は、ベース部2と、マーク部3と、透明性部材4とを備える。ベース部2は、平板状の部材である。ベース部2を構成する材料としては、たとえばフェルト、布地、革、合成皮革など任意の材料を用いることができる。ベース部2の表面2dには、マーク部3が形成されている。
【0012】
マーク部3は、たとえばベース部2に糸を縫い付けることで形成された刺繍13により構成されている。なお、マーク部3としては、ベース部2の表面に印刷された模様を用いてもよい。
図1に示したエンブレム部材1において、マーク部3の平面形状は四角形状である。マーク部3の平面形状は、三角形状、多角形状、文字、ロゴマークなど他の任意の形状としてもよい。マーク部3においては、
図1に示した輪郭線により囲まれた領域全体に刺繍加工が施されている。つまり、マーク部3の表面全体が刺繍13により覆われている。
【0013】
透明性部材4は、マーク部3を覆うように配置されている。透明性部材4は、マーク部3の外周に位置する接続部5において、ベース部2と接続されている。つまり、
図1に示されるように、ベース部2の表面2dに対して垂直な方向から当該表面2dを見た平面視において、マーク部3の外周3aに沿うように透明性部材4の外周4bが配置されている。透明性部材4の外周4bは、マーク部3の外周3aを外側から囲むように配置されている。マーク部3の外周3aと透明性部材4の外周4bとの間に位置する領域が上記接続部5となっている。接続部5の構成は後述する。
【0014】
透明性部材4の形状は、
図2に示すように1つの断面における形状が三角形状である。つまり、ベース部2の表面2dに垂直な方向における透明性部材4の断面において、ベース部2の表面2dに沿った方向における透明性部材4の幅Wは、ベース部2から離れるに従って小さくなっている。当該断面では、透明性部材4の側壁はベース部2の表面2dに対して傾斜している。
【0015】
また、
図3に示すように透明性部材4の他の断面における形状は台形状である。当該断面における透明性部材4の頂面は、ベース部2の表面2dに沿った方向に延びている。透明性部材4は
図1に示すように角部4dをむ。角部4dは、ベース部2の表面2dに沿った方向に突出している。
図1に示した透明性部材4では、4つの角部4dが形成されている。
図4に示すように、角部4dの先端4da側に向かうほど、透明性部材4の厚みTは薄くなっている。つまり、角部4dにおいて、透明性部材4の第1部分における厚みT1は、当該第1部分より角部4dの先端4da側に位置する第2部分における厚みT2より大きい。
【0016】
図4に示した透明性部材4の角部4dでは、上端が直線状となっているが、当該上端は曲線状であってもよい。当該上端は、ベース部2側に凹んだ曲線状であってもよいし、ベース部2から離れる方向に凸の曲線状であってもい。あるいは、当該上端が、ベース部2側に凹んだ曲線状部分と、ベース部2から離れる方向に凸の曲線状部分とを含んでいてもよい。
【0017】
透明性部材4を構成する材料としては、任意の材料を用いることができるが、たとえばシリコーン樹脂等の樹脂を用いることができる。透明性部材4は、透明または半透明の材料であればよい。ここで、半透明とは、可視光線の透過率が100未満であるが、マーク部3が透明性部材4を介して視認できる程度の透過率を有していればよい。たとえば、透明性部材4における可視光線の透過率は40%以上で有ればよい。透明性部材4の材料としては、半透明であって着色された材料を用いてもよい。
【0018】
接続部5は、
図5に示されるように透明性部材4の一部4aがベース部2の表面に形成された隙間2cに侵入するとともに当該隙間2cに固定された構造を有している。ベース部2として、たとえばフェルトなどの繊維質の材料を用いる場合、ベース部2の表面には繊維間の隙間2cが存在している。透明性部材4の一部4aが当該隙間2cに含浸した状態で固化することで、ベース部2に対して透明性部材4が固定されている。また、マーク部3として刺繍13が用いられているので、当該刺繍13を構成する糸とベース部2の表面2dとの間の隙間および当該糸同士の間の隙間にも、透明性部材4の一部が含浸して固化している。この結果、透明性部材4がベース部2およびマーク部3と接続される。
【0019】
なお、接続部5の構造としては、
図6に示すように、ベース部2の一部2bが透明性部材4側に突出するとともに透明性部材4の内部に当該一部2bが埋設した構造を適用してもよい。ベース部2の当該一部2bとしては、たとえばベース部2の表面2dから突出する繊維などを用いることができる。このような構成の接続部5においても、ベース部2と透明性部材4との接続界面の面積を大きくしているため、ベース部2と透明性部材4とを強固に固定することができる。なお、透明性部材4は、マーク部3の少なくとも一部を覆うようにベース部2と接続されていればよい。つまり、透明性部材4は、マーク部3の一部を覆うともに、ベース部2と接続部5によって接続されていてもよい。
【0020】
マーク部3としての刺繍13を構成する糸としては、
図7に示すような断面形状の平糸14を用いる。当該平糸14としては、光沢を有する樹脂製の平糸を用いることが好ましい。なお、刺繍13を構成する糸として
図8に示すような断面形状が円形状の糸15、あるいは他の断面形状の糸を用いてもよい。
【0021】
<作用効果>
本開示に係るエンブレム部材1は、ベース部2と、マーク部3と、透明性部材4とを備える。ベース部2は表面2dを有する。マーク部3は、ベース部2の表面2dに形成される。透明性部材4は、マーク部3の少なくとも一部を覆うようにベース部2と接続される。この場合、透明性部材4を介してマーク部3を視認できるとともに、マーク部3の形状および素材とは独立して透明性部材4の立体的な形状を決定できる。このため、エンブレム部材1の設計の自由度を大きくできる。
【0022】
上記エンブレム部材1において、ベース部2と透明性部材4との接続部5は、第1構造と第2構造との少なくともいずれかを含んでいてもよい。第1構造では、ベース部2の一部2bが透明性部材4側に突出するとともに透明性部材4の内部に当該一部2bが埋設している。第2構造では、透明性部材4の一部4aがベース部2の表面に形成された隙間2cに侵入するとともに当該隙間2cに固定されている。この場合、ベース部2と透明性部材4とを接続部5により固定できる。このような接続部5の構成を採用することで、透明性部材4の材料としてベース部2と直接的に接着し難い材料を選択できる。このため、エンブレム部材1の設計の自由度をさらに大きくできる。
【0023】
上記エンブレム部材1において、マーク部3は、ベース部2の表面に施された刺繍13を含んでもよい。この場合、刺繍13により構成されたマーク部3を、透明性部材4を介して視認することで、単に刺繍13のみにより形成されたエンブレム部材とは異なる意匠性のエンブレム部材1を実現できる。
【0024】
上記エンブレム部材1において、刺繍13を構成する糸としての平糸14の断面形状が矩形状であってもよい。この場合、刺繍13において糸として断面形状が円形状である糸を用いる場合より、マーク部3としての刺繍13の質感に変化を持たせることができる。この結果、エンブレム部材1の意匠性を高めることができる。
【0025】
上記エンブレム部材1において、刺繍13を構成する糸15の断面形状が円形状であってもよい。この場合、マーク部3としての刺繍13の全体的な質感をなめらかかつ均一なものとすることかできる。
【0026】
上記エンブレム部材1では、ベース部2の表面2dに対して垂直な方向から当該表面2dを見た平面視において、マーク部3の外周3aに沿うように透明性部材4の外周4bが配置されてもよい。この場合、マーク部3の形状に沿った平面形状を有する透明性部材4を得ることができる。
【0027】
上記エンブレム部材1では、平面視において、透明性部材4の外周4bはマーク部3の外周3aより外側に配置されてもよい。この場合、マーク部3の全面を覆うように透明性部材4が配置される。このため、マーク部3の全体について、透明性部材4を介して視認することによる視覚効果を得ることができる。
【0028】
上記エンブレム部材1では、ベース部2の表面2dに垂直な方向における透明性部材4の断面において、ベース部2の表面2dに沿った方向における透明性部材4の幅Wは、ベース部2から離れるに従って小さくなっていてもよい。この場合、透明性部材4の側面がベース部2の表面2dに対して傾斜しているので、透明性部材4を介してマーク部3を視認し易くできる。
【0029】
上記エンブレム部材1において、透明性部材4は角部4dを含んでもよい。角部4dは、ベース部2の表面2dに沿った方向に突出してもよい。角部4dの先端4da側に向かうほど、透明性部材4の厚みTは薄くなっていてもよい。この場合、透明性部材4の角部4dが先端4da側に行くほど幅および高さが小さくなった楔形状となる。この結果、透明性部材4の形状として立方体などの単純な形状を採用した場合より、エンブレム部材1の意匠性を向上させることができる。
【0030】
<エンブレム部材の製造方法>
図9は、
図1のエンブレム部材の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図10は、
図9の透明性部材を形成する工程の詳細を説明するためのフローチャートである。
図9および
図10に示されるように、エンブレム部材の製造方法は、準備する工程(S10)と、透明性部材を形成する工程(S20)とを備える。
【0031】
工程(S10)では、マーク部3が形成された表面2dを有するベース部2を準備する。工程(S20)では、ベース部2に透明性部材4を接続する。透明性部材4は、マーク部3の少なくとも一部を覆うように、ベース部2に接続される。以下、工程(S20)の詳細を説明する。
【0032】
図10に示されるように、工程(S20)は、金型を準備する工程(S201)と、樹脂を充填する工程(S202)と、配置する工程(S203)と、硬化工程(S204)とを含む。具体的には、まず金型を準備する工程(S201)が実施される。当該工程(S201)では、透明性部材4の外形を規定する凹部が形成された金型を準備する。金型を構成する材料としては、従来周知の任意の材料を用いることができる。
【0033】
次に、樹脂を充填する工程(S202)が実施される。当該工程(S202)では、上述した金型の凹部に、透明性部材4となるべき樹脂を充填する。当該樹脂は液状であることが好ましい。
【0034】
次に、配置する工程(S203)が実施される。当該工程(S203)では、金型の凹部に充填された上記樹脂に接触するように、ベース部2を配置する。このとき、ベース部2においてマーク部3が形成された面が上記樹脂に接触する。
【0035】
次に、硬化工程(S204)が実施される。当該工程(S204)では、ベース部2が接触している樹脂を硬化する。この結果、硬化した樹脂が透明性部材4となる。透明性部材4はベース部2に接続された状態となっている。その後、金型から透明性部材4とベース部2とが一体化したエンブレム部材を取り外す。このようにして、エンブレム部材を製造することができる。
【0036】
<作用効果>
本開示に係るエンブレム部材の製造方法は、準備する工程(S10)と、形成する工程(S20)とを備える。準備する工程(S10)では、マーク部3が形成された表面2dを有するベース部2を準備する。形成する工程(S20)では、マーク部3の少なくとも一部を覆うように、ベース部2に接続された透明性部材4を形成する。このようにすれば、本実施の形態に係るエンブレム部材を得ることができる。
【0037】
上記エンブレム部材の製造方法において、形成する工程(S20)は、金型を準備する工程(S201)と、樹脂を充填する工程(S202)と、配置する工程(S203)と、硬化工程(S204)とを含んでもよい。金型を準備する工程(S201)では、透明性部材4の外形を規定する凹部が形成された金型を準備してもよい。樹脂を充填する工程(S202)では、金型の凹部に、透明性部材4となるべき樹脂を充填してもよい。配置する工程(S203)では、樹脂に接触するようにベース部2を配置してもよい。透明性部材を形成する工程としての硬化工程(S204)では、ベース部2が接触している樹脂を硬化してもよい。
【0038】
この場合、透明性部材4を形成するために樹脂を硬化させる硬化工程(S204)において、当該樹脂の一部がベース部2と接触した状態固化することで、ベース部2に透明性部材4を接続することができる。
【0039】
<エンブレム部材の製造方法の変形例>
図11は、
図9の透明性部材を形成する工程の変形例を説明するためのフローチャートである。
図12は、
図11に示した製造方法により製造されたエンブレム部材の断面模式図である。
【0040】
エンブレム部材の製造方法の変形例は、基本的には
図9に示したエンブレム部材の製造方法と同様の工程を備えるが、工程(S20)の具体的な工程が異なっている。すなわち、
図11に示されるように、エンブレム部材の製造方法の変形例における透明性部材を形成する工程(S20)は、第1部材を配置する工程(S211)と、硬化工程(S212)とを含む。
【0041】
上記エンブレム部材の製造方法の変形例において、
図9に示した準備する工程(S10)が実施された後、工程(S20)における第1部材を配置する工程(S211)が実施される。この工程(S211)では、マーク部3が形成されたベース部2の表面2d上に、接着剤層42(
図12参照)を介して透明性部材4となるべき第1部材41(
図12参照)を配置する。第1部材41および接着剤層42は、ベース部2のマーク部3上に配置される。接着剤層42としてはペースト状の接着剤を用いる。当該接着剤層42は、硬化後に透明または半透明となる接着剤である。当該接着剤層42としては、第1部材41とベース部2とを接着できれば、従来周知の任意の接着剤を用いることができる。
【0042】
第1部材41は、透明性部材4の一部を構成する部材であって、透明または半透明の部材により構成される。第1部材41は、最終的な透明性部材4の形状の一部となるように予め成型されている。
【0043】
次に、硬化工程(S212)が実施される。工程(S212)では、接着剤層42を硬化する。接着剤層42の一部は、ベース部2に含浸している。この結果、接着剤層42が硬化することで接続部5(
図12参照)が形成される。また、硬化した接着剤層42(
図12参照)は、透明性部材4の一部となる。このように、第1部材41と硬化した接着剤層42とから透明性部材4が構成される。このようにして、
図12に示すエンブレム部材1が得られる。
【0044】
なお、接着剤層42を構成する接着剤がベース部2との良好な接着性を有している場合、接着剤層42の一部がベース部2に含浸することなく、接着剤層42がベース部2の表面2dと直接接着した状態となってもよい。また、接着剤層42がマーク部3を構成する材料と良好な接着性を示す場合、当該マーク部3の外側で接着剤層42とベース部2とが直接的に接続されていなくてもよい。
【0045】
<作用効果>
上記エンブレム部材1において、接続部5は、硬化した接着剤層42を含んでいてもよい。この場合、エンブレム部材1の製造工程を、接着剤を用いることで簡略化できる。
【0046】
<エンブレム部材の変形例の構成および作用効果>
図13~
図20は、
図1に示したエンブレム部材の変形例を示している。なお、
図13~
図20はいずれも
図2に対応する。以下、エンブレム部材の変形例を説明する。
【0047】
図13は、
図1に示したエンブレム部材の第1変形例を示す断面模式図である。
図13に示したエンブレム部材1は、基本的には
図1に示したエンブレム部材1と同様の構成を備えるが、接続部5の構成および被覆層6を備える点が
図1に示したエンブレム部材1と異なっている。すなわち、
図13に示したエンブレム部材において、ベース部2の表面2dは、第1領域2daと第2領域2dbとを含む。第1領域2daは、透明性部材4がマーク部3上を覆うように配置された領域である。第2領域2dbは、第1領域2da以外の領域である。第2領域2dbは、第1領域2daを囲むように配置されている。エンブレム部材1は、第2領域2dbを覆うように配置された被覆層6を備える。被覆層6は、透明性部材4と接続されている。被覆層6を構成する材料は透明性部材4の材料と同様である。接続部5は、透明性部材4および被覆層6の一部がベース部2に含浸して固化した含浸部2aであって、透明性部材4の外周部下の領域から被覆層6下の領域にまで延びている。接続部5は、被覆層6の下に位置する領域全体に形成されている。
【0048】
このような構成によっても、
図1に示したエンブレム部材と同様の効果を得ることができる。さらに、被覆層6がベース部2の第2領域2dbを覆っているので、ベース部2を保護する保護部材として機能する。そのため、エンブレム部材1の耐久性を向上させることができる。
【0049】
図14は、
図1に示したエンブレム部材の第2変形例を示す断面模式図である。
図14に示したエンブレム部材1は、基本的には
図1に示したエンブレム部材1と同様の構成を備えるが、透明性部材4の形状が
図1に示したエンブレム部材1と異なっている。すなわち、
図14に示したエンブレム部材1では、透明性部材4の表面4cが曲面状部分43を含む。曲面状部分43はベース部2側に凸となる曲面である。さらに、透明性部材4の表面4cは、上述した曲面状部分43と、傾斜部分44とを含む。傾斜部分44は、曲面状部分43とベース部2の表面2dとを接続する。傾斜部分44は、ベース部2の表面2dに近づくほどマーク部3から離れるように傾斜している。傾斜部分44は平面状であるが、曲面状であってもよい。このような構成によっても、
図1に示したエンブレム部材1と同様の効果を得ることができる。さらに、透明性部材4の表面4cが曲面状部分43と傾斜部分44という異なる形状の部分を含むため、透明性部材4を介したマーク部3の見え方を、目線の位置により大きく異ならせることができる。
【0050】
図15は、
図1に示したエンブレム部材の第3変形例を示す断面模式図である。
図15に示したエンブレム部材1は、基本的には
図1に示したエンブレム部材1と同様の構成を備えるが、透明性部材4の形状が
図1に示したエンブレム部材1と異なっている。すなわち、
図15に示したエンブレム部材1では、透明性部材4の表面4cが曲面状部分43となっている。曲面状部分43はベース部2側に凸となる曲面である。このような構成によっても、
図1に示したエンブレム部材1と同様の効果を得ることができる。さらに、透明性部材4の表面4cが曲面状部分43となっているので、透明性部材4を介してマーク部3を見る場合のマーク部の見え方を、当該表面4cが平面状である場合での見え方と異ならせることができる。
【0051】
図16は、
図1に示したエンブレム部材の第4変形例を示す断面模式図である。
図16に示したエンブレム部材1は、基本的には
図15に示したエンブレム部材1と同様の構成を備えるが、接続部5の構成および被覆層6を備える点が
図15に示したエンブレム部材1と異なっている。すなわち、
図16に示したエンブレム部材において、ベース部2の表面2dは、第1領域2daと第2領域2dbとを含む。第1領域2daは、透明性部材4が配置された領域である。第2領域2dbは、第1領域2da以外の領域であって、第1領域2daを囲むように配置されている。エンブレム部材1は、第2領域2dbを覆うように配置された被覆層6を備える。被覆層6は、透明性部材4と接続されている。被覆層6を構成する材料は透明性部材4の材料と同様である。接続部5は、透明性部材4および被覆層6の一部がベース部2に含浸して固化した含浸部2aであって、透明性部材4の外周部下の領域から被覆層6下の領域にまで延びている。接続部5は、被覆層6の下に位置する領域全体に形成されている。なお、
図16に示したエンブレム部材の被覆層6および接続部5の構成は、
図13に示したエンブレム部材1における被覆層6および接続部5の構成と同様である。このような構成により、
図15および
図13に示したエンブレム部材1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
図17は、
図1に示したエンブレム部材の第5変形例を示す断面模式図である。
図17に示したエンブレム部材1は、基本的には
図1に示したエンブレム部材1と同様の構成を備えるが、透明性部材4の形状が
図1に示したエンブレム部材1と異なっている。すなわち、
図17に示したエンブレム部材1では、透明性部材4の表面4cが曲面状部分45となっている。曲面状部分45はベース部2から離れる方向に凸となる曲面である。このような構成によっても、
図1に示したエンブレム部材1と同様の効果を得ることができる。さらに、透明性部材4の表面4cが曲面状部分45となっているので、透明性部材4を介してマーク部3を見る場合のマーク部の見え方を、当該表面4cが平面状である場合での見え方と異ならせることができる。また、
図17に示した透明性部材4は、凸レンズのように作用してマーク部3を拡大して視認させることも可能である。
【0053】
図18は、
図1に示したエンブレム部材の第6変形例を示す断面模式図である。
図18に示したエンブレム部材1は、基本的には
図17に示したエンブレム部材1と同様の構成を備えるが、接続部5および被覆層6を備える点が
図17に示したエンブレム部材1と異なっている。すなわち、
図18に示したエンブレム部材は、
図16に示したエンブレム部材1と同様の被覆層6および接続部5を備えている。このような構成により、
図17および
図16に示したエンブレム部材1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
図19は、
図1に示したエンブレム部材の第7変形例を示す断面模式図である。
図19に示したエンブレム部材1は、基本的には
図1に示したエンブレム部材1と同様の構成を備えるが、透明性部材4の形状が
図1に示したエンブレム部材1と異なっている。すなわち、
図19に示したエンブレム部材1では、透明性部材4の上部が平坦な面となっている。すなわち、透明性部材4の断面形状は台形状となっている。このような構成によっても、
図1に示したエンブレム部材1と同様の効果を得ることができる。さらに、透明性部材4の断面形状が台形状となっているので、透明性部材4を介してマーク部3を見る場合のマーク部の見え方を、
図1に示したエンブレム部材1での見え方と異ならせることができる。
【0055】
図20は、
図1に示したエンブレム部材の第8変形例を示す断面模式図である。
図20に示したエンブレム部材1は、基本的には
図19に示したエンブレム部材1と同様の構成を備えるが、接続部5および被覆層6を備える点が
図19に示したエンブレム部材1と異なっている。すなわち、
図20に示したエンブレム部材は、
図16に示したエンブレム部材1と同様の被覆層6および接続部5を備えている。このような構成により、
図19および
図16に示したエンブレム部材1と同様の効果を得ることができる。
【0056】
<エンブレム部材を適用した運動用具の例>
図21は、
図1に示したエンブレム部材を取り付けた捕球具の模式図である。
図21に示されるように、本実施の形態に係る運動用具の一例である野球用またはソフトボール用捕球具100(以下、単に捕球具100という)は、装着者の手に装着されるものである。なお、以下において、装着者の手とは、素手、または手袋(アンダーグローブ)を装着した手を含むものとする。装着者の手甲とは、素手の手甲、または手袋の手甲側に位置する最表面部を含むものとする。また、本実施の形態では、捕球具100として野球用またはソフトボール用グラブを例示しているが、本実施の形態における捕球具100は、キャッチャーミット、ファーストミットなどであってもよい。
【0057】
捕球具100は、袋部102と、ウェブ部103と、エンブレム部材1とを主に備えている。袋部102は、装着者の手を受け入れるように設けられた内部空間を有している。袋部102およびウェブ部103の主な構成材料は、例えば天然皮革、人工皮革または合成皮革などである。
【0058】
袋部102は、例えば第1指袋部121と、第2指袋部122と、第3指袋部123と、第4指袋部124と、第5指袋部125と、掌袋部126とを含む。第1指袋部121、第2指袋部122、第3指袋部123、第4指袋部124、および第5指袋部125の各々は、掌袋部126に接続されている。
【0059】
第1指袋部121は、装着者の第1指(親指)を受け入れるように設けられた内部空間を有している。第2指袋部122は、装着者の第2指(人差し指)を受け入れるように設けられた内部空間を有している。第3指袋部123は、装着者の第3指(中指)を受け入れるように設けられた内部空間を有している。第4指袋部124は、装着者の第4指(薬指)を受け入れるように設けられた内部空間を有している。第5指袋部125は、装着者の第5指(小指)を受け入れるように設けられた内部空間を有している。掌袋部126は、装着者の掌を受け入れるように設けられた内部空間を有している。掌袋部126の上記内部空間は、装着者の第1中手骨(親指中手骨)、第2中手骨(人差し指中手骨)、第3中手骨(中指中手骨)、第4中手骨(薬指中手骨)、および第5中手骨(小指中手骨)を受け入れる。
【0060】
第1指袋部121、第2指袋部122、第3指袋部123、第4指袋部124、および第5指袋部125の各内部空間は、掌袋部126の内部空間に接続されている。第1指袋部121、第2指袋部122、第3指袋部123、第4指袋部124、および第5指袋部125の各内部空間は、掌袋部126の内部空間を介して互いに接続されている。
【0061】
第1指袋部121は、第2指袋部122、第3指袋部123、第4指袋部124、および第5指袋部125の各々から離れて配置されている。第1指袋部121および第2指袋部122は、ウェブ部103を挟んで配置されている。第3指袋部123は、第2指袋部122に対して第1指袋部121とは反対側に、第2指袋部122に隣接して配置されている。第4指袋部124は、第3指袋部123に対して第2指袋部122とは反対側に、第3指袋部123に隣接して配置されている。第5指袋部125は、第4指袋部124に対して第3指袋部123とは反対側に、第4指袋部124に隣接して配置されている。
【0062】
掌袋部126は、挿入部127と、手掌部(図示せず)と、手甲部129とを含む。挿入部127は、装着者が手を捕球具100の上記内部空間に挿入するための開口部として構成されている。挿入部127は、掌袋部126の内部空間に面しており、掌袋部126の内部空間に対して第1指袋部121、第2指袋部122、第3指袋部123、第4指袋部124、および第5指袋部125の各内部空間とは反対側に配置されている。
【0063】
手掌部は、装着者の手掌と対向するように配置されている。手掌部は、掌袋部126の内部空間に面しており、該内部空間に対して装着者の手掌側に配置されている。
【0064】
手甲部129は、装着者の手甲と対向するように配置されている。手甲部129は、掌袋部126の内部空間に面しており、該内部空間に対して装着者の手甲側に配置される。手甲部129は、少なくとも装着者の第2中手骨、第3中手骨、第4中手骨、および第5中手骨の各々と対向するように設けられている。手甲部129は、例えばいわゆるベロ部として構成されている。手甲部129の親指側に位置する部分は、例えば袋部102の親指側に位置する部分と一体として設けられている。手甲部129の小指側に位置する部分は、例えば袋部102の小指側に位置する部分に、紐部材によって結い合わされている。
【0065】
袋部102において、手甲部129と第2指袋部122、第3指袋部123、および第4指袋部124との間には、例えば開口部104が設けられている。開口部104は、袋部102の内部空間に面している。手甲部129は、例えば開口部104よりも挿入部127側に配置されている。
【0066】
ウェブ部103は、袋部102に取り付けられている。ウェブ部103は、第1指袋部121と第2指袋部122との間に配置されている。ウェブ部103は、第1指袋部121と第2指袋部122との間の領域の少なくとも一部を覆うように構成されている。ウェブ部103は、例えば網目状に設けられている。なお、ウェブ部103の構成は、これに限られるものではない。
【0067】
図21に示されるように、エンブレム部材1は手甲部129に取り付けられている。なお、エンブレム部材1は、袋部102の表面およびウェブ部103の表面のいずれかに取り付けられてもよい。たとえば、エンブレム部材1を第1指袋部121、第2指袋部122、第3指袋部123、第4指袋部124、および第5指袋部125のいずれかの手甲側に設置してもよい。あるいは、エンブレム部材1をウェブ部103の手甲側に設置してもよい。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本開示の基本的な範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 エンブレム部材、2 ベース部、2a 含浸部、2b,4a 一部、2c 隙間、2d,4c 表面、2da 第1領域、2db 第2領域、3 マーク部、3a,4b 外周、4 透明性部材、4d 角部、4da 先端、5 接続部、6 被覆層、13 刺繍、14 平糸、15 糸、41 第1部材、42 接着剤層、43,45 曲面状部分、44 傾斜部分、100 捕球具、102 袋部、103 ウェブ部、104 開口部、121 第1指袋部、122 第2指袋部、123 第3指袋部、124 第4指袋部、125 第5指袋部、126 掌袋部、127 挿入部、129 手甲部。